JPH09107993A - 2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法 - Google Patents

2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法

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JPH09107993A
JPH09107993A JP29906895A JP29906895A JPH09107993A JP H09107993 A JPH09107993 A JP H09107993A JP 29906895 A JP29906895 A JP 29906895A JP 29906895 A JP29906895 A JP 29906895A JP H09107993 A JPH09107993 A JP H09107993A
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JP29906895A
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Manabu Yoshino
学 吉野
Michinobu Kamiyama
道信 神山
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Eiken Chemical Co Ltd
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Eiken Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、操作が簡便な血中2’−5’オリゴ
アデニル酸合成酵素(2−5AS)活性の測定技術を提
供することである。 【構成】本発明は、水溶性のdsRNAの存在下でATP
を2−5ASと反応させる2−5ASの活性測定方法で
ある。また本発明は、水溶性dsRNAを活性化剤ととし
て利用する2−5AS活性の測定試薬を提供する。dsR
NAにはpoly(I)poly(C)等が利用できる。 【効果】本発明は、2−5AS活性測定において遠心分
離など付加的な操作を不要とし、簡便な操作と高い再現
性を実現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は2’−5’オリゴアデニ
ル酸合成酵素(EC2.7.7.−、以下「2−5A
S」と省略する)の活性を測定する新規な方法に関する
ものである。2−5ASは、リンパ球等においてインタ
ーフェロンに誘導される酵素である。この2−5AS
は、2本鎖RNA(以下dsRNAと省略する)の存在下
でアデノシン3リン酸(以下ATPと省略する)を基質
としてアデニル酸を(2’−5’)ホスホジエステル結
合で重合し、2’−5’オリゴアデニル酸(以下2−5
Aと省略する)を産生する活性を持っている。
【0002】2−5ASに合成された2−5Aの役割
は、ウィルスのmRNAのキャップ形成の阻止、細胞制
御、細胞の分化などに関係があり、2−5Aが細胞内に
誘導された場合には、タンパク質合成やウィルスの複製
が阻止される。以上の生体防御の機序を利用し、2−5
AS活性値を各種微生物(ウィルス、細菌、マイコプラ
ズマ等)の感染やインターフェロン治療効果の指標とで
きることが確認された。現在では既に放射免疫測定法
(以下RIAと省略する)を利用した2−5AS活性の
測定用キットも市販されている。
【0003】
【従来技術の問題点】現在商品化されている血中2−5
ASの活性測定方法は、次のような原理に基づいてい
る。まず血中の2−5ASをpoly(I)poly(C)−アガロー
スで吸着し、更に洗浄することによって血清成分から分
離するのと並行して酵素の活性化を行う。次いでATP
を基質として加え、2−5Aを産生させる。最終的に酵
素反応によって生成する2−5Aの量を125I標識2−
5Aを使ったRIA法によって測定し、酵素活性を決定
するというものである。このような測定法の提供によっ
て、リンパ球の培養や取り扱いにくいトリチウム標識A
TPを組み合わせたそれ以前の測定技術に比べて簡便な
測定が可能となった。
【0004】しかし簡便になったとはいえ、それでもな
おpoly(I)poly(C)−アガロースの遠心洗浄等の付加的な
操作が求められるので全体としては複雑な操作となって
いる。また操作ステップが多いために、測定精度を高く
維持するには注意深い作業が要求される。加えてpoly
(I)poly(C)−アガロースといった固体状の試薬を利用し
ているため、試薬キットの製造時には分注作業を行いに
くい等の問題点が生じる。したがって試薬の商業的な供
給の面でも問題を残していたということができる。この
ような問題点の原因となっているpoly(I)poly(C)−アガ
ロースによる2−5ASの吸着操作は、血中には微量に
