JPH08508993A - ビスマスジチオカルバメート類および潤滑剤用の添加剤としてのそれらの使用 - Google Patents

ビスマスジチオカルバメート類および潤滑剤用の添加剤としてのそれらの使用

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JPH08508993A JP6522929A JP52292994A JPH08508993A JP H08508993 A JPH08508993 A JP H08508993A JP 6522929 A JP6522929 A JP 6522929A JP 52292994 A JP52292994 A JP 52292994A JP H08508993 A JPH08508993 A JP H08508993A
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Abstract

(57)【要約】 ある種のビスマストリス−(ジ−有機置換されたジチオカルバメート)塩は、油およびグリース中の極高圧(EP)添加剤として有用である。ビスマス化合物は、先に、潤滑剤中のEP添加剤として示唆されるかまたは使用されている、対応する類縁体アンチモン化合物と同等かまたはそれより良好なEP性を有する。ある種のビスマス化合物、特に、置換がC6アルキル以上か分岐アルキル基を含むビスマス化合物は、新規な化合物である。

Description

【発明の詳細な説明】 ビスマスジチオカルバメート類および 潤滑剤用の添加剤としてのそれらの使用 本発明は、有機ビスマス化合物ならびに油およびグリース中の極高圧潤滑剤添 加剤としてのそれらの使用に関する。 高圧および高摩擦速度が存在するあるタイプの歯車、および、特に、重負荷軸 受けの場合、歯車または軸受け表面間に潤滑剤の薄膜を維持することは困難であ る。この薄膜が破断する時、合わせ金属表面は、非常に摩耗を受けやすくなる。 これは、合わせ金属表面が互いに溶着する恐れのある軸受けにおいて、顕著であ る。溶着部が表面の相対的運動の下で剪断される時、さらに歯車および軸受けの 金属表面を損傷し、性能を著しく損なう金属粒子は、取り除かれる。 このような問題点を解消するために、潤滑剤油およびグリース用の極高圧(一 般に、EPと称される)添加剤として、特定の化合物が開発されている。かくし て、米国特許3139405は、EP添加剤として、ジアルキルジチオカルバミン酸の アンチモン塩、特に、アンチモンジペンチル−およびジヘキシル−ジチオカルバ メートの使用を開示している。この特許は、これら2つの化合物が潤滑剤に“驚 く程に高い負荷軸受け能”を付与することを記載し、これは、アンチモン化合物 とともに試験したジアルキルジチオカルバミン酸の種々の他の金属塩が潤滑剤に 中程度もしくは低い負荷軸受け能を付与するか、または、例えば、不溶性である ことにより有効でないので、驚くべきことであり、予想しえなかったと記載して いる。これら他の化合物としては、2つの短い直鎖アルキル、ジブチルおよびジ アミル(ジ−n−ペンチル)ビスマストリス−ジアルキルジチオカルバメートが 挙げられる。米国特許3139405に記載されているアンチモン化合物は、EP添加 剤として使用して、長年にわたって成功を納めており、例えば、商標名バンルー ブ73(Vanlube73)の下で市販されている。しかし、アンチモンジアルキルジ チオカルバメート類は、いずれも理想的ではなく、あるものは、低い溶解度およ び/または典型的な潤滑剤システム中での乏しい安定性を示し、さらに、アンチ モン塩は、有毒であり、健康および環境上の問題を生ずる。 さて、米国特許3139405の教示とは対照的に、我々は、ジアルキルジチオカル バミン酸のある種のビスマス塩が潤滑剤、例えば、油およびグリース用のEP添 加剤として有効であることを見いだした。これらビスマス化合物のあるものは、 それらのアンチモン類縁体と比較して、EP添加剤としての優れた結果および/ またはより良好な相溶性および/または潤滑剤中での安定性を与える。 したがって、本発明は、式(I): [R1・R2−N−C(S)−S−]3Bi (I) [式中、各R1およびR2は、独立に、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによ って置換されたシクロヘキシルであるか;または、 R1およびR2は、それらが結合する窒素原子とともに、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたヘテロ環を形成する。 ただし、R1およびR2は、ともに、エチル、n−ブチルまたはn−ペンチルで あることはない。] で表される化合物を提供する。 