JPH09167534A - 真空遮断器用接点部材およびその製造方法 - Google Patents

真空遮断器用接点部材およびその製造方法

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JPH09167534A
JPH09167534A JP7347570A JP34757095A JPH09167534A JP H09167534 A JPH09167534 A JP H09167534A JP 7347570 A JP7347570 A JP 7347570A JP 34757095 A JP34757095 A JP 34757095A JP H09167534 A JPH09167534 A JP H09167534A
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powder
copper
chromium
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JP7347570A
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English (en)
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Akihisa Nitta
晃久 新田
Yoshiko Minami
淑子 南
Kunpei Kobayashi
薫平 小林
Hiromichi Horie
宏道 堀江
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】接点部材を構成する銅マトリックス中のクロム
の均一分散性を向上させ、真空遮断器の遮断性能および
耐圧性能のばらつきを低減でき、真空遮断器の信頼性を
向上させることが可能な真空遮断器用接点部材の製造方
法を提供する。 【解決手段】耐弧成分としてのクロム粉末と高導電成分
としての銅粉末とを混合して原料混合体を調製する工程
と,上記原料混合体を成形して銅−クロム成形体を形成
する工程と,上記銅−クロム成形体を非酸化性雰囲気中
で焼成する工程とを備え、上記原料混合体を構成する銅
粉末の平均粒径がクロム粉末の平均粒径の1/20〜1
/3であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は真空遮断器用接点部
材の製造方法に係り、特に銅(Cu)マトリックス中の
クロム(Cr)の均一分散性を向上させ、真空遮断器の
遮断性能および耐圧性能のばらつきを低減することがで
き、真空遮断器の信頼性を向上させることが可能な真空
遮断器用接点部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】遮断器は平常状態の電路を開閉したり、
接地事故や短絡事故などの異常時に,故障状態を検知す
る過電流継電器などと組み合わされて、自動的に瞬時に
電路を遮断するために、電力設備,変電所内機器,高速
鉄道車輌等に広く使用されている。特に真空遮断器は、
10-7Torr程度の高真空に維持した容器(真空バルブ)
内に対向配置した1対の接点部材を開閉することによ
り、電路の開閉を行うものである。
【0003】図6は一般的な真空遮断器の構造例を示す
断面図である。図6において接点の開閉動作が行なわれ
る遮断室1は、絶縁材料から成り略円筒状に形成された
絶縁容器2と,この絶縁容器2の上下端に封止金属3
a,3bを介して設けた金属製の蓋体4a,4bとによ
って区画形成され真空気密に構成されている。遮断室1
内には軸方向に対向するように1対の導電棒5,6が配
置され、その各導電棒5,6の対向する端部に、一対の
電極7,8が取付けられている。図においては上部側の
電極7を固定電極とする一方、下部側の電極8を可動電
極としている。また可動電極8の導電棒6には、伸縮自
在のベローズ9が装着されており、遮断室1内を真空気
密に保持した状態で、可動電極8の軸方向における往復
動を可能にしている。このベローズ9の上部には金属製
のアークシールド10が設けられており、このアークシ
ールド10によってベローズ9がアーク蒸気によって覆
われることを防止している。
【0004】また遮断室1内には、対向する一対の電極
7,8を覆うように金属製のアークシールド11が配設
されており、このアークシールド11によって絶縁容器
2がアーク蒸気によって覆われることが防止される。
【0005】また図7に拡大して示すように、電極8は
