JPH0838535A - 変形性膝関節症患者用の履物 - Google Patents

変形性膝関節症患者用の履物

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JPH0838535A
JPH0838535A JP14509094A JP14509094A JPH0838535A JP H0838535 A JPH0838535 A JP H0838535A JP 14509094 A JP14509094 A JP 14509094A JP 14509094 A JP14509094 A JP 14509094A JP H0838535 A JPH0838535 A JP H0838535A
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heel
shoe
footwear
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knee
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Sachiko Kosaka
祥子 向阪
Mitsuko Kosaka
光子 向阪
Kumiko Isaka
くみ子 井阪
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    • AHUMAN NECESSITIES
    • A43FOOTWEAR
    • A43BCHARACTERISTIC FEATURES OF FOOTWEAR; PARTS OF FOOTWEAR
    • A43B13/00Soles; Sole-and-heel integral units
    • A43B13/14Soles; Sole-and-heel integral units characterised by the constructive form
    • A43B13/143Soles; Sole-and-heel integral units characterised by the constructive form provided with wedged, concave or convex end portions, e.g. for improving roll-off of the foot
    • A43B13/145Convex portions, e.g. with a bump or projection, e.g. 'Masai' type shoes

Abstract

(57)【要約】 【目的】 変形性膝関節症患者に罹患した患者に用いる
履物として、特に上記患者用の履物として十分な機能を
備えるほかに、奇妙な外観とならないものを提供する。 【構成】 踵部に荷重を受けた状態で、中足骨頭の位置
する靴底下面と靴底のヒール領域の下面前端とを結ぶ線
が、接地したヒール領域下面後端とヒール領域下面前端
とを結ぶ水平線の延長線に対して、角度をもって水平線
から浮き上がるように、上記ヒール領域における靴底上
面から地面までの厚さが、ヒール領域前部に比べてヒー
ル領域後部が薄くなるように形成され、かつ、このヒー
ル領域後部はヒトの足に接する面の踵部の高さが荷重を
受けた時降下するような衝撃吸収機構を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は変形性膝関節症患者に用
いる靴において、特に、上記患者用の靴として十分な機
能を備えるほかに、そのような機能に加えて、その靴の
機能を得るために外観が奇妙になることを防止し、上述
の機能を有しながら、一見して普通の靴と変わらない外
観を有する変形性膝関節症患者用の靴に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】膝関節の疾患に効果があると称される靴
としては、従来例1として図18に示すような極端にヒ
ールの低い靴がある。この靴の説明によれば、脚の筋力
が極端に低下して独特な歩行を行う患者に効果があると
述べられている。また、その他の例では従来例2として
図19のような靴があり、筋肉鍛練用として売られてい
る。
【0003】また、従来例3として図示してはいない
が、一般にロッカーシューズと呼ばれ、底面が円弧状に
なっていて揺りかご状に前後に揺れる周知のものがあっ
た。
【0004】また、以上の従来例よりも機能的に優秀な
ものを得ようとして、本発明と同一発明者による特開平
2−107243号の先願がある。この先願においては
次の理論が述べられている。
【0005】ヒトが歩行して踵が着地を開始する時に
は、図20(a) のように踵−足裏を結ぶ線は地面に対し
て角度θを有して着地するため、踵骨が着地の衝撃で上
方(矢印A方向)に突き上げられて踝(くるぶし)を中
心とする回転力を生じ、図20(b)のように膝を曲げ
る(矢印Bの方向にブレる)ように作用する。このよう
に膝が踵で押し上げられて一歩一歩曲げられる現象は、
一面では人類に与えられた“天然の衝撃吸収機能”であ
るということができる。矢印Aの力に抵抗する力は踵の
バネであり、矢印Bの力に抵抗する力は膝のバネであ
る。しかし他面では、このバネが受ける力(矢印A、矢
印B)は膝関節症患者にとっては膝関節を曲げるような
悪い方向に作用する。以下この現象(矢印A、矢印Bの
力)を“踵の膝曲げ作用”ということにする。
【0006】その膝の曲がり(即ち、ブレ)が一歩一歩
繰り返されることによって膝関節症患者の膝関節の摩耗
を招く。それを防ぐための解決策として、本発明と同一
出願人による先願(特開平2−107243号)では、
図17に示すように、実質的なヒール後端Eを鉛直線χ
−χに近付けて設け、それよりも後方の領域を切り欠い
て形成するものである。それによって、ヒトが歩行して
踵が着地開始する時に、踵骨が着地の衝撃で図20のよ
うに上方(矢印A方向)に突き上げられることを防ぎ、
それによって膝が矢印Bの方向に曲げられることを防止
する。このように膝を曲げずに歩行し、このように膝の
曲がりが一歩一歩繰り返されることなく着地することが
できれば、膝関節の疾患は治癒され、少なくとも疾患の
進行を阻止し得るものであり、このように膝関節を無屈
曲状態に保ちつつ着地するようにすることによって得ら
れる効果を“膝関節無屈曲効果”という。このように従
来は、上記出願の発明者らが上記理論に基づいて発明し
た膝関節症患者用の靴があったものである。
【0007】
【発明を解決しようとする課題】上記説明した従来の靴
は以下のような問題点を有する。即ち、従来例1として
図18に示すように、靴底102のヒールが極端に低い
靴があり、この靴の説明によれば、極端に脚の筋力が低
下して独特な歩行を行う患者に効果があると述べられて
いる。けれども、そのような独特な患者を除けばこの靴
は一般患者には不適当である。その上に、このような靴
では、後述の図2(b) に示される“第3の状態”を欠い
てアキレス腱が引っ張られる習性を生じ、これを常用す
ると、連用によってアキレス腱が延びて、引っ張り効果
(後述の“膝伸ばし効果”)が減退するだけでなく、実
際に歩いてみると歩行困難である。またその上、上記習
性のためにヒール領域後部は所期の目的を達成するのに
十分な角度に設定することはできず、小さい角度で我慢
せざるを得ないという問題があった。
【0008】また、従来例2として図19に示すような
靴があり、これは筋肉鍛練用として売られている。しか
るに、これは形状が異常であるとともに、膝を伸ばす方
向に力が無理に作用するので筋肉の鍛練にはなるが、反
面では病弱者には使用禁止の注意書きがなされているも
のである。即ち、これは健康な人の鍛練を目的としてい
て、実地に履いてみても、病弱者にはその着用は無理で
あるという問題があった。
【0009】また、従来例3として図示しない周知のロ
ッカーシューズと呼ばれる靴底が円弧状になったものが
あるが、この系統の靴はくるぶし部分を保護する効用が
あるが、一方では接地点が前後に変わる(後述の支点の
移動による)ため、前後に不安定であって、本発明の対
象である変形性膝関節症患者の膝にとっては悪影響を及
ぼすという問題があった。
【0010】また、本発明と同一発明者による上記の先
願の靴では、図17で説明するように、実質的なヒール
下面後端Eを鉛直線χ−χに近付けて設け、このヒール
下面後端Eから後方を図のように斜線A−Aより出ない
ように切り欠くものであるので、この切り欠いた斜面は
長い斜面になり、ヒトの歩行の歩幅を一定に保つために
は斜面の傾斜角ρは小さくできないため、ヒールは当然
に高くなる。もし仮に、ヒールが高くなるのを避ける目
的で傾斜角ρを小さく(例えば15度に)すると、図2
0(a) に示した角度θのような爪先上がりの着地の場合
や緩い下り坂の場合に、ヒール後部が前記矢印Aの直撃
を受けて患部を悪化させる。従って、爪先上がりの着地
や下り坂を降りる場合を考慮して角度ρを余分に大きく
する必要(例えば30度)が生じ、ヒールが高くなるこ
とは避けられない。このような理由でヒールが高くなる
と踵骨下端bが後方に出張る。
【0011】このように、踵骨が後方に出張る上記現象
を図にそって説明すると、従来の一般のハイヒール靴
(図21)と極端なローヒール靴(図22)とを比較す
るとき、ヒールが高くなると踵骨の下端aは踝(くるぶ
し)50を軸にして円弧103を描いて後方に出張る。
この踵骨下端aの後方突出はハイヒールの一般的な特徴
であり、ローヒールの場合の踵骨下端cとは大きく異な
る。このように一般のハイヒール靴における踵骨下端a
がローヒール靴の場合の踵骨下端cに比べて後方に出張
る現象を以下“踵の後方突出現象”という。
【0012】図23は前述の“踵の後方突出現象”と踵
の高さとの関係を示す。図において踵骨下端(くるぶし
から最も遠い踵骨端)a、bまたはcが鉛直線χ−χか
ら遠ざかる距離はヒールの高さの関数である。すなわ
ち、踝(くるぶし)50を回転軸としてこの軸から踵骨
下端a、bまたはcに達する長さR1、R2、R3を斜
辺とし、χ−χを底辺とすると、円弧103に沿って位
置する点a、bまたはcが鉛直線χ−χから遠ざかる距
離Dは、 D = R sinα の関係になり、ヒールが高くなれば距離Dは増加する。
従って距離Dはヒールの高さに応じてD1、D2、D3
と変化する。この距離Dは回転軸50に与える回転モー
メントと考えてもよい。従ってハイヒールの場合の位置
aは図23、図21に示されるようになり、極端に低い
ヒールの場合の位置c(図23、図22)と比べて回転
軸50に与える回転力の大きさは大きく異なり、前述の
悪い作用、“踵の膝曲げ作用”はヒールの高さの増加に
対応して増加する。残念ながら図17に示した先願も一
種のハイヒールであるから、一般のハイヒール(図2
1)に示されるように、この図17の先願でも踵骨下端
bが後方に多く出張り、その出張りによって、図20で
説明した上方(矢印A)に突き上げられる現象が増加す
るが、前述した角度ρ(図17)を確保するためにはヒ
ールが高くなって、上述の図23に示すbの位置に踵骨
端が位置し、ヒールが高くなれば上述の欠点“踵の後方
突出現象”が影響することは避けられないという問題が
あった。
【0013】また、上記図17、図18および図19の
靴は、特別の機能をもたせることにより、どれも外観の
奇妙な靴になってしまうという問題があった。
【0014】また、膝関節症の一例として内反膝(O
脚、ガニ股)および外反膝(X脚)などの症状があり、
この症状を和らげ、あるいは矯正するために靴底内部に
傾斜を設けて、特に保護したい関節の内側(あるいは外
側)を低く保つ手法が用いられているが、このように靴
底に傾斜した面を形成するという手段だけでは変形性膝
関節症の治癒率は低いものであり、現状では多くの患者
の悩みを救っていないという問題があった。
【0015】本発明は、上記のような課題を解決するた
めになされたもので、変形性膝関節症の患者にとって、
より容易な歩行を可能にし、かつ奇異な外観とならな
い、変形性膝関節症患者用の靴を提供することを目的と
する。
【0016】
【課題を解決するための手段】この発明に係る変形性膝
関節症患者用の靴は、甲皮、靴底よりなり、その踵部に
荷重を受けた状態で、上記靴底の第2中足骨頭の位置す
る靴底下面と上記靴底のヒール領域の下面前端とを結ぶ
線が、接地したヒール領域下面後端とヒール領域下面前
端とを結ぶ水平線の延長線に対して、角度をもって水平
線から浮き上がるように、上記ヒール領域における靴底
上面から地面までの厚さが、ヒール領域前部に比べてヒ
ール領域後部が薄くなるように形成し、かつ、このヒー
ル領域後部はヒトの足に接する面の踵部の高さが荷重を
受けた時降下することによる衝撃吸収機構を備えている
ものである。
【0017】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記第2中足骨頭が位置する靴底下面
が地面から浮き上がる角度が、該靴の踵部が荷重70k
gを受けた状態で少なくとも5度であるものである。
【0018】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記衝撃吸収機構は、ヒトの踵部に位
置し踵部の荷重を受けて容易に弾性変形する少なくとも
一部が弾性材よりなる踵部担持弾性部材または靴内に内
部部材を有し、それらの弾性変形によってヒトの踵部に
接する上記内部部材の表面が降下するものである。
【0019】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記靴底およびヒール領域は、上記ヒ
ール領域の前端に位置する下方支点と、この下方支点の
上方に位置する水平部材とによって天秤部材を形成して
なるものである。
【0020】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記天秤部材は、中足骨頭の位置と踵
部の位置とで体重を受けて上記下方支点を支点として体
重を天秤状に担持するように、その水平方向の長さは実
質的に踵骨の位置から中足骨頭の位置に達するものであ
る。
【0021】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記下方支点の位置を、靴本体の後端
から第2中足骨に沿って測って、靴本体の全長に対して
41%〜65%の距離に設置してなるものである。
【0022】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記下方支点は靴底底面にその底面を
横切る稜線を形成し、その稜線のヒール後端からの距離
は、第2中足骨頭と踵骨中心とを結ぶ線に平行に測って
小指側の稜線が拇指側の稜線に比べて前進させてなるも
のである。
【0023】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記第2中足骨頭の位置する靴底下面
と上記下方支点との間の靴底底面の形状を、負荷時に側
方から見て実質的に直線状又は上方に凹んだ形状に形成
してなるものである。
【0024】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記ヒール領域下面後端と上記下方支
点との間の靴底底面の形状を、負荷時に側方から見て実
質的に直線状又は上方に凹んだ形状に形成してなるもの
である。
【0025】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記ヒトの踵に接する面の有する上記
衝撃吸収機構は、ヒトが歩行するときに踵が地面から受
ける反力で膝が前方に曲がって衝撃を吸収する、ヒトの
有する膝の衝撃吸収機能に代わって、またはその機能を
越えて、衝撃吸収を達成するものである。
【0026】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記踵部担持弾性部材の弾性力は、上
記天秤部材を形成する各部材に比べて容易に弾性変形で
きるものとしたものである。
【0027】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記天秤部材と上記踵部担持弾性部材
との弾性力の差を、気泡、穿孔、空所および凹所の形状
の大小の差または個数の差と、断面積の差または材質の
弾性の差のうち少なくとも一者によって形成してなるも
のである。
【0028】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記衝撃吸収機構は、ヒトの踵部分に
接する面が荷重70kgを受けた場合に靴内に設けた内
部部材または上記踵部担持弾性部材の弾性変形によって
衝撃を吸収し、上記ヒトの踵部分の下端に接する面の高
さが少なくとも靴全長の2%の降下を生じるものであ
る。
【0029】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記衝撃吸収機構は、踵部が荷重70
kgを受けた場合に上記踵部担持弾性部材の弾性変形によ
って衝撃を吸収し、靴底上面後端の高さが少なくとも靴
全体の0.5%の降下を生じるものである。
【0030】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記衝撃吸収機構は、その衝撃吸収機
構の少なくとも一部を衝撃吸収材で形成してなるもので
ある。
【0031】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、荷重時において、膝関節の罹患部分が
低くなるように、後方から見て左から右に低くなる、ま
たは右から左に低くなる傾斜面を、靴本体内部の底面に
形成してなるものである。
【0032】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記傾斜面を、靴本体の内側に設けた
弾性材からなる内部部材に形成してなるものである。
【0033】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記傾斜面は、該傾斜面のヒトの踵を
担持する部分を、他の領域に比べて弾性変形し易く形成
してなるものである。
【0034】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記傾斜面の部分的な弾性力の差を、
気泡、穿孔、空所および凹所の形状の大小の差または個
数の差、または材質の弾性の差のうち少なくとも一者に
よって形成してなるものである。
【0035】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記踵部担持弾性部材は、上記傾斜面
の低い側を担持する部分が、上記傾斜面の高い側を担持
する部分に比べて降下し易いように、上記低い側担持部
分と上記高い側担持部分との弾性力に差を設けてなるも
のである。
