JPH0859304A - 自律応答積層体、その製法およびそれを使用した窓 - Google Patents

自律応答積層体、その製法およびそれを使用した窓

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JPH0859304A
JPH0859304A JP6222676A JP22267694A JPH0859304A JP H0859304 A JPH0859304 A JP H0859304A JP 6222676 A JP6222676 A JP 6222676A JP 22267694 A JP22267694 A JP 22267694A JP H0859304 A JPH0859304 A JP H0859304A
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water
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Haruo Watanabe
晴男 渡辺
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AFFINITY KK
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Abstract

(57)【要約】 [目的] 非イオン性の両親媒性官能基を付加した多糖
類誘導体の等方性水溶液を用いて、温度変化により均一
な無色透明状態と十分な白濁不透明状態を視角依存性を
もつことなく安定的に繰り返し可逆変化しうる自律応答
積層体、その製法およびその積層体を使用した太陽の直
射光線の照射面のみを選択的に遮光する省エネルギーで
快適な窓を提供することである。 [構成] 水溶液の昇温により白濁凝集する非イオン性
の両親媒性官能基を付加した両親媒性多糖類誘導体、イ
オン性高分子量有機物質および水が基本構成であり、さ
らに温度シフト剤等も必要に応じて添加されている等方
性水溶液を基板に積層してなる自律応答積層体とその製
法およびそれを使用した窓である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、積層体に太陽光線が照
射されると、その光吸収による熱作用により水溶液が白
濁変化して光線を遮光に関する。これは、直射光が照射
された面のみが選択的に遮光する窓をもった建築物、車
両等を可能にする。また、熱素子と組合せることにより
電子カーテンつき間仕切りや扉等の室内窓等にも使用で
きる。
【0002】
【従来の技術】近年、機械的な方法に代えて機能性材料
を組み込んだ複合ガラスを使用して物理化学的に光線を
可逆的に制御する調光ガラスが提案されている。例え
ば、液晶、エレクトロミック、微粒子分極配向、フォト
クロミック、サーモクロミック等の方式がある。また、
太陽光エネルギーの居住空間への侵入を防ぐために熱線
吸収ガラスや熱線反射ガラス等が窓に使用されてきた。
しかし、熱線吸収ガラスや熱線反射ガラスは、確かに日
射エネルギーの居住空間への侵入を防ぐが着色や表面の
ぎらつきが残り、ガラス本来の無色透明の良さを低減す
る欠点をもち、さらに省エネルギーの面からも太陽光線
の約半分のエネルギーをもつ可視光線の制御がまだ不十
分である。なお、調光ガラスは、社団法人ニューガラス
フォーラムの平成3年度ニューガラス産業対策調査研究
報告書(地球温暖化防止対策)に詳細に記されているよ
うに、省エネルギー対策との関係もあり、これからの開
発が強く期待されている。
【0003】そこで、本発明者は、太陽光エネルギーが
窓に照射していることに注目した。このエネルギーの有
無により、窓ガラスが自律応答して透明ー不透明の可逆
変化をおこして、快適な居住空間にすることを検討し
た。この自律応答特性は、照射面のみ遮光する特長や省
エネルギー効果のみならず施工、メンテナンス、維持費
等からも非常に魅力的であることに着目した。この点か
ら、フォトクロミック方式とサーモクロミック方式が選
択できるが、作用機構が複雑でかつ波長依存をもつフォ
トクロミック方式よりも、人為的にも必要に応じて容易
に温度調整できる熱作用のみに依存するサーモクロミッ
ク方式が優れている。なお、地球にとどく太陽光エネル
ギーは、290nmから2140nmの範囲にあり、そ
の内400nmから1100nmの可視から近赤外域で
約80%を占めており、かつ可視域が近赤外域より大き
いことに注目する必要がある。これは、可視域を制御す
ることが目隠し作用だけでなく、省エネルギーや防眩の
効果に大切であることを示す。なお、本発明は、光が物
体に照射されると光吸収がおき熱に変換され、その熱に
より物体の温度が上昇することを利用している。なお、
人工的に熱素子により温度を制御して利用してもよい。
【0004】サーモクロミック方式に使用される材料
は、前記した文献にも示されているが特性が不十分であ
りいまだ実用化されていない。そこで、サーモクロミッ
クガラスとして広く利用されるためには、下記の条件を
満たす必要がある。 1.透明ー不透明の相変化が可逆的であること。 2.可逆変化が相分離なく繰り返し可能なこと。 3.相転位開始温度が低いこと。 4.無彩色または呈色無変化であること。 5.耐久性があること。 6.毒性等の公害がないこと。 これらの条件を満たす可能性のある自律応答材料とし
て、水溶液の温度上昇により無色透明から白濁不透明状
態に相転位する水溶液に注目した。また、これは、常態
は透明でエネルギーの添加により白濁遮光するのでフェ
イルセーフの点からも有利である。
【0005】従来、温度上昇により白濁不透明状態にな
る水溶液として、非イオン性界面活性剤の曇点現象がよ
く知られており、また本目的への応用も検討されている
が、説明するまでもなく容易に相分離をおこし前記条件
の1、2を満たせなかった。また、非イオン性水溶性高
分子(例えば、ポリビニールアルコール部分アセタール
化物、ポリビニルメチルエーテル、ヒドロキシプロピル
セルロース、ポリN−イソプロピル−アクリルアミド
等)の等方性水溶液も白濁変化を示すものが知られてお
り、同様に本目的への応用(実公昭41−19256、
特願昭51−049856、特公昭61−7948)も
検討されているが、やはり前記条件の1、2を満たすこ
ができず実用化に至ってない。水溶性高分子水溶液の積
層体は、室温では無色透明な均一水溶液状態をとるが、
加温して白濁不透明状態に放置すると相分離をおこし、
水溶液に濃度むらが発生して安定した可逆変化がとれな
かった。さらに、積層体にして垂直に放置すると、比重
差により白濁凝集体の沈降分離やむらの発生を起し使用
しうるものではなかった。なお、本発明に関係する高分
子としてポリN−イソプロピル−アクリルアミド(特公
昭61−7948)は、約低濃度水溶液でも微小な不均
一性からくる粗密によりヘイズが残り無色透明な均一水
溶液状態をとれなかった。また、遮光性が弱い(一般の
分光光度計では平行光線の小さな散乱でも受光部に入ら
なくなり見かけ状遮光増大と計測される)ので遮光性を
高めるために高濃度、厚い液層にする(例えば、0.2
mm厚でメチルセルロースの20重量%、5mm厚でメ
チルセルロースの4重量%等)とヘイズの増大となり曇
りガラス、型板ガラスのようになり視界が不良であっ
た。また、加温して凝集させてもその変化は小さく白紙
のような散乱反射が見らず、20重量%水溶液を60
℃、3時間放置で水の相分離、むらの発生も起した。さ
らに、特に窓への利用のためには、白濁開始温度を室温
近くまで低温シフトさせる必要がある。そのために無機
電解質等を添加すると相分離、むらの発生等が顕著とな
った。これは、イオンにより結合水の破壊が引きおこさ
れ、水溶性高分子の疎水結合が強まりより凝集力が大き
くなるためである。また、直射光線を十分に遮光するた