導電棒6の端部に形成されるろう付け部12に加熱接合
により固定されるか、または、かしめ加工によって圧着
接続される。接点部材13aは電極8の端面中央部にろ
う材14を介して一体に固着されている。なお、図6に
示す固定側接点部材13bも同様に、固定電極7の端面
にろう材を介して一体に接合されている。
【0006】上記構成の真空遮断器によれば、高真空中
における高い絶縁耐力を利用できるため、対向する接点
部材の開閉ストロークを短くできる特徴を有している。
【0007】上記接点部材としては、高頻度にわたる接
点の開閉時に発生するアークによって溶着しないように
耐アーク性(耐弧性)や耐溶着性が必須となる一方、低
接触抵抗性を維持するために高い導電特性を有すること
が必須の要件とされる。具体的な接点構成材料として
は、例えば、銀系材料,銀−銅系材料,銅−タングステ
ン系材料,銅−クロム系材料などが使用されている。特
に銅−タングステン系接点材料は導電性に優れている一
方、銅−クロム系接点材料は耐電圧特性に優れているた
め、特に高出力用電気機器の接点材料として普及してい
る。
【0008】上記接点材料のうち、特に高出力用機器の
接点材料として好適な銅−クロム系接点材料は、例えば
クロム粉と銅粉との混合体を粉末冶金法によって焼結体
として形成されたり、多孔質のクロム仮焼体に銅を溶浸
させた溶浸材として形成されたものや溶解法によって溶
製材として形成されたものが使用されている。
【0009】特に粉末冶金法においては、最終製品に近
い形状、いわゆるニアネットシェープに形成することが
可能であり、原料コストを低減できる利点がある上に、
銅成分およびクロム成分の組成比の配合精度を高くでき
るという長所がある。その反面、粉末冶金法において
は、他の溶解法や溶浸法のように銅成分の内部自己拡散
がほとんど生じないため、銅マトリックス中にクロム成
分が均一に分散した接点部材を得るためには、圧粉体に
おける各成分の均一分散性および成形機の金型へフィー
ドする原料混合粉の分散性を良好にする工夫が不可欠で
ある。
【0010】従来、上記各成分の均一分散化を図る混合
法として、一般に機械的混合法が広く用いられている。
また各成分の分散性の向上を目的として、特開昭60−
100320号公報他には、クロム粉末表面を電気めっ
き法等を使用して銅を被覆する方法が開示されている。
さらに特開平5−101749号公報他には、アトマイ
ズ法等によって調製した銅−クロム合金粉末を利用する
方法が開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
機械的混合法においては、クロム粉末の凝集を根本的に
解決する方法は未だに見出されておらず、銅マトリック
ス中にクロムを均一に分散させた組織が得られにくく、
さらにクロム結晶粒同士が凝集した組織が形成され易い
ため、種々の問題点が発生していた。すなわち、導電性
や熱伝導性が銅と比べて大きく劣るクロムが接点部材内
で偏在している場合、接点部材内において局所的に導電
性および熱伝導性が著しく異なる領域が生じ、発弧の度
に接点としての電気的特性が大幅に異なってくるため、
この接点部材を用いた真空遮断器の遮断性能および耐圧
性能のばらつきが大きくなる問題点があった。
【0012】また銅粉末およびクロム粉末のように粉末
形状や見掛け密度の差異が大きく、流動性が大きく異な
る2種の金属粉末を取り扱う場合、仮に良好な分散状態
を有する原料混合体が、一旦得られたとしても、その後
工程においてプレス金型に原料混合体をフィードする際
に、再分離が生じ易く、最終的な接点部材としては、不
均一な分散状態を有するものしか得られないという問題
点があった。
【0013】さらに、上記クロム粉末表面に、銅めっき
層を被覆する方法やアトマイズ法によって銅−クロム合
金粉末を形成する方法においては、厳格な純度管理が要
求される接点部材の製造に適用する場合には、特殊仕様
を有する高価な製造設備が必要となり、一般的に経済的
な製造方法とはならない上に、量産性も劣る難点があ
る。このように従来の構造方法においては、量産化に容
易に対応することが困難である上に、銅マトリックス中
にクロムが均一に分散した接点部材を安価な方法で製造
することは非常に困難であった。
【0014】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであり、接点部材を構成する銅マトリックス中の
クロムの均一分散性を向上させ、真空遮断器の遮断性能
および耐圧性能のばらつきを低減でき、真空遮断器の信
頼性を向上させることが可能な真空遮断器用接点部材の
