JPH09220444A - 中空糸ろ過モジュール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 汎用性のある定形型のカートリッジフィルタ
ーを前提とし、中空糸膜の収納容器自体を変更すること
なく改良して更にエアースクラビング効果を向上させた
中空糸ろ過モジュールを提供する。 【解決手段】 中空糸膜１を収納する多孔収納容器２の
外面が一部の孔４を残して熱収縮性チューブ１０で覆わ
れているものであり、具体的には中央部でループ状に折
り返された中空糸膜１の開口端が、一カ所で多孔収納容
器２の一端に集束固定され、この集束固定部３近傍の孔
４と収納容器の底７に設けた穴５を残し、他の孔４が熱
収縮性チューブ１０で覆われて閉鎖されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、効率的にエアース
クラビングができるように気泡の通路を限定した限外ろ
過、精密ろ過などに使用される中空糸ろ過モジュールに
関する。

【０００２】

【従来の技術】ろ過面積が有利になるので、中空糸膜を
利用して全ろ過する場合には、中空糸膜の外側から内側
にろ過する外圧式のろ過方式が多く採用されている。ろ
過を続けると中空糸膜表面に除去された物質が蓄積し、
次第にろ過速度が低下する。

【０００３】蓄積した物質を膜表面から除去して再びろ
過能力を回復させるために、中空糸膜の外側に気泡を流
して中空糸膜が浸かっている液体を攪拌する（以下、エ
アースクラビングすると言う）方法（例えば、特開昭６
１−１５３１０４号公報、特開昭６１−２２２５０９号
公報、特開昭６１−２５４２０７号公報）、逆洗とエア
ースクラビングを併用する方法（特開昭６０−１９００
２号公報、特開昭６２−４４０８号公報）などが考案さ
れた。

【０００４】これらはいずれも優れた方法であり、ろ過
能力を効率的に回復し、ろ過寿命の大幅な延長に役立っ
ている。また、これらの方法に適した、中空糸膜を両端
で集束固定したモジュール及び中空糸膜を中央でループ
状に折り返して一端で集束固定したモジュールも考案さ
れた。

【０００５】一端で集束固定したモジュールでは、エア
ースクラビング中に中空糸膜が乱れないようにループ部
分を支持し、かつ気泡の通路も有する形状保持部材も考
案された（例えば、特開昭６０−２０６４１４号公報、
実開昭６０−１７１５１１号公報、実開昭６１−１５０
０２号公報など）。しかしながら、形状保持部材を用い
るとモジュール構造が複雑になるだけでなく、中空糸膜
の充填量がその分だけ減少せざるをえない欠点も生じ
る。

【０００６】一方、逆洗やエアースクラビングはできな
いが、比較的少量ろ過するためのモジュールとして、当
業者にはよく知られているように、古くから平面膜をプ
リーツ状に折り畳み、外径寸法が製造業者によらず共通
のデザインの構造体に収納した、いわゆる経済的な定形
型のカートリッジフィルターが多数使用されてきた。

【０００７】これら定形型のカートリッジフィルターと
互換性を有する、中空糸膜を組み込んだモジュールも本
発明者と同一人によって考案された（特開平２−２２７
１２５号公報、特開平６−１８２１６１号公報など）
が、これらはエアースクラビングに適した構造とは言え
ない。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】従来の定形型のカート
リッジフィルターには、前記のように逆洗やエアースク
ラビング機能がないが、中空糸膜は本来的に逆洗可能で
あるので中空糸膜型カートリッジフィルターにあって
は、基本的には逆洗時にフィルターが離脱しない構造
を、フィルターを装着するハウジングに持たせればよ
い。しかしながら、前記した従来の中空糸膜型カートリ
ッジフィルターでは、気泡が中空糸膜全体に均一に分散
せず、エアースクラビング効果は満足できるものではな
い。

【０００９】かかる問題点を改善すべく、形状保持部材
を設けなくとも中空糸膜束自身がその形状を保持し、か
つ気泡が中空糸膜全体に均一に分散するように中空糸膜
のループ部分に気泡の通路を構成した中空糸膜型カート
リッジフィルターが本発明者等によって開発された（特
願平７−２８５８４８号、特願平７−２８５８４９号参
照）。しかしながら、定形型のカートリッジフィルター
では中空糸膜の収納容器として多孔を有する円筒が使用
されているために中空糸膜束の外側を流れる気泡がこれ
らの孔から外に逃げるために必ずしもエアースクラビン
グ効果には適した構造ではない。