めに水溶性高分子の濃度を高めると白濁凝集による相分
離、溶解不良を起した。そこで、特公昭61−7948
の実施例のように、この遮光性を5%以下の低濃度水溶
液の層厚に求めても、低粘度による対流粗密むら、凝集
による粗密むら、低濃度による弱い遮光力、破損時に低
粘度液が飛び散る汚染問題等の問題点もあり今だ実用化
されていない。さらに、多種の化合物を混合して得たゲ
ル(国際出願PCT/EP86/00360)もある
が、やはり均一な可逆安定性に問題があり実用化にいた
ってない。
【0006】そこで、本発明者は、非イオン性の両親媒
性官能基を付加した水溶性多糖類誘導体であれば、白濁
凝集を示しかつ親水性をも維持しえる可能性があること
に注目した。その官能基の代表例として親水ー疎水バラ
ンスのよいヒドロキシプロピル基を選択し、その多糖類
誘導体の水溶液が薄膜でも太陽の直射光を十分に遮光で
きることに注目した。そこで、主鎖に多糖類を、側鎖に
ヒドロキシプロピル基を注目して、その代表例として構
造的に安定性のあるセルロースを主鎖に選びヒドロキシ
プロピルセルロース水溶液を詳細に検討した。その製造
方法は、特公昭45−9398に述べられている。
【0007】既に公知であるように、ヒドロキシプロピ
ルセルロースの50重量%以上の水溶液は、ライオトロ
ピック型の高分子系コレステリック液晶になり、コレス
テリック液晶特有の性質を示し、可視光線の選択散乱に
より視角依存のある極彩色の虹色干渉色を示す。また、
分子量、濃度、電解質の添加量等により転位温度はシフ
トするが、ある温度以上になると白濁不透明状態を示し
可逆変化もする。そこで、さらに前記条件の4を満たす
検討をした。この液晶の選択散乱波長は、濃度の低下ま
たは温度の上昇によりレッドシフトする。そこで、濃度
を低下していき20℃前後で近赤外線を選択散乱する濃
度(例えば、56重量%)にして、無彩色化の条件を満
たすように工夫したが、斜めからの視角や温度が10℃
前後になると赤色の選択散乱が認められ不満足であっ
た。このように、温度や視角により色彩の変化がおきる
ことは、建築物、車両等のデザインをするにあたり設計
自由度を阻害するため、ほとんど利用することは不可能
であった。そこで、この濃度をさらに薄く(例えば、5
2重量%)すると液晶相と等方相の2相状態となり淡白
く光散乱を示し透明性が著しく損ない使用できるもので
なかった。これらの現象は、分子量依存により多少変わ
るが同様に認められた。また、直角すなわち正面から観
察して、近赤外線を選択散乱する無色透明の状態でもや
はり液晶組成固有の散乱やむらによるヘイズがあり、す
なわち大面積でモノドメイン状態をうることはできずガ
ラスのような透明性は得られなかった。また、一度氷結
すると室温にもどしてもコレステリック相の線状欠陥の
むらが発生した。
【0008】従来のガラスのように大面積で建築物、車
両等に広く利用されるには、視角依存性をもつことなく
ガラス本来の無色透明性を確保することが非常に重要で
ある。そこで、本発明者は、透明状態、白濁不透明状態
ともに視角依存性を示さない非イオン性の両親媒性官能
基を付加した水溶性多糖類誘導体の等方性水溶液に再度
注目して例えば、特願平5−62502のように鋭意検
討してきた。その結果、本発明の方法でも等方性水溶液
の可逆変化がむらなく安定的に繰り返し可能となり、こ
れまで基本的問題として残り実用化できなかった欠陥を
解決して本発明に至った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】非イオン性の両親媒性
官能基を付加した多糖類誘導体の等方性水溶液を用い
て、温度変化により均一な無色透明状態と十分な白濁不
透明状態を視角依存性をもつことなく安定的に繰り返し
可逆変化しうる積層体とその製法およびそれを使用した
窓を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の問題点
を解決するためになされたものであり、水に溶解してい
る非イオン性の両親媒性官能基を付加した多糖類誘導体
が温度の上昇により凝集して白濁散乱を起こし、光透過
率が小さくなる等方性水溶液を、少なくとも一部が透明
であり、前記水溶液を直視可能な基板で積層した自律応
答積層体において、前記等方性水溶液が、重量平均分子
量約10,000〜約500,000の多糖類誘導体1
00重量部を前記多糖類誘導体100重量部に対して約
110〜約5,000重量部となる量の水と前記水10
0重量部に対し約0.05重量部ないし約10重量部と
からなる重量平均分子量約3,000以上のイオン性高
分子量有機物質からなる溶液である自律応答積層体であ
り、その製法として非イオン性の両親媒性官能基を付加
した重量平均分子量約10,000〜約500,000
の多糖類誘導体100重量部を前記多糖類誘導体100
重量部に対して約110〜約5,000重量部となる量
の水と前記水100重量部に対し0.05〜10重量部
とからなる重量平均分子量3,000以上のイオン性高
分子量有機物質からなる等方性水溶液を、少なくとも一
部が透明であり、前記水溶液を直視することが可能な基
板間に封止することを含む自律応答積層体の製造方法で
あり、および水に溶解している非イオン性の両親媒性官
能基を付加した多糖類誘導体が温度の上昇により凝集し
て白濁散乱を起こし、光透過率が小さくなる等方性水溶
液を、少なくとも一部が透明であり、前記水溶液を直視
可能な基板で積層した自律応答積層体を使用した窓にお
いて、前記等方性水溶液が、重量平均分子量約10,0
00〜約500,000の多糖類誘導体100重量部を
前記多糖類誘導体100重量部に対して約110〜約
5,000重量部となる量の水と前記水100重量部に
対し約0.05重量部ないし約10重量部とからなる重
量平均分子量約3,000以上のイオン性高分子量有機
物質からなる溶液である窓を提供するものである。
【0011】本発明に使用する水溶液は、水に溶解して
いる非イオン性の両親媒性官能基を付加した多糖類誘導
体(以下、両親媒性多糖類誘導体と記す)が温度の上昇
により凝集して白濁散乱をおこし光透過率が小さくなる
両親媒性多糖類誘導体とイオン性高分子量有機物質およ
び水を基本組成とし、下記条件を満たす自律応答型の等
方性水溶液である。 1.透明ー不透明の相変化が可逆的であること。 2.可逆変化が相分離なく繰り返し可能なこと。 3.相転位開始温度が低いこと。 4.無彩色または呈色無変化であること。 5.耐久性があること。 6.毒性等の公害がないこと。 すなわち、イオン性高分子量有機物質を前記の両親媒性
多糖類誘導体水溶液に添加することにより本目的を満た
せた。このように、本発明は、温度の上昇により白濁不
透明状態をおこす両親媒性多糖類誘導体からなる等方性
水溶液を安定的に可逆変化しうることをはじめて可能に
した。
【0012】この両親媒性多糖類誘導体は、非イオン性
官能基からなり室温で約20重量%ないし約50重量%
の高濃度でも均一に溶解して水溶液となり、温度の上昇
とともに白濁不透明状態になるものは本発明に使用でき
る。原料となる多糖類は特に限定されることなく、セル
ロース、プルラン、デキストラン等があり広く利用で
き、その誘導体の具体例としては、プロピレンオキサイ
ドを高付加して得られるヒドロキシプロピルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルプルラン、ヒドロキシプロピル
デキストラン等がある。なかでもセルロース誘導体は、
安定性が高く重要である。特記しない限り、セルロース
誘導体を主体として記述するが、もちろん本発明はこれ
に限定されるものではない。また、両親媒性多糖類誘導
体の重量平均分子量が小さいと凝集が小さく、白濁も弱
く本発明に不適である。従って、約10,000〜約5
00,000の範囲であり、溶液粘度等の使用しやすさ
