JPH09111336A - 耐水素誘起割れ性に優れる高張力鋼材の製造方法 - Google Patents

耐水素誘起割れ性に優れる高張力鋼材の製造方法

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JPH09111336A
JPH09111336A JP27274595A JP27274595A JPH09111336A JP H09111336 A JPH09111336 A JP H09111336A JP 27274595 A JP27274595 A JP 27274595A JP 27274595 A JP27274595 A JP 27274595A JP H09111336 A JPH09111336 A JP H09111336A
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JP
Japan
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mass
less
steel
cooling
hydrogen
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JP27274595A
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Mitsuhiro Okatsu
光浩 岡津
Toru Hayashi
透 林
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硫化水素が含まれる環境下で使用される鋼材
として、API 5L X65〜X80 級の強度を有する耐水素誘起
割れ性に優れる鋼材を製造する。 【解決手段】 C:0.001 〜0.04%、Si:0.05%未満、
Mn:0.2 〜2.0 %、B:0.0003〜0.0050%、Cu:0.7 〜
2.0 %、Al:0.01〜0.10%およびS:0.01%以下を含有
する鋼素材を、Ac3 変態点〜1350℃の温度範囲に加熱し
て熱間圧延し、その熱間圧延後、500 〜800 ℃の温度範
囲で30〜7200s の時間範囲の等温保持を行うか、または
当該温度範囲内にて1℃/s 以下の冷却速度で30〜7200
s の時間範囲の冷却を行うかの析出処理を施したのち、
空冷あるいは加速冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、硫化水素が含ま
れる環境下で使用される、石油や天然ガスの輸送用パイ
プや貯蔵タンクあるいは圧力容器などに使われる鋼材と
して、特に、API5LX65 〜X80 級の強度を有する耐水素
誘起割れ性に優れる高張力鋼材の製造方法を提案するも
のである。
【0002】石油や天然ガス中には硫化水素を含む場合
が多く、石油や天然ガスの輸送用パイプラインやLPG 貯
蔵タンク等に使用される鋼材では、この硫化水素とこれ
と共存する水素とにより鋼材表面が腐食され、水素が鋼
中に侵入することで水素誘起割れと呼ばれる割れが発生
し、鋼が破壊することがある。
【0003】
【従来の技術】水素誘起割れの原因は、MnS などの鋼中
介在物と地鉄との界面に侵入した原子状水素がガス化
し、そのガス圧によって界面先端から割れが発生するた
めと考えられている。
【0004】これまで、その割れ防止手段として、 MnおよびP,Sの含有量を少なくすることで中心偏析
および鋼中介在物を減少させる(例えば、特開昭52−11
1815号公報「耐水素誘起割れ性に極めて優れた鋼
材」)。 圧延により伸展して割れ感受性を高めるMnS を、Ca,
REM の添加によりCaSやREM 硫化物にして圧延後も球状
化状態を維持させ、割れ感受性を低減させる(例えば、
特公昭57−16184 号公報「耐水素誘起割れ性にすぐれた
ラインパイプ用鋼材」) 。 などの技術が提案開示されている。
【0005】しかし、現在では、硫化水素濃度がより高
くより厳しい環境に耐え得る鋼材が要求されるようにな
ってきている。この厳しい環境下での抵抗力の評価は、
pHの低いNACE溶液(5%NaCl+0.5 %CH3COOH +飽和H2
S)を用いる浸漬試験で行われるが、先に挙げた従来技術
では必ずしも十分な効果を発揮できないという問題があ
った。
【0006】すなわち、の成分低減法では、Mnの減量
が鋼材強度確保の面から限界があり、ここで問題にする
