JPH08329837A - 含浸形陰極の製造方法 - Google Patents

含浸形陰極の製造方法

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JPH08329837A
JPH08329837A JP13072095A JP13072095A JPH08329837A JP H08329837 A JPH08329837 A JP H08329837A JP 13072095 A JP13072095 A JP 13072095A JP 13072095 A JP13072095 A JP 13072095A JP H08329837 A JPH08329837 A JP H08329837A
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molybdenum
thin film
film layer
cathode
oxide
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JP13072095A
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Tadanori Taguchi
貞憲 田口
Norihisa Miyama
憲久 深山
Yukio Suzuki
行男 鈴木
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 再現性のよい安定した電子放出特性が得ら
れ、優れた耐イオン衝撃性を有し、活性化時間を短縮可
能な含浸形陰極の製造方法を提供する。 【構成】 多孔質基体の細孔に電子放出物質2を含浸さ
せた耐熱多孔質基体1を陰極スリーブ4の一端に嵌合さ
せ、耐熱多孔質基体1の露出表面に、多元スパッタリン
グ装置を用いて、バリウム化合物をスパッタターゲット
とするスパッタリングを行い、バリウム化合物の薄膜層
9を形成し、この薄膜層9の上に、多元スパッタリング
装置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリブデン
(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)をスパッ
タターゲットとする同時スパッタリングを行い、モリブ
デン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカ
ンジウム(Sc23)からなる混合薄膜層6を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、含浸形陰極の製造方法
に係わり、特に、耐熱多孔質基体上に、モリブデン(M
o)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム
(Sc23)からなる混合薄膜層を同時スパッタリング
によって形成させ、耐イオン衝撃特性の優れた含浸形陰
極を得るようにした含浸形陰極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、表示管、受像管、撮像管、進行波
管等の電子管に用いられている含浸形陰極は、基本的
に、金属タングステン(W)等からなる耐熱多孔質基体
の細孔にバリウム(Ba)化合物からなる電子放出物質
を含浸させた後、この耐熱多孔質基体を陰極スリーブの
一端に嵌合させてなる構造のものである。
【0003】そして、このような含浸形陰極は、その動
作温度をできるだけ低くするため、例えば、特公昭47
−21343号に開示されているように、耐熱多孔質基
体の露出表面に、オスミウム−ルテニウム(Os−R
u)合金等からなる薄膜層を被覆させる手段(以下、こ
れを第1手段という)を設けている。このような第1手
段を講じることにより、含浸形陰極の動作温度を約10
00℃程度に低下させることができる。
【0004】また、このような含浸形陰極の動作温度を
さらに低くするため、例えば、特開昭61−13526
号に開示されているように、耐熱多孔質基体の露出表面
に、真空スパッタリング法によってタングステン(W)
と酸化スカンジウム(Sc23)とからなる薄膜を被着
させたり、タングステン(W)と酸化スカンジウム(S
23)の各粉末を焼き付けることによって、タングス
テン(W)と酸化スカンジウム(Sc23)とからなる
焼結体の薄膜を被着させる手段(以下、これを第2手段
という)を設けている。このような第2手段を講じるこ
とにより、含浸形陰極の表面に低仕事関数のバリウム
(Ba)、スカンジウム(Sc)、酸素(O)からなる
複合層が形成され、含浸形陰極の動作温度を第1手段よ
りも約150℃乃至200℃低い800℃乃至850℃
程度にまで下げることができるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】第2手段は、第1手段
に比べて含浸形陰極の動作温度がかなり低くなるため、
動作温度の観点からすれば、より好ましい手段であると
いうことができる。
【0006】しかしながら、第2手段を設けた含浸形陰
