JPH0836076A - 核融合炉用プラズマ緊急停止装置 - Google Patents

核融合炉用プラズマ緊急停止装置

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JPH0836076A
JPH0836076A JP6170511A JP17051194A JPH0836076A JP H0836076 A JPH0836076 A JP H0836076A JP 6170511 A JP6170511 A JP 6170511A JP 17051194 A JP17051194 A JP 17051194A JP H0836076 A JPH0836076 A JP H0836076A
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紘一 真木
Yasushi Seki
泰 関
Isao Aoki
功 青木
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    • Y02E30/10Nuclear fusion reactors

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 核融合炉において、真空容器外のダイバータ
冷却管部のギロチン破断事故時等の事故時に、構造体の
健全性を保ちながらプラズマを緊急停止させることがで
きるプラズマ緊急停止装置を提供すること。 【構成】 101はダイバータ、102はダイバータ冷
却管、103は圧力センサ、104は制御装置、105
は不純物注入装置、106は緊急冷却装置、107は真
空隔離弁、108は下部遮蔽体、109はブランケット
である。制御装置104は圧力センサ103の検知信号
を処理し、冷却材圧力が定常値から急激に減圧すれば不
純物注入装置105及び緊急冷却装置106の作動を指
令する。この結果、不純物注入装置105が、制御装置
104の制御信号に基づいて不純物を真空容器内に注入
する。不純物注入装置105の作動と同時に緊急冷却装
置106が,制御装置104の信号により冷却材をダイ
バータの受熱部付近の冷却管に注入する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,核融合炉において,プ
ラズマを緊急に停止させるプラズマ緊急停止装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】定格運転中の核融合炉において、真空容
器外で主ポンプ付近のダイバータ冷却管がギロチン破断
した場合,約1.5秒で冷却材が全て喪失する。この
時,熱的に最も厳しい負荷を受けるダイバータでは、プ
ラズマが着火した状態が続けば,約1秒から2秒で銅の
冷却管が溶融してしまう。これに対し、こうした緊急時
に働く軽水炉にあるような補助冷却系を設けることが考
えられるが、更にもう一系統の大がかりな冷却ループ系
を設けることになり、現在の核融合炉の設計案では空間
的な余裕がない。
【0003】また、将来の核融合炉においても経済性を
重視するため、現在より一層コンパクトな炉設計を考え
ていく必要があり、炉内に新たに緊急冷却系ループを設
ける余裕は無いと考えられる。従って、この様な事故事
象時には,速やかにプラズマを停止させる手段が必要で
あった。
【0004】プラズマを停止させる方法は,ソフトラン
ディングにより緩やかに停止させる方法や,プラズマ内
部の不安定性を誘起しディスラプションで瞬時に停止さ
せる方法がある。ここでソフトランディングとは、プラ
ズマ電流や磁場配位を制御し、プラズマの平衡を保ちな
がら停止させることを言う。この時にかかる時間はコイ
ル等の電源装置に依存するが、実験炉クラスの核融合炉
では20秒程度要する。従って冷却管破断のような緊急
時には、ディスラプションでプラズマを瞬時に停止する
しかない。このような概念だけは既に考えられていた
が、具体的な方策に欠けていた。
【0005】また、たとえこの様な緊急停止方法を用い
ても、事故の検知から停止までに余裕を見て2秒程度は
どうしてもかかり、ディスラプションを発生させてプラ
ズマを停止させるだけでは、冷却管ギロチン破断のよう
な早い事故事象の進展には有効でない。
【0006】従って、定格運転中のダイバータ冷却管ギ
ロチン破断のような事故事象に対して有効な対応策はま
