JPH08340211A - アレイアンテナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】中心線に対して導体地板１ａ，１ｂ同士を対抗
させ、両導体地板１ａ，１ｂ間に絶縁板２ａ，２ｂで両
面をはさまれたプリント基板３を配設し、前記導体地板
１ａ，１ｂの外面には、それぞれ指向性パッチアンテナ
素子を配設し、前記プリント基板３上には、パッチアン
テナ素子６ａ−６ｄ′に給電するための配線４，５をス
トリップライン方式で作り付け、前記配線を通して導体
地板１ａ，１ｂ両側のパッチアンテナ素子に給電する。 【効果】各素子６ａ−６ｄ′への給電を、プリント基板
３上で構成されたストリップライン４，５を通して行う
ことができ、その両側に導体地板１ａ，１ｂを配置する
ため、アンテナの給電線構成を簡略かつ安価にでき、ス
トリップラインによる指向性の影響も少なくできる。ま
た、導体地板１ａ，１ｂで強度を十分確保できるので、
プリント基板３には、安価な加工し易いフレキシブルな
基板を用いることができ、材料コストの削減を図ること
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、アレイアンテナに関
し、特に水平面内で良好な指向特性が得られ、垂直面内
ビームチルトが容易なアレイアンテナに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】移動体通信用のアンテナに要求される放
射特性は、設置場所やカバーエリア等の条件に応じて様
々であるが、特に、水平面内において無指向性であるこ
とが要求されるものが多い。この水平無指向性アンテナ
で多く用いられるものには、スリーブアンテナ等があ
り、その利得は単一型（一段）のもので２．１４ｄＢｉ
程度である。また、ユーザの要求に応じて数段あるいは
十数段に多段化された構成のものもあり、その利得は段
数に応じて高利得となってくる。さらに、設置高さに応
じてビームチルトをかけることも必要であり、垂直面内
ビームチルト角が可変であることが要求される。

【０００３】水平面内無指向性アンテナを高利得化した
り、垂直面内ビームチルト角を可変にするのは、いずれ
の場合にも放射素子を多段かつ垂直方向に配設すること
となる。加えて、ビームチルト角を可変にする場合は、
各放射素子にトーナメント方式で給電するとともに、可
変位相器をさらに付加する必要がある。この場合、給電
端から遠い放射素子に給電する給電線が、給電端により
近い放射素子の近傍を通過することとなるため、この給
電線によって無指向性が乱れないようにする必要があ
り、そのため、給電線を素子の内部に通す等の配慮が必
要である。

【０００４】ところが、例えば２つのスリーブアンテナ
を上下段に配列し、上段アンテナに給電するための同軸
給電線路が下段スリーブアンテナ内部の軸中心部分を貫
通させようとすると、下段スリーブアンテナの構成が極
めて複雑になるという問題がある。そこで、構成を簡単
にするため、垂直偏波アンテナをプリント基板に縦に複
数個印刷して、基板の裏面よりトーナメント方式により
並列給電を行うようにしたアンテナが提案されている
（特公平５−２８９２２号公報参照）。

【０００５】この提案のアンテナは、複数の垂直偏波ダ
イポールアンテナを基板上に縦に一列に並べてなるダイ
ポールアンテナを縦方向の中心線に対称に設け、基板の
ほぼ中央に設けられたそれらの共通の給電点には同軸線
により給電を行い、またその給電点と各ダイポールアン
テナとの間は、電気長でほぼ等しい長さの給電線（スト
リップライン）をもって接続する構造をとっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、アンテナ自
体、曲がったり沿ったりしては実用上不便なので、ある
程度の強度が要求される。前記の基板に印刷されたアン
テナでは、アンテナを構成する導体地板及びアンテナ素
子（放射素子）がプリント基板の表面及び裏面に印刷さ
れている。したがって、アンテナの強度はプリント基板
に依存することになり、このため、プリント基板自体を
強化しなければならず、材質を特定のものにしたり、厚
さを厚くしなければならなかった。例えば、ガラス基材
フッ素樹脂、ガラス基材ＰＰＯ（ポリフェニレンオキサ
イド）樹脂、ガラス基材ＢＴ（ビスマレイミドトリアジ
ン）樹脂のような硬い材質を用い、厚さも数ｍｍ程度と
しなければならなかった。したがって、材料コストの上
昇につながるという問題がある。