極は、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、酸素
(O)からなる複合層の形成条件如何によっては、電子
放出特性が大きく変動するだけでなく、良好な電子放出
特性を再現させることが難しく、その上、耐イオン衝撃
性が乏しくなるというという問題があり、さらに、電子
放出特性が飽和状態に達するまでの活性化時間が長くな
るという問題もある。
【0007】もっとも、このような含浸形陰極におい
て、良好な電子放出特性を再現させるためには、タング
ステン(W)、酸化タングステン(WO3 )、酸化スカ
ンジウム(Sc23)に対してそれぞれ独立した組成制
御を行えばよいことが知られているが、かかる組成制御
を行ったとしても、耐イオン衝撃性を向上させたり、電
子放出特性が飽和状態に達するまでの活性化時間を短縮
させたりすることはできない。
【0008】本発明は、前記問題点を解決するもので、
その目的は、再現性のよい安定した電子放出特性が得ら
れ、優れた耐イオン衝撃性を有し、活性化時間を短縮さ
せることが可能な含浸形陰極の製造方法を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、多孔質基体の細孔に電子放出物質を含浸
させた耐熱多孔質基体を陰極スリーブの一端に嵌合さ
せ、前記耐熱多孔質基体の露出表面に、多元スパッタリ
ング装置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリブデ
ン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)をスパ
ッタターゲットとした同時スパッタリングを行い、モリ
ブデン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化ス
カンジウム(Sc23)からなる混合薄膜層を形成した
第1の手段を備える。
【0010】また、前記目的を達成するために、本発明
は、多孔質基体の細孔に電子放出物質を含浸させた耐熱
多孔質基体を陰極スリーブの一端に嵌合させ、前記耐熱
多孔質基体の露出表面に、多元スパッタリング装置を用
いて、バリウム化合物をスパッタターゲットとするスパ
ッタリングを行い、バリウム(Ba)化合物の薄膜層を
形成し、この薄膜層の上に、前記多元スパッタリング装
置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリブデン(M
oO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)をスパッタタ
ーゲットとする同時スパッタリングを行い、モリブデン
(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジ
ウム(Sc23)からなる混合薄膜層を形成した第2の
手段を備える。
【0011】
【作用】前記第1の手段によれば、耐熱多孔質基体の露
出表面に、多元スパッタリング装置を用いて、モリブデ
ン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカン
ジウム(Sc23)をスパッタターゲットとした同時ス
パッタリングを行い、混合薄膜層を形成させるものであ
り、この混合薄膜層の形成時において、モリブデン(M
o)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム
(Sc23)の各含有量を自由に、独立に制御できるの
で、常時、同じ薄膜形成条件と、同じ薄膜組成の選択と
が可能になり、再現性が良好で、一定の組成を有する混
合薄膜層が得られ、高い電子放射特性を発揮できる含浸
形陰極を得ることができる。
【0012】前記第2の手段によれば、耐熱多孔質基体
の露出表面に、多元スパッタリング装置を用いて、バリ
ウム(Ba)化合物をスパッタターゲットとするスパッ
タリングを行い、バリウム(Ba)化合物の薄膜層を形
成した後、この薄膜層の上に、前記多元スパッタリング
装置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリブデン
(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)をスパッ
タターゲットとした同時スパッタリングを行い、混合薄
膜層を形成させるものであり、この混合薄膜層の形成時
において、モリブデン(Mo)、酸化モリブデン(Mo
3 )、酸化スカンジウム(Sc23)の各含有量を自
由に、独立に制御できるので、第1の手段で得られる作
用と同じ作用が達成される。そして、バリウム(Ba)
化合物の薄膜層を設けたことにより、活性化時間を著し
く短縮することも可能になる。
【0013】また、第1及び第2の手段の双方によれ
ば、同時スパッタリングを行う際の各スパッタターゲッ
トに対する投入電力比を、モリブデン(Mo)が0.0
5乃至0.40、酸化モリブデン(MoO3 )が0.4
0乃至0.70、酸化スカンジウム(Sc23)が0.