しか存在しない2−5AS活性を必要な感度で測定する
ために欠かせない操作と考えられていた。
【0005】以上のような血中2−5ASの活性測定方
法に対して、リンパ球やリンパ系の培養細胞株試料につ
いて2−5AS活性を測定した報告も多い。細胞を溶解
し2−5ASをpoly(I)poly(C)−アガロース等に吸着さ
せ、32P標識ATPを基質として与えて生成する2−5
Aをクロマトグラフィーによって分離し、その放射活性
から2−5AS活性を決定する方法等[1]が知られてい
る。あるいはpoly(I)poly(C)と32P標識ATPの添加に
よって生成する2−5Aを電気泳動によって分離し、そ
の放射活性を測定する方法も知られている[2]。更に、
ATPを発光標識することにより、放射性物質を使わな
いで2−5AS活性を測定する試みもある[3]。 [1] Cancer Res.43,2683-2687,1983 [2] J.Biol.Chem.,262-8,3852-3857,1987 [3] 特開昭62−9299
【0006】これらの方法に共通しているのは、全て培
養細胞やその培養上清を試料としている点である。2−
5ASはもともと細胞で産生されているので、一般に培
養細胞の細胞質には高い2−5AS活性が存在する。し
たがって血中の酵素活性を測定するのに比べれば、感度
の点で測定の容易な試料と言うことができる。またクロ
マトグラフィーや電気泳動による分離操作が要求される
測定技術は、迅速性と簡便性が求められる日常的な検査
施設には不向きである。他方、発光物質を利用した方法
においては、繁雑な分離操作からは開放される。しかし
発光物質による2−5ASの活性測定方法では、標識基
質の重合に基づく発光信号の変調という原理に基づいて
いるためにシグナルの測定時に他の成分の影響を受けや
すく高い感度の達成は困難と考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、培養細胞な
どに比べて低い活性しか期待できない血中2−5AS活
性測定の操作性を改善する新しい測定技術を提供するこ
とである。本発明者らは、従来の2−5ASの活性測定
方法において吸着剤や酵素の活性化剤として一般的に使
われているpoly(I)poly(C)−アガロースが遠心や洗浄の
ような簡便性を損なう操作の原因となっていることに着
目した。このpoly(I)poly(C)−アガロースを使わず、か
つ精度や感度を損なうことのない新たな血中2−5AS
の活性測定方法を提供することが、本発明の課題であ
る。
【0008】
【問題を解決するための手段】本発明の課題は、次の工
程a)−c)で構成される血中2−5ASの活性測定方
法において、酵素の活性化剤として水溶性のdsRNAを
用いる血中2−5ASの活性測定方法によって解決され
る。 a)2−5AS活性を含む試料を活性化剤とATPまた
はその誘導体と混合する工程 b)2−5ASにより2−5Aまたはその誘導体を生成
させる工程 c)工程b)において生成する2−5A、その誘導体、
またはピロリン酸、あるいは消費されるATPまたはそ
の誘導体を測定することにより2−5ASの活性を決定
する工程 本発明の2−5ASの活性測定方法を構成する反応ステ
ップについて具体的に説明する。
【0009】工程a)2−5AS活性を含む試料を活性
化剤とATPまたはその誘導体と混合する工程 血中2−5ASを水溶性のdsRNAおよび基質と混合す
るステップである。水溶性のdsRNAとは、RNAが塩
基対結合によって二重らせん構造をとっているものと定
義できる。もちろん本発明のdsRNAは水溶性でなけれ
ばならないのでアガロースやセファロース等の固相と結
合したものであってはならない。本発明のdsRNAを構
成する塩基の種類は限定されない。したがってA(アデ
ニン)−U(ウラシル)、C(シトシン)−G(グアニ
ン)あるいはI(イノシン酸)という塩基種から任意の
組み合わせを選ぶことができる。化学的に合成するには
同じ塩基種で構成されたポリマー状の1本鎖RNAを塩
基対結合によって2本鎖とするのが容易である。このよ
うなdsRNAとして、Iを重合したポリIとCを重合し
たポリCとからなるdsRNA、すなわちpoly(I)poly(C)
は市販品として入手できる一般的なものである。この他
にAとUが交互に配列したRNAどうしを2本鎖とした
poly(rA-rU)(rA-rU)が市販されているが、一般には高価
なものとされている。本発明に用いる水溶性のdsRNA
は、構成塩基数で60bp以上のものが2−5ASの活性
化能に優れているため好ましい。特に好ましい塩基数
は、100−1000bp、中でも200−500bpであ
る。
【0010】本発明のdsRNAは、2−5ASを含む試
料を血清として1μlに対し、およそ0.1〜1μg添加
すると十分な活性化を期待できる。この使用量は血清と
して1μlに対するものであるから、血清の他に全血を
