JPH0873984A - 溶接用低合金鋼線 - Google Patents
溶接用低合金鋼線Info
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- JPH0873984A JPH0873984A JP20880594A JP20880594A JPH0873984A JP H0873984 A JPH0873984 A JP H0873984A JP 20880594 A JP20880594 A JP 20880594A JP 20880594 A JP20880594 A JP 20880594A JP H0873984 A JPH0873984 A JP H0873984A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 島状マルテンサイトの生成を抑制することが
できると共に機械的強度も均一なものであり、さらに炭
酸ガス溶接用ワイヤを製造する場合に要求される伸線加
工性にも優れた溶接用低合金鋼線を提供する。 【構成】 C:0.02〜0.15%(重量%、以下同
じ)、Si:0.20〜1.65%を含有する溶接用低
合金鋼線において、該低合金鋼線は、母材中にMn:
1.0%未満を含有し、該低合金鋼線の表面には、該低
合金鋼線の半径Rに対して0.007×R以下の厚みの
富Mn層が形成されると共に、上記母材および富Mn層
の双方に含まれる総Mn量が低合金鋼線全体の1.1〜
2.0%である溶接用低合金鋼線である。
できると共に機械的強度も均一なものであり、さらに炭
酸ガス溶接用ワイヤを製造する場合に要求される伸線加
工性にも優れた溶接用低合金鋼線を提供する。 【構成】 C:0.02〜0.15%(重量%、以下同
じ)、Si:0.20〜1.65%を含有する溶接用低
合金鋼線において、該低合金鋼線は、母材中にMn:
1.0%未満を含有し、該低合金鋼線の表面には、該低
合金鋼線の半径Rに対して0.007×R以下の厚みの
富Mn層が形成されると共に、上記母材および富Mn層
の双方に含まれる総Mn量が低合金鋼線全体の1.1〜
2.0%である溶接用低合金鋼線である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭酸ガスアーク溶接用
ワイヤなどに好適に用いられるC−Si−Mn系低合金
鋼線もしくはC−Si−Mn−Ti系低合金鋼線に関す
るものである。
ワイヤなどに好適に用いられるC−Si−Mn系低合金
鋼線もしくはC−Si−Mn−Ti系低合金鋼線に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】炭酸ガスアーク溶接用ワイヤなどに使用
される低合金鋼線は、その用途特性上、伸線加工性に優
れていることが要求される。上記低合金鋼線に用いられ
る鋼線材としては通常、C:0.02〜0.15%、S
i:0.20〜1.65%、Mn:1.0%〜2.0%
を含有し、更に必要に応じてTi:0.01〜0.30
%を含有する鋼線材が用いられる。この様な鋼線材を熱
間圧延した後、通常の冷却速度で冷却して鋼線を製造し
ようとすると、島状マルテンサイトの生成、およびT
i含有鋼線材を用いた場合は、更にTi化合物の析出
による強度の上昇、といった組織的欠陥を生じ、伸線性
の劣化や機械的性質の不均一化などの弊害を招く。特
に、島状マルテンサイトの生成は伸線加工性に大きな影
響を及ぼし、このマルテンサイト含有率(面積率で表
す)が1.0%を超えると伸線加工性が低下するという
問題がある。
される低合金鋼線は、その用途特性上、伸線加工性に優
れていることが要求される。上記低合金鋼線に用いられ
る鋼線材としては通常、C:0.02〜0.15%、S
i:0.20〜1.65%、Mn:1.0%〜2.0%
を含有し、更に必要に応じてTi:0.01〜0.30
%を含有する鋼線材が用いられる。この様な鋼線材を熱
間圧延した後、通常の冷却速度で冷却して鋼線を製造し
ようとすると、島状マルテンサイトの生成、およびT
i含有鋼線材を用いた場合は、更にTi化合物の析出
による強度の上昇、といった組織的欠陥を生じ、伸線性