【００１０】そこで、前述の状況に鑑み、本発明が解決
しようとするところは、汎用性のある定形型のカートリ
ッジフィルターなどにあって、中空糸膜の収納容器自体
を変更することなく改良して更にエアースクラビング効
果を向上させた中空糸ろ過モジュールを提供する点にあ
る。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する
ために、本発明は、収納容器の周囲に設けられた多孔の
一部を閉鎖することにより、収納容器の底に設けた穴か
ら気泡を上昇させて中空糸膜をエアースクラビングして
いる間に、それに有効な気泡が周囲の孔から外側へ逃げ
ることを規制するのである。そして、収納容器の多孔の
一部を残して他の孔を閉鎖する手段として、収納容器に
外挿した熱収縮性チューブを熱収縮させて孔を覆うので
ある。

【００１２】

【発明の実施の形態】本発明は、中空糸膜を収納する多
孔収納容器の外面が一部の孔を残して熱収縮性チューブ
で覆われているものである。

【００１３】また、本発明は、中央部でループ状に折り
返された中空糸膜の開口端が、一カ所で多孔収納容器の
一端に集束固定され、この集束固定部近傍の孔と収納容
器の底に設けた穴を残し、他の孔が熱収縮性チューブで
覆われて閉鎖されているものである。

【００１４】ここで、前記収納容器のデザイン（形状、
大きさ及び構造）を定形型にすることによって本発明は
更に経済的に優れたものになる。

【００１５】

【実施例】次に、本発明を添付図面に示した実施例に基
づき更に詳しく説明する。図１は、本発明の一例を示す
定形型カートリッジフィルターとデザインが共通する中
空糸ろ過モジュールＭである。図中１は中空糸膜、２は
収納容器、３は集束固定部、４は孔、５は穴、６はろ過
液出口をそれぞれ示している。

【００１６】この中空糸ろ過モジュールＭは、中央部で
ループ状に折り返した多数の中空糸膜１を収納容器２の
内部に装填するとともに、該中空糸膜１の開口端を収納
容器２の一端にポッティング材にて集束固定し、この集
束固定部３の端面に前記中空糸膜１の開口端を露出させ
たものである。前記収納容器２は、円筒状のものであ
り、その周囲には多数の孔４，…が略全面に均一に形成
されており、また前記集束固定部３と反対側には中央部
に穴５を形成した底７を有するとともに、前記集束固定
部３の側の端部にはろ過液出口６を形成したヘッダー部
８を有し、該ヘッダー部８にはＯリング９が装着された
ものである。通常は、前記底７とヘッダー部８は、収納
容器２の多孔円筒部とは別体で成形し、熱溶着、超音波
融着、接着等によって互いに接続されている。

【００１７】そして、この種の従来の定形型カートリッ
ジフィルターで被処理液をろ過するには、被処理液を収
納容器２の全ての孔４，…及び穴５から内部に供給し、
中空糸膜１の外面から内面へろ過した後、中空糸膜１の
開口端から溢れ出たろ過液をろ過液出口６を通じて取り
出すのである。

【００１８】そこで、本発明の中空糸ろ過モジュールＭ
は、多数の孔を有する容器に中空糸膜を収納したフィル
ターを前提とし、例えば前述の定形型カートリッジフィ
ルターにあっては、中空糸膜１を収納した収納容器２の
外面を一部の孔４を残して熱収縮性チューブ１０で覆
い、他の孔４，…を閉鎖したものである。収納容器２の
外面を熱収縮性チューブ１０で覆う場合、収納容器２よ
りも内径寸法が若干大きい熱収縮性チューブ１０を、該
収納容器２に外挿した後、加熱して熱収縮性チューブ１
０を収縮させて密着させるのである。

【００１９】本発明の中空糸ろ過モジュールＭにおい
て、ろ過時は大部分の被処理液が穴５から中空糸膜１の
外面に供給され、中空糸膜１の外面から内面にろ過され
たろ過液は、集束固定部３の開口端から流れ出てろ過液
出口６から取り出される。該中空糸ろ過モジュールＭの
装着ハウジング（図示せず）にはＯリング９を介して装
着される。

【００２０】前記底７に形成した穴５は、エアースクラ
ビングのときには気泡の通路となり、底７に近い中空糸
膜１のループ状部分１Ａには直線状部分１Ｂと連通する
気泡の通路１１が形成されている。

【００２１】前記穴５から導入された気泡は、ループ状
部分１Ａに設けた上記の通路１１から中空糸膜１の束の
内部に分散されるが、一部はループ状部分１Ａの外側を
通って束の外側にも流れる。また、束の内部に分散した
気泡の一部も上昇中に束の外側に流れる。これらの気泡
は、熱収縮性チューブ１０で収納容器２の孔４，…が覆
われていない場合には上部の孔４に達するまでに途中の
孔４から収納容器２の外に出る。このような気泡はエア
ースクラビング効果をほとんど失う。この点を改善する
ために上部の一部の孔４を残して他の孔４は熱収縮性チ
ューブ１０で覆われているのである。