だない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】定格運転中の核融合炉
において、真空容器外での冷却管の破断事故は安全上重
要な検討課題の一つに指摘されている。この中で最も深
刻な事故シナリオは、ダイバータの冷却管のギロチン破
断事故である。ダイバータはプラズマからの熱を受けと
め、不純物をプラズマ外に排気する重要な機器のひとつ
で、熱的に最も厳しい条件に置かれることが予想されて
いる。その有力な構造のひとつは,黒鉛材等の耐熱材料
の中に熱伝導度の高い銅等の冷却管に冷却材を流し、除
熱する構造になっている。例えば、国際熱核融合実験炉
(ITER)の設計では、定格運転時に最大20MW/m2もの熱
流束を受けて、その黒鉛材表面は1000度程度になり、冷
却管表面付近で約400度になることが予想されている。
除熱のためにダイバータには、流速10m/s程度で35
気圧に加圧した冷却水が流される。
【0008】真空容器外の主ポンプ付近のダイバータ冷
却管においてギロチン破断が起きた場合、軽水炉の事故
解析で使用されている熱水力事故解析コードを用いた解
析結果によれば、約1.5秒で全ての冷却材が喪失する。
この事故解析コードは軽水炉の安全解析に用いられるも
ので、その解析結果は現段階で信頼がおけると考えられ
る。冷却水の瞬時喪失によって銅の冷却管の場合、その
表面付近の温度は約1秒から2秒で融点に達することが
示されている。その後もプラズマが停止しなければ、ダ
イバータの表面温度の上昇と共に、黒鉛材表面から不純
物がプラズマに混入していき、最終的に制動輻射損失が
増大してプラズマは自然に消滅すると考えられている。
【0009】しかしこのようにプラズマが自然消滅する
までに、ダイバータは冷却管の溶融や黒鉛タイルの昇華
等で大きく損傷し、次の運転が事実上不可能となる恐れ
がある。真空容器内の構造体がここまで破損すれば、複
雑な構造を有し且つ誘導放射能が高い核融合炉の修理に
多大な時間と労力が必要とされる。
【0010】この様な事態を避けるために、核融合炉に
おいて異常時にプラズマを停止させる手段が必要とな
る。しかも、ダイバータの冷却管ギロチン破断事故で
は、事象が進展していく時間スケールが前述のように早
いので、その停止系も非常に早い能動的なシステムであ
ることが必要である。その手段として、ディスラプショ
ンを発生させてプラズマを停止させる方法がある。
【0011】ディスラプションはトカマク型核融合炉に
固有の現象で、何らかの原因でプラズマ内の電磁流体力
学的不安定性(MHD不安定性)が誘起され、瞬時にプ
ラズマが消滅する現象である。これまで炉を正常に運転
する立場からは、ディスラプションを極力抑えることが
最大の課題であった。ディスラプション時にはプラズマ
がそれまで保持していたエネルギーを、数10msの時間
内に構造体に放出する。この時の熱流束は、最大で20
MJ/m2にも達するが、その熱的影響は構造体の表面に留
まり内部までは及ばない。従って、修理をすることなし
に次の運転に入れるプラズマ停止系として、ディスラプ
ションを発生させて瞬時にプラズマを停止させる方法が
考えらる。
【0012】しかし、これまでの概算では例えば、不純
物ペレットを高速でプラズマに射出してディスラプショ
ンでプラズマを停止せるまで、異常の検知から早くても
2秒程度は必要である。 一方、ギロチン破断後のダイ
バータ冷却管は1〜2秒程度で溶融することから、ディ
スラプションの発生による停止だけは、ダイバータ冷却
管ギロチン破断ような事象にはあまり有効ではない。
【0013】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、核融合炉においてダイバータ冷却管ギロチ
ン破断のような事故時に、核融合炉の構造体の健全性を
保ちながら緊急にプラズマを停止することができるプラ
ズマ緊急停止装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
には、以下の二点を組み合わせて用いることが重要にな
る。
【0015】第一に、ディスラプションを発生させる手
段である。ディスラプションの根本的な発生メカニズム
は、まだ良く解明されていないが、これまでの核融合実
験装置の経験から、いくつかの方法でディスラプション
を発生させることができる。例えば、その応答が早く確
実にディスラプションを引き起こす方法として、プラズ
マの密度限界を利用するものと,磁場配位の崩れを利用
するものが考えられる。密度限界とは、運転状態で決ま