【０００７】さらに、給電点に給電するのに、同軸線を
基板中央の給電点まで引っ張って給電しなければならな
かったので、アンテナの内部構成が複雑になるという問
題も残っていた。そこで、本発明の目的は、上述の技術
的課題を解決し、良好な指向特性を有するとともに、ア
ンテナ自体で十分な強度を保持することができるアレイ
アンテナを提供することである。

【０００８】また、本発明の目的は、同軸線をアンテナ
中心部付近に引き込む必要のない、構造の簡単なアレイ
アンテナを提供することである。また、本発明の目的
は、垂直面内指向性の設定又は変更が容易なアレイアン
テナを提供することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めの請求項１記載のアレイアンテナは、中心線の両側に
導体地板同士を対抗させ、両地板間に絶縁板で両面をは
さまれたプリント基板を配設し、前記導体地板の両外面
には、それぞれパッチアンテナ素子を中心線を基準とし
て対称かつ中心線方向に多段に配設し、前記プリント基
板上には、パッチアンテナ素子に給電するためのストリ
ップラインを作り付け、前記ストリップラインとパッチ
アンテナ素子とを、絶縁板、プリント基板及び導体地板
を貫通する短絡導体で短絡して、導体地板両外面のパッ
チアンテナ素子に給電するものである。

【００１０】請求項２記載のアレイアンテナは、導体地
板を避雷導体として共用するものである。

【００１１】

【作用】前記の請求項１記載の構成によれば、中心線の
両側に導体地板を配置するため、アンテナ自体の強度を
この導体地板でもたせることができ、プリント基板の強
度は不要になる。そしてプリント基板には、給電用スト
リップラインのパターンを作り付けているので、同軸線
をこの給電用ストリップラインの一端に接続すればよ
く、同軸線をアンテナ中心部付近まで引き込まなくても
済む。

【００１２】請求項２記載の構成によれば、パッチアン
テナ素子を中心線方向に多段配列しているので、垂直面
内指向性を設定するときには、プリント基板上に作り付
けられた各ストリップラインの電気長を設定することに
より、アンテナの垂直面内指向性を設定することができ
る。

【００１３】

【実施例】以下実施例を示す添付図面によって詳細に説
明する。図１は、アレイアンテナの一実施例としての無
指向性アレイアンテナの分解斜視図であり、図２は図１
のアレイアンテナの側面からみた部分断面図、図３は図
１のアレイアンテナの正面からみた立面図である。

【００１４】このアレイアンテナは、金属性導体地板１
ａ，１ｂ同士を対抗させ、両導体地板１ａ，１ｂ間に絶
縁板２ａ，２ｂで両面をはさまれたプリント基板３を挟
んでいる。前記導体地板１ａ，１ｂの外面には、それぞ
れパッチアンテナ素子６ａ−６ｄ，６ａ′−６ｄ′を一
定間隔ずつ離して配設している。前記プリント基板３に
は、片面上にパッチアンテナ素子６ａ−６ｄ，６ａ′−
６ｄ′に給電するための配線であるストリップライン
４，５が形成されている。ストリップライン４は、パッ
チアンテナ素子６ａ，６ｂ，６ａ′，６ｂ′に給電ピン
７ａ，７ｂを通して信号を供給し、ストリップライン５
は、パッチアンテナ素子６ｃ，６ｄ，６ｃ′，６ｄ′に
給電ピン７ｃ，７ｄを通して信号を供給する。したがっ
て、給電ピン７ａ−７ｄは特許請求の範囲の短絡導体と
して機能するものである。