試料とする時には血清換算で1μlとして必要なdsRN
A量を算出する。もちろん全血に占める血清分画の割合
は血液試料によって大きく変動するので、この変動幅を
考慮してdsRNAが不足しないように設定するべきであ
る。2−5ASの活性中心にはdsRNAと結合する部分
があり、この部分が2−5ASに結合することによっ
て、活性化酵素になると推測されている。酵素反応の速
度論的にも活性化剤と酵素の量的関係が、非常に重要な
部分である。そのため高い活性値を示す検体には十分量
のdsRNAが必要となる。このようにdsRNAは2−5
ASの量に応じて必要となるため、2−5AS活性が非
常に大きくなると予想される場合にdsRNAが不十分で
あれば、実際の値よりも小さい値となる可能性がある。
したがってdsRNAは、あらかじめ予想される2−5A
S活性に対して過剰量で用いるのが好ましい。dsRNA
を過剰量で添加するには、できるだけ溶解性に優れるも
のを選択するのが有利である。たとえばSIGMA社が
販売しているpoly(I)poly(C)は溶解性に優れており、本
発明において好ましいdsRNAとして挙げられる。
【0011】一方本発明の工程a)における基質とは、
ATPやその誘導体である。本発明の基質は、dsRNA
の存在下2−5ASの作用によって2−5A、またはそ
の誘導体を合成することができるものを指す。ATPの
誘導体とは、ATPを放射性同位元素(以下RIと省略
する)のような標識成分で標識したもの等が含まれる。
標識成分にはRI以外に蛍光物質、発光物質、あるいは
酵素のような成分が知られている。
【0012】基質は、ATPにしろ、あるいはその誘導
体にしろ、一般的な血液材料を試料とするのであれば血
清1μlに対して0.1−10.0μg、好ましくは0.
2−1.0μgという範囲で用いるのが有利である。こ
れら基質の必要量は、予想される2−5AS活性によっ
て消費されてしまわないように過剰となるように設定す
る。本発明においては先に述べたように酵素の活性が反
応生成物の生成量に反映されなければならない。基質で
あるATPやその誘導体が少量となれば、特に2−5A
S活性が大きな場合には基質が消費されてしまって測定
が成立しなくなってしまう。他方、不必要に高濃度の基
質は特に反応生成物を免疫学的な手法によって測定する
場合に問題となることが有るので注意しなければならな
い。すなわち、反応生成物である2−5Aを免疫学的な
手法によって測定する時に必要な2−5Aを認識する抗
体には、ATPと交差反応を示すものがある。このよう
な抗体を高濃度のATPの存在下で用いれば、ATPが
交差反応によって目的である2−5Aとの反応に影響を
与えてしまう可能性がある。更に一般的には酵素反応に
おける不必要に高濃度な基質の存在が、酵素反応に対し
てマイナスの影響を与えることが公知である。
【0013】更に工程a)における血中2−5ASと
は、全血、血清、血漿、そしてこれら血液分画を更に分
画したもの等に含まれる2−5ASを意味する。これま
での報告では血清や血漿を試料として利用することが多
かった。しかし必ずしもこれらの試料に限定する必要は
ない。たとえば全血を試料として用いることも可能であ
る。全血を試料とする時には、抗凝固対策を行うととも
にリンパ球を破壊して試料とすると良い。リンパ球は溶
血処理によって破壊することができる。溶血処理によっ
て2−5ASを多く含むリンパ球を含む血球成分が破壊
され、感度的にはより有利な条件で測定を行えることに
なる。また血清のような血球成分と分離した試料では、
分離作業中のリンパ球の破壊が2−5AS活性の上昇の
原因になる。また血球成分から血清を分取する時にも、
赤血球と血清の境界に沈殿するリンパ球分画周辺では上
清中に比べて2−5AS活性が比較的高いという試料の
均一性の問題も有り、試料の取り扱いには注意が必要で
ある。これに対して全血を試料とする時には、試料中の
リンパ球を破壊して測定する限りこのような注意をする
必要は無くなる。
【0014】リンパ球の破壊方法としては、全血:イー
グルMEM培地=1:9(10倍希釈)となるように混
合し、これをくり返し凍結−溶解する方法を示すことが
できる。この方法によればリンパ球を簡単に、そして完
全に破壊することができるので高い感度と精度を期待で
きる。また凍結状態で試料を輸送すれば、2−5ASの
保存の面でも有利と言える。なおこの操作によって赤血
球も破壊されるが、最終的な酵素反応生成物の測定に着
色やヘモグロビンによる酵素的な触媒活性による影響の
無い限り問題となることはない。
【0015】血清にしろ全血にしろ、これら血液試料に
含まれる2−5AS活性は、細胞溶解成分等に比べて一
般に極めて小さなものである。たとえばFL細胞(ヒト
羊膜細胞株)は、培養液中に各種インターフェロンを添
加して一定時間培養を行うと細胞中に2−5ASを誘導
することができる。ただしFL細胞の場合は、このとき