ってくるプラズマ中の電子密度の上限値で、これを越え
るとMHD不安定性が誘起されディスラプションが起き
る。
【0016】先ず、密度限界によってディスラプション
を引き起こすためには、例えば、プラズマからの制動輻
射パワーを急増させて密度限界を急激に引き下げ,MH
D不安定性を誘起させる必要がある。制動輻射を増大さ
せるには、プラズマに不純物を注入すればよい。この手
段として、例えば、固体不純物で作成したペレットを高
速で射出する方法がある。ペレットを加速する方法とし
ては、例えば高圧のガスを利用する。射出器はペレット
を内蔵し、炉の運転中は常に待機状態にしてある。放射
線の影響を防ぐために、射出器本体は遮蔽壁外に設置
し、真空容器内には加速管を通じて射出される。加速管
の途中には、真空容器内との真空を確保するために弁を
設けることも考えられる。この弁は、射出器と連動して
高速で開閉する。射出器には、射出後のガスの逆流防止
のため高速で開閉する弁を設ける。また別の方法とし
て、気体の不純物ガスを用いる場合が挙げられる。例え
ば、高圧ボンベの中に不純物ガスを封入し、事故時に圧
力弁を瞬時に解放して真空容器内に不純物ガスを注入す
る。以上の不純物注入器は、ダイバータの冷却管に取り
付けられた圧力センサと連結され、ギロチン破断時の冷
却材の減圧を検知して作動する。
【0017】ディスラプションを発生させる別の方法例
としてプラズマの平衡を保っている制御コイルの電源を
切る方法がある。この時プラズマは位置の安定性を失
い、構造体に衝突してディスラプションを起こす可能性
もあり、不純物注入法の場合と比べ構造体の損傷が大き
くなる恐れがある。
【0018】第二の手段は、真空容器外でのダイバータ
冷却管ギロチン破断後瞬時に失われる冷却能力を、確保
するための緊急冷却装置である。第一の手段によりプラ
ズマが消えるまでの間(例えば数秒間)、冷却管材の温
度を融点以下の適正温度以下に維持するため、ダイバー
タの受熱部付近の冷却管内に冷却材を注入する。例え
ば,加圧された液体叉は気体の冷却材をタンク内に保持
し、これを圧力弁を通して最も熱的に厳しい受熱部付近
の冷却管に接続しておく。上記の圧力センサが減圧を感
知すると、ディスラプション発生装置に作動信号が送ら
れるのと同時にこの緊急冷却装置を作動させる。緊急冷
却装置の能力は、プラズマが消えるまでの間、受熱部付
近の冷却管を冷却できれば良い。従って、大がかりな冷
却装置を必要としない。
【0019】また別の方法として、冷却材が瞬時に喪失
しないよう受熱部付近の冷却管の前後を閉鎖弁、例えば
電磁弁で封鎖し、冷却材を保持して冷却機能を保つこと
が考えられる。この閉鎖弁は、冷却材の瞬時喪失を防ぐ
ためのもので、その意味では冷却管を完全密閉するほど
の精度は必ずしも必要ではない。
【0020】異常事象、例えば、真空容器外ダイバータ
冷却管ギロチン破断が発生した場合、以上の二つの装置
を連動して作動させることが重要である。例えば、大量
の不純物を注入されたプラズマは、不純物による制動放
射損失が急激に増大し、MHD不安定性が誘起され、そ
の後ディスラプションを起こして瞬時に消滅する。プラ
ズマの定常状態が崩れてディスラプションが起きるま
で、実験結果によると数100msの時間スケールである。
プラズマを停止するまで、異常あるいは事故の検知から
の時間を含めると数秒かかる(最短で約2秒)。その
間、冷却管には緊急冷却装置によって冷却され融点以下
の適正使用温度に保たれる。ディスラプション時には、
数10msでプラズマのエネルギが放出される。しかし、
その時の過大な熱負荷の影響は、アーマタイル表面の溶
融・昇華に留まり冷却管付近までは及ばない。
【0021】以上のようにして、異常事象において、核
融合炉の構造体の損傷を最小限に止め、次の炉の運転再
起動を容易にできる。
【0022】
【作用】ダイバータの冷却管が真空容器外でギロチン破
断を起こすような異常事象が発生した場合、冷却材は急
激に減圧し冷却能力を喪失する(例えば核融合実験炉ク
ラスでは、1秒から2秒で冷却材は全て喪失する)。こ
の異常事象をセンサ、例えば冷却管に設置された圧力セ
ンサで検知すると、その信号が本発明のプラズマ緊急停
止装置に送られる。センサの信号により、ディスラプシ
ョン発生装置が作動し、これと同時に緊急冷却装置も働
いて、冷却管の温度を融点以下に維持する。
【0023】ディスラプション発生装置が作動すると、
例えば、大量の不純物を注入されたプラズマは、不純物