好ましくは、R1は、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12アルキルによって 置換されたC7〜12アラルキル、または、要すれば、C1-12アルキルによって置 換されたシクロヘキシルであり;R2は、C6〜12アルキル、要すれば、C1〜12 アルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルに よって置換されたシクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチルまた は分岐ペンチルである。 R1またはR2が、アルキルを表すかまたはアルキルを含む時、アルキル基は、 直鎖であっても、分岐であってもよい。アルキルの例は、メチル、エチル、イソ プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル 、ドデシル、1−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルヘキシルおよ び1−メチルヘキシルである。 R1またはR2がアラルキルである時、それは、好ましくは、要すれば、フェニ ル環においてC1-12アルキルによって置換された、ベンジルまたはフェニルエチ ルである。フェニル環は、1個を越えるアルキル基を含有してもよいが、好まし くは、4位に存在する1個のアルキル基を有するのが好ましい。アルキル置換ア ラルキル基の例は、4−メチルベンジルである。 R1またはR2がアルキル置換シクロヘキシルである時、シクロヘキシル環は、 1個を越えるアルキル置換基を含有してもよい。しかし、アルキル基によって置 換されている時、それは、好ましくは、4位に存在する1個のアルキル置換基が 好ましい。このような置換されたシクロヘキシル基の例は、4−メチルシクロヘ キシル、4−プロピルシクロヘキシル、4−ブチルシクロヘキシル、4−イソプ ロピルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシルおよび4−ノニルシクロ ヘキシルである。 R1およびR2が、それらが結合する窒素原子とともに、ヘテロ環を形成する時 、環は、好ましくは、モルホリノ、ピペラジノまたはピペリジノにおけるように 、6個の原子を含有する。環がピペラジノである時、両窒素原子は、ジチオカル バミル基を有することができ、それにより、生成するビスマス塩が高分子となる 可能性が存在する。しかし、ピペラジノ環の窒素原子の1つが、C1〜12アルキ ル、特に、C1〜8アルキル、さらに特に、C1〜4アルキルによって置換されてい るのが好ましい。 R1またはR2がアルキル置換されたアラルキルまたはシクロヘキシルであるか 、または、R1およびR2が、それらが結合する窒素原子とともに、N−アルキル ピペラジノ環を形成する時、アルキル基は、好ましくは、C1〜8アルキル、特に 、C1〜4アルキルであり、直鎖であっても、分岐であってもよい。 R1およびR2が、ともに、直鎖または分岐C1〜12アルキルであることが好ま しく、R1およびR2の少なくとも一つが、分岐アルキルであるか、または、分岐 アルキルを含有することが特に好ましい。何故ならば、このような化合物は、R1 およびR2がともに直鎖アルキルである時よりも、油およびグリースに配合およ び溶解することが容易であるからである。一般に、我々は、R1またはR2、およ び、望ましくは、R1およびR2が、ともに、短い直鎖(C1〜5)アルキル基でな い時に良好な結果を得ており、これは、本発明の特別の態様を形成する。R1お よびR2は、特に、同一の炭素鎖長を有する基の混合基であってもよく、例えば 、混合ペンチル基であってもよい。 R1およびR2は、異なっていてもよいが、これらは、それよりジアルキルジチ オカルバミン酸を誘導することが便利である対称第2級アミン類がより利用性が 大きいので、好ましくは、同一であるのがよい。このコンテキストにおいて、’ 対称第2級アミン類’としては、混合アルキル基、特に、第2級(混合ペンチル )アミンにおけるように、同一の鎖長を有する混合アルキル基で製造されるアミ ン類が挙げられる。 ビスマス塩は、単一のジアルキルジチオカルバミン酸より製造することもでき 、このような酸類の混合物より製造することもできる。ビスマス塩がジアルキル ジチオカルバミン酸類の混合物より製造される時、式(I)における3個のジア ルキルジチオカルバミン酸基は、同一ではない。ある種の状況においては、潤滑 剤システム、例えば、油またはグリース中のEP添加剤の相溶性が高まるので、 酸類の混合物を使用するのが有利である。 ジアルキルジチオカルバミン酸類は、当分野で公知の方法によって製造するこ とができる。しかし、ある種のジアルキルジチオカルバミン酸類は不安定である ので、これらは、一般に、より大きい安定性を示す塩として製造される。塩は、 アミンまたはアルカリ金属で形成することができる。