をも考慮すると約15,000〜約100,000であ
るのが好ましい。また、2種類以上の分子量分布を有す
る誘導体を混合使用して用いてもよい。
【0013】セルロースは、官能基が付加すると多くの
溶媒に可溶となる。室温で高濃度に均一溶解するセルロ
ース誘導体の水溶液が、温度の上昇により白濁凝集状態
になるためには、官能基に疎水結合(結合水の破壊によ
る疎水基間の親和性の増大による結合力)が働く必要が
ある。そのためには両親媒性の官能基が必要である。官
能基は、イオン性基であればイオン斥力が働き本目的に
不適であり、親水性基、例えば、水酸基、エチレンオキ
サイド基、エーテル結合部、エステル結合部、アミド結
合部等と疎水性基、例えば、メチル基、エチル基等を併
せもつ非イオン性基であるのがよい。例えば、ヒドロキ
シエチル基を付加したヒドロキシエチルセルロースは、
親水性基(水酸基、エチレンオキサイド基)をもち、水
溶性であるが、疎水性基(メチル基)をもたないので凝
集できず、白濁凝集状態を生じない。また、前記したよ
うにメチル基、エチル基等の疎水性基のみを付加した多
糖類誘導体は疎水性が強すぎ、水に対する溶解性にも問
題があり本発明に不適である。これに対して、例えば、
ヒドロキシプロピル基を付加したヒドロキシプロピルセ
ルロースは、水溶性であり、かつ、白濁凝集状態を生じ
ることができる。より具体的にたは、特公昭42−10
640にあるようにセルロースのアンヒドログルコース
単位あたり約2(約40%)以上のヒドロキシプロピル
基が付加すると良好な溶解性をもったヒドロキシプロピ
ルセルロースをうる。このヒドロキシプロピル基に代表
されるように、非イオン性の親水性基(水酸基)と疎水
性基(メチル基)を併せもつ官能基が付加しており、室
温で約20重量%ないし約50重量%の高濃度でも水に
均一溶解し、かつ温度の上昇で白濁凝集する両親媒性多
糖類誘導体が、本発明に有用である。その他の官能基例
としては、特公昭60−2343に記述されているよう
に、β−OH−ブチル基、α−Me−β−OH−プロピ
ル基、β−OH−γ−Cl−プロピル基、β−OH−プ
チリル基等があり、それを付加したセルロース誘導体等
が有用である。なお、官能基の付加は、単一種でも複数
種でもよく特に限定されるものではない。例えば、付加
したヒドロキシプロピル基の水酸基に追加官能基を付加
した誘導体、追加官能基としてヒドロキシプロピル基を
付加した誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース
に付加等)等があり、単一の官能基を付加した誘導体に
限定されるものではない。ようするに、室温で約25重
量%ないし約50重量%の高濃度でも水に均一溶解し、
かつ温度の上昇で白濁凝集する水溶性の両親媒性多糖類
誘導体であればよい。これらの官能基やその付加方法
は、朝倉書店の出版である大有機化学第19巻に詳細に
開示されており、これらの方法と一般の付加・置換反応
を組み合わせることにより、水酸基、低級アルキル基、
ハロゲン基等を付加せしめることによって親水ー疎水バ
ランスを調製できる。
【0014】本発明のイオン性高分子量有機物質は、重
量平均分子量が約3,000以上、より好ましくは重量
平均分子量が約5,000以上である分子量の大きいイ
オン性の水溶性化合物であり、前記した両親媒性多糖類
誘導体の等方性水溶液が白濁凝集したときに相分離を起
すことを防止する働きをする。イオン性高分子量有機物
質の作用原理は、両親媒性多糖類誘導体が白濁凝集する
ときに、分子レベルでこの凝集体の内部に取り込まれる
とともに水分子を取り込み、水分子をイオン水和水とし
てしまうために相分離を起さないことにあると思われ
る。また、白濁凝集の開始温度は、イオン性高分子量有
機物質の添加量、両親媒性多糖類誘導体の濃度、イオン
性高分子量有機物質の種類等により制御でき、実用性の
観点から重要な室温近辺まで、さらに室温まで下げるこ
とができる。これは、イオン性高分子量有機物質のイオ
ン性基が、両親媒性多糖類誘導体の疎水性基に疎水結合
をうながして白濁凝集させるが、同時これらのイオン性
基と親水性基は、水和により水分子の取り込みを維持で
き相分離の発生を防止できるものと思われる。ただし、
イオン性高分子量有機物質の添加量は、高分子効果によ
り低分子量のイオン性有機物質より比較して少なくてよ
い。このイオン性高分子量有機物質の特異的な作用によ
り全体の相バランスが保たれるので相分離が防止される
のであろうと思われる。これに対してイオン性高分子量
有機物質が存在しない場合、両親媒性多糖類誘導体分子
間で疎水結合を生じ、これによる高分子効果とあいまっ
て凝集が密となり相分離が起き、不可逆変化系となる。
よって、イオン性高分子量有機物質を添加した等方性水
溶液を基板間に積層することにより、室温または室温近
辺で白濁凝集の開始温度をもち、かつ安定的に繰り返し
可逆変化しうる従来にない自律応答積層体が得られる。
また、この積層体は、低温氷結しても安定的に繰り返し
可逆変化する。このように、広い温度域で均一に安定し
た可逆変化をもつ。
【0015】この基本原理は、疎水結合の効果により水
溶液の温度上昇で白濁凝集を起す両親媒性多糖類誘導体
であれば、特に限定することなく広く利用できる。この
ときの低濃度側は、両親媒性多糖類誘導体100重量部
に対する水の割合が約10,000重量部以下、好まし
くは約5,000重量部以下、さらに好ましくは約50
0重量部以下になると水溶液層の厚みが薄くても十分な
遮光性をとれ、かつ水溶液の粘度も高くなり破損時の飛
散を防ぐことができる。また、高濃度側は、特に高くす
る必要はなく、かえって疎水結合の効果が弱まり、相分
離は起きないが、高粘度となり、無気泡で均一に積層す
ることが困難になるため、約50重量%以下であるのが
好ましい。また、この約50重量%以下に限定されるも
のではないが、例えばヒドロキシルプロピルセルロース
のように液晶相をとり干渉色を示すものでは約50重量
%以下でないと無色透明な等方性水溶液をえ難い。な
お、実用性の立場からは両親媒性多糖類誘導体の全体割
合をおさえて粘度を低くするほうが、生産が非常に容易
になる。例えば、通常の攪拌混合でえることができる両
親媒性多糖類誘導体の濃度が約30重量%程度である等
方性水溶液は、比較的容易に無気泡化できる。この等方
性水溶液を基板上に置き、積層加圧し、洗浄し、そして
外周封止することにより無気泡な均一積層体が得られ
た。このように、白濁凝集とその可逆安定性の点から水
の量は、両親媒性多糖類誘導体100重量部に対して約
100ないし約1,000重量部であるのがよく、さら
に、約110ないし約500重量部であるのが好まし
い。
【0016】次に、イオン性高分子量有機物質は、重量
平均分子量が約3,000以上で室温の水に容易に溶解
するイオン性の水溶性化合物である。イオン性基は、例
えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アン
モニウム基等があリ、また両性イオンでもよい。その対
イオンは、アルカリイオン、アンモニウムイオン、ハロ
ゲンイオン等がある。イオン性高分子量有機物質は、添
加量が室温の水に溶解すればよく、イオン性基をもつオ
リゴマー、ポリマー、共重合体、側鎖や末端にイオン性
基を付加した水溶性化合物等ひろく使用できる。要する
にイオン性基をもつ重量平均分子量が約3,000以
上、より好ましくは重量平均分子量が約5,000以上
の水溶性化合物であれば特に限定されない。
【0017】従って、イオン性高分子量有機物質として
例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタアクリル
酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム−アクリルアマイ
ドの共重合体、アクリル酸ナトリウム−メタクリル酸ナ