による制動放射損失が急激に増大する。この段階で、プ
ラズマの出力が低下して密度限界と呼ばれる電子密度の
上限値も急速に下がる。
【0024】一方、プラズマの電子密度はプラズマ出力
程急激に下がらないので、密度限界値に達しMHD不安
定性が誘起され、ディスラプションを起こして瞬時に消
滅する。その間緊急冷却系も作動し、冷却管には冷却装
置によって冷却され融点以下の適正使用温度に保たれ
る。 ディスラプション発生時には、プラズマのエネル
ギが放出されるため非常に大きな熱が核融合炉の構造体
に放出されるが、一般にディスラプションの時間スケー
ルが熱伝導の時間スケールに比べ非常に短いので、その
時の影響はアーマ材の表面の溶融・昇華に留まり冷却管
付近までは及ばない。
【0025】異常事象を検知するセンサは、冷却管の減
圧状態を検知して直接その信号を停止装置に送るので、
人間の判断を介さず素早い装置の起動が可能で安全性の
面からも信頼性が高い。
【0026】更にこの装置は、核融合炉の他の異常ある
いは事故時にプラズマを緊急停止させる手段として用い
ることができる。例えば、プラズマが出力の異常上昇を
起こしてその制御能力を失った時、ディスラプション発
生装置のみを作動させてプラズマを停止させることもで
きる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。
【0028】図1には、本発明に係るプラズマ緊急停止
装置の一実施例の構成が示されている。同図は核融合炉
の下部のダイバータ付近の断面を示したものである。同
図において101はダイバータ、102はダイバータ冷
却管、103は圧力センサ、104は制御装置、105
は不純物注入装置、106は緊急冷却装置、107は真
空隔離弁、108が下部遮蔽体、109がブランケット
である。
【0029】ダイバータ101はプラズマからの熱を受
け不純物を排気する役目をする。ダイバータ冷却管10
2には、加圧した冷却材(例えば、水)を流す。また圧
力センサ103により冷却材の減圧状態を検知する。国
際熱核融合実験炉(ITER)を対象とした解析によれ
ば、冷却材圧力は、ギロチン破断後約0.5秒で定常値
の1/5、約1.5秒でほぼ大気圧まで減圧する。
【0030】制御装置104が圧力センサ103からの
信号を処理し、冷却材圧力が定常値から急激に減圧すれ
ば不純物注入装置105及び緊急冷却装置106の作動
を指令する。
【0031】この結果、不純物注入装置105が、制御
装置104から出力される制御信号に基づいて不純物を
真空容器内に注入する。不純物注入装置105は安全を
保守的に考慮して、二系統以上が設置される。
【0032】不純物注入装置105の作動と同時に緊急
冷却装置106が,制御装置104の信号により冷却材
をダイバータの受熱部付近の冷却管に注入する。ここで
緊急冷却装置106は下部遮蔽体108に一部埋め込む
ことににより、コンパクトな収納を可能とするように構
成されている。真空隔離弁107は真空を確保するため
の弁で、不純物注入時には制御装置104の信号で瞬時
に解放される。下部遮蔽体108は放射線に対する遮蔽
体で、この実施例の場合、この部分に緊急冷却装置10
6を埋め込む。
【0033】本実施例により、大がかりな緊急冷却系を
用いなくても、核融合炉の異常あるいは事故時にダイバ
ータの損傷を最小限にして、プラズマを緊急に停止する
ことができる。
【0034】図2にはトカマク型の核融合炉の構成が示
されている。同図において201が炉心プラズマで,燃
料重水素と三重水素をプラズマ状態にして磁場により閉
じ込めたもので、外部の加熱装置により約一億度まで加
熱され核融合反応が起きる。202は第一壁であり、こ
の第一壁はプラズマに最も近接した壁でプラズマからの
熱や放射線を受けとめる。ここでは、熱負荷を緩和する
目的で第一壁202の表面に黒鉛材等のアーマ材が取り
付けられる。また、第一壁202は強制冷却される。
【0035】203はブランケットでプラズマから発生
した中性子を吸収して燃料三重水素を増殖する。この目
的のため、ブランケット内には、中性子の数を増倍して
燃料の増殖率を高める中性子増倍材と中性子を吸収して
三重水素を作る増殖材が充填される。ブランケット内で
も、中性子とこれら物質との核発熱除去のため強制冷却
される。204、205及び206がトロイダルコイ
ル、ポロイダルコイル及びソレノイドコイルで、プラズ
マを閉じ込めるための磁場を発生させる。207はプラ