の劣化や機械的性質の不均一化などの弊害を招く。特
に、島状マルテンサイトの生成は伸線加工性に大きな影
響を及ぼし、このマルテンサイト含有率(面積率で表
す)が1.0%を超えると伸線加工性が低下するという
問題がある。
【0003】この様に伸線加工性や機械的性質の均一化
などを確保するためには通常の熱間圧延処理のみでは不
可能であり、鋼線材もしくは中間仕上り線材を更に軟化
焼鈍処理に付す必要があった。しかしながら、この焼鈍
処理は熱処理費用など生産コストを押し上げる要因とな
っている。従って焼鈍処理を行うことなく伸線加工性や
機械的強度の均一化を図ることを目的として、様々な試
みがなされている。
などを確保するためには通常の熱間圧延処理のみでは不
可能であり、鋼線材もしくは中間仕上り線材を更に軟化
焼鈍処理に付す必要があった。しかしながら、この焼鈍
処理は熱処理費用など生産コストを押し上げる要因とな
っている。従って焼鈍処理を行うことなく伸線加工性や
機械的強度の均一化を図ることを目的として、様々な試
みがなされている。
【0004】例えばR&D神戸製鋼技報(1985年4
月、第35巻、第2号、第52頁−54頁)に記載の方
法は、低炭素含Si−Mn−Ti鋼線材を用いて、線材
加熱温度並びに中間段階及び仕上がり段階での圧延温度
を低く保持した制御圧延を行うと共に、その後の冷却工
程を徐冷制御するとによって、材質の均一化を図ろうと
するものである。しかしながら、この方法では、良好な
伸線加工性を得るために必要な島状マルテンサイトの含
有率条件(面積含有率:1.0%以下)を完全に達成す
ることができないという問題がある。
月、第35巻、第2号、第52頁−54頁)に記載の方
法は、低炭素含Si−Mn−Ti鋼線材を用いて、線材
加熱温度並びに中間段階及び仕上がり段階での圧延温度
を低く保持した制御圧延を行うと共に、その後の冷却工
程を徐冷制御するとによって、材質の均一化を図ろうと
するものである。しかしながら、この方法では、良好な
伸線加工性を得るために必要な島状マルテンサイトの含
有率条件(面積含有率:1.0%以下)を完全に達成す
ることができないという問題がある。
【0005】また、特開昭62−164821号公報に
は、極低炭素鋼材を用いて極低温圧延処理を行う方法が
開示されている。これはCを0.02%以下に抑えるこ
とにより750〜900℃における熱間変形抵抗の低下
を図り、この様な極低温度での熱間圧延処理を可能にさ
せた結果、島状マルテンサイトの生成を抑えようとする
ものである。しかしながら、この方法は極低炭素鋼材に
しか適用できないため、この様な極低炭素鋼を溶接用ワ
イヤとして用いたときは、溶接金属部中の濃度が希釈さ
れて溶接金属部の強度が低下するという問題がある。
は、極低炭素鋼材を用いて極低温圧延処理を行う方法が
開示されている。これはCを0.02%以下に抑えるこ
とにより750〜900℃における熱間変形抵抗の低下
を図り、この様な極低温度での熱間圧延処理を可能にさ
せた結果、島状マルテンサイトの生成を抑えようとする
ものである。しかしながら、この方法は極低炭素鋼材に
しか適用できないため、この様な極低炭素鋼を溶接用ワ
イヤとして用いたときは、溶接金属部中の濃度が希釈さ
れて溶接金属部の強度が低下するという問題がある。
【0006】さらに、特公昭62−54364号には、
軟鋼線材を熱間圧延後、10℃/sec以下の冷却速度
で750〜650℃に冷却した後、15℃/sec以上
の冷却速度で室温まで冷却し、さらに300〜500℃
に0.5〜10分間保持した後、再び室温まで冷却する
ことによって伸線加工性を向上させる方法が開示されて
いる。この方法によれば伸線加工途中における中間焼鈍
工程は省略できるものの、室温まで冷却した後、さらに
300〜500℃に温度を上げて保持する工程を設けて
いるため、生産性が低下する等の問題がある。
軟鋼線材を熱間圧延後、10℃/sec以下の冷却速度
で750〜650℃に冷却した後、15℃/sec以上
の冷却速度で室温まで冷却し、さらに300〜500℃
に0.5〜10分間保持した後、再び室温まで冷却する
