JPH0880342A - 人工血管用管状体 - Google Patents

人工血管用管状体

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JPH0880342A
JPH0880342A JP6243436A JP24343694A JPH0880342A JP H0880342 A JPH0880342 A JP H0880342A JP 6243436 A JP6243436 A JP 6243436A JP 24343694 A JP24343694 A JP 24343694A JP H0880342 A JPH0880342 A JP H0880342A
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JP
Japan
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blood vessel
artificial blood
tubular body
fiber
blood vessels
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JP6243436A
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English (en)
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Souhee Wakabayashi
惣兵衛 若林
Tomoko Hashimukai
智子 橋向
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Seiren Co Ltd
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Seiren Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】天然血管に類似した柔軟性及び弾性を有し、血
管移植に際して天然血管等の生体組織と容易に縫合が可
能な、そして上記移植に伴う天然血管の損傷を軽減する
ことが可能であり、血管口の開存状態を長期にわたり保
ち、且つ生体組織の生成が良好で長期的に安定な再生組
織を維持することが可能な人工血管用管状体を提供する
こと。 【構成】複合繊維、好ましくは接合型複合繊維、さらに
好ましくは当該構成繊維がポリエチレンテレフタレート
及びポリブチレンテレフタレート弾性体である複合繊維
を含む人工血管用管状体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複合繊維によって管状
に形成された人工血管として用いられる管状体に関す
る。更に詳しくは、天然血管に類似した柔軟性及び弾性
を有し、血管移植に際して天然血管等の生体組織と縫合
が容易で、そして上記移植に伴う天然血管の損傷を軽減
することができ、血管口の開存状態を長期にわたり保
ち、且つ生体組織の生成が良好で長期的に安定な再生組
織を維持することが可能な人工血管用管状体に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、医療技術、特に人工生体組織の進
歩には目を見張るものがある。そして、かかる人工生体
組織の中でも人工血管は現在盛んに開発が行われている
ものの一つである。例えば、織り処理や編み処理を施し
たポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)製の人
工血管及び延伸テフロン製の人工血管が開発され、これ
らは既に商品化されている。
【0003】特に、小口径の人工血管においては血管口
の開存状態を保持し、優れた開存性を当該人工血管にお
いて保証することが重要である。すなわち、当該人工血
管内腔面において抗血栓性を保持することにより末梢血
行障害等の虚血性疾患等の発生を防止し、血流を均一に
して血管瘤等の発生をも防ぐ必要がある。
【0004】そして、移植される人工血管と天然血管の
物性の不一致が、特に両者の血管の吻合部における内膜
肥厚を惹起し、さらに血流の乱れをも惹起すること、す
なわち、人工血管において所望される優れた開存性保持
の障害になることが報告されている(Kinley CE,et a
l.:Compliance:a continuing problem with vascular g
rafts. J Cardiovas Surg 21:163-170, 1980 或いは、
Okuhn SP,et al.:Does compliance mismatch alone cau
se neointimal hyperplasia? J Vascular Surg 9: 35-4