厳しい硫化水素環境下には対応が困難である。のCa,
REM 添加法においても、厳しい環境下では、不純物が集
積しやすい鋼材中心部でのMnS の完全な球状化が困難な
ため、十分な防止策とはならない。などの問題があっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、従来とは
全く異なる発想のもとに、高強度、特にAPI 5L X65〜X8
0 級の強度を有し、かつ、硫化水素濃度の高い環境下に
おいても優れる耐水素誘起割れ性を発揮する鋼材の製造
方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、C含有量を
0.04mass%以下の極低炭素域に抑え、Cu添加と析出処理
による強化を行うことで、従来と同等あるいはそれ以上
の目標強度を得るとともに、硫化水素濃度の高い環境下
においても極めて優れる耐水素誘起割れ性が得られるこ
とを新規に見出し、この発明を達成したものである。す
なわち、この発明の要旨とするところは以下の通りであ
る。
【0009】C:0.001 mass%以上、0.040 mass%以
下、Si:0.05mass%未満、Mn:0.2 mass%以上、2.0 ma
ss%以下、B:0.0003mass%以上、0.0050mass%以下、
Cu:0.7 mass%以上、2.0 mass%以下、Al:0.01mass%
以上、0.10mass%以下およびS:0.01mass%以下を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材
を、AC3 変態点〜1350℃の温度範囲に加熱したのち熱間
圧延し、その熱間圧延後、500 〜800 ℃の温度範囲で30
〜7200s の時間範囲の等温保持を行うか、または当該温
度範囲内にて1℃/s 以下の冷却速度で30〜7200s の時
間範囲の冷却を行うかの析出処理を施したのち、空冷あ
るいは加速冷却することを特徴とする耐水素誘起割れ性
に優れる鋼材の製造方法(第1発明)。
【0010】第1発明において、鋼組成が残部成分のFe
と置換してV:0.2 mass%以下、Ti:0.2 mass%以下お
よびNb:0.2 mass%以下のうちから選ばれる1種または
2種以上を含有してなる耐水素誘起割れ性に優れる鋼材
の製造方法(第2発明)。
【0011】第1または2発明において、鋼組成が残部
成分のFeと置換してCr:0.5 mass%以下、Ni:2.0 mass
%以下、Mo:0.5 mass%以下およびW:0.5 mass%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有してなる
耐水素誘起割れ性に優れる鋼材の製造方法(第3発
明)。
【0012】第1,2または3発明において、鋼組成
が、残部成分のFeと置換してCa :0.02mass%以下およ
びREM:0.02mass%以下のうちから選ばれる1種または
2種を含有してなる耐水素誘起割れ性に優れる鋼材の製
造方法(第4発明)。
【0013】
【発明の実施の形態】まず、この発明の鋼の化学成分組
成の限定理由について述べる。
【0014】C:0.001 〜0.040 mass% Cは、鋼の強度を支配する重要な成分であり、0.001 ma
ss%未満では必要とする強度が得られなくなるが、0.04
mass%を超えて含有させると偏析部に低温変態組織が生
成しやすくなり、水素誘起割れ感受性が著しく高まる。
したがって、その含有量は0.001 mass%以上、0.040 ma
ss%以下とする。
【0015】Si:0.05mass%未満 Siは、0.05mass%以上含有させると島状マルテンサイト
が生成しやすくなり溶接部のじん性を劣化させる。した
がって、その含有量は0.05mass%未満とする。
【0016】Mn:0.2 〜2.0 mass% Mnは、強度確保のため0.2 mass%以上必要であるが、2.
0 mass%を超えて含有させると溶接硬化性が著しく上昇
する。したがって、その含有量は0.2 mass%以上、2.0
mass%以下とする。
【0017】B:0.0003〜0.0050mass% Bは、ベイナイト単相とするために0.0003mass%以上必
要とするが、0.0050mass%を超えて含有させると逆に焼
きが入りすぎて低温じん性が極めて劣る上部ベイナイト
組織が生成しやすくなる。したがって、その含有量は0.
