JPH092347A - 階段の自動昇降方法及び階段昇降車 - Google Patents

階段の自動昇降方法及び階段昇降車

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JPH092347A
JPH092347A JP7147433A JP14743395A JPH092347A JP H092347 A JPH092347 A JP H092347A JP 7147433 A JP7147433 A JP 7147433A JP 14743395 A JP14743395 A JP 14743395A JP H092347 A JPH092347 A JP H092347A
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JP
Japan
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vehicle
arm
wheel
wheels
stairs
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Application number
JP7147433A
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English (en)
Inventor
Motoji Torii
元二 鳥居
Hideyuki Hirano
秀行 平野
Masayuki Muramatsu
昌之 村松
Ken Otake
憲 大竹
Atsushi Miki
淳 三木
Katsumi Takai
勝己 高井
Yasuhide Sakai
康英 酒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TOKAI KOTSU KIKAI KK
Central Japan Railway Co
Original Assignee
TOKAI KOTSU KIKAI KK
Central Japan Railway Co
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 階段を昇降する車両において、踏板の縁を損
傷せず、安定した昇降動作を可能にする。 【構成】 階段昇降車1は、その前後に計4個の車輪1
3,15を備え、各車輪の側方には、アーム23,25
及びその駆動機構を備えている。車輪13が蹴込へ接近
すると、制御装置43が全車輪を停止させ、アーム23
を前方へ回動させる。すると、アーム23の上端部が、
蹴込の上にある踏板の上面に当接され、次に、車輪13
が引き上げられ、蹴込の上の踏板に移動される。この方
法によれば常に踏板の上面に2つの車輪13,15(若
しくはアーム23,25)を当接させて車両を支えるた
め、階段の縁を損傷しない。また、上の踏板に車輪13
を当接させることにより上昇されるので、階段昇降車1
の前部が宙に浮くことがなく、安定した昇段動作が可能
となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、荷物・人等を乗せた車
両に階段を昇降させる方法、及びその方法に基づいて階
段を昇降する階段昇降車に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、階段における身体障害者の移送、
或は荷物の運搬等に用いるための階段昇降車に対する要
望は次第に大きくなってきている。特に、駅等の、階段
の多い施設内では、階段昇降車があると、作業者や機材
を移動させるのに便利である。
【0003】しかし、階段昇降車は実用例が極めて少な
く、現時点では図11に示したような、無限軌道101
にて階段103を昇降する方式(以下、単に軌道方式と
いう)を用いた車両105が実用化されている。図11
は車両105が階段103を昇る様子を示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、軌道方
式は、無限軌道101の凸部分107を階段103の踏
板109の縁111に引っ掛けて昇降するため、昇降を
繰り返すと縁111が損傷する可能性が高い。しかも、
無限軌道101の凸部分107,107間の距離は、一
般に階段103の縁111間の距離に一致しないため、
車両105の全重量を一箇所の縁111のみで支えるこ
とも起こりうる。当然こうした状況では縁111の損傷
が起こり易く、たとえ損傷が起こらなくとも車両105
自体が不安定な状態になるため、安定した昇降が期待で
きない。
【0005】また、階段103を昇段し終えて平床11
3へ進行する時には、図11のように車両105の前部
が宙に浮いた状態となる。この後、車両105の重心
が、平床113の縁117を乗り越えた時点で車両10
5は前のめりになって倒れ、大きな衝撃が車両105に
加わる。同様の現象は、平床113から階段103へ進
行して降段を開始する際にも発生する。
【0006】更に、踏板113上に障害物があった場合
に、これを回避することができないという問題点もあ
る。障害物を避けるために、強いて階段103上にて方
向転換をすると、無限軌道101の凸部分107と縁1
11とが非平行になるため、車両105の状態がますま
す不安定になってしまう。
【0007】本発明は、こうした課題に鑑みてなされた
ものであり、踏板の縁を損傷せず、且つ昇段終了時及び
降段開始時に起きる急激な車体姿勢の変化を防止して安
定した昇降動作が可能となる昇降方法及び車両を提案す
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めになされた請求項1に記載の発明は、前後に合計3個
以上の車輪を備えた車両に、階段を自動で昇降させる方
法であって、車両の左右方向に沿った軸回りに回転可能
で、しかも回転により先端が車両走行面側の下方に位置
するときには、該先端が前記各車輪の下端よりも更に下
方に突出する長さのアームを、車体の前記各車輪の側方
に夫々設置し、階段の踏板等の平坦な走行面を走行する
時には、前記アームを上方に振り上げた状態で維持し、
階段を昇る時には、階段の蹴込に接近した前記各アーム
を前方に振り降ろし、該蹴込の上方にある踏板の上面に
該アームの先端部を当接させた後、なおも同方向に該ア
ームを回転させることにより、当該車両を段差の上へと
押し上げ、階段を降りる時には、階段の踏板の縁に接近
した前記各アームを前方から下方に振り降ろし、該アー