【００１５】符号８は、パッチアンテナ素子６ａ−６
ｄ，６ａ′−６ｄ′を導体地板１ａ，１ｂから一定距離
離すための絶縁リングである。図４は、図３のＡ−Ａ線
断面図であり、給電ピン７ａの両端に接続されたパッチ
アンテナ素子６ａ，６ａ′は、導体地板１ａ，１ｂから
一定距離保たれている。給電ピン７ａは、導体地板１
ａ，１ｂ、絶縁板２ａ，２ｂ、プリント基板３を貫通す
る形で図示されているが、実際にはプリント基板３上の
ストリップライン４の部位４ａ（図５参照）及びパッチ
アンテナ素子６ａ，６ａ′に半田付けされている。しか
し、給電ピン７ａにねじを切ってパッチアンテナ素子６
ａ，６ａ′をナットで締めつけるようにしてもよい。ま
た、給電ピン７ａを雄ねじ雌ねじで螺合可能な２つのピ
ースに分け、ストリップライン４を両方から締めつける
ようにしてもよい。なお、図４には、符号９で円筒が示
されているが、これは、アンテナ全体を保護するレドー
ムであって、図１−図３では図示を省略したものであ
る。

【００１６】前記のストリップライン４，５のプリント
パターンは、図５に示すように、トリー状に形成されて
いる。詳しくいうと、ストリップライン４の、等インピ
ーダンスで枝分かれした先端は、給電ピン７ａを半田付
けする先端部４ａと、給電ピン７ｂを半田付けする先端
部４ｂとで構成され、ストリップライン５の、等インピ
ーダンスで枝分かれした先端は、給電ピン７ｃを半田付
けする先端部５ｃと、給電ピン７ｄを半田付けする先端
部５ｄとで構成されている。なお、等インピーダンスで
枝分かれさせる必要は必ずしもなく、非対称に枝分かれ
させてもよい。枝分かれの仕方は、垂直方向の指向性を
いかに実現するかに応じて決定される事項である。

【００１７】ストリップライン４，５の基部は、可変ビ
ームチルト特性を実現するためそれぞれ独立して配線さ
れ、それぞれの基端には、同軸ケーブル又は移相器を接
続するためのコネクタ１０が装着されている。なお、前
記のストリップライン４，５は、導体地板１ａ，１ｂで
挟まれた構造なので、ストリップライン４，５からの不
要放射を防止することができる。

【００１８】以上のような構成であるから、パッチアン
テナ素子６ａ−６ｄ，６ａ′−６ｄ′のそれぞれがパッ
チ面を構成することになる。正面方向又は裏面方向から
みたパッチ面をＩ₁ ，Ｉ₂ ，II₁ ，II₂ ということにす
ると（図２参照）、パッチ面Ｉ₁ とＩ₂ とが２段に構成
され同一信号が供給されて、１つのサブアレイＩを構成
し、パッチ面II₁ とII₂ とが２段に構成され同一信号が
供給されて、１つのサブアレイIIを構成している。

【００１９】さらに、いずれかのサブアレイＩ，IIに可
変移相器を接続し、２つのサブアレイＩ，IIの信号を分
配器で合成することにより、可変ビームチルトアンテナ
を構成することができる。次に各部の材料、寸法を含む
具体的な設計指針を示す。まず、導体地板１ａ，１ｂ
は、アルミニウムで形成され、肉厚は４．５ｍｍ、高さ
は７００ｍｍにとっている。この材料でこの厚みがあれ
ば、基地アンテナや移動体アンテナとして直立させても
十分な強度を得ることができる。また、その導電性のた
め接地すれば避雷導体としても使用することができる。

【００２０】絶縁板２ａ，２ｂは、発泡ポリプロピレ
ン、発泡ポリエチレン、発泡スチロール、発泡ウレタン
等の合成樹脂の発泡体を用いることができる。基板３
は、ポリイミド又はポリエステルをベースフィルムに
し、それに銅箔を施したもので構成されたフレキシブル
基板（ＦＰＣ）である。パッチアンテナ素子６ａ−６
ｄ，６ａ′−６ｄ′は、通常どおり真鍮又は銅の板で構
成されている。