【0036】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記踵部担持弾性部材の部分的な弾性
力の差を、気泡、穿孔、空所および凹所の形状の大小の
差または個数の差と、断面積の差または材質の弾性の差
のうち少なくとも一者によって形成してなるものであ
る。
【0037】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、踵部分の甲皮は、上記傾斜面の低い側
へ向けてヒトの足が滑らないように、傾斜面の低い側の
甲皮が高い側の甲皮に比べて強化材で強化されているも
のである。
【0038】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記踵部担持弾性部材の後方に該踵部
担持弾性部材よりも弾性変形し易くした装飾的ヒール形
状形成部材を有してなるものである。
【0039】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記踵部担持弾性部材の下面後端の位
置は、靴の後端から少なくとも靴全長の5%の長さの位
置としたものである。
【0040】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、靴底上面と接地面との間に形成される
上記天秤部材、上記踵部担持弾性部材、上記装飾的ヒー
ル形状形成部材の各部材の有する空間および各部材相互
間の空間を、その弾性力が上記各部材よりも弱い弾性材
で充填してなるものである。
【0041】またこの発明は、上記変形性膝関節症患者
用の靴において、上記浮き上がった第2中足骨頭の位置
する靴底底面に、容易に弾性変形する弾性材からなる装
飾的靴底形状形成部材を有してなるものである。
【0042】
【作用】この発明においては、靴本体は、甲皮、靴底よ
りなり、その踵部に荷重を受けた状態で、上記靴底の第
2中足骨頭の位置する靴底下面と上記靴底のヒール領域
の下面前端とを結ぶ線が、接地したヒール領域下面後端
とヒール領域下面前端とを結ぶ水平線の延長線に対し
て、角度をもって水平線から浮き上がるように、上記ヒ
ール領域における靴底上面から地面までの厚さが、ヒー
ル領域前部に比べてヒール領域後部が薄くなるように形
成し、かつヒール領域後部はヒトの足に接する面の踵部
の高さが荷重を受けた時降下するような衝撃吸収機構を
備えているから、着地時に中足骨頭部の位置する靴底下
面が水平線から浮き上がることによって得られる“鉛直
線に接近した支持効果”が“踵の後方突出現象”を防止
でき、着地の瞬間に踵骨が押し上げられて膝が曲げられ
る“踵の膝曲げ作用”を低減できる。またその作用によ
って必然的に生じる、人類が本来持っている“天然の衝
撃吸収機能”の喪失を補償するために、衝撃吸収機構を
備えているから、上記“天然の衝撃吸収機能”の喪失を
補償でき、またこの踵部の降下によって爪先がさらに浮
き上がり、“膝伸ばし効果”を発生させることができ
る。
【0043】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記第2中足骨頭が位置する
靴底下面が地面から浮き上がる角度が、該靴の踵部が荷
重70kgを受けた状態で少なくとも5度であるものと
したから、上記“踵の膝曲げ作用”を低減することがで
きる。
【0044】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、ヒトの
踵部に位置し踵部の荷重を受けて容易に弾性変形する少
なくとも一部が弾性材よりなる踵部担持弾性部材または
靴内に内部部材を有し、それらの弾性変形によってヒト
の踵部に接する上記内部部材の表面が降下するものであ
るから、“天然の衝撃吸収機能”を補償することができ
る。
【0045】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記靴底およびヒール領域
は、上記ヒール領域の前端に位置する下方支点と、この
下方支点の上方に位置する水平部材とによって天秤部材
を形成したから、体重を天秤状に支持し、小さな負担で
体重の移動を行うことができる。
【0046】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記天秤部材は、中足骨頭の
位置と踵部の位置とで体重を受けて上記下方支点を支点
として体重を天秤状に担持するように、その水平方向の
長さは、実質的に踵骨の位置から中足骨頭の位置に達す
る長さとしたから、体重を天秤状に支持し、上記作用を
確実なものとすることができる。
【0047】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記下方支点の位置を、靴本
体の後端から第2中足骨に沿って測って、靴本体の全長
に対して41%〜65%の距離に設置したから、上記天
秤部材が天秤機能を持ち、上記作用をより効果的にする
ことができる。
【0048】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記下方支点は靴底底面にそ
の底面を横切る稜線を形成し、その稜線のヒール後端か
らの距離は、第2中足骨頭と踵骨中心とを結ぶ線に平行
に測って小指側の稜線を拇指側の稜線に比べて前進させ
たものとしたから、特にO脚などの症状を矯正すること
ができる。
【0049】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記第2中足骨頭の位置する
靴底下面と上記下方支点との間の靴底底面の形状を、負
荷時に側方から見て実質的に直線状又は上方に凹んだ形
状に形成したから、体重の移動中に上記下方支点が移動
するのを防ぐことができる。
【0050】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記ヒール領域下面後端と上
記下方支点との間の靴底底面の形状を、負荷時に側方か
ら見て実質的に直線状又は上方に凹んだ形状に形成した
から、上記浮き上がる角度を前後に揺れないように正確
に保持することができる。
【0051】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記ヒトの踵に接する面の有
する上記衝撃吸収機構は、ヒトが歩行するときに踵が地
面から受ける反力で膝が前方に曲がって衝撃を吸収す
る、ヒトの有する膝の衝撃吸収機能に代わって、または
その機能を越えて衝撃吸収を達成するものであるから、
“天然の衝撃吸収機能の喪失”を十分に補償することが
できる。
【0052】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の弾性
力は、上記天秤部材を形成する各部材に比べて容易に弾
性変形できるものとしたから、上記衝撃吸収機構と体重
の担持機構とを得ることができる。
【0053】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記天秤部材と上記踵部担持
弾性部材との弾性力の差を、気泡、穿孔、空所および凹
所の形状の大小の差または個数の差と、断面積の差また
は材質の弾性の差のうち少なくとも一者によって形成し
たから、上記衝撃吸収機構と体重の担持機構とを得るこ
とができる。
【0054】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、ヒトの
踵部分に接する面が荷重70kgを受けた場合に靴内に
設けた内部部材または上記踵部担持弾性部材の弾性変形
によって衝撃を吸収し、上記ヒトの踵部分の下端に接す
る面の高さが少なくとも靴全長の2%の降下を生じるも
のとしたから、上記“天然の衝撃吸収機能の喪失”の補
償を十分に行うことができる。
【0055】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、踵部が
荷重70kgを受けた場合に上記踵部担持弾性部材の弾性
変形によって衝撃を吸収し、靴底上面後端の高さが少な
くとも靴全体の0.5%の降下を生じるから、上記“天
然の衝撃吸収機能の喪失”を補償することができる。
【0056】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、その衝
撃吸収機構の少なくとも一部を衝撃吸収材で形成したか
ら、上記作用に加えて、着地時の初期衝撃を吸収するこ
とができる。
【0057】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、荷重時に、膝関節の罹患部分
が低くなるように、後方から見て左から右に低くなる、
または右から左に低くなる傾斜面を、靴本体内部の底面
に形成したから、関節上下に連接する各骨の軸方向を膝
関節の罹患側を保護する方向へ矯正することができる。
【0058】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記傾斜面を、靴本体の内側
に設けた弾性材からなる内部部材に形成したから、上記
作用に加えて、着地時の衝撃を吸収することができる。
【0059】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記傾斜面は、該傾斜面のヒ
トの踵を担持する部分が他の領域に比べて弾性変形し易
く形成したから、上記作用に加えて着地時の初期衝撃を
吸収することができる。
【0060】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記傾斜面の部分的な弾性力
の差を、気泡、穿孔、空所および凹所の形状の大小の差
または個数の差、または材質の弾性の差のうち少なくと
も一者によって形成したから、上記作用を得るための弾
性力の差を適正に調整することができる。
【0061】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材は、上
記傾斜面の低い側を担持する部分が、上記傾斜面の高い
側を担持する部分に比べて降下し易いように、上記低い
側担持部分と上記高い側担持部分との弾性力に差を設け
たから、傾斜面による膝関節の矯正作用に加えて、その
結果として発生する“ヒールの不均等降下現象”を防止
することができる。
【0062】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の部分
的な弾性力の差は、気泡、穿孔、空所および凹所の形状
の大小の差または個数の差と、断面積の差または材質の
弾性の差のうち少なくとも一者によって形成したから、
上記作用を得るための弾性力の差を適正に調整すること
ができる。
【0063】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、踵部分の甲皮は、上記傾斜面
の低い側へ向けてヒトの足が滑らないように、傾斜面の
低い側の甲皮を高い側の甲皮に比べて強化材で強化した
から、傾斜による踵の滑りを防止することができる。
【0064】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の後方
に該踵部担持弾性部材よりも弾性変形し易くした装飾的
ヒール形状形成部材を有してなるから、上記“鉛直線に
接近した支持効果”を得るための特殊な位置に実質的な
ヒールが位置しているにもかかわらず、ヒールの外観を
通常の靴と同じように見せることができる。
【0065】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の下面
後端の位置は、靴の後端から少なくとも靴全長の5%の
長さの位置としたから、“鉛直線に接近した支持効果”
を得ることができる。
【0066】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、靴底上面と接地面との間に形
成される上記天秤部材、上記踵部担持弾性部材、上記装
飾的ヒール形状形成部材の各部材の有する空間および各
部材相互間の空間を、その弾性力が上記各部材よりも弱
い弾性材で充填したから、底面カバー材の存在にかかわ
らず、外観を整えることができる。
【0067】またこの発明においては、上記変形性膝関
節症患者用の靴において、上記浮き上がった第2中足骨
頭の位置する靴底底面に、容易に弾性変形する弾性材か
らなる装飾的靴底形状形成部材を有してなるから、外観
を整えることができる。
【0068】
【実施例】以下本発明の実施例について説明するが、実
施例1ないし5では靴の形態を持つ実施例をもとに説明
する。また実施例6ないし10では、甲皮(甲被)の後
方部分を有しない履物についての説明を行う。甲被の後
方部分を有しない履物には“つっかけ”“サンダル”等
のような甲被の形態を持つものもあるが、ここでは一例
として、スリッパに近い甲被の形態をもつ実施例をもと
に説明する。
【0069】実施例1.図1、図2(a) (b) (c) は、本
発明の一実施例による膝関節症患者用の靴を履いて、歩
行を行ったときの状態の経過を示す図で、着地から蹴り
出しまでを順番に後述する“第1の状態”から“第4の
状態”とし断面図で示したものである。
【0070】図3(a) 、(b) は本発明の実施例1の靴の
無負荷時を示し、図3(c) は靴底の底面図である。図3
(a) は、図3(c) の鎖線v−v部分の縦断面図であり、
図3(b) は実施例1の靴の外観を示す側面図である。
【0071】図1において、100は靴本体、101は
甲皮、102は靴底、3は靴底前部弾性部材、4はヒー
ルの接地面前端(後述の下方支点)から後方の領域を指
すヒール領域、5は後述の“第2の状態”のとき荷重を
天秤状に支持する支点となる下方支点、6は靴底上面の
中足骨頭部と踵部とにかかる荷重を天秤状に支持する天
秤の役割を果たす水平部材、3aは上記下方支点5と上
記水平部材6とをつなぎヒール領域よりも弾性変形しに
くい材料で形成された支柱部材、7は中足骨頭部の下方
に位置する靴底下面、8は上記水平部材6と支柱部材3
aとをあわせた天秤部材である。9は靴底に形成された
内部部材、20はヒトの踵部、30はヒトの第2中足骨
の頭部、40はヒトの第2中足骨、50はヒトのくるぶ
しの中心、3cは靴底カバー材、4aは実質的なヒール
である踵部担持弾性部材、9aはヒトの踵部が接する位
置の内部部材9の上面、eは踵部担持弾性部材4aの下
面後端を示す。
【0072】底面は底面カバ−材3cによって覆われて
いて断面図のような内部構造は底面から見えないが、説
明の便宜上、後述の下方支点5や後述の踵部担持弾性部
材4aの下面後端eの説明は、底面カバー材3cの存在
を無視して説明する。他の変形例としては底面カバー材
3cの存在を省略して下方支点5が直接地面に接しても
よく、底面カバー材3cの有無は本質的な機能に関係し
ない。ここで底面カバー材は靴底前部弾性部材3およ
び、または後述の踵部担持弾性部材4aと一体に形成さ
れていてもよい。もし底面カバー材3cを省略する場合
には内部構造が露呈するので、実施例5で後述するよう
に、靴底上面と接地面との間に形成される上記天秤部材
8、上記踵部担持弾性部材4a、後述の装飾的ヒール形
状形成部材4bの各部材の有する空間および各部材相互
間の空間を、その弾性力が上記各部材よりも弱い弾性材
で充填して外形を整えてもよい。
【0073】図1は踵部に荷重を受けた着地開始状態を
示す断面図である。内部部材9のヒトの踵の下端に荷重
として70kgを受けた状態で、靴全長に対して、少な
くとも2%以上、この実施例では5%降下するように形
成されている。また、接地したヒール領域の下面後端と
ヒール領域下面前端5とを結ぶ線の延長線(水平線)に
対して、上記ヒール領域下面前端5と中足骨頭部30の
下方に位置する靴底下面7とを結ぶ線が浮き上がり角度
12度をもって水平線から浮き上がっている。これはヒ
ール領域4における靴底上面から地面までの厚さの差に
起因する。すなわちヒール領域下面前端(下方支点5)
付近の厚さに比べてヒール領域後部が薄くなるように形
成されているためである。以上のように踵部分に荷重を
受けて中足骨頭部が浮き上がった図1のような状態を
“第1の状態”という。
【0074】図1のように荷重時に上記水平線に対して
上記第2中足骨頭部が浮き上がる角度は、踵部が荷重を
受けた状態で、少なくとも5度、好ましくは6度、7度
以上に設定する。けれども一層大きいことが好ましい。
この実施例では浮き上がり角度は12度に設定してあ
る。実験によれば、8度、10度、15度、20度など
に設定しても、角度の増大に比例してデザインが悪くな
る点を除いて、機能的には良好であった。
【0075】本実施例では、上記第2中足骨頭部の浮き
上がり角度の増加によって、図1および図23に示すく
るぶしと、踵骨下端dとを結ぶ線(斜辺)R4が前記χ
−χに近付き、前記の“鉛直線に接近した支持効果”に
よって“膝関節の無屈曲効果”が得られ、さらに後述の
“膝伸ばし効果”も生じて膝関節の磨耗を防止し、後述
の〔効果1〕で述べる効果を生じる。
【0076】本実施例での実験では、浮き上がり角度は
12度に設定してある。角度が小さ過ぎると効果が劣
り、角度が大きすぎると効果は大きいがデザイン的に悪
くなる。本件の出願時に20人の患者に試みた結果を基
にしているが、患者の歩行癖はまちまちであり病状にも
軽重があるので、どのような患者、どのような病状を対
象にするかによって、それぞれの角度を選択するものと
する。
【0077】また、本発明の実施例では、“膝関節無屈
曲効果”を求めて踵骨下端dを鉛直線χ−χに近付けて
足指が地面から浮き上がるようにしたので、残念ながら
反面では〔従来の技術〕の欄で述べた矢印Aや矢印Bの
バネを失い、“天然の衝撃吸収機能”を喪失するため、
それを補償するように、ヒール領域4は踵部でヒトの踵
の下端に接する面の高さが上記荷重で降下するように設
計されていて、着地開始時の衝撃を吸収する。その衝撃
吸収機構は特別なものであり、スポーツ靴などの衝撃吸
収とは全く違った機能が求められる。すなわち患者は膝
に疾患を持ち、痛みに耐えているので静かに歩き、スポ
ーツをする人に比べて、ほとんど静止荷重に近い荷重で
着地する。このような弱い患者を積極的に保護し、一歩
一歩に痛みを訴えて苦しむ患者に対して、健康な人より
も余分に優しく着地できるように、十分な衝撃吸収機構
を与えることが好ましい。これに対してスポーツ靴など
では速度の加わった加速度荷重がかかり、ジャンプ時な
どには例えば体重の4倍などの強い荷重をうける。スポ
ーツ靴の衝撃吸収機構は、そのような強い力で弾性変形
する構造に設計されているので、患者の静かな着地では
十分には弾性変形しない。
【0078】このように静かな着地でも弾性変形させる
ようにできる構成について、以下に説明する。即ち、上
記踵部担持弾性部材4aを弾性変形し易い材料で形成
し、荷重によって図3(a) の状態から図1の状態に変形
させる。弾性変形し易い材料として硬度55のE.V.