ムの側方の車輪を踏板から浮かせた後、なおも同方向に
該アームを回転させることにより該車輪と共に当該車両
を前方にせり出させつつ下降させることにより車両を該
踏板の1段下の踏板へと移動させることを特徴とする。
【0009】また、請求項2に記載の発明は、階段を自
動で昇降可能な階段昇降車であって、その車体下方の前
後に合計3個以上備えられた車輪と、該各車輪を夫々駆
動する車輪駆動部と、当該車両に一端が回動可能に固定
される略棒状部材であって、該回動の軸方向が当該車両
の左右方向に平行で、且つ軸位置が前記各車輪の各回転
軸に対して走行面と略逆方向にずれた箇所にされ、しか
も該回動によって他端が走行面に向けられると該他端が
各車輪の下端部より更に下方に突出する長さにされたア
ームと、該各アームを、該アームの先端が走行面と略逆
方向に向く角度に保持し、外部からの指令に応じて該ア
ームを前記回動させるアーム駆動部と、昇段時に、階段
の蹴込に対する前記各車輪の接近を各々検出する蹴込検
出手段と、該蹴込検出手段の検出結果に基づいて、前記
全車輪を停止させると共に、該検出結果に対応する前記
車輪の側方に設けられた前記アームを、前記アーム駆動
部を介して、当該車両の進行方向に向けて振り降ろすよ
うに回転させ、前記アームの先端が上段の踏板に当接す
ると、前記蹴込検出手段による検出のなかった方の前記
車輪を前記車輪駆動部を介して駆動させ、なおも前記ア
ームを回転させることにより、前記アームの側方にある
前記車輪を昇段させ、該車輪が階段の踏板に当接する
と、該車輪の駆動を再開し、前記アームを更に回転させ
て元の姿勢に戻す昇段手段と、降段時に、階段の踏板の
縁に対する前記各車輪の接近を各々検出する縁検出手段
と、該縁検出手段の検出結果に基づいて、前記全車輪を
停止させると共に、該検出結果に対応する前記車輪の側
方に設けられた前記アームを、前記アーム駆動部を介し
て、当該車両の進行方向に向けて振り降ろすように回転
させ、前記アームの先端が階段の踏板に当接すると、前
記縁検出手段による検出のなかった方の前記車輪を前記
車輪駆動部を介して駆動させ、なおも前記アームを回転
させることにより、前記アームの側方にある前記車輪を
降段させ、該車輪が下段の踏板に当接すると、該車輪の
駆動を再開し、前記アームを更に回転させて元の姿勢に
戻す降段手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】また更に、請求項3に記載の発明は、請求
項2に記載の階段昇降車において、前記各車輪を、当該
車両を直進させる状態から少なくとも90deg操舵可
能な操舵手段を更に備えたことを特徴とする。請求項4
に記載の発明は、請求項3に記載の階段昇降車におい
て、当該車両の本体に、その上端を支点として前後方向
に傾斜可能に固定され、前記各車輪をその各前記操舵手
段と共に支持する脚部と、水平面に対する当該車両の前
後方向の傾斜角度を検出する傾斜角検出手段と、該傾斜
角検出手段による検出結果に基づき、前記全脚部を前記
揺動させ、前記全操舵手段の操舵軸の方向を鉛直方向に
維持する維持手段と、を更に備え、且つ前記アーム、前
記蹴込検出手段、及び前記縁検出手段が、前記脚部に固
定されていることを特徴とする。
【0011】
【作用及び発明の効果】請求項1に記載の発明は、前後
に合計3個以上の車輪を備えた車両において、車両の左
右方向に沿った軸回りに回転されるアームを、車体にお
いて各車輪の側方に設置しておく。各アームはその一端
を軸として回転されて、他端を走行面に向けられると、
その他端が、車輪の下端より更に下方に突出する長さに
されている。こうした車両に平坦な走行面を走行する時
には、アームを上方に振り上げた状態で維持し、階段を
昇るときには、階段の蹴込に接近した全てのアームを前
方に振り降ろし、その蹴込の上方にある踏板の上面にア
ームの先端部を当接させた後、なおも同方向にアームを
回転させることにより、当該車両を段差の上へと押し上
げる。
【0012】一方、階段を降りるときには、階段の踏板
の縁に接近したアームのみを前方から下方に振り降ろ
し、アームの側方の車輪を踏板から浮かせた後、なおも
同方向に該アームを回転させることにより該車輪と共に
当該車両を前方にせり出させつつ下降させて車両を該踏
板の1段下の踏板へと移動させる。これらの動作を繰り
返すことにより、階段昇降車は階段を上昇(若しくは下
降)される。
【0013】従い、請求項1に記載の発明によれば、当
該階段昇降車は、常に車輪若しくはアームを踏板の上面
に当接させることにより支えられる。これにより、軌道
式車両のように階段の縁一箇所のみで車両の荷重を支え
ることがないため、階段昇降車が安定し、また階段の縁
を損傷することもない。
【0014】また、昇段動作が終了される際及び降段動
作が開始される際にも、階段昇降車の姿勢が急激に変化
することがない。即ち、階段昇降車における昇段動作
(降段動作)は、常に、次に進む上(下)の踏板に車輪
を当接させることにより行なわれるので、階段昇降車の
前部が宙に浮いて平床(階段)の上方に大きくせり出す
ことがなく、徐々に階段昇降車の姿勢を水平に戻して
(傾斜させて)昇段動作を終了(降段動作を開始)す
る。従い、軌道式車両のように車両自体に大きな衝撃が
加わることがなく、介添えも必要ない。
【0015】請求項2に記載の階段昇降車は、その車体
下方の前後に車輪を合計3個以上設け、しかも各車輪は
車輪駆動部により夫々駆動可能にしておく。これらの車
輪とは別に、車輪の側方にアームが設けられており、そ
の一端は、当該車両の左右方向に平行で且つ前記各車輪
の回転軸に対して走行面と略逆方向にずれた箇所に位置
する軸の回りに夫々回動可能に設置されている。しかも
アームは、この回動によってその先端が走行面に向けら
れると、その先端が各車輪の下端部より更に下方に突出
する長さにされている。このアームの駆動は、アーム駆
動部によって行なわれ、通常、各アームは、アームの先
端が走行面と略逆方向に向く角度に保持されている。
【0016】車両に階段を昇らせるときには、昇段手段
が、蹴込検出手段からの検出信号に応じて、全車輪を停
止させ、蹴込が検出された部位にあるアームを、アーム
駆動部を介して、当該車両の進行方向に向けて振り降ろ
す方向に回転させる。そしてアームの先端が上段の踏板
に当接すると、蹴込検出手段による検出のなかった方の
車輪を車輪駆動部を介して駆動させ、なおもアームを回
転させることにより、そのアームの側方にある車輪を昇