【００２２】熱収縮性チューブ１０は、収納容器２の外
に出る気泡を制限するために、中空糸膜１の束の内部に
分散した気泡が途中で束の外に出ることを制限するだけ
でなく、束の外を流れる気泡が束の外側に位置する中空
糸膜１を効率的にエアースクラビングする効果も与え
る。かくして定形型のカートリッジフィルターを熱収縮
性チューブ１０で覆うだけでエアースクラビング効果が
著しく改善される。

【００２３】以下の実施例は本発明を更に具体的に説明
するものであって、本発明を限定するものではない。

【００２４】（実施例１）長さが約７１ｃｍ、外径が７
０ｍｍで、幅約１５ｍｍ、長さ５ｍｍの矩形の孔４が、
円周上に８個、長尺方向に１０ｍｍ間隔で６９個並ん
だ、中空糸膜１の円筒（収納容器２の本体部）の外面
を、集束固定部３近傍の上部の孔４を２列だけ残してポ
リ塩化ビニル製の熱収縮性チューブ１０で覆った。

【００２５】この円筒の中に、ループ状に折り返した、
内、外径が５００μｍ及び８００μｍ、孔径が０．２μ
ｍのポリスルホン製中空糸膜１５００本を四つの束に小
分けして入れ、一端で集合して集束固定した後、ろ過液
の出口６を有するヘッダー部８を接続した。

【００２６】この有効面積が約５ｍ² の中空糸ろ過モジ
ュールＭ（カートリッジフィルター）を図２に示す、ろ
過装置（ハウジング）１００に装着し、図３に示す使用
方法にて活性汚泥処理水のろ過とエアーバブリングを繰
り返した。具体的なハウジングの形状やろ過、逆洗及び
エアーバブリング方法については前記の特願平７−２８
５８４９号に記載されているが、以下に説明する。

【００２７】このろ過装置１００は、図２に示すよう
に、中空糸ろ過モジュールＭを収納するろ過室１０１
と、ろ過液を受入れるろ過液室１０２と、被処理液をろ
過室１０１に導入する被処理液室１０３とを有し、ろ過
室１０１とろ過液室１０２を区画する仕切板１０４に設
けた装着穴１０５に本発明の中空糸ろ過モジュールＭが
Ｏリング９（図示せず）を介して装着されている。この
仕切板１０４には気泡の排出機構１０６及びその出口１
０７も配備されている。

【００２８】中空糸ろ過モジュールＭの底７（図３参
照）は、ろ過室１０１と被処理液室１０３とを区画する
固定板１０８に設けた固定穴１０９に、穴５と該固定穴
１０９とが連通するように装着されており、また該固定
板１０８には気泡の発生ノズル１１０と空気の導入口１
１１を備えている。また、固定板１０８には被処理液の
導入孔１１２が固定穴１０９の周囲であって前記収納容
器２の外側の空間に連通する位置に多数貫通している。

【００２９】前記ろ過室１０１を構成するハウジングの
主管１１３の両端はフランジ１１４になっており、ろ過
液側では仕切板１０４及びろ過液室１０２のフランジ１
１５とともにボルトで固定され、被処理液側では固定板
１０８及び被処理液室１０３のフランジ１１６とともに
ボルトで固定されている。

【００３０】中空糸ろ過モジュールＭは、上記のように
その両端で固定されているので、ろ過液室１０２を構成
する曲管の出口側フランジ１１７に設けた加圧空気の導
入口１１８からろ過液室１０２内のろ過液を加圧するこ
とによって、ろ過液を中空糸膜の内側から外側へ通過さ
せて逆洗が可能になっている。

【００３１】また、ろ過液室１０２を構成する曲管のフ
ランジ１１５と仕切板１０４とを外すことによって、容
易に中空糸ろ過モジュールＭの着脱ができる。更に、２
本以上のカートリッジフィルターを装着できるハウジン
グも同様にして製造することがもちろん可能である。

【００３２】図３は、このろ過装置１００の使用方法の
説明図である。図中符号２００は被処理液の入ったタン
ク、２０１はその攪拌機である。２０２は被処理液のポ
ンプ、２０３は加圧空気を発生させるコンプレッサーで
ある。２０４、２０５はそれぞれ逆洗液及び洗浄液タン
クである。２０６、２０７はそれぞれろ過液及び加圧空
気の流量計である。２０９、２１０はそれぞれ被処理液
及びろ過液の圧力計である。また、符号２１１〜２１７
はバルブをそれぞれ示している。