製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者らは接点部材の原料となる原料混合体にお
ける銅粉末とクロム粉末との平均粒径の比率に着目する
とともに、原料粉末混合法としてのボールミル法につい
てあらためて検討し、接点部材の特性改善に資する要素
について鋭意研究を行った結果、以下のような知見を得
た。
【0016】すなわちボールミル法は、一般に混合容器
(ポット)と混合粉砕媒体としてのボールとから成り、
被混合物をボールとともにポット内に収容した状態で所
定時間回転することにより、所定の粒径や分散性を有す
る混合物を形成する方法であり、装置構成が簡素であ
り、メンテナンスも比較的に容易であることに加えて、
大型化も可能であるため、量産化に対応できる粉末の混
合方法として広く普及している。
【0017】しかしながら、上記の通り、形状差や密度
差が顕著な銅粉とクロム粉を混合する場合には、クロム
粉末の凝集や銅粉とクロム粉との流動性の相違に起因す
る充填性の悪化が起こる。すなわち、プレス成形機の金
型に原料混合体を充填(フィード)する際に再分離を起
してしまい、クロム成分が均一に分散した接点部材を得
ることは困難であった。
【0018】本発明者らは、混合操作時に粉体に与える
粉砕エネルギーの大小によって各粉末成分の分散性が大
きく変化することを発見し、特に粉砕エネルギーを調整
して原料粉末のボールミル混合を実施し、クロム粉末を
取り囲むようにクロム表面上に所定の平均粒径を有する
銅粉末を付着させることにより、各成分粉末の均一な分
散状態が初めて得られるという知見を得た。すなわち銅
粉末の平均粒径が、クロム粉末の平均粒径の1/20〜
1/3の範囲、さらに好ましくは1/10〜1/5の範
囲になるような粉砕エネルギーを付与することにより、
両成分粉末が均一に分散した原料混合体が得られたので
ある。本発明は上記知見に基づいて完成されたものであ
る。
【0019】すなわち本発明に係る真空遮断器用接点部
材の製造方法は、耐弧成分としてのクロム粉末と高導電
成分としての銅粉末とを混合して原料混合体を調製する
工程と,上記原料混合体を成形して銅−クロム成形体を
形成する工程と,上記銅−クロム成形体を非酸化性雰囲
気中で焼成する工程とを備え、上記原料混合体を構成す
る銅粉末の平均粒径がクロム粉末の平均粒径の1/20
〜1/3であることを特徴とする。なお原料混合体を構
成する銅粉末の平均粒径をクロム粉末の平均粒径の1/
10〜1/5に設定することがさらに好ましい。
【0020】さらに銅粉末は電解法またはアトマイズ法
で製造されたものを使用するとよい。また原料混合粉は
ボールミル混合法によって調製し、このボールミル混合
法による原料混合体の調製工程において、樹脂製のポッ
トおよびボールを使用するとよい。さらに原料混合体の
クロム粉末含有量を20〜80重量%の範囲に設定する
とよい。
【0021】また本発明に係る真空遮断器用接点部材
は、耐弧成分としてのクロム粉末と平均粒径がクロム粉
末の平均粒径の1/20〜1/3である高導電成分とし
ての銅粉末とから成る銅−クロム成形体を非酸化性雰囲
気中で焼成して成ることを特徴とする。
【0022】すなわち本発明が指向する銅−クロム系接
点部材は、銅粉末の平均粒径とクロム粉末の平均粒径と
の比率が所定範囲となるように処理して原料混合体を調
製した後に、粉末冶金法の処理手順に従って原料混合体
から形成された成形体を非酸化性雰囲気中で焼結して製
造される。
【0023】ここで耐弧成分としてのクロムは、耐アー
ク性および耐溶着性に優れ、接点の長寿命化を図るため
の成分であり、20〜80重量%の範囲で含有される。
含有量が20重量%未満においては、耐弧性が低下して
接点の長寿命化が困難である。一方、含有量が80重量
%を超える場合には、後述する高導電成分としての銅の
含有量の相対的低下を招き、接触抵抗の増大により接点
としての通電機能が低下してしまう。
【0024】また高導電成分としての銅は高い導電率を
有し、接点の接触抵抗値を下げるために上記クロム成分
を除く残余成分として80〜20重量%(wt%)含有
される。銅含有量が20重量%未満の場合には導電性が
低下し接触抵抗が増大し接点材料としての機能が低下す
る。一方、含有量が80重量%を超える場合は、上記耐
弧成分の含有量が相対的に低下し接点開閉動作時に発生
するアーク(電弧)によって接点が溶着し易くなり耐消
耗性が低下してしまう。
【0025】ここで上記電解法によって製造された銅粉
末(電解銅粉末)は、純度が良好であり、一般に高純度