5,1989) 。
【0005】優れた開存性を保つためには、可能な限り
生体血管に類似した物性を有する素材を人工血管の素材
として用いることが望ましい(Waden R,et al.:Matched
Elastic Properties and Successful Arterial G
rafting. Arch Surgvol.115, Oct 1980 , pp 1166-11
69 )。かかる観点より、生体血管材料として弾性材料を
用いる試みが積極的に行われている。例えば、弾性のあ
る合成高分子材料であるポリウレタンを使用し、これを
多孔質化する方法(特開昭60-182958,特開昭60-18816
4);静電紡糸により多層の多孔質構造体を作成する方法
(特公昭62-118861);さらには不織布化した多孔質シー
トを積層する方法(特開昭62-183757)等の検討が進めら
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近の
報告(田畑等ポリウレタン製ペーシングリードの被覆損
傷についての実験考察、人工臓器 vol.19 No.4:1427-14
31,1990)によれば、ポリウレタン製人工血管を長時間組
織内に埋入させると、その素材であるポリウレタンの劣
化が認められることが明らかになった。この事実は生体
内で永久に機能すべき人工臓器である人工血管の素材と
しては好ましいものであるとはいえない。特に、過酷な
血液の拍動流により、water hummer stress を常に受け
る動脈部分として人工血管を用いる場合には、材料劣化
は動脈瘤発生の直接的原因となり危険である。すなわ
ち、本発明が解決すべき課題は、上記人工血管の性質
上、可能な限り天然血管の物性に近似し、且つ素材の劣
化が防止された人工血管の提供にある。
【0007】さらに、人工血管は生体内に埋植するもの
であるから、術語の癒合過程において、人工血管に生体
組織が入り込んで成長、増殖し、繊維状新生内膜等の生
体組織の生成が良く、長期的に安定な再生組織を維持す
ることが可能であることが好ましい。すなわち、本発明
はこれらの組織親和性を有する人工血管の提供をも課題
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、従来技術に
おいてはポリウレタン等の単独繊維又はそれらの単なる
組合せを人工血管の素材として用いるのではなく、複合
繊維を人工血管素材として採用することにより所望の課
題解決をなし得ることを見出した。本発明は、このよう
な知見に基づいてなされたものである。
【0009】すなわち、本発明は下記の技術的事項をそ
の要旨とするものである。 1、 複合繊維を含む人工血管用管状体。 2、 複合繊維が接合型複合繊維である上記の人工血管
用複合体。 3、 複合繊維が、伸長弾性回復率が90%の場合に、
伸長率が2%以上となる複合繊維である上記1又は2記
載の人工血管用管状体。 4、 複合繊維がポリエチレンテレフタレート及びポリ
ブチレンテレフタレート弾性体により構成される上記
1、2又は3記載の人工血管用管状体。 5、 減量処理手段によって複合繊維表面に微細な窪み
が多数設けられている上記1、2、3又は4記載のいず
れかの請求項記載の人工血管用管状体。 6、 減量処理手段による減量率が2〜35%である上
記5記載の人工血管用管状体。 7、 人工血管用管状体が織り組織又は編み組織よりな
る上記1乃至6のいずれか記載の人工血管用管状体。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明人
工血管用管状体の材料となる複合繊維とは、繊維成分と
して2成分以上の成分を混合することなく独立層として
同一口金孔から紡糸して複合した繊維を意味する。一般
的に複合繊維を採用する目的としては、潜在的な繊維
のちぢれ能力である潜在捲縮性付与;繊維の曲げ剛
性、引っ張り剛性、弾性回復性等の物理的性質の改良;
複合成分間の剥離を利用し、繊維のフィブリル化、超
極細繊維化;複合成分間の溶剤溶解性の差を利用し、
1成分を溶解除去し、超極細繊維とすること;複合成
分間のポリマー融点差を利用し、適切な加熱処理で繊維
相互間の熱圧着をすること;表面構造の変化等によ
り、吸湿性、感触、耐摩擦性等に関する変化の付与等を
挙げることができる。本発明においては、所望する人工
血管複合体への潜在捲縮性付与及び弾性回復率付与を目
的として上記の複合繊維を使用する。
【0011】具体的にかかる複合繊維は、伸長弾性回復
率が90%の場合に、伸長率が2%以上となる複合繊維
である。そして、当該複合繊維により作出される人工血
管の弾性回復性及び組織親和性を可能な限り良くすると
いう観点からすれば、上記の伸長弾性回復率(90%の
場合)においても伸長率が5%以上であることが特に好
