【発明の詳細な説明】細胞接着インヒビターとしての置換されたラクトース誘導体 技術分野
本発明は、炎症、アレルギー反応、自己免疫疾患、および関連した状態の治療
に有用な化合物に関する。より詳細には、本発明は、セレクチンレセプターに結
合する置換されたラクトース、およびそれらを含む薬学的組成物に関する。本発
明はまた、これらの類似物および他のラクトース誘導体を得るのに有用な合成方
法に関する。背景技術
細胞の相互作用が、少なくとも一部はレセプター/リガンド相互作用により仲
介されていることは、現在十分に確立されている。レセプターの1つのクラスは
、ペプチド部分配列「RGD」を認識することが知られており、他のレセプターは
、炭水化物リガンドを認識することが知られている。
炭水化物ベースのリガンドを認識するレセプターの1つのクラスは、刺激され
た血管内皮への、循環好中球の付着を仲介する。これは炎症性応答の最初の事象
であり、そしてこれはアレルギーおよび自己免疫応答にも包含されているようで
ある。数種のレセプターが、この相互作用に関与しており、1群の推定レクチン
を包含する。このレクチン群には、gp90
MEL
(Leu8)、ELAM-1、およびGMP-140(PADGEM)、ならびに(Gong,J.-G.ら、Nature
(1990)343:757;Johnston,G.I.ら、Cell(1989)56:1033;Geoffrey,J.S.およびRo
sen,S.D.、J.Cell Biol.(1989)109:2463;Lasky,L.A.ら、Cell(1989)56:1045)が
包含される。これらのレクチンは、L-セレクチン、E-セレクチン、およびP-セレ
クチンと呼ばれている。
E-セレクチンは、おそらく、これら3種のセレクチンのうち、最も特徴付けら
れている。これは、IL-1またはTNFに応答する内皮細胞での一過性発現である(Be
vilacqua,M.P.ら、Science(1989)243:1160)ため、特に興味深い。この誘導され
た発現期間(2〜8時間)により、感染および外傷に応答する初期の好中性溢出
におけるこのレセプターの役割が示唆される。さらに、Bevilacquaら(Bevilacqu
a,M.P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:9238)は、ヒト好中球またはHL-60
細胞が、E-セレクチンレセプターについてコードするcDNAを含むプラスミドを用
いてトランスフェクトされたCOS細胞に接着することを示した。内皮細胞−白血
球接着分子についてコードするDNA配列に関する情報は、1990年11月15日に公開
された、公開PCT出願WO90/13300のなかで開示されている。
最近、いくつかの異なるグループが、E-セレクチンに対するリガンドに関する
論文を発表した。Loweら、Cell(1990)、63:475-484では、シアリルルイスx(sLex
)オリゴ多糖、NeuNac α2-3Ga1-β1-4(Fuc α1-3)-G1cNAcを用いて、HL-60細胞
変異物のE-セレクチン依存性接着と、トランスフェクトされ
た細胞株(line)との間の正の相関が報告された。α(1,3/1,4)フコシルトランス
フェラーゼを含むプラスミドで細胞をトランスフェクトすることにより、非骨髄
性COSまたはCHO系を、E-セレクチンに依存して結合するsLex陽性細胞に変換し得
た。抗sLex抗体を用いてE-セレクチン依存性接着をブロックする試みは、該抗体
による試験細胞の凝集反応のために解釈不可能であった。シアリル化フコシル化
ラクトサミノグリカンからなるオリゴ多糖群のうちの1種またはそれ以上が、E-
セレクチンのレクチンドメインに対するリガンドであると結論された。Phillips
ら((1990)Science,250:1130-1132)は、sLexに対して報告された特異性を有す
る抗体を用いて、HL-60またはLEC11 CHO細胞の、活性化内皮細胞へのE-セレクチ
ン依存性接着を阻害した。末端sLex構造を有するジフコシル化糖脂質を含むリポ
ソームは、接着を阻害したが、非シアリル化Lex構造を有するリポソームは、部
分的に阻害性であった。WalZら((1990)Science,250:1132-1135)は、sLexに対
するモノクローナル抗体を用いて、またはsLex構造を有する糖タンパク質によっ
て、HL-60細胞へのE-セレクチン-1gGキメラの結合を阻害し得たが、CD65またはC
D15抗体を用いた阻害は例示され得なかった。これら両グループは、sLex構造がE
-セレクチンに対するリガンドであると結論した。現譲渡人に譲渡され、そして
本明細書中で参考として援用される、特許出願番号WO92/02527は、上記の最小の
四糖類構造を開示し、そして特許請求の範囲とし、そしてELAM-1レセプターと相
互作用性
であると推定される基を同定している。
E-セレクチンとは対照的に、L-セレクチンおよびP-セレクチンに結合するリガ
ンドの特性は、よく解明されていない。L-セレクチンは、L-セレクチン認識を阻
害する、末梢リンパ節の高内皮性小静脈(high endothelial venule)のノイラミ
ニダーゼ処理に基づき、シアル酸を持つリガンドに結合するようである。Trueら
、1990,J.Cell Biol.111,2757-2764。さらに、直接的結合/阻害アッセイで可溶
性L-セレクチンを用いる、他の研究により、一定の炭水化物部分が、マンノース
およびフコースを含む重要なリガンド構成要素であり得る(特に硫酸化またはリ
ン酸化されるとき)ことを示唆している。Imalら、1990,J.Cell Blol.111,1225-
1232。より最近の研究では、L-セレクチンは、シアリルルイスxに結合すること
が示唆されている。Foxall,C.ら、(1992)Cell、印刷中。
P-セレクチンに対するリガンドは、シアリルルイスxに関連したエピトープを
有すると考えられる。この結論は、活性化された血小板またはP-セレクチンを発
現するCOS細胞への、HL-60細胞のP-セレクチン仲介接着をブロックするという特
異性を有する抗体を用いる研究に基づいている。Larsenら、(1990)Cell 63,467-
474。他の実験では、P-セレクチンでトランスフェクトされた細胞へのHL-60細胞
の接着は、ルイスxエピトープを有する、乳から単離された五糖類によりブロッ
クされることが示された。最近、P-セレクチンは、スルファチドに結合すること
が示された。Aruffo,A.ら、(1991)Cell,67:3
5-44。
疾病(特に、ある一定の細胞タイプにおいて、セレクチン−リガンド結合を介
して起こる、所望されない細胞−細胞接着を含む疾病)でのセレクチンの役割の
ために、そのようなセレクチン−リガンド結合の制御を可能にする、新規なリガ
ンドの同定および単離が非常に必要とされている。発明の目的
本発明は、セレクチンレセプターに結合するアゴニストおよびアンタゴニスト
を提供する。従って、細胞−細胞接着事象を調節することにより、炎症、癌、お
よび関連した応答の経過を調節する。この局面において、本発明は以下の式の化
合物に関する:
ここで、R1は、それぞれ独立して、Hまたは低級アルキル(1-4C)であり;
R2は、H、低級アルキル(1-4C)、アルキルアリール、あるいは1つまたはそれ
以上の他の糖残基であり;
R3は、SO4 --、PO4 --、または関連する基を含む、負に荷電した部分であり;
Yは、H、OH1または低級アルキル(1-4C)であり;そして
Xは、-CHR4(CHOR1)2CHR5OR1であり、ここで、R4およびR5は、それぞれ独立し
て、H、低級アルキル(1-4C)、あるいは一緒になって、O、S、およびNR1から成る
群から選択されるヘテロ原子を随意に含む5員環または6員環を形成し;