一つの好ましい方法におい て、塩は、アミンで形成され、典型的には、式R12NHで表される過剰の第2 級アミンを、適当な有機溶剤中、二硫化炭素と反応させることによって製造され る。使用されるアミンの量は、二硫化炭素の1モル当たり、好ましくは、10モ ル、さらに好ましくは、5モル、および、特に、2モルである。このような方法 れている。好ましい溶剤は、反応体に対して不活性であり、ケトン類、例えば、 アセトンが挙げられる。反応は、容易であり、一般に、温度60℃以下、好まし くは、20℃以下、特に、10℃以下で行われる。もう一つの好ましい方法にお いては、化学量論量のアミンおよび二硫化炭素を互いに反応させ、ついで、ジア ルキルジチオカルバミン酸は、塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物の添加によ って、塩、例えば、アルカリ金属塩に転化される。 本発明のビスマス塩は、好ましくは、適当な有機反応媒体の存在中、適当なジ アルキルジチオカルバミン酸を適当なハロゲン化ビスマス、例えば、ビスマスト リクロライドと反応させることによって製造される。一般に、1モルのハロゲン 化ビスマスが、約3モルのジチオカルバミン酸とともに使用される。有機反応媒 体は、望ましくは、反応混合物よりのビスマス塩の分離を容易にするために、ジ アルキルジチオカルバミン酸に対して溶剤であり、かつ、ビスマス塩に対して非 溶剤(または乏しい溶剤)となるように選択される。しかし、揮発性の有機反応 媒体が使用される場合には、溶剤を蒸発により除去することができるので、ビス マス塩の溶解度の差はあまり重要ではなく、ビスマス塩は、例えば、再結晶によ って、従来どおりに精製される。ビスマストリハライドのジアルキルジチオカル バミン酸との反応に対する適当な溶剤は、脂肪族炭化水素類およびクロロハイド ロカーボン類であり、特に、ケトン類、例えば、アセトンである。反応は、典型 的には、温度120℃以下、好ましくは、100℃以下、特に、60℃以下で行 われる。適当な場合には、反応は、溶剤中で還流して行われる。 本発明のビスマス塩は、典型的には、直鎖アルキル基を含有するジアルキルジ チオカルバミン酸類より誘導される場合、融点100℃以下の淡黄色の固体であ るが、分岐アルキル基を含有するジアルキルジチオカルバミン酸より誘導される 場合には、これらは、油状の液体である。 油およびグリース中の特に良好なEP性は、ビスマストリス−[ビス−(2− エチルヘキシル)ジチオカルバメート]、ビスマストリス−(ジヘキシルジチオ カルバメート)およびビスマストリス−[ジ(分岐ペンチル)ジチオカルバメー ト]で得られている。 上記したように、本発明のビスマス塩は、潤滑剤油およびグリース中のEP添 加剤として有効な性質を示す。あるものは、また、有効な抗酸化性およびアンチ モン類縁体、特に、光に対する優れた安定性をも示す。 かくして、さらなる態様において、本発明は、式Iで表されるビスマス塩およ び潤滑剤を含む組成物を提供する。潤滑剤は、好ましくは、油またはグリースで ある。 さらなる態様において、本発明は、グリースと、式(Ia): [R1・R2−N−C(S)−S−]3Bi (Ia) [式中、各R1およびR2は、独立に、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによ って 置換されたシクロヘキシルであるか;または、 R1およびR2は、それらが結合する窒素原子とともに、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたヘテロ環を形成する。] で表される化合物とを含む組成物を提供する。 なおさらなる態様において、本発明は、油と、式(Ib): [R1・R2−N−C(S)−S−]3Bi (Ib) [式中、各R1およびR2は、独立に、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによ って置換されたシクロヘキシルであるか;または、 R1およびR2は、それらが結合する窒素原子とともに、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたヘテロ環を形成する。] で表される化合物とを含むが、ただし、R1およびR2が、ともに、n−ペンチル であるかn−ブチルである時、油が、210°Fにおける87秒のセイボルト粘 度(100℃における約17cStに等価)および100°Fにおける1030セ イボルト粘度(40℃における約190cStに等価)の粘度を有するSAE90 高粘度指数鉱油ではない、組成物を提供する。 油の好ましい類は、40℃における粘度約200cSt以上、さらに好ましくは 、300cSt以上、および、特に、40℃における粘度400cSt以上を有する、 歯車またはエンジン油である。