培養上清中には酵素活性は見いだせない。培養後の細胞
を破壊して得た細胞抽出液の2−5AS活性を市販の2
−5AS活性測定キットで測定した場合、酵素反応の生
成物である2−5A濃度で10000pmol/dl以上のき
わめて高い酵素活性を有する。また誘導条件が至適だと
30000pmol/dlまで上昇するケースも観察される。
他方、血中の2−5AS活性は、正常者で50−100
pmol/dl、高値検体でも1000pmol/dl前後である。な
お市販のキットの標準は810pmol/dlが上限となって
いる。このように血中の2−5AS活性は培養細胞に比
べて微量にしか存在せず、高い感度を要求されることが
多い。
【0016】なお工程a)において、試料、活性化剤で
あるdsRNA、そして基質であるATP(またはその誘
導体)の三者は、どのような順序で混合しても良い。た
だ2−5ASを活性化してから測定を行うという原理を
考慮すれば、試料にdsRNAとATPを順次添加するの
が好ましい順序と言える。しかし2−5ASのdsRNA
による活性化は速やかに進行するので、反応成分の添加
順序は基本的には結果に大きな影響は与えない。
【0017】工程b)2−5ASにより2−5Aまたは
その誘導体を生成させる工程 この工程では、工程a)で混合した反応液中で2−5A
Sによる酵素反応を行わせて2−5A(またはその誘導
体)を生成させる。つまりATPからは2−5Aが、A
TPの誘導体により2−5A誘導体が生成する。工程
b)は2−5ASの酵素反応に好適な環境のもとで行
う。酵素反応に影響する条件として、次のような因子が
知られている。2−5ASの酵素反応に関する一般的な
諸条件については、先行技術文献[4][5]を参考にすると
良い。 [4]J.Biol Chem.,254,p12034-12037,1979 [5]「蛋白質・核酸・酵素」の別冊「生命科学を推進す
る分子ウィルス学」1992
【0018】・pH:ヒトの2−5ASは、pH7.0
−8.0、好ましくはpH7.5−7.8で最大の活性
を示すとされているので、酵素反応にはこの範囲のpH
を与える緩衝液が用いられる。具体的には、10−20
mMのHEPES緩衝液等を示すことができる。ただし2
−5ASのサブタイプによっては、異なる至適pHを持
つものも有るので、このようなサブタイプを測定の対象
とする時には適当なpHを選択する方が好ましい場合も
有る。たとえば分子量65kDを持つ2−5ASのサブタ
イプでは至適pHが6.5であることが知られており、
100kDのサブタイプとは異なっている。
【0019】・補欠因子:2−5ASは酵素活性の発現
に当たってMg2+のような2価の金属イオンを要求す
る。したがって工程d)を行うためには、2−5ASの
活性を十分に維持するためにこれら2価の金属イオンを
供給しておく必要がある。Mg2+は酢酸マグネシウムの
ような塩として添加すると良い。またその使用濃度は、
0.5−50mM、好ましくは3−10mM程度を例示する
ことができる。
【0020】・温度等の諸条件:工程b)を構成する2
−5ASによる酵素反応は、20−50℃の温和な温度
条件の基で行うこのが好ましい。特に好ましい温度は3
0−40℃である。また2−5ASはSH酵素であるた
め、βメルカプトエタノールやジチオスレイトールのよ
うなSH保護剤の共存下で反応を行うと良い。これらの
保護剤によって、酵素活性を高度に維持することができ
る。また酵素活性を高度に維持するために20%程度の
グリセロールの添加が有効であることが知られているま
た2−5ASの酵素活性を十分に発現させるために適当
な塩濃度を与えるのが好ましい。たとえば塩としてKや
Naを用いる場合、30−60mMの塩濃度が好適であ
る。
【0021】工程c)工程b)において生成する2−5
A、その誘導体、またはピロリン酸、あるいは消費され
るATP、またはその誘導体を測定することにより2−
5ASの活性を決定する工程 工程b)で2−5ASの酵素反応に必要な条件を与えれ
ば、2−5ASに触媒される反応は酵素活性に律速さ
れ、その反応生成物の量は酵素活性に左右される。この
ような好適な条件を与えれば反応生成物(または消費さ
れる物質)の量を指標として酵素活性を決定することが
できる。試料の体積を一定とした場合、これらの反応生
成物の量や濃度はそのまま酵素活性の指標とする事がで
きる。また予め2−5AS酵素の蛋白量と酵素反応生成
物の生成速度について検定した標準を用いれば、この標
準を基に酵素活性単位として捉えることも可能である。
酵素活性の指標となる反応生成物としては、2−5A、
2−5A誘導体、そしてピロリン酸を挙げることができ
る。ここで言う2−5A誘導体とは、先に述べたとおり
ATP誘導体を基質として生成される物質である。一方
酵素反応によって消費される物質とは、基質であるAT
Pやその誘導体を挙げられる。各生成物の測定方法を以
下に具体的に述べる。
【0022】2−5Aの測定法:2−5Aは、酵素、発