A.(エチレンビニルアクリル)樹脂と呼ばれる柔かい
発泡材を用いた。どのように柔かいかを試すために、こ
の素材の10mm×10mm×10mmを採取し、指と
指の間に挿んで押してみると、簡単に4分の1に圧縮で
きた。これは靴素材としては異例の柔かさである。
【0079】この材料の弾性をスポーツ靴のヒール領域
の弾性と比べてみると、体重の4倍でも耐えるスポーツ
靴のヒールは、決してこのように弱い静止荷重では簡単
に弾性変形しないのが原則である。本発明では着地初期
の衝撃吸収に重要な役割を持っている踵部担持弾性部材
4aが地面と接触し始めるのは、未だ体重がかからない
対地接触の瞬間であって、本格的に体重が負荷される頃
には体重の担持は下方支点5(換言すれば天秤部材8)
に移り、踵部担持弾性部材4aの負担は軽減されるの
で、踵部担持弾性部材4aは靴の常識に反して上述のよ
うな異常に柔らかい素材で形成することができるのであ
る。
【0080】また、靴本体内部に設けた内部部材9も弾
性材で形成されているときは、ヒトの踵部を受ける表面
9aも若干凹んで衝撃吸収に役立つ。内部部材9の厚さ
は踵部担持弾性部材4aほど厚くないので衝撃吸収機能
は踵部担持弾性部材ほど大きくないが、それでも後述の
図10に示すように、斜面の高い側では、かなり厚いの
で、衝撃吸収には有効である。このように、図1〜2に
示す実施例では内部部材9を弾性材で形成した例を示し
てあり、ヒトの足の降下は、踵の下端に位置する内部部
材9の内表面9aでの降下をもって計測する。なお後述
の各実施例を通じて、衝撃吸収のための弾性材は、必要
があればその一部を衝撃吸収材に代えてもよい。
【0081】内部部材9の表面の踵部9aは、その衝撃
吸収機構が前述の“人類のもつ天然の衝撃吸収機能”の
喪失を補償できることが望ましいので、踵部担持部材4
aの材質は十分に弾性変形できるものを使用し、例えば
内部部材9の踵骨部の表面9aが受ける静止荷重が70
kgの場合に靴の全長を250mmとして本実施例では
降下寸法を12.5mmに設定してあり、これは靴全長
の5%である。降下寸法を靴全長の2%、3%、4%、
5%と試みた。降下寸法が大きいほど衝撃吸収機能が良
いので、上限には10%くらいまでは制限はないが、少
なくとも2%以上、できれば3%以上、好ましくは4%
以上、この実施例の5%ではほぼ満足な衝撃吸収が得ら
れると患者らは言う。
【0082】本件の出願時に20人の患者に試みた結果
を基にしているが、患者の歩行癖はまちまちであり病状
にも軽重があるので、どのような患者、どのような病状
を対象にするかによって、それぞれの降下寸法を選択す
るものとする。
【0083】上述のように内部部材9が弾性材で形成さ
れることは衝撃吸収に大きく貢献する。そこで実施例と
しては当然ながら内部部材9を弾性材で構成し、降下の
数値も踵部の内部部材9aの表面の降下値で示した。と
ころが、内部部材9は特別な目的で特別な形状を有する
取替え可能な挿入材であり、流通段階ではこの内部部材
9を取替え可能な状態で別売りに扱われる場合も生じ
る。そのように内部部材を欠いて流通する場合には、降
下機能を踵骨部の内部部材の表面の降下値で示すことが
出来ないので、代わって靴底上面後端で計測してもよ
い。その場合には内部部材9自体の圧縮変形分を欠くの
で、それだけ数値が小さくなる。数値は大きいほど衝撃
吸収機能が良いが、少なくとも靴全長の0.5%以上、
好ましくは1.0%以上、この実施例では2.5%に設
定した。けれども、この数値は内部部材を有しない状態
での数値である。
【0084】また踵部担持弾性部材4aは天秤部材8に
比べて変形し易いように、踵部担持弾性部材4aと天秤
部材8との弾性変形の容易さに差を設けるが、この差
は、気泡、穿孔、空所、および凹所の形状の大小または
個数の差と、断面積の差または材質の差のうち少なくと
も一者によって形成されるものとする。
【0085】また、ヒール領域下面の後端と下方支点と
の間の靴底下面を以下ヒール領域下面と呼び、この部分
は荷重時に側方から見て実質的に直線状または上方に凹
んだようにすることが好ましい。例えば図4に示すよう
に、この変形例のヒール領域は上方に若干凹んだ例であ
る。やむを得ずデザインの都合で緩い下方突出に形成す
る場合には、ここでは図示しないが荷重時に側方から見
て実質的に直線状になりやすいように、このヒール領域
を、気泡、穿孔、空所、凹所、または柔軟材のうち少な
くとも一者を設けて凹み易いようにすれば結果として直
線状になる。このように、この部分を図3(a) に示した
ように実質的に直線状に形成し、または図4のように上
方に凹んだように形成し、または上方に凹みやすいよう
に形成することによって、着地開始時には図1に示され
るようにヒール領域下面の後端と下方支点5とは両者と
も水平線に接して前後方向に安定し、決して揺れること
がない。これは従来例3として前述したロッカーシュー
ズと大きく違う点である。
【0086】図2(a)は“第2の状態”を示し、図1
の着地開始状態“第1の状態”から次第に体重が移動
し、体重がヒール領域下面前端にある下方支点5で支え
られる状態を示し、体重は主としてヒトの踵部20と中
足骨頭部30とにかかり、それが水平部材6と支柱部材
3aとよりなる天秤部材8により天秤状に支えられて、
下方支点5に集中している。
【0087】普通の靴と違って例えば体重70kgの患
者であれば70kgの全体重が天秤状に支えられるの
で、それに耐えるように水平材部6が踵部20と中足骨
頭部30とを結んで設けられている。この水平部材6の
機能は次項の支柱部材3aによっても増強されるので、
水平部材6の機能は後述の支柱部材3aと合体したもの
と考えられ、T字状または逆三角形状に荷重を支持す
る。ここでいうT字、逆三角とは、下方支点に対し必ず
しも対称的なものでなく、下方支点は前方に偏る場合が
多い。この水平部材6と支柱部材3aとを総称して以下
天秤部材8という。この天秤部材8の強さは、第2中足
骨頭部30の位置に荷重15kgを天秤端部で支えた場
合に、中足骨頭部30の位置の靴底下面7の垂れ下がり
が5mmを越えないように担持する担持力を有する。好
ましくは4mm未満にできることが好ましい。本実施例
では荷重時の垂れ下がりを3mmに抑えてある。なお上
記天秤部材8の強さに貢献する部材として水平部材6と
支柱部材3aとを挙げたが、そのほかに中底3mを中足
骨頭近くまで硬い材料で形成すると天秤部材8の担持力
の増強に役立つ。
【0088】また、本実施例では、上記下方支点5の位
置は靴本体の後端から第2中足骨頭部30を通る線に沿
って計って靴本体の全長に対し50%の距離に設定して
ある。またこの下方支点5が靴底下面に形成する稜線は
図3(c) に鎖線5−5で示すように小指側を拇指側に比
べて前進させて形成した。
【0089】このように本実施例では、水平部材6を支
えるように、下方支点5と水平部材6との間を支柱部材
3aで結び、この支柱部材3aと水平部材6とで天秤部
材8を形成しているが、製造原価を引き下げる目的で、
この支柱部材3aと水平部材6とは別体に形成せずに、
同一の材料で一体に形成することもできる。
【0090】上記天秤部材8の垂れ下がりが大きいと天
秤機能をロスさせる。該天秤部材8の下方支点5から天
秤上部までの寸法を大きく(天秤支点の高さを高く)し
て垂れ下がりによるロスを補償してもよいが、支柱部材
3aの高さが高いとデザイン的に見苦しくなる。それを
我慢するのであれば上記5mmを越えて垂れ下がらせ、
支柱部材を高くしてもよい。この垂れ下がりの数値は測
定のために中足骨頭部30の位置だけに荷重を与えた場
合の数値であって、現実にはそのような1点集中的な荷
重を受けることはなく、足裏全体で体重を支持するので
実際はそのように大きくは垂れ下がらない。本実施例で
は上記の1点集中的な荷重を与えた時の垂れ下がりを3
mmに抑えてあるが、できれば垂れ下がりは一層少ない
ことが好ましい。上記の垂れ下がり寸法は、本件の出願
時に20人の患者に試みた結果を基にしているが、患者
の歩行癖はまちまちであり病状にも軽重があることを勘
案して所要の垂れ下がり寸法とするものとする。
【0091】天秤部材8は踵部担持弾性部材4aに比べ
て弾性変形しない材料で形成されることが好ましい。
【0092】また、製造原価を引き下げる目的で、構造
を簡素化した変形例を示す。この変形例では、靴底前部
弾性部材3と支柱部材3aと踵部担持弾性部材4aとを
同一材料とし、図5(a) 、(b) に示す。
【0093】図5において、前記支柱部材3aに相当す
る部分である支柱部材部分3bは、踵部担持弾性部材4
aと同一の材料で一体に形成されている。しかるに、図
5(a) 、(b) に示すように、支柱部材部分3bと踵部担
持弾性部材4aとは断面積の違いによる弾性力の差があ
る。換言すれば、支柱部材部分3bは空所を設けずに形
成され、それに対し踵部担持弾性部材4aは空所4C、
4Mによって断面積を小さくされている。そのため支柱
部材3bは踵部担持弾性部材4aに比べて弾性変形しな
い。しかし、図2に示した支柱部材3aの機能は、踵部
担持弾性部材4aに比べて変形せずに支柱として作用す
る機能の他に、天秤部材8の強さを補強する機能をも持
っているので、図5のように支柱部材部分3bを踵部担
持弾性部材4aと同一素材とする場合には、水平部材6
には十分な強度のものを使用することが好ましい。製造
原価を引き下げるためには、水平部材6を省略し、代わ
って十分な強度のある中底3mをもって水平部材として
もよい。この図5の変形例では下方支点5の部分が荷重
を受けて凹み易く、下方支点5の位置が不定になり易
い。下方支点5の位置が不定になると、脚の進行に伴っ
て支点の移動が生じ下方支点5が前方に移動して歩行を
困難にする(支点の移動の弊害については後述する)。
従って、柔かい素材で支柱部材部分3bを形成するのは
あまり好ましくない。しかるに、支点の移動を避けよう
として支柱部材3bと踵部担持弾性部材4aとを共通の
やや硬い素材で形成すると、踵部担持弾性部材4aが十
分に弾性変形しなくなる。そのような弊害を防ぐため
に、本変形例では踵部担持弾性部材4aの断面積を小さ
くして(空所を設けて)弾性変形し易くしている。
【0094】また、上記下方支点5の位置は、図では靴
本体の後端から測って靴本体の全長に対して50%の位
置にしてある。実際には、医師が患者に対して機能をよ
く説明して患者がこれをよく理解し、踵から着地する適
正な歩き方ができれば40%でも十分である。しかる
に、患者が医師の説明を理解しないで、誤って図19
(従来例)に示したような“爪先歩き”をする患者も存
在した。それは年令が若くて筋力のある患者に多く見ら
れた。そのような誤用患者の存在をなくすために、下方
支点5を余分に前進させて設定した。上記下方支点5の
位置を、41%、43%、45%、47%と試みたが、
数値が大きくなるに従って誤用患者の存在は減少した。
実験では50%の位置に設定したので、若干の例外を除
いて誤用患者は存在しなかった。そこで上記下方支点5
の位置を55%、58%、61%、63%と試みた。そ
の結果、数値の増加に従って誤用者が減り、また膝伸ば
し効果は大きくなるが、無理に膝を伸ばすので、長距離
の歩行で疲労し易いと患者は訴える。患者に我慢しても
らっても、65%を越えると高齢の患者は疲労が激しく
歩行が困難であると言う。どのような患者、どの様な病
状を対象とするかによって、上記下方支点5の位置を決
定するものとする。
【0095】図3(c) は本実施例の靴を靴底から見た図
である。一般の靴の構造において、靴底前部が上方にカ
ーブして地面から離れる離床点は、ヒールの後端から測
って小指側の離床点が拇指側の離床点に比べて(小指側
が最も短いので)短く、後退して位置するものである。
しかし本発明の実施例では、上記下方支点5の位置は図
3(c) に線5−5で示すように、下方支点5は靴底下面
を横切る稜線5−5を形成し、この稜線は、ヒール後端
から測って小指側の稜線が拇指側の稜線に比べて長く、
前進して位置している。これは上記一般の靴とは正反対
である。このような設定を行うに到った理論は本発明の
試作実験の途上で発見されたものである。その理論は第
3の実施例で後述するように、膝関節の罹患側が受ける
地面からの押し上げ作用を少なくしたものである。すな
わち脚が次第に進行して天秤部材8が前に傾くと、体重
は稜線が前方に出張った小指側で多く支えられ、稜線が
後退した拇指側で少なく支えられる。従ってO脚患者の
罹患側の荷重を少なくする効果がある。ただしこの理論
は日本人に多いO脚を対象にしたものであり、O脚を伴
わない患者には適用しない。
【0096】図2(b) は“第3の状態”を示し、ヒトの
体重が図2(a) のような天秤状に支持されている“第2
の状態”から次第に移動して、体重が第2中足骨頭部3
0の靴底下面7と下方支点5との間の実質的な直線部分
で支えられている状態を示す。
【0097】下方支点5の位置は靴全体のほぼ中央にあ
って足は天秤状に支えられているので“第2の状態”か
ら“第3の状態”への移動は単に天秤が傾くだけの動作
であり抵抗は少ない。
【0098】この“第2の状態”から“第3の状態”へ
の移動に対する抵抗が少ない理由は、図2(b) に示すよ
うに、中足骨頭部の靴底下面7と下方支点5とは側方か
ら見て実質的に直線状に結ばれていて、図2(a) から図
2(b) の状態に移るのに何の抵抗もないためである。も
し仮に、図6(a) 、(b) のように中足骨頭部の靴底下面
7と下方支点5との間を側方から見て緩く突出した曲線
に形成すると、該靴はデザイン的には良くなるが、機能
的には図6(b) のように、下方支点5の前方は緩いロー
ラーのように機能し、接地点がローラー状に転がりつつ
前方5fに移動し、転がればさらに前方に移動するもの
で、このように接地点が5fのように移動することは、
下方支点5が移動したのと同じ結果を招いて歩行を困難
にすることになる。もともと上記下方支点5の位置は上
記のように41%〜65%の範囲で患者からの要望や患
者の病状を参考にして、医師が最も適切と考える最良の
位置に設定するものであり、この最良の位置は決して移
動しないことが好ましい。そのためには、第2中足骨頭
部30の位置する靴底下面7と下方支点5との間は、荷
重時に側方から見て、実質的に直線状または上方に凹ん
だ形状にすることが好ましい。このように上方に凹んだ
形状にした変形例を図7に示す。また、後述するように
やむを得ずデザインの都合で緩い下方突出に形成する場
合には、荷重によって凹んで図2(b) のような直線にな
りやすいように、中足骨頭部の靴底下面7と下方支点5
との間に、気泡、穿孔、空所、凹所、または軟質材のう
ち少なくとも一者を設けて凹み易いようにするのが好ま
しく、このようにすれば、支柱部材3aが変形しないの
で、それに比べて凹みやすい前方の部分が荷重で圧縮さ
れて直線状に変形し、下方支点の移動を防止することも
できる。このように荷重による直線化によって靴底下面
7と下方支点5との間を実質的に図2(b) の状態にする
場合と、最初から図2(b) の形状に形成する場合と、ま
たは図7のように上方に凹んだ形状にする場合とに共通
して、このような“第1の状態”から“第2の状態”を
経て“第3の状態”へ移行することは、単に天秤の傾き
が変わるだけの容易な動作であることが病弱者での実験
で確認されている。
【0099】下方支点5は図に示すように、支点として
作用するように角を形成することが機能的に必要であ
る。この角は鈍い角度であるが、それでも角は他の部分
に比べて磨耗を生じ易い。それを防ぐために、角を若干
削った角(角張らない角)にしても支点としての機能を
失わない程度であれば問題はない。もし角の存在を嫌う
場合には、その角(下方支点5)から前方に浮き上がっ
た部分を埋めるように柔らかい材料からなる装飾的靴底
形状形成部材を形成しておき、“第3の状態”になって
荷重を担持する状態で、上述したように上方に凹むよう
にしてもよい。これは上記目的のための見せかけの装飾
部材に過ぎないから、本発明の基本的な機能を妨害しな
いように十分に弾性変形できる柔らかい材料を選び、浮
き上がり角度をゼロに見せるように浮き上がり部分を全
部埋めてもよく、また任意の浮き上がり角度(例えば3
度)であるように形成してもよい。
【0100】また図2(b) の状態は、天秤部材8が前に
傾いた状態で通常の高いヒールの靴を履いた状態に似て
おり、第1および第2の状態に比べてヒールが若干上が
った状態にある。この状態は従来例1で述べたようなア
キレス腱を無理に引っ張った状態と反対であり、アキレ
ス腱を引っ張らずに、緩やかに次の“第4の状態”(蹴
り出し)に移ることができる。このようにアキレス腱を
引っ張らないで、“第4の状態”(蹴り出し)に移り易
く準備した“第3の状態”を以下“高踵型離床準備状
態”とよぶ。本発明はヒールを低くする事を基本原理と
するものであるが、そのような低いヒールでありながら
アキレス腱を無理に引っ張らないことを可能にした“高
踵型離床準備状態”は、通常の変形性膝関節症患者に見
られる膝の曲がった着床の癖、換言すればアキレス腱の
伸びたような悪い着床癖の発生を防止し、または矯正す
るので、変形性膝関節症の進行の防止と痛みの軽減に効
果がある。
【0101】図2(c) は“第4の状態”を示し、ヒトの
体重が図2(b) の“第3の状態”から次第に移動して指
先で地面を蹴る状態である。この時、靴底を曲がり易く
するように空所3Fが設けられていて、柔軟に曲がって
蹴り出しを容易にする。
【0102】上記の実施例に示した構成によって、着地
が開始されるとヒール領域下面は図1の“第1の状態”
に示すように、中足骨頭部の靴底下面7が水平線から浮
き上がって、靴底上面の高さが後方で極端に低くなるこ
とにより、くるぶしの中心50と踵骨下端dとを結ぶ線
(図1に示す斜辺R4 )が鉛直線χ−χに近付き、図
1、図23に符号dで示すように踵骨下端dをできるだ
け鉛直線に近く位置させる。このdの位置は前述の極端
にヒールの低い靴の位置c(図23)を通り越した低い
位置であり、〔発明が解決しようとする課題〕での説明
のように鉛直線からの距離 D = R sinα で表されるDの値を小さくして、膝に与える悪い力“踵
の膝曲げ作用”を軽減することができる(これを“鉛直
線に接近した支持効果”とよぶ。)。
【0103】またこのように爪先が上がった状態(足前
部が空中に浮いた状態)で着地開始されると、また別の
効果が発生する。図1において踵を下げるような力が矢
印Gとして作用し、従って中足骨頭部の靴底を空中に浮
き上がらせるように作用すると、これは前述の有害な着
地衝撃(矢印A、B)とは方向が全く正反対の力であ
る。従って、矢印Gの力は有害な着地衝撃(矢印A、
B)の力に対して拮抗し、または押し返すように作用し
て、着地開始時に有益な力を発生させる。この矢印Gの
力が生み出す“爪先上げ効果”は前述の“鉛直線に接近
した支持効果”の主たる効果に対して補助的な効果とな
って相乗的に作用し、“膝伸ばし効果”を発生させるこ
とができる。
【0104】また一方で、前述“膝関節無屈曲効果”に
よって喪失したヒトの天然にもつ衝撃吸収機能を補償す
るために、本実施例では特別の衝撃吸収構造を設けるこ
とにより、特殊な状況に置かれた患者に対して、きわめ
て適切な衝撃吸収力を与えつつ、かつヒトが備える天然
の衝撃吸収機能を超えて、病弱者に優しい衝撃吸収機能
を与えることができ、さらに前述の“爪先上げ効果”を
増加させることができる。
【0105】次に図2(a) のような天秤状の状態“第2
