JPH09209124A - 耐磨硬質膜とその製造法 - Google Patents

耐磨硬質膜とその製造法

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JPH09209124A
JPH09209124A JP2107896A JP2107896A JPH09209124A JP H09209124 A JPH09209124 A JP H09209124A JP 2107896 A JP2107896 A JP 2107896A JP 2107896 A JP2107896 A JP 2107896A JP H09209124 A JPH09209124 A JP H09209124A
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JP
Japan
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ions
ion implantation
tin
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tin film
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JP2107896A
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Inventor
Kazuhiko Oda
一彦 織田
Akira Nakayama
明 中山
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐磨耗性向上、長寿命化への要求に答える硬
質膜を製造する。 【解決手段】 本発明は、真空雰囲気中で基体1の表面
にTiN膜2を形成する工程と、イオンの加速電圧が20〜80
kVの範囲でイオンを注入する工程4とを交互に繰り返し
て硬質層3の全厚を0.05μm以上10μm以下で形成するも
のである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐磨耗性が要求され
る工具、金型、機械部品などの表面処理に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、工具、金型、機械部品などの耐磨
耗性を要求される部材の表面処理には、各種のPVD(Phy
sical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor De
position)法が適用されている。PVD法には、アーク式
イオンプレーティング法、ホロカソード型イオンプレー
ティング法、スパッタリング法、イオン注入蒸着法など
が、またCVD法には、熱CVD法、プラズマCVD法などの手
法があり、これらの手法によって被処理部材の基体表面
にTiN、TiCN、TiC、TiAlN、CrNなどの硬質のセラミック
スコーティング処理を施す方法がとられていた。そし
て、たとえば、(株)総合技術センター発行(昭和59年
5月)の「セラミックコーティング」p129〜p142に記述
されている通りである。
【0003】一方、半導体産業においては、不純物のド
ーピングを主目的とするイオン注入技術が開発され、工
業的に使用されている。このイオン注入技術は、金属材
料表面の機械特性の改善にも試みがなされており、硬さ
や靱性の改質に関する報告がなされている。(株)ティ
ー・アイ・シィ発行の「イオン・レーザーによる表面改
質・薄膜技術」p7〜p14に示されている通りである。ま
た、TiN膜に対するイオン注入については、特開平7-310
170号公報に示されるように、Alを注入して耐摩耗性を
向上させる例がある。従来のイオン注入による表面改質
の概念図を図2に示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】PVD法、CVD法による表
面処理を行なうと、未処理のものに比べ、数倍〜80倍程
度の寿命の向上が得られ、これらの処理は多くの分野で
工業的に盛んに用いられている。しかし、近年の強い合
理化の流れにともない、耐磨耗性向上、長寿命化への要
求は一層厳しくなる傾向にある。特に、新しい被加工材
の開発にともなう従来にない厳しい使用環境の出現、プ
ラントや航空宇宙分野など部品交換が困難な用途の拡大
により、従来の表面処理技術では対応しきれない要求が
増大してきており、より耐磨耗性の高い表面処理方法の
開発が強く望まれているのが現状である。
【0005】一方、イオン注入技術に関しても、金属材
料そのものより各種機械特性の向上にみられるが、TiN
をはじめとするPVD、CVDセラミックスコーティングに置
き変わるほどの効果は認められていない。TiNへのイオ
ン注入についても、特開平7-310170号公報記載のTiN膜
の表層部にAlを注入する例はあるが、改質されるのがあ
くまで表層部のみゆえ、寿命を大幅に向上させうるもの
ではない。上記従来の問題点に鑑み、現今の耐摩耗性向
上、長寿命化への高度な要求に応えることのできる表面
処理方法を呈示することを目的とする。