段させる。その車輪が上段の踏板に当接すると、その車
輪の駆動を再開し、アームを更に回転させて元の姿勢に
戻す。
【0017】一方、車両に階段を下らせるときには、降
段手段が、縁検出手段からの検出信号に応じて、全車輪
を停止させ、縁が検出された部位にあるアームを、アー
ム駆動部を介して、当該車両の進行方向に向けて振り降
ろす方向に回転させる。そしてアームの先端が踏板に当
接すると、縁検出手段による検出のなかった方の車輪を
車輪駆動部を介して駆動させ、なおもアームを回転させ
ることにより、そのアームの側方にある車輪を降段させ
る。その車輪が下段の踏板に当接すると、その車輪の駆
動を再開し、アームを更に回転させて元の姿勢に戻す。
【0018】つまり、請求項2に記載の階段昇降車は、
請求項1に記載した、階段の自動昇降方法に基づいて、
階段を昇降される車両である。従い、請求項2に記載の
発明によれば、当該階段昇降車は、常に車輪若しくはア
ームを踏板の上面に当接させることにより支えられるた
め、階段昇降車が安定し、また階段の縁を損傷すること
もない。
【0019】また、昇段動作が終了される際及び降段動
作が開始される際にも、階段昇降車の姿勢が急激に変化
することがないので、介添えが必要ない。請求項3に記
載の発明においては、操舵手段によって、各車輪を少な
くとも90deg操舵させることができる。例えば、階
段を昇っている途中にて車両を停止させて、操舵手段に
よって全ての車輪を同方向に90deg操舵すると、車
両は階段の横方向に走行可能な状態となる。
【0020】従い、請求項3に記載の発明によれば、車
体の姿勢を変えることなく、階段上を横方向に走行させ
ることができる。このため、昇段経路上に障害物がある
ときには横方向に走行することによりこれを回避するこ
とができ、また、踊り場等で車両を迂回させる必要があ
る際にも、横方向に走行させて進行方向を変えるだけで
よい。
【0021】また、請求項4に記載の発明においては、
その各車輪及びその操舵手段が脚部によって支持され、
その脚部は、上部を支点として傾斜可能に本体に固定さ
れている。その揺動の方向は車両の前後方向に沿って行
なわれる。そして維持手段が、傾斜角検出手段によって
検出された車両の前後方向の傾斜角度に基づいて、脚部
を前後に揺動させ、操舵手段による操舵軸を常に鉛直方
向に維持する。また、アーム、蹴込検出手段、及び縁検
出手段は、脚部に固定されている。この結果、蹴込(ま
たは縁)を検出した時点において、脚部と蹴込(または
縁)との距離は階段の傾斜によらず常に一定となる。更
にこれにより、アームと蹴込(または縁)との距離も一
定となる。同じく維持手段が、操舵軸を常に鉛直方向に
維持することにより、階段昇降車の重心の位置は、階段
昇降車が平坦な箇所にあるときはもとより、階段上にお
いてその車体が傾いているときにも、前車輪と後車輪と
の水平方向の略中間にある。
【0022】従い、請求項4に記載の発明によれば、ア
ームと蹴込(または縁)との距離が一定となるため、ア
ームを回動させた際に、階段の踏板にアームが接する位
置及び接したときのアームの回動角度を一定にすること
ができる。また、当該階段昇降車の重心位置が、常に前
輪と後輪との水平方向の略中間に位置されるため、前
輪、後輪に平均して階段昇降車1の重量が掛かる。この
ため、当該階段昇降車は転倒しにくく、傾斜の急な階段
も昇降することができる。
【0023】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面と共に説明す
る。まず、図2は、本発明の一実施例である階段昇降車
1の外観を示す側面図である。なお、この図において
は、階段昇降車1の外装をなす略直方体状の筐体11
(2点鎖線にて示す)を取り除いた図となっている。
【0024】階段昇降車1は、1つの階段の上部と下部
とを往復して、工事用の機材等を運搬するものとし、階
段を昇るときには図の右方へ、降りるときは図の左方へ
走行するものとし、車体の下方に備えられた車輪13,
15にて走行面17上を移動可能にされている。車輪1
3,15は周知の4輪車の如く、車体の前後の両側面付
近に配置されており、後述の操舵機構を介して、夫々脚
ブロック19,21に支持されている。脚ブロック1
9,21は、夫々車両の前後に配置された、正面(図2
の右側面図)から見て略H型をした構造物であって、該
略H型の横棒部分に吊設された各操舵機構を介して、夫
々車輪13,15を支持しており、一方の縦棒部分に
は、アーム23,25及びその駆動機構を備えている。
【0025】アーム23,25は通常走行時においては
図2に示すように、その先端を走行面と逆方向に振り上
げた姿勢にされ、夫々の下端部23a,25aにある軸
回りに後述する駆動機構によって回転可能にされてい
る。この軸の方向は、階段昇降車1の左右方向に平行に
されている。また、アーム23,25はその上端部23
b,25bを図中の真下を向くように回転させたとき
に、車輪13,15の下端よりも更に下方に突出する長
さにされている。なお、この階段昇降車1が昇降する階
段は、その蹴込の高さが、車輪13,15の下端からア
ーム23,25の回転軸までの距離からアーム23,2
5の太さの1/2を引いた寸法よりも低いものが対象と
なる。
【0026】また、車体内側の両側面付近には、階段昇
降車1の前後方向に沿って固定リンク27が設けられて
おり、その両端は脚ブロック19,21の側面略中央に
軸支されている。この固定リンク27とは別に、車体に
固定されていない可動リンク29が、脚ブロック19,
21の側面上端部に軸支されている。つまり、両リンク
27,29は、脚ブロック19,21と平行リンク機構
をなし、脚ブロック19,21を常に互いに平行な姿勢
に維持する。また更に、両リンク27,29の前後方向
中央部には、駆動部支持フレーム31が掛け渡されてい
る。
【0027】この他、階段昇降車1には、車輪13,1
5の夫々について両輪をなす車輪の中間位置に、各車輪
から階段の蹴込までの距離を検出する蹴込センサ33,
35、各車輪が階段の踏板の縁に接近したことを検出す
る縁センサ37,39を備え、また、車両の前後には、
進行方向にある障害物を検出するための障害物センサ4
1、駆動部支持フレーム31には、階段昇降車1の前後
方向の傾斜角を検出する傾斜センサ(図示せず)が備え
られており、車体には、これらのセンサ類からの検出信
号を受けると共に、車輪13,15の駆動、操舵、アー
ム23,25の回転、駆動部支持フレーム31の揺動等