ましい。
【0012】ここで伸長率及び伸長弾性回復率とは、長
さLの物を伸長した後、その長さがL1となり、その後
回復してL2となった場合に、 L1−L/L×100(伸長率) L1−L2/L1一L×100(伸長弾性回復率) で表される数値のことをいう。
【0013】さらに、複合繊維はそのポリマーの複合状
態に応じて、2成分が張り合わされた状態で接合して
いる接合型;2成分が交互に接合された形式で多層を
形成している多層接合型;複合成分ポリマーが繊維軸
方向で交互に積層配置された状態で複合されている軸方
向複合型に分類される。
【0014】本発明においてはこれらのいずれの分類の
複合繊維をも用いることができる。但し、上記の所望す
る人工血管複合体への潜在捲縮性付与及び弾性回複性付
与という複合繊維採用の目的に鑑みれば、上記の接合型
複合繊維を用いるのが特に好ましい。
【0015】本発明において使用される複合繊維の構成
繊維は、可能な限り生体内における安定性に優れたもの
を用いるのが、生体内移植後の材料劣化を防止し得ると
いう観点より好ましい。具体的にはポリエステル系繊維
が当該複合繊維の構成繊維として好ましく、特にポリエ
チレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートと
の組合せの複合繊維が、それぞれの構成繊維の減量速度
の差を利用することで布はくの表面に窪みを付与するこ
とができるという点において特に好ましい。
【0016】また、上記組合せにかかる繊維の少なくと
も一つの繊維が、常温で高い弾性を示す弾性繊維である
ことが、作出される人工血管に適切な弾性を与え得ると
いう理由により好ましい。そして、複合繊維の構成繊維
のうち、減量率の小さい構成繊維を弾性繊維とすること
が、減量処理が弾性回復率に与える影響を可能な限り少
なくする上で好ましい。例えば、上記のポリエチレンテ
レフタレートとポリブチレンテレフタレートとの組み合
わせにかかる複合繊維においては、相対的に減量率の小
さなポリブチレンテレフタレートを弾性繊維とするのが
好ましい。
【0017】本発明において用いられる複合繊維の構成
繊維の複合比は本発明人工血管用管状体に適切な形体安
定性及び弾力性を付与し、潜在捲縮性を発現させるとい
う観点より定められる。例えば、ポリエチレンテレフタ
レートとポリブチレンテレフタレート弾性体の複合比
は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフ
タレート弾性体が重量比で20対80乃至80対20と
なることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの割
合が上記の範囲を越えて多くなり過ぎると、作出される
人工血管用管状体は形体安定性には優れるが、弾力性に
欠けることになる。また、上記の範囲を超えると、複合
繊維の構成繊維個々の性質が顕在化し、両構成繊維の性
質の差により、複合繊維としての性質として現れる潜在
捲縮性の発現を損なう恐れがある。
【0018】また、本発明において用いいられる複合繊
維は、嵩高処理が行われていることが好ましい。なお、
当該嵩高手段としては、例えば加撚−熱固定−解撚法、
仮撚り法、押込み法、撚加法、空気噴射法、賦形法等の
公知の嵩高手段を挙げることができるが必ずしもこれら
の手段に限定されるものではない。
【0019】更に、本発明において用いられる複合繊維
の太さは、用いる複合繊維の具体的性質に応じて定めら
れる。例えば、用いる複合繊維がその構成繊維が上記に
例示したポリエチレンテレフタレート及びポリブチレン
テレフタレート弾性体である接合型複合繊維であり、複
合度合が20対80乃至80対20(重量比)であり、
かつ嵩高処理手段が上記記載手段である場合には、10
〜100デニールの範囲で使用することが可能である。
当該複合繊維の太さが100デニールを越える場合に
は、繊維の弾性が著しく失われ、逆に10デニール未満
の場合には、高弾性を有する反面、強度的に不十分にな
り好ましくない。そして、これらの弾性と強度を考慮に
入れた複合繊維の太さの選択の基準となる観点より、採
用する複合繊維の太さとして20〜50デニールが好ま
しく、特に30デニール程度であることが好ましい。
【0020】上記の複合繊維を織り、編み、又は組処理
のいずれか又はこれらを2つ以上併用して管状の布はく
とすることにより所望する人工血管用管状体を得る。な
お、管状の布はくの構造は特に限定されるものではな
く、例えば経編み構造(組織)、横編み構造(組織)、
三軸編み構造、袋織り構造、組紐構造、その他の布はく
の構造として考えられるあらゆる構造を採用することが
可能である。なお、これらの構造のうち、経編み構造及
び横編み構造は、これらの構造として作出された人工血