該5員環または6員環は、R1、CH2OR1、OR1、OOCR1、NR1 2、NHCOR1、およびSR1
からなる群から選択される1種の置換基で随意に置換され、Xがヘキソース置換
基を表すときには、R4およびR5は一緒になっても、ヘキソース置換基になり得な
い。
他の局面においては、本発明はラクトース誘導体を合成する方法に関する。そ
の方法は、下式の中間体を接触させる工程を包含し、
ここで、R6は、それぞれ独立して、H、低級アルキル(1-4C)、または保護基で
あり;そして
ここで、Y1は、H、OH6、OOCR6、またはSR6であり;
ここで、少なくとも1つのR6は、置換されるべき位置にあり、そして、多くて
も1つの近接したR6がHであり、その他の全てのR6が保護基であり;そして
R7は保護基であり、生成物を得るための求電子試薬供給部分
を有し、ここで、求電子試薬は、置換されるべき位置で、OHのHに対して置換さ
れている。
他の局面において、本発明は、式1の化合物を含む薬剤組成物に関し、そして
これらの化合物を用いる炎症の治療方法に関する。他の局面において、本発明は
、式2の化合物、および、セレクチン結合リガンドまたは他の有用なラクトシル
残基含有部分の合成における、付加的な中間体に関する。発明を実施する形態
本明細書中で引用する全ての文献全体を、参考として援用することが意図され
ている。
本発明は、セレクチンレセプターに対して結合する能力によって、炎症を治療
するのに有用な化合物を提供する。例えば、図1は、炎症を介在するときにセレ
クチンレセプターの1種,ELAM-1によって行われると考えられている役割の概略
図である。血管には、ELAM-1表面レセプターを生成し得る内皮細胞が並んでいる
。血管内を循環しているリンパ球は、その表面にELAM-1レセプターと結合し得る
炭水化物リガンドを含む。これにより、血管壁を通って周囲の組織中にリンパ球
が移動する。これはいくつかの状況において有用な効力を有し得るが、周囲の組
織が感染している場合には、血管壁を通り組織中へのリンパ球の過度の移動は、
過度であり得、望ましくない炎症を引き起こす。いかなる特別な理論によっても
制限されることは望まないが、ELAM-1レセプターに結合する本
発明の化合物は、循環しているリンパ球の表面リガンドの反応を拮抗し、従って
、周囲の組織内で炎症を引き起こす、リンパ球の血管壁を通る移動を予防すると
考えられている。リガンドを同定するアッセイ
セレクチンリガンドとして作用するラクトース誘導体を同定するためのアッセ
イは、最も一般的な形態では、適切なセレクチン、L-セレクチン、E-セレクチン
、またはP-セレクチンを推定リガンドと接触させ、そしてその結合特性を測定す
ることを包含する。
いくつかのアッセイを利用して、L-セレクチン、E-セレクチン、またはP-セレ
クチンに結合する化合物の能力を測定することが可能であり、そしてこのような
アッセイは、当該分野で周知である。例えば、セレクチンおよび推定リガンドの
両方を、充分な時間、溶液中において、セレクチンおよびリガンドからなる複合
体を生成させ、次いで複合体を形成していないセレクチンおよびリガンドからこ
の複合体を分離し、そして生成した複合体の量を測定し得る。あるいは、複合体
を形成していないセレクチンまたは化合物の量を測定し得る。
第2の、そして好ましいアッセイ形式は、セレクチンまたは推定リガンドのい
ずれかを固体表面上に固定すること、および、固定化した反応物を固定化してい
ない反応物と接触させることにより、固体表面上にセレクチン−リガンド複合体
を生成することからなる。このセレクチン−リガンド複合体
を、複合体を形成していない反応物から分離し、そして複合体中に存在する固定
化していない反応物の量を測定することにより、生成した複合体の量を測定し得
る。例えば、推定リガンドは、マイクロタイターウェルに固相化され得、次いで
所望のセレクチンをウェルに添加し、そしてリガンドに結合したセレクチンの量
を測定し得る。
上記アッセイの変法は、遺伝子工学的に細胞を操作して、細胞表面に高レベル
のL-セレクチン、E-セレクチン、またはP-セレクチンを発現させ、そしてその細
胞を精製したセレクチンのかわりに用いることである。放射標識したCOS細胞が
、このタイプのアッセイに用いられており、そしてL-セレクチン、E-セレクチン
、またはP-セレクチンをコードするcDNAを用いて、トランスフェクトされ得る。
この細胞を、充分な時間、リガンドをコートしたマイクロタイターウェルに接着
させた後、非接着細胞を除去し、そして接着細胞の数を測定する。接着細胞の数
は、セレクチンに結合するリガンドの能力を反映する。
このタイプのアッセイの代表的用途は、E-セレクチンリガンドの同定である。
例えば、ELAM-1レセプターの完全なcDNAは、IL-1刺激したヒト臍静脈内皮から単
離した全RNAを用いて開始したPCRによって得られた。得られたcDNAを、CDM8プラ
スミド(Aruffo,A.およびSeed,B.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1987)84:8573
を参照)中に挿入し、そして大腸菌内で増幅した。個別のコロニーから得たプラ
スミドDNAを単離し、そ
してこれを用いてCOS細胞をトランスフェクトした。ポジティブなプラスミドを
、それらがHL-60細胞接着を支持するCOS細胞を生成する能力により、選択した。
DNA塩基配列決定により、これらのクローンの1つがELAM-1をコードするものと
して、ポジティブに同定された(Bevilacqua,M.P.ら、Science、(1989)243:1160
; Polte,T.ら、Nucleic Acids Res.(1990)18:1083; Hession, C.ら、Proc. Natl . Acad.Sci. USA
(1990)87:1673)。これらの出版物を、ELAM-1およびそれをコー
ドする遺伝物質の開示に関し、本明細書中で参考として援用する。ELAM-1 cDNA
の完全なヌクレオチド配列およびELAM-1タンパク質の予測アミノ酸配列は、上記
引用したBevilacquaらの論文中に掲載されている。これらのDNAおよびアミノ酸
配列を、本明細書中で参考として援用する(本明細書中で参考として援用する、
1990年11月15日に公開された、公開PCT特許出願W090/13300も参照)。
ELAM-1をコードする完全長cDNAは、非翻訳の隣接配列に対して相補的なプライ
マーを用いて、IL-1刺激したヒト臍静脈内皮細胞から抽出した全RNA1μgを用
いた、35サイクルのポリメラーゼ連鎖反応によって得られた。上記配列は以下の
通り:
生成した2Kbインサートをゲル精製し、ポリリンカーへのSalI部位の挿入により
改変された噛乳動物発現ベクターCDM8に
複製方向にクローンし、大腸菌(MC1061/p3)中で増殖した。プラスミドを個別の
コロニーから単離し、そしてこれを用いてCOS細胞をトランスフェクトした。推
定E-セレクチンをコードするプラスミドを、これらのトランスフェクトされたCO
S細胞が、トランスフェクト後72時間におけるHL-60細胞接着を支持する能力に基
づいて選択した。
E-セレクチンの発表された配列(ここでは2つの核酸置換を有する)のポジテ
ィブcDNAを、全ての実験で用いた。COS細胞を、3.5〜5.0×105個の細胞当たり、
このプラスミドDNA1μg、DEAE−デキストラン400μg/mlおよびクロロキン100
μMを用いて、4時間トランスフェクトし、次いで、PBS中の10%DMSOに短時間
曝した。細胞を、代謝的に、キャリアを含まない32PO4で一晩放射標識し、そし
てトランスフェクションから72時間後、細胞接着の研究で使用するために0.02%
のアジドおよび2mMのEDTAを追加したPBS中に回収した。
上記手法により産生された、E-セレクチンでトランスフェクトされたCOS細胞