【００２１】パッチアンテナ素子の幅をＬ₂ 、対向する
パッチアンテナ素子間の距離をＤ、導体地板の幅をＬ₁
とする（図４参照）。導体地板の幅Ｌ₁ とパッチアンテ
ナ素子の幅Ｌ₂ との関係によって、パッチアンテナ素子
一面の指向性が決定され、対向するパッチアンテナ素子
間の距離Ｄによるアレイファクターの効果を含めて対向
するパッチアンテナ素子二面の水平面合成指向性が決定
される。

【００２２】そして、この水平面合成指向性は前記対向
するパッチアンテナ素子間の距離Ｄが相対的に大きくな
れば、正面及び裏面方向の指向性が減少し、距離Ｄが相
対的に小さくなれば、正面及び裏面方向の指向性が増大
するという性質があり、前記パッチアンテナ素子一面の
指向性と、この対向するパッチアンテナ素子間の距離Ｄ
との選定により、対向するパッチアンテナ素子２面の水
平面無指向性が得られる。

【００２３】パッチアンテナ素子間の距離Ｄを２５ｍ
ｍ、導体地板１ａ，１ｂの幅Ｌ₁ を４５ｍｍ，レドーム
内径を４９ｍｍに設定し、パッチアンテナ素子の幅Ｌ₂
をいろいろ設定して水平面指向性を測定した結果を図６
及び表１に示す。

【００２４】

【表１】

【００２５】図６及びこの表から、導体地板１ａ，１ｂ
の幅Ｌ₁ に対してパッチアンテナ素子の幅Ｌ₂ を大きく
していくと、４５°方向のビームレベルの凹部が次第に
なくなり、偏差（ビームレベルの最大値と最小値との
比）も小さくなっていくことが分かる。したがって、無
指向性の偏差が１．１ｄＢ程度の要求であれば、レドー
ム内径４９ｍｍのものなら、導体地板の幅４５ｍｍ、パ
ッチアンテナ素子の幅２５ｍｍのもので実現できる。

【００２６】また、レドーム内径を細径化する要求に対
応して、導体地板の幅を３０ｍｍ，２５ｍｍにして水平
面指向性を測定した結果を図７及び表２に示す。

【００２７】

【表２】

【００２８】この場合でも、図６の場合と比較して無指
向性からの偏差はやや大きくなるが、水平面無指向性は
ほぼ確保できている。ただし、導体地板の幅が２５ｍｍ
の場合、偏差はやや大きくなる。次に、各レドーム内径
（３０ｍｍ，３４ｍｍ，４９ｍｍ）に対して、水平面無
指向性を最もよく実現できる導体地板の幅とパッチアン
テナ素子の幅の組合せを前述（表１，表２）の各条件か
ら選んだときの、水平面指向性図を図８に示し、各数値
を表３に示す。

【００２９】

【表３】

【００３０】次に、各パッチアンテナ素子の中心線方向
の配設ピッチＰ₁ ，Ｐ₂ ，Ｐ₃ （図３参照）は、垂直面
内のビームチルト可変範囲が例えば０°から１０°の場
合には、垂直面内サイドローブレベルの著しい劣化がな
い範囲で利得をできるだけ大きくとれるよう、それぞれ
波長の約９割の長さに選ぶとよい。また、この場合、サ
ブアレイＩ，IIにおいては、サブアレイを構成する２つ
のパッチアンテナ素子の給電位相差は、サブアレイのビ
ームチルトがアレイアンテナ全体のビームチルト可変範
囲の中央の角度から５°程度になるよう設定すればよ
い。