の状態”に移って全体重を担持する。このとき、靴底に
形成された天秤部材の強度は、中足骨頭部の位置に15
kgの荷重を受けたときに上記天秤部材の垂れ下がりが
5mmを越えないように設定し、上記天秤部材上部に設
けられた水平部材6の長さを踵部20から中足骨頭部3
0まで達する長さとしたので、体重を該部材により天秤
状に支えることができ、体重の移動を円滑に行えるよう
になった。また、この実施例の状態では、ほぼ靴全長の
半分の位置に下方支点5が位置するので、力学的に負担
の少ない状態であり、脚の筋力の乏しい病弱者でも容易
に“第1の状態”からこの“第2の状態”に移ることが
でき、下方支点5から中足骨頭部の位置する靴底下面7
までの靴底を実質的に直線状にする事によって、何らの
抵抗もなく、容易に次の“第3の状態”に移ることがで
きる。
【0106】図2(b) は“第3の状態”を示し、体重が
中足骨頭部の靴底下面7と下方支点5との間の実質的な
直線の部分で支えられている。この“第3の状態”では
通常の高いヒールの靴を履いたような状態に近づき、
〔発明が解決しようとする課題〕で説明したようなアキ
レス腱が引っ張られる状態から開放される。このように
“第3の状態”に容易に移り得るので、従来例1で述べ
た図18のような離床時の無理なアキレス腱の引き延ば
しを生じず、継続的に使用しても従来のようにアキレス
腱が引き延ばされる弊害が生じない。それだけでなく、
この効果によって、本発明では、アキレス腱の無理な引
っ張りによる弊害を懸念しないで、第1の状態での理想
的な浮き上がり角度を適正な値に自由に設計できるよう
になった。これにより理想的な治療効果が得られる。ま
た、この“第3の状態”では踵が持ち上がった状態であ
って、次の離床段階“第4の状態”への移行を容易にし
ている。このように踵を高くして次の“第4の状態”へ
の移行を容易にした状態を以下“高踵型離床準備状態”
という。また下方支点5の形成する稜線の小指側を前進
させることによりO脚の矯正を行うことができる。
【0107】図2(c) は“第4の状態”を示し、蹴り出
しを行う状態であるが、靴底の中足骨頭部から前部所定
の位置に空所3Fを設けることにより、蹴り出しの動作
を行う時靴底が曲がりやすく蹴り出しを容易にできる。
【0108】また本発明の目的とする変形性膝関節の疾
患とは直接関係しないが、副次的な長所ももっている。
本発明の“膝伸ばし効果”により姿勢を良くするほか
に、下方支点5の形成する稜線の小指側を前進させるこ
とにより、または後述の靴底上面に傾斜面を設けること
によりO脚(あるいはX脚)を矯正することで姿勢を良
くする。さらに膝をのばすことに若干のエネルギーを消
耗するので、従来例2の靴と同様に、若干のダイエット
効果を期待することもできる。これらの場合に共通し
て、上記従来例1、2と異なって、従来例では避けられ
なかった前述の欠点が本発明によって解消され、長所だ
けが得られるという効果を生じる。
【0109】実施例2.実施例1では内部部材9を弾性
変形可能の弾性材で形成した例を示したが、天秤機構を
得るためには、他の実施例として図8(a) 、(b) に示す
ように、内部部材10を弾性変形しない材料で形成し、
この内部部材10に前述の水平部材6(図1)の役割を
させてもよい。図8(a) において実質的に弾性変形しな
い支柱部材11(図1における支柱部材3a)と、実質
的に弾性変形しない内部部材10とによって天秤部材1
2を形成している。衝撃吸収機構としては内部部材10
の後端を靴底から離れさせて空間10aを形成し、ヒー
ル領域が弾性変形することは図1の場合と同じである。
この実施例では、後述する装飾的ヒール形状形成部材を
設ける代わりに実質的なヒールの後端eから後方を邪魔
にならないように斜め上方に切り欠いてこの部分を斜面
d2に形成してある。
【0110】本実施例の場合、図1に示した水平部材6
は図8の内部部材10に相当し、図1に示した支柱部材
3aは支柱部材11に相当するので、図1と図8(a) は
同じ天秤機能を有する。荷重を受けた状態では図8(b)
に示すように、内部部材10が靴底3d部分を凹ませて
降下し、さらに内部部材10の後部10bが降下して空
間10aを縮小させ、この両作用で衝撃を吸収するよう
になっている。この実施例では内部部材10が弾性変形
しないので、足になじまない欠点を有するが、それを解
消するためには、天秤機能を害さないように留意しなが
ら足に接する面だけを図示しない弾性材で形成してもよ
い。
【0111】このように、実質的に弾性変形しない内部
部材10と支柱部材11とにより天秤機構を得ているの
で、実施例1で示した水平部材6と内部部材9とを兼ね
て上記内部部材10とすることができ、上記実施例1と
同様の効果を得ることができる。
【0112】実施例3.上記の実施例1の変形性膝関節
症患者用の靴において、上記実施例の効果に加えさらに
内反膝(外反膝)の矯正ができるように、靴底内部に傾
斜面を持った実施例3について説明する。
【0113】図9は、図1に示した内部部材9の平面図
を示し、図10(a) 、(b) および(c) は図9の内部部材
のa−a断面、b−b断面、c−c断面を示している。
その内部部材9の表面は、図10に示すように後方から
見て左から右に低くなるように傾斜し、患者の関節の罹
患側方向が低いように傾斜面が形成されている。
【0114】またヒトの足が上記傾斜面の低い側に向け
て横滑りして甲皮を押し曲げることを防ぐために、上記
高い側の甲皮に比べて低い側の甲皮を図示しない強化材
で強化した。
【0115】なぜ傾斜面を形成するのかの理由は公知で
あり、説明を簡単にするが、変形性膝関節症の一例とし
て内反膝(O脚、ガニ股)を例に説明すると、図11に
示すように、軸線方向(alignment)a−aが曲がって、
関節の外側112の軟骨105よりも関節の内側111
が多くの荷重を受けて軟骨が摩耗、欠損し、患部106
となって骨が露出した状態になっている。それを矯正す
る手段として、靴内に斜面を設けて、片側が低いことに
よって図12のように、関節の内側を下向きの矢印Eの
ように下げて矢印Fの力を発生させ、好ましくは図12
のように軸線方向を矯正して患部を荷重から開放しよう
と試みる。この方法でも効果は認められるが、希望通り
には矯正できず、この手段だけでは効果は満足できない
のが現状であり、その問題を解決するのが本実施例3、
及び以下の実施例4である。
【0116】なお以上は内反膝の例をもって説明した
が、外反膝の場合は上記の説明文中それぞれ外側は内側
に、内側は外側に読み替え、傾斜面も反対方向に傾斜さ
せるものとし、説明は省略する。
【0117】この傾斜面は本実施例では内部部材9によ
って傾斜を形成したが、内部部材10によって傾斜を形
成してもよく、靴底上面を傾斜させてもよい。
【0118】図9および図10に示した内部部材9を弾
性材で形成する場合には、例えば前述の40度の硬度の
E.V.A.発泡樹脂を用いて形成する。この場合内部
部材9の弾性は前述の踵部担持弾性部材4aと協同して
作用するので、その作用は同一の上位概念の下にある。
けれども両者には機能上の相違点がある。
【0119】踵部担持弾性部材4aの弾性は、例えば7
0kgの荷重に耐える強い弾性が要求される。この要求
は例えば鉄道におけるレールと車輪との衝撃を吸収する
ような強い弾性である。従って歩行によって上記70k
gの体重が負荷されたときに限って十分に弾性変形す
る。ところが内部部材9は車両の座席のように、もっと
弱い力(例えば1kg)で変形することが望ましい。そ
の理由は、着地が開始される瞬間には、未だ70kgの
体重は負荷されていないので、強い弾性を有する踵部担
持弾性部材4aは変形されず、弱い力で変形する内部部
材9が着地瞬間の初期衝撃を吸収する。この着地瞬間の
初期衝撃こそ、膝に痛みを持つ患者の最も苦痛とすると
ころである。着地瞬間を過ぎて体重70kgが静止荷重
として負荷されても痛みへの影響は少ない。
【0120】ところが内部部材9には上記初期衝撃を吸
収する機能の他に、さらに前述の斜面形状保持の機能が
求められ、この斜面は、体重に負けて変形してはならな
い。
【0121】そこでたとえば1kgの軽い初期衝撃でも
弾性変形する柔かさを持つことと、70kgの重い静止
荷重に耐えて形状を保持できる強い形状保持機能を持つ
こととの両機能を有することが求められる。
【0122】図9に示す本実施例3の内部部材9は、横
断面が図10(a) 、(b) および(c)に示すように傾斜面
が形成されている。この場合、踵部担持弾性部材4aに
比べて、内部部材9のヒトの足に接する面積が格段に広
くて、単位面積当たりの荷重が小さいので、この内部部
材9は踵部担持弾性部材4aに比べて柔らかい材料で形
成することができる。
【0123】さらに上記両機能を有するためには、図9
に領域Qで示される部分を後述のように構成した変形例
とすることもできる。この領域Qは踵骨から強い圧力を
受ける領域であり、着地の初期に真っ先に荷重を受ける
部分であり、この特別に設けた領域Qにより、微小な初
期衝撃を吸収することができる。この領域は、他の領域
に比べて、図9では図示しない多数の気泡によって、た
とえ1kgの荷重でも容易に弾性変形するように柔かく
してあるが、この多数の気泡に代えて、穿孔、空所、凹
所などを設けて柔かくしてもよく、または内部部材9の
他の部分よりも一層柔かい素材を用いて領域Qを形成し
てもよい。
【0124】このように構成することによって、傾斜面
を形成する形状保持機能を維持しつつ、同時に微弱な着
地初期衝撃を吸収して、患者の最も恐れる着地瞬間の痛
みを防止することができる。
【0125】また傾斜面の低い側に滑り止めを設けるこ
とにより、足が横滑りして甲皮を押し曲げることを防ぐ
ことができる。
【0126】実施例4.上記実施例3の靴を用いて実験
してみると、予想に反して上記傾斜面の効果が得られな
い場面に遭遇したが、その原因は不明である。なぜ予想
のような効果が得られないのかを究明しているうちに次
の原因によることが判明した。すなわち、上記踵部担持
弾性部材4aは極端に柔軟な素材で形成されるので、上
記傾斜面の高い側を担持する踵部担持弾性部材4aは、
上記傾斜面の低い側を担持する踵部担持弾性部材4aよ
りも大きな荷重を受けて多く圧縮されて降下した。この
ように傾斜面の高い側が低い側に比べて余分に多く降下
することは図12に示した矢印Eと反対の矢印Wの力を
生じ、図11に示したような悪い方向に軸線a−aを曲
げるような力が発生する。この現象は注意して観察しな
ければ気付かないが、これは踵部担持弾性部材4aを特
別に柔軟な材料で形成する場合における宿命的な現象で
ある。このように踵部担持弾性部材4aが左右均等に降
下しないで傾斜面の高い側の踵部担持弾性部材が多く降
下する現象を、以下“ヒールの不均等降下現象”と呼
ぶ。
【0127】本実施例では上記の問題点を次のように解
決する。図13は本実施例の靴の靴底下面を底面カバー
材3cに沿って靴底底面から上方1mmの高さで切断し
た靴底最下面近傍の水平断面図である。図において、踵
部担持弾性部材4aは患部側4lで断面積を小さく、反
対側4rで断面積を大きくしてあり、換言すれば患部側
の空所4Lは反対側の空所4Rよりも大きくしてある。
そのため患部側は弱い圧力でも圧縮される。換言すれば
断面積を調節して、4lの断面積と4rの断面積に差を
設けることによって、前項に説明した悪い方向の力が軸
線a−aを曲げるように作用することを補正する。これ
は空所の大きさに差を設けた例であるが、空所の大きさ
に代えて、図示しない、凹所、気泡などの大小または個
数に差を設けて患部側を降下し易くしてもよい。また、
図14に示すように、踵部担持弾性部材4aは患部側を
弱い力で弾性変形する(柔かい)材料Sで形成し、反対
側を弾性変形しにくい(硬い)材料Hで形成してもよ
い。また材料Sと材料Hとの間に図示しない中間材料帯
を設けてもよい。またこれらの手段を併用してもよい。
【0128】このように踵部担持弾性部材4aを構成し
ヒール領域を形成する事によって、本発明の基本構成で
ある“柔らかい踵部担持弾性部材”を用いて体重を担持
して“天然の衝撃吸収機能”の喪失を補償しながら、そ
の場合に上記左右傾斜面を設けることによって必然的に
発生する上記“ヒールの不均等降下現象”の発生を防止
し、上記左右傾斜面の傾斜角度を正確に保持することが
できる。
【0129】実施例5.上記実施例1ないし4におい
て、実質的に体重を担持する部分である踵部担持弾性部
材4aの後端eの位置は本実施例では靴の後端から計っ
て靴全長の10%の位置に設けた。また、踵部担持弾性
部材4aの後方の切れ欠き部分に装飾的ヒール形状形成
部材を設けた。
【0130】図3(a) に示す無荷重時の状態では、着地
開始時に踵部で体重を担持するための踵部担持弾性部材
4aは予め計算された弾性材で、計算された形状に形成
されていて、着地が開始されて体重を担持する状態にな
った場合に図1のように圧縮変形するが、本実施例で
は、図15に示すように、踵部担持弾性部材4aの後方
には装飾的ヒール形状形成部材4bが形成されていて、
この装飾的ヒール形状形成部材4bは、できるだけ体重
の担持に関与しないように、踵部担持弾性部材4aより
も変形し易く形成されているので、従来例で説明した
“踵の膝曲げ作用”は軽減される。その結果、図20
(b) に示した“踵の膝曲げ作用”を防止する。
【0131】この実施例では装飾的ヒール形状形成部材
4bは空所4Cを大きくすることによって変形し易くし
てあるが、これはこの空所4Cに代えて踵部担持弾性部
材4aと同じ材料で形成し、図示しない凹所または気泡
を多くしても同様の効果が得られ、また踵部担持弾性部
材4aに比べて柔かい材料で形成してもよい。図3(a)
に符号eで示した位置から後方は図のように上昇斜面d
1として地面から離れるように若干上昇して形成するこ
とが好ましい。また変形例としては図8(a) 、(b) に示
すように踵部担持弾性部材4aの後端eから後方を切り
欠いて傾斜部d2を形成してもよい。
【0132】図16は図15に示した装飾的ヒール形状
形成部材4bの作用を説明する図であり、説明のため
に、上記装飾的ヒール形状形成部材4bの空所4C(図
15)を図16では材料4hで埋められたものとした。
もし図15と同じ条件で坂道を降りるとき、または爪先
を上げた着地では空所4Cが無いため、従来例で説明し
た有害な地面からの矢印Aの反力が4h部で発生し、膝
関節の患部に衝撃を与える。
【0133】図16に比べると図15では大きな空所4
Cが容易に変形し、地面から受ける反力は小さい。この
ような効果は降り坂の場合だけでなく、患者の歩行癖が
爪先上がりに着地する場合にも有効である。もし理想的
な機能を求めて外観を気にしないならば、むしろ装飾的
ヒール形状形成部材4b、4hは無い方がよい。また変
形例として、前述の図16のように装飾的ヒール形状形
成部材の空所を4hで示すように弾性材で埋めたもので
も、踵の切れ欠きを鎖線d−dのように一層急角度に形
成すれば実質的なヒール後端eから後方が欠けたよう
な、デザイン的に悪いものになるが、“鉛直線に接近し
た支持効果”に近似した効果が得られる。
【0134】ただし患者の病状等には大きな個人差があ
り、しかも余病を併発している場合もある。 高齢者で
起立能力を欠乏して満足に起立できない患者に対しては
図16で述べたように、ヒール後部4hを埋めた構造に
して起立能力の不足を補うようにする場合も生じる。こ
のような図16のような構造の場合でも、本発明では踵
部担持弾性部材4aが十分に柔かい弾性材で形成されて
いるので、実質的な支持点は前進して位置し、これによ
り、前述の“鉛直線に接近した支持効果”ほど明確でな
いが同様の効果を得ることができる。
【0135】上記各実施例および変形例において、実質
的に体重を担持する踵部担持弾性部材4aの下面後端e
の位置は靴本体の後端よりも前進させた位置にある。こ
の位置は靴の後端から計って靴全長の少なくとも5%の
位置、好ましくは6%ないし7%以上とする。この実施
例では靴本体の後端よりも10%前進した位置に踵部担
持弾性部材4aの後端eを設定してある。このように、
踵部担持弾性部材4aの後端eを前進させて設定されて
いることは“膝関節の無屈曲効果”を一層充実させるこ
とに効果がある。すなわち、後端eが前進して設けられ
ている結果、斜辺R4(図1、図23)よりも鉛直線に
近付けて踵骨下端を位置させることが可能になる。
【0136】また先願として図17に示したヒール後端
Eは硬い材料で角張った角に形成されていて、着地開始
の瞬間には、この後端Eだけに集中した体重を担持する
が、それに反して、図1の実施例では、踵部担持弾性部
材4a自体は柔かい材料で形成されているので、図1に
示した後端eの角張りは角張っているように見えても実
際には柔軟に変形するものであり、むしろ実質ヒール4
a全体で体重を担持するので、図に示した角張った後端
eよりも前方に実質的な支持点があるものと考えられ
る。その支持点は図13に示すように、踵部担持弾性部
材4aの重心点V付近に存在すると考えてもよい。この
重心Vを通過する斜辺5を想定して、図1、図23に点
線で示したように、斜辺R5は斜辺R4を通り越して、
鉛直線に一層近くなる。この斜辺R5の角度の推定は確
定的ではないが、少なくとも図23に示した斜辺R1、
R2、R3またはR4を通り越して、鉛直線χ−χに接
近することは確実であると予想できる。このように斜辺
がR5のように鉛直線χ−χに近づくような体重支持状
態により生じる効果を“鉛直線に接近した支持効果”と
いう。
【0137】このように、実質的なヒールである踵部担
持弾性部材4aの後端を靴本体の後端よりも前進させた
位置とすると、前述のように斜辺R5が一層上記鉛直線
χ−χに近付き、体重は靴本体の後端よりも前進した位
置で支持され、前述の“鉛直線に接近した支持効果”に
よって有害な矢印Aの力(図20)を防止し、矢印B方
向の“踵の膝曲げ作用”をさらに十分に防止することが
できる。
【0138】もし底面カバー材3cを省略する場合に
は、上記実施例1ないし5の構成によってできた空所、
凹所が露出して見苦しいので、これを弾性力が他の部分
のそれ以下の弾性材で充填することにより、外観を整え
て奇異な外観になるのを防ぐこともできる。
【0139】実施例6.図24、図25(a) (b) (c)
は、本発明の実施例6による膝関節症患者用のスリッパ
状の履物を履いて、歩行を行ったときの状態の経過を示
す図で、着地から蹴り出しまでを順番に後述する“第1
の状態”から“第4の状態”とし断面図で示したもので
ある。
【0140】図26(a) 、(b) は本発明の実施例6の履
物の無負荷時を示し、図26(c) は底材の底面図であ
る。図26(a) は、図26(c) の鎖線v−v部分の縦断
面図であり、図26(b) は実施例6の履物の外観を示す
側面図である。
【0141】図24において、1100はスリッパ状の
履物本体、1101は一般にスリッパ類や“つっかけ”
に見られるような甲被の後部を欠いた甲被、1102は
底材、1003は底材前部弾性部材、一般にこのような
スリッパ状の履物は靴のようなヒールを設けない場合が
多いが、説明の便宜上、後述の下方支点から後方をヒー
ル領域1004と呼ぶ。1005は後述の“第2の状
態”のとき荷重を天秤状に支持する支点となる下方支
点、1006は底材上面の中足骨頭部と踵部とにかかる
荷重を天秤状に支持する天秤の役割を果たす水平部材、