を用いて、グルクロニル糖脂質リガンドについてアッセイし得る。同様に、COS
細胞は、L-セレクチンおよび/またはP-セレクチンをコードするcDNAを用いてト
ランスフェクトされ得る。L-セレクチン−IgGキメラ構造体の産生および特徴付
けは、以前にWatson,S.R.ら、(1990)J.Cell Biol.110:2221-2229に記載された。
このキメラは、天然での発現と同様、2個の補体結合ドメインを含む。Watson,
S.R.ら、(1991)J.Cell Biol.115:235-243を参照。P-セレクチン
キメラを、Walz,G.,ら、(1990)Science 250,1132-1135およびAruffo,A.ら、(199
1)Cell,67,35-44にそれぞれ記載の方法と同様の方法で構築した。これらのキメ
ラは、適切な宿主細胞、例えば、293細胞中で発現され、そして精製され得る。
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーが、好ましい精製方法である。
E-セレクチンおよびP-セレクチンは、キメラのサイズを標準化し、そしてこれら
の分泌を促進する短縮形補体結合ドメインを用いて構築され得る。上記アッセイ
の1つの変法は、細胞を遺伝子工学的に操作して、高レベルのL-セレクチン、E-
セレクチン、またはP-セレクチンを細胞表面に発現させ、そして精製したセレク
チンの代わりにこれらの細胞を用いることである。放射性標識したCOS細胞が、
このタイプのアッセイで用いられており、そしてL-セレクチン、E-セレクチン、
またはP-セレクチンをコードするcDNAを用いてトランスフェクトされ得る。これ
らの細胞を充分な時間、リガンドをコートしたマイクロタイターウェルに接着さ
せた後、非接着細胞を除去し、そして接着細胞の数を測定する。接着細胞の数は
、リガンドがセレクチンに結合する能力を反映する。
従って、式1のいかなる候補化合物も、上述のアッセイにおける陽性の結果に
より、ELAM-1レセプターと結合すると証明し得る。これらのアッセイにより、式
1の化合物からなる群の種々のメンバーの相対的な効果を決定するための簡単な
スクリーニングが提供される。式1の化合物の非治療的使用
以下にさらに記載するように、式1の化合物は、炎症の治療または予防におけ
る使用の他に、インビトロ、およびインビボの両方で、診断および予備の手法に
有用である。
式1の化合物は、固体基質に結合され得、そして生物学的試料からのセレクチ
ンレセプタータンパク質の精製に使用され得る。これは、アフィニティークロマ
トグラフィーカラムとして結合した基質を配置して、セレクチンレセプタータン
パク質が吸着しているが、不純物質は無いという条件下で、セレクチンレセプタ
ータンパク質を含有していると推定される試料を、アフィニティーカラムにかけ
ることによって、最も好都合に行われる。次いで、セレクチンレセプタータンパ
ク質は、例えば、式1の化合物の競合量を含むように、溶離液を調整することに
よって、あるいは、pHまたは塩のパラメーターを調整することによって、続いて
溶出される。アフィニティー精製のための技法はよく理解され、そして型にはま
った、最適化された実験により、この手法を行うために適した条件が作り出され
る。
式1の化合物はまた、セレクチンまたは関連の炭水化物結合レセプターリガン
ドの有無を決定するための検出試薬としても、有用である。こうした診断アッセ
イでの使用に対して、セレクチンレセプタータンパク質、またはそれに非常に関
連のあるレセプタータンパク質を含有すると予想される生物学
的試料は、レセプタータンパク質および式1の化合物間で複合体形成が起こる条
件下で、式1の化合物で処理されて、複合体の形成が検出される。広範な種々の
プロトコールは、免疫アッセイに用いられるプロトコールと類似の手順で有用で
あり得る。従って、形成された複合体の量が直接測定される直接アッセイは、有
用であり得;あるいは、標識したセレクチンレセプタータンパク質が、生物学的
試料と共に供給され、そして生物学的試料と競合する、競合アッセイが使用され
得る。いくつかの形態の上記アッセイは、標識した形での式1の化合物を供給す
るのに便利であるので、複合体は直接検出される;それに代わる手順では、複合
体は、サイズ分離、2次標識試薬、またはそれに代わる他の手段によって検出さ
れ得る。適切な標識は、当業者に既知であり、そして標識には、放射標識、蛍光
標識、酵素標識、色素生成標識またはこれらのアプローチを複合したものを包含
する。
式1の化合物はまた、競合的診断試薬としても、使用され得、生物学的液体中
の表面リガンドのようなセレクチンレセプター結合成分の量を検出する。このよ
うなアッセイを行うには、式1の化合物を上記のように標識し、生物学的試料と
混合し、そして適切なレセプタータンパク質と接触させる;生物学的試料中に存
在するセレクチンレセプターに対する、標識した式1の化合物の結合が減少する
ことが、次いで測定される。
式1の化合物はまた、インサイチュてのセレクチンレセプ
ターの場所を決定するためのインビボでのイメージ研究で使用され得る。このよ
うなアッセイで使用するために、式1の化合物は、インジウム111、テクネチウ
ム99、ヨウ素131などを包含するシンチグラフィー標識のような、インビボでの
イメージ技法によって検出され得る標識物と共に供給される。
式1の化合物などの化合物を標識、クロマトグラフィーの支持体、または関連
する手法において化合物を使用するのに有用な他の部分に結合するための技法は
、当該分野において周知である。
抗体もまた、適切な担体に対して上記化合物を結合させて、適当な含有物であ
るアジュバントを用いる標準免疫プロトコールで、哺乳類または他の脊椎動物患
者に、結合した物質を投与することよって、式1の化合物に対して調製され得る
。適切な免疫遺伝学的担体には、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(K
LH)、破傷風トキソイド、ウシ血清アルブミン(BSA)などの種々の血清アルブミン
、および、ロタウイルスのVP6プロテインなどの特定のウイルスタンパク質が挙
げられる。次いで、これらの結合した物質を、ウサギ、ラット、またはマウスな
どの患者に繰り返し注射して投与し、そして、抗体力価を標準免疫アッセイ技法
によってモニターした。得られた抗血清は、それ自体が使用され得、または、免
疫によって生成された抗体分泌細胞は、標準技法を用いることによって不滅化さ
れ、式1の化合物との免疫反応性を有するモノクローナル調製物源として使用さ
れ得る。得られた抗体は、
関連する式1の化合物の存在および/または量を決定するためのアッセイ系にお
いて有用である。このようなアッセイは、以下に記載のような治療方法において
、式1の化合物の循環レベルをモニターするのに有用である。抗炎症のプロトコールでの投与
本発明の化合物は、それが炎症を予防のために防ぐとき、または、炎症が起こ
った後にそれを緩和するのに必要である時、患者に投与される。本明細書中で使
用している「治療」は、炎症および/または炎症に伴う症候を予防または改善す
ることを意味する。上記化合物は、好ましくは、薬学的に受容可能な担体ととも
に投与され、その担体の性質は、例えば、通常は固体担体を用いる経口投与、お
よび、液体の塩溶液担体を用いる静脈内投与など、投与の態様で異なる。典型的
には、注射し得る組成物は、液体溶液または懸濁液として調製される;注射前に
液体媒体に溶解するのに、または懸濁するのに適した固体形態もまた調製し得る
。上記化合物はまた乳化され得、または活性成分をリポソーム媒体中にカプセル
化した。
適切な媒体は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エ
タノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、もし所望であれば、
