JPH0880306A - 可動性連結人工歯及びその使用方法 - Google Patents

可動性連結人工歯及びその使用方法

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JPH0880306A JP24461394A JP24461394A JPH0880306A JP H0880306 A JPH0880306 A JP H0880306A JP 24461394 A JP24461394 A JP 24461394A JP 24461394 A JP24461394 A JP 24461394A JP H0880306 A JPH0880306 A JP H0880306A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 上顎歯列及び下顎歯列を夫々一度に配列可能
とし、かつ様々な顎堤の緩急に対応できるようにする。 【構成】 個別に形成された、上顎又は下顎のすべての
人工歯11と、すべての人工歯を一定の歯列に配列し、
かつ個々の人工歯を歯列から動かすことを可能とし、動
かした位置でその人工歯を停止させる可塑性を有する結
合材13とから成る可動性連結人工歯10、20。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可動性のある連結人工歯
とそれを用いた使用方法、特に総義歯の製作方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】義歯の製作に用いる従来の人工歯には、 イ、一歯一歯別個のもの、 ロ、全歯一体の人工歯からなるもの、がある。前者の場
合、一歯一歯配列しなければならないため時間と手間が
かかる問題があり、また後者の個々の歯は全く動かすこ
とができないため、個人個人相異する顎堤の形態に合わ
せることができず、従って様々な症例に対応するという
ことは無理である。
【0003】一方、従来から行なわれている総義歯の製
作方法では主として前記「イ」の人工歯を用いており、
その作業過程は図5に示す手順で行なわれる。即ち、 1.最初に上顎、下顎の型を取り(これを「印象採得と
いう。」)、 2.とった型に石膏を流して作業模型を作り、 3.2の作業模型上で樹脂とワックス(ろう)を用いて
顎形状を持つ基礎床と人工歯を植える咬合堤(ろう堤)
とからなる咬合床を作製し、 4.3の咬合床を患者の口腔内にいれ、咬み合わせの高
さ、前歯の長さ、前後左右の咬み合わせの中心、口唇の
ふくらみ等を完成義歯を想定しながら、咬合堤のワック
スを削ったり盛り足したりして適切な形に整形し(これ
を「咬合採得」という。)、 5.ここで患者の顔の形や膚の色等を参考に使用する人
工歯を選択し、 6.咬合採得が終った咬合床をもとに、作業模型を咬合
器に取り付け、 7.5で選んだ人工歯を1本1本咬合堤のワックスを溶
かして植えることにより、上顎、下顎の人工歯計28本
全部を並設し、 8.咬合床のワックスを歯茎の形に彫刻整形することに
より大まかな歯肉形成を行ない(できたものを「ろう義
歯」という。)、 9.8のろう義歯を患者の口腔内に入れて歯の長さ、口
唇のふくらみ、奥歯の咬み合わせの位置等に狂いがない
かをこの段階で調べ、結果に応じて人工歯を配列し直
す。なお、咬合の狂いは4の咬合採得にまで戻って人工
歯を配列し直さなければならない。さらに、 10.義歯として仕上げるための歯肉形成を、ワックス
部分に対する彫刻により歯茎の形に仕上げることによっ
て行ない、 11.フラスクと呼ばれる容器の中に石膏を流して、そ
こに10の段階のろう義歯を埋没させ、 12.フラスクを湯などにより加温して中のワックスだ
け溶かし、溶けたあとの中空部内に歯茎の色をしたレジ
ンを填入し、再びフラスクを閉じてレジンを固め(重合
という。)、 13.フラスクを開いて中から義歯を取りだし、細部を
整え表面を研磨するとともに、細かい咬み合わせ調整等
を実施し、完成(14)に到るのである。
【0004】上記過程において、咬合の狂いの有無が義
歯の性能を決定することから咬合採得は最も重要である