このような油は、好ましくは、40℃における粘 度1,500cSt以下、および、特に、40℃における粘度1,000cSt以下を 有する。 油のもう一つの好ましい類は、40℃における粘度180cSt以下、さらに好 ましくは、150cSt以下、および、特に、100cSt以下を有する、軽質の歯車 またはエンジン油である。このような油は、好ましくは、40℃での粘度10cS t以上、特に、20cSt以上を有する。 ビスマス塩は、典型的には、潤滑剤の総重量基準で、濃度少なくとも0.01 重量%、好ましくは、少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは、少なくとも 0.5重量%、および、特に、少なくとも2重量%で使用される。ビスマス塩は 、潤滑剤の総重量基準で、濃度10重量%以下、好ましくは、8重量%以下、さ ら に好ましくは、6重量%以下、特に、5重量%以下で存在する。 油という用語は、潤滑剤についての標準テキスト、例えば、Schewe-Kodakによ る“Schmiermittel-Taschenbuch”(Huething Verlang,Heidelburg,1974)お よびD Klamannによる“Schmierstoffe and Verwandte Produkte”(Verlage Che mie,Weinheim,1982)中に記載されている油、および、また、米国特許3139405 に記載されている油が挙げられる。 油は、好ましくは、鉱油もしくは合成油またはこのような油の混合物である。 合成油の例としては、ポリアルキレングリコール類;ポリ(α−オレフィン類) 、エステル類、特に、フタレート類;パーフルオロアルキルエーテル類およびシ リコーン類が挙げられる。 好ましい潤滑剤は、工業用油、特に、歯車および油圧油である。 油は、一般に、流体潤滑剤に配合される他の添加剤、例えば、金属受動剤、粘 度指数改良剤、流動点降下剤、分散剤、洗剤、および、摩耗、極高圧、腐蝕、錆 びおよび酸化に対して保護を与える他の添加剤を含有してもよい。 グリースは、好ましくは、ゲル化剤の添加によって増粘された上記したような 鉱油または合成油である。ゲル化剤は、好ましくは、油に微細に分散した形態で 配合される、石鹸、例えば、リチウム石鹸、リチウム錯体石鹸、非石鹸ゲル化剤 、例えば、粘土、カーボンブラック、シリカまたはポリウレアである。粘土は、 好ましくは、油中での分散を助けるための有機物質、例えば、第4級アンモニウ ム化合物で表面塗装される。グリースがシリコーン油を基体とする場合、非石鹸 ゲル化剤は、好ましくは、シリカであり、特に、平均粒子径1μm以下を有する 溶融シリカである。 ビスマス塩により保護される金属としては、鉄および銅、特に、合金、例えば 、スチールおよび黄銅が挙げられる。上記開示したように、式(I)、(Ia) および(Ib)で表されるビスマス塩は、金属が摩擦接触したり、歯車または軸 受けの一部を形成する箇所で、潤滑剤のEP添加剤として特に有効であることが 見いだされた。 したがって、さらなる態様において、本発明は、潤滑剤、特に、油またはグリ ース用のEP添加剤としての式(I)、(Ia)および(Ib)の1つで表され る化合物の使用を提供する。 またさらなる態様において、本発明は、式(I)、(Ia)および(Ib)の 1つでで表される1つのビスマス塩、または、式(I)、(Ia)および(Ib )の1つで表される1つのビスマス塩を含有する潤滑剤組成物で処理される、金 属表面、とりわけ、歯車、および、軸受けを提供する。 本発明は、さらに、1つ以上の表面、特に、合わせ金属表面を潤滑する方法で あって、1つ以上の表面に対する、潤滑剤、特に、潤滑油またはグリース中に、 式(I)、(Ia)および(Ib)の1つで表される1つのビスマス塩を、特に 、潤滑剤の0.1〜10重量%の量含ませることを含む方法を含む。 本発明を、以下の例において、さらに例示するが、例において、全ての部は、 特に断らない限りは、重量部である。物質 BDAC 比較合成例Cで製造されるビスマストリス−(ジ−n−ペンチルジチ オカルバメート)BDAC(混合 )は、合成例3で製造されるビスマストリス−[ジ−(混合ペン チル異性体)ジチオカルバメート]である。BDHC は、合成例1で製造されるビスマストリス−(ジヘキシルジチオカルバ メート)である。BDHC は、ビスマストリス−(ジヘキシルジチオカルバメート)である。BDEHC は、ビスマストリス−[ジ−2−(エチルヘキシル)ジチオカルバメ ート]である。ADHC は、比較合成例Aで製造されるアンチモントリス−(ジヘキシルジチオ カルバメート)である。ADAC は、比較合成例Bで製造されるアンチモントリス−(ジペンチルジチオ カルバメート)である。ADAC(混合) は、比較合成例Dで製造されるアンチモントリス−[ジ−(混 合ペンチル異性体)ジチオカルバメート]である。