管を吻合する際、吻合部のほつれが生じにくい上に、当
該人工血管に所望の弾性回復性及び組織親和性をより有
効に発現させることができるという点において特に好ま
しい。
【0021】また、本発明人工血管用管状体の表面に微
細な窪みを形成するのが、移植後、生体内細胞及び組織
を良好に当該管状体内に進入させ得るという点において
好ましい(特開平2−234755号公報参照)。
【0022】なお、参考までに、この特開平2−234755
号公報には、「編み物、織物又は不織布の構造を有する
繊維構造体で構成される人工血管又は人工補綴材は、そ
の繊維表面に多数の小さな窪みが形成されている。その
ため、当該人工血管又は人工補綴材を生体内に埋植した
際に、上記窪みが繊維の成長や繊維芽細胞の増殖の足掛
かりとなって繊維状新生内膜等の生体組織の生成が良好
になり、その結果癒合過程が良好になる。」点が示され
ている。
【0023】窪みの形成処理は複合繊維を上記手段によ
り管状の布はくの作出後に行うことも可能であり、当該
作出前に行うことも可能である。しかしながら、当該作
出前に窪みの形成処理を行うと、糸表面の凹凸のために
糸強度が低下し、そのため特に上記布はくの形成処理の
際の糸切れが起こりやすく不都合である。すなわち、布
はくの作出後に、窪みの形成処理を当該布はくに施すの
が好ましい。
【0024】窪みの形成処理手段としては、一般的な減
量処理手段を用いることができる。具体的には、熱アル
カリ処理、酵素処理等を挙げることができる。これらの
減量処理手段の中でも、特に熱アルカリ処理手段は、安
定して減量することが可能である点及び低コストである
点において、より好ましい処理方法である。
【0025】例えば、ポリエチレンテレフタレートとポ
リブチレンテレフタレートより構成された複合繊維を熱
アルカリ処理すると、ポリエチレンテレフタレートサイ
ドはその表面から加水分解が進み、徐々に細かくなり減
量する。そして、この減量処理の際に繊維の表面に多数
の微細な窪みが形成される。一方、ポリブチレンテレフ
タレートは殆ど減量されない。ポリブチレンテレフタレ
ート(PBT)の一般的な減量速度直線を(菅野勝男;
染色工業,Vol.33,No.10) 図1に示して参考に付する。
【0026】−なお、アルカリ減量処理においては、通
常用いられる種々の薬剤を用いることができる。例え
ば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ム等を広く用いることができるが、水酸化ナトリウム
が、減量効果を基準としたコスト面を考慮すると好まし
い。
【0027】当該減量処理における減量率は複合繊維全
体として2〜35%が好ましい。2%未満では窪みの形
成が不完全であり、35%を越えると繊維が細り過ぎて
強度的に問題があり好ましくない。そして繊維強度及び
窪みの形成度合いを考慮すると、好ましくは5〜25%
であり、さらに好ましくは10〜20%である。
【0028】なお、複合繊維の構成繊維の個別の許容さ
れる減量率は当該構成繊維の種類に応じて選択され得
る。例えば、当該構成繊維がポリエチレンテレフタレー
ト及びポリブチレンテレフタレート弾性体である場合に
は、前者において許容される減量率は3〜70%、好ま
しい減量率は8〜15%であり、後者において許容され
る減量率は1〜15%であり、好ましい減量率は3〜5%
である。これらの減量率において減量処理された構成繊
維からなる複合繊維全体の減量率が、前記の2〜35%
の範囲に入ることが好ましいことは勿論である。
【0029】このようにして作出される本発明の人工血
管は、その内部及び外部表面に微細な捲縮構造が無数に
形成され、細胞や生体組織が当該捲縮構造に容易に付着
し、さらに繊維同士が互いに絡み合い、外れにくく管状
構造が安定的に保持される。また、生体血管に近似した
伸縮性を有する。
【0030】具体的には、150mmHgの内圧を付加した
ときの径方向の伸び率が2〜15%、より好ましくは5
〜15%、軸方向の伸び率が2〜20%、より好ましく
は5〜15%であるという条件を満たすものとなる。本
発明の人工血管が、上記したような伸び率を有するもの
であることにより、生体に移植された際、生体血管の拍
動に対して良好に追従性し得るので、優れた抗血栓性を
発揮することや吻合部の内膜肥厚を防止することが可能
になる。
【0031】また、本発明人工血管用管状体の管径は、
使用する部位や血管の種類に応じて3〜30mm程度の幅
広い範囲において任意に設定することができる。本発明
人工血管用管状体の場合、その開存性が極めて良好なも
のであるために、例えば管径3〜6mmの小口径のもので
あっても十分に人工血管としての所望の機能を発揮し得
るものである。また、本発明人工血管用管状体の肉厚
も、使用する部位や血管の種類に応じて選択される。す