13乃至0.40の各範囲内に選ぶことにより、耐熱多
孔質基体の露出表面にオスミウム−ルテニウム(Os−
Ru)合金等からなる薄膜層を被覆した既知の含浸形陰
極(第2手段)における1000℃の動作温度時に得ら
れる電子放射特性と同等の電子放射特性を、850℃の
動作温度時において実現することが可能になる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に
説明する。
【0015】図1は、本発明に係わる製造方法の第1実
施例によって製造された含浸形陰極の第1構成例を示す
断面構成図である。
【0016】図1において、1は耐熱多孔質基体、2は
基体1の多孔内に含浸させた電子放出物質、3は陰極ペ
レット、4は陰極スリーブ、5は障壁層、6はモリブデ
ン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカン
ジウム(Sc23)からなる混合薄膜層、7はバリウム
(Ba)、スカンジウム(Sc)、酸素(O)からなる
複合層、8はヒータである。
【0017】そして、モリブデン(Mo)製の無底円筒
形陰極スリーブ4の一端部に同じくモリブデン(Mo)
製のカップ状の障壁層5が嵌合され、この障壁層5のカ
ップ状の内部に金属タングステン(W)を焼結して構成
した耐熱多孔質基体1が挿入される。耐熱多孔質基体1
は、多孔内に、バリウム(Ba)、アルミニウム(A
l)、カルシウム(Ca)の各酸化物からなる電子放出
物質2が含浸され、全体として陰極ペレット3を構成し
ている。耐熱多孔質基体1の露出表面には、直接、モリ
ブデン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化ス
カンジウム(Sc23)からなる混合薄膜層6が被着形
成され、その上に、バリウム(Ba)、スカンジウム
(Sc)、酸素(O)からなる複合層7が被着形成され
ている。陰極スリーブ4の内部には、ヒータ8が挿入配
置され、全体として傍熱形含浸形陰極が構成されてい
る。
【0018】この第1構成例の含浸形陰極は、次のよう
にして製造される。
【0019】まず、粒径5μmの金属タングステン
(W)の粉末を準備し、この粉末をプレス成形、水素
(H2 )雰囲気中の仮焼結、真空中の本焼結を順次行
い、直径が1.2mm、厚さが0.45mmで、空孔率
28%の耐熱多孔質基体1を作成する。この場合、空孔
率の調整は、プレス成形時の圧力調整及び焼結時の温度
調整によって行われる。
【0020】次に、得られた耐熱多孔質基体1に、水素
(H2 )雰囲気中で、バリウム(Ba)、アルミニウム
(Al)、カルシウム(Ca)の各酸化物である組成
(4BaO・CaO・Al23)の電子放出物質2を加
熱溶融して含浸させ、下地となる含浸形陰極ペレット3
を作成する。
【0021】次いで、この含浸形陰極ペレット3を、モ
リブデン(Mo)製のカップ状の障壁層5の内部に挿入
し、続いて、モリブデン(Mo)製の無底円筒形陰極ス
リーブ4の一端部に含浸形陰極ペレット3をカップ状の
障壁層5を嵌合し、さらに、陰極スリーブ4の内部にヒ
ータ8を挿入配置する。
【0022】続いて、3種以上の物質を同時に、かつ、
独立にスパッタリングすることが可能な多元スパッタリ
ング装置(図示なし)を用い、モリブデン(Mo)、酸
化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc2
3)の3種の物質をスパッタターゲットとし、陰極ペ
レット3の露出表面に、モリブデン(Mo)に対しては
0.2、酸化モリブデン(MoO3 )に対しては0.5
7、酸化スカンジウム(Sc23)に対しては0.28
の各電力投入比をもって薄膜形成を行い、モリブデン
(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジ
ウム(Sc23)からなる混合薄膜層6を被着形成し、
含浸形陰極が完成する。このとき、このモリブデン(M
o)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム
(Sc23)からなる混合薄膜層6の膜厚は230nm
であった。
【0023】なお、混合薄膜層6の上には、バリウム
(Ba)、スカンジウム(Sc)、酸素(O)からなる
複合層7が形成されているが、この複合層7は、以下に
述べるように、含浸形陰極の加熱によって形成されるも
のである。
【0024】この第1実施例の製造方法によって製造さ
れた含浸形陰極は、次のような電子放射メカニズムを有
する。
【0025】即ち、ヒータ8の通電により陰極ペレット
3が加熱され、同時にモリブデン(Mo)、酸化モリブ
デン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)から
なる混合薄膜層6が加熱されると、この混合薄膜層6内
で酸化モリブデン(MoO3)と酸化スカンジウム(S
23)とが反応して、次式のようにスカンジウムタン