光物質、蛍光物質、RIといった公知の標識技術を利用
した免疫測定法によって測定することができる。特に
125I標識を用いたRIA法[6]は高い感度を簡単な操作
で達成することができるので、本発明における好ましい
態様として挙げられる。この他に32Pによる標識抗原を
用いる方法[7][8]も公知であるが、感度や半減期を考慮
すると125Iの方が有利である。 [6]Progress in clinical and biological research. V
ol.202,1985,"The 2-5ASystem - Molecular and clinic
al aspects of the interferon-regulated pathway -"
p97-104 [7] Nature 288(13),189-192,1982 [8] J. Biol.Chem.,259(3),1727-1730,1984
【0023】2−5A誘導体の測定法:2−5A誘導体
の場合には、化合物自身が測定可能な標識を備えている
ために、これを抗体のような特異的な結合成分で捕捉し
てATP誘導体と分離すれば測定可能である。分子量の
違いに基づく分離も可能であるが、そのためには電気泳
動やクロマトグラフィーに頼ることになるので、本発明
の目的の一つである簡便性を損なうおそれが有る。また
2−5ASはサブタイプによって生成する2−5Aの分
子量に違いの有ることが知られている。したがって分子
量に基づく分離操作を必要とする測定系では、サブタイ
プが混在する時に高い精度を期待できない可能性が有
る。
【0024】ピロリン酸の測定法:ATPを重合して2
−5Aとする時に副産物として生成するのがピロリン酸
である。したがってピロリン酸は定量的に生成し、酵素
活性の指標とすることが可能である。ピロリン酸の測定
にはさまざまな方法が知られているが、高い感度の期待
できる生物発光反応に基づく測定法が有利である。この
ような測定法として、細胞培養物の2−5A活性をピロ
リン酸の酵素的な測定系の応用により、吸光度測定した
報告が有る[9]。反応原理は次の反応式によって示すと
おりである。なお以下の反応式においてピロリン酸はP
Piと表した。
【0025】
【化1】 このような酵素的な反応をピロリン酸の測定法として本
発明に応用することができる。酵素的な反応ではRI標
識物質を使わないで測定系を構成できるので、設備面で
は有利であるが、RIAに匹敵する感度を達成するには
発光増強剤などとの組み合わせが必要な場合も有る。 [9]Anal.Biochem.207,90-93,1992
【0026】ATPの測定法:ATPは2−5Aの合成
に伴って定量的に消費される物質である。したがって2
−5ASによる酵素反応の前後でATP濃度を測定して
差を求めれば、原理的には2−5AS活性の指標とする
ことができる。ATPは生物発光反応によって測定でき
ることから、ある程度の感度は期待できる。
【0027】以上のような2−5ASの活性測定に必要
な次の成分は、反応に必要な量を予め別々に組み合せ
て、あるいは混合して試薬とすることができる。 ・水溶性のdsRNA ・ATPまたはその誘導体 試薬は2−5ASの酵素反応に好適な環境を与える緩衝
液に溶解させておいても良いし、あるいは保存性の向上
や運搬を容易にするために乾燥した状態とすることもで
きる。乾燥させる時には、保護作用と同時に溶解性の向
上や賦形剤としての機能を期待してショ糖や乳糖などの
糖類や、ウシ血清アルブミンのような不活性蛋白質を加
えるのが好ましい。
【0028】本発明の試薬に加えて、更に前記工程c)
に必要な測定系を構成する成分を組み合せれば2−5A
Sの活性測定用キットを構成することができる。このキ
ットには試料の測定に必要な試薬類の他に、2−5AS
活性について検定した標準試料や、2−5AS活性を取
り除いた陰性対象等を組み合せておくと便利である。
【0029】本発明は、血中2−5ASを水溶性dsRN
Aと接触させることによる活性化方法をも提供する。全
血、血清、および血漿のような血液試料、あるいはその
分画や希釈したものに、先に述べたような水溶性のdsR
NAを混合することにより、本発明の活性化は達成され
る。
【0030】更に、本発明は2−5ASの活性測定に当
たって、水溶性の2本鎖RNAを活性化剤として添加す
ることにより再現性を向上させる方法を提供する。血中
に存在する2−5ASのように小さな酵素活性を測定す
る時に必要とされていたpoly(I)poly(C)−アガロース等
の不溶性の試薬の使用は、操作ステップや試薬の製造工
程を複雑にする原因となり、結果として再現性の低下に
つながりやすい。本発明はこのような不溶性試薬を使わ
ず、水溶性の試薬を利用することによって再現性を向上
させるものである。
【0031】
【作用】本発明における水溶性のdsRNAは、2−5A
Sの活性化剤として用いる。従来の2−5AS活性化剤