0003mass%以上、0.0050mass%以下とする。
【0018】Cu:0.7 〜2.0 mass% Cuは、鋼を析出強化させるために含有させる。ただし、
2.0mass %を超えて含有させるとじん性が急激に劣化
し、逆に0.7 mass%未満では析出強化の効果がない。し
たがって、その含有量は0.7 mass%以上、2.0 mass%未
満とする。
【0019】Al:0.01〜0.10mass% Alは、脱酸剤として0.01mass%以上必要であるが、0.10
mass%を超えて含有させると溶接性を損うので、その含
有量は0.01mass%以上、0.10mass%以下とする。
【0020】S:0.01mass%以下 Sは、前記したように、問題とする割れの原因となる硫
化物系の介在物の量に直接関係するので、できるだけ低
くするのが望ましい。そこでこの発明では許容できる含
有量の上限を0.01mass%とする。
【0021】V,Ti, Nb:それぞれ0.2 mass%以下 Vは、析出強化のために用いる。ただし、0.2 mass%を
超えて含有させてもその効果が飽和するため、その含有
量は0.2 mass%以下がよい。
【0022】Tiは、析出強化と、過剰のCの固定および
REM との複合添加の場合にフェライト析出核を形成して
溶接熱影響部のじん性を向上させるために用いる。ただ
し、0.2 mass%を超えて含有させてもそれらの効果は飽
和する。したがって、その含有量は0.2 mass%以下がよ
い。
【0023】Nbは、析出強化とじん性の向上のために用
いる。ただし、0.2 mass%を超えて含有させてもそれら
の向上効果が飽和するので、その含有量は0.2mass %以
下がよい。
【0024】Cr:0.5 mass%以下、Ni:2.0 mass%以
下、Mo, W:それぞれ0.5 mass%以下 Crは、強度を向上させる効果があり、また耐炭酸ガス腐
食性を向上させる効果もある。しかし、0.5mass %を超
えて含有させてもそれらの向上効果は少ないため、その
含有量は0.5mass %以下が好ましい。
【0025】Niは、強度およびじん性を向上させ、また
圧延時にCuに起因する熱間割れを防止するのに有効であ
るが、高価である上過剰に含有させてもそれらの効果が
飽和し、溶接熱影部の硬度を上昇させて溶接割れ感受性
を高めてしまう。したがって、その含有量は2.0 mass%
以下が好ましい。
【0026】Moは、強度を向上させる効果があるが、0.
5 mass%を超えて含有させるとその向上効果は少なく、
溶接性を劣化させる。したがって、その含有量は0.5 ma
ss%以下が好ましい。
【0027】Wは、強度を上昇させる効果があり、特に
高温強度の上昇に寄与するが、高価である上0.5 mass%
を超えて含有させるとじん性が劣化する。したがって、
その含有量は0.5 mass%以下が好ましい。
【0028】Ca, REM :それぞれ0.02mass%以下 Caは、鋼中硫化物の形態制御によりじん性、特に衝撃値
を向上させるが、0.02mass%を超えて含有させると耐水
素誘起割れ特性に悪影響をおよぼす。したがって、その
含有量は0.02mass%以下がよい。
【0029】REM は、フェライト析出核の形成に役立
ち、かつ、オキシサルファイドとなりオーステナイトの
粒成長を抑制しじん性の向上に寄与するが、0.02mass%
を超えて含有させると鋼の清浄度を劣化させ耐水素誘起
割れ特性およびじん性に悪影響を及ぼす。したがって、
その含有量は0.02mass%以下がよい。
【0030】つぎに、鋼材の製造方法について述べる。 ・製鋼、鋳造 鋼の溶製方法については特に限定するものではなく、転
炉、電気炉等いずれもが利用できる。また、圧延用素材
の鋳造方法も同じく限定するものではなく、造塊法、連
続鋳造法といった従来公知の鋳造方法のいずれもが利用
できる。
【0031】・熱間圧延 この発明において、熱間圧延時の加熱温度をAc3 点以上
としたのは、オーステナイト組織に完全に変態させるた
めであり、また、1350℃以下としたのは、この温度を超
えるとオーステナイト結晶粒が粗大化して鋼のじん性が
著しく低下するためである。
【0032】・熱間圧延後の析出処理 熱間圧延後、500 〜800 ℃の温度範囲で30〜7200s の時
間範囲の等温保持もしくは当該温度範囲にて1℃/s 以
下の冷却速度で30〜7200s の時間範囲冷却する析出処理
を施す。この析出処理により、Cuが析出して鋼材強度が
上昇し、かつ、等温変態またはこれに近い変態であるた
め、鋼中の拡散性水素量の増大の原因となる面欠陥(転