1003aは上記下方支点1005と上記水平部材10
06とをつなぎヒール領域よりも弾性変形しにくい材料
で形成された支柱部材、1007は中足骨頭部の下方に
位置する底材下面、1008は上記水平部材1006と
支柱部材1003aとをあわせた天秤部材、1003m
は中底、1009は上層部材であり、上記天秤部材10
08、踵部担持弾性部材1004a、中底1003m、
上層部材1009および底材前部弾性部材1003をを
あわせて足踏み材1003gと呼ぶ。20はヒトの踵
部、30はヒトの第2中足骨の頭部、40はヒトの第2
中足骨、50はヒトのくるぶしの中心、1003cは底
面カバー材、1004aは実質的なヒールである踵部担
持弾性部材、1009aはヒトの踵部が接する位置の上
層部材1009の上面、eは踵部担持弾性部材1004
aの下面後端を示す。
【0142】底面は底面カバ−材1003cによって覆
われていて断面図のような内部構造は底面から見えない
が、説明の便宜上、後述の下方支点1005や後述の踵
部担持弾性部材1004aの下面後端eの説明は、底面
カバー材1003cの存在を無視して説明する。他の変
形例としては底面カバー材1003cの存在を省略して
下方支点1005が直接地面に接してもよく、底面カバ
ー材1003cの有無は本質的な機能に関係しない。こ
こで底面カバー材は底材前部弾性部材1003および、
または後述の踵部担持弾性部材1004aと一体に形成
されていてもよい。もし底面カバー材1003cを省略
する場合には内部構造が露呈するので、実施例10で後
述するように、底材上面と接地面との間に形成される上
記天秤部材1008、上記踵部担持弾性部材1004
a、後述の装飾的ヒール形状形成部材1004bの各部
材の有する空間および各部材相互間の空間を、その弾性
力が上記各部材よりも弱い弾性材で充填して外形を整え
てもよい。また上層部材1009、天秤部材1008、
底材前部弾性部材1003、踵部担持弾性部材1004
a、などのうち少なくとも2者を被覆材によって被覆し
て外見を一体に見せることが好ましい。
【0143】図24は踵部に荷重を受けた着地開始状態
を示す断面図である。上層部材1009のヒトの踵の下
端に荷重として70kgを受けた状態で、履物全長に対
して、少なくとも2%以上、この実施例では5%降下す
るように形成されている。また、接地したヒール領域の
下面後端とヒール領域下面前端1005とを結ぶ線の延
長線(水平線)に対して、上記ヒール領域下面前端10
05と中足骨頭部30の下方に位置する底材下面100
7とを結ぶ線が浮き上がり角度12度をもって水平線か
ら浮き上がっている。これはヒール領域1004におけ
る底材上面から地面までの厚さの差に起因する。すなわ
ちヒール領域下面前端(下方支点1005)付近の厚さ
に比べてヒール領域後部が薄くなるように形成されてい
るためである。以上のように踵部分に荷重を受けて中足
骨頭部が浮き上がった図24のような状態を“第1の状
態”という。
【0144】図24のように荷重時に上記水平線に対し
て上記第2中足骨頭部が浮き上がる角度は、踵部が荷重
を受けた状態で、少なくとも5度、好ましくは6度、7
度以上に設定する。けれども一層大きいことが好まし
い。この実施例では浮き上がり角度は12度に設定して
ある。実験によれば、8度、10度、15度、20度な
どに設定しても、角度の増大に比例してデザインが悪く
なる点を除いて、機能的には良好であった。
【0145】本実施例では、上記第2中足骨頭部の浮き
上がり角度の増加によって、図24および図23に示す
くるぶしと、踵骨下端dとを結ぶ線(斜辺)R4が前記
χ−χに近付き、前記の“鉛直線に接近した支持効果”
によって“膝関節の無屈曲効果”が得られ、さらに後述
の“膝伸ばし効果”も生じて膝関節の磨耗を防止し、後
述の〔効果1〕で述べる効果を生じる。
【0146】本実施例での実験では、浮き上がり角度は
12度に設定してある。角度が小さ過ぎると効果が劣
り、角度が大きすぎると効果は大きいがデザイン的に悪
くなる。本件の出願時に20人の患者に試みた結果を基
にしているが、患者の歩行癖はまちまちであり病状にも
軽重があるので、どのような患者、どのような病状を対
象にするかによって、それぞれの角度を選択するものと
する。
【0147】また、本発明の実施例では、“膝関節無屈
曲効果”を求めて踵骨下端dを鉛直線χ−χに近付けて
足指が地面から浮き上がるようにしたので、残念ながら
反面では〔従来の技術〕の欄で述べた矢印Aや矢印Bの
バネを失い、“天然の衝撃吸収機能”を喪失するため、
それを補償するように、ヒール領域4は踵部でヒトの踵
の下端に接する面の高さが上記荷重で降下するように設
計されていて、着地開始時の衝撃を吸収する。その衝撃
吸収機構は特別なものであり、スポーツ靴などの衝撃吸
収とは全く違った機能が求められる。すなわち患者は膝
に疾患を持ち、痛みに耐えているので静かに歩き、スポ
ーツをする人に比べて、ほとんど静止荷重に近い荷重で
着地する。このような弱い患者を積極的に保護し、一歩
一歩に痛みを訴えて苦しむ患者に対して、健康な人より
も余分に優しく着地できるように、十分な衝撃吸収機構
を与えることが好ましい。これに対してスポーツ靴など
では速度の加わった加速度荷重がかかり、ジャンプ時な
どには例えば体重の4倍などの強い荷重をうける。スポ
ーツ靴の衝撃吸収機構は、そのような強い力で弾性変形
する構造に設計されているので、患者の静かな着地では
十分には弾性変形しない。
【0148】このように静かな着地でも弾性変形させる
ようにできる構成について、以下に説明する。即ち、上
記踵部担持弾性部材1004aを弾性変形し易い材料で
形成し、荷重によって図26(a) の状態から図24の状
態に変形させる。弾性変形し易い材料として硬度55の
E.V.A.(エチレンビニルアクリル)樹脂と呼ばれ
る柔かい発泡材を用いた。どのように柔かいかを試すた
めに、この素材の10mm×10mm×10mmを採取
し、指と指の間に挿んで押してみると、簡単に4分の1
に圧縮できた。これは履物素材としては異例の柔かさで
ある。
【0149】この材料の弾性をスポーツ靴のヒール領域
の弾性と比べてみると、体重の4倍でも耐えるスポーツ
靴のヒールは、決してこのように弱い静止荷重では簡単
に弾性変形しないのが原則である。本発明では着地初期
の衝撃吸収に重要な役割を持っている踵部担持弾性部材
1004aが地面と接触し始めるのは、未だ体重がかか
らない対地接触の瞬間であって、本格的に体重が負荷さ
れる頃には体重の担持は下方支点1005(換言すれば
天秤部材1008)に移り、踵部担持弾性部材1004
aの負担は軽減されるので、踵部担持弾性部材1004
aは靴の常識に反して上述のような異常に柔らかい素材
で形成することができるのである。
【0150】また、履物本体内部に設けた上層部材10
09も弾性材で形成されているときは、ヒトの踵部を受
ける表面1009aも若干凹んで衝撃吸収に役立つ。上
層部材1009の厚さは踵部担持弾性部材1004aほ
ど厚くないので衝撃吸収機能は踵部担持弾性部材ほど大
きくないが、それでも後述の図33に示すように、斜面
の高い側では、かなり厚いので、衝撃吸収には有効であ
る。このように、図24〜25に示す実施例では上層部
材1009を弾性材で形成した例を示してあり、ヒトの
足の降下は、踵の下端に位置する上層部材1009の内
表面1009aでの降下をもって計測する。なお後述の
各実施例を通じて、衝撃吸収のための弾性材は、必要が
あればその一部を衝撃吸収材に代えてもよい。
【0151】上層部材1009の表面の踵部1009a
は、その衝撃吸収機構が前述の“人類のもつ天然の衝撃
吸収機能”の喪失を補償できることが望ましいので、踵
部担持部材1004aの材質は十分に弾性変形できるも
のを使用し、例えば上層部材1009の踵骨部の表面1
009aが受ける静止荷重が70kgの場合に履物の全
長を250mmとして本実施例では降下寸法を12.5
mmに設定してあり、これは履物全長の5%である。降
下寸法を履物全長の2%、3%、4%、5%と試みた。
降下寸法が大きいほど衝撃吸収機能が良いので、上限に
は10%くらいまでは制限はないが、少なくとも2%以
上、できれば3%以上、好ましくは4%以上、この実施
例の5%ではほぼ満足な衝撃吸収が得られると患者らは
言う。
【0152】本件の出願時に20人の患者に試みた結果
を基にしているが、患者の歩行癖はまちまちであり病状
にも軽重があるので、どのような患者、どのような病状
を対象にするかによって、それぞれの降下寸法を選択す
るものとする。
【0153】上述のように上層部材1009が弾性材で
形成されることは衝撃吸収に大きく貢献する。そこで実
施例としては当然ながら上層部材1009を弾性材で構
成し、降下の数値も踵部の上層部材1009aの表面の
降下値で示した。ところが、上層部材1009は特別な
目的で特別な形状を有する取替え可能な挿入材であり、
流通段階ではこの上層部材1009を取替え可能な状態
で別売りに扱われる場合も生じる。そのように上層部材
を欠いて流通する場合には、降下機能を踵骨部の上層部
材の表面の降下値で示すことが出来ないので、代わって
底材上面後端で計測してもよい。その場合には上層部材
1009自体の圧縮変形分を欠くので、それだけ数値が
小さくなる。数値は大きいほど衝撃吸収機能が良いが、
少なくとも靴全長の0.5%以上、好ましくは1.0%
以上、この実施例では2.5%に設定した。けれども、
この数値は上層部材を有しない状態での数値である。
【0154】また踵部担持弾性部材1004aは天秤部
材1008に比べて変形し易いように、踵部担持弾性部
材4aと天秤部材1008との弾性変形の容易さに差を
設けるが、この差は、気泡、穿孔、空所、および凹所の
形状の大小または個数の差と、断面積の差または材質の
差のうち少なくとも一者によって形成されるものとす
る。
【0155】また、ヒール領域下面の後端と下方支点と
の間の底材下面を以下ヒール領域下面と呼び、この部分
は荷重時に側方から見て実質的に直線状または上方に凹
んだようにすることが好ましい。例えば図27に示すよ
うに、この変形例のヒール領域は上方に若干凹んだ例で
ある。やむを得ずデザインの都合で緩い下方突出に形成
する場合には、ここでは図示しないが荷重時に側方から
見て実質的に直線状になりやすいように、このヒール領
域を、気泡、穿孔、空所、凹所、または柔軟材のうち少
なくとも一者を設けて凹み易いようにすれば結果として
直線状になる。このように、この部分を図26(a) に示
したように実質的に直線状に形成し、または図27のよ
うに上方に凹んだように形成し、または上方に凹みやす
いように形成することによって、着地開始時には図24
に示されるようにヒール領域下面の後端と下方支点10
05とは両者とも水平線に接して前後方向に安定し、決
して揺れることがない。これは従来例3として前述した
ロッカーシューズと大きく違う点である。
【0156】図25(a)は“第2の状態”を示し、図
24の着地開始状態“第1の状態”から次第に体重が移
動し、体重がヒール領域下面前端にある下方支点100
5で支えられる状態を示し、体重は主としてヒトの踵部
20と中足骨頭部30とにかかり、それが水平部材10
06と支柱部材1003aとよりなる天秤部材1008
により天秤状に支えられて、下方支点1005に集中し
ている。
【0157】普通の履物と違って例えば体重70kgの
患者であれば70kgの全体重が天秤状に支えられるの
で、それに耐えるように水平材部1006が踵部20と
中足骨頭部30とを結んで設けられている。この水平部
材1006の機能は次項の支柱部材1003aによって
も増強されるので、水平部材1006の機能は後述の支
柱部材1003aと合体したものと考えられ、T字状ま
たは逆三角形状に荷重を支持する。ここでいうT字、逆
三角とは、下方支点に対し必ずしも対称的なものでな
く、下方支点は前方に偏る場合が多い。この水平部材1
006と支柱部材1003aとを総称して以下天秤部材
1008という。
【0158】この天秤部材1008の強さは、第2中足
骨頭部30の位置に荷重15kgを天秤端部で支えた場
合に、中足骨頭部30の位置の底材下面1007の垂れ
下がりが5mmを越えないように担持する担持力を有す
る。好ましくは4mm未満にできることが好ましい。本
実施例では荷重時の垂れ下がりを3mmに抑えてある。
なお上記天秤部材1008の強さに貢献する部材として
水平部材1006と支柱部材1003aとを挙げたが、
そのほかに中底1003mを中足骨頭近くまで硬い材料
で形成すると天秤部材1008の担持力の増強に役立
つ。
【0159】また、本実施例では、上記下方支点100
5の位置は履物本体の後端から第2中足骨頭部30を通
る線に沿って計って履物本体の全長に対し50%の距離
に設定してある。またこの下方支点1005が底材下面
に形成する稜線は図26(c)に鎖線5−5で示すように
小指側を拇指側に比べて前進させて形成した。
【0160】このように本実施例では、水平部材100
6を支えるように、下方支点1005と水平部材100
6との間を支柱部材1003aで結び、この支柱部材1
003aと水平部材1006とで天秤部材1008を形
成しているが、製造原価を引き下げる目的で、この支柱
部材1003aと水平部材1006とは別体に形成せず
に、同一の材料で一体に形成することもできる。
【0161】上記天秤部材1008の垂れ下がりが大き
いと天秤機能をロスさせる。該天秤部材1008の下方
支点1005から天秤上部までの寸法を大きく(天秤支
点の高さを高く)して垂れ下がりによるロスを補償して
もよいが、支柱部材1003aの高さが高いとデザイン
的に見苦しくなる。それを我慢するのであれば上記5m
mを越えて垂れ下がらせ、支柱部材を高くしてもよい。
この垂れ下がりの数値は測定のために中足骨頭部30の
位置だけに荷重を与えた場合の数値であって、現実には
そのような1点集中的な荷重を受けることはなく、足裏
全体で体重を支持するので実際はそのように大きくは垂
れ下がらない。本実施例では上記の1点集中的な荷重を
与えた時の垂れ下がりを3mmに抑えてあるが、できれ
ば垂れ下がりは一層少ないことが好ましい。上記の垂れ
下がり寸法は、本件の出願時に20人の患者に試みた結
果を基にしているが、患者の歩行癖はまちまちであり病
状にも軽重があることを勘案して所要の垂れ下がり寸法
とするものとする。
【0162】天秤部材1008は踵部担持弾性部材10
04aに比べて弾性変形しない材料で形成されることが
好ましい。
【0163】また、製造原価を引き下げる目的で、構造
を簡素化した変形例を示す。この変形例では、底材前部
弾性部材1003と支柱部材1003aと踵部担持弾性
部材1004aとを同一材料とし、図28(a) 、(b) に
示す。
【0164】図28において、前記支柱部材1003a
に相当する部分である支柱部材部分1003bは、踵部
担持弾性部材1004aと同一の材料で一体に形成され
ている。しかるに、図28(a) 、(b) に示すように、支
柱部材部分1003bと踵部担持弾性部材1004aと
は断面積の違いによる弾性力の差がある。換言すれば、
支柱部材部分1003bは空所を設けずに形成され、そ
れに対し踵部担持弾性部材1004aは空所1004
C、1004Mによって断面積を小さくされている。そ
のため支柱部材1003bは踵部担持弾性部材1004
aに比べて弾性変形しない。しかし、図2に示した支柱
部材1003aの機能は、踵部担持弾性部材1004a
に比べて変形せずに支柱として作用する機能の他に、天
秤部材1008の強さを補強する機能をも持っているの
で、図28のように支柱部材部分1003bを踵部担持
弾性部材1004aと同一素材とする場合には、水平部
材1006には十分な強度のものを使用することが好ま
しい。製造原価を引き下げるためには、水平部材100
6を省略し、代わって十分な強度のある中底1003m
をもって水平部材としてもよい。この図28の変形例で
は下方支点1005の部分が荷重を受けて凹み易く、下
方支点1005の位置が不定になり易い。下方支点10
05の位置が不定になると、脚の進行に伴って支点の移
動が生じ下方支点5が前方に移動して歩行を困難にする
(支点の移動の弊害については後述する)。従って、柔
かい素材で支柱部材部分1003bを形成するのはあま
り好ましくない。しかるに、支点の移動を避けようとし
て支柱部材1003bと踵部担持弾性部材1004aと
を共通のやや硬い素材で形成すると、踵部担持弾性部材
1004aが十分に弾性変形しなくなる。そのような弊
害を防ぐために、本変形例では踵部担持弾性部材100
4aの断面積を小さくして(空所を設けて)弾性変形し
易くしている。
【0165】また、上記下方支点1005の位置は、図
では靴本体の後端から測って履物本体の全長に対して5
0%の位置にしてある。実際には、医師が患者に対して
機能をよく説明して患者がこれをよく理解し、踵から着
地する適正な歩き方ができれば40%でも十分である。
しかるに、患者が医師の説明を理解しないで、誤って図
19(従来例)に示したような“爪先歩き”をする患者
も存在した。それは年令が若くて筋力のある患者に多く
見られた。そのような誤用患者の存在をなくすために、
下方支点1005を余分に前進させて設定した。上記下
方支点1005の位置を、41%、43%、45%、4
7%と試みたが、数値が大きくなるに従って誤用患者の
存在は減少した。実験では50%の位置に設定したの
で、若干の例外を除いて誤用患者は存在しなかった。そ
こで上記下方支点1005の位置を55%、58%、6
1%、63%と試みた。その結果、数値の増加に従って
誤用者が減り、また膝伸ばし効果は大きくなるが、無理
に膝を伸ばすので、長距離の歩行で疲労し易いと患者は
訴える。患者に我慢してもらっても、65%を越えると
高齢の患者は疲労が激しく歩行が困難であると言う。ど
のような患者、どの様な病状を対象とするかによって、
上記下方支点1005の位置を決定するものとする。
【0166】図26(c) は本実施例の履物を底面から見
た図である。一般の履物の構造において、底材前部が上
方にカーブして地面から離れる離床点は、ヒールの後端
から測って小指側の離床点が拇指側の離床点に比べて
(小指側が最も短いので)短く、後退して位置するもの
である。しかし本発明の実施例では、上記下方支点10
05の位置は図26(c) に線5−5で示すように、下方
支点5は底材下面を横切る稜線5−5を形成し、この稜
線は、ヒール後端から測って小指側の稜線が拇指側の稜
線に比べて長く、前進して位置している。これは上記一
般の履物とは正反対である。このような設定を行うに到
った理論は本発明の試作実験の途上で発見されたもので
ある。その理論は第8の実施例で後述するように、膝関
節の罹患側が受ける地面からの押し上げ作用を少なくし
たものである。すなわち脚が次第に進行して天秤部材1
008が前に傾くと、体重は稜線が前方に出張った小指
側で多く支えられ、稜線が後退した拇指側で少なく支え
られる。従ってO脚患者の罹患側の荷重を少なくする効
果がある。ただしこの理論は日本人に多いO脚を対象に
したものであり、O脚を伴わない患者には適用しない。
【0167】図25(b) は“第3の状態”を示し、ヒト
の体重が図25(a) のような天秤状に支持されている
“第2の状態”から次第に移動して、体重が第2中足骨
頭部30の底材下面1007と下方支点1005との間
の実質的な直線部分で支えられている状態を示す。
【0168】下方支点1005は履物全体のほぼ中央に