といえる。ところがろう堤(咬合堤)のみで咬合採得す
る場合と、ほぼ完成義歯に近い形のろう義歯で咬合採得
する場合の咬み合わせ位置が違うことはしばしばある。
勿論ろう義歯を用いて採得した咬み合わせの方が結果は
良い。しかしろう義歯の作製のために非常に時間と手間
がかかることは既に述べたとおりである。
【0005】これに対して最近、臼歯部つまり奥歯3、
4本を一体に連結した国内外の商品が市販されるように
なってきた。しかしそれら3、4本の奥歯は全く動かす
ことができない。しかも前歯については1本1本計12
本を並べなければならないことに変りはない。前歯部は
患者の表情を左右する非常に重要な部分であり、従って
それらの歯の長さや向きなどを決定するためには大変な
熟練と苦労が伴う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前述した実情
に鑑みてなされたものであり、その課題は上顎歯列及び
下顎歯列を夫々一度に配列できるようにし、かつまた様
々な顎堤の形態上の変化に対応できるようにすることで
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
本発明は、個々独立に形成された、上顎部又は下顎部の
すべての前歯部及び臼歯部の人工歯と、それらの人工歯
を一定の歯列に配列しておくために各人工歯の基部に固
着し、個々の人工歯を前記の歯列から動かすことを可能
にする柔軟性と、動かした位置でその人工歯を停止させ
る塑性とを有する合成樹脂材料から成る結合材とによっ
て可動性の連結人工歯を構成するという手段を講じたも
のである。
【0008】またこの連結人工歯を用いて、これを咬合
床のろう堤に配列し、そのろう義歯を患者の口腔内に試
適し、前歯部の審美性及び上、下顎歯列の咬合状態を調
べることにより、作製した咬合床を用いてすぐに人工歯
を配列しその後試適を実施することができるようにな
る。
【0009】
【作用】総義歯を製作する過程において、人工歯配列の
際に一度に上顎又は下顎部の全歯をろう堤上に配列する
ことが可能になり、時間と手間の節減に寄与する。また
柔軟性と可塑性を有する結合材によって、隣接し合った
夫々の人工歯は互いに自由な動きが得られるように連結
されているから、様々な形態の顎堤に対応した人工歯配
列を容易に設定することができる。
【0010】
【実施例】本発明に係る可動性連結人工歯の外観を図1
に示す。図1の、上は上顎用の連結人工歯10、下は下
顎用の連結人工歯20を示す。上顎用及び下顎用の各連
結人工歯10、20を構成している個々の人工歯11は
各々独立しており、人工歯11の基部つまり咬合堤に埋
められる基底面側の部分12において、結合材13によ
って固着され一体化している。各連結人工歯10、20
を構成している人工歯11の数は前歯部及び臼歯部をあ
わせて各14個、上下合計28個が標準である。
【0011】人工歯には、陶歯、レジン歯(アクリルレ
ジン)、硬質レジン歯、金属歯、咬合面14の一部を金
属としたレジン歯などがある。このうち本発明に使用可
能な人工歯はレジン歯、硬質レジン歯及び咬合面14の
一部を金属としたレジン歯である。その理由は、後述す
る結合材との親和性が良好なためである。
【0012】人工歯11の配列は、例えば統計学的に求
められた平均的な位置で良い。つまり平均的な位置を仮
の位置としてとりあえず設定しておくということであ
る。このように設定される連結人工歯10、20として
は、男、女、或いは大、小に応じられるように何種かを
用意しておくと良い。
【0013】結合材13は人工歯11を上記の歯列に配
列しておくために固着すると同時に、個々の人工歯を設
定配列から個体差に応じた位置へ動かすことを可能にす
るための柔軟性と、動かした位置でその人工歯を停止さ
せておくための塑性及び簡単にちぎれない粘弾性或いは
靭性を有する。
【0014】このような性質を有する合成樹脂材料とし
ては軟性レジンがある。軟性レジンは硬質レジンに対応
する語であり、それより柔軟で、常温で可塑性のある高
分子材料を指称する。例えばポリアクリル酸エステルや