ことによって伸線加工性を向上させる方法が開示されて
いる。この方法によれば伸線加工途中における中間焼鈍
工程は省略できるものの、室温まで冷却した後、さらに
300〜500℃に温度を上げて保持する工程を設けて
いるため、生産性が低下する等の問題がある。
【0007】その他、特公平1−12815号公報に
は、肌焼鋼組成及び強靭鋼組成からなる棒に関してであ
るが、これをAc3変態点以上に加熱して熱間圧延処理
し、更にAr3変態点〜[Ar3変態点+200℃]以下の
温度範囲で総減面率40%以上の仕上圧延を行った後、
冷却速度:0.05〜0.29℃/秒で徐冷する方法が
開示されている。しかしながら、この方法では、島状マ
ルテンサイトの面積含有率を1.0%以下に抑制するこ
とはできず、さらに熱間圧延処理時の負荷が大きくなっ
て生産性が大きく阻害されたり、冷却速度を厳密に調整
制御しなければならず、現実には焼鈍処理の省略にまで
至っていないのが実状である。
は、肌焼鋼組成及び強靭鋼組成からなる棒に関してであ
るが、これをAc3変態点以上に加熱して熱間圧延処理
し、更にAr3変態点〜[Ar3変態点+200℃]以下の
温度範囲で総減面率40%以上の仕上圧延を行った後、
冷却速度:0.05〜0.29℃/秒で徐冷する方法が
開示されている。しかしながら、この方法では、島状マ
ルテンサイトの面積含有率を1.0%以下に抑制するこ
とはできず、さらに熱間圧延処理時の負荷が大きくなっ
て生産性が大きく阻害されたり、冷却速度を厳密に調整
制御しなければならず、現実には焼鈍処理の省略にまで
至っていないのが実状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたものであって、その目的は、島状マルテ
ンサイト生成の抑制および機械的強度の均一化を図ると
共に、炭酸ガスアーク溶接用ワイヤ等を製造する場合に
要求される伸線加工性にも優れた溶接用低合金鋼線を提
供することにある。
鑑みてなされたものであって、その目的は、島状マルテ
ンサイト生成の抑制および機械的強度の均一化を図ると
共に、炭酸ガスアーク溶接用ワイヤ等を製造する場合に
要求される伸線加工性にも優れた溶接用低合金鋼線を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
ができた本発明の溶接用低合金鋼線とは、C:0.02
〜0.15%、Si:0.20〜1.65%を含有する
溶接用低合金鋼線において、上記低合金鋼線は、母材中
にMn:1.0%未満を含有し、上記低合金鋼線の表面
には、該低合金鋼線の半径Rに対して0.007×R以
下の厚みの富Mn層が形成されると共に、上記母材およ
び富Mn層の双方に含まれる総Mn量が低合金鋼線全体
の1.1〜2.0%であることに要旨を有するものであ
る。上記母材が更にTi:0.01〜0.30%を含有
するものは、本発明の好適な実施態様である。
ができた本発明の溶接用低合金鋼線とは、C:0.02
〜0.15%、Si:0.20〜1.65%を含有する
溶接用低合金鋼線において、上記低合金鋼線は、母材中
にMn:1.0%未満を含有し、上記低合金鋼線の表面
には、該低合金鋼線の半径Rに対して0.007×R以
下の厚みの富Mn層が形成されると共に、上記母材およ
び富Mn層の双方に含まれる総Mn量が低合金鋼線全体
の1.1〜2.0%であることに要旨を有するものであ
る。上記母材が更にTi:0.01〜0.30%を含有
するものは、本発明の好適な実施態様である。
【0010】
【作用】本発明者らは、伸線加工性および溶接性に
優れた低合金鋼線を得るために特にMnに着目して検討
したところ、 優れた伸線加工性を付与させるためには、母材中のM
n含有量を1.0%未満に低く抑えることが必要である
が、一方、 優れた溶接性を付与させるためには、Mn含有量は
1.0%では不十分であり、1.1〜2.0%は必要で
ある、 という相矛盾する結果を得た。
優れた低合金鋼線を得るために特にMnに着目して検討
したところ、 優れた伸線加工性を付与させるためには、母材中のM
n含有量を1.0%未満に低く抑えることが必要である
が、一方、 優れた溶接性を付与させるためには、Mn含有量は