バンルーブ73(Vanlube 73) は、Vanderbilt Company,New York USAより市販 されているアンチモントリス−(ジアルキルジチオカルバメート)EP添加剤で あ る。合成例 1 ビスマストリス−(ジヘキシルジチオカルバメート) (a) ジヘキシルジチオカルバミン酸ジヘキシルアミン塩 アセトン(75ml)に溶解させた二硫化炭素(13g;0.17mol)を、撹拌 しつつ、20分間かけて、温度を5℃以下に保ちつつ、ジヘキシルアミン(63 .02g;0.34mol)のアセトン(75ml)溶液に緩やかに加えた。アセトン 溶液(193.8g)をさらに30分間撹拌し、酸を単離することなく、以下に 記載のビスマス塩の製造に直接使用した。 (b) ビスマストリス−(ジヘキシルジチオカルバメート)(BDHC) ジヘキシルジチオカルバミン酸塩のアセトン溶液(96.8g)を無水ビスマ ストリクロライド(7.89g;0.025mol)と撹拌し、ついで、加熱して、 56℃で約30分間還流した。生成物は、黄色固体として分離された。蒸留によ って、大部分のアセトンを除去すると、黄色のスラリーとして、生成物が残った 。水(250ml)を加え、固体を濾去し、水(200ml)で洗浄し、続いて、メ タノール(100ml)で洗浄した。生成物は、最終的には、エタノールより再結 晶した。 収率:20.76g(理論量の74%);mp 79.8-80.4℃ 元素分析:理論値 47.3%C;7.9%H;4.2%N;19.4%S;21.1%Bi 測定値 47.3%C;7.9%H;4.2%N;18.8%S;20.5%Bi比較合成例 A アンチモントリス−(ジヘキシルジチオカルバメート)(ADHC) 合成例1(b)の製造を繰り返したが、ビスマストリクロライドをアンチモン トリクロライド(5.63g;0.025mol)で代替した。アンチモン塩は、淡 黄色の結晶質固体として得られた。 収率:15.84g(理論量の62%);mp 69.6-71.2℃ 元素分析:理論値 51.9%C;8.7%H;4.7%N;21.3%S;13.5%Sb 測定値 52.0%C;8.3%H;4.7%N; 20.4%S;13.5%Sb合成例 2 ビスマストリス−[ジ−(混合ペンチル異性体)ジチオカルバメート](BDA C混合) 合成例1を繰り返したが、合成例1で使用したジヘキシルアミンを約80%の 分岐ペンチル基を含有するジペンチルアミン基体混合ペンチル異性体(53.5 g;0.34mol;Aldrich Chemicals製)で代替した。アセトン中、黄色の溶液 として、ビスマストリス−[ジ−(混合ペンチル異性体)ジチオカルバメート] が得られた。生成物は、アセトンを留去し、メタノール(4×200ml)で洗浄 して、過剰のアミンを除去することによって回収した。メタノールは、上層を形 成するが、これをデカンテーションし、残渣の油状生成物を塩化メチレンに溶解 させた。これを水/メタノール混合物(80:20)(4×40ml)で洗浄した 。ついで、塩化メチレン溶液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、スクリーンし、 塩化メチレンを蒸発させると、標記生成物を黄色の油状液体として与え、これは 、放置すると、緩やかに凝固し、ワックス状の固体を生成した。 収率:12.5g(理論量の55.3%) 元素分析:理論値 43.7%C;7.3%H;4.6%N;21.2%S; 測定値 43.6%C;7.1%H:4.5%N;19.3%S;合成例 3 ビスマストリス−[ジ−(2−エチルヘキシル)ジチオカルバメート](BDE HC) 合成例2を繰り返したが、合成例2で使用した混合異性体ジペンチルアミンを ジ−2−エチルヘキシルアミン(25g;0.34mol)で代替した。アセトンの 黄色溶液として、ビスマストリス(ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバメート )が得られた。生成物は、アセトンを留去することによって回収された。メタノ ール(200ml)を加え、混合物を0℃に冷却した。上方溶液をデカンテーショ ンし、生成物をさらにメタノール(3×100ml)で洗浄した。最後の洗浄でデ カンテーションした溶液をチェックすると、さらなるアミンが存在しないことを 示した。残渣の油状生成物を塩化メチレンに溶解し、水/メタノール混合物(8 0:20)で3回洗浄し(総体積100ml)、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、 濾過し、塩化メチレンを蒸発させると、橙色の油状液体として、標記生成物を与 え た。 