位)の生成が少なくなり、水素誘起割れ感受性が低下す
る。また、この析出処理は組織の均一化の効果を併せ持
つ。
【0033】このような析出処理は、800 ℃超えの温度
では析出成分が溶解してしまい析出が起こりにくく、50
0 ℃未満の温度では析出反応が起こりにくい。したがっ
て析出処理温度範囲は500 〜800 ℃とする。また、保持
時間範囲を30〜7200s とした理由は、30s 未満では十分
な析出強化ができず、7200s を超えるとコスト的に問題
を生じるためである。一方、当該温範囲内で徐冷の場
合、その冷却速度が1℃/s より大きいと十分な析出強
化が得られないので、その冷却速度は1℃/s 以下と
し、冷却時間は30〜7200s の範囲とするが、より十分な
析出強化を得るためには、冷却速度は0.5 ℃/s 以下と
することが望ましい。
【0034】なお、熱間圧延後の等温保持、あるいは、
1℃/s 以下の冷却を開始するまでの間は、空冷でも水
冷でもこの発明の効果が損なわれることはないので、現
在公知の製造方法を適宜選択し採用できる。また、析出
処理終了後は空冷しても水冷などの加速冷却を行っても
一向に差支えない。
【0035】
【実施例】
実施例1 表1および表2に示す種々の成分組成になるこの発明の
適合鋼および比較鋼素材を用い、1150℃の温度からオー
ステナイト再結晶域で55%、未再結晶域で75%の圧下で
板厚:20mmとしたのち、ただちに板厚中央部での冷却速
度を10℃/s とする加速冷却を開始し、以後次に示す3
条件で冷却してそれぞれ耐サワーUOE 鋼管用鋼板を製造
した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】・冷却条件A(適合例):加速冷却で520
℃の温度まで冷却後、500 ℃の温度の均熱炉に3600秒間
保持する析出処理ののち空冷する。
【0039】・冷却条件B(適合例):加速冷却を700
℃の温度まで行い、該温度から500℃の温度までを0.06
℃/s の冷却速度で除冷する析出処理ののち空冷する。
【0040】・冷却条件C(比較例):加速冷却で500
℃まで冷却したのち空冷する(適合鋼を用いた場合の
み)。
【0041】かくして得られたそれぞれの鋼板を用い、
UOE 工場にて、管厚:20mm、外径:30inの耐サワーUOE
鋼管を製造した。
【0042】上記において、全ての鋼板から引張試験片
(L方向)およびシャルピー衝撃試験片(T方向)を採
取し、鋼板の強度やじん性などを調査するとともに、水
素誘起割れ(以下単にHIC という)試験として、鋼板の
段階では図1に示す採取位置より図2に示す採取要領
で、UOE 鋼管では図3に示す採取位置より図4に示す採
取要領によりそれぞれHIC 試験片を採取し、それらの試
験片を、NACE液(5%NACl+ 0.5%CH3COOH +飽和H2S)
中に96時間浸漬したのち、該試験片に生じるHIC面積率
を超音波探傷により測定した。
【0043】ここで、図1は鋼板からのHIC 試験片採取
位置を示す説明図、図2は鋼板からのHIC 試験片採取要
領を示す説明図であり、図3はUOE 鋼管母材部からのHI
C 試験片採取位置を示す説明図、図4はUOE 鋼板母材部
からのHIC 試験片採取要領を示す説明図である。
【0044】これらの調査結果を表3、表4および表5
に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】これらの表から明らかなように、成分組成
がこの発明に適合する適合鋼 (鋼No. 1〜32) を用い、
この発明に適合する条件で析出処理した適合例( 冷却条
件AおよびB) の鋼板は、すべて降伏強度が、API 5L X6
5級の規格最小降伏強度:450MPaを超えており、中にはX
80 級の規格最小降伏強度:560MPaを超えているものも
ある。さらにこれらの適合例は、鋼板はもちろんのこと
鋼管においてもHIC 試験で割れの発生が全く検知されて
いない。
【0049】これらに対し、析出処理を行なわなかった
比較例(冷却条件C)は、いずれも面欠陥の回復がなく
鋼中拡散水素量が増大するため、鋼板においてHIC の発
生するものがあり、特にUOE 造管後の鋼管においては、
すべてHIC が検知されている。さらに鋼No. 1〜3,
5,6,11, 17〜22, 23および25については、析出処理
を行わなかった分強度の向上がなく、X65 級の規格最小
降伏強度:450MPaを下回る値を示している。
【0050】また、比較鋼(鋼No. 33〜42) を用いた場