1.0%では不十分であり、1.1〜2.0%は必要で
ある、 という相矛盾する結果を得た。
【0011】すなわち、母材中のMn含有量は、Si−
Mn系であってもSi−Mn−Ti系であっても、要は
1.0%未満であれば、Mn中心凝固偏析部でも島状マ
ルテンサイトは生成しにくくなり、結果的に島状マルテ
ンサイトの面積含有率を1.0%以下に抑えることがで
きる。その結果、焼鈍処理等の熱処理なしに細径まで伸
線することが可能になるのである。
Mn系であってもSi−Mn−Ti系であっても、要は
1.0%未満であれば、Mn中心凝固偏析部でも島状マ
ルテンサイトは生成しにくくなり、結果的に島状マルテ
ンサイトの面積含有率を1.0%以下に抑えることがで
きる。その結果、焼鈍処理等の熱処理なしに細径まで伸
線することが可能になるのである。
【0012】一方、MnはSiと同様に脱酸効果を有す
るとともに溶接金属の強度向上と高温割れ感受性を抑制
する作用があり、その作用を有効に発揮させるには、低
合金鋼線全体の1.1%以上とすることが必要である。
しかしながら、多すぎると溶接金属の延びが劣化する恐
れがあるので、その上限を2.0%にすることが必要な
のである。
るとともに溶接金属の強度向上と高温割れ感受性を抑制
する作用があり、その作用を有効に発揮させるには、低
合金鋼線全体の1.1%以上とすることが必要である。
しかしながら、多すぎると溶接金属の延びが劣化する恐
れがあるので、その上限を2.0%にすることが必要な
のである。
【0013】この様な相矛盾する結果を解決すべく更に
検討を進めたところ、上記の溶接性を付与させるため
に必要なMn含有量に関しては、溶接棒は溶融金属とし
て母材と一体化するものであることから、要は必要量の
Mnが溶融金属中に供給されればよいのであって、溶接
ワイヤ全体の総Mn量がこの範囲であればよいというこ
とを見出した。すなわち、Mn含有量は、母材中には上
記の要件を満足すると共に、その総量は低合金鋼線全
体に対して上記の要件を満足することが必要であり、
この様な要件を満足させるためには、Mnは鋼線材中に
固溶していてもよいし、表面に付着していても構わない
という点に着目して、鋼線材の表面に富Mn層を形成さ
せることによって、総Mn量を上記の要件を満足する
様にしたのである。
検討を進めたところ、上記の溶接性を付与させるため
に必要なMn含有量に関しては、溶接棒は溶融金属とし
て母材と一体化するものであることから、要は必要量の
Mnが溶融金属中に供給されればよいのであって、溶接
ワイヤ全体の総Mn量がこの範囲であればよいというこ
とを見出した。すなわち、Mn含有量は、母材中には上
記の要件を満足すると共に、その総量は低合金鋼線全
体に対して上記の要件を満足することが必要であり、
この様な要件を満足させるためには、Mnは鋼線材中に
固溶していてもよいし、表面に付着していても構わない
という点に着目して、鋼線材の表面に富Mn層を形成さ
せることによって、総Mn量を上記の要件を満足する
様にしたのである。
【0014】以下、本発明の構成およびその作用を詳述
する。まず、本発明に用いられる母材の組成限定理由は
以下の通りである。C:0.02〜0.15% Cは溶接金属部の強度を左右する元素であり、その様な
作用を有効に発揮させるにはCの含有量は少なくとも
0.02%は必要であるが、0.15%を超えると、溶
接金属部の靭性が低下するので、その上限を0.15%
とした。
する。まず、本発明に用いられる母材の組成限定理由は
以下の通りである。C:0.02〜0.15% Cは溶接金属部の強度を左右する元素であり、その様な
作用を有効に発揮させるにはCの含有量は少なくとも
0.02%は必要であるが、0.15%を超えると、溶
接金属部の靭性が低下するので、その上限を0.15%
とした。
【0015】Si:0.20〜1.65% Siは強力な脱酸元素であり、不純介在物量を少なくし
て溶接金属部の強度を高めるにはその含有量は少なくと
も0.20%以上必要であるが、多すぎるとフェライト
を形成してσ脆化が起こりやすくなり、溶接金属部の靭
性が低下するので、その上限を1.65%とした。