ズマの位置や形状を制御するための制御コイルである。
208は真空容器、209が排気ダクト、210がクラ
イオスタットである。ダイバータは211で、プラズマ
からの熱を受けとめ、不純物や核燃焼後の灰であるα粒
子を排気ダクト209から排気する。
【0036】不純物注入装置としては,例えば、不純物
ペレット注入装置を用いる。これは不純物ペレットを例
えばガス圧等により加速するものである。その構成の一
例を図3に示す。301が銃身、302がペレット挿入
器、303がガス弁開閉機構、304が加圧ガスタンク
である。
【0037】上記構成において挿入器302により装填
された不純物ペレットが、ガス弁の開閉機構303を作
動させることによりでガス圧で加され、銃身301を通
ってプラズマ内に射出される。開閉弁として、例えば電
磁弁を用いる。不純物の候補として、制動輻射損失を増
大させるために高原子番号の元素が望ましいが、あまり
大きな原子番号の物質を注入すると、次にプラズマを再
着火する時に真空容器内の不純物除去が困難になる恐れ
がある。従って、核融合炉の炉壁材料にも使用される、
例えば炭素、ベリリウム等を用いる。ペレットの形状
は、例えば球または円筒状ものが射出に適している。円
筒状のものを射出する場合はその際の加速管との摩擦を
軽減するため、例えば加速管内面は鏡面仕上げを施す。
または、ペレットの安定性を考慮して、例えば加速管内
面に螺旋状の切り込みを付ける方法も考えられる。
【0038】不純物ペレットを用いた場合のその初速度
は、ペレットの大きさとプラズマ中での蒸発量で決まっ
てくる。確実にプラズマを停止させるためには、不純物
をプラズマの中心付近まで注入する必要がある。国際熱
核融合実験炉を例に取れば、プラズマ表面から約2mの
点まで注入するとして、半径5mmのペレットで約500
m/sの初速が必要である。図4にペレットの半径と、
プラズマ中の到達距離の関係をペレット初速をパラメー
タに取って示した。
【0039】以上の不純物ペレットによる方法は、動作
時間が短く不純物がプラズマ深部まで確実に届くので、
プラズマをディスラプションにより確実に停止させるこ
とができ、信頼性も高い。
【0040】図5に不純物注入装置の他の構成例を示
す。501は不純物ガスの放出口、502は弁開閉機
構、503は高圧の不純物ガスタンクである。開閉弁と
して、例えば電磁弁を用いる。不純物ガスの候補とし
て、制動輻射損失を増大させるために高原子番号の元素
が望ましいが、あまり大きな原子番号の物質を注入する
と、次にプラズマを再着火する時に真空容器内の不純物
除去が困難になる恐れがある。
【0041】また酸素等の化学的活性の大きいガスは、
高温の第一壁材と化学反応を起こすので避ける。従っ
て、例えばヘリウム等の不活性ガスが最適と考えられ
る。
【0042】ディスラプションを引き起こすのに必要な
ガスの量は、プラズマ中の燃料ガスと同程度、例えば国
際熱核融合実験炉クラスでは0.001モル程度でよい。し
かし、不純物をガスとして注入する場合、固体のペレッ
トと比べて、プラズマの深部に到達するのに時間がかか
る恐れがある。瞬時に確実にディスラプションを引き起
こすためには必要量の数倍のガスを幾つかの方向からプ
ラズマへ向けて注入する必要がある。
【0043】一方この方法は、不純物ペレットを打ち込
む方法と比べて、より構造が簡単にできペレットの製造
コスト等に比べ,コストの面からも有利である。
【0044】図6に磁場配位の崩れを利用したプラズマ
緊急停止装置の他の実施例の構成を示す。同図において
601はダイバータ、602はダイバータ冷却管、60
3は圧力センサ、604は制御装置、605はプラズマ
制御コイルの電源装置、606は緊急冷却装置,607
はプラズマ制御コイル、608はブランケット、609
は下部遮蔽体である。
【0045】ダイバータ601はプラズマからの熱を受
け不純物を排気する役目をする。ダイバータ冷却管60
2には、加圧した冷却材(例えば、水)が流れるように
なっている。圧力センサ603はダイバータ冷却管60
2における冷却材の急激な減圧状態を検知する。国際熱
核融合実験炉(ITER)を対象とした解析によれば冷
却材圧力は、ギロチン破断後約0.5秒で定常値の1/
5、約1.5秒でほぼ大気圧まで減圧する。
【0046】制御装置604が圧力センサからの信号を
処理し、冷却材圧力が定常値から急激に減圧すれば緊急
停止装置の作動を指令する。制御コイルの電源装置60