材としての特性が要求される接点部材には好適な銅粉末
材料である。この電解銅粉末は、図1に示すように、粒
径が揃った微粉末が無数に集合したデンドライト状の組
織形態を有している。この電解銅粉末に所定のエネルギ
ーをボールミルで与えながらクロム粉末と混合すること
により、デンドライト状の組織が微粉末状に解砕される
と同時に、銅の延性を利用して、この微粉末状態の銅に
弱い結合力を発揮させ、クロム粉末表面を覆うように付
着させることができる。ここで上記所定のエネルギーと
は、電解銅粉末を微細に解砕できるエネルギーよりも大
きく、かつ解砕した微粉末を凝集・粗大化させたり、ク
ロム粉末をも粉砕してしまうエネルギーよりも小さいエ
ネルギーである。このエネルギーの大きさは、ボールミ
ル装置を構成するポットおよびボールの材質,ポットの
回転速度,回転時間,ボール径等を適宜変えることによ
って調整でき、原料混合体中の銅粉末の粒度や形態等を
勘案して最適化される。
【0026】上記混合操作時に粉体に付与するエネルギ
ーが過少の場合には、良好な分散性が得られない。一
方、SUS(ステンレス)製のポットやボールを使用し
た場合などエネルギーが過大な場合には、その衝撃力に
よってクロム粉末まで粉砕されることにより、2次的な
クロム粉末の凝集がさらに進行し、いずれにしても、良
好な均一分散性を有する原料混合体が得られない。特に
粉体に適度な衝撃力(エネルルギー)を与える構成例と
して、ナイロンや四沸化エチレンなどの樹脂材で形成し
たポットおよびボール、または上記樹脂材で内表面をコ
ーティングしたポットや外表面を樹脂コーティングした
ボールを例示することができる。
【0027】また本発明方法で使用する銅粉末として、
アトマイズ法で製造した銅粉末(アトマイズ銅粉末)を
使用してもよい。このアトマイズ銅粉末の平均粒径は、
クロム粉末の平均粒径の1/20〜1/3の範囲、さら
に好ましくは1/10〜1/5の範囲に設定される。混
合操作後における銅粉末の平均粒径がクロム粉末の平均
粒径の1/3を超えるように粗大となる場合には、クロ
ム粉末表面に銅粉末を均一に付着配置することが困難に
なる一方、1/20未満の微細粉となる場合には、銅粉
末の再凝集が起こり易くなり、いずれにしても各成分が
均一に分散した状態が得られにくくなる。
【0028】原料混合体の調製工程において、上記アト
マイズ銅粉末はボールミルによって所定のエネルギー
(衝撃力)を与えながらクロム粉末と混合される。上記
所定のエネルギーとは、電解銅粉末の場合と同様に、銅
の延性を利用してアトマイズ銅粉末をクロム粉末表面上
に弱い結合力で付着させることが可能なエネルギーより
も大きく,かつアトマイズ銅粉末を凝集・粗大化させた
り、クロム粉末をも粉砕するエネルギーよりも小さいエ
ネルギーに設定される。このエネルギーの大きさは、ボ
ールミルのポット材質,回転速度,回転時間,ボール径
等を変えることにより調整でき、原料混合体中の銅粉末
の粒度・形態を勘案して最適化される。
【0029】上記混合工程によってクロム粉末の粒子間
に微細な銅の解砕粉末が入り込み、クロム粉末同士の凝
集が起らず、均一な組成の原料混合体が得られる。この
原料混合体を成形機の金型に充填(フィード)する際に
おいても、クロム粉末の各粒子の周囲表面に微細な銅の
解砕粉末が付着したり、あるいはまとわり付くように均
一に付着しているため、銅粉末とクロム粉末との再分離
が効果的に防止できる。
【0030】なおボールミルで用いるポットおよびボー
ルの材質は、上記の混合時に付与するエネルギーを最適
化するためと、混合時における装置部材からの不純物の
混入を防止する観点からナイロンや四沸化エチレンなど
の樹脂を採用することが望ましい。すなわちポットやボ
ールを樹脂で形成した場合、仮に樹脂成分が原料混合体
中に不純物として混入しても、後工程である焼結工程に
おいてそれらの樹脂成分を容易に揮散させ除去すること
が可能であり、不純物としての影響はほとんどない。
【0031】次に調製した原料混合体をプレス成形機の
金型に充填し、600〜1000MPa程度の加圧力で
プレス成形し、所定形状の銅−クロム成形体を調製す
る。
【0032】次に得られた銅−クロム成形体を焼成する
焼結工程に移る。得られた銅−クロム成形体は、窒素ガ
ス,アルゴンガス,水素ガスなどの非酸化性雰囲気また
は真空雰囲気に調整された焼成炉において900〜10
83℃さらに好ましくは1050〜1080℃に加熱さ
れ、0.5時間以上の保持条件で焼成されて銅−クロム
焼結体となる。