としてはアガロースやセファロースのような固相に結合
した不溶性のdsRNAが用いられることが多かった。特
に血中の2−5ASのように微量の活性を測定するとき
には、いったん固相上のdsRNAに2−5ASを捕捉、
そして洗浄することによって血清成分から分離されてい
た。本発明は、高い感度の達成には必要と思われていた
分離ステップを水溶性のdsRNAの利用によって省略で
きることを見いだしたものである。先に述べたように血
中2−5AS活性のレベルは培養細胞などにおける活性
の数10−数100分の1にすぎず、血中における2−
5AS活性を分離操作抜きで測定することが困難なこと
は明らかである。
【0032】また本発明の好ましい態様において2−5
AS活性測定に応用される2−5AのRIAは、poly
(I)poly(C)−アガロースを使わないことによる感度面で
の不利益を補うものである。ただしRIAとの組合せは
あくまでも好ましい態様である。このほかにも2ー5A
S活性の指標とすることができる反応系の存在すること
は先に述べたとおりである。
【0033】
【発明の効果】本発明は、不溶性の試薬を使わない2−
5ASの活性測定を可能とする。不溶性の試薬を使わな
いので、酵素の活性化において従来の測定では必須であ
った遠心分離のような付加的な操作を不要とし、結果と
して簡便な操作と高い再現性を実現する。
【0034】
【実施例】
本発明による2−5AS活性の測定 水溶性のdsRNAとしてpoly(I)poly(C)を用い、血清を
試料として2−5AS活性を測定した。2−5AS活性
は、最終的に生成される2−5AをRIAによって定量
することによって決定する方法を採用した。操作は次の
とおりである。合わせて操作フローを図1に示した。同
時にpoly(I)poly(C)−アガロースを利用した従来の方法
によって同じ試料を測定し、再現性や感度等を比較し
た。
【0035】血清(あるいは2−5ASフリー血清、2
−5AS活性既知のコントロール血清)50μlに、水
溶性のdsRNAとして50μg/mlのpoly(I)poly(C)(S
IGMA製)溶液を200μlと90μg/mlのATP溶
液200μlを加え、よく混和して37℃で30分間イ
ンキュベートした。反応後125I標識した2−5A(1
50000cpm/ml)と、抗ウサギ抗体抗血清+抗2−5
Aウサギ血清とを含む抗体懸濁液200μlを加え、よ
く混和して37℃で1時間インキュベートした。反応
後、3000rpmで30分間遠心分離し沈殿分画の放射
活性をウエル型シンチレーションカウンターによって測
定した。一方、従来の測定方法としてはpoly(I)poly(C)
−アガロースを用いた市販のキット「2−5A栄研」
(栄研化学製、商品名)を添付文書にしたがって用い
た。従来法の操作フローは図2に示した。検体として
は、正常者の血清20検体、患者血清5検体を用いた。
また再現性を確認するために、正常者の検体5検体を1
0回くり返し測定した。再現性については、10連で測
定して測定内再現性を、また10回の測定で測定間再現
性を観察した。
【0036】2−5ASフリーの標準血清を試料とし、
2−5A標準(0、10、30、90、270、および
810pmol/dlの2−5Aを含有)の添加によって得ら
れた標準曲線を図3に示した。この標準曲線をもとに、
2−5AS活性既知の標準血清の2−5A測定値と各試
料から得られた2−5A測定値をあてはめて2−5AS
活性値を算出することができる。こうして求めた2つの
測定方法による2−5AS活性測定値を表1に示す。表
中gelで示したのが従来法、solutionで示したのが本発
明による測定値である。またこの測定値をグラフにスポ
ットしたのが図4である。両者の間には高い相関が得ら
れた。
【0037】
【表1】
【0038】最後に本発明による測定結果と従来法の測
定結果の再現性を比較した結果を表2(測定内再現
性)、表3(測定間再現性)に示した。同じ検体につい
て10回の測定を繰り返した結果、水溶性のpoly(I)pol
y(C)を用いた本発明の方法が再現性に優れていることが
確認できた。特に測定内再現性(表1)では、従来法に
比べて再現性が大きく改善されていることが明らかであ
る。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による2−5AS活性の測定フロー。
【図2】従来法による2−5AS活性の測定フロー。
【図3】本発明と従来の方法によって得られた標準曲
線。縦軸はB/B0(%)、横軸は2−5A濃度(pmol
/dl)を示す。
【図4】本発明と従来の方法によって得られた2−5A
S活性値の相関図。縦軸は本発明による測定値(pmol/d
l)、横軸は従来法の測定値(pmol/dl)である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の工程a)−c)で構成される血中2’