あって足は天秤状に支えられているので“第2の状態”
から“第3の状態”への移動は単に天秤が傾くだけの動
作であり抵抗は少ない。
【0169】この“第2の状態”から“第3の状態”へ
の移動に対する抵抗が少ない理由は、図25(b) に示す
ように、中足骨頭部の底材下面1007と下方支点10
05とは側方から見て実質的に直線状に結ばれていて、
図25(a) から図25(b) の状態に移るのに何の抵抗も
ないためである。もし仮に、図29(a) 、(b) のように
中足骨頭部の底材下面1007と下方支点1005との
間を側方から見て緩く突出した曲線に形成すると、該履
物はデザイン的には良くなるが、機能的には図29(b)
のように、下方支点1005の前方は緩いローラーのよ
うに機能し、接地点がローラー状に転がりつつ前方10
05fに移動し、転がればさらに前方に移動するもの
で、このように接地点が1005fのように移動するこ
とは、下方支点5が移動したのと同じ結果を招いて歩行
を困難にすることになる。もともと上記下方支点100
5の位置は上記のように41%〜65%の範囲で患者か
らの要望や患者の病状を参考にして、医師が最も適切と
考える最良の位置に設定するものであり、この最良の位
置は決して移動しないことが好ましい。そのためには、
第2中足骨頭部30の位置する底材下面1007と下方
支点1005との間は、荷重時に側方から見て、実質的
に直線状または上方に凹んだ形状にすることが好まし
い。このように上方に凹んだ形状にした変形例を図30
に示す。また、後述するようにやむを得ずデザインの都
合で緩い下方突出に形成する場合には、荷重によって凹
んで図25(b) のような直線になりやすいように、中足
骨頭部の底材下面1007と下方支点1005との間
に、気泡、穿孔、空所、凹所、または軟質材のうち少な
くとも一者を設けて凹み易いようにするのが好ましく、
このようにすれば、支柱部材1003aが変形しないの
で、それに比べて凹みやすい前方の部分が荷重で圧縮さ
れて直線状に変形し、下方支点の移動を防止することも
できる。このように荷重による直線化によって底材下面
1007と下方支点1005との間を実質的に図25
(b) の状態にする場合と、最初から図25(b) の形状に
形成する場合と、または図30のように上方に凹んだ形
状にする場合とに共通して、このような“第1の状態”
から“第2の状態”を経て“第3の状態”へ移行するこ
とは、単に天秤の傾きが変わるだけの容易な動作である
ことが病弱者での実験で確認されている。
【0170】下方支点1005は図に示すように、支点
として作用するように角を形成することが機能的に必要
である。この角は鈍い角度であるが、それでも角は他の
部分に比べて磨耗を生じ易い。それを防ぐために、角を
若干削った角(角張らない角)にしても支点としての機
能を失わない程度であれば問題はない。もし角の存在を
嫌う場合には、その角(下方支点1005)から前方に
浮き上がった部分を埋めるように柔らかい材料からなる
装飾的底材形状形成部材を形成しておき、“第3の状
態”になって荷重を担持する状態で、上述したように上
方に凹むようにしてもよい。これは上記目的のための見
せかけの装飾部材に過ぎないから、本発明の基本的な機
能を妨害しないように十分に弾性変形できる柔らかい材
料を選び、浮き上がり角度をゼロに見せるように浮き上
がり部分を全部埋めてもよく、また任意の浮き上がり角
度(例えば3度)であるように形成してもよい。
【0171】また図25(b) の状態は、天秤部材100
8が前に傾いた状態で通常の高いヒールの靴を履いた状
態に似ており、第1および第2の状態に比べてヒールが
若干上がった状態にある。この状態は従来例1で述べた
ようなアキレス腱を無理に引っ張った状態と反対であ
り、アキレス腱を引っ張らずに、緩やかに次の“第4の
状態”(蹴り出し)に移ることができる。このようにア
キレス腱を引っ張らないで、“第4の状態”(蹴り出
し)に移り易く準備した“第3の状態”を以下“高踵型
離床準備状態”とよぶ。本発明はヒールを低くする事を
基本原理とするものであるが、そのような低いヒールで
ありながらアキレス腱を無理に引っ張らないことを可能
にした“高踵型離床準備状態”は、通常の変形性膝関節
症患者に見られる膝の曲がった着床の癖、換言すればア
キレス腱の伸びたような悪い着床癖の発生を防止し、ま
たは矯正するので、変形性膝関節症の進行の防止と痛み
の軽減に効果がある。
【0172】図25(c) は“第4の状態”を示し、ヒト
の体重が図25(b) の“第3の状態”から次第に移動し
て指先で地面を蹴る状態である。この時、底材を曲がり
易くするように空所1003Fが設けられていて、柔軟
に曲がって蹴り出しを容易にする。
【0173】上記の実施例に示した構成によって、着地
が開始されるとヒール領域下面は図24の“第1の状
態”に示すように、中足骨頭部の底材下面1007が水
平線から浮き上がって、底材上面の高さが後方で極端に
低くなることにより、くるぶしの中心50と踵骨下端d
とを結ぶ線(図24に示す斜辺R4 )が鉛直線χ−χに
近付き、図24、図23に符号dで示すように踵骨下端
dをできるだけ鉛直線に近く位置させる。このdの位置
は前述の極端にヒールの低い靴の位置c(図23)を通
り越した低い位置であり、〔発明が解決しようとする課
題〕での説明のように鉛直線からの距離 D = R sinα で表されるDの値を小さくして、膝に与える悪い力“踵
の膝曲げ作用”を軽減することができる(これを“鉛直
線に接近した支持効果”とよぶ。)。
【0174】またこのように爪先が上がった状態(足前
部が空中に浮いた状態)で着地開始されると、また別の
効果が発生する。図24において踵を下げるような力が
矢印Gとして作用し、従って中足骨頭部の底材を空中に
浮き上がらせるように作用すると、これは前述の有害な
着地衝撃(矢印A、B)とは方向が全く正反対の力であ
る。従って、矢印Gの力は有害な着地衝撃(矢印A、
B)の力に対して拮抗し、または押し返すように作用し
て、着地開始時に有益な力を発生させる。この矢印Gの
力が生み出す“爪先上げ効果”は前述の“鉛直線に接近
した支持効果”の主たる効果に対して補助的な効果とな
って相乗的に作用し、“膝伸ばし効果”を発生させるこ
とができる。
【0175】また一方で、前述“膝関節無屈曲効果”に
よって喪失したヒトの天然にもつ衝撃吸収機能を補償す
るために、本実施例では特別の衝撃吸収構造を設けるこ
とにより、特殊な状況に置かれた患者に対して、きわめ
て適切な衝撃吸収力を与えつつ、かつヒトが備える天然
の衝撃吸収機能を超えて、病弱者に優しい衝撃吸収機能
を与えることができ、さらに前述の“爪先上げ効果”を
増加させることができる。
【0176】次に図25(a) のような天秤状の状態“第
2の状態”に移って全体重を担持する。このとき、底材
に形成された天秤部材の強度は、中足骨頭部の位置に1
5kgの荷重を受けたときに上記天秤部材の垂れ下がり
が5mmを越えないように設定し、上記天秤部材上部に
設けられた水平部材6の長さを踵部20から中足骨頭部
30まで達する長さとしたので、体重を該部材により天
秤状に支えることができ、体重の移動を円滑に行えるよ
うになった。また、この実施例の状態では、ほぼ履物全
長の半分の位置に下方支点1005が位置するので、力
学的に負担の少ない状態であり、脚の筋力の乏しい病弱
者でも容易に“第1の状態”からこの“第2の状態”に
移ることができ、下方支点5100第2中足骨頭部の位
置する底材下面1007までの底面を実質的に直線状に
する事によって、何らの抵抗もなく、容易に次の“第3
の状態”に移ることができる。
【0177】図25(b) は“第3の状態”を示し、体重
が中足骨頭部の底材下面1007と下方支点1005と
の間の実質的な直線の部分で支えられている。この“第
3の状態”では通常の高いヒールの靴を履いたような状
態に近づき、〔発明が解決しようとする課題〕で説明し
たようなアキレス腱が引っ張られる状態から開放され
る。このように“第3の状態”に容易に移り得るので、
従来例1で述べた図18のような離床時の無理なアキレ
ス腱の引き延ばしを生じず、継続的に使用しても従来の
ようにアキレス腱が引き延ばされる弊害が生じない。そ
れだけでなく、この効果によって、本発明では、アキレ
ス腱の無理な引っ張りによる弊害を懸念しないで、第1
の状態での理想的な浮き上がり角度を適正な値に自由に
設計できるようになった。これにより理想的な治療効果
が得られる。また、この“第3の状態”では踵が持ち上
がった状態であって、次の離床段階“第4の状態”への
移行を容易にしている。このように踵を高くして次の
“第4の状態”への移行を容易にした状態を以下“高踵
型離床準備状態”という。
【0178】また下方支点1005の形成する稜線の小
指側を前進させることによりO脚の矯正を行うことがで
きる。
【0179】図25(c) は“第4の状態”を示し、蹴り
出しを行う状態であるが、底材の中足骨頭部から前部所
定の位置に空所1003Fを設けることにより、蹴り出
しの動作を行う時底材が曲がりやすく蹴り出しを容易に
できる。
【0180】また本発明の目的とする変形性膝関節の疾
患とは直接関係しないが、副次的な長所ももっている。
本発明の“膝伸ばし効果”により姿勢を良くするほか
に、下方支点1005の形成する稜線の小指側を前進さ
せることにより、または後述の足踏み材上面に傾斜面を
設けることによりO脚(あるいはX脚)を矯正すること
で姿勢を良くする。さらに膝をのばすことに若干のエネ
ルギーを消耗するので、従来例2の靴と同様に、若干の
ダイエット効果を期待することもできる。これらの場合
に共通して、上記従来例1、2と異なって、従来例では
避けられなかった前述の欠点が本発明によって解消さ
れ、長所だけが得られるという効果を生じる。
【0181】実施例7.実施例6では上層部材1009
を弾性変形可能の弾性材で形成した例を示したが、天秤
機構を得るためには、他の実施例として図31(a) 、
(b) に示すように、上層部材1010を弾性変形しない
材料で形成し、この上層部材1010に前述の水平部材
1006(図24)の役割をさせてもよい。図31(a)
において実質的に弾性変形しない支柱部材1011(図
24における支柱部材1003a)と、実質的に弾性変
形しない上層部材1010とによって天秤部材1012
を形成している。衝撃吸収機構としては上層部材101
0の後端を底材から離れさせて空間1010aを形成
し、ヒール領域が弾性変形することは図24の場合と同
じである。この実施例では、後述する装飾的ヒール形状
形成部材を設ける代わりに実質的なヒールの後端eから
後方を邪魔にならないように斜め上方に切り欠いてこの
部分を斜面d2に形成してある。
【0182】本実施例の場合、図24に示した水平部材
1006は図31の上層部材1010に相当し、図24
に示した支柱部材1003aは支柱部材1011に相当
するので、図24と図31(a) は同じ天秤機能を有す
る。荷重を受けた状態では図31(b) に示すように、上
層部材1010が底材1003d部分を凹ませて降下
し、さらに上層部材1010の後部1010bが降下し
て空間1010aを縮小させ、この両作用で衝撃を吸収
するようになっている。この実施例では上層部材101
0が弾性変形しないので、足になじまない欠点を有する
が、それを解消するためには、天秤機能を害さないよう
に留意しながら足に接する面だけを図示しない弾性材で
形成してもよい。
【0183】このように、実質的に弾性変形しない上層
部材1010と支柱部材1011とにより天秤機構を得
ているので、実施例6で示した水平部材1006と上層
部材1009とを兼ねて上記上層部材1010とするこ
とができ、上記実施例6と同様の効果を得ることができ
る。
【0184】実施例8.上記の実施例6の変形性膝関節
症患者用の履物において、上記実施例の効果に加えさら
に内反膝(外反膝)の矯正ができるように、足踏み材に
傾斜面を持った実施例8について説明する。
【0185】図32は、図24に示した上層部材100
9の平面図を示し、図33(a) 、(b) および (c) は図
32の上層部材のa−a断面、b−b断面、c−c断面
を示している。その上層部材1009の表面は、図33
に示すように後方から見て左から右に低くなるように傾
斜し、患者の関節の罹患側方向が低いように傾斜面が形
成されている。
【0186】またヒトの足が上記傾斜面の低い側に向け
て横滑りするのを防ぐために、傾斜面の低い側に図示し
ない強化壁を設けてもよい。
【0187】なぜ傾斜面を形成するのかの理由は公知で
あり、説明を簡単にするが、変形性膝関節症の一例とし
て内反膝(O脚、ガニ股)を例に説明すると、図11に
示すように、軸線方向(alignment)a−aが曲がって、
関節の外側112の軟骨105よりも関節の内側111
が多くの荷重を受けて軟骨が摩耗、欠損し、患部106
となって骨が露出した状態になっている。それを矯正す
る手段として、足踏み材に斜面を設けて、片側が低いこ
とによって図12のように、関節の内側を下向きの矢印
Eのように下げて矢印Fの力を発生させ、好ましくは図
12のように軸線方向を矯正して患部を荷重から開放し
ようと試みる。この方法でも効果は認められるが、希望
通りには矯正できず、この手段だけでは効果は満足でき
ないのが現状であり、その問題を解決するのが本実施例
8、及び以下の実施例9である。
【0188】なお以上は内反膝の例をもって説明した
が、外反膝の場合は上記の説明文中それぞれ外側は内側
に、内側は外側に読み替え、傾斜面も反対方向に傾斜さ
せるものとし、説明は省略する。
【0189】この傾斜面は本実施例では上層部材100
9によって傾斜を形成したが、上層部材1010によっ
て傾斜を形成してもよく、足踏み材上面を傾斜させても
よい。
【0190】図32および図33に示した上層部材10
09を弾性材で形成する場合には、例えば40度の硬度
のE.V.A.発泡樹脂を用いて形成する。この場合上
層部材1009の弾性は前述の踵部担持弾性部材100
4aと協同して作用するので、その作用は同一の上位概
念の下にある。けれども両者には機能上の相違点があ
る。
【0191】踵部担持弾性部材1004aの弾性は、例
えば70kgの荷重に耐える強い弾性が要求される。こ
の要求は例えば鉄道におけるレールと車輪との衝撃を吸
収するような強い弾性である。従って歩行によって上記
70kgの体重が負荷されたときに限って十分に弾性変
形する。ところが上層部材1009は車両の座席のよう
に、もっと弱い力(例えば1kg)で変形することが望
ましい。その理由は、着地が開始される瞬間には、未だ
70kgの体重は負荷されていないので、強い弾性を有
する踵部担持弾性部材1004aは変形されず、弱い力
で変形する上層部材1009が着地瞬間の初期衝撃を吸
収する。この着地瞬間の初期衝撃こそ、膝に痛みを持つ
患者の最も苦痛とするところである。着地瞬間を過ぎて
体重70kgが静止荷重として負荷されても痛みへの影
響は少ない。
【0192】ところが上層部材1009には上記初期衝
撃を吸収する機能の他に、さらに前述の斜面形状保持の
機能が求められ、この斜面は、体重に負けて変形しては
ならない。そこでたとえば1kgの軽い初期衝撃でも弾
性変形する柔かさを持つことと、70kgの重い静止荷
重に耐えて形状を保持できる強い形状保持機能を持つこ
ととの両機能を有することが求められる。
【0193】図32に示す本実施例8の上層部材100
9は、横断面が図33(a) 、(b) および(c) に示すよう
に傾斜面が形成されている。この場合、踵部担持弾性部
材1004aに比べて、上層部材1009のヒトの足に
接する面積が格段に広くて、単位面積当たりの荷重が小
さいので、このような上層部材1009は踵部担持弾性
部材1004aに比べて柔らかい材料で形成することが
できる。
【0194】さらに上記両機能を有するためには、図3
2に領域Qで示される部分を後述のように構成した変形
例とすることもできる。この領域Qは踵骨から強い圧力
を受ける領域であり、着地の初期に真っ先に荷重を受け
る部分であり、この特別に設け領域Qにより、微小な初
期衝撃を吸収することができる。この領域は、他の領域
に比べて、図32では図示しない多数の気泡によって、
たとえ1kgの荷重でも容易に弾性変形するように柔か
くしてあるが、この多数の気泡に代えて、穿孔、空所、
凹所などを設けて柔かくしてもよく、または上層部材1
009の他の部分よりも一層柔かい素材を用いて領域Q
を形成してもよい。
【0195】このように構成することによって、傾斜面
を形成する形状保持機能を維持しつつ、同時に微弱な着
地初期衝撃を吸収して、患者の最も恐れる着地瞬間の痛
みを防止することができる。
【0196】また傾斜面の低い側に滑り止めを設けるこ
とにより、足が横滑りして甲皮を押し曲げることを防ぐ
ことができる。
【0197】実施例9.上記実施例8の履物を用いて実
験してみると、予想に反して上記傾斜面の効果が得られ
ない場面に遭遇したが、その原因は不明である。なぜ予
想のような効果が得られないのかを究明しているうちに
次の原因によることが判明した。すなわち、上記踵部担
持弾性部材4aは極端に柔軟な素材で形成されるので、
上記傾斜面の高い側を担持する踵部担持弾性部材100
4aは、上記傾斜面の低い側を担持する踵部担持弾性部
材1004aよりも大きな荷重を受けて多く圧縮されて
降下した。このように傾斜面の高い側が低い側に比べて
余分に多く降下することは図12に示した矢印Eと反対
の矢印Wの力を生じ、図11に示したような悪い方向に
軸線a−aを曲げるような力が発生する。この現象は注
意して観察しなければ気付かないが、これは踵部担持弾
性部材1004aを特別に柔軟な材料で形成する場合に
おける宿命的な現象である。このように踵部担持弾性部
材1004aが左右均等に降下しないで傾斜面の高い側
の踵部担持弾性部材が多く降下する現象を、以下“ヒー
ルの不均等降下現象”と呼ぶ。
【0198】本実施例では上記の問題点を次のように解
決する。図34は本実施例の靴の底材下面を底面カバー
材1003cに沿って底材底面から上方1mmの高さで
切断した底材最下面近傍の水平断面図である。図におい
て、踵部担持弾性部材1004aは患部側1004lで
断面積を小さく、反対側1004rで断面積を大きくし
てあり、換言すれば患部側の空所1004Lは反対側の
空所1004Rよりも大きくしてある。そのため患部側
は弱い圧力でも圧縮される。換言すれば断面積を調節し
て、1004lの断面積と1004rの断面積に差を設
けることによって、前項に説明した悪い方向の力が軸線
a−aを曲げるように作用することを補正する。これは
空所の大きさに差を設けた例であるが、空所の大きさに
代えて、図示しない、凹所、気泡などの大小または個数
に差を設けて患部側を降下し易くしてもよい。また、図
35に示すように、踵部担持弾性部材1004aは患部
側を弱い力で弾性変形する(柔かい)材料Sで形成し、
反対側を弾性変形しにくい(硬い)材料Hで形成しても
よい。また材料Sと材料Hとの間に図示しない中間材料
帯を設けてもよい。またこれらの手段を併用してもよ
い。
【0199】このように踵部担持弾性部材1004aを
構成しヒール領域を形成する事によって、本発明の基本
構成である“柔らかい踵部担持弾性部材”を用いて体重
を担持して“天然の衝撃吸収機能”の喪失を補償しなが
ら、その場合に上記左右傾斜面を設けることによって必