5が、制御装置604の信号によりプラズの平衡一を崩
すようにマプラズマ制御コイルにより生成される磁場を
制御または電源を遮断する。
【0047】一方、緊急冷却装置606が,制御装置6
04の信号により冷却材をダイバータ601の受熱部付
近の冷却管に注入する。この方法は,ディスラプション
を発生させるための新たな機器を必要としない利点があ
る。図7には緊急冷却装置の具体的構成が示されてい
る。同図において700はダイバータ、701は圧力
弁、702は冷却材タンク、703は下部遮蔽体、70
4は弁動作機構、705はダイバータ冷却管、706は
加圧器、707は圧力センサ、708はブランケット、
709は制御装置である。冷却材タンク702をダイバ
ータ700裏側の下部遮蔽体703に埋め込むことでコ
ンパクトに納める。この際タンクは、中の冷却材の温度
が上がらないように断熱加工を施す。通常時には加圧器
706で加圧した状態で保持されている。冷却材として
は、通常のサイクルで用いているものと同じ物質(例え
ば、水、不活性ガス等)を用いる。保持しておくべき冷
却材の量は,不純物注入装置が作動して、プラズマがデ
ィスラプションを起こすまで冷却できればよい量であ
る。国際熱核融合実験炉(ITER)を対象とした伝熱
解析によれば、通常の冷却機能の10%程度が確保できれ
ば十分と考えられる。例えばそのITERを例に取れ
ば、通常時の冷却水の流量を約9000kg/m2/sとすれば、
その十分の一の流量を2秒程度保てれば良い。その全量
はITERのダイバータでは、およそ5から10m3
ある。
【0048】本実施例によれば、大規模な緊急冷却系を
設けずに、ディスラプションでプラズマが消えるまでダ
イバータの健全性を保つことが可能になる。
【0049】図8には緊急冷却系の構成の一例が示され
ている。同図において801は圧力弁、802はブラン
ケット、803はブランケットまたは第一壁の冷却管、
804は弁作動機構、805はダイバータ冷却管、80
6は圧力センサ、807はダイバータ板、808は制御
装置、809は下部遮蔽体である。
【0050】上記構成において、異常あるいは事故をセ
ンサ806が検知し,制御装置808に以上あるいは故
障を示す検知信号が送られる。制御装置808から出力
される制御信号により弁801が弁作動機構804によ
って解放され、ブランケット、下部遮蔽体あるいは第一
壁の冷却管803から冷却材を一部もらい受ける。
【0051】一般に、ダイバータの冷却材圧力はブラン
ケットの冷却材圧力より高いので、冷却材が逆流しない
ようにダイバータ冷却材圧力が低くなってから弁801
は解放される。ブランケットや第一壁は、熱容量が大き
いため温度変化が緩やかで、一部冷却材をダイバータの
方にとられても、プラズマがディスラプションで消える
までその健全性を十分保つことができる。
【0052】また冷却材伝熱解析結果によれば、ダイバ
ータでは通常の冷却機能の10%程度をプラズマが停止
するまでの2秒程度が確保できれば十分と考えられるの
で、プラズマ停止後は弁801は閉じられる。
【0053】本実施例によれば、緊急冷却用の冷却材タ
ンクを新たに設ける必要がなく、構成が簡単にできる利
点がある。
【0054】図9には、本発明に係るプラズマ緊急停止
装置の他の実施例の構成が示されている。同図は核融合
炉の下部のダイバータ付近の断面を示したものである。
同図において901はダイバータ、902はダイバータ
冷却管、903は圧力センサ、904は制御装置、90
5は不純物注入装置、906は冷却管封鎖装置、907
が下部遮蔽体、908はブランケットである。
【0055】ダイバータ901はプラズマからの熱を受
け不純物を排気する役目をする。ダイバータ冷却管90
2には、加圧した冷却材(例えば、水)が流れる。圧力
センサ903により、冷却材の急激な減圧状態を検知す
る。国際熱核融合実験炉(ITER)を対象とした解析
によれば冷却材圧力は、ギロチン破断後約0.5秒で定
常値の1/5、約1.5秒でほぼ大気圧まで減圧する。
【0056】制御装置904が圧力センサ903からの
検知信号を処理し、冷却材圧力が定常値から急激に減圧
すれば不純物注入装置905及び冷却管封鎖装置906
の作動を指令する。この結果、不純物注入装置905
が、制御装置904の信号により不純物を真空容器内に
注入する。不純物注入装置は安全を保守的に考慮して、
二系統以上が設置される。冷却管封鎖装置906は、制
御装置904から出力される制御信号に基づいて冷却材