て溶接金属部の強度を高めるにはその含有量は少なくと
も0.20%以上必要であるが、多すぎるとフェライト
を形成してσ脆化が起こりやすくなり、溶接金属部の靭
性が低下するので、その上限を1.65%とした。
【0016】Mn:1.0%未満 Mnは本発明を特徴付ける元素であり、上述した様に
1.0%未満であれば島状マルテンサイトの含有率を
1.0%以下に抑えることができる。
1.0%未満であれば島状マルテンサイトの含有率を
1.0%以下に抑えることができる。
【0017】本発明の低合金鋼線は、この様に従来の低
合金鋼線材に比べて母材中のMn含有量を少なくするこ
とによって、島状マルテンサイトの面積含有率を1%以
下に制御し、熱処理なしに細径まで伸線することを可能
としている。
合金鋼線材に比べて母材中のMn含有量を少なくするこ
とによって、島状マルテンサイトの面積含有率を1%以
下に制御し、熱処理なしに細径まで伸線することを可能
としている。
【0018】島状マルテンサイトの面積含有率が増加す
れば、そのマルテンサイトを起点としてカッピー断線の
生じる確率が大きくなり、伸線加工性が著しく低下す
る。島状マルテンサイトは線材の中心付近に点在するM
nの中心凝固偏析帯に生成するが、その理由は、凝固偏
析帯ではMn濃度は線材の平均Mn濃度よりも高くな
り、この部分での焼入性が局所的によくなるために、通
常の圧延時の冷却速度でマルテンサイトに変態してしま
うためである。従って、中心偏析帯でもマルテンサイト
に変態しない様、Mn量の最大値を1.0%未満にする
ことが必要である。
れば、そのマルテンサイトを起点としてカッピー断線の
生じる確率が大きくなり、伸線加工性が著しく低下す
る。島状マルテンサイトは線材の中心付近に点在するM
nの中心凝固偏析帯に生成するが、その理由は、凝固偏
析帯ではMn濃度は線材の平均Mn濃度よりも高くな
り、この部分での焼入性が局所的によくなるために、通
常の圧延時の冷却速度でマルテンサイトに変態してしま
うためである。従って、中心偏析帯でもマルテンサイト
に変態しない様、Mn量の最大値を1.0%未満にする
ことが必要である。
【0019】本発明に用いられる母材は上記元素を必須
成分として含有し、残部はFeおよび不可避不純物から
なる。ここで、不可避不純物元素のうち、P,Sについ
ては夫々0.03%以下であることが必要である。
成分として含有し、残部はFeおよび不可避不純物から
なる。ここで、不可避不純物元素のうち、P,Sについ
ては夫々0.03%以下であることが必要である。
【0020】P:0.03%以下 Pは、その含有量が0.03%を超えると粒界強度を低
下させ、疲労強度の低下を招くのでその上限を0.03
%とした。
下させ、疲労強度の低下を招くのでその上限を0.03
%とした。
【0021】S:0.03%以下 Sは鋼中で硫化物系介在物(MnS)を生成し、被削性
に有効な元素であるが、0.03%を超えると靱性が低
下すると共に、MnSが破壊の起点となってピッチング
寿命を低下させるので、その上限を0.03%とした。
に有効な元素であるが、0.03%を超えると靱性が低
下すると共に、MnSが破壊の起点となってピッチング
寿命を低下させるので、その上限を0.03%とした。
【0022】本発明に用いられる母材は以上の成分を必
須成分とするものであるが、その他にTiを含有しても
よい。Ti:0.01〜0.30% Tiは高電流域における溶接アークの軟質化および溶接
時の入熱増加に伴う溶接金属の強度、靭性低下の防止な
どに有効であり、用途に応じて選択的に添加することが
できる。この様な作用を有効に発揮させるには、Tiの
含有量を0.01%以上とすることが必要である。一
方、Tiは鋼線材中、および溶着金属中で微細な炭化物
を形成して析出強化を招くが、Tiの含有量が0.30
%を超えると上述した析出強化による強度レベルが増加
してワイヤの製造時に伸線性の劣化を招くとともに、溶
接金属のクリープ破断強さを逆に低下させてしまうの
で、その上限を0.30%とした。
須成分とするものであるが、その他にTiを含有しても
よい。Ti:0.01〜0.30% Tiは高電流域における溶接アークの軟質化および溶接