【0033】上記焼結温度が900℃未満の場合では、
たとえ保持時間を0.5時間以上に設定しても、接点部
材の固相焼結を十分に進行させることが困難になる。一
方、焼結温度が銅の融点である1083℃を超えると、
固相焼結を行うことが事実上不可能になる。また保持時
間が0.5時間未満では、接点部材の固相焼結が十分に
進行せず、組織上均一な接点部材を得ることができな
い。従って焼結工程における処理温度は900〜108
3℃の範囲および保持時間は0.5時間以上に設定され
るが、処理温度を1050〜1080℃以上とし、保持
時間を2〜3時間の範囲に設定することが、より好まし
い。
【0034】こうして調整した銅−クロム焼結体を所定
形状に加工して接点部材とし、この接点部材を、対向す
る電極の端面にろう材を使用して接合し、さらに接点部
材をそれぞれ接合した電極を導電棒の端部に接合するこ
とにより、図6,7に示すような、真空遮断器が組み立
てられる。
【0035】上記構成に係る真空遮断器用接点部材の製
造方法によれば、接点部材の原料混合体を構成する銅粉
末の平均粒径がクロム粉末の平均粒径の1/20〜1/
3の範囲に設定されているため、原料の混合操作によっ
て、粗大なクロム粉末の周囲表面に微細な銅粉末を均一
に付着させることができる一方で、クロム粉末同士の凝
集が起らず、均一な組成の原料混合体が得られる。この
原料混合体を成形機の金型に充填した場合においても、
クロム粉末に対して銅粉末が均一に付着している状態は
変化せず、銅粉末とクロム粉末との再分離や銅粉末の凝
集・粗大化が効果的に防止できる。
【0036】したがって、銅マトリックス中にクロム成
分が均一に分散した接点部材を容易に製造することがで
きる。また、この接点部材を使用して真空遮断器を形成
することにより、遮断性能や耐圧性能のばらつきが少な
く、特性が安定した信頼性の高い真空遮断器を形成する
ことができる。
【0037】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について、
以下の実施例を参照して説明する。
【0038】実施例1 平均粒径が110μmである耐弧成分としてのクロム粉
と、平均粒径が50μmである高導電成分としての電解
銅粉とを、50:50の重量比でそれぞれ秤量した。そ
して6,6−ナイロンで形成したポットと混合用ボール
とを備えたボールミルのポットに、混合用ボールととも
に秤量したクロム粉と電解銅粉とを投入して、不活性ガ
ス雰囲気中で回転混合して原料混合体とした。この際、
回転混合によって解砕される銅粉末の平均粒径が、クロ
ム粉末の平均粒径の約1/10となるように、ボールミ
ルの回転速度および回転時間を調整し、粉末に与えるエ
ネルギーの最適化を行った。次に、この原料混合体を金
型プレス機に充填し、700MPaの加圧力でプレス成
形して銅−クロム成形体とした。さらに、この銅−クロ
ム成形体をアルゴンガスから成る非酸化性雰囲気中にて
5℃/minの昇温速度によって温度1050℃まで加
熱し、3時間保持して焼成した後に炉冷し、加熱炉から
取り出した。取り出した接点素材を所定の接点形状に加
工することにより、実施例1に係る接点部材を多数調製
した。
【0039】実施例2 平均粒径が110μmである耐弧成分としてのクロム粉
と、平均粒径が15μmである高導電成分としてのアト
マイズ銅粉とを、50:50の重量比でそれぞれ秤量し
た。そして実施例1と同様に、6,6−ナイロンで形成
したポットと混合用ボールとを備えたボールミルのポッ
トに、混合用ボールとともに秤量したクロム粉とアトマ
イズ銅粉とを投入して、不活性ガス雰囲気中で回転混合
して原料混合体とした。この際、クロム粉末の粉砕が生
じないことを確認しながら、銅粉末の凝集による粗大化
が生じる直前の状態となるように、ボールミルの回転速
度および回転時間を設定した。銅粉末の平均粒径とクロ
ム粉末との比は約1/18であった。次に、原料混合体
を金型プレス機に充填し、700MPaの加圧力でプレ
ス成形して銅−クロム成形体とした。さらに、この銅−
クロム成形体をアルゴンガスから成る非酸化性雰囲気中
にて5℃/minの昇温速度によって温度1050℃ま
で加熱し、3時間保持して焼成した後に炉冷し、加熱炉
から取り出した。取り出した接点素材を所定の接点形状
に加工することにより、実施例2に係る接点部材を多数
調製した。
【0040】比較例1 平均粒径が110μmである耐弧成分としてのクロム粉
と、平均粒径が50μmである高導電成分としての電解
銅粉とを、50:50の重量比でそれぞれ秤量した。そ
して秤量したクロム粉末と銅粉末とを撹拌式ミキサーで