トリウムの共重合体、アクリル酸ナトリウム−マレイン
酸ナトリウムの共重合体、アルギン酸ナトリウム、カル
ボキシメチルセルロースナトリウム、ポリスチレンスル
ホン酸ナトリウム、ポリアリルアミン塩(例えば、日東
紡績社のPAA−CH3CO2H−L等)、ポリビニル
アルコールの片末端にスルホン酸基のナトリウム塩を部
分付加したポリマー(例えば、日本合成化学社のゴーセ
ランL−3266、4%水溶液20℃:2.4cps/
ケン化度:88モル%)、ポリビニルアルコール系の共
重合変性であるイオン性コポリマー(例えば、クラレ社
のKポリマー/カルボン酸変性、Cポリマー/アンモニ
ュウム変性)等がある。また、分子量の上限は特に限定
されるものではない。この様に広く選択でき、イオン性
基をもち室温の水に溶解するイオン性高分子量有機物質
ならこれらに限定されるものではない。
【0018】イオン性高分子量有機物質の量は、等方性
水溶液中に存在する水100重量部に対して約0.05
重量部ないし約10重量部の範囲でよく、好ましく約
0.1重量部ないし約5重量部の量がよい。なお、添加
量は、必要量より多くすると、粘度の増加や凝集性が強
まりすぎる傾向がある。また、2種類以上のイオン性高
分子量有機物質を混合使用してもよい。また、実施例に
示すように、等方性水溶液の組成、濃度を調整すること
により、白濁変化率や白濁開始温度を自由に設計でき
る。開始温度を低温にシフトさせるには、両親媒性多糖
類誘導体の濃度を大きく、イオン性高分子量有機物質の
添加量を多くすることにより室温まで低下させることが
できる。これは、室温で半透明状態を必要とする室内外
の窓、熱素子で温度制御する室内用間仕切などの電子カ
ーテン、特殊産業用途(例えば、温度センサー等)等に
有用である。
【0019】次に、相転位温度を調整する添加剤である
温度シフト剤に関して述べる。白濁状態に相転位する温
度を低温側にシフトさせるには、sec−ブチルアルコ
ール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモ
ノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニ
ルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテ
ル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のよ
うに水に対する溶解度が小さく親水性基もある化合物
は、低温シフト剤に好ましい。その添加量は、水100
重量部に対して0.1重量部ないし10重量部でよい。
また、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコー
ル、無機電解質(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム等)等もある。
【0020】その他、等方性水溶液の任意な着色のため
の着色剤や耐光性向上のための紫外線吸収剤を添加して
もよく、また熱線吸収のために近赤外線吸収剤を添加し
てもよい。着色剤は、水に溶解すればよく、例えば、
C.I.Direct Blue86、C.I.Aci
d Red8、C.I.Acid Yellow11等
がある。添加量は、等方性水溶液100重量部に対して
0.01重量部ないし2重量部であってよい。紫外線吸
収剤は、水溶性である必要があり、例えば、住友化学社
のSumisorb110S等があり、さらにチバガイ
ギー社等で最近開発された中性の水溶性紫外線吸収剤は
本発明に非常に有用である。添加量は、等方性水溶液1
00重量部に対して0.01重量部ないし2重量部であ
ってよい。また、より安定化させるために等方性水溶液
に溶存している空気(酸素)を不活性ガス(例えば、窒
素、アルゴン、ヘリウム等)に置換しておくと、酸化防
止効果も得られるので、窓等の長期間使用する場合に特
に好ましい。水は、通常の純水でよい。さらに、等方性
水溶液を中性にすると熱劣化防止になり有機系、無機系
のPH調整剤を添加するのも好ましい。
【0021】次に、イオン性高分子量有機物質を用い
て、例えば、ヒドロキシルプロピルセルロース(ヒドロ
キシルプロピル基:62.4%、2%水溶液粘度:8.
5cps、重量平均分子量:約60,000)100重
量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(エーテ
ル化度:0.9、1%水溶液粘度:15cps)2重量
部および純水200重量部からなる、20℃で無色透明
な等方性水溶液を調整した。旭硝子社の10cm角で、
厚み6mmのフロートソーダガラス間にこの等方性水溶
液を0.2mm厚で設け、積層体とした。この積層体
の、室温と60℃の可逆安定性および60℃での長時間
放置時の安定性は、ともに、相分離なく、良好であっ
た。その白濁開始温度は、約35℃であり約45℃で十
分な遮光状態をとり、その変化は均一状態を保持しつつ
繰り返し安定した可逆性を示した。次に、この積層体の
光透過スペクトルを測定した。光散乱する大型サンプル
の測定に適している日立制作所社のU−4000形分光
光度計を使用し、積層体の中心部を積分球の窓に近接
(約1mm)して300nmから1,500nmの紫外
領域、可視領域および近赤外領域での光透過スペクトル
を測定した結果が図8である。1は室温(約25℃)の
初期スペクトル、2は約48℃のスペクトルであり、こ
の温度から放冷しながら測定したのが3および4のスペ
クトルである。このように積層体は、紫外、可視および
近赤外域の光を十分に遮光する特性を保持しつつ完全に
もとの初期スペクトルにもどることが分かる。
【0022】次に、本発明に係る積層体の構造とそれを
使用した窓に関して述べる。図1、図2および図3は、
それぞれ、本発明の積層体の一実施例の模式断面図であ
って、1は基板、2は等方性水溶液、3は封止剤、4は
枠である。
【0023】図1の積層体は、本発明に係わる積層体の
基本形態を有し、少なくとも一部が透明で等方性水溶液
2を直視可能な基板1の間に等方性水溶液2を積層した
ものである。等方性水溶液2の層厚は、特に限定される
ものではないが0.01mmから2mm程度でよく、
0.2mm程度の厚みで十分に遮光できる。封止剤3
は、水の蒸発を防止するためにあり、外周部において、
基板間に配置されていてもよく、その外側に配置されて
もよい。また、封止剤3を介して固定枠4(例えば、コ
の字型材、L字型材、金属テープ等)を設けてもよい。
この枠4は、等方性水溶液を積層した後に封止する製造
方法の場合に特に有効である。また、より強固な封止や
生産を容易にするために、例えば、外周部を粘着剤つき
金属テープ、粘着ゴム、速硬化樹脂等で仮封止をしてか
ら、外周部に付着した等方性水溶液等を洗浄して除去
し、次いで封止剤3を介して枠を固定する方法等のよう
に多段封止をしてもよい。さらに、端部にコーナーキャ
ップを補助枠として使用してもよい。また通電用に外部
端子を設ける積層体では、枠による短絡に注意して固定
すればよく、特に説明するまでもない。封止剤3として
は、エポキシ系樹脂(例えば、東レチオコール社のフレ
ップ等)、アクリル系樹脂(例えば、感光性樹脂である
サンライズメイセイ社のホトボンド等)、ポリサルファ
イド系シーラント、イソブチレン系シーラント、耐水性
のアクリル系粘着剤等を使用でき、必要に応じてガラス
にも接着する無機封止剤(例えば、旭硝子社のセラソル
ザ等)を使用してもよい。
【0024】厚みを確実に制御するために、特に図示し
ていないが透明で直視できる等方性水溶液層にもスぺー
サー(例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等)を使用す
るとよい。この場合、等方性水溶液2の屈折率(約1.