【００３３】ろ過操作では、バルブ２１４〜２１７を閉
じ、ハルブ２１２と２１３を開き、ポンプ２０２を起動
し、流量計２０６の設定値になるようにろ過速度をバル
ブ２１１で調整する。ろ過圧力は圧力計２０９と２１０
で測定する。

【００３４】逆洗操作では、バルブ２１２と２１３を閉
じ、２１４と２１６を開き、圧力が中空糸膜のバブルポ
イントを越えない空気でろ過液を加圧する。この間にろ
過液室１０２に溜まったろ過液が中空糸膜の内側から外
側へ流れる（図２参照）。

【００３５】エアースクラビング操作では、流量計２０
７の設定値になるようにバルブ２１５を開き、ノズル１
１０（図２参照）から発生させた気泡を、穴５（図１参
照）から中空糸膜１の束のループ状部分１Ａに送る。気
泡の一部はループ状部分１Ａの外縁に沿って中空糸膜１
の外縁に流れ、残りは通路１１を通って流れ込み、中空
糸膜１の束の内部を流れる。中空糸膜全体を揺動させ、
ろ過室１０１内の液体を攪拌しながら上昇した気泡は、
気泡の排出機構１０６、出口１０７（図２参照）を通
り、バルブ２１６から排出される。

【００３６】エアースクラビングが終了したら、バルブ
２１４と２１５を閉じ、バルブ２１７を開いてろ過室１
０１内の洗浄液を排出する。

【００３７】同様にしてろ過操作以下の操作を繰り返す
ことによって、中空糸膜のろ過機能を回復させながらろ
過を継続することができる。

【００３８】本発明による効果を確かめるために、１５
Ｌ／ｍｉｎのろ過速度で３０分間ろ過した後、約１Ｌの
ろ過液で逆洗してから１０ＮＬ／ｍｉｎの流量で３分間
空気をバブリングした。エアーバブリング後の液をハウ
ジングから廃棄してから再び上記の操作を連続して２週
間繰り返した。この間にろ過圧は約２０ＫＰａから１０
０ＫＰａまで上昇した。

【００３９】（比較例１）熱収縮性チューブで覆わなか
った以外、実施例１と同様な実験を行ったが、ろ過圧は
１０日間で１００ＫＰａに達した。

【００４０】

【発明の効果】以上にしてなる本発明の中空糸ろ過モジ
ュールによれば、定形型のカートリッジフィルターと同
じ形状、大きさ及び構造の収納容器を使用するにも係わ
らず、単に熱収縮性チューブで収納容器の周囲に設けら
れた多孔の一部を閉鎖することにより、エアースクラビ
ング効果が顕著に向上し、ろ過能力が回復することによ
ってろ過寿命が大幅に延びる。

【図面の簡単な説明】

【図１】定形型カートリッジフィルターをベースとした
本発明の中空糸ろ過モジュールの一例を一部破断して示
した正面図である。

【図２】本発明の中空糸ろ過モジュールを使用したろ過
装置の簡略断面図である。

【図３】図２のろ過装置の使用方法を示す説明用配管図
である。

【符号の説明】

Ｍ 中空糸ろ過モジュール １ 中空糸膜 １Ａ ループ状部分 １Ｂ 直線状部分 ２ 収納容器 ３ 集束固定部 ４ 孔 ５ 穴 ６ ろ過液出口 ７ 底 ８ ヘッダー部 ９ Ｏリング １０ 熱収縮性チューブ １１ 通路 １００ ろ過装置 １０１ ろ過室 １０２ ろ過液室 １０３ 被処理液室 １０４ 仕切板 １０５ 装着穴 １０６ 気泡の排出機構 １０７ 出口 １０８ 固定板 １０９ 固定穴 １１０ 気泡の発生ノズル １１１ 空気の導入口 １１２ 導入孔 １１３ 主管 １１４，１１５，１１６，１１７ フランジ １１８ 導入口

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中空糸膜を収納する多孔収納容器の外面
   が一部の孔を残して熱収縮性チューブで覆われているこ
   とを特徴とする中空糸ろ過モジュール。
2. 【請求項２】 中央部でループ状に折り返された中空糸
   膜の開口端が、一カ所で多孔収納容器の一端に集束固定
   され、この集束固定部近傍の孔と収納容器の底に設けた
   穴を残し、他の孔が熱収縮性チューブで覆われて閉鎖さ
   れている請求項１記載の中空糸ろ過モジュール。
3. 【請求項３】 前記収納容器のデザインが定形型のカー
   トリッジフィルターである請求項１又は２記載の中空糸
   ろ過モジュール。