均一に混合して原料混合体とした。銅粉末の平均粒径と
クロム粉末の平均粒径との比は約1/2であった。次
に、原料混合体を金型プレス機に充填し、700MPa
の加圧力でプレス成形して銅−クロム成形体とした。さ
らに、この銅−クロム成形体をアルゴンガスから成る非
酸化性雰囲気中にて5℃/minの昇温速度によって温
度1050℃まで加熱し、3時間保持して焼成した後に
炉冷し、加熱炉から取り出した。取り出した接点素材を
所定の接点形状に加工することにより、比較例1に係る
接点部材を調製した。
【0041】比較例2 平均粒径が110μmである耐弧成分としてのクロム粉
と、平均粒径が54μmである高導電成分としてのアト
マイズ銅粉とを、50:50の重量比でそれぞれ秤量
し、撹拌式ミキサーで均一に混合して原料混合体とし
た。銅粉末の平均粒径とクロム粉末の平均粒径との比は
約1/2であった。次に、原料混合体を金型プレス機に
充填し、700MPaの加圧力でプレス成形して銅−ク
ロム成形体とした。さらに、この銅−クロム成形体をア
ルゴンガスから成る非酸化性雰囲気中にて5℃/min
の昇温速度によって温度1050℃まで加熱し、3時間
保持して焼成した後に炉冷し、加熱炉から取り出した。
取り出した接点素材を所定の接点形状に加工することに
より、比較例2に係る接点部材を調製した。
【0042】図2〜図5はそれぞれ実施例1,2および
比較例1,2に係る接点部材断面の金属組織を示す光学
顕微鏡写真である。図2,3に示すように本実施例1,
2に係る接点部材は、図4,5に示す比較例1,2に係
る接点部材と比較して、銅マトリックス(黒色部)中に
おけるクロム(灰色部)の均一分散性が非常に良好であ
ることが組織形態からも容易に判別することができる。
【0043】また、各実施例および比較例に係る接点部
材の表面の10箇所において、渦電流法による導電率の
測定を行い、そのばらつきを調査した。表1に導電率の
ばらつきの大小を示す標準偏差を示す。
【0044】こうして調製した実施例および比較例に係
る各接点部材13a,13bを図7に示すように、銀ろ
う材14を使用して、それぞれ電極7,8の端面中央部
に真空ろう付けした。一方、電極7,8を導電棒5,6
の端面にろう付け部12を介して一体に接合した。さら
に、各接点部材13a,13bをろう付け接合した電極
7,8を使用して図6に示すような真空遮断器をそれぞ
れ10台ずつ組み立て、遮断特性の良否を比較した。す
なわち所定の電圧、電流値の回路を2万回遮断したとき
の再点弧発生頻度のばらつき幅(最小値〜最大値)を測
定して、下記表1に示す結果を得た。
【0045】
【表1】
【0046】上記表1に示す結果から明らかなように、
銅粉とクロム粉との平均粒径比を本発明方法で規定する
所定の範囲に設定して製造した各実施例に係る接点部材
においては、銅粉の平均粒径を相対的に粗大に設定した
比較例1,2に係る接点部材と比較して、接点部材内に
おける導電率のばらつきが極めて少ないことが判明し
た。
【0047】また、各実施例に係る接点部材を組み込ん
だ真空遮断器は、各比較例に係る接点部材を組み込んだ
真空遮断器と比較して再点弧発生頻度のばらつきが極め
て少ないことが確認でき、アークの安定性および遮断性
能を飛躍的に向上させることができた。
【0048】なお、上記実施例においては、図6に示す
ように、対向する一対の電極7,8にそれぞれ各実施例
で製造された接点部材13a,13bをろう付け接合し
て真空遮断器を形成したが、一方の電極にのみ本実施例
に係る接点部材を接合した場合においても、同様に高い
遮断特性が発揮されることが確認できた。
【0049】
【発明の効果】以上説明の通り、本発明に係る真空遮断
器用接点部材の製造方法によれば、接点部材の原料混合
体を構成する銅粉末の平均粒径がクロム粉末の平均粒径
の1/20〜1/3の範囲に設定されているため、原料
の混合操作によって、粗大なクロム粉末の周囲表面に微
細な銅粉末を均一に付着させることができる一方で、ク
ロム粉末同士の凝集が起らず、均一な組成の原料混合体
が得られる。この原料混合体を成形機の金型に充填した
場合においても、クロム粉末に対して銅粉末が均一に付
着している状態は変化せず、銅粉末とクロム粉末との再
分離やクロム粉末や銅粉末の凝集・粗大化が効果的に防
止できる。
【0050】したがって、銅マトリックス中にクロム成
分が均一に分散した接点部材を容易に製造することがで
きる。また、この接点部材を使用して真空遮断器を形成
することにより、遮断性能や耐圧性能のばらつきが少な