時の入熱増加に伴う溶接金属の強度、靭性低下の防止な
どに有効であり、用途に応じて選択的に添加することが
できる。この様な作用を有効に発揮させるには、Tiの
含有量を0.01%以上とすることが必要である。一
方、Tiは鋼線材中、および溶着金属中で微細な炭化物
を形成して析出強化を招くが、Tiの含有量が0.30
%を超えると上述した析出強化による強度レベルが増加
してワイヤの製造時に伸線性の劣化を招くとともに、溶
接金属のクリープ破断強さを逆に低下させてしまうの
で、その上限を0.30%とした。
【0023】本発明は、母材中の組成が上記成分からな
る鋼線材の表面に、富Mn層が形成されている点に特徴
を有するものである。すなわち、上述した様に溶接性を
向上させるには、上記母材および富Mn層の双方に含ま
れる総Mn量を1.1〜2.0%としなければならず、
母材中のMn量(1.0%未満)のみでは不足すること
から、その不足分を特定厚みからなる富Mn層を形成さ
せることによって補充しようとするものである。
る鋼線材の表面に、富Mn層が形成されている点に特徴
を有するものである。すなわち、上述した様に溶接性を
向上させるには、上記母材および富Mn層の双方に含ま
れる総Mn量を1.1〜2.0%としなければならず、
母材中のMn量(1.0%未満)のみでは不足すること
から、その不足分を特定厚みからなる富Mn層を形成さ
せることによって補充しようとするものである。
【0024】上記富Mn層の厚さは、鋼線材の半径Rに
対して0.007×R以下であることが必要であり、好
ましくは0.006×R以下である。その理由は、低合
金鋼線中のMn含有量が高まると延性に乏しくなるた
め、厚みがこの上限値を超えると、伸線加工時もしくは
最終製品の細径でのハンドリング時に富Mn層が剥離し
てしまうからである。
対して0.007×R以下であることが必要であり、好
ましくは0.006×R以下である。その理由は、低合
金鋼線中のMn含有量が高まると延性に乏しくなるた
め、厚みがこの上限値を超えると、伸線加工時もしくは
最終製品の細径でのハンドリング時に富Mn層が剥離し
てしまうからである。
【0025】上記富Mn層の形成方法は特に限定され
ず、通常の湿式めっき法、蒸着法、イオン注入法などを
用いることができる。湿式めっき法や蒸着法を用いた場
合には、本発明の低合金鋼線は母材の上に富Mn層が形
成される二層構造となり、イオン注入法を用いた場合に
は、母材中にMnが注入された一層構造となる。
ず、通常の湿式めっき法、蒸着法、イオン注入法などを
用いることができる。湿式めっき法や蒸着法を用いた場
合には、本発明の低合金鋼線は母材の上に富Mn層が形
成される二層構造となり、イオン注入法を用いた場合に
は、母材中にMnが注入された一層構造となる。
【0026】また、上記富Mn層の形成時期に関しても
特に限定されず、伸線加工前であっても伸線加工後でも
あってもよい。上述した様な本発明の要件を全て満足す
ることのできる低合金鋼線材は炭酸ガスアーク溶接用ワ
イヤ等の溶接材として好適に用いられるものである。
特に限定されず、伸線加工前であっても伸線加工後でも
あってもよい。上述した様な本発明の要件を全て満足す
ることのできる低合金鋼線材は炭酸ガスアーク溶接用ワ
イヤ等の溶接材として好適に用いられるものである。
【0027】さらに、炭酸ガスアーク溶接用ワイヤは通
常、鋼線の表面にCuめっきが施されるが、本発明の場
合においても富Mn層の上にCuめっきを行うことが可
能であり、この様なめっき処理を行っても、伸線加工中
や最終製品においてCuめっき層が剥離することはな
い。
常、鋼線の表面にCuめっきが施されるが、本発明の場
合においても富Mn層の上にCuめっきを行うことが可
能であり、この様なめっき処理を行っても、伸線加工中
や最終製品においてCuめっき層が剥離することはな
い。
【0028】以下実施例に基づいて本発明を詳述する。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
【0029】
【実施例】表1に示す組成の低合金鋼線材(線径:5.