ポリメタクリル酸ブチルエステル(以上は軟性アクリル
系レジン)、ポリフルオロエチレン(軟質フッ素樹
脂)、ポリアルキルシロキサン(軟質シリコン樹脂)、
ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系
樹脂が軟性レジンに該当する。このうち2種の軟性アク
リル系レジンは前記したレジン歯の結合材として特に適
している。しかし他のものも適切な助剤を選択するか下
地処理をすることにより使用可能である。
【0015】結合材13は人工歯11と強力に接着して
いる必要がある。このため、人工歯11の素材と結合材
13の素材とがアクリルレジン歯と軟性アクリル系レジ
ンのように高い親和性を有し、その結果強固な接着性、
粘着性を得やすい場合はそれらを直接接触させて固着す
ることができるが、そうでない場合には人工歯11と結
合材13の双方を強固に固着させる助剤15を併用する
ことができる。例えばポリメタクリル酸エステルを素材
とする人工歯はジクロロメタンを助剤として被着面処理
すれば前述の軟性アクリル系レジンによって強固に接着
することができる。なお図2は人工歯11と結合材13
及び助剤15の関係を模式的に示したもので、人工歯間
に隙間が必要という訳ではない。
【0016】このように構成された本発明の連結人工歯
は個々の人工歯11を望みの方向へ向け或いは傾斜さ
せ、また移動させることができる(図3参照)。次にこ
の性質を有する連結人工歯を用いて総義歯を製作する方
法の実施例を説明する。
【0017】<使用方法> 1.最初に上顎、下顎の型を取り(印象採得)、 2.とった型に石膏を流して作業模型を作り、 3.この作業模型上で樹脂とワックス(ろう)を用い
て、顎形状を持つ基礎床と、歯を植える咬合堤(ろう
堤)とからなる咬合床を作製する。ここまでは前述した
従来の方法と同じである。但し、使用する連結人工歯を
患者の顔の形や膚の色等を参考に選択しておく(図4の
(5))。 3′.そして咬合床のろう堤に、本発明に係る連結人工
歯を解剖学的指標に基づいて、ワックスを溶かして一時
に配列してしまう。勿論この作業は上顎の咬合床及び下
顎の咬合床の両方について実施する。 4.3′で連結人工歯の配列を終えた上顎、下顎のろう
義歯を患者の口腔内に試適し、前歯部の審美性、上、下
顎歯列の咬合状態を調べる(咬合採得)。
【0018】この段階で、平均的な位置に設定されてい
る連結人工歯の歯列を患者の希望を入れた歯の長さや口
唇のふくらみなどを与えるために動かして、人工歯の位
置決めを行なう。図3の鎖線が動かした位置の例示であ
る。
【0019】この場合、湯に漬けて簡単に修正すること
もできる。このようにその場で噛み合わせのチェックな
どができるので、従来法におけるろう義歯の試適のとき
のように再配列、咬合採得まで遡ることによる手間や時
間の浪費がない。 5.次は試適である。これは従来法でいえば9番目の段
階に相当する。 6.試適終了後、実際に患者の口腔内で柔らかめのワッ
クスを用いて口の中の筋肉、舌の筋肉等を機能的に活用
して義歯に大まかな歯肉を形成する。口腔内で直接歯肉
を形成するのは、特に下顎の義歯は頬及び舌の筋肉の圧
力のバランスした筋圧中立帯に収まることによって安定
が得られるとされているからである。次いで従来法と同
じように細かな仕上げをする。あとは従来法11〜14
とほぼ同じである。即ち、 7.フラスクと呼ばれる容器の中に石膏を流して、そこ
に6の段階のろう義歯を埋没させ、 8.フラスクを湯などにより加温して中のワックスだけ
溶かし、溶けたあとの中空部内に歯茎の色をしたレジン
を填入し、再びフラスクを閉じてレジンを固め(重
合)、 9.フラスクを開いて中から義歯を取り出し、細部を整
え、表面を研磨するとともに、細かな咬み合わせ調整等
を実施し、完成となる。
【0020】従来の方法ではフラスクの中にはろう義歯
のときに用いた人工歯をそのまま残してピンクのレジン
を填入した。本発明に係る連結人工歯を用いた場合は連
結人工歯も全部取り出し、用いた連結人工歯と全く同じ
型の別の人工歯をその中に入れ替えてレジン填入、重合
を行なう。