    −5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法におい
    て、酵素の活性化剤として水溶性の2本鎖RNAを用い
    る血中2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定
    方法 a)2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素活性を含む試
    料を活性化剤とアデノシン3リン酸またはその誘導体と
    混合する工程 b)2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素により2’−
    5’オリゴアデニル酸またはその誘導体を生成させる工
    程 c)工程b)において生成する2’−5’オリゴアデニ
    ル酸、その誘導体、またはピロリン酸、あるいは消費さ
    れるアデノシン3リン酸またはその誘導体を測定するこ
    とにより2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性を
    決定する工程
  2. 【請求項2】水溶性の2本鎖RNAが、ポリイノシン酸
    ・ポリシチジル酸である請求項1の血中2’−5’オリ
    ゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法
  3. 【請求項3】水溶性の2本鎖RNAが、鎖長60bp以上
    である請求項1または2の血中2’−5’オリゴアデニ
    ル酸合成酵素の活性測定方法
  4. 【請求項4】2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素を含
    む試料を血清として1μlに対し、0.1〜1μgの水溶
    性の2本鎖RNAを用いる請求項1〜3のいずれかの血
    中2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法
  5. 【請求項5】工程b)において生成する2’−5’オリ
    ゴアデニル酸を、125I標識2’−5’オリゴアデニル
    酸によるラジオイムノアッセイによって測定する請求項
    1の血中2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測
    定方法
  6. 【請求項6】2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素活性
    を含む試料が、血液、血清、および血漿からなる群から
    選択される請求項1の血中2’−5’オリゴアデニル酸
    合成酵素の活性測定方法
  7. 【請求項7】2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素活性
    を含む試料が、血液であり、この血液が溶血処理によっ
    てリンパ球を破壊したものである請求項6の血中2’−
    5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法
  8. 【請求項8】次の成分で構成される血中2’−5’オリ
    ゴアデニル酸合成酵素活性の測定試薬 a)アデノシン3リン酸、またはその誘導体 b)水溶性の2本鎖RNA
  9. 【請求項9】次の成分で構成される血中2’−5’オリ
    ゴアデニル酸合成酵素活性の測定キット a)アデノシン3リン酸、またはその誘導体 b)水溶性の2本鎖RNA c)2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素により生成す
    る2’−5’オリゴアデニル酸、その誘導体、またはピ
    ロリン酸、あるいは消費されるアデノシン3リン酸また
    はその誘導体を測定するための手段
  10. 【請求項10】血中2’−5’オリゴアデニル酸合成酵
    素の測定に当たって、水溶性の2本鎖RNAを添加する
    ことにより2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素を活性
    化する方法
  11. 【請求項11】2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の
    活性測定に当たって、水溶性の2本鎖RNAを活性化剤
    として添加することにより再現性を向上させる方法
JP29906895A 1995-10-24 1995-10-24 2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の活性測定方法 Pending JPH09107993A (ja)

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