5mm)を用い、1100℃前後の温度から冷却速度6
℃/秒で冷却した後、下記項目について測定した。 (i )引張強さ(kgf/mm2 ):JIS Z 22
41法 (ii)溶着金属の延び(%) :JIS Z 22
41法 (iii )島状マルテンサイト含有率(%):線材を直径
を通る面で切断し、該面中の島状マルテンサイトの面積
率を光学顕微鏡で観察し、ポイントカウンティング法で
測定 (iv)伸線限界(mmφ):伸線中に線材が初めて断線
するダイスの直径 得られた結果を表1、2に併記する。なお、表中の厚み
とは、各鋼線材の半径Rに対するものである。
5mm)を用い、1100℃前後の温度から冷却速度6
℃/秒で冷却した後、下記項目について測定した。 (i )引張強さ(kgf/mm2 ):JIS Z 22
41法 (ii)溶着金属の延び(%) :JIS Z 22
41法 (iii )島状マルテンサイト含有率(%):線材を直径
を通る面で切断し、該面中の島状マルテンサイトの面積
率を光学顕微鏡で観察し、ポイントカウンティング法で
測定 (iv)伸線限界(mmφ):伸線中に線材が初めて断線
するダイスの直径 得られた結果を表1、2に併記する。なお、表中の厚み
とは、各鋼線材の半径Rに対するものである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】表中AおよびBは、従来のSi−Mn系お
よびSi−Mn−Ti系低合金鋼線材を用いた従来例で
ある。またCおよびDは、富Mn層の厚みが本発明の範
囲外(0.007×R以上)であるSi−Mn系および
Si−Mn−Ti系低合金鋼線材を用いた比較例であ
り、Eは、富Mn層の厚みは本発明の範囲内であるが、
低合金鋼線材中のMn量が本発明の範囲外(1.0%以
上)である比較例である。更にFは、MnおよびTiを
本発明の範囲外に過剰含有する鋼線材を用いた比較例で
あり、PおよびQは、鋼線材中のMn量は本発明の範囲
内であるがMn総量を本発明の範囲外に過剰含有する比
較例である。その他のG〜Nは、いずれも鋼線材組成お
よび富Mn層が本発明の要件を満たす本発明例であり、
富Mn層の形成方法および形成時期をそれぞれ表に記載
の様な種々の条件で行った例である。
よびSi−Mn−Ti系低合金鋼線材を用いた従来例で
ある。またCおよびDは、富Mn層の厚みが本発明の範
囲外(0.007×R以上)であるSi−Mn系および
Si−Mn−Ti系低合金鋼線材を用いた比較例であ
り、Eは、富Mn層の厚みは本発明の範囲内であるが、
低合金鋼線材中のMn量が本発明の範囲外(1.0%以
上)である比較例である。更にFは、MnおよびTiを
本発明の範囲外に過剰含有する鋼線材を用いた比較例で
あり、PおよびQは、鋼線材中のMn量は本発明の範囲
内であるがMn総量を本発明の範囲外に過剰含有する比
較例である。その他のG〜Nは、いずれも鋼線材組成お
よび富Mn層が本発明の要件を満たす本発明例であり、
富Mn層の形成方法および形成時期をそれぞれ表に記載
の様な種々の条件で行った例である。
【0033】表1、2から明らかなように、本発明例は
いずれの場合においても、引張強さが良好であると共
に、島状マルテンサイト含有率:1.0%以下であり、
且つ伸線の限界径:1.0mmφで伸線加工性にも優れ
ていることが分かる。
いずれの場合においても、引張強さが良好であると共
に、島状マルテンサイト含有率:1.0%以下であり、
且つ伸線の限界径:1.0mmφで伸線加工性にも優れ
ていることが分かる。
【0034】これに対して、従来例(AおよびB)の場
合には、鋼線材中のMn量が多いために本発明例に比べ
て島状マルテンサイトの含有率が著しく高く、伸線限界
径も大きい。また、富Mn層の厚みが本発明の範囲外で
ある比較例(CおよびD)の場合には、伸線限界が大き
くなると共に、Mn層の剥離が見られた。更に、鋼線材
中のMn量が本発明の範囲外である比較例(Eおよび
F)の場合には、島状マルテンサイト含有率が1.0%
を超えると共に、伸線限界径も1.0mmφを超え、更
にTiを多量に含有するFの場合には、引張強さが増加
することが分かった。また、Mn総量を多量に含有する