4)に近い物質を使用すると視認でき難くなり好まし
い。また、必要に応じてスペーサーを基板に固定してお
くのもよい。
【0025】基板は、一部が透明で等方性水溶液2を直
視可能であればよく、種々の材料、例えば、ガラス、プ
ラスチック、セラミックス、金属等を使用することがで
き、板状の材料なら単体、複合材料、表面を加工処理し
た材料等も使用でき、それを組み合わせて使用してもよ
い。例えば、ガラスと黒染アルミ板の組合せは、アルミ
板が高い光吸収体となり自律応答に効果的である。ま
た、窓材としてのガラス板は、単純単板ガラス、強化ガ
ラス、網入板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラ
ス、熱線吸収反射ガラス、合わせガラス、紫外線吸収合
わせガラス、透明導電性ガラス、複層ガラス、透明単板
ガラスとポリカーボネイトの複合ガラス等があり、種
類、厚み等を適宜組み合われて一対の基板として目的に
あわせて使用することができる。その切断面の形状は、
通常の直角、約45度、部分斜めカット等自由に選択で
き、封止の構造、生産等に利用できる。また特に図示し
ないが、異サイズ基板積層、ずらし基板積層等で封止剤
だまりを設けるように基板を選択してもよい。また、ソ
ーダライムガラスと透明導電膜の等方性水溶液と接する
面をシリカコートして保護すると、耐久性において好ま
しい。
【0026】本発明の熱線吸収ガラスとは、太陽光エネ
ルギーを吸収するように設計された熱線吸収ガラス、熱
線反射ガラス(反射と共に吸収も強い)、熱線吸収反射
ガラス、近赤外線吸収剤をコートしたガラス等をいう。
そのなかでも例えば、セリウム、チタン添加および鉄の
添加増による紫外線と近赤外線を強く吸収するよう設計
されたグリーン系の熱線吸収ガラス(例えば、セントラ
ル硝子社のグリーンラルSP等)、Low−Eガラスと
いう無色透明な熱線吸収ガラス、ブルー系の熱線反射ガ
ラス等を使用するとよい。太陽光エネルギーを効率的に
吸収する基板を少なくとも片側に使用すると、両基板の
厚みは薄めにしてもよく、その結果、積層体の熱容量が
小さくなり透明状態へのもどりが速やかになる効果がで
る。さらに、例えば、紫外線吸収ガラスと単純単板ガラ
ス間に等方性水溶液2をおいた積層体にさらに気体層を
もたせてLow−Eガラス(例えば、ピルキントン社の
Kガラス等)を複層させた複合複層積層体を使用した窓
は、無色透明、省エネルギー、耐候性をもちながら、選
択遮光機能を効果的に自律応答する従来にない窓を提供
することができる。なお、一対の通常の単純単板ガラス
も、太陽光エネルギーの吸収があり加温されるので本発
明に使用できることは言うまでもない。なお、窓の外側
の基板厚が約5mm以上であると350nm以下の紫外
線透過が急激に小さくなり耐候性の面で好ましく、また
当然、厚いほど熱線吸収も強まり選択遮光には厚板が有
利である。
【0027】さらに、図2の積層体は、等方性水溶液2
の層厚を連続的に変えて白濁不透明状態の程度を連続的
に変化させた積層体である。これは、窓近辺の日射調整
等の利用に有効である。図3のものは、ある部分の水溶
液2を薄くし、または無くしたりして、透視性を確保し
(例えば、自動車のリヤーウインドウ等)あるいは図
形、文字、抽象模様等の画像情報を表示(例えば、広告
装置等)ができる積層体である。
【0028】図4は他の実施例の模式断面図であり、等
方性水溶液2に組成の異なる等方性水溶液2−1、2−
2を設けることにより白濁程度の差により画像情報を表
示できるようにした積層体である。水溶液2−1および
2−2の配置は、並列でも直列でもよい。また、水溶液
2−2をほぼ同濃度の水に溶ける通常の高分子溶液(例
えば、ポリビニルアルコール系高分子の水溶液等)にし
て、白濁有無により画像情報を表示できる積層体にして
もよい。この画像情報は、図形、文字、抽象模様等とく
に限定されることなく、利用できる。なお、直列の場合
は、薄板ガラス、透明フィルム等で分隔してもよい。
【0029】図5はさらに他の実施例の模式断面図であ
り、少なくとも片側の基板に紫外線吸収層5(この基板
を窓の外側にセットする)を設けたものである。紫外線
吸収層5は、基板の表面(例えば、岩城硝子社の紫外線
カットガラス、アトム化学塗料社のアトムバリアンUV
等)、基板の内部(例えば、紫外線吸収剤をもつブチラ
ールフィルム合わせガラス、液状又はペースト状の紫外
線吸収剤を一対の基板間にもたせた合わせガラス等)お
よび基板自身(例えば、セントラル硝子社のグリーンラ
ルSP、五鈴精工硝子社のITY、日本電気硝子社のフ
ァイアライト等)でもよい。通常のソーダライムガラス
は、紫外線を吸収するが、薄くなると紫外線を透過しや
すくなるので、特に約4mm以下の薄板を用いる場合に
は紫外線吸収層5を設けるのが好ましい。しかし、5m
m以上になると350nm以下の紫外線吸収も強まり有
利である。
【0030】図6はさらに他の実施例の模式断面図であ
り、ホットボックスの原理を利用して太陽熱を気体層に
溜め、昇温効果と同時に従来の複層ガラスの断熱効果を
も与えるようにした複合複層積層体であり、積層体に加
え、6は追加基板、7は気体層、8は気体層の封止であ
る。この構造は、従来の複層ガラスの片側の基板を本発
明の積層体にしたものに相当する。なお、追加基板6と
して網入りガラスを用い、このガラス面を室内側にして
使用すると省エネルギー、破損等の安全面から好まし
い。温度が上がりすぎるとガラスが破損するおそれがあ
るからである。特に、図5の紫外線吸収層と組合せると
天窓、アトリュウム等に非常に効果的である。
【0031】図7はさらに他の実施例の模式断面図であ
り、これは、さらに本発明の積層体の利用範囲を広げる
ために熱素子を設けて、電子カーテンとして人工的に熱
制御して視線を遮るためのものであり、積層体に熱素子
層9が設けられている。熱素子層9は、基板の外部に設
けられてもよく、積層体中にサンドイッチされた状態で
設けられてもよい。熱素子としては、透明導電膜、カー
ボンペースト、金属ペースト、金属線、チタン酸バリウ
ム系セラミックス等があり、さらに加熱、冷却できる熱
電素子(例えば、小松エレクトロニクス社のサーモパネ
ル等)等も利用することもできる。熱素子の設定は、基
板の全面にも、あるいはその一部も行なうことができ
る。また、ストライプ状に分割して均一に加温できるよ
うにしてもよく、さらに画像化した熱素子により、また
は赤外線(例えば、レーザー等)で基板面を選択的に照
射することにより、画像情報を表示してもよい。特に図
示していないが、封止部は加温されないように熱電素子
を持たないか、金属導体で低抵抗化すると好ましい。ま
た、封止内周部をマスクしておくと加温され難いために
積層体の外周部に発生しやすい透明部分を遮光できるの
で好ましい。当然、センサー、制御回路と組み合わせる
ことにより自動制御することができる。また、図6の複
合複層積層体の気体層に冷熱媒体(例えば、乾燥空気、
不凍水等)を循環させて積層体の温度を制御してもよ
い。特に自動車の廃熱を利用して遮光すれば、居住性だ
けでなく夏期の冷房において省エネルギーの面からも効
果的である。冬季は、空気層にすれば複層ガラスとなり
窓部からの冷え込みを防止できる。また、天井部の全体
に本発明の積層体を窓ガラスとして使用することによ
り、開放感と居住性を同時に満たした新しい概念の自動
車の実現を可能にする。
【0032】本発明に係わる窓としては、通常の建築物
の窓、自動車、鉄道車両等の車両、船舶、航空機、エレ
ベーター等の輸送機の窓等がある。この窓は広い意味で
あり、アーケイドやアトリュウムのガラス天井、窓の付
いたドア、間仕切り等をはじめ、全面が透明なガラスド
ア、衝立、壁のようなものも含まれる。当然、広く利用
される方法として、自律応答積層体と建材サッシまたは
車両用フレームとを組合せて、建築物、車両等の用途ご
との枠をもつ自律応答積層体にして、現場では従来と同
様に取り付けるだけにした窓ユニットも本発明に含まれ
る。このユニット化は、自律応答積層体の封止をより確
実にでき、透過による水の蒸発防止、光による封止劣化
の防止等に有効であり、特に通常の建築物の窓、車両の
窓等のように半永久的な使用や苛酷な使用には有効であ
る。
【0033】さらに、この等方性水溶液を中空棒状体、
球体、マイクロカプセル、樹脂シート等に内包した物を
塗布し、積層、並列化、マトリックス化等により板状に
して利用する方法も、一部が透明で水溶液を直視可能で
あれば、本発明の積層体に含まれるものとする。