然的に発生する上記“ヒールの不均等降下現象”の発生
を防止し、上記左右傾斜面の傾斜角度を正確に保持する
ことができる。
【0200】実施例10.上記実施例6ないし9におい
て、実質的に体重を担持する部分である踵部担持弾性部
材1004aの後端eの位置は本実施例では履物の後端
から計って靴全長の10%の位置に設けた。また、踵部
担持弾性部材1004aの後方の切れ欠き部分に装飾的
ヒール形状形成部材を設けた。
【0201】図26(a) に示す無荷重時の状態では、着
地開始時に踵部で体重を担持するための踵部担持弾性部
材1004aは予め計算された弾性材で、計算された形
状に形成されていて、着地が開始されて体重を担持する
状態になった場合に図24のように圧縮変形するが、本
実施例では、図36に示すように、踵部担持弾性部材1
004aの後方には装飾的ヒール形状形成部材1004
bが形成されていて、この装飾的ヒール形状形成部材1
004bは、できるだけ体重の担持に関与しないよう
に、踵部担持弾性部材1004aよりも変形し易く形成
されているので、従来例で説明した“踵の膝曲げ作用”
は軽減される。その結果、図20(b) に示した“踵の膝
曲げ作用”を防止する。
【0202】この実施例では装飾的ヒール形状形成部材
1004bは空所1004Cを大きくすることによって
変形し易くしてあるが、これはこの空所1004Cに代
えて踵部担持弾性部材1004aと同じ材料で形成し、
図示しない凹所または気泡を多くしても同様の効果が得
られ、また踵部担持弾性部材1004aに比べて柔かい
材料で形成してもよい。図26(a) に符号eで示した位
置から後方は図のように上昇斜面d1として地面から離
れるように若干上昇して形成することが好ましい。また
変形例としては図31(a) 、(b) に示すように踵部担持
弾性部材1004aの後端eから後方を切り欠いて傾斜
部d2を形成してもよい。
【0203】図37は図36に示した装飾的ヒール形状
形成部材1004bの作用を説明する図であり、説明の
ために、上記装飾的ヒール形状形成部材1004bの空
所1004C(図36)を図37では材料1004hで
埋められたものとした。もし図36と同じ条件で坂道を
降りるとき、または爪先を上げた着地では空所1004
Cが無いため従来例で説明した有害な地面からの矢印A
の反力が1004h部で発生し、膝関節の患部に衝撃を
与える。
【0204】図37に比べると図36では大きな空所1
004Cが容易に変形し、地面から受ける反力は小さ
い。このような効果は降り坂の場合だけでなく、患者の
歩行癖が爪先上がりに着地する場合にも有効である。も
し理想的な機能を求めて外観を気にしないならば、むし
ろ装飾的ヒール形状形成部材1004b、1004hは
無い方がよい。また変形例として、前述の図37のよう
に装飾的ヒール形状形成部材の空所を4hで示すように
弾性材で埋めたものでも、踵の切れ欠きを鎖線d−dの
ように一層急角度に形成すれば実質的なヒール後端eか
ら後方が欠けたような、デザイン的に悪いものになる
が、“鉛直線に接近した支持効果”に近似した効果が得
られる。ただし患者の病状等には大きな個人差があり、
しかも余病を併発している場合もある。
【0205】高齢者で起立能力を欠乏して満足に起立で
きない患者に対しては図37で述べたように、ヒール後
部1004hを埋めた構造にして起立能力の不足を補う
ようにする場合も生じる。このような図37のような構
造の場合でも、本発明では踵部担持弾性部材1004a
が十分に柔かい弾性材で形成されているので、実質的な
支持点は前進して位置し、これにより前述の“鉛直線に
接近した支持効果”ほど明確でないが同様の効果を得る
ことができる。
【0206】上記各実施例および変形例において、実質
的に体重を担持する踵部担持弾性部材1004aの下面
後端eの位置は履物本体の後端よりも前進させた位置に
ある。この位置は履物の後端から計って履物全長の少な
くとも5%の位置、好ましくは6%ないし7%以上とす
る。この実施例では履物本体の後端よりも10%前進し
た位置に踵部担持弾性部材1004aの後端eを設定し
てある。このように、踵部担持弾性部材1004aの後
端eを前進させて設定されていることは“膝関節の無屈
曲効果”を一層充実させることに効果がある。すなわ
ち、後端eが前進して設けられている結果、斜辺R4
(図23、図24)よりも鉛直線に近付けて踵骨下端を
位置させることが可能になる。
【0207】また先願として図17に示したヒール後端
Eは硬い材料で角張った角に形成されていて、着地開始
の瞬間には、この後端Eだけに集中した体重を担持する
が、それに反して、図24の実施例では、踵部担持弾性
部材1004a自体は柔かい材料で形成されているの
で、図24に示した後端eの角張りは角張っているよう
に見えても実際には柔軟に変形するものであり、むしろ
実質ヒール1004a全体で体重を担持するので、図に
示した角張った後端eよりも前方に実質的な支持点があ
るものと考えられる。その支持点は図34に示すよう
に、踵部担持弾性部材1004aの重心V付近に存在す
ると考えてもよい。この重心Vを通過する斜辺5を想定
して、図24、図23に点線で示したように、斜辺R5
は斜辺R4を通り越して、鉛直線に一層近くなる。この
斜辺R5の角度の推定は確定的ではないが、少なくとも
図23に示した斜辺R1、R2、R3またはR4を通り
越して、鉛直線χ−χに接近することは確実であると予
想できる。このように斜辺がR5のように鉛直線χ−χ
に近づくような体重支持状態により生じる効果を“鉛直
線に接近した支持効果”という。
【0208】このように、実質的なヒールである踵部担
持弾性部材1004aの後端を履物本体の後端よりも前
進させた位置とすると、前述のように斜辺R5が一層上
記鉛直線χ−χに近付き、体重は履物本体の後端よりも
前進した位置で支持され、前述の“鉛直線に接近した支
持効果”によって有害な矢印Aの力(図20)を防止
し、矢印B方向の“踵の膝曲げ作用”をさらに十分に防
止することができる。
【0209】もし底面カバー材1003cを省略する場
合には、上記実施例6ないし10の構成によってできた
空所、凹所が露出して見苦しいので、これを弾性力が他
の部分のそれ以下の弾性材で充填することにより、外観
を整えて奇異な外観になるのを防ぐこともできる。
【0210】また図26(b) に本施例の履物の外観図を
示したが、前述の各実施例で説明した上層部材100
9、中底1003m、水平部材1006、踵部担持弾性
部材1004a、靴底前部弾性部材1003、支柱部材
1003aは、図示しない被覆材で覆われ、足踏み材1
003gを形成している。この足踏み材1003gの下
には、合成樹脂の発泡材を被覆材で包まずに露出させた
底面カバー材1003cが設けられており、足踏み材1
003gは底面カバー材1003cに接合されている。
図38に示すように、甲皮1002bの下の下端100
2cは、足踏み材1003gと底面カバー材1003c
との間に縫い込まれている。甲皮1002bと足踏み材
1003gと底面カバー材1003cの三者の縫製方法
は、図38(a) 、(b) に示すように甲皮下端1002c
を内部部材1009と踵部担持弾性部材1004aとの
間に縫い込まれる方法、あるいは踵部担持弾性部材10
04aと底面カバー材1003cとの間に縫い込まれる
方法等様々あるが、この発明の機能に本質的に関係しな
いので縫製はこの方法に限定されるものではない。この
ように、上記各部材を図示しない被覆材で覆うことによ
り各部材が露出して外観が見苦しくなるのを防ぐことが
できる。
【0211】
【発明の効果】
〔効果1〕以上のようにこの発明によれば、靴本体は、
甲皮、靴底よりなり、その踵部に荷重を受けた状態で、
上記靴底の第2中足骨頭の位置する靴底下面と上記靴底
のヒール領域の下面前端とを結ぶ線が、接地したヒール
領域下面後端とヒール領域下面前端とを結ぶ水平線の延
長線に対して、角度をもって水平線から浮き上がるよう
に、上記ヒール領域における靴底上面から地面までの厚
さが、ヒール領域前部に比べてヒール領域後部が薄くな
るように形成し、かつヒール領域後部はヒトの足に接す
る面の踵部の高さが荷重を受けた時降下するような衝撃
吸収機構を備えているから、着地時に中足骨頭部の位置
する靴底下面が水平線から浮き上がることによって得ら
れる“鉛直線に接近した支持効果”が“踵の後方突出現
象”を防止し、着地の瞬間に踵骨が押し上げられて膝が
曲げられる“踵の膝曲げ作用”が低減され“膝関節の無
屈曲効果”を得るとともに“爪先上げ”による“膝伸ば
し効果”をも得られる。またこのような構成にする場合
の副作用として必然的に生じる“天然の衝撃吸収機能の
喪失”を補償するために、衝撃吸収機構を備えているの
で、着床時の衝撃を吸収でき、膝関節の磨耗を防止でき
る。さらに“第1の状態”から“第2の状態”をへての
“第3の状態”への移行は、単に靴の傾きが変わるだけ
でよく、容易に移行でき、また“第3の状態”は次の離
床段階に移りやすい“高踵型の離床準備状態”にある。
そのため膝を曲げてアキレス腱を伸ばしたような姿勢で
着地開始する癖をもつ膝関節症患者の癖を矯正するが、
その矯正は、上記離床容易な“高踵型離床準備状態”に
よって筋力の衰えた患者にも実施できる効果がある。以
上の機能は物理的に作用し、変形性膝関節症患者の膝関
節の磨耗を防止でき、症状の進行を防止できる効果が得
られる。
【0212】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記第2中足骨頭が位置する靴
底下面が地面から浮き上がる角度を、該靴の踵部が荷重
70kgを受けた状態で少なくとも5度であるものとし
たから、上記〔効果1〕に述べた浮き上がり角度を適正
に保ち、上記効果を確実にできる効果がある。
【0213】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、ヒトの踵
部に位置し踵部の荷重を受けて容易に弾性変形する少な
くとも一部が弾性材よりなる踵部担持弾性部材または靴
内に内部部材を有し、それらの弾性変形によってヒトの
踵部に接する上記内部部材の表面が降下するものである
から、上記〔効果1〕で述べた衝撃を吸収し、上記効果
を増強することができる。
【0214】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記靴底およびヒール領域は、
上記ヒール領域の前端に位置する下方支点と、この下方
支点の上方に位置する水平部材とによって天秤部材を形
成したから、上記〔効果1〕で述べた“第1の状態”か
ら“第3の状態”まで抵抗なく移行でき、〔効果1〕の
効果を増強することができる。
【0215】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記天秤部材は、中足骨頭の位
置と踵部の位置とで体重を受けて上記下方支点を支点と
して体重を天秤状に担持するように、その水平方向の長
さは実質的に踵骨の位置から中足骨頭の位置に達する長
さとしたから、該天秤部材の体重担持機能を確実にし、
上記〔効果1〕の効果を増強することができる。
【0216】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記下方支点の位置を、靴本体
の後端から第2中足骨に沿って測って、靴本体の全長に
対して41%〜65%の距離に設置したから、上記〔効
果1〕で述べた効果を得るためにもっとも適した位置に
上記下方支点の位置を設定できる効果がある。
【0217】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記下方支点は靴底底面にその
底面を横切る稜線を形成し、その稜線のヒール後端から
の距離は、第2中足骨頭と踵骨中心とを結ぶ線に平行に
測って小指側の稜線を拇指側の稜線に比べて前進させた
ものとしたから、上記〔効果1〕の効果に加えて、特に
O脚に有効な下方支点の位置を設定できる効果がある。
【0218】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記第2中足骨頭の位置する靴
底下面と上記下方支点との間の靴底底面の形状を、負荷
時に側方から見て実質的に直線状又は上方に凹んだ形状
に形成したから、体重の移動中に上記下方支点が移動す
るのを防ぎ、変形性膝関節症患者の歩行時の抵抗を小さ
くできる効果がある。
【0219】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記ヒール領域下面後端と上記
下方支点との間の靴底底面の形状を、負荷時に側方から
見て実質的に直線状又は上方に凹んだ形状に形成したか
ら、上記〔効果1〕で述べた浮き上がり角度を正確に保
ち、下方支点が移動しないようにし、安定して上記角度
を維持できる効果がある。
【0220】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記ヒトの踵に接する面の有す
る上記衝撃吸収機構は、ヒトが歩行するときに踵が地面
から受ける反力で膝が前方に曲がって衝撃を吸収する、
ヒトの有する膝の衝撃吸収機能に代わって、またはその
機能を越えて衝撃吸収を達成するものであるから、着地
時の衝撃が吸収され、上記〔効果1〕で述べた衝撃吸収
効果をさらに十分なものにする効果がある。
【0221】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の弾性力
は、上記天秤部材を形成する各部材に比べて容易に弾性
変形できるものとしたから、上記〔効果1〕で述べた衝
撃吸収効果と上記体重担持機能とを得ることができる効
果がある。
【0222】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材と上記天
秤部材との弾性力の差を、気泡、穿孔、空所および凹所
の形状の大小の差または個数の差と、断面積の差または
材質の弾性の差のうち少なくとも一者によって形成した
から、前項で述べた衝撃吸収効果をもつ踵部担持弾性部
材と体重担持機能をもつ天秤部材との弾性の差を得るこ
とができる効果がある。
【0223】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、ヒトの踵
部分に接する面が荷重70kgを受けた場合に靴内に設
けた内部部材または上記踵部担持弾性部材の弾性変形に
よって衝撃を吸収し、上記ヒトの踵部分の下端に接する
面の高さが少なくとも靴全長の2%の降下を生じるもの
としたから、上記〔効果1〕で述べた衝撃吸収効果を十
分なものとすることができる効果がある。
【0224】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、踵部が荷
重70kgを受けた場合に上記踵部担持弾性部材の弾性変
形によって衝撃を吸収し、靴底上面後端の高さが少なく
とも靴全体の0.5%の降下を生じるから、上記〔効果
1〕で述べた衝撃吸収効果を得ることができる効果があ
る。
【0225】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記衝撃吸収機構は、その衝撃
吸収機構の少なくとも一部を衝撃吸収材で形成したか
ら、上記〔効果1〕で述べた衝撃のうち微細な衝撃成分
を吸収することができる効果がある。
【0226】〔効果2〕またこの発明によれば、上記変
形性膝関節症患者用の靴において、荷重時に、膝関節の
罹患部分が低くなるように、後方から見て左から右に低
くなる、または右から左に低くなる傾斜面を、靴本体内
部の底面に形成したから、上記〔効果1〕に加えて、関
節上下に連接する各骨の軸方向を膝関節の罹患側を保護
する方向に矯正でき、上記〔効果1〕との相乗効果を得
ることができる効果がある。
【0227】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記傾斜面を、靴本体の内側に
設けた弾性材からなる内部部材に形成したから、上記
〔効果2〕に加えて、上記〔効果1〕で述べた着地時の
衝撃を、弾性を有する内部部材により吸収できる効果が
ある。
【0228】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記傾斜面を、該傾斜面のヒト
の踵を担持する部分が他の領域に比べて弾性変形し易く
形成したから、前項の効果に加えて、着地時の初期衝撃
を吸収することができる効果がある。
【0229】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記傾斜面の部分的な弾性力の
差を、気泡、穿孔、空所および凹所の形状の大小の差ま
たは個数の差、または材質の弾性の差のうち少なくとも
一者によって形成したから、前項の効果を得るための弾
性力の差を適正に調整でき、上記効果を確実にできる効
果がある。
【0230】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材は、上記
傾斜面の低い側を担持する部分を、上記傾斜面の高い側
を担持する部分に比べて降下し易いように、上記低い側
担持部分と上記高い側担持部分との弾性力に差を設けた
から、上記〔効果2〕を得るための傾斜面を形成しなが
ら、その結果として発生する“ヒールの不均等降下現
象”を防止しつつ、同時に上記〔効果1〕で述べた衝撃
を吸収できる効果がある。
【0231】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の部分的
な弾性力の差を、気泡、穿孔、空所および凹所の形状の
大小の差または個数の差と、断面積の差または材質の弾
性の差のうち少なくとも一者によって形成したから、前
項の効果を得るための弾性力の差を適正に調整でき、前
項の効果を確実にできる効果がある。
【0232】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、踵部分の甲皮は、上記傾斜面の
低い側へ向けてヒトの足が滑らないように、傾斜面の低
い側の甲皮を高い側の甲皮に比べて強化材で強化したか
ら、上記〔効果2〕に述べた構造によって生じる踵の横
滑りを防止し、甲皮の変形を防止できる効果がある。
【0233】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の後方に
該踵部担持弾性部材よりも弾性変形し易くした装飾的ヒ
ール形状形成部材を有してなるから、上記〔効果1〕で
述べた“鉛直線に接近した支持効果”を得るために上記
踵部担持弾性部材の下面後端が靴の後端よりも前進して
位置していても外観が奇異にならない靴を得ることがで
きる効果がある。
【0234】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記踵部担持弾性部材の下面後
端の位置は、靴の後端から少なくとも靴全長の5%の長
さの位置としたから、上記〔効果1〕で述べた“鉛直線
に接近した支持効果”により“踵の膝曲げ作用”を低減
できる効果がある。
【0235】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、靴底上面と接地面との間に形成
される上記天秤部材、上記踵部担持弾性部材、上記装飾
的ヒール形状形成部材の各部材の有する空間および各部
材相互間の空間を、その弾性力が上記各部材よりも弱い
弾性材で充填したから、底面カバー材を設けない場合で