の指令を発する制御装置43を備えている。なお、蹴込
センサ33,35、縁センサ37,39、及び障害物セ
ンサ41は何れも、超音波を用いた距離センサとする。
【0028】制御装置43について、図3を用いて説明
する。即ち、制御装置43は、蹴込センサ33,35、
縁センサ37,39、障害物センサ41、傾斜センサ4
5からの検出信号を受け取る入力回路47と、車輪1
3,15を夫々駆動する車輪駆動部49,51、同じく
夫々操舵する操舵部53,55、アーム23及びアーム
25を夫々駆動するアーム駆動部57,59、駆動部支
持フレーム31を駆動するリンク駆動部61、に対する
駆動信号を出力する出力回路63と、入力回路47を介
して取得した前記各検出信号に基づいて車輪13,15
やアーム23,25等を制御するための制御プログラム
を実行するCPU65と、CPU65により実行される
制御プログラム及び駆動信号を生成するためのデータ等
が格納されているROM67と、CPU65が処理する
データを一時記憶するためのRAM69と、以上の各構
成を接続するバス71とを備える。
【0029】次に、脚ブロック19付近の構成につい
て、図4を用いて説明する。図4(a)は脚ブロック1
9付近の拡大図、図4(b)はその右側面図、図4
(c)は車輪13を90deg操舵したときの右側面図
である。なお、脚ブロック19と脚ブロック21とは全
く同じ構成であるため脚ブロック19で代表して説明す
るものとし、図4(b)及び図4(c)において図示さ
れていない右半分の部分については、脚ブロック19が
左右対称な形状を呈しているため省略している。また、
図4(a)においてアーム23は、その駆動部分を図示
するために図2のように真上ではなく、真下よりやや後
方に回転させた様子にて示し、図4(b)及び図4
(c)においては真下に位置させた様子にて示してい
る。
【0030】車輪13は、その駆動モータ73と共に、
車輪支持部75によって支持されており、車輪支持部7
5は、その上部が水平になるよう曲げられ、操舵ギア7
7a,77bを介して操舵用モータ79にて回転される
ようにされている。この操舵の軸は図4(a)〜(c)
に1点鎖線にて示されている軸Aであり、車輪13の接
地点を鉛直に貫通するようにされている。以上、車輪1
3の駆動及び操舵にかかる構成は、脚ブロック19の横
棒部分19aに設置されている。なお、駆動モータ73
及びそのドライバ(図示せず)が車輪駆動部49(図3
参照)に相当し、車輪支持部75、操舵ギア77a,7
7b、操舵用モータ79、及びそのドライバ(図示せ
ず)が操舵部59(図3参照)に相当する。
【0031】一方、アーム23は、アーム用モータ81
により、駆動ギア83a,83bを介して回転駆動され
る。そしてその回転によって上端部23bが図の真下に
向けられると、車輪13の下端より突出して、脚ブロッ
ク19、ひいては階段昇降車1の前部を走行面17から
浮き上がらせる。gはそのときの車輪13と走行面17
とのギャップを表す。駆動ギア83a,83b、アーム
用モータ81、及びそのドライバ(図示せず)がアーム
駆動部57(図3参照)に相当する。
【0032】なお、蹴込センサ33及び縁センサ37
は、脚ブロック19の横棒部分19aの、操舵用モータ
79ともう一方の車輪13用の図示しない操舵用モータ
との中間部分から吊下されるようにして設置されている
ものとし、車輪13の蹴込(または縁)への接近を車輪
13の左右両輪について各々検出するのではなく、共通
に検出するものとする。
【0033】次に、駆動部支持フレーム31付近の構成
について図5を用いて説明する。図5(a)は駆動部支
持フレーム31付近の拡大図であり、図5(b)はその
右側面図であり、図5(c)は駆動部支持フレーム31
が駆動されることによって、脚ブロック19,21が走
行面17に対し鉛直な姿勢に維持される様子を示す説明
図である。なお、図5(b)において図示されていない
右半分の部分については、駆動部支持フレーム31が左
右対称な形状を呈しているため省略している。
【0034】駆動部支持フレーム31は、脚ブロック1
9,21と同様、略H型をした部材であり、その横棒部
分31aに駆動部支持フレーム31自身を固定リンク2
7に対して揺動させる揺動モータ85を備えている。揺
動モータ85の回転軸に設けられた揺動ギア87は、可
動リンク29に固定された固定ギア89に係合されてお
り、揺動モータ85が駆動されることにより駆動部支持
フレーム31に対して可動リンク29を揺動させる。
【0035】この揺動は、駆動部支持フレーム31の横
棒部分31aに設けられた傾斜センサ45(図示せず)
の検出信号に応じて、駆動部支持フレーム31の縦棒部
分31bが鉛直方向を向くように揺動モータ85を駆動
することによりなされる。そして、後述する処理とは無
関係に、常時行なわれるものとする。即ち、図5(c)
に示すように、車体が、その前方が上がるように傾いて
いるときにはその傾斜を傾斜センサ45が検出し、可動
リンク29を駆動部支持フレーム31に対して同角度傾
くように駆動する。すると、駆動部支持フレーム31、
脚ブロック19,21、及び可動リンク29は、車体に
固定された固定リンク27と共に平行リンク機構をなし
ているため、可動リンク29は固定リンク27と平行を
保ったまま揺動され、一方、駆動部支持フレーム31の
縦棒部分31bは、同角度傾斜されて鉛直方向に維持さ
れる。
【0036】また、この平行リンク機構によって、脚ブ
ロック19,21が縦棒部分31bと常に平行に保たれ
るため、脚ブロック19,21も駆動部支持フレーム3
1と同角度傾斜される。即ち、階段昇降車1が階段を昇
降する際に車体が前後方向に傾いても、車輪13の操舵
軸(図4の軸A)及び車輪15の操舵軸が鉛直方向に維
持される。これら固定リンク27、可動リンク29、駆
動部支持フレーム31、揺動モータ85、揺動ギア8
7、及び固定ギア89は、操舵軸の鉛直維持機構ともい
うべきものであり、本発明の維持手段に相当する。ま
た、脚ブロック19,21は本発明の脚部に相当する。
【0037】以上のような構成からなる階段昇降車1が
階段を昇る際に、制御装置43が行なう昇段処理を、図
6のフローチャートに示し、この処理によって車輪13
が階段を昇る様子を図7に示す。この処理は、階段を昇
る前にオペレータの操作を受けて始動するものとする。
【0038】まずステップ(以下、単にSと記す)10
0において蹴込センサ33,35の検出結果を参照し、