上記媒体は、湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤などの補助物質を少量含み
得る。このような調剤形状の実際的な調製方法は、当業者には
既知、または明白である。例えば、Reminton's Pharmaceutical Sciences, Mack
Publishing Company, Easton, PA, 17版、1985年を参照のこと。処方物は、例
えば、薬剤級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウ
ム、サッカリンセルロースナトリウム、炭酸マグネシウムなどを含有する種々の
賦形剤を使用し得る。経口用組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤
、徐放性処方物、または、散剤の形をとり得る。DMSOのような浸透増強剤を含む
経皮用処方物として本願リガンド分子を、患者に直接投与することは、特に有用
である。他の局所用処方物は、皮膚の炎症を治療するために投与され得る。さら
に、経粘膜投与は、任意に他の洗浄剤分子と組合せて、胆汁酸塩またはフシジン
酸誘導体などの浸透剤を使用することで効果的にし得る。これらの処方物は、例
えば、坐剤、または鼻用噴霧剤の調製に有用である。坐剤として、媒体組成物は
、従来の結合剤および担体(ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドな
ど)を包含する。このような坐剤は、約0.5%から約10%(w/w)、好ましくは約
1%から約2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成され得る。
通常、鼻腔内用の処方物は、鼻の粘膜に対する刺激を引き起こさず、または繊
毛の機能をほとんど妨害しない媒体を含有する。水、生理食塩水溶液、または他
の既知の物質など希釈剤は、本願発明に用いられ得る。鼻用の処方物もまた、ク
ロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムのような保存剤
を含有するが、これらに限定されるものではない。界面活性剤は、鼻の粘膜によ
って対象のタンパク質の吸収を高めるために存在し得る。
典型的には、本発明の組成物は、1%未満から約95%までの、好ましくは約10
%から約50%までの活性成分を含む。好ましくは、約10mgと50mgとの間で子供に
対して投与され、そして約50mgと1000mgとの間で成人に対して投与される。投与
の回数は、患者の応答性に基づいて与えられる管理によって決定される。他の効
果的な用量は、通常の試験で確立する用量反応曲線から、当業者によって容易に
決定され得る。
投与すべき用量を決定する上で、特定のタイプの全てのセレクチンレセプター
を完全に遮断することは望ましいものであり得ないことに注意すべきである。普
通の治癒プロセスを進めるために、少なくともいくつかの白血球または好中球が
、あらゆる創傷、感染、または病状が生じている患部組織へ運び込まれなければ
ならない。遮断剤として投与されるセレクチンリガンド量は、治療されている疾
患の型のような種々の要素を考慮しながら、患者個々の必要性に基づいて、注意
深く調節されなければならない。
本発明の化合物は、広い範囲の疾患、例えば、慢性関節リウマチおよび多発性
硬化症などの自己免疫疾患の治療に有用である。本発明の組成物は、組織の損傷
、腫脹、炎症、および/または疼痛を引き起こす程度にまで組織内に白血球蓄積
を引き起こした身体に対して免疫系が向けられている、いか
なる病状にも適応し得る。
本発明の処方物はまた、心臓発作に起因する組織の損傷の望ましくない後遺症
を、予防するためにも投与され得る。心臓発作が起こり、抗凝血薬または血栓崩
壊薬の(例えば、tPA)の適用によってなど、患者が回復した時、凝血塊が形成さ
れた内皮内層は、損傷を受けることがしばしばある。抗血栓薬が凝血塊を除去し
たとき、凝血塊の下で損傷を受けた組織および内皮内層中の酸素が欠如していた
他の損傷を受けた組織は、活性化される。次いで、活性化された内皮細胞は、細
胞が損傷を受けてから数時間以内にセレクチンレセプター、例えば、ELAM-1レセ
プターを合成する。このレセプターは血管中にまで達し、白血球表面の糖脂質リ
ガンド分子に付着する。大量の白血球が素早く捕獲され、そして活性化された内
皮細胞の周囲組織中へもたらされて、炎症、腫脹、および壊死が起こり、これに
よって患者の回復の見込みが減少する。
心臓発作が原因で傷害を受けた患者を治療することに加えて、身体のある部分
が重傷を負った後に、通常生じる炎症および腫脹の量を軽減するために、現実に
物理的な外傷を受けた患者を、本発明の処方物を用いて治療し得た。本発明の処
方物を用いて治療し得るその他の条件は、種々の型の関節炎、および成人呼吸障
害症候群を包含する。本開示を読んだ後、当業者は、本発明の処方物を投与する
ことによって、治療および/または緩和され得る他の疾患の状態および/または
症状を理解する。式2の化合物の適用
式2の化合物は、ラクトシル単位を含む化合物を調製する際の中間体である。
顕著に、式2の化合物は、本明細書中で使用が上述されている式1の化合物の調
製に有用である。式1の化合物に加えて、ラクトース残基を含む他の化合物もま
た調製され得、それは、例えば
4-O-(3-O-カルボニメチル-β-D-ガラクトピラノシル)-3-O-[2R,S)-グリセリ
ル]-D-グルコピラノース;
4-O-(3-O-カルボニメチル-β-D-ガラクトピラノシル)-3-O-[2R,S)-2,3-ジデ
オキシ-2,3-ジフルオロプロピル]-D-グルコピラノース;
4-O-[3-O-{(1R,S)-1-(カルボキシ)エチル}-β-D-ガラクトピラノシル]-3-O-[
(2R,S)-グリコシル]-D-グルコピラノース;
4-O-[3-O-{(1R,S)-1-(カルボキシ)エチル}-β-D-ガラクトピラノシル]-3-O-
(α-L-フコピラノシル)-D-グルコピラノース;
4-O-[3-O-(α-Neu5Ac)-β-D-ガラクトピラノシル]-3-O-[(2R,S)-グリセリル
]-D-グルコピラノース;
4-O-[3-O-(α-Neu5Ac)-β-D-ガラクトピラノシル]-3-O-[(2R,S)-2,3-ジ
デオキシ-2,3-ジフルオロープロピル]-D-グルコピラノースである。レセプター結合リガンドの多価性形態
レセプターに対する本発明のリガンドの親和性は、好ましくは、担体部分によ
って提供される土台を用いて、リガンドの非常に近い多数のコピーを提供するこ
とにより強化され得る。この部分間の最適な間隔を有するこのような多価性を与
えることにより、レセプターに対する結合が劇的に改善することが示された。例
えば、Lee,R.ら、Biochem(1984) 23:4255には、ラクトースが多価性物として供
給されるとき、ラクトースの多価性形態を与えることにより、標識したASORが哺
乳類の肝細胞になおさら効果的に結合するのを阻害することを示した;IC50は、
1価のラクトースについての500μMから、2価のラクトシル化合物については9
まで、3価のラクトシル化合物については4まで、理想ではまたは3つのラクト
ース部分間の最適な間隔では0.007μMまで減少した。
多価性および間隔は、適切な担体部分を選択することによって制御し得る。こ
のような部分は、本発明のリガンドと会合した官能基と反応し得る官能基の多価
性を有する、分子支持体を包含する。特に好ましいアプローチは、本発明のラク
トース誘導リガンドが、還元的アミノ化によって担体のアミノ基にカップリング
することを包含する。還元的アミノ化は、最初にシッフ塩基を形成し、次いで、
水素化物還元剤のような還元試薬で複合体を処理することにより、遊離アミノ基