【0034】本発明に係わる積層体は、前述した組成の
等方性水溶液を基板間に積層する溶液法や、基板に多糖
類誘導体からなる個体の塗布膜、単体フィルム、細棒、
小球等を設けてから水性媒体と基板間で接触溶解させて
前述した組成の等方性水溶液とする個体法により製造す
ることができる。その際、加圧積層時に流動むらがおき
ても、数日放置すれば自己拡散により均一化するので、
特に問題は生じない。
【0035】溶液法では、等方性水溶液が比較的高粘度
であるために、気泡混入に対する対処を行なうのがよ
い。通常の攪拌溶解により混入した気泡は、減圧下で斜
面を流すことにより脱泡してもよい。さらに有効な方法
としては、加温をして低濃度の水溶性高分子水溶液を速
やかに凝集沈降させて、容器の底部に沈澱している高濃
度凝集体をスネイクポンプ等で取り出すことで無気泡の
高濃度水溶液を定量的に連続して得る方法がある。この
等方性水溶液を基板間に置き、加圧積層後、外周を封止
すればよい。この溶液法は、図1の積層体の製造のみな
らず、図2および図3の積層体や曲面ガラス等の積層体
の製造にも適している。また、目的組成の等方性水溶液
を基板にアプリケーター等のコーターで全面に薄く塗布
し、放置して脱泡後に対向基板を積層してもよい。この
放置による脱法は、薄膜状態であるのため短時間で行な
うことができる。また、必要に応じて飽和蒸気下で放置
するのもよい。積層は、気泡混入に注意して辺部または
たわみを利用して中心部から接触させて面を合わせれば
よ。さらに気泡混入の防止のため、例えば、1Torr
程度に減圧した状態で対向基板を積層してもよい。さら
に、減圧による塗布層の発泡を防ぐために溶媒である純
水溜を減圧装置内に設けて優先して溶媒を発泡蒸発させ
る工夫は、減圧程度の精密制御を必要とせずに塗布膜表
面の乾燥と気泡混入の防止に効果がある。
【0036】個体法は、基板間で両親媒性多糖類誘導体
−イオン性高分子量有機物質からなる個体に水を拡散さ
せて均一な目的組成の等方性水溶液にする方法であり、
前記したように種々の形態の個体を利用でき、特に限定
されるものではないが、簡便な塗布膜法が非常に有効で
ある。この塗布膜法は、両親媒性多糖類誘導体−イオン
性高分子量有機物質を通常の方法で基板に塗布し、乾燥
後、一定の間隔を設けて対向基板を積層する方法であ
る。この場合、この対向基板を水性媒体を介して積層し
てから封止する同時積層法と、基板を外周封止してから
隙間に注入孔から水を注入し、封孔する注入積層法があ
る。後者の方法は、封止形成の温度を100℃以上とす
ることができるので、封止剤を広く選択でき、容易に良
好な封止が得られる。特に、ガラスとも接着するハンダ
(例えば、旭硝子社のセラソルザ等)の使用に適してい
る。また、重要なことは、個体法全体にいえることであ
るが、脱気処理した水を使用しない場合、水の拡散溶解
とともに全面に無数の微小気泡が発生することである。
この問題の原因を検討した結果、両親媒性多糖類誘導体
−イオン性高分子量有機物質の溶解により水に溶存して
いた空気が遊離することによることがわかった。しか
し、この問題は、60℃以上、好ましくは70℃以上に
加温して溶存空気を除去した水や減圧脱気した水性媒体
等を使用することで解決できることが見出された。ま
た、この個体法によれば、両親媒性多糖類誘導体膜−イ
オン性高分子量有機物質の塗布膜をストライプ状等の形
で周期的に付与または除去し、その凹部に脱気した水
(例えば、80℃の純水等)を満たして積層し、余分の
水性媒体をストライプ溝から排出させてから拡散溶解さ
せることにより、スペーサーなしで目的組成の水溶液を
積層することができる。同様に、フィルムにストライプ
溝、波打ち、打ち抜き等の加工をして使用してもよい。
なお、加温した水は、脱気されている利点を有するだけ
でなく、高温時は拡散溶解しにくく、積層時に余分の水
性媒体を確実に排出できるという利点を有するので、目
的濃度の等方性水溶液の調製に有用である。なお、この
溶媒である水に低分子の種々の添加剤を含ませてもよ
い。
【0037】
【作用】イオン性高分子量有機物質は、温度の上昇によ
り水に溶解している両親媒性多糖類誘導体が凝集して白
濁散乱をおこし光透過率が小さくなる等方性水溶液が、
白濁凝集したときに相分離をおすことを防止する働きを
する。イオン性高分子量有機物質の作用原理は、両親媒
性多糖類誘導体が白濁凝集するときに、分子レベルでこ
の凝集体の内部に取り込まれるとともに水分子を取り込
み、水分子をイオン水和水としてしまうために相分離が
おきずまた可逆的に安定してこの相転位を繰り返せるも
のと思える。その結果、この等方性水溶液を積層した積
層体を窓に応用すると、太陽の直射光エネルギーにより
窓が加温されその照射された部分が選択的に透明状態か
ら白濁状態に変化して、直射光線が遮光される。この直
射光線の有無により、窓が透明ー不透明を可逆的に自律
応答する窓を提供できる。
【0038】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに説明す
る。なお、これらの実施例においては両親媒性多糖類誘
導体として最適と思われるヒドロキシプロピルセルロー
スをもちいているけれども、本発明はこれらの実施例に
より何ら限定されるものではない。
【0039】実施例1 ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシルプロピル
基:62.4%、2%水溶液粘度:8.5cps/20
℃、重量平均分子量:約60,000)100重量部、
純水200重量部およびカルボキシメチルセルロースナ
トリウム(ダイセル化学工業社のCMCダイセル122
0、エーテル化度:0.9、粘度:15cps/1%、
25℃)0.4重量部(A)と2重量部(B)からな
る、20℃で無色透明な(A)、(B)2種類の等方性
水溶液を調整した。さらに、(B)の濃度を高めて純水
を160重量部にした(C)を調整した。次に、6cm
角、厚み3mmのソーダライムガラス間にこの等方性水
溶液を0.2mm厚で設け、封止して積層体とした。こ
の積層体は、室温と60℃での可逆繰り返しテストおよ
び60℃で6時間の放置安定テストのいずれにおいて
も、相分離を生じることなく、良好であった。また、恒
温槽内で2mmピッチの白黒ストライプ模様の板から1
5mmはなして積層体を置き、上からライトを照射して
目視観察した。その白濁変化は、(A)は41℃から白
濁を開始して56℃で強く白濁遮光し、全く透視できな
い状態となった。(B)は35℃から白濁を開始して4
5℃で強く白濁遮光し、全く透視できない状態となっ
た。(C)は、10℃でも淡白濁の半透明状態にあり4
1℃で強く白濁遮光し、全く透視できない状態となっ
た。なお、100℃で3時間煮沸した後も安定的に均一
な可逆変化を示した。また、両積層体を−20℃で氷結
させてから室温放置して氷解過程を観察したところ、む
らをみることなく初期状態の均一な無色透明状態に自然
にもどった。
【0040】実施例2 実施例1のヒドロキシプロピルセルロース100重量部
に対し、純水/ポリビニルアルコールの片末端のみにス
ルホン酸基のナトリウム塩を付加したポリマーである、
日本合成化学社のゴーセランL−3266(4%水溶液
20℃:2.4cps、ケン化度:88モル%、重量平
均分子量:約20,000)が160重量部/2重量部
からなる水溶液(A)、純水/ゴーセランL−3266
が250重量部/15重量部からなる水溶液(B)から
なる2種類の等方性水溶液を調整した。その後、実施例
1と同様に積層体を作成して評価した。共に相分離なく
均一な可逆性を維持した。また、(A)は41℃から白
濁を開始し、52℃で強く白濁遮光して全く透視できな
くなった。(B)は37℃から白濁を開始し、48℃で
強く白濁遮光して全く透視できなくなった。また、氷結
からのもどりも特に問題がなかった。
【0041】実施例3 ポリビニル系の代表的なイオン性高分子であるポリアク
リル酸ナトリウム(重量平均分子量約9,000,00
0)をテストした。実施例1のヒドロキシプロピルセル
ロース100重量部に対し、純水/ポリアクリル酸ナト
リウム(2,000重量部/10重量部)からなる水溶
液(A)、純水/ポリアクリル酸ナトリウム(5,00
0重量部/10重量部)からなる水溶液(B)、純水/
ポリアクリル酸ナトリウム(10,000重量部/10
重量部)からなる水溶液(C)、純水/ポリアクリル酸
ナトリウム(1,000重量部/1重量部)からなる水