も構成部材が露出せず、外観を整えることができる効果
がある。
【0236】またこの発明によれば、上記変形性膝関節
症患者用の靴において、上記浮き上がった第2中足骨頭
の位置する靴底底面に、容易に弾性変形する弾性材から
なる装飾的靴底形状形成部材を有してなるから、上記
〔効果1〕で述べた効果に加え、より通常の靴に近い外
観を有する靴を得ることができる効果がある。
【0237】〔総合的な効果〕上述の機能および作用は
全く物理的なものであって、関節患部の摩擦による損耗
を防ぐので、常用すれば疾患の進行を防止できる。また
医薬品のように時間の経過を必要としないので、患者が
この靴を履けばただちに歩行時の痛みが消えるという即
効性がある。つまり、結果として“患部の痛みの為に歩
行が困難な患者が歩けるようになるもの”であり、多く
の変形性膝関節症患者を救うものと期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物で歩行を行った時の“第1の状態”を示す縦断面
図。
【図2】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物で歩行を行った時の“第2の状態”を示す縦断面図
(図2(a) )、“第3の状態”を示す縦断面図(図2
(b) )、“第4の状態”示す縦断面図(図2(c) )。
【図3】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物を示す縦断面図(図3(a))、外観図(図3(b)
)、およびこの履物を底面から見た下面図(図3(c)
)。
【図4】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物の変形例を示す縦断面図。
【図5】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物の変形例を示す縦断面図(図5(a) )、およびこの
履物の底面カバー材直上の靴底部の水平断面図(図5
(b) )。
【図6】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物の機能を説明する縦断面図(図6(a) 、図6(b)
)。
【図7】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用の
履物の変形例を示す縦断面図。
【図8】本発明の第2の実施例による膝関節症患者用の
履物を示す縦断面図(図8(a),(b) )。
【図9】本発明の第3の実施例による膝関節症患者用の
履物の内部部材の平面図。
【図10】図9の内部部材のa−a断面図(図10(a)
)、b−b断面図(図10(b) )、c−c断面図(図
10(c) )。
【図11】患者の関節を示す説明図。
【図12】患者の関節を示す説明図。
【図13】本発明の第4の実施例による膝関節症患者用
の履物の底面カバー材直上の靴底部の水平断面図。
【図14】図13の変形例を示す底面カバー材直上の靴
底部の水平断面図。
【図15】本発明の第5の実施例による膝関節症患者用
の履物を示す縦断面図。
【図16】図15の作用を示す説明図。
【図17】先願の靴を示す縦断面図。
【図18】従来の靴の外観を示す側面図。
【図19】従来の靴の外観を示す側面図。
【図20】ヒトの踵にかかる力が膝に及ぼす作用を説明
する説明図。
【図21】従来のハイヒール靴の作用を説明する説明
図。
【図22】従来の低いヒールの靴の作用を説明する説明
図。
【図23】本発明の第1の実施例による膝関節症患者用
の履物の理論を説明するための説明図。
【図24】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物で歩行を行った時の“第1の状態”を示す縦断面
図。
【図25】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物で歩行を行った時の“第2の状態”を示す縦断面
図(図2(a) )、“第3の状態”を示す縦断面図(図2
(b) )、“第4の状態”示す縦断面図(図2(c) )。
【図26】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物を示す縦断面図(図3(a))、外観図(図3(b)
)、およびこの履物を底面から見た下面図(図3(c)
)。
【図27】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物の変形例を示す縦断面図。
【図28】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物の変形例を示す縦断面図(図28(a) )、および
この履物の底面カバー材直上の底材底部の水平断面図
(図28(b) )。
【図29】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物の機能を説明する縦断面図(図29(a) 、図29
(b) )。
【図30】本発明の第6の実施例による膝関節症患者用
の履物の変形例を示す縦断面図。
【図31】本発明の第7の実施例による膝関節症患者用
の履物を示す縦断面図(図31(a),(b) )。
【図32】本発明の第8の実施例による膝関節症患者用
の履物の上層部材の平面図。
【図33】図32の上層部材のa−a断面図(図33
(a) )、b−b断面図(図33(b))、c−c断面図
(図33(c) )。
【図34】本発明の第9の実施例による膝関節症患者用
の履物の底面カバー材直上の底材底部の水平断面図。
【図35】図34の変形例を示す底面カバー材直上の底
材底部の水平断面図。
【図36】本発明の第10の実施例による膝関節症患者
用の履物を示す縦断面図。
【図37】図36の作用を示す説明図。
【図38】一般のスリッパにおける縫製を説明する図
(図38(a) 、(b) )。
【符号の説明】
100 靴本体、101 甲皮、102 靴底、3 靴
底前部弾性部材、3a支柱部材、3b 支柱部材部分、
3c 靴底カバー材、3m 中底、3F 空所、4 ヒ
ール領域、4a 踵部担持弾性部材、4b 装飾的ヒー
ル形状形成部材、4M 空所、4C 空所、4L 空
所、4R 空所、5 下方支点、6 水平部材、7 中
足骨頭部の位置する靴底下面、8 天秤部材、9 内部
部材、10 内部部材、11 支柱、12 天秤部材、
10a 空間、20 ヒトの踵部、30 ヒトの中足骨
頭部、40 ヒトの中足骨、50 くるぶしの中心、6
0 ヒトの脛骨、70 ヒトの大腿骨、105 外側軟
骨、106 患部、V踵部担持弾性部材の重心、110
0 履物本体、1101 甲被、1102底材、100
3 底材前部弾性部材、10003a 支柱部材、10
03b 支柱部材部分、1003c 靴底カバー材、1
003m 中底、1003F 空所、1004 ヒール
領域、1004a 踵部担持弾性部材、1004b 装
飾的ヒール形状形成部材、1004M 空所、1004
C 空所、1004L 空所、1004R 空所、10
05 下方支点、1006 水平部材、1007 中足
骨頭部の位置する靴底下面、1008 天秤部材、10
09 上層部材、1010 上層部材、1011 支
柱、1012 天秤部材、1010a 空間。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平5−252260 (32)優先日 平5(1993)9月14日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平5−316015 (32)優先日 平5(1993)11月22日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−107764 (32)優先日 平6(1994)4月21日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−136338 (32)優先日 平6(1994)5月26日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 向阪 光子 大阪府堺市城山台3丁9番13号 (72)発明者 井阪 くみ子 大阪府和泉市観音寺町41番地

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 甲皮、靴底よりなり変形性膝関節症に罹
    患した患者に用いる履物において、 その踵部に荷重を受けた状態で、上記靴底の第2中足骨
    頭の位置する靴底下面と上記靴底のヒール領域の下面前
    端とを結ぶ線が、接地したヒール領域下面後端とヒール
    領域下面前端とを結ぶ水平線の延長線に対して、角度を
    もって水平線から浮き上がるように、上記ヒール領域に
    おける靴底上面から地面までの厚さが、ヒール領域前部
    に比べてヒール領域後部が薄くなるように形成され、 かつ、このヒール領域後部はヒトの足に接する面の踵部
    の高さが荷重を受けた時降下するような衝撃吸収機構を
    備えていることを特徴とする変形性膝関節症患者用の靴
    である履物。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の変形性膝関節症患者用
    の履物において、 上記第2中足骨頭が位置する靴底下面が地面から浮き上
    がる角度は、該靴の踵部が荷重70kgを受けた状態で
    少なくとも5度の角度であることを特徴とする変形性膝
    関節症患者用の靴である履物。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の変形性膝関節症患者用
    の履物において、 上記衝撃吸収機構は、ヒトの踵部に位置し踵部の荷重を
    受けて容易に弾性変形する少なくとも一部が弾性材より
    なる踵部担持弾性部材または靴内に内部部材を有し、そ
    の弾性変形によってヒトの踵部に接する上記内部部材の
    表面が降下するものであることを特徴とする変形性膝関
    節症患者用の靴である履物。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の変形性膝関節症患者用
    の履物において、 上記靴底およびヒール領域は、上記ヒール領域の前端に
    位置する下方支点と、この下方支点の上方に位置する水
    平部材とによって天秤部材を形成していることを特徴と
    する変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  5. 【請求項5】 請求項1または4に記載の変形性膝関節
    症患者用の履物において、 上記天秤部材は、中足骨頭の位置と踵部の位置とで体重
    を受けて上記下方支点を支点として体重を天秤状に担持
    するように、その水平方向の長さは実質的に踵骨の位置
    から中足骨頭の位置に達することを特徴とする変形性膝
    関節症患者用の靴である履物。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載の変形性膝関節症患者用
    の履物において、 上記下方支点の位置は、靴本体の後端から第2中足骨に
    沿って測って、靴本体の全長に対して41%〜65%の
    距離にあることを特徴とする変形性膝関節症患者用の靴
    である履物。
  7. 【請求項7】 請求項4または6に記載の変形性膝関節
    症患者用の履物において、 上記下方支点は靴底底面にその底面を横切る稜線を形成
    し、その稜線のヒール後端からの距離は、第2中足骨頭
    と踵骨中心とを結ぶ線に平行に測って小指側の稜線が拇
    指側の稜線に比べて前進していることを特徴とする変形
    性膝関節症患者用の靴である履物。
  8. 【請求項8】 請求項1または4に記載の変形性膝関節
    症患者用の履物において、 上記第2中足骨頭の位置する靴底下面と上記下方支点と
    の間の靴底底面の形状は、負荷時に側方から見て実質的
    に直線状又は上方に凹んだ形状であることを特徴とする
    変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  9. 【請求項9】 請求項1または4に記載の変形性膝関節
    症患者用の履物において、 上記ヒール領域下面後端と上記下方支点との間の靴底底
    面の形状は、負荷時に側方から見て実質的に直線状又は
    上方に凹んだ形状であることを特徴とする変形性膝関節
    症患者用の靴である履物。
  10. 【請求項10】 請求項1または3に記載の変形性膝関
    節症患者用の履物において、 上記ヒトの踵に接する面の有する上記衝撃吸収機構は、
    ヒトが歩行するときに踵が地面から受ける反力で膝が前
    方に曲がって衝撃を吸収する、ヒトの有する膝の衝撃吸
    収機能に代わって、またはその機能を越えて衝撃吸収を
    達成するものであることを特徴とする変形性膝関節症患
    者用の靴である履物。
  11. 【請求項11】 請求項3または4に記載の変形性膝関
    節症患者用の履物において、 上記踵部担持弾性部材の弾性力は、上記天秤部材を形成
    する各部材に比べて容易に弾性変形できるものであるこ
    とを特徴とする変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の変形性膝関節症患
    者用の履物において、 上記天秤部材と上記踵部担持弾性部材との弾性力の差
    は、気泡、穿孔、空所および凹所の形状の大小の差また
    は個数の差と、断面積の差または材質の弾性の差のうち
    少なくとも一者によって形成されていることを特徴とす
    る変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  13. 【請求項13】 請求項3に記載の変形性膝関節症患者
    用の履物において、 上記衝撃吸収機構は、ヒトの踵部分に接する面が荷重7
    0kgを受けた場合に靴内に設けた内部部材または上記
    踵部担持弾性部材の弾性変形によって衝撃を吸収し、上
    記ヒトの踵の下端に接する面の高さが少なくとも靴全長
    の2%の降下を生じるものであることを特徴とする変形
    性膝関節症患者用の靴である履物。
  14. 【請求項14】 請求項3に記載の変形性膝関節症患者
    用の履物において、 上記衝撃吸収機構は、踵部が荷重70kgを受けた場合に
    上記踵部担持弾性部材の弾性変形によって衝撃を吸収
    し、靴底上面後端の高さが少なくとも靴全体の0.5%
    の降下を生じるものであることを特徴とする変形性膝関
    節症患者用の靴である履物。
  15. 【請求項15】 請求項10記載の変形性膝関節症患者
    用の履物において、 上記衝撃吸収機構は、その衝撃吸収機構の少なくとも一
    部が衝撃吸収材で形成されていることを特徴とする変形
    性膝関節症患者用の靴である履物。
  16. 【請求項16】 請求項1、3、4、6、または7に記
    載の変形性膝関節症患者用の履物において、 荷重時において、膝関節の罹患部分が低くなるように、
    後方から見て左から右に低くなる、または右から左に低
    くなる傾斜面が靴本体内部の底面に形成されていること
    を特徴とする変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  17. 【請求項17】 請求項16に記載の変形性膝関節症患
    者用の履物において、 上記傾斜面は、靴本体の内側に設けた弾性材からなる内
    部部材に形成されていることを特徴とする変形性膝関節
    症患者用の靴である履物。
  18. 【請求項18】 請求項16に記載の変形性膝関節症患
    者用の履物において、 上記傾斜面は、該傾斜面のヒトの踵を担持する部分が他
    の領域に比べて弾性変形し易く形成されていることを特
    徴とする変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  19. 【請求項19】 請求項18に記載の変形性膝関節症患
    者用の履物において、 上記傾斜面の部分的な弾性力の差は、気泡、穿孔、空所
    および凹所の形状の大小の差または個数の差、または材
    質の弾性の差のうち少なくとも一者によって形成されて
    いることを特徴とする変形性膝関節症患者用の靴である
    履物。
  20. 【請求項20】 請求項1、3、または16に記載の変
    形性膝関節症患者用の履物において、 上記踵部担持弾性部材は、上記傾斜面の低い側を担持す
    る部分が、上記傾斜面の高い側を担持する部分に比べて
    降下し易いように、上記低い側担持部分と上記高い側担
    持部分との弾性力に差を設けたことを特徴とする変形性
    膝関節症患者用の靴である履物。
  21. 【請求項21】 請求項20に記載の変形性膝関節症患
    者用の履物において、 上記踵部担持弾性部材の部分的な弾性力の差は、気泡、
    穿孔、空所および凹所の形状の大小の差または個数の差
    と、断面積の差または材質の弾性の差のうち少なくとも
    一者によって形成されていることを特徴とする変形性膝
    関節症患者用の靴である履物。
  22. 【請求項22】 請求項16に記載の変形性膝関節症患
    者用の履物において、 踵部分の甲皮は、上記傾斜面の低い側へ向けてヒトの足
    が滑らないように、傾斜面の低い側の甲皮が高い側の甲
    皮に比べて強化材で強化されていることを特徴とする変
    形性膝関節症患者用の靴である履物。
  23. 【請求項23】 請求項1または3に記載の変形性膝関
    節症患者用の履物において、 上記踵部担持弾性部材の後方に該踵部担持弾性部材より
    も弾性変形し易くした装飾的ヒール形状形成部材を有し
    ていることを特徴とする変形性膝関節症患者用の靴であ
    る履物。
  24. 【請求項24】 請求項1、3、または23に記載の変
    形性膝関節症患者用の履物において、 上記踵部担持弾性部材の下面後端の位置は、靴の後端か
    ら少なくとも靴全長の5%の位置であることを特徴とす
    る変形性膝関節症患者用の靴である履物。
  25. 【請求項25】 請求項3、21または23に記載の変
    形性膝関節症患者用の履物において、 靴底上面と接地面との間に形成される上記天秤部材、上
    記踵部担持弾性部材、上記装飾的ヒール形状形成部材の
    各部材の有する空間および各部材相互間の空間を、その
    弾性力が上記各部材よりも弱い弾性材で充填したことを
    特徴とする変形性膝関節症患者の靴である履物。
  26. 【請求項26】 請求項1に記載の変形性膝関節症患者
    用の履物において、 上記浮き上がった第2中足骨頭の位置する靴底底面に、
    容易に弾性変形する弾性材からなる装飾的靴底形状形成
    部材を有していることを特徴とする変形性膝関節症患者
    用の靴である履物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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