合は、それぞれ以下のとおりである。 ・鋼No.33 は、Cがこの発明の上限を超えているため偏
析を生じた結果、HIC面積が非常に多くなっている。
【0051】・鋼No.34 は、Mnが、No.36 は、Sがそれ
ぞれこの発明の上限を外れているため、HIC の起点とな
るMnS 系の介在物量が激増し、その結果HIC 面積が非常
に多くなっている。
【0052】・鋼No.37 および42は、それぞれCaおよび
REM がこの発明の上限を上回ったため鋼中の清浄度が低
下し、Ca系あるいはREM 系の介在物のクラスター起因で
HICが多く生じている。
【0053】・鋼No.35, 38 および40は、HIC 試験にお
ける割れの発生はなかったが、No.35 はCuが、No.38 は
Mnが、No.40 はBがそれぞれこの発明の下限を下回って
いるため、降伏強度がX65 級の規格最小降伏強度:450M
Paに達していない。
【0054】・鋼No.39 および41は、それぞれCuおよび
Bがこの発明の上限を超えているため、鋼の低温じん性
をあらわすvTrsが極めて悪くなっている。したがって、
寒冷地でのパイプラインに適用することはできない。
【0055】実施例2 前掲表1および表2に示した鋼No. 4,6,14〜16, 2
4, 26, 29〜34, 37および39計15種類の成分組成になる
この発明の適合鋼および比較鋼素材を用い、それぞれ10
50℃の温度からオーステナイト再結晶域で40%、未再結
晶域で62%圧下して板厚:88mmとしたのち、それぞれ、
以下に示す4条件で冷却し、引張強さ:590MPa級(API
5L X70〜X80 対応)の耐HIC 圧力容器用厚物鋼板を製造
した。
【0056】・冷却条件D(適合例):圧下後、560 ℃
の温度まで板厚中央部での冷却速度を5℃/s で加速冷
却し、550 ℃の温度の均熱炉に6600秒間保持する析出処
理ののち空冷する。
【0057】・冷却条件E(適合例):圧下後、620 ℃
の温度まで板厚中央部での冷却速度を5℃/s で加速冷
却し、600 ℃の温度の均熱炉に4800秒間保持する析出処
理ののち空冷する。
【0058】・冷却条件F(適合例):圧下後、800 ℃
から600 ℃の温度までを0.04℃/sの冷却速度で除冷す
る析出処理ののち空冷する。
【0059】・冷却条件G(比較例):圧下後、550 ℃
の温度まで板厚中央部での冷却速度を5℃/s で加速冷
却し、以後空冷する(適合鋼を用いた場合のみ)。
【0060】かくして得られた各厚物鋼板から、引張試
験片(L方向)およびシャルピー衝撃試験片(T方向)
を採取し、鋼板の強度およびじん性について調査すると
ともに、HIC 試験として、図5に示す採取位置より図6
に示す採取要領でそれぞれ試験片を採取し、それらの試
験片を、NACE液中に96時間浸漬したのち、該試験片に生
じるHIC 面積率を超音波探傷により測定した。
【0061】ここに、図5は、厚物鋼板からのHIC 試験
片採取位置を示す説明図であり、図6は厚物鋼板からの
HIC 試験片採取要領を示す説明図である。なお、HIC 試
験片は、板厚が88mmと厚いため、図6に示すように板厚
方向に3本採取し、表面近傍、板厚1/2 部、裏面近傍と
板厚方向の位置によるHIC 感受性を調査している。
【0062】これらの調査結果を表6および表7に示
す。
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】これらの表から明らかなように、この発明
に適合する適合鋼を用い、この発明に適合する条件で析
出処理した適合例(冷却条件D,EおよびF)の鋼板
は、引張強さ(TS)が全て590MPa以上を示し、かつ、
HIC 試験での割れの発生は皆無であった。
【0066】これらに対し、析出処理を行わなかった比
較例(冷却条件G)においては、厚物(板厚:88mm) の
冷却ということで加速冷却時の冷却を強化する結果、特
に鋼板の表裏面近傍が過冷却されてその領域では面欠陥
が増大し、HIC 試験時に鋼中水素の吸蔵量が増加するた
め、表面あるいは裏面近傍から採取した試験片には、HI
C が多く検知されている。なお、上記したように適合例
では同様に加速冷却をしてもHIC 割れの発生がなったの
は、加速冷却時の鋼板表裏面の過冷却部が析出処理時の
等温保持あいは除冷プロセスで焼き戻されて面欠陥が回
復し、HIC 試験時に吸蔵する鋼中拡散性水素量が少なく
なるためである。
【0067】また、比較鋼を用いた場合はそれぞれ以下
の通りである。 ・鋼No.33 はCがこの発明の上限を超えているため偏析
が生じた結果、特に中心から採取したHIC 試験片にHIC