にアルデヒド部分を結合させる、特に好適な方法である。典型的には、担体を有
するアミノ基は、約pH9で炭水化物部分と
混合し、そしてシッフ塩基を形成し得る;溶媒は典型的には蒸発させ、そして高
いpHで、還元試薬を添加して、反応を完了させる。
本発明のリガンドの多価性形態を得るための特に好適な担体部分は、タンパク
質およびペプチドを包含し、特に、ε-アミノ基を有するリジン残基を含む担体
部分は、結合に利用できる。また少なくとも1つのチロシン残基を有するペプチ
ドまたはタンパク質は有用である。なぜなら、これは、例えば放射性ヨウ素で標
識するのに好適な部位を提供するからである。3価結合を得るための特に好適な
担体は、ペプチドLys-Tyr-Lysである。このペプチド上での本発明のリガンドと
遊離アミノ基との完全な反応は、3価部分をもたらす。従って、次式で示される
本発明の化合物は、X、Y、ならびに、R1およびR3が、上記で定義したように、本
発明の多価性化合物を例示する。
確かに、BSAまたはHSAなどのタンパク質、例えばペンタペプチド、デカペプチド
、ペンタデカペプチドなどを包含する、ペプチドの多価性を包含する、種々の担
体が用いられ得る。好ましくは、ペプチドまたはタンパク質は、それらの側鎖に
遊離アミノ基を有するアミノ酸残基の所望の数を含む;しかし、スルフヒドリル
基またはヒドロキシル基のような他の官能基もまた、安定な結合を得るために用
いられ得る。例えば、本発明の炭水化物リガンドは、アミドを形成する遊離アミ
ノ
基またはエステルを形成するヒドロキシル基のどちらかで誘導体化され得る還元
末端で、カルボキシ基を含有するように酸化され得る。式1の化合物の調製
式1の本発明の化合物は、式2の中間体を用いて合成され得る。1つの実施態
様では、式2の中間体は、標準的な手順を用いてD-ラクトースから直接調製され
得る。この変換では、D-ラクトースは、Hudson,C.,およびKuns,A.,J Am Chem S oc
(1925)47:2052に記載の方法で、95%を上回る収率で、結晶性形でオクタアセ
テートに変換される。オクタアセテートは、順次、Hudson,C.の方法(上記)、
または、Fischer, E.およびFischer, H.,Ber(1910)43:2521の方法によって、90
%より多い収率で、対応する臭化ラクトシルに変換され、これもまた結晶性化合
物である。保護化された臭化ラクトシルは、Jansson, K.,ら,J Org Chem(1988)5 3
:5629の方法によって、60%を上回る収率で対応するアシル化トリメチルシリル
エチルラクトースに変換され、これは定量的収率で脱アシル化によって脱保護化
され得、2-(トリメチルシリル)エチルラクトシド、すなわち、2-(トリメチル
シリル)エチルβ-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを得る。二糖
の1位の他の保護基もまた、使用され得る。
式2の化合物のこの前駆体は、以下の式であり:
ここでR7は保護基、好ましくはSEまたはBnであって、ここで、SEは-CH2CH2SiM
e3を表し、そしてBnはベンジルを表す。
反応スキーム1は、この中間体からの式2の化合物の一つの実施態様の形成を
概略し、ここでBzはベンゾイルを表す。
反応スキームの工程1において、保護化されたラクトース、例えばトリメチル
シリルエチル誘導体は、過剰の2,2-ジメトキシプロパンで処理し、そして乾燥カ
ンファースルホン酸を反応混合液に添加し、それを約室温で2〜3日間撹拌する
。トリエチルアミンのような適切な塩基を添加し、そして10〜20分間撹拌し続け
る;次いで、混合物を、乾燥するまで濃縮し、そして塩基を除去する。ベンジル
ラクトシドの場合は、用いる方法は、D.Beith-Halahmiら、Carbohydr.Res., (19
67)5:25の方法であり、この方法では、ベンジルラクトシドを、4-トルエンスル
ホン酸を含有する大過剰の乾燥アセトン中で3〜4時間煮る。この反応混合物を
標準的な手法を用いて処理し、生成物6を回収する。この中間体は、次いで適切
な条件下で、例えば、塩化ベンゾイルを用いて、ベンゾイル化し、反応スキーム
に7として示す中間体化合物を得る。
中間体7は、次いでグルコシド残基の3位の遊離ヒドロキシル基でさらに誘導
体化され得るか、またはこの位置が保護化され得、そして化合物はガラクトシル
残基の3位および4位で脱保護化され、そして3位でさらに誘導体化される。ガ
ラクトシル残基の4位は相対的に非反応性である。この鍵となる中間体7の利用
に対する典型的なスキームを、反応スキーム2Aに示す。(このスキームにおいて
、Bzはベンゾイル(PhCO-)であり、そしてBnはベンジル(PhCH2-)である)。
反応スキーム2Aに示すように、中間体7は、適切な条件下で保護化されたメチ
ル1-チオ-L-フコシドで処理することにより、2つの工程で中間体10に変換され
る。この反応は、臭化第二銅、臭化テトラブチルアンモニウム、およびモレキュ
ラーシーブの存在下で、非水溶非プロトン性溶媒中で行う。(S.Satoら、Carboh ydr. Res.
,(1986)155:C6)。次いで、10として示される、得られた化合物を、文
献の手順に従って、中間体を単離することなく、3,4-オルトエステルを経ること
によって、D-ガラクトピラノシル残基の4位を選択的にアセチル化し(R.U.Lemi
euxおよびH.Drigwez、 J.Amer.Chem.Soc.,(1975)97:4069)、中間体11を与え
る。中間体11の硫酸化により、中間体12を生成し、これを脱アセチル化し、そし
て水素添加して、最終生成物13、セレクチンリガンドを生成する。
反応スキーム2Bに示した、本発明の他の実施態様では、中間体11をリン酸化し
て中間体14を生成し得、これは、脱アセチル化および水素添加により最終生成物15
を生成する。この化合物は、セレクチンリガンドとして作用すると期待される
。
本発明の化合物および好ましい実施態様
本明細書中に使用しているように、アルキル(1-6C)は、1-6Cを含む飽和直鎖
または飽和分枝鎖炭化水素残基、あるいは飽和環状炭化水素残基を示し;低級ア
ルキルは、同様に定義されるが1-4Cしか含まない。
本明細書中に使用しているように、アルキルアリールは式(CH2)m-Arであり、
ここでmは1-10、そしてArは単環状または双環状芳香族残基あり、1種またはそ
れ以上のヘテロ原子を任意に含む。Arの典型的な実施態様は、フェニル、ナフチ
ル、キノリル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾチアゾイル、ベンズイミダゾイル
などを包含する。
R7は、糖残基に適切な保護基である。典型的な保護基は、ベンジル、ベンゾイ
ル、トリメチルシリルエチル(SE)のような種々のシリルアルキル基などを包含
する。
本発明の式1の化合物の代表例は、R3がS04-2、P04-2、または他の同様の荷電
した部分である化合物である。
本発明の式1の化合物の他の代表例は、Xが以下のものを包含する:
6-メチル-3,4,5-トリヒドロキシピラン-2-イル、
6-アセチル-3,4,5-トリヒドロキシピラン-2-イル、
6-プロピルアミド-3,4,5-トリヒドロキシピラン-2-イル、
6-プロピルアミド-2,3,4-トリメトキシピラン-2-イル、
6-エチル-2,3-ジヒドロキシ-4-メトキシピラン-2-イル、
6-N-エチルアミノ-2-ヒドロキシ-3,4-エトキシピラン-2-イ
ル、
3,4,5-トリ-n-プロピロキシピラン-2-イル、
3,4,5-トリヒドロキシピラン-2-イル、
2,3,4-トリメトキシフラン-2-イル、
2,3-ジヒドロキシ-4-メトキシフラン-2-イル、
2-ヒドロキシ-3,4-エトキシフラン-2-イル、
3,4,5-トリ-n-プロピロキシフラン-2-イル、および
3,4,5-トリヒドロキシフラン-2-イル;