【0006】
【発明を解決するための手段】本発明は、被処理部材の
基体表面にTiN膜を形成する工程と、該基体表面にイオ
ンを注入する工程において、TiN膜を形成する工程と、
イオンを注入する工程とが、大気にさらされることな
く、真空雰囲気中で交互に繰り返される。すなわち同一
の真空中か、あるいは大気にさらされずに連続して搬送
される別々の真空中に設置される。注入されるイオンの
加速電圧は20〜80KVの範囲にあり、TiN膜の形成とイオ
ンの注入とを交互に繰り返すことで形成された改質層の
厚さが0.05μm以上10μm以下としたものである。
【0007】そして注入するイオンの全注入量をM(ion
s/cm2)、前記改質層の全厚をd(μm)とすると、M/d
が1×1017以上1×1019以下である。注入イオンが、B、A
l、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの中から選
ばれた1種以上のものである。なお、前記TiN膜の形成
には公知のPVD法あるいはCVD法によったものである。
【0008】
【発明の実施の態様】本発明の表面処理方法は、被処理
部材の基体表面にTiNを合成する工程と、そのTiN膜に対
してイオンを注入する工程とを備え、これら二つの工程
は、基体表面が大気にさらされることなく、交互に繰り
返されるものとなっている。図1に本発明の原理を示
す。1は被処理部材の基体、2はTiN膜、3はTiN改質
層、4はイオン注入を示している。なお、TiN膜を形成
する工程とイオンを注入する工程は、同一の真空中に設
置されていてもよいし、大気にさらされずに連続して搬
送される別々の真空中に設置されていてもよい。
【0009】大気にさらさないで連続処理を行なうの
は、酸素や水分など不純物の取り込みを押さえる目的
と、真空引きの時間を無くして処理能力を上げ、処理コ
ストを下げることを目的とする。この表面処理方法によ
れば、被処理部材の耐摩耗性を向上することができる。
TiN膜へのイオン注入で耐摩耗性が向上する要因として
は、次の3点が考えられる。まず第1に、イオン注入に
より圧縮応力が導入され、耐摩耗性が向上することが考
えられる。一般に材料は圧縮応力が導入されると耐摩耗
性が向上する傾向にあり、TiNへのイオン注入によって
も同様の効果が得られると推定される。
【0010】第2に、注入元素の窒化物形成が考えられ
る。注入によりTiNの一部はアモルファスになり、結合
が不安定になる。この結合が不安定となって、分離した
Nと注入された元素の一部とが再結合して高硬度の窒化
物をつくり耐摩耗性が向上するというものである。第3
に、注入元素による潤滑効果促進が考えられる。たとえ
ばCrを注入した場合に出来るCrNやCr2Nは、本来潤滑性
に優れた材料である。また、注入後金属の状態で存在す
る注入元素は、硬度がTiNより小さく、自己潤滑材とし
て機能すると考えられる。
【0011】さて、TiN膜の合成には、イオンプレーテ
ィング法、スパッタリング法、イオン注入蒸着法などの
公知の物理気相成長法(PVD法と称されることが多
い。)、またはプラズマCVD法、熱CVD法などの公知化学
気相成長法(CVD法と称されることが多い。)を用いて
形成するものとする。ここでイオン注入蒸着法は、イオ
ンの照射と金属元素の蒸着を同時に行う手法のことを指
し、本発明のTiN膜の合成後に注入を行う手法とは異な
るものである。
【0012】一方、注入するイオンの加速電圧は、20kV
以上80kV以下の範囲が望ましい。20kV以下の加速では、
エネルギーが低く、注入よりスパッタリングの効果が顕
著となる。80kV以上の加速では、十分に改質が可能であ
るが、イオン源の耐電圧の問題から設備費が高価とな
る。よって、注入効果のある加速領域でイオン源が比較
的安価なもので構成できる、20kV以上80kV以下の加速電
圧が適当である。
【0013】TiN膜の合成とイオン注入とを繰り返すこ
とにより改質される層の厚さは、0.05μm以上10μm以下
とする。0.05μmより改質層が薄いと耐摩耗性の効果が
ほとんど現れず、10μm以上の改質層の厚さとなると処
理コストが高くなるためである。改質層の厚さは用途に
より選択すればよい。なお、改質されていないTiN膜の
上に注入改質されたTiN膜が組み合わされていてもよい
しこの逆でもよい。また注入量が膜厚方向に変化する傾
斜組成であってもよい。従って、生成される全ての膜が
改質層となることも多い。本発明で形成される改質層の
全厚は、ほとんどの場合耐磨硬質膜の全厚に該当するこ
とにもなる。
【0014】イオン注入により改質される改質層へのイ
オンの全注入量をM(ions/cm2)、改質層の厚さをdμm
とは、M/dが1×1017以上1×1019以下の範囲であるもの
とする。M/dが1×1017より少ないと、注入の効果がほ
とんど得られない。M/dが1×1019×d ions/cm2より多
くなると、処理コストが上がり、採算上の合理性がなく
なる。また注入量が多くなり過ぎると、TiNの結合を破
壊し、アモルファス成分が増加してかえって耐摩耗性が
低下することも予想される。注入するイオンは、B、A