夫々車輪13,15が蹴込に接近したか否かを判定す
る。接近していなければ当該ステップを繰り返し、蹴込
に接近するのを待つ。一方、接近していればS120に
進んで、車輪13,15を停止させる。図7においてこ
れを示すと、矢印B方向に進行していた車輪13が、蹴
込センサ33(図示せず)によって、蹴込91に接近し
たことを検出されると、車輪13が他の車輪と共に停止
される(図7(a))。
【0039】図6に戻り、全車輪が停止されると、蹴込
センサ33,35のうち、蹴込への接近を検知したセン
サに対応するアームのみを前方から下方へと回転駆動す
る(S140)。つまり、蹴込センサ33で前記接近が
検出された場合にはアーム23を、蹴込センサ35で前
記接近が検出された場合にはアーム25を、両方の蹴込
センサ33,35で検出された場合はアーム23,25
を双方とも駆動する。以下、蹴込センサ33のみで前記
接近が検出された場合を想定し、適宜図7を参照しつつ
説明を進める。即ちこの例では駆動されるアームは23
のみである。
【0040】次に、S150にて、アーム23が上の段
の踏板に着床したか否かを判定する。この判定は、階段
昇降車1では、アーム23の回転角度を用いて判定す
る。これを図7で示すと、アーム23が90deg強、
回転された時点にて、アーム23の上端部23bが、蹴
込91の上にある踏板93に着床する(図7(b))の
で、この角度だけ、アームが回転されたか否かを判定す
る。まだアーム23の回転角度がこの値に達していない
ときには、S150に戻ってこの判定を繰り返し、着床
するのを待つ。
【0041】アーム23が着床すると、S160に進
み、蹴込を検出したセンサではない側の車輪を駆動す
る。つまり、ここでは、蹴込を検出したセンサは33で
あるから、蹴込センサ33ではない側の車輪、即ち車輪
15を駆動する。こうして階段昇降車1は、アーム23
の回転力と車輪15の駆動力とにより前進され、特に階
段昇降車1の前部は、アーム23の回転力によって上段
へと上昇される。これにより車輪13も、これまで着床
していた踏板95から引き上げられ、上の段へと移動さ
れる(図7(c))。なお、アーム23は着床した後も
回転が続行され(図7(d))、その先端が下方に向け
られると、車輪13は踏板93から一旦浮き上がった状
態にされる(図7(e))。また、車輪15が駆動され
ることにより、蹴込センサ35が蹴込への接近を検知す
ることも起こりうる。この場合には、図示しない別処理
により、アーム25を回転させ、車輪15を接近した蹴
込の上にある段へと昇段させるものとする。
【0042】続いてS170に進み、S160にて駆動
した車輪ではない方の車輪が着床したか否かを判定す
る。つまり、車輪13が、上の踏板93に着床したか否
かを判定する。この判定は、S150における判定と同
様、アーム23の回転角度を用いて判定する。これを図
7で示すと、アーム23が180deg強、回転された
時点にて、車輪13が踏板93に着床する(図7
(f))ので、この角度だけ、アームが回転されたか否
かを判定する。まだ、アーム23の回転角度がこの値に
達していないときにはS170に戻ってこの判定を繰り
返し、着床するのを待つ。
【0043】こうして、車輪13が踏板93に着床する
と、S180にてその車輪(つまり車輪13)の駆動を
再開する。つまり、S120にて一旦走行が停止された
車輪13,15の内、車輪15はS160にて、車輪1
3はS180にて駆動を再開され、通常の駆動状態に戻
る。
【0044】続いてS190に進み、アーム23を上方
に振り上げた状態にてその回転を停止させると、当該昇
段処理の1サイクルが終了し(図7(g))、再びS1
00に戻る。以上、説明した昇段処理を繰り返すことに
より、階段昇降車1は昇段されて行く。
【0045】次に、階段昇降車1が階段を降りる際に、
制御装置43が行なう降段処理について図8のフローチ
ャートに示す。この処理は、昇段処理と同様に、階段を
降りる前にオペレータの操作を受けて始動するものとす
る。まずS200において縁センサ37,39の検出結
果を参照し、夫々車輪13,15が縁に接近したか否か
を判定する。接近していなければ当該ステップを繰り返
し、縁に接近するのを待つ。一方、接近していればS2
20に進んで、車輪13,15を停止させる。
【0046】全車輪が停止されると、縁センサ37,3
9のうち、縁への接近を検知したセンサに対応するアー
ムのみを前方から下方へと回転駆動する(S240)。
つまり、縁センサ37で前記接近が検出された場合には
アーム23を、縁センサ39で前記接近が検出された場
合にはアーム25を、両方の縁センサ37,39で検出
された場合はアーム23,25を双方とも駆動する。以
下、縁センサ37のみで前記接近が検出された場合を想
定し、説明を進める。即ちこの例では駆動されるアーム
は23のみである。
【0047】次にS250にて、アーム23が、車輪1
3がのっている踏板に着床したか否かを判定する。この
判定は、昇段処理のS150及びS170における判定
と同様、アーム23の回転角度を用いて判定する。ま
だ、アーム23が着床していないときにはS250に戻
ってこの判定を繰り返し、着床するのを待つ。
【0048】アーム23が着床すると、S260に進
み、縁を検出したセンサではない側の車輪を駆動する。
つまり、この例では縁を検出したセンサは37であるか
ら、縁センサ37ではない側の車輪、即ち車輪15を駆
動する。こうして階段昇降車1は、アーム23の回転力
と車輪15の駆動力とにより前進され、特に階段昇降車
1の前部は、アーム23の回転力によって下段へと下降
される。これにより車輪13も、これまで着床していた
踏板から下の段へと移動される。なお、アーム23は着
床した後も回転が続行される。また、車輪15が駆動さ
れることにより、縁センサ39が縁への接近を検知する
ことも起こりうる。この場合には、図示しない別処理に
より、アーム25を回転させ、車輪15を接近した縁の
下段へと下降させるものとする。
【0049】続いてS270に進み、S260にて駆動
した車輪ではない方の車輪(つまり車輪13)が着床し
たか否かを判定する。この判定は、S250における判
定と同様、アーム23の回転角度を用いて判定する。ま
だ、アーム23が着床していないときにはS270に戻
ってこの判定を繰り返し、着床するのを待つ。
【0050】こうして、車輪13が踏板に着床すると、
S280にてその車輪(つまり車輪13)の駆動を再開
する。つまり、S220にて一旦走行が停止された車輪