【0021】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成されかつ作用す
るので、以下の効果を奏する。 連結人工歯は一体に結合した人工歯列であるため、極
めて短時間でしかも容易に人工歯の配列及び修正が行な
える。 連結人工歯は一体に結合しているが、夫々の人工歯が
可動性を有するため、色々な顎の形態に簡単に適合させ
ることができる。 従来のようにろう堤の形で咬合採得をするよりも、本
発明による場合は完成義歯に近い形をしているので、よ
り正確な咬合採得つまり咬み合わせの位置決めが可能に
なる。 その場で歯の長さや位置を簡単に修正できるので、こ
れまでのようにろう義歯の試適の段階まで進んでから患
者に歯の長さなどの不満を指摘されて再度人工歯の配列
をやり直すというような手間を殆んどなくすことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る連結人工歯の実施例を示す斜視
図。
【図2】(a)同上接着部分の拡大断面図。 (b)同じく他の例の拡大断面図。
【図3】人工歯を移動させた状態を示す平面図。
【図4】本発明による総義歯の製作過程を示す流れ図。
【図5】従来法による総義歯の製作過程を示す流れ図。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 個々独立に形成された、上顎部又は下顎
    部のすべての前歯部及び臼歯部の人工歯と、それらの人
    工歯を一定の歯列に配列しておくために各人工歯の基部
    に固着し、個々の人工歯を前記の歯列から動かすことを
    可能にする柔軟性と、動かした位置でその人工歯を停止
    させる塑性とを有する合成樹脂材料から成る結合材とに
    よって構成されたことを特徴とする可動性連結人工歯。
  2. 【請求項2】 結合材を形成している合成樹脂材が軟性
    レジンである請求項第1項記載の可動性連結人工歯。
  3. 【請求項3】 人工歯がレジン歯、硬質レジン歯、咬合
    面の一部を金属としたレジン歯のいずれかであり、結合
    材を形成している合成樹脂材料がポリアクリル酸エステ
    ル、ポリメタクリル酸ブチルエステル、ポリフルオロエ
    チレン、ポリアルキルシロキサン、ポリエステル樹脂、
    塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系のいずれかである請
    求項第1項記載の可動性連結人工歯。
  4. 【請求項4】 人工歯がアクリルレジンを少なくとも基
    底面に有する人工歯であり、結合材がポリアクリル酸エ
    ステル又はポリメタクリル酸ブチルエステルである請求
    項第1項記載の可動性連結人工歯。
  5. 【請求項5】 人工歯がポリメタクリル酸エステルから
    なるレジン歯であり、結合材がポリアクリル酸エステル
    又はポリメタクリル酸ブチルエステルであり、人工歯の
    結合部分を被着面処理する助剤がジクロロメタンである
    請求項第1項記載の可動性連結人工歯。
  6. 【請求項6】 上顎及び下顎の印象を採得して作業模型
    を作製し、同模型上で樹脂とワックスを用いて作製した
    咬合床を用いて総義歯の製作を行なうために、個々独立
    に形成された、上顎部又は下顎部のすべての前歯部及び
    臼歯部の人工歯と、それらの人工歯を一定の歯列に配列
    しておくために各人工歯の基部に固着し、個々の人工歯
    を前記の歯列から動かすことを可能にする柔軟性と、動
    かした位置でその人工歯を停止させる塑性とを有する合
    成樹脂材料から成る結合材とによって構成された連結人
    工歯を咬合床のろう堤に配列し、そのろう義歯を患者の
    口腔内に試適し、前歯部の審美性及び上、下顎歯列の咬
    合状態を調べる過程を含むことを特徴とする可動性連結
    人工歯の使用方法。
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