または、ここでR5およびR6の両方がHであり、そしてX中の全てのR1がHまたは
メチルであり;
または、ここで、Xが2,3,4-トリヒドロキシベンゾイルである。
従って、特に式1の好ましい化合物は、全てのR1がHまたはメチルであり、Yが
H、OH、OCH3、またはOAcであり;および/または、Xが-CH2(CHOH)3H、 3,4,5-ト
リヒドロキシピラン-2-イル、3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルピラン-2-イル、3
,4,5-トリメトキシピラン-2-イル、3,4,5-トリメトキシ-6-メチルピラン-2-イル
、3,4,5-トリヒドロキシフラン-2-イル、3,4,5,-トリメトキシフラン-2-イル、2
,3,4-トリヒドロキシベンゾイル、または2,3,4-トリヒドロキシナフトイルであ
り;そして、R3がSO4-2、PO4-2、または他の同様の荷電した部分である。
式1の最も好ましい化合物は、全てのR1がHであり、R2がHであり、YがH、OR1
または低級アルキルである。
中間体を表す式2の化合物については、好ましい形態は、R6によって表される
保護基が、ベンジルまたはベンゾイルであり、R7によって表される保護基が、ト
リメチルシリルエチルまたはベンジルであり、そしてここでY1が、H、OR6であり
、ここでR6が上述のようにベンジルまたはベンゾイルであり、そして、ここでの
遊離ヒドロキシ基が、グルコシル部分の3位、またはガラクトシル部分の3位お
よび4位にある。ガラクトシル部分の3位および4位に対する他の好ましい保護
基は、イソプロピリデンである。
次の実施例は、本発明の例示を意図しており、本発明を限定することを意図し
ていない。実施例1 2-(トリメチルシリル)エチル2,6-ジ-O-ベンゾイル-4-O-(2,6-ジ-O-ベンゾイル -3,4-O-イソプロピリデン−β-D-ガラトピラノシル)-β-グルコピラノシド(7a) の調製
2-(トリメチルシリル)エチル4-O-(3,4-O-イソプロピリデン-β-D-ガラクト
ピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(K.Janssonら、J.Org.Chem.(1988)53:562
9-5647;6.6g、13.75mmol)を乾燥ピリジン(120mL)に溶解した。この混合物を-45
℃まで冷却し、そして塩化ベンゾイル(9.07mL、77.4mMo1.)を滴下しながら撹
拌し、そして-45℃で4時間撹拌し続けた。
T.I.c(8.5:1.5トルエン−酢酸エチル)により、出発アセタールよりも移動が
速い主生成物の存在が明らかになった。少
量の、さらに移動が速い生成物(ペンタベンゾエート)も、t.I.c.により明らか
になった。この混合物を、氷水に注ぎ、そしてジクロロメタンを用いて抽出した
。このジクロロメタン溶液を、引き続いて、水、NaHCO3水溶液、および水で洗浄
し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮した。濃縮物を、9:1トルエン−酢酸エチル
を溶出液とするシリカゲルカラムにかけて、そして固体を得、これをメタノール
から結晶化して7a(5.2g、42.3%)を得、[α]D+17.5(c,1.1、クロロホルム
)であ
実施例2 ベンジル2,6-ジ-O-ベンゾイル-4-O-(2,6-ジ-O-ベンゾイル-3,4-O-イソプロピリ デン-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D
-グルコピラノシド(7b)の調製
撹拌しそして冷却(-45℃)した、ベンジル4-O-(3,4-O-イ ソプロピリデン-
β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(5g、10.6mmol;D.Beith-Ha
lahmiら、Carbohydr.Res.(1967)5:25)の乾燥ピリジン(120mL)溶液を、塩化ベン
ゾイル(6mL、51.8mmol)を滴下して処理し、そして-45℃で4時間撹拌し続けた
。T.l.c(8.5:1.5トルエン−酢酸エチル)により、出発アセタールよりも移動の
速い主生成物の存在が明らかに
なった。少量の、さらに移動の速い生成物(ペンタベンゾエート)も、t.l.c.に
より明らかになった。この混合物を、氷水に注ぎ、そしてジクロロメタンを用い
て抽出した。このジクロロメタン溶液を、引き続いて、水、NaHCO3水溶液、およ
び水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮した。次いで、濃縮物を、シリカ
ゲルカラムにかけ、9:1トルエン−酢酸エチルを用いて溶出した。濃縮で、主生
成物に対応する画分は、固体残渣を与え、これを熱メタノールから結晶化して7b
(5.53g、59%)を得た; m.p.159〜161℃;[α]D-4.2°(c,1.3、クロロホル
ム)。
実施例3 ベンジル2,6-ジ-O-ベンゾイル-3-O-(2,3,4-トリ-O-ベンジル-α-L-フコピラノ シル)-4-O-(2,6-ジ-O-ベンゾイル-3,4-
O-イソプロピリデン-β-D-ガラクトピラ ノシル)-β-D-グルコピラノシド(9b)の調製
湿気から保護した5:1ジクロロエタン-N,N-ジメチルホルムアミド(120mL)中
の、化合物7b(4g、4.5mmoI)、メチル2,3,4-トリ-O-ベンジル-1-チオ-α-L-フコ
ピラノシド8(3.6g、7.75mmol)、および粉末状4Aモレキュラーシーブ(10g)の混
合物を室温で2時間撹拌した。臭化第二銅(2g、9mmo1)および臭化テトラブチル
アンモニウム(0.29g、0.9mmol)を添加し、そして、室温で35時間撹拌し続けた
。さらにドナー8(1.2g、2.6mmol、5:1ジクロロエタン-N,N-ジメチルホルムアミ
ド14.4mL中)、臭化第二銅(0.67g、0.3mmol)、およびモレキュラーシーブ4A(2
g)を添加し、そして室温で16時間撹拌し続けた。次いで、T.l.c(9:1 トルエン
−酢酸エチル)により、7bよりも移動の速い主生成物の存在が示された;痕跡量
の未変化の7bも、t.l.c.により明らかになった。この混合物を濾過し(Celite床
)、そして固体をクロロホルムで徹底的に洗浄した。濾液および洗浄液を合わせ
、そしてNaHCO3水溶液および水を用いて洗浄し、乾燥し、そして濃縮した。残渣
をシリカゲルカラムにかけ、そして9.5:0.5 トルエン−酢酸エチルを用いて溶
出した。主生成物に対応する画分の濃縮により固体が得られ、これをエーテルか
ら結晶化して9b(3.68g、76%)を得た。これは、反応した7bに基づいていた。化
合物9bは、m.p.180〜181℃;[α] D -8゜(c,1.1、クロロホルム)を有して
いた。
実施例4 2-(トリメチルシリル)エチル2,6-ジ-O-ベンゾイル-3-O-(2,3,4-トリ-O-ベン ジル-α-L-フコピラノシル)-4-O-(2,6-ジ-O-ベンゾイル-3,4-O-イソプロピリデ ン-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(9a)の調製
湿気から保護された5:1ジクロロエタン-N,N-ジメチルホルムアミド(135mL)
中の、化合物7a(5.2g、5.78mmol)、化合物8(4.68g、10.17mmol)、および粉末
状4Aモレキュラーシーブ(6g)の混合物を室温で2時間撹拌した。臭化第二銅(2.6
g、11.7mmol)および臭化テトラブチルアンモニウム(3.77g、11.7mmol)を添加
し、そして室温で合計48時間撹拌し続け、24時間後に追加量の8(2.34g、5.09m
mo1、5:1ジクロロエタン−N,N-ジメチルホルムアミド60mL中)、臭化第二銅(1.