l、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wなどの金属
イオンが有効である。
【0015】
【実施例】
(実施例1) 超硬合金基材上に、イオンプレーティン
グ法でTiNを合成し、これにCrイオンを各種エネルギー
で注入するというサイクルを繰り返し、設定膜厚1μmの
改質層を形成した。比較のため、超硬合金基材上に、同
じくイオンプレーティング法でTiNを1μmの膜厚で合成
したものを作成した。次に、これらの処理品に対し、ピ
ン・オン・ディスク試験で磨耗深さを調べた。ただし、
相手材(ピン)は窒化硅素燒結体、荷重1N、回転数500r
pm、回転半径1mm、回転回数2000回とした。加速電圧と
磨耗深さとの関係を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】未注入TiN、および加速電圧10kVでCr注入
したTiNに比べ、加速電圧20kV以上でCr注入したTiNは磨
耗量が低減していることがわかる。なお、加速電圧10kV
でCr注入したTiNが、設定膜厚1μmに対して実際の膜厚
は0.5μmとなっているのは、スパッタリングによるエッ
チングが生じて膜厚が薄くなっているものと云える。
【0018】(実施例2) 実施例1と同様の方法で、
Crイオンの注入量を変えたサンプルを作成した。同じく
実施例1と同様の方法でピン・オン・ディスク試験を行
ない、磨耗量を比較した。注入量と磨耗深さとの関係結
果を表2に示す。全注入量が1×1017ions/cm2以上で、
磨耗量が低減している。しかし、1×1019ions/cm2を越
えると、また磨耗量が増加する傾向が見られる。
【0019】
【表2】
【0020】(実施例3) 実施例1と同様の方法で、
注入イオンを変えてサンプルを作成した。なお、全注入
量は1×1018ions/cm2とした。そして同じく実施例1と
同様の方法でピン・オン・ディスク試験を行ない、磨耗
量を比較した。注入元素と磨耗深さとの関係結果を表3
に示す。いずれの注入元素の場合でも、未注入に比較し
て磨耗量は低減されることが分かる。
【0021】
【表3】
【0022】(実施例4) 超硬合金チップにイオンプ
レーティング法によりTiNを0.04μmの膜厚で生成し、
これに加速電圧80kVでCrイオンを2×1016ion/cm2
入した。この工程を50サイクル繰り返し、切削工具に付
される通常の厚さである約2μmの厚さのTiN改質層を形
成した。比較のため、同じく超硬合金チップにイオンプ
レーティング法によりTiNを2μmの膜厚で生成したもの
を準備した。これら2種類のチップで被削材としてステ
ンレス304を用いた通常の切削条件にて切削テストを行
なったところ、Crイオン注入TiNは未注入TiNに比べて超
硬合金チップ交換時間が約2倍に伸び、従って約2倍の
寿命を得ることができた。
【0023】
【発明の効果】本発明の表面処理方法を適用することに
より、従来のTiN膜の耐摩耗性をさらに向上させること
ができ、その結果、一般の工具、金型、機械部品のみな
らず、部品交換の困難なプラント、航空宇宙関係への展
開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】TiN膜とイオン注入改質層の繰り返し処理を示
す模式図である。
【図2】従来のイオン注入による表面改質を示す模式図
である。
【符号の説明】
1・・・被処理部材の基体 2・・・TiN膜 3・・・TiN膜改質層 4・・・イオン注入

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空雰囲気中で、基体表面にTiN膜を形
    成する工程と、イオンの加速電圧が20〜80kVの範囲でイ
    オンを注入する工程とを交互に繰り返して、改質層の全
    厚を0.05μm以上10μm以下で形成することを特徴とする
    耐磨硬質膜の製造法。
  2. 【請求項2】 注入される前記イオンの全注入量をM(i
    ons/cm2)、前記改質層の全厚をd(μm)とすると、M/
    dが1×1017以上1×1019以下であることを特徴とする請
    求項1記載の耐磨硬質膜の製造法。
  3. 【請求項3】 前記注入イオンが、B、Al、Si、Ti、V、
    Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの中から選ばれた少なくと
    も1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項
    2に記載の耐磨硬質膜の製造法。
  4. 【請求項4】 TiN膜を形成するに際し、物理気相成長
    法あるいは化学気相成長法を使用した請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載の耐磨硬質膜の製造法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製
    造法により製造された耐磨硬質膜。
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