が多く検知されている。
【0068】・鋼No.34 はMnが、鋼No.37 はCaがそれぞ
れこの発明の上限を超えているため、HIC の起点となる
MnS 系あるいはCa系の介在物量が激増し、その結果、HI
C 面積率が多くなっている。
【0069】・鋼No.39 はHIC 試験での割れの発生はな
かったが、Cuがこの発明の上限を上回っているため、低
温じん性が劣化している。
【0070】
【発明の効果】この発明は、Sを規制した、Mn, Bおよ
びCuなどを主として含有する極低炭素鋼素材を圧下後、
適当な析出処理を施す鋼材の製造方法であって、この発
明によれば、API 5L X65〜X80 級の強度を有し、かつ、
硫化水素濃度の高い環境下で行われるHIC 試験でも割れ
の発生がないという高強度で優れる耐水素誘起割れ性を
有する鋼材の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板からのHIC 試験片採取位置を示す説明図で
ある。
【図2】鋼板からのHIC 試験片採取要領を示す説明図で
ある。
【図3】UOE 鋼管母材部からのHIC 試験片採取位置を示
す説明図である。
【図4】UOE 鋼管母材部からのHIC 試験片採取要領を示
す説明図である。
【図5】厚物鋼板からのHIC 試験片採取位置を示す説明
図である。
【図6】厚物鋼板からのHIC 試験片採取要領を示す説明
図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.001 mass%以上、0.040 mass%以
    下、 Si:0.05mass%未満、 Mn:0.2 mass%以上、2.0 mass%以下、 B:0.0003mass%以上、0.0050mass%以下、 Cu:0.7 mass%以上、2.0 mass%以下、 Al:0.01mass%以上、0.10mass%以下およびS:0.01ma
    ss%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組
    成になる鋼素材を、AC3 変態点〜1350℃の温度範囲に加
    熱したのち熱間圧延し、その熱間圧延後、500 〜800 ℃
    の温度範囲で30〜7200s の時間範囲の等温保持を行う
    か、または当該温度範囲内にて1℃/s 以下の冷却速度
    で30〜7200s の時間範囲の冷却を行うかの析出処理を施
    したのち、空冷あるいは加速冷却することを特徴とする
    耐水素誘起割れ性に優れる鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼組成が残部成分の
    Feと置換してV:0.2 mass%以下、 Ti:0.2 mass%以下およびNb:0.2 mass%以下のうちか
    ら選ばれる1種または2種以上を含有してなる耐水素誘
    起割れ性に優れる鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼組成が残
    部成分のFeと置換してCr:0.5 mass%以下、 Ni:2.0 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下およびW:0.5 mass%以下のうちか
    ら選ばれる1種または2種以上を含有してなる耐水素誘
    起割れ性に優れる鋼材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、鋼組成
    が、残部成分のFeと置換してCa:0.02mass%以下および
    REM:0.02mass%以下のうちから選ばれる1種または2
    種を含有してなる耐水素誘起割れ性に優れる鋼材の製造
    方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2000199011A (ja) * 1999-01-05 2000-07-18 Kawasaki Steel Corp 材質ばらつきが少なくかつ溶接部低温靱性に優れた鋼材の製造方法
US6162389A (en) * 1996-09-27 2000-12-19 Kawasaki Steel Corporation High-strength and high-toughness non heat-treated steel having excellent machinability

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