をダイバータの受熱部付近の冷却管で封鎖し、保持す
る。ここで冷却材を封鎖し、保持する手段として、例え
ば電磁弁を用いる。冷却管は必ずしも密封される必要は
なく、プラズマがディスラプションで消えるまで、冷却
材が瞬時に全て喪失することを防ぎ、ある程度保持され
ればよい(例えば、定常時の10%程度)。
【0057】本実施例によれば、大がかりな緊急冷却系
を用いなくても(緊急用の冷却材を別に保持しておく必
要もない)、核融合炉の異常あるいは事故時にダイバー
タの損傷を最小限にして、プラズマを緊急に停止でき
る。
【0058】図10には、冷却管封鎖装置の具体的構成
が示されている。同図において1001はダイバータ受
熱部の冷却材の入口、1002は冷却材出口、1003
は冷却管封鎖装置、1004は制御装置、1005は圧
力センサ、1006はエアバック状の封鎖弁、1007
はガスリザーバ、1008は弁作動機構、1009は下
部遮蔽体、1010はダイバータ板である。
【0059】上記構成において、センサ1005で真空
容器外のダイバータ冷却管のギロチン破断を検知する
と、その検知信号が制御装置1004に送られ、ダイバ
ータ受熱部の冷却材の入口1001と、出口1002に
設置された冷却管閉鎖装置1003が瞬時に閉じて、冷
却材の瞬時喪失を防止する。
【0060】閉鎖弁は、冷却管の入口、出口に設置され
た、エアーバッグ状1006のもので、作動信号により
瞬時に高圧ガスにより膨張し流路を塞ぐ。この弁は、必
ずしも完全に流路を密閉する必要はなく、不純物注入装
置が作動してプラズマが消えるまでの数秒間、冷却材を
保持できれば良い。
【0061】本実施例は、ガス圧で膨張するエアバック
状の弁で流路を塞ぐもので、動作速度が早く信頼性も高
い利点がある。
【0062】
【発明の効果】これまで核融合炉において、その異常
時、例えばダイバータ冷却管部のギロチン破断事故時に
は、ダイバータの冷却管の溶融を伴う構造体の大きな損
傷が予測され、これを防止する有効な手段がなかった
が、本発明によれば、炉の損傷を最小限に抑え容易に再
起動できる状態でプラズマを緊急停止することが可能に
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマ緊急停止装置の一実施例
を示す構成図である。
【図2】核融合炉の構造の一例を示す鳥瞰図である。
【図3】本発明に係るプラズマ緊急停止装置の主要構成
機器であるディスラプション発生のための不純物注入装
置の構成図である。
【図4】図3の不純物注入装置において、ペレットの半
径とプラズマ中の到達距離との関係をペレット初速をパ
ラメータにして示した特性図である。
【図5】不純物注入装置の他の実施例を示す構成図であ
る。
【図6】ディスラプション発生のために磁場制御装置を
用いた本発明に係るプラズマ緊急停止装置の他の実施例
を示す構成図である。
【図7】本発明に係るプラズマ緊急停止装置の主要構成
機器である緊急冷却装置の一実施例を示す構成図であ
る。
【図8】本発明に係るプラズマ緊急停止装置の主要構成
機器である緊急冷却装置の他の実施例を示す構成図であ
る。
【図9】本発明に係るプラズマ緊急停止装置の主要構成
機器である緊急冷却装置の他の実施例を示す構成図であ
る。
【図10】本発明に係るプラズマ緊急停止装置の主要構
成機器である緊急冷却装置の他の実施例を示す構成図で
ある。
【符号の説明】
101 ダイバータ 102 ダイバータ冷却管 103 圧力センサ 104 制御装置 105 不純物注入装置 106 緊急冷却装置 107 真空閉鎖弁 108 下部遮蔽体 109 ブランケット 201 プラズマ 202 第一壁 203 ブランケット 204 トロイダルコイル 205 ポロイダルコイル 206 ソレノイドコイル 207 制御用コイル 208 真空容器 209 排気ダクト 210 クライオスタット 211 ダイバータ 301 銃身 302 ペレット挿入器 303 弁開閉機構 304 加圧ガスタンク 501 ガス放出口 502 弁開閉機構 503 不純物ガスタンク 601 ダイバータ 602 ダイバータ冷却管 603 圧力センサ 604 制御装置 605 制御コイル電源 606 緊急冷却装置 607 プラズマ制御コイル 608 ブランケット 609 下部遮蔽体 701 圧力弁 702 冷却材タンク 703 下部遮蔽体 704 弁作動機構 705 ダイバータ冷却管 706 加圧器 707 圧力センサ 708 ブランケット 709 制御装置 801 圧力弁 802 ブランケット 803 ブランケット、下部遮蔽体または第一壁の冷却