グステート(Sc2Mo312)が生成される。 3MoO3+Sc23→Sc2Mo312 また、陰極ペレット3内では、耐熱多孔質基体1を構成
するタングステン(W)と電子放出物質2を構成するバ
リウムアルミネート(Ba3Al26 )とが反応して、
次式のようにバリウム(Ba)が生成される。 (2/3)Ba3Al26 +(1/3)W→(1/3)
BaWO4 +(2/3)BaAl24+Ba 生成されたバリウム(Ba)は、含浸形陰極の表面方向
に拡散されるとともに、混合薄膜層6内に生成されたス
カンジウムタングステート(Sc2Mo312)と反応
し、次式のようにスカンジウム(Sc)が生成される。 Sc2Mo312+3Ba→3BaMoO4+2Sc このとき、含浸形陰極の表面方向に拡散されるバリウム
(Ba)及びスカンジウム(Sc)は、電子放出物質2
の熱分解によって生じる酸素(O)や雰囲気中の酸素
(O)と結合し、混合薄膜層6の上側に単分子層乃至数
分子層程度の極めて薄いバリウム(Ba)、スカンジウ
ム(Sc)、酸素(O)からなる複合層7が形成される
ようになる。このように形成された複合層7は、電子放
出仕事関数が1.2eV程度とかなり小さいため、含浸
形陰極に高い電子放出能を持たせることができる。
【0026】また、図2は、モリブデン(Mo)、酸化
モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc
23)をスパッタターゲットとするスパッタリング時
に、各スパッタターゲットに対する投入電力比と、それ
によって得られた含浸形陰極の放出電流密度との関係を
示す特性図である。
【0027】図2の特性図において、Aは含浸形陰極の
放出電流密度が20A/cm2 以上の場合、Bは同放出
電流密度が12乃至20A/cm2 の範囲内にある場
合、Cは同放出電流密度が12A/cm2 未満の場合を
それぞれ示している。
【0028】なお、かかる含浸形陰極の放出電流密度
は、真空度10~7パスカル(Pa)程度の高真空容器内
に、陽極と陰極からなる平行平板電極を設け、陰極の温
度を1150℃にまで上昇させて陰極を活性化した後、
陰極の温度を850℃まで下げて陽極に正パルス電圧を
印加し、陰極の零電界放出電流を測定したものである。
【0029】この場合、実用的な含浸形陰極における放
出電流密度は、少なくとも12A/cm2以上でなけれ
ばならないことから、図2に図示されているAまたはB
の領域、即ち、実線で囲まれた範囲内が好ましいもので
ある。
【0030】そして、実線で囲まれた部分は、モリブデ
ン(Mo)に対する投入電力比が0.05乃至0.4
0、酸化モリブデン(MoO3 )に対する投入電力比が
0.40乃至0.70、酸化スカンジウム(Sc23
に対する投入電力比が0.13乃至0.40の各範囲内
に該当するもので、これら投入電力比の範囲内であれ
ば、放出電流密度の大きい含浸形陰極が得られる。
【0031】このように、第1実施例の製造方法によれ
ば、多元スパッタリング装置を用い、モリブデン(M
o)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム
(Sc23)の3種の物質をスパッタターゲットとして
同時スパッタリングを行っているので、モリブデン(M
o)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム
(Sc23)の量を自由に、独立に制御し、常時、同一
の薄膜形成条件で、同一の薄膜組成を持った再現性の高
い混合薄膜層6を得ることができる。
【0032】また、第1実施例の製造方法によれば、同
時スパッタリングにおけるモリブデン(Mo)、酸化モ
リブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23
に対する各投入電力比を前述のように選択することによ
り、850℃の陰極動作温度において、前述の既知の第
2手段の陰極における1000℃の陰極動作温度に相当
する電子放出特性を得ることができる。
【0033】次に、図3は、本発明に係わる製造方法の
第2実施例によって製造された含浸形陰極の第2構成例
を示す断面構成図である。
【0034】図3において、9は炭酸バリウム(BaC
3 )薄膜層であり、その他、図1に示された構成要素
と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0035】そして、この第2構成例と、図1に図示さ
れた第1構成例との違いは、第2構成例が、陰極ペレッ
ト3の露出表面とモリブデン(Mo)、酸化モリブデン
(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)からなる
混合薄膜層6との間に、炭酸バリウム(BaCO3 )薄
膜層9を介在形成しているのに対し、第1構成例は、こ
の炭酸バリウム(BaCO3 )薄膜層9がなく、陰極ペ
レット3の露出表面に直接モリブデン(Mo)、酸化モ
リブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23
からなる混合薄膜層6を被着形成している点だけであっ
て、その他に、第2構成例と第1構成例との間に構成上
の違いはない。このため、第2構成例については、これ
以上詳しい構成の説明を省略する。
【0036】この第2構成例の含浸形陰極は、次のよう
にして製造される。
【0037】始めに、粒径5μmの金属タングステン
(W)の粉末を準備し、この粉末をプレス成形、水素
(H2 )雰囲気中の仮焼結、真空中の本焼結を順次行
い、直径が1.2mm、厚さが0.45mmで、空孔率
28%の耐熱多孔質基体1を作成する。この場合におい
ても、空孔率の調整は、プレス成形時の圧力調整及び焼
結時の温度調整によって行われる。
【0038】次に、得られた耐熱多孔質基体1に、水素
(H2 )雰囲気中で、バリウム(Ba)、アルミニウム
(Al)、カルシウム(Ca)の各酸化物である組成
(4BaO・CaO・Al23)の電子放出物質2を加
熱溶融して含浸させ、下地となる含浸形陰極ペレット3
を作成する。
【0039】次いで、この含浸形陰極ペレット3を、モ
リブデン(Mo)製のカップ状の障壁層5の内部に挿入
し、続いて、モリブデン(Mo)製の無底円筒形陰極ス
リーブ4の一端部に含浸形陰極ペレット3をカップ状の
障壁層5を嵌合し、さらに、陰極スリーブ4の内部にヒ
ータ8を挿入配置する。
【0040】続いて、4種の物質を同時に、かつ、独立
にスパッタリングすることが可能な多元スパッタリング
装置(図示なし)を準備し、モリブデン(Mo)、酸化
モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc
23)、炭酸バリウム(BaCO3 )の4種の物質を多
元スパッタリング装置に収納する。ここで、アルゴン
(Ar)雰囲気中で、炭酸バリウム(BaCO3 )をス
パッタターゲットとして高周波スパッタリングを行い、
陰極ペレット3の露出表面に炭酸バリウム(BaC
3 )薄膜層9を形成する。このとき、この炭酸バリウ
ム(BaCO3 )薄膜層9の膜厚は120nmであっ
た。
【0041】次に、前記多元スパッタリング装置を用
い、炭酸バリウム(BaCO3 )薄膜層9の上に、モリ
ブデン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化ス
カンジウム(Sc23)をスパッタターゲットとしてス
パッタリングを行う際、モリブデン(Mo)に対しては
0.2、酸化モリブデン(MoO3 )に対しては0.5
7、酸化スカンジウム(Sc23)に対しては0.28
の各電力投入比をもって薄膜形成を行い、モリブデン
(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジ
ウム(Sc23)からなる混合薄膜層6を被着形成し、
含浸形陰極を完成させる。
【0042】なお、第2構成例においても、混合薄膜層
6の上に、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、
酸素(O)からなる複合層7が形成されているが、この
複合層7は、既に述べたように、含浸形陰極の加熱によ
って形成されるものである。
【0043】この第2実施例の製造方法によって製造さ
れた含浸形陰極における電子放出メカニズムも、前述の
第1実施例の製造方法に係わる含浸形陰極の電子放出メ
カニズムとほぼ同じであるが、第2実施例の製造方法に
よって製造された含浸形陰極は、炭酸バリウム(BaC
3 )薄膜層9の熱分解や、薄膜層9と陰極ペレット3
との反応によって多量のバリウム(Ba)が生成され、
この多量のバリウム(Ba)の生成により、Sc2Mo3
12+3Ba→3BaMoO4+2Scの反応が促進さ
れ、短時間内に混合薄膜層6上に、単分子層乃至数分子
層程度の極めて薄いバリウム(Ba)、スカンジウム
(Sc)、酸素(O)からなる複合層7が形成される。
この複合層7は、前述のように、電子放出仕事関数が
1.2eV程度とかなり小さく、含浸形陰極に高い電子
放出能を持たせることができる。
【0044】なお、第2実施例の製造方法で製造される
含浸形陰極の薄膜層9は、炭酸バリウム(BaCO3
のスパッタリングによって形成された炭酸バリウム(B
aCO3 )薄膜層9であることが望ましいが、他のバリ
ウム(Ba)化合物のスパッタリングによって形成され
た薄膜層9であっても差し支えない。
【0045】また、前記第1及び第2実施例で使用され
たモリブデン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、
酸化スカンジウム(Sc23)におけるターゲット特性
は、それぞれのターゲットへの投入電力量が同じ200
ワット(W)であるとき、それらの薄膜堆積速度比は、
6:5、4:1であった。
【0046】さらに、前記第1及び第2実施例で形成さ
れるモリブデン(Mo)、酸化モリブデン(Mo