13,15の内、車輪15はS260にて、車輪13は
S280にて駆動を再開され、通常の駆動状態に戻る。
【0051】続いてS290に進み、アーム23を上方
に振り上げた状態にてその回転を停止させると、当該降
段処理の1サイクルが終了し、再びS200に戻って本
処理を繰り返すことにより、階段昇降車1は降段されて
行く。即ち、降段処理は、昇段処理が蹴込センサ33,
35の検出信号に基づいて行なう処理を、縁センサ3
7,39の検出信号に基づいて行なうものである。従っ
て、降段処理によってなされる車輪13周辺の挙動は、
図7に示した、昇段処理によって車輪13が段差を昇る
様子を、図7(g)→図7(f)→……と逆順に追った
ものになる。なお降段処理においては、階段昇降車1は
図7の左方向に進み、矢印B,Cも夫々逆方向にして辿
り、車輪13の停止、再駆動は前記記載に従うものとす
る。
【0052】次に、階段の上昇中(または下降中)に動
作を中断し、階段の横方向に進むための処理である障害
物回避処理について図9のフローチャートに示し、この
処理によって車輪が操舵される様子を図10に示す。こ
の処理は、障害物センサ41によって階段昇降車1の前
方に、前進の妨げとなる障害物が存在が検知されると起
動されるものとする。また、図10は階段昇降車1が階
段を上昇している途中にて当該処理が行なわれる様子を
示しており、図7と同様、車輪13が段差を昇る様子を
図10(a)〜図10(e)にて示しているが、車輪1
5においても同時に同じ操舵動作が行なわれる。
【0053】まず、S300にて障害物センサ41によ
って障害物が検出されると、続くS320にて全車輪の
駆動を停止し、各車輪を踏板上の所定位置に停止させ
る。この所定位置とは、階段昇降車1の車輪13,15
が夫々乗っている踏板上にて、後のS360にて行なわ
れる操舵動作を円滑に行なうための位置であり、ここで
は、蹴込センサ33,35の双方が蹴込を検出できず且
つ縁センサ37,39が共に縁を検出できない位置とす
る。
【0054】次に、S340にてアーム23,25を逆
方向に180degだけ回転させる。ここで「逆方向」
とは、アーム23(またはアーム25)を車輪13(ま
たは車輪15)が乗っている踏板の縁方向に振り降ろす
方向に回転させることを指し、前記昇段処理において
は、S140にて駆動するアーム23(若しくはアーム
25)を、前方から下方へと回転させていたことに対し
て逆回転となることから「逆方向」といっている。従
い、階段を降りている最中に当該処理が行なわれるとき
には、前記S240にてなされるアーム23(またはア
ーム25)の回動と同じ方向となる。この動作は図10
において図10(a),図10(b)に示すものであ
り、即ち、図10(a)のようにアーム23が矢印E方
向に回転され、その先端が踏板93方向を向くと、車輪
13を踏板93から浮き上がらせる。
【0055】こうしてアーム23,25が180deg
回転されると、続くS360にて、操舵用モータ79を
駆動して車輪13,15を90deg操舵する。前述し
たようにアーム23,25が180deg回動された状
態においては、車輪13,15は踏板93から浮き上が
っているため、容易に操舵することができる。この操舵
が完了した様子が図10(c)である。
【0056】次にS380にてアーム23,25を順方
向に180degだけ回転させる。ここで「順方向」と
は、S340で用いた「逆方向」と逆の方向という意味
であり、図10(c)のように踏板93方向に向けられ
たアーム23を踏板93の縁方向に振り上げる。この動
作は図10において図10(d),図10(e)に示す
ものであり、即ち、図10(d)のようにアーム23が
縁に向かって(矢印F方向に)回転され、車輪13を踏
板93に着地させ、そのままアーム23を真上まで振り
上げる。
【0057】以上S340〜S380の処理にて、階段
昇降車1の全ての走行車輪が昇降方向に対して垂直に向
けられ、横方向への走行が可能となると、続くS400
にて車輪13,15を再駆動して、階段昇降車1を所定
距離だけ横方向に移動させる。ここでは、図10の手前
から奥へ向かって階段昇降車1を50cm走行させるも
のとする。
【0058】そしてS420にて再び障害物センサ41
の検出信号を参照し、なおも障害物の存在が検出されて
いればS400に戻って全車輪を再び駆動して、階段昇
降車1を更に50cm走行させる。一方、障害物が検出
されなければ、つまりS400における走行によって障
害物が回避できたならばS440に進む。
【0059】S440〜S480は、S360にて操舵
された車輪13,15を元に戻し、再び昇降可能にする
処理である。まず、S440にてアーム23,25を逆
方向に180degだけ回転させて車輪13,15を踏
板93から浮き上がらせる。続くS460にて、操舵用
モータ79を駆動して車輪13,15を−90deg操
舵し、操舵角を0degにする。次にS480にてアー
ム23,25を順方向に180deg回転させ、アーム
23を真上まで振り上げると、当該処理をする前の状態
に戻り、再び階段を昇降できる状態となる。こうして障
害物回避処理は終了する。
【0060】以上のような構成を有し、前記昇段処理、
降段処理、及び障害物回避処理を行なうことにより階段
上を移動する階段昇降車1によれば、常に安定した状態
にて階段を昇降することができる。これは、主に以下の
4点による。まず、第1に、当該階段昇降車1の車重
は、常に車輪13,15若しくはアーム23,25を踏
板の上面に当接させることにより支える。これにより、
軌道式車両のように縁一箇所のみで車両の荷重を支える
ことがなく、常に2つの車輪13(若しくはアーム2
3),15(若しくはアーム25)の計4点で支えるた
め、階段昇降車1が安定し、また階段の縁を損傷するこ
ともない。第2に、昇段動作が終了される際及び降段動
作が終了される際にも、階段昇降車1の姿勢が急激に変
化することがない。即ち、階段昇降車1における昇段動
作(降段動作)は、常に、次に進む上(下)の踏板に車
輪を当接させることにより行なわれるので、階段昇降車
1の前部が宙に浮いて平床(階段)の上方に大きくせり
出すことがなく、徐々に階段昇降車1の姿勢を水平に戻
して(傾斜させて)昇段動作を終了(降段動作を開始)
する。従い、軌道式車両のように、昇段終了時や降段開
始時に車両自体に大きな衝撃が加わることがなく、また
介添えも必要ない。
【0061】第3に、蹴込センサ33,35が脚ブロッ