なわち、動脈のように高い圧力を受ける部位で使用する
場合は肉厚の当該管状体を、末梢血管や静脈のように低
い圧力しか受けない部位で使用する場合は比較的肉薄な
当該管状体を用いる。
【0032】なお、本発明人工血管用管状体の厚さは、
複合繊維径及び複合繊維から管状体の作出手段、すなわ
ち織り、編み又は組処理法等から必然的に決定される
が、通常は0.3〜0.5mmの範囲である。
【0033】さらに本発明人工血管用管状体の透水量
は、かかる人工血管を移植する部位により要求される透
水量に応じて選択され、この限りにおいて特に限定され
るものではないが、一般的には500〜4000cc/ 分
/cm2−120mmHgであり、より好ましくは1500〜3
500cc/ 分/cm2−120mmHg程度である。
【0034】本発明の人工血管用管状体は、滅菌後、直
接生体内に入れて使用することができる。すなわち、当
該生体内で細胞や組織が経時的に生着し得る。
【0035】さらに、滅菌処理後にin vitroで、宿主血
管より予め無菌的に採取された宿主生体血管壁細胞を播
種し、その管壁の表面を機能的及び構造的な面から生体
血管を模倣して再構築し、それを移植することも可能で
あり、また必要に応じて使用に先立ち、従来公知の各種
表面処理、例えば抗血栓性付与のためのヘパリン処理等
を行うことも可能である。
【0036】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定
されるものではない。
【0037】〔実施例1〕複合繊維の1成分としてポリ
エチレンテレフタレート(RE730:東洋紡績社
製)、他成分としてポリエステル系弾性体ポリブチレン
テレフタレート(ノバドゥール:三菱化成工業社製)を
用いて、それぞれ単独に押出機により溶融したのち、2
90℃に設定されたノズルブロックへ流入させ、公知の
背腹構造の接合型複合繊維用ノズルを用い、直径0.5
mm、24ホールの口金からノズル当たり20g/分で押出
し1000m/分で巻き取った。ポリエチレンテレフタレ
ートとポリブチレンテレフタレートとの複合比は50:
50であった。延伸は、80℃のホットプレート及び1
20℃のホットプレートとの間で延伸倍率2.5倍で行
った。次に公知の技術に従い、20℃、撚り回数300
0T/M で嵩高加工を行った。得られた複合繊維は30デニ
ールであった。本繊維は弾力性に優れ、その伸長回復率
曲線(応力と伸長率との関係による)を図2において実
線で示した。得られた複合糸を使用し、30ゲージダブ
ルラッセル機により管状の布はくを作成した(その組織
は、逆ハーフ組織とした)。
【0038】次に、ソーダ灰2g/l 、トリポリリン酸ソ
ーダ2g/l 、非イオン界面活性剤2g/l の浴中、90℃
で20分間精錬処理を行った。この精錬工程で不純物が
除去されるとともに捲縮が発現した。次に重量を測定し
た後、苛性ソーダ溶液(62.5g/l)へ浸漬してアルカ
リ減量処理を行った。処理時間は30分で、処理温度は
95℃、処理液量は浴比(OWFでの生地重量に対する
液重量の比)1:50で行った。当該減量処理後に後処
理として、水洗、ソーダ灰浸漬(1g/l )、水洗、酢酸
(1ml/l) 処理、水洗、蒸留水洗浄を実施した。その後
乾燥して重量を測定し、複合繊維全体の減量率を求めた
ところ、15.3%となった。なお、当該複合繊維の断
面写真の面積比から求めたポリエチレンテレフタレート
サイドの減量率は11.5%であり、ポリブチレンテレ
フタレートサイドの減量率は3.8%であった。そし
て、この複合繊維の表面は図3の電子顕微鏡写真に示す
ように、ポリエチレンテレフタレートサイドは微細な多
数の窪みを有し、一方のポリブチレンテレフタレートサ
イドは殆ど窪みのないものであった。次に所定のガラス
管を管状布はくの中に挿入し、180℃×1分の条件で
熱処理し、真円化した。
【0039】得られた人工血管の編密度は縦90ループ
/インチ、緯60ループ/インチで、透水率は3500
ml/ 分/cm2−120mmHgであった。得られた人工血管は
天然血管に類似した柔軟性、弾性を有するものとなっ
た。その伸長回復率曲線(応力と伸長率との関係によ
る)を、図4において実線で示す。150mmHgの内圧を
付加したときの径方向の伸び率が11%、縦方向の伸び
率が13%であった。なお、得られた人工血管の内外表
面には、微細な捲縮が数多く形成されており、またほつ
れにくく安定した組織構造のものであった。
【0040】〔比較例1〕ポリエステル通常糸50デニ
ール/24f を使用し、30ゲージダブルラッセル機に
より管状の布はくを作成した(その組織は逆ハーフ組織
とした)。組織は逆ハーフ組織で行った。本比較例にお
いて使用したポリエステエル通常糸の伸長回復率曲線
(応力と伸長率との関係による)を、図2において破線
で示した。