管 804 弁作動機構 805 ダイバータ冷却管 806 圧力センサ 807 ダイバータ板 808 制御装置 809 下部遮蔽体 901 ダイバータ 902 ダイバータ冷却管 903 圧力センサ 904 制御装置 905 不純物注入装置 906 緊急冷却装置 907 下部遮蔽体 908 ブランケット 1001 受熱部冷却材入口 1002 受熱部冷却材出口 1003 冷却管封鎖装置 1004 制御装置 1005 圧力センサ 1006 エアバック状封鎖弁 1007 ガスリザーバ 1008 弁作動機構 1009 下部遮蔽体 1010 ダイバータ板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 真木 紘一 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株 式会社日立製作所エネルギー研究所内 (72)発明者 関 泰 茨城県那珂郡那珂町大字向山801番地の1 日本原子力研究所 那珂研究所内 (72)発明者 青木 功 茨城県那珂郡那珂町大字向山801番地の1 日本原子力研究所 那珂研究所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核融合炉の異常時にプラズマを停止させ
    る緊急停止装置において、 核融合炉の異常状態を検出する異常検出手段と、 該異常検出手段の検出出力に基づいてディスラプション
    を誘起しプラズマを停止させるディスラプション発生装
    置と、 前記異常検出手段の検出出力に基づいてディスラプショ
    ンでプラズマが停止するまでの間、核融合炉の構造体の
    冷却機能を一時的に確保するための緊急冷却系とを有す
    ることを特徴とするプラズマ緊急停止装置。
  2. 【請求項2】 前記ディスラプション発生装置は、ディ
    スラプションを発生させるためにプラズマの制動放射損
    失を増大させる原子番号の元素を有するペレットと、該
    ペレットをプラズマに射出する入射装置とからなる不純
    物注入装置を有することを特徴とする請求項1に記載の
    プラズマ緊急停止装置。
  3. 【請求項3】 前記ディスラプション発生装置は、ディ
    スラプションを発生させるためにプラズマの制動放射損
    失を増大させる原子番号のガスをプラズマに注入する不
    純物注入装置を有することを特徴とする請求項1に記載
    のプラズマ緊急停止装置。
  4. 【請求項4】 前記ディスラプション発生装置は、ディ
    スラプションを発生させるためにプラズマの磁場平衡配
    位を崩す磁場制御装置を有することを特徴とするプラズ
    マ緊急停止装置。
  5. 【請求項5】 前記緊急冷却系は、ディスラプションの
    発生によりプラズマが停止するまでの間,冷却材を構造
    体の受熱部付近に配置された冷却管に冷却材タンクまた
    は他の冷却管より注入することにより,プラズマが停止
    するまで構造体の冷却機能を確保することを特徴する請
    求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ緊急停止装
    置。
  6. 【請求項6】 前記緊急冷却系は、ディスラプションで
    プラズマが停止するまで冷却材を構造体の受熱部付近に
    配置された冷却管内に封鎖して保持し,プラズマが停止
    するまでの間構造体の冷却機能を確保することを特徴す
    る請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ緊急停止
    装置。
  7. 【請求項7】 前記元素は炭素であることを特徴とする
    請求項2に記載のプラズマ緊急停止装置。
  8. 【請求項8】 前記元素はベリリウムであることを特徴
    とする請求項2に記載のプラズマ緊急停止装置。
  9. 【請求項9】 前記ガスは不活性ガスであることを特徴
    とする請求項3に記載のプラズマ緊急停止装置。
  10. 【請求項10】 前記ガスはヘリウムであることを特徴
    とする請求項9に記載のプラズマ緊急停止装置。
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