く、特性が安定した信頼性の高い真空遮断器を形成する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解法で製造された銅粉末の粒子構造を示す電
子顕微鏡写真。
【図2】実施例1で調製した接点部材の金属組織を示す
光学顕微鏡写真。
【図3】実施例2で調製した接点部材の金属組織を示す
光学顕微鏡写真。
【図4】比較例1で調製した接点部材の金属組織を示す
光学顕微鏡写真。
【図5】比較例2で調製した接点部材の金属組織を示す
光学顕微鏡写真。
【図6】本発明に係る接点部材を使用した真空遮断器の
構造を示す断面図。
【図7】図6に示す接点および電極部を拡大して示す断
面図。
【符号の説明】
1 遮断室 2 絶縁容器 3a,3b 封止金属 4a,4b 蓋体 5 導電棒 6 導電棒 7 電極(固定電極) 8 電極(可動電極) 9 ベローズ 10 アークシールド 11 アークシールド 12 ろう付け部 13a,13b 接点部材 14 ろう材(Agろう材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀江 宏道 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐弧成分としてのクロム粉末と高導電成
    分としての銅粉末とを混合して原料混合体を調製する工
    程と,上記原料混合体を成形して銅−クロム成形体を形
    成する工程と,上記銅−クロム成形体を非酸化性雰囲気
    中で焼成する工程とを備え、上記原料混合体を構成する
    銅粉末の平均粒径がクロム粉末の平均粒径の1/20〜
    1/3であることを特徴とする真空遮断器用接点部材の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 原料混合体を構成する銅粉末の平均粒径
    がクロム粉末の平均粒径の1/10〜1/5であること
    を特徴とする請求項1記載の真空遮断器用接点部材の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 銅粉末は電解法によって製造されたこと
    を特徴とする請求項1記載の真空遮断器用接点部材の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 銅粉末はアトマイズ法により製造された
    ことを特徴とする請求項1記載の真空遮断器用接点部材
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 原料混合粉はボールミル混合法によって
    調製することを特徴とする請求項1記載の真空遮断器用
    接点部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 ボールミル混合法による原料混合体の調
    製工程において、樹脂製のポットおよびボールを使用す
    ることを特徴とする請求項5記載の真空遮断器用接点部
    材の製造方法。
  7. 【請求項7】 原料混合体のクロム粉末含有量を20〜
    80重量%の範囲に設定することを特徴とする請求項1
    記載の真空遮断器用接点部材の製造方法。
  8. 【請求項8】 耐弧成分としてのクロム粉末と平均粒径
    がクロム粉末の平均粒径の1/20〜1/3である高導
    電成分としての銅粉末とから成る銅−クロム成形体を非
    酸化性雰囲気中で焼成して成ることを特徴とする真空遮
    断器用接点部材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002151386A (ja) * 2000-11-10 2002-05-24 Usui Internatl Ind Co Ltd 真空チャンバー電力供給用電流導入端子
EP3315621A4 (en) * 2015-06-24 2018-12-19 Meidensha Corporation Method for manufacturing electrode material, and electrode material

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JP4588197B2 (ja) * 2000-11-10 2010-11-24 臼井国際産業株式会社 真空チャンバー電力供給用電流導入端子
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