比較例(PおよびQ)の場合には、溶接金属の延性が劣
化することが分かった。
合には、鋼線材中のMn量が多いために本発明例に比べ
て島状マルテンサイトの含有率が著しく高く、伸線限界
径も大きい。また、富Mn層の厚みが本発明の範囲外で
ある比較例(CおよびD)の場合には、伸線限界が大き
くなると共に、Mn層の剥離が見られた。更に、鋼線材
中のMn量が本発明の範囲外である比較例(Eおよび
F)の場合には、島状マルテンサイト含有率が1.0%
を超えると共に、伸線限界径も1.0mmφを超え、更
にTiを多量に含有するFの場合には、引張強さが増加
することが分かった。また、Mn総量を多量に含有する
比較例(PおよびQ)の場合には、溶接金属の延性が劣
化することが分かった。
【0035】
【発明の効果】本発明の溶接用低合金鋼線は上記の様に
構成されているので、島状マルテンサイトの生成を抑制
できると共に機械的強度も均質なものであり、さらに伸
線加工性にも優れている。従って、炭酸ガスアーク溶接
用ワイヤ等に好適に用いられるものである。
構成されているので、島状マルテンサイトの生成を抑制
できると共に機械的強度も均質なものであり、さらに伸
線加工性にも優れている。従って、炭酸ガスアーク溶接
用ワイヤ等に好適に用いられるものである。
Claims (2)
- 【請求項1】 C:0.02〜0.15%(特に断らな
い限り重量%、以下同じ)、Si:0.20〜1.65
%を含有する溶接用低合金鋼線において、 該低合金鋼線は、母材中にMn:1.0%未満を含有
し、 該低合金鋼線の表面には、該低合金鋼線の半径Rに対し
て0.007×R以下の厚みの富Mn層が形成されると
共に、 上記母材および富Mn層の双方に含まれる総Mn量が低
合金鋼線全体の1.1〜2.0%であることを特徴とす
る溶接用低合金鋼線。 - 【請求項2】 前記母材が更にTi:0.01〜0.3
0%を含有するものである請求項1に記載の溶接用低合
金鋼線。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20880594A JPH0873984A (ja) | 1994-09-01 | 1994-09-01 | 溶接用低合金鋼線 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20880594A JPH0873984A (ja) | 1994-09-01 | 1994-09-01 | 溶接用低合金鋼線 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0873984A true JPH0873984A (ja) | 1996-03-19 |
Family
ID=16562420
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20880594A Withdrawn JPH0873984A (ja) | 1994-09-01 | 1994-09-01 | 溶接用低合金鋼線 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0873984A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115125441A (zh) * | 2022-06-16 | 2022-09-30 | 江苏永钢集团有限公司 | 一种气保焊丝用钢及其热处理软化方法 |
-
1994
- 1994-09-01 JP JP20880594A patent/JPH0873984A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115125441A (zh) * | 2022-06-16 | 2022-09-30 | 江苏永钢集团有限公司 | 一种气保焊丝用钢及其热处理软化方法 |
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Legal Events
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20011106 |