収率:20.2g(理論量の70%)比較合成例 B アンチモントリス−(ジ−n−ペンチルジチオカルバメート)(ADAC) 例I(a)に記載したようにして、ジ−n−ペンチルジチオカルバミン酸塩を 製造したが、ジヘキシルアミンをジ−n−ペンチルアミン(53.5g;0.3 4mol;Aldrich Chemicals製)で代替した。 比較例Aに記載した方法によって、アンチモン塩を製造したが、ジヘキシルジ チオカルバミン酸をジ−n−ペンチルジチオカルバミン酸で代替した。淡黄色の 固体として、標記生成物を得た。 収率:13.7g(理論量の67%);mp 70.2-71.0℃ 元素分析:理論値 48.4%C;8.1%H;5.1%N;23.5%S;14.9%Sb 測定値 48.7%C;8.3%H;5.1%N;23.1%S;14.4%Sb比較合成例 C ビスマストリス−(ジ−n−ペンチルジチオカルバメート)(BDAC) 例1(a)および(b)に記載した方法によって標記化合物を製造したが、ジ ヘキシルアミンをジ−n−ペンチルアミン(53.5g;0.34mol;Aldrich Chemicals製)で代替した。黄色の固体として、生成物を得た。 収率:16.2g(理論量の71%);mp 69-70℃ 元素分析:理論値 43.7%C;7.3%H;4.6%N;21.2%S;23.1%Bi 測定値 44.2%C;7.5%H;4.6%N;21.3%S;22.7%Bi比較合成例 D アンチモントリス−[ジ−(混合ペンチル異性体)ジチオカルバメート](AD AC混合) 例3を繰り返したが、比較例Aに記載したように、ビスマストリクロライドを アンチモントリクロライドで代替した。黄色の油状液体として、生成物を単離し た。 収率:12.96g(理論量の63.3%) 元素分析:理論値 48.3%C;8.1%H;5.1%N;23.4%S; 測定値 48.8%C;7.9%H;5.1%N;22.6%S;応用例 1 40℃における粘度ほぼ100cStを有する高度に精製した中性石油基体の油 の試料に、種々のビスマストリス−(ジチオカルバメート類)および対照として のアンチモントリス−(ジチオカルバメート類)を加えて、添加剤濃度0.00 35mol(100g油)-1を与えた。これらの試料を、British Institute of Pe troleum試験IP 239に従い、4つのボール試験(ball test)に付し、溶着が生ず る負荷を測定した。EP添加剤を含有しない対照を含めた。添加剤、濃度および 溶着負荷を以下の表1に記載する。 結果は、ビスマストリス−(ジアルキルジチオカルバメート類)が石油基体の 油中で有効な添加剤であることを示す。応用例 2 種々のアンチモンおよびビスマストリス−(ジチオカルバメート類)を、応用 例1に記載したように、濃度0.0035mol(100g油)-1で、EP添加剤 として評価し、溶着が生ずる負荷を決定した。結果は、ビスマストリス−(ジア ルキルジチオカルバメート類)が石油基体油中で有効なEP添加剤であることを 示す。直鎖ジペンチルアミンより製造されるアンチモントリス−(ジペンチルジ チオカルバメート)(ADAC)およびジペンチルアミンの混合異性体より製造 されるアンチモントリス−(ジペンチルジチオカルバメート)(ADAC混合) が石油基体油中のEP添加剤と極めて同様に挙動することは、特に貴重である。 これらアンチモン塩は、Vanlube 73に対するEP添加剤と極めて同様に挙動する 。意外なことに、ビスマス塩BDAC、BDAC(混合)およびBDHCは、全 て、油中のEP添加剤として、優れた性質を示す。これは、ビスマストリス−( ジペンチルジチオカルバメート)およびビスマストリス−(ジブチルジチオカル バメート)がともにアンチモン類縁体よりも著しく劣ることを示す米国特許3139 405の教示とは対照的である。応用例 3 種々のアンチモンおよびビスマストリス−(ジチオカルバメート類)をリチウ ムヒドロキシステアレート石鹸増粘グリース中のEP添加剤として評価した。基 体のグリースは、総石鹸含量9.4重量%、リチウム0.22%およびグリコー ル0.6%を有し、これは、比重0.88、粘度100°における576秒セイ ボルト(40℃において約120cSt)および120°Fにおける67秒セイボ ルト(100℃において約12cSt)、粘度指数95、密閉引火点480°F( 250℃)および流動点−15°F(−26℃)を有するNorth West European 粗製より誘導される精製鉱油に分散した。以下の表3に掲示した化合物を、必要 とあらば、加熱しつつ、グリースに混合し、化合物をグリース全体に均一に分布 させて、濃度0.0035mol(100gグリース)-1とする。応用例1に記載し たような4つのボール試験の結果は、表3に含めた。これら結果は、ビスマス塩 がこのグリース中で、アンチモン類縁体と同等の性能を示すことを示唆する。こ れは、米国特許3139405の教示からは予想されないことである。