【0041】次に精錬処理、クリンプ加工を行い内径5
mmの人工血管(長さ5cm) を製作した。得られた人工血
管の編み密度は縦80ループ/ インチ、緯55ループ/
インチで、透水率は3500ml/ 分/cm2−120mmHgで
あった。その伸長回復率曲線(応力と伸長率との関係に
よる)を図4において破線で示した。150mmHgの内圧
を付加したときの径方向の伸び率が0%、縦方向の伸び
率が1%であった。
【0042】上記実施例1及び比較例1より、本発明人
工血管用管状体は従来品との比較において、天然血管に
類似した柔軟性、弾性を有し、かつ得られた人工血管の
内外表面には、微細な捲縮が数多く形成され、また、ほ
つれにくく安定した組織構造のものであること、すなわ
ち人工血管として所望される優れた物理的特性を有する
ことが明らかになった。
【0043】〔実施例2〕実施例1において作成された
内径5mmの人工血管(長さ5cm) を、雑種成犬の頸動脈
に移植した。移植に先立ち、エチレンオキサイドガス滅
菌後、宿主犬の血液を用いて、目詰め操作(プレクロッ
ティング)を行った。移植時の縫合操作にあたり、針の
刺入は容易であった。移植2か月後にサンプルを取り出
したが、人工血管の拡張は無く、又、人工血管の壁内で
は、細胞成分の侵入が観測され、血流面は全面にわたり
内皮細胞で覆われていた。また、吻合部及び人工血管の
全長にわたり内膜の肥厚や血栓の付着は認められず、良
好な組織治癒が認められた。
【0044】〔比較例2〕比較例1において作成された
内径5mmの人工血管(長さ5cm) を実施例と同様にエチ
レンオキサイドガス滅菌、プレクロッティング処理後、
雑種成犬の頸動脈に移植した。移植2か月後にサンプル
を取り出したが、人工血管の壁内には、局所的な血栓の
付着が認められ、十分な器質化が行われたとは言い難い
ものであった。また、吻合部における内膜がやや肥厚し
ており、長期移植後での閉塞が懸念された。
【0045】上記実施例2及び比較例2より、本発明人
工血管用管状体は人工血管として、in vivo で使用した
場合に、従来品に比べて優れた移植操作容易性を有し、
さらに長期の使用に際して十分な器質化が認められ、さ
らに素材の安定性、開存性、抗血栓性についても極めて
優れたものであった。
【0046】
【発明の効果】本発明により、天然血管に類似した柔軟
性及び弾性を有し、血管移植に際しては容易に縫合が可
能である人工血管用管状体が得られる。更に、本発明人
工血管用管状体を人工血管として用いることによって、
従来の人工血管の高い剛性によりもたらされていた天然
血管の損傷をも軽減することが可能であり、開存性をも
向上させ得る。そしてさらに、人工血管移植後の繊維状
新生内膜の発生等、生体組織の生成が良好で、癒合過程
も良好となり、長期的に安定な再生組織を維持すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテ
レフタレートの減量速度曲線を示す図である。
【図2】本発明の人工血管の実施例1において用いられ
た複合繊維の伸長回復率曲線(応力と伸長率との関係に
よる)及び比較例1において用いられた通常繊維の伸長
回復率曲線(応力と伸長率との関係による)を示すグラ
フである。
【図3】本発明の人工血管の実施例1により作成された
人工血管の管状体の電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の人工血管の実施例1及び比較例1にお
いて作成された人工血管の管状体の伸長回復率曲線(応
力と伸長率との関係による)を示すグラフである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複合繊維を含む人工血管用管状体。
  2. 【請求項2】複合繊維が接合型複合繊維である請求項1
    記載の人工血管用管状体。
  3. 【請求項3】複合繊維が、伸長弾性回復率が90%の場
    合に、伸長率が2%以上となる複合繊維である請求項1
    又は2記載の人工血管用管状体。
  4. 【請求項4】複合繊維がポリエチレンテレフタレート及
    びポリブチレンテレフタレート弾性体により構成される
    請求項1、2又は3記載の人工血管用管状体。
  5. 【請求項5】減量処理手段によって複合繊維表面に微細
    な窪みが多数設けられている請求項1、2、3又は4記
    載の人工血管用管状体。
  6. 【請求項6】減量処理手段による減量率が2〜35%で
    ある請求項5記載の人工血管用管状体。
  7. 【請求項7】人工血管用管状体が織り組織又は編み組織
    よりなる請求項1乃至請求項6のいずれかの請求項記載
    の人工血管用管状体。
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