溶液(D)、純水/ポリアクリル酸ナトリウム(160
重量部/2重量部)からなる水溶液(E)からなる4種
類の等方性水溶液を調整した。その後、実施例1と同様
に積層体を作成して評価した。相分離なく均一な可逆性
を維持した。(A)は42℃から白濁を開始し、55℃
で強く白濁遮光して全く透視できなくなった。(B)は
46℃から白濁を開始し、60℃で強く白濁遮光してほ
ぼ透視できなくなった。(C)は46℃から白濁を開始
し、60℃以上でも十分な均一状態を保持しつつ半白濁
の半透明状態であった。これはヒドロキシプロピルセル
ロースの濃度が薄いためにと思われる。(D)は47℃
から白濁を開始し、52℃で強く白濁遮光して全く透視
できなくなった。しかし、遮光性は少しよわくすりガラ
ス状になった。(E)は32℃から白濁を開始し、51
℃で強く白濁遮光して全く透視できなくなった。また、
氷結からのもどりも特に問題がなかった。
【0042】実施例4 さらに、ポリアクリル酸系をテストした。実施例1のヒ
ドロキシプロピルセルロース100重量部に対し、純水
/重量平均分子量約5,000のポリアクリル酸ナトリ
ウム(160重量部/0.05重量部)からなる水溶液
(A)、純水/重量平均分子量約5,700のポリメタ
クリル酸ナトリウム(160重量部/0.05重量部)
からなる水溶液(B)からなる2種類の等方性水溶液を
調整した。その後、実施例1と同様に積層体を作成して
評価した。相分離なく均一な可逆性を維持した。(A)
は34℃から白濁を開始し、45℃で強く白濁遮光して
全く透視できなくなった。(B)は35℃から白濁を開
始し、47℃で強く白濁遮光して全く透視できなくなっ
た。また、氷結からのもどりも特に問題がなかった。
【0043】実施例5 さらに、ポリアクリル酸ナトリウムとポリアクリルアマ
イドのコポリマー(アロンフロック社のアロンフロッ
ク)をテストした。実施例1のヒドロキシプロピルセル
ロース100重量部に対し、純水/ポリアクリル酸ナト
リウムとポリアクリルアマイドのコポリマー(モル%:
70/30、平均重量分子量:約12,000,00
0)が200重量部/0.4重量部からなる水溶液
(A)、純水/ポリアクリル酸ナトリウムとポリアクリ
ルアマイドのコポリマー(モル%:40/60、平均重
量分子量:約13,000,000)が200重量部/
0.4重量部からなる水溶液(B)からなる2種類の等
方性水溶液を調整した。その後、実施例1と同様に積層
体を作成して評価した。相分離なく均一な可逆性を維持
した。(A)は39℃から白濁を開始し、50℃で強く
白濁遮光して全く透視できなくなった。(B)は41℃
から白濁を開始し、52℃で強く白濁遮光して全く透視
できなくなった。また、氷結からのもどりも特に問題が
なかった。
【0044】実施例6 低温シフト剤のテストをした。実施例1のヒドロキシプ
ロピルセルロース100重量部、純水500重量部、実
施例1のカルボキシメチルセルロースナトリウム10重
量部からなる水溶液(A)、さらに(A)にsec−ブ
チルアルコール20重量部を添加した(B)、(A)に
フェノキシエタノール5重量部を添加した(C)からな
る3種類の等方性水溶液を調整した。その後、実施例1
と同様に積層体を作成して評価した。相分離なく均一な
可逆性を維持した。(A)は39℃から白濁を開始し、
44℃で強く白濁遮光して全く透視できなくなった。
(B)は35℃から白濁を開始し、40℃で強く白濁遮
光して全く透視できなくなった。(C)は32℃から白
濁を開始し、37℃で強く白濁遮光して全く透視できな
くなった。また、氷結からのもどりも特に問題がなかっ
た。
【0045】実施例7 ヒドロキシプロピルセルロースの分子量依存性をみるた
めにテストした。ヒドロキシプロピルセルロース(ヒド
ロキシルプロピル基:61.6%、2%水溶液粘度:
2.5cps/20℃、平均重量分子量:約2000
0)/水/実施例1のCMCダイセル1220が100
重量部/200重量部/2重量部からなる水溶液
(A)、ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシル
プロピル基:62.6%、2%水溶液粘度:5.4cp
s/20℃、平均重量分子量:約40000)/水/実
施例1のCMCダイセル1220が100重量部/20
0重量部/2重量部からなる水溶液(B)、ヒドロキシ
プロピルセルロース(ヒドロキシルプロピル基:62.
6%、2%水溶液粘度:300cps/20℃、平均重
量分子量:約150,000)/水/実施例3のポリア
クリル酸ナトリウムが100重量部/200重量部/2
重量部からなる水溶液(C)、ヒドロキシプロピルセル
ロース(ヒドロキシルプロピル基:62.6%、2%水
溶液粘度:2,000cps/20℃、平均重量分子
量:約300,00040000)/水/実施例3のポ
リアクリル酸ナトリウムが100重量部/200重量部
/2重量部からなる水溶液(D)からなる4種類の等方
性水溶液を調整した。その後、実施例1と同様に積層体
を作成して評価した。相分離なく均一な可逆性を維持し
た。(A)は39℃から白濁を開始し、55℃で強く白
濁遮光して全く透視できなくなった。(B)は36℃か
ら白濁を開始し、51℃で強く白濁遮光して全く透視で
きなくなった。(C)は46℃から白濁を開始し、実施
例3の(B)と同様に60℃で強く白濁遮光してほぼ透
視できなくなった。(D)は45℃から白濁を開始し、
実施例3の(B)と同様に60℃で強く白濁遮光してほ
ぼ透視できなくなった。イオン性の高分子効果により従
来の添加剤と異なり広範囲の濃度、分子量を選択できる
ことが分かった。
【0046】実施例8 比較例として、実施例1においてイオン性高分子量有機
物質であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを含
まない等方性水溶液を調整した。つぎに実施例1と同様
に積層体を作成し、安定性および白濁変化を評価した。
その結果、水が相分離して全面にむらの発生を起し可逆
変化をとれまかった。立てかけて置くと沈降分離も生じ
た。このように、可逆的安定性のためにイオン性高分子
量有機物質の存在が非常に重要であることが分かる。
【0047】実施例9 気泡のない実施例1の水溶液(A)を、30cm角で、
厚み3mmのソーダライムガラス基板にアプリケーター
で1mm厚に均一塗布した。その基板を約1Torrに
減圧した状態で同サイズの対向基板を面接触させてか
ら、ゴムシート加圧法で対向基板を大気圧で均等加圧し
ていき全面密着させてから常圧にもどし、外周部を洗浄
した。次に、封止剤(主剤:東レチオコール社のフレッ
プ60を100重量部、硬化剤:大都産業社のダイトク
ラールX−2392を28重量部)を塗布した25mm
幅のアルミテープを積層体の外周部に巻き付けた後、室
温硬化させて封止した。その結果、確実に無気泡の状態
に積層することができた。なお、この減圧の槽内に水を
置くことにより乾燥防止の効果を確認した。
【0048】実施例10 実施例1の水溶液(A)にさらに純水200重量部を加
えて低粘度の水溶液とした。この水溶液を、表面をシリ
カコートしてナトリウム分の溶出を押さえた、30cm
角で、厚み6mmのソーダライムガラス基板にアプリケ
ーターにより塗布後、0.3mm径の樹脂ビーズを散布
してから乾燥させ、0.1mm厚の個体膜としてをコー
トした。窒素置換した、80℃の純水にコート基板を浸
し、さらに対向基板として同じガラス基板を積層加圧し
た状態で純水を引落とした後、室温に放置して積層し
た。この積層体の外周を粘着剤つきの銅テープで仮封止
してから十分に外周部を洗浄した。その後、実施例9で
用いたのと同じ封止剤を付与したコ型のアルミ枠を外周
に固定して封止をした。その後、放置してヘイズのない
無色透明な無気泡積層体をえた。
【0049】
【発明の効果】本発明の効果は、イオン性高分子量有機
物質を添加することにより、温度の上昇により水に溶解
している両親媒性多糖類誘導体が凝集して白濁散乱をお
こす等方性水溶液を白濁状態でも安定的に均一に持続で
き、さらに白濁状態と透明状態とを安定的に可逆変化で
きることにある。その結果、本発明に用いる等方性水溶
液を積層すると環境変化に応答する自律応答積層体を得
る。この自律応答積層体を窓に応用すると、太陽の直射
光線で窓が加温されるとその照射された部分が選択的に
透明状態から白濁状態に変化して、直射光線が遮光され
る。この直射光線の有無、強弱、さらに夏期、冬季等の
その時の環境温度とのバランスにより選択的にかつ透明