【００３１】さらに、サブアレイＩ，IIのいずれかの給
電用コネクタに可変移相器を接続した後、サブアレイ
Ｉ，IIの出力を２分配器で合成することにより、アレイ
アンテナ全体として可変ビームチルトアンテナを構成で
き、この場合、可変移相器の移相量設定値を変えること
で、ビームチルトを可変できる。実施例の説明は以上で
あるが、本発明は前記の実施例に限定されるものではな
い。前記の実施例では、パッチアンテナ素子数は４つで
あったが、これに限らず１つでも２つでもよく、また５
つ以上でもよい。基板３のストリップラインは、アレイ
アンテナの垂直面内指向性に応じて、適宜変更してもよ
い。その他本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更
を施すことが可能である。

【００３２】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、良好な水
平無指向性アンテナを構成することができるとともに、
各素子への給電を、プリント基板上で構成されたストリ
ップラインを通して行うことができ、その両側に導体地
板を配置するため、アンテナ自体の強度をこの導体地板
でもたせることができる。

【００３３】したがって、アンテナ全体の強度を十分確
保しながら、プリント基板には、通常の加工し易いフレ
キシブルな基板を用いることができ、材料コストの削減
と、加工の容易化を図ることができる。そしてプリント
基板には、給電用ストリップラインのパターンを作り付
けているので、同軸線を内部に引き込まなくても済み、
同軸線の節約ができ、アンテナの構成を簡単にすること
ができる。

【００３４】さらに、このストリップラインは、導体地
板で挟む構造なので、ストリップラインからの不要放射
を防止することができ、良好な指向性を得ることができ
る。また、請求項２記載の発明では、導体地板の肉厚を
とることとすれば、避雷導体としても使用することがで
き、避雷可能なアンテナを構成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】可変チルト用無指向性アンテナの分解斜視図で
ある。

【図２】可変チルト用無指向性アンテナの部分断面図で
ある。

【図３】可変チルト用無指向性アンテナの正面立面図で
ある。

【図４】可変チルト用無指向性アンテナのＡ−Ａ線断面
図である。

【図５】フレキシブルプリント基板の立面図である。

【図６】パッチアンテナ素子間の距離Ｄを２５ｍｍ、導
体地板１ａ，１ｂの幅Ｌ₁ を４５ｍｍ，レドーム内径を
４９ｍｍに設定し、パッチアンテナ素子の幅Ｌ₂ をいろ
いろ設定して水平面指向性を測定した結果を示すグラフ
である。

【図７】パッチアンテナ素子間の距離Ｄを１８ｍｍ、導
体地板１ａ，１ｂの幅Ｌ₁ 、レドーム内径をいろいろ設
定して水平面指向性を測定した結果を示すグラフであ
る。

【図８】各レドーム内径（３０ｍｍ，３４ｍｍ，４９ｍ
ｍ）に対して、水平面無指向性を最もよく実現できる導
体地板の幅とパッチアンテナ素子の幅の組合せを選び、
水平面指向性図を測定した結果を示すグラフである。

【符号の説明】

１ａ，１ｂ 金属性導体地板 ２ａ，２ｂ 絶縁板 ３ プリント基板 ４，５ ストリップライン ６ａ−６ｄ，６ａ′−６ｄ′ パッチアンテナ素子 ７ａ，７ｂ 給電ピン ８ 絶縁リング

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 多湖 紀之 大阪市此花区島屋一丁目１番３号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】中心線の両側に導体地板同士を対抗させ、
   両地板間に絶縁板で両面をはさまれたプリント基板を配
   設し、 前記導体地板の両外面には、それぞれパッチアンテナ素
   子を中心線を基準として対称かつ中心線方向に多段に配
   設し、 前記プリント基板上には、パッチアンテナ素子に給電す
   るためのストリップラインを作り付け、 前記ストリップラインとパッチアンテナ素子とを、絶縁
   板、プリント基板及び導体地板を貫通する短絡導体で短
   絡して、導体地板両外面のパッチアンテナ素子に給電す
   ることを特徴とするアレイアンテナ。
2. 【請求項２】導体地板を避雷導体として共用する請求項
   １記載のアレイアンテナ。