3g、5.85mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(1.9g、5.85mmol)、および4A
モレキュラーシーブ(3g)を添加した。T.l.c(9:1 トルエン−酢酸エチル)に
より、7aよりも移動の速い主生成物の存在が
明らかになり、いくらかの未反応の7aもt.1.c.により明らかになった。7b(9bを
与えた)について記載したように処理した後、カラムクロマトグラフィーにかけ
、非結晶性固体として化合物9a(6.7g、88%)を得た;陽イオンLSIMS:1442.6
(M+Na)+、1340.8(M-NaS03)+、陰イオンLSIMS:1396.2(M-Na)-。実施例5 ベンジル2,6-ジ-0-ベンゾイル-3-0-(2,3,4-トリ-0-ベンジル-α-L-フコピラノ シル)-4-0-(2,6-ジ-0-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピ ラノシド(10b)の調製
70%酢酸水溶液(600mL)中の化合物9b(1.0g)を、85〜90℃で撹拌し、t.l
.c.(4:1トルエン−酢酸エチル)により反応の進行をモニターした。2.5時間後
、出発アセタール9bのほとんどは、移動のより遅い生成物に変換された。T.l.c.
により、α-L-フコシル結合の幾分かの開裂も示された。これは、2種の副生成
物の存在によって証拠づけられ、これらのうち一方は、生成物(トリベンジルフ
コース)よりも移動が速く、そして他方は、硝酸化がより遅い(二糖生成物)。
酢酸を減圧下で(〜40℃)蒸発させ、最終痕跡量を、幾分か添加したトルエンと
の共蒸発により除去した。このようにして得た残渣を、溶離液として9:1トルエ
ン−酢酸エチルを用いて、シリカゲルカラムで精製し、非結晶性固体として10b
(0.6g、61.8%)を得た。
実施例6 2-(トリメチルシリル)エチル2,6-ジ-0-ベンゾイル-3-0-(2,3,4-トリ-0-ベン ジル-α-L-フコピラノシル)-4-0-(2,6-ジ-0-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノ シル)-β-D-グルコピラノシド(10a)の調製
化合物9a(3g、2.3mmo1)を70%酢酸水溶液(300mL)中に取り、そして混合物
を85〜90(バス)で撹拌しながら2時間加熱した。T.l.c.(4:1トルエン−酢酸
エチル)により、10bに相当するクロマトグラフィー移動度を有する主生成物の
存在が示された。9b(10bを与えた)について記載したように処理し、次いでカ
ラムクロマトグラフィーにかけることにより、非結晶性固体として三糖ジオール
10a(2.3g、79%)を得た;[α]D-20.6
実施例7 ベンジル2,6-ジ-0-ベンゾイル-4-0-(4-0-アセチル-2,6-ジ-0-ベンゾイル-β-D- ガラクトピラノシル)-3-0-(2,3,4-トリ-0-ベンジル-α-L-フコピラノシル)- β-D-ルコピラノシド(llb)の調製
化合物10b(0.56g)を、4-トルエンスルホン酸(0.15g)を含有する、ベンゼ
ン(30mL)とトリエチルオルト酢酸(30mL)との混合物に溶解し、そしてこの混
合物を室温で1時間撹拌した。酸を少量のトリエチルアミンで中和し、そしてこ
の混合物を蒸発乾固した。次いで、これを80%酢酸水溶液(50mL)に取り、そし
て室温で40分間撹拌した。T.l.c.(4:1トルエン−酢酸エチル)により、ジオー
ル10bよりも移動の速い主生成物の存在が示された。酢酸を減圧下で除去し、そ
して少量のトルエンを添加し、そして残渣から蒸発して、非結晶性固体としてll
b(0.56g、96.6%)を得、[α]D-14.3°(c,1.1、クロロホルム)であった。
実施例8 2-(トリメチルシリル)エチル2,6-ジ-0-ベンゾイル-4-0-(4-0-アセチル-2,6- ジ-0-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-3-0-(2,3,4-トリ-0-ベンジル-α -L-フコピラノシル)--D-ガラクトピラノシド(lla)の調製
化合物10a(1.87g)の、4-トルエンスルホン酸(0.25g)を含有するベンゼン
(50mL)とトリエチルオルト酢酸(50mL)との混合物溶液を、室温で1時間撹拌
した。次いで、酸を数滴のトリエチルアミンで中和し、そしてこの混合物を蒸発
乾固した。残渣を80%酢酸水溶液(100mL)と混合し、そしてこの混合物を室温
で40分間撹拌した。10b(llbを与えた)について記載したように処理して、標記
の化合物lla(1.86g、89%)を得た;白色の非結晶性固体;[α]D-2.7゜(c,l
.l、クロロホルム)。
実施例9 ベンジル2,6-ジ-0-ベンゾイル-3-0-(2,3,4-トリ-0-ベンジル-α-L-フコピラノ シル)-4-0-(ソジウム4-0-アセチル-2,6-ジ-0-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラ ノシル3-スルフェート) -β-D-グルコピラノシド(12b)の調製
乾燥ピリジン(50mL)中の、化合物llb(0.6g、0.46mmo1)および三酸化イオ
ウ−ピリジン複合体(0.6g、6.3mmol)の混合物を、55〜60℃(バス)で2時間
撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。T.l.c.(6:1クロロホルム−メタノール
)は、llbの消失および移動のより遅い単一の生成物の存在を示した。メタノー
ル(5mL)を添加し、そしてこの混合物を15分間撹拌し(過剰の試薬を分解し)
た。次いで、これを濃縮し、そして10:1、次いで6:1のクロロホルム−メタノー
ルを用いた溶離により、シリカゲルカラムで精製した。濃縮で、生成物に対応す
る画分は、固休残渣を与え、これを1:1クロロホルム−メタノール(30mL)に溶
解し、そしてAmberlite IR 120(Na+)カチオン交換樹脂を用いて処理し、そし
て混合物を室温で1時間撹拌した。次いでこれを濾過し、そして蒸発乾固して、
非結晶性固体として12b(0.58G、89%)を与えた:[α]D-5.1°(c,1.8、1:1
クロロホルム−メタノール):陽イオンLSIMS:1433(M+Na)+、1411.1(M+H)+
、陰イオンLSIMS:1563.9(M+mNBA)-、1386.7(M-Na)-。実施例10 2-(トリメチルシリル)エチル2,6-ジ-0-ベンゾイル-3-0-(2,3,4-トリ-0-ベン ジル-α-L-フコピラノシル)-4-0-(ソジウム4-0-アセチル-2,6-ジ-0-ベンゾイ ル-β-D-ガラクトピラノシル 3-スルフェート)-β-D-グルコピラノシド(12a) の調製
乾燥ピリジン(25mL)中の、化合物lla(0.45g、0.39mmol)および三酸化イオ
ウ−ピリジン複合体(0.45g、4.7mmol)の混合物を、55〜60℃で2時間撹拌し、
次いで、室温で1晩撹拌した。上記と同様の方法で処理および精製した後、非結
晶性固体として化合物12a(0.46g、95.8%)を得た;[α]D+2.2°(c,1.5、1:
1クロロホルム−メタノール);陽イオンLSIMS:1442.6(M+Na)+、1341.1(M+
NaS03)-、陰イオンLSIMS:1395.5(M-Na)-。実施例11 0-α-L-フコピラノシル-(1→3)-0-[ソジウム β-D-ガラクトピラノシル3-ス ルフェート-(1→4)]-D-グルコピラノース(13b)の調製
触媒量のナトリウムメトキシドを含有するメタノール(50mL)中の化合物12b