応用例 4 粘度40℃における約24cStを有するより軽質の鉱油ビテラ22[Vitrea 22 (Shell)]を使用して、応用例1を繰り返した。結果は、以下の表4に示す。 これらは、ビスマス塩が応用例1に記載した油に対して示されるようにアンチモ ン類縁体に優るとも劣らない長所を示すことを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI C10N 40:02 40:04 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),AU,BB,BG,BR,B Y,CA,CN,CZ,FL,HU,JP,KP,KR ,KZ,LK,LV,MG,MN,MW,NO,NZ, PL,RO,RU,SD,SK,UA,US,UZ,V N

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 式(I): [R1・R2−N−C(S)−S−]3Bi (I) [式中、各R1およびR2は、独立に、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによ って置換されたシクロヘキシルであるか;または、 R1およびR2は、それらが結合する窒素原子とともに、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたヘテロ環を形成する。 ただし、R1およびR2は、ともに、エチル、n−ブチルまたはn−ペンチルで あることははない。] で表される化合物。 2. R2が、C6〜12アルキル、要すれば、C1〜12アルキルによって置換され たC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによって置換されたシクロヘ キシル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチルまたは分岐ペンチルである、請 求項1に記載の化合物。 3. R1およびR2が、同一である、請求項1または請求項2に記載の化合物。 4. R1およびR2の少なくとも1つが、分岐アルキルであるか、または、分岐 アルキルを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。 5. 化合物ビスマストリス−(ジヘキシルジチオカルバメート)、ビスマスト リス−[ビス(2−エチルヘキシル)ジチオカルバメート]およびビスマストリ ス−[ジ(混合ペンチル異性体)ジチオカルバメート]。 6. グリースと、式(Ia): [R1・R2−N−C(S)−S−]3Bi (Ia) [式中、各R1およびR2は、独立に、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによ って置換されたシクロヘキシルであるか;または、 R1およびR2は、それらが結合する窒素原子とともに、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたヘテロ環を形成する。] で表される化合物とを含む組成物。 7. 油と、式(Ib): [R1・R2−N−C(S)−S−]3Bi (Ib) [式中、各R1およびR2は、独立に、C1〜12アルキル、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたC7〜12アラルキル、要すれば、C1-12アルキルによ って置換されたシクロヘキシルであるか:または、 R1およびR2は、それらが結合する窒素原子とともに、要すれば、C1〜12ア ルキルによって置換されたヘテロ環を形成する。] で表される化合物とを含むが、ただし、R1およびR2が、ともに、n−ペンチル であるかn−ブチルである時、油が、100℃における粘度約17cStおよび4 0℃における粘度約190cStを有するSAE90高粘度指数鉱油ではない組成 物。 8. 油が、40℃における粘度200cSt以上を有する、請求項7に記載の組 成物。 9. 油が、40℃における粘度180cSt以下を有する、請求項7に記載の組 成物。 10. R1およびR2の少なくとも1つが、分岐アルキルであるか、または、分 岐アルキルを含有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の組成物。 11. 金属を保護するための潤滑剤用極高圧添加剤としての請求項1〜5のい ずれか1項に記載の化合物の使用。 12. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物または請求項7〜10のい ずれか1項に記載の組成物で処理される金属表面。 13. 歯車または軸受けである、請求項12に記載の金属表面。
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