ク19,21に固定され、そしてこれら脚ブロック1
9,21の姿勢を、固定リンク27、可動リンク29等
からなる操舵軸の鉛直維持機構が、常に鉛直方向に保つ
ため、蹴込センサ33,35が蹴込を検知した時点にお
ける脚ブロック19,21と蹴込との距離が、階段の傾
斜によらず一定になる。そしてアーム23,25も脚ブ
ロック19,21に設けられているため、アーム23,
25と蹴込との距離も一定になり、昇段処理におけるア
ーム23,25の起動タイミング(S140)及び踏板
への当接位置(S150)を適切にすることができる。
特に、階段昇降車1においては、アーム23,25が着
床したか否かをアーム23,25の回転角度によって判
定している(S150)。このため、もし、脚ブロック
19,21の姿勢が鉛直に保たれていないと、階段昇降
車1の姿勢によって着床する時の回転角度が変化してし
まう。これに対し、階段昇降車1のように脚ブロック1
9,21の姿勢が鉛直に保たれることにより、常に一定
の回転角度にてアーム23,25は着床して、適切にS
150における判定を受けることができる。また、縁セ
ンサ37,39も脚ブロック19,21に固定されてい
るため、降段処理においても同様に、アーム23,25
の起動タイミング(S240)、踏板への当接位置、及
び着床の判定(S250)を適切に行なうことができ
る。
【0062】第4に、同じく操舵軸の鉛直維持機構が、
脚ブロック19,21(より詳しくは車輪13,15の
操舵軸)を常に鉛直方向に保つため、階段昇降車1の重
心位置が常に車輪13,15の水平方向のほぼ中間に位
置される。従い、車輪13(またはアーム23),15
(またはアーム25)に略平均して階段昇降車1の重量
が掛かる。揺動モータ85を動作させず、脚ブロック1
9,21が固定リンク27に対して揺動しない状態にし
て昇降を行なうと、重心位置が、下側にされた車輪の方
に寄り、車体が不安定な状態になる。これは、階段の傾
斜が急なほど顕著になる。これに対し、階段昇降車1に
おいては常に重心がほぼ中央にあるため、傾斜の急な階
段も安定して昇降できる。
【0063】こうして、安定した昇降動作が可能になる
だけでなく、階段上に予期せぬ障害物が置かれている場
合には、障害物回避処理によってこれを回避することが
できる。即ち、車輪13,15を90deg操舵するこ
とにより、車両の姿勢を変えることなく、横方向に移動
することができる。しかも、この操舵は、各車輪の接地
点を、鉛直に貫く軸A等の操舵軸の回りに行なわれるの
で、狭い階段上でも方向転換が可能となる。その上、ア
ーム23,25を踏板方向に振り降ろして車輪13,1
5を浮かせた状態で行なうために、操舵中も車体は安定
している。つまり、通常、車輪は踏板に一点にて接して
いる訳ではなく、所定の面積にて踏板に接している。こ
のため、たとえ車両が止まった状態で操舵しても、接触
箇所の一点を中心にして他の箇所が回転することによ
り、踏板に対して車輪を移動させ、ひいては車体を移動
させようとする。しかし、階段昇降車1によれば操舵時
には車輪が浮かされているため車体が移動されることが
ない。
【0064】以上、本発明の一実施例である階段昇降車
1について説明を行なってきたが、本発明は、前記の構
成に限定されるものでなく、様々な態様にて実施しうる
ものである。例えば、前記階段昇降車1は、4輪車とし
て構成したが、3輪車でも、或は6輪車でも良い。即
ち、少なくとも車両の前後方向に、合計3輪以上の車輪
を有していれば良い。
【0065】また、アームは階段昇降車1においては各
車輪について1本ずつ、計4本配設したが、1つの車輪
についてその両側方に設け、即ち2本ずつ備えても良
い。更に、階段昇降車1では、蹴込センサ33,35及
び縁センサ37,39を左右の車輪については兼用にし
て車輪13,15について各1個ずつ計2個設けたが、
1個の車輪について1個ずつ、計4個設けても良い。ま
た、階段昇降車1を前進後退自在に構成した場合には、
前進用のセンサと後退用のセンサとを夫々設けたり兼用
のセンサを設けたりしても良い。
【0066】また、蹴込センサ33,35、縁センサ3
7,39、及び障害物センサ41は、超音波を用いた距
離センサとしたが、これに代えて反射型ホトインタラプ
タ等の光学センサや、機械的な接触センサ等を用いても
良い。また更に、階段昇降車1が横方向に進むのは、障
害物センサにより障害物が検知されたときであったが、
これ以外のときでも、もちろん良い。例えば、階段昇降
車1の走行経路を予めRAM69内に格納しておき、そ
の経路により、階段上の所定地点まで昇ったら(或は降
りたら)横方向に設定された距離だけ移動し、その後上
昇(或は下降)を再開するようにしても良い。
【0067】なお、4つの車輪13,15を各々駆動及
び操舵する処理を新たに加えれば、平床上における走行
も自由に行なえるようになる。例えば、周知の4輪車の
如く右折左折すること及び障害物回避処理と同様に真横
に走行することはもちろん、任意角度の斜方向に走行す
ることもできる。
【0068】また、昇段処理及び降段処理は、前記のよ
うに繰り返し処理にて蹴込や縁への接近を検知し、起動
されるのではなくても良い。例えば階段昇降車1を、通
常は前進のみを行なうようにして、蹴込や縁を検知する
と割り込み処理によってS120(若しくはS220)
以降に相当する処理を始動するようにしても良い。
【0069】前記昇段処理の説明では、S120にて一
旦停止された車輪13は、S180まで停止されたまま
であったが、S150にてアーム23が着床した直後
に、駆動を再開しても良い。つまり、アーム23が着床
した直後には車輪13は踏板95(図7(c)参照)か
ら離脱されるが、この宙に浮いた状態において、回転さ
せておいても良い。同様のことが降段処理についても、
もちろん言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1に記載の本発明の構成を例示するブ
ロック図である。
【図2】 本発明の一実施例である階段昇降車を示す説
明図である。
【図3】 制御装置の構成を示す説明図である。
【図4】 車輪及びその付近の構成を示す説明図であ
る。
【図5】 垂直維持機構を示す説明図である。
【図6】 昇段処理を示すフローチャートである。
【図7】 昇段処理によって車輪が階段を昇る様子を示
す説明図である。
【図8】 降段処理を示すフローチャートである。
【図9】 障害物回避処理を示すフローチャートであ
る。
【図10】 障害物回避処理によって車輪が90deg