−半透明−不透明を連続的に自動変化するものになる。
これは、太陽の直射光のエネルギー自身によりその直射
光線を遮光してしまう自律応答型の新規な遮光ガラス窓
を省エネルギー効果をも持って提供できる。このよう
に、自律応答積層体とサッシ、フレーム等の枠からなる
窓ユニットを組み込んだ建築物、車両等は、省エネルギ
ー効果をもちながらより快適な居住空間となる。なお、
人工的な熱素子により積層体の温度を制御してより高度
な利用もできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明である自律応答積層体の実施例の模式断
面図である。
【図2】等方性水溶液の層厚を連続的に変えた自律応答
積層体の実施例の模式断面図である。
【図3】等方性水溶液の層厚を変えた自律応答積層体の
実施例の模式断面図である。
【図4】組成の異なる等方性水溶液を同時に入れた自律
応答積層体の実施例の模式断面図である。
【図5】紫外線吸収層をもつ自律応答積層体の実施例の
模式断面図である。
【図6】気体層をもつ複合複層構造の自律応答積層体の
実施例の模式断面図である。
【図7】熱素子層をもつ自律応答積層体の実施例の模式
断面図である。
【図8】自律応答積層体の350nmから1,500n
m域の温度−スペクトル変化である。
【符号の説明】
1 基板 2 等方性水溶液 3 封止剤 4 枠 5 紫外線吸収層 6 追加基板 7 気体層 8 気体層の封止剤 9 熱素子層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年9月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】自律応答積層体、その製法およびそれを
使用した窓
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項16
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項17
【補正方法】変更
【補正内容】

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水に溶解している非イオン性の両親媒性
    官能基を付加した多糖類誘導体が温度の上昇により凝集
    して白濁散乱を起こし、光透過率が小さくなる等方性水
    溶液を、少なくとも一部が透明であり、前記水溶液を直
    視可能な基板で積層した自律応答積層体において、前記
    等方性水溶液が、重量平均分子量約10,000〜約5
    00,000の多糖類誘導体100重量部を前記多糖類
    誘導体100重量部に対して約110〜約5,000重
    量部となる量の水と前記水100重量部に対し約0.0
    5重量部ないし約10重量部とからなる重量平均分子量
    約3,000以上のイオン性高分子量有機物質からなる
    溶液である自律応答積層体。
  2. 【請求項2】 多糖類誘導体がセルロース誘導体である
    請求項1記載の積層体。
  3. 【請求項3】 多糖類誘導体が少なくともヒドロキシプ
    ロピル基をもつ請求項1または2記載の積層体。
  4. 【請求項4】 等方性水溶液がさらに温度シフト剤を含
    有する請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 【請求項5】 等方性水溶液に溶存している空気が不活
    性ガスで置換されている請求項1〜4のいずれかに記載
    の積層体。
  6. 【請求項6】 等方性水溶液の層の厚さが少なくとも部
    分的に異なる請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
  7. 【請求項7】 2種類以上の等方性水溶液または等方性
    水溶液と通常の水溶性高分子溶液とが積層されている請
    求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
  8. 【請求項8】 積層体を少なくとも部分的に加熱するこ
    とができる熱素子が設けられている請求項1〜7のいず
    れかに記載の積層体。
  9. 【請求項9】 積層体の外周に枠を設けられている請求
    項1〜8のいずれかに記載の積層体。
  10. 【請求項10】 非イオン性の両親媒性官能基を付加し
    た重量平均分子量約10,000〜約500,000の
    多糖類誘導体100重量部を前記多糖類誘導体100重
    量部に対して約110〜約5,000重量部となる量の
    水と前記水100重量部に対し0.05〜10重量部と
    からなる重量平均分子量3,000以上のイオン性高分
    子量有機物質からなる等方性水溶液を、少なくとも一部
    が透明であり、前記水溶液を直視することが可能な基板
    間に封止することを含む自律応答積層体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記等方性水溶液を前記積層体を構成
    する基板に塗布し、次いで対向基板を積層し、封止する
    請求項10記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記多糖類誘導体−前記イオン性高分
    子量有機物質と前記水とを、前記積層体を構成する積層
    基板間で拡散させ、溶解させて前記等方性水溶液層を形
    成する請求項10記載の方法。
  13. 【請求項13】 水に溶解している非イオン性の両親媒
    性官能基を付加した多糖類誘導体が温度の上昇により凝
    集して白濁散乱を起こし、光透過率が小さくなる等方性
    水溶液を、少なくとも一部が透明であり、前記水溶液を
    直視可能な基板で積層した自律応答積層体を使用した窓
    において、前記等方性水溶液が、重量平均分子量約1
    0,000〜約500,000の多糖類誘導体100重
    量部を前記多糖類誘導体100重量部に対して約110
    〜約5,000重量部となる量の水と前記水100重量
    部に対し約0.05重量部ないし約10重量部とからな
    る重量平均分子量約3,000以上のイオン性高分子量
    有機物質からなる溶液である窓。
  14. 【請求項14】 多糖類誘導体がセルロース誘導体であ
    る請求項13記載の積層体。
  15. 【請求項15】 多糖類誘導体が少なくともヒドロキシ
    プロピル基をもつ請求項13または14記載の積層体。
  16. 【請求項16】 等方性水溶液がさらに温度シフト剤を
    含有する請求項13〜15のいずれかに記載の積層体。
  17. 【請求項17】 等方性水溶液に溶存している空気が不
    活性ガスで置換されている請求項13〜16のいずれか
    に記載の積層体。
  18. 【請求項18】 等方性水溶液の層の厚さが少なくとも
    部分的に異なる請求項13〜17のいずれかに記載の
    窓。
  19. 【請求項19】 2種類以上の等方性水溶液または等方
    性水溶液と通常の水溶性高分子溶液とが積層されている
    請求項13〜18のいずれかに記載の窓。
  20. 【請求項20】 積層体を少なくとも部分的に加熱する
    ことができる熱素子が設けられている請求項13〜19
    のいずれかに記載の窓。
  21. 【請求項21】 積層体の外周に枠を設けられている請
    求項13〜20のいずれかに記載の窓。
  22. 【請求項22】 少なくとも一方の基板が紫外線吸収ガ
    ラスからなり、この紫外線吸収ガラスが室外側に向けら
    れている請求項13〜21のいずれかに記載の窓。
  23. 【請求項23】 少なくとも一方の基板が熱線吸収ガラ
    スからなる請求項13〜22のいずれかに記載の窓。
  24. 【請求項24】 自律応答積層体上にさらに気体層を設
    けられている請求項13〜23のいずれかに記載の窓。
  25. 【請求項25】 気体層に冷媒体または熱媒体が循環さ
    れて自律応答積層体の温度が制御される請求項24の
    窓。
  26. 【請求項26】 自律応答積層体と建材サッシまたは車
    両用フレームとが組合わされ、ユニットに構成されてい
    る請求項13〜25のいずれかに記載の窓。
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