(0.58g)を、45〜50で1晩撹拌した。T.l.c.(13:6:1クロロホルム−メタノー
ル−水)は、移動のより遅い単一の生成物の存在を示した。室温まで冷却した後
、この混合物が中性になるまで(pH試験紙)、Amberlite IR 120(H+)カチオン
交換樹脂を添加した。次いで、この混合物を、Amberlite IR 120(Na+)カチオ
ン交換樹脂を含むフラスコ中に直接濾過し、そして混合物を45分間撹拌した。次
いで、これを濃縮し、そしてヘキサン−エーテル混合物で繰り返し抽出して安息
香酸メチルを除去した。そのようにして得られた、部分的に保護された中間体(
0.38g)は、充分に純粋てあり、次工程
で直接用いた;陰イオンLSIMS:928.1(M-Na)-。一部分(0.35g)を、さらに精
製せずに、パラジウム炭素10%(0.35g)を含有する、80%メタノール水溶液(3
0mL)に加えた。この混合物を、室温で1晩、H2のわずかな過圧下で撹拌した。
このときt.1.c.(5:4:1または13:6:1クロロホルム−メタノール−水)は、移動
のより遅い生成物の存在を、痕跡量の、移動のより速い数種の夾雑物(恐らく、
不完全な加水分解による)と共に示した。この混合物を、直接、Amberlite IR 1
20(Na+)カチオン交換樹脂上に濾過し(Celite床)、そして固体をメタノール
水溶液で徹底的に洗浄した。樹脂と共に1時間撹拌した後、混合物を濾過し、そ
して濃縮して小容量にし、これをシリカゲルカラムにかけ、そして5:4:1クロロ
ホルム−メタノール−水を用いて溶出した。生成物に対応する画分をプールし、
濃縮して小容量にし、そしてAmberlite IR 120(Na+)カチオン交換樹脂を用い
て処理した。樹脂を濾去し、そして水で洗浄し、そして濾液および洗浄液を合わ
せて、再濾過し(0.2μM酢酸セルロースシリンジフィルター)、そして凍結乾燥
して13bを得た(183mg、84.3%;[α]D-20.5°(c,0.6、水)。
実施例12 2-(トリメチルシリル)エチル0-α-L-フコピラノシルー(1→3)-0-[ソジウム β-D-ガラクトピラノシル3-スルフェート-(1→4)]-β-D-グルコピラノシド (13a)の調製
化合物12a(0.45g)を、正確に10について記載した通りにして、メタノール性
ナトリウムメトキシド(50ml)中て0-脱アセチル化し、対応する、部分的にベン
ジル化された中間体(0.29g)を得た。この中間体は、陽イオンLSIMS:983.9(M
+Na)+、882.1(M-NaS03)、陰イオンLSIMS:938.0(M-Na)-を示した。この化
合物(0.24g)を、さらに精製せずに、80%メタノール水溶液(30mL)中、パラ
ジウム炭素10%(0.24g)の存在下で、触媒的加水分解に供し、次いで上記と類
似の方法で処理して、白色の綿毛状物質として化合物13a(125mg、 72.7%)を
与えた;
実施例13 多価リガンド、N,6N,6N'トリス(20)Lys-Tyr-Lysの調製
実施例12で調製した化合物13aまたは13bを、ペプチドLys-Tyr-Lysに誘導体化
して、ペプチドの2つのε-アミノリジン基およびα-アミノN末端において誘導
体化された、3価の複合体を得る。この3価の化合物を得るために、100mMの炭
酸ナトリウム(pH9)中の2mMのペプチドLys-Tyr-Lys 50μl(100
nmol)を、200mMの20 5μl(1mmol)を含む小さいエッペンドルフチューブに
入れ、そして試料を約30分間スピードバック(SpeedVac)中て蒸発乾固する。
蒸発乾固後、100mMの炭酸ナトリウム(pH9)中の800mMのNaCN・BH3 50μl(再
結晶化、40μmol)を添加し、そして混合物を55℃で48時間インキュベートする
。インキュベートして得られた混合物を、GPCペプチドHPLCサイジングカラムに
かけて、画分を収集し、そしてBCAタンパク質アッセイによってタンパク質含量
をアッセイする。タンパク質含有画分をプールし、凍結乾燥し、そして質量分析
を行う。
結果は、化合物13aまたは13bを1、2、または3個含む、誘導体化されたペプ
チドの生成を示す。
この3価誘導体は、Lee,R.ら、Biochem(1984) 23:4255に記載のように行っ
たアッセイにおいて、肝細胞に対するラクトースの結合を阻害することに、特に
効果的である。実施例14 ラクトース誘導体のセレクチンリガンド特性
化合物13aまたは13bを、EおよびLセレクチンに結合する能力について試験し
た。用いたELISAアッセイは、ウェル当たり25ピコモルの2,3 sLex糖脂質を、マ
イクロタイターウェル上にエバポレートし、次いで過剰分を水で洗浄することか
らなる。ウェルを、5%のBSAを用いて室温で1時間ブロックし、次いで1mM
のCaを含有するPBSで洗浄する。プレートがブロッ
クされている間に、1%BSA-PBS(1mM Ca)て1:1500に希釈した、ビオチン標識
ヤギF(ab')2IgG(Fc特異性)およびストレプトアビジン−アルカリ性ホスフ
ァターゼを、200ng/mLでE-またはL-セレクチン-IgGキメラ(L9I-10)と結合させ
、37℃で15分間インキュベートして複合体を形成させる。これにより、可溶性「
多価」レセプターが与えられる。化合物13aおよび13bを、1.5〜5.0mMの範囲の最
終濃度で可溶性レセプターに添加し、そして37℃で45分間反応させた。次いで、
この溶液を、ブロックした後洗浄しておいたマイクロタイターウェルに入れ、そ
してプレートを37℃で45分間インキュベートして、可溶性レセプターを既知の天
然リガンド、2,3 sLex糖脂質に結合させた。陽性コントロールは、マイクロタイ
ターウェルにエバポレートされたリガンドのみと反応した、可溶性「多価性」レ
セプターにより生成されたシグナルであった。これを「100%結合」とみなした
。それ以前にインヒビターと反応したレセプターによって生成されたシグナルは
、陽性コントロールにより生成されたシグナルで割り、100を掛けてインヒビタ
ー存在下で結合したレセプター%を計算した。この反数が、阻害率%である。
化合物13aおよび13bが両方とも、Eセレクチンの2,3 sLex糖脂質への結合を阻
害することは、表1から明らかである。試験した3つの濃度にわたって、13bは
より良好なインヒビターであり、最大の差異は明らかに濃度5mMであった。13a
の48%に比較して、この濃度では、13bは、82.5%の阻害率を示
した。
化合物13aおよび13bが両方とも、Lセレクチンの2,3 sLex糖脂質への結合を阻
害することは、表2から明らかである。しかし、この場合の差異は、Eセレクチ
ンへの結合の阻害率%における差異よりもかなり大きかった。例えば、1.25mMで
、13bは、驚くべきことに90%の阻害率を示した。2mMおよび5mMで100%の阻害
率が観測された。顕著に対照的に、13bは、1.25mMでたった13%の阻害率および5
mMで47%の最大阻害率を示した。
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(72)発明者 エイサ,ダーウィン
アメリカ合衆国 ミシガン 49053,ゲー
ルスバーグ,サウス 35ティーエイチ ス
トリート 3608
(72)発明者 ムッサー,ジョン エイチ.
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94804,
サン カルロス,マイケル コート 23
(72)発明者 ナッシュド,ミナ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94501,
アラメダ,ナンバー3,セントラル アベ
ニュー 600