操舵される様子を示す説明図である。
【図11】 従来の階段昇降車の説明図である。
【符号の説明】
1…階段昇降車 11…筐体 13,
15…車輪 15…揺動モータ 19,21…脚ブロック 2
3,25…アーム 27…固定リンク 29…可動リンク 31…駆動
部支持フレーム 33,35…蹴込センサ 37,39…縁センサ 41…障害物センサ 43…制御装置 4
5…傾斜センサ 47…入力回路 49,51…車輪駆動部 53,55…操舵部 57,59…アーム駆動部 61…リンク駆動部 63…出力回路 65…CPU 67…ROM 69…RAM
71…バス 73…駆動モータ 79…操舵用モータ 81…アーム用モータ 85…揺動モータ 91…蹴込 93,95…踏板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平野 秀行 愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内 (72)発明者 村松 昌之 愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内 (72)発明者 大竹 憲 愛知県名古屋市中村区名駅南一丁目23番27 号 東海交通機械株式会社内 (72)発明者 三木 淳 愛知県名古屋市中村区名駅南一丁目23番27 号 東海交通機械株式会社内 (72)発明者 高井 勝己 神奈川県座間市入谷3丁目1649番地の2 アドバンス工業株式会社内 (72)発明者 酒井 康英 神奈川県座間市入谷3丁目1649番地の2 アドバンス工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前後に合計3個以上の車輪を備えた車両
    に、階段を自動で昇降させる方法であって、 車両の左右方向に沿った軸回りに回転可能で、しかも回
    転により先端が車両走行面側の下方に位置するときに
    は、該先端が前記各車輪の下端よりも更に下方に突出す
    る長さのアームを、車体の前記各車輪の側方に夫々設置
    し、 階段の踏板等の平坦な走行面を走行する時には、前記ア
    ームを上方に振り上げた状態で維持し、 階段を昇る時には、階段の蹴込に接近した前記各アーム
    を前方に振り降ろし、該蹴込の上方にある踏板の上面に
    該アームの先端部を当接させた後、なおも同方向に該ア
    ームを回転させることにより、当該車両を段差の上へと
    押し上げ、 階段を降りる時には、階段の踏板の縁に接近した前記各
    アームを前方から下方に振り降ろし、該アームの側方の
    車輪を踏板から浮かせた後、なおも同方向に該アームを
    回転させることにより該車輪と共に当該車両を前方にせ
    り出させつつ下降させることにより車両を該踏板の1段
    下の踏板へと移動させることを特徴とする、階段の自動
    昇降方法。
  2. 【請求項2】 階段を自動で昇降可能な階段昇降車であ
    って、 その車体下方の前後に合計3個以上備えられた車輪と、 該各車輪を夫々駆動する車輪駆動部と、 当該車両に一端が回動可能に固定される略棒状部材であ
    って、該回動の軸方向が当該車両の左右方向に平行で、
    且つ軸位置が前記各車輪の各回転軸に対して走行面と略
    逆方向にずれた箇所にされ、しかも該回動によって他端
    が走行面に向けられると該他端が各車輪の下端部より更
    に下方に突出する長さにされたアームと、 該各アームを、該アームの先端が走行面と略逆方向に向
    く角度に保持し、外部からの指令に応じて該アームを前
    記回動させるアーム駆動部と、 昇段時に、階段の蹴込に対する前記各車輪の接近を各々
    検出する蹴込検出手段と、 該蹴込検出手段の検出結果に基づいて、前記全車輪を停
    止させると共に、該検出結果に対応する前記車輪の側方
    に設けられた前記アームを、前記アーム駆動部を介し
    て、当該車両の進行方向に向けて振り降ろすように回転
    させ、前記アームの先端が上段の踏板に当接すると、前
    記蹴込検出手段による検出のなかった方の前記車輪を前
    記車輪駆動部を介して駆動させ、なおも前記アームを回
    転させることにより、前記アームの側方にある前記車輪
    を昇段させ、該車輪が階段の踏板に当接すると、該車輪
    の駆動を再開し、前記アームを更に回転させて元の姿勢
    に戻す昇段手段と、 降段時に、階段の踏板の縁に対する前記各車輪の接近を
    各々検出する縁検出手段と、 該縁検出手段の検出結果に基づいて、前記全車輪を停止
    させると共に、該検出結果に対応する前記車輪の側方に
    設けられた前記アームを、前記アーム駆動部を介して、
    当該車両の進行方向に向けて振り降ろすように回転さ
    せ、前記アームの先端が階段の踏板に当接すると、前記
    縁検出手段による検出のなかった方の前記車輪を前記車
    輪駆動部を介して駆動させ、なおも前記アームを回転さ
    せることにより、前記アームの側方にある前記車輪を降
    段させ、該車輪が下段の踏板に当接すると、該車輪の駆
    動を再開し、前記アームを更に回転させて元の姿勢に戻
    す降段手段と、 を備えたことを特徴とする階段昇降車。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の階段昇降車において、 前記各車輪を、当該車両を直進させる状態から少なくと
    も90deg操舵可能な操舵手段を更に備えたことを特
    徴とする階段昇降車。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の階段昇降車において、 当該車両の本体に、その上端を支点として前後方向に傾
    斜可能に固定され、前記各車輪をその各前記操舵手段と
    共に支持する脚部と、 水平面に対する当該車両の前後方向の傾斜角度を検出す
    る傾斜角検出手段と、 該傾斜角検出手段による検出結果に基づき、前記全脚部
    を前記揺動させ、前記全操舵手段の操舵軸の方向を鉛直
    方向に維持する維持手段と、 を更に備え、且つ前記アーム、前記蹴込検出手段、及び
    前記縁検出手段が、前記脚部に固定されていることを特
    徴とする階段昇降車。
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