3 )、酸化スカンジウム(Sc23)からなる混合薄
膜層6は、50乃至850nmの厚さに形成されていれ
ば、所要の電子放出特性を得ることができる。
【0047】その他に、前記第2の実施例で形成される
バリウム化合物からなる薄膜層9は、30乃至450n
mの厚さに形成されていれば、所要の電子放出特性を得
ることができる。
【0048】ここで、図4は、第1及び第2実施例の製
造方法によって製造された含浸形陰極の活性化時間と放
出電流密度との関係を示す特性図である。
【0049】図4において、縦軸は陰極動作温度(85
0℃)時における放出電流密度(A/cm2 )、横軸は
陰極活性化温度(1100℃)時における活性化時間
(h)である。そして、曲線は第1実施例の製造方法
によって製造された含浸形陰極(第1構成例)の特性、
曲線は第2実施例の製造方法によって製造された含浸
形陰極(第2構成例)の特性である。
【0050】図4に示されるように、第1構成例は、放
出電流密度が最大、即ち、25A/cm2 に到達するま
での活性化時間が2時間近くかかっているのに対し、炭
酸バリウム(BaCO3 )の薄膜層9を有する第2構成
例は、放出電流密度が最大、即ち、25A/cm2 に到
達するまでの活性化時間が30分程度と短くなってお
り、活性化時間の短縮化を達成できるものである。
【0051】このように、第2実施例の製造方法によれ
ば、第1実施例の製造方法において得られる効果と同様
の効果が得られる上に、活性化時間を著しく短縮するこ
とができるという効果がある。
【0052】さらに、図5は、本実施例(第1及び第2
実施例)の製造方法によって製造された含浸形陰極と、
既知の含浸形陰極における耐イオン衝撃特性を示す特性
図である。
【0053】図5において、縦軸は放出電流が劣化し始
めたときのアルゴン(Ar)圧力(Pa)、横軸は陰極
温度の逆数(K~1)及び陰極温度(℃)である。そし
て、曲線は本実施例の含浸形陰極の特性、曲線は既
知の第1手段の含浸形陰極の特性である。
【0054】図5に示されるように、陰極温度が940
℃より高い領域では、本実施例の含浸形陰極より既知の
第1手段の含浸形陰極の方が耐イオン衝撃特性に優れて
いるが、陰極温度が940℃より低い領域、即ち、陰極
温度が850℃程度のところでは、既知の第1手段の含
浸形陰極に比べて本実施例の含浸形陰極の方が耐イオン
衝撃特性に優れていることが判り、850℃程度の陰極
温度で用いる本実施例の含浸形陰極は、優れた耐イオン
衝撃特性を発揮しているものである。
【0055】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、請求項1に
記載の発明によれば、耐熱多孔質基体の露出表面に、多
元スパッタリング装置を用いて、モリブデン(Mo)、
酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc
23)をスパッタターゲットとする同時スパッタリング
を行って混合薄膜層を形成させる際に、モリブデン(M
o)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム
(Sc23)の各含有量を自由に、独立に制御できるの
で、常時、同じ薄膜形成条件と、同じ薄膜組成の選択と
が可能になり、再現性が良好で、一定の組成を有するの
混合薄膜層が得られ、高い電子放射特性を発揮できる含
浸形陰極が得られるという効果がある。
【0056】また、請求項2に記載の発明によれば、耐
熱多孔質基体の露出表面に、多元スパッタリング装置を
用いて、バリウム(Ba)化合物をスパッタターゲット
とするスパッタリングを行い、バリウム(Ba)化合物
の薄膜層を形成した後、この薄膜層の上に、多元スパッ
タリング装置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリ
ブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)を
スパッタターゲットとした同時スパッタリングを行い、
混合薄膜層を形成させ際に、モリブデン(Mo)、酸化
モリブデン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc
23)の各含有量を自由に、独立に制御できるので、常
時、同じ薄膜形成条件と、同じ薄膜組成の選択とが可能
になり、再現性が良好で、一定の組成を有するの混合薄
膜層が得られ、高い電子放射特性を発揮できる含浸形陰
極が得られ、かつ、バリウム(Ba)化合物の薄膜層を
設けたことによって、活性化時間を著しく短縮すること
ができるという効果がある。
【0057】さらに、請求項1及び請求項2に記載の発
明において、同時スパッタリングを行う際の各スパッタ
ターゲットに対する投入電力比を、モリブデン(Mo)
が0.05乃至0.40、酸化モリブデン(MoO3
が0.40乃至0.70、酸化スカンジウム(Sc
23)が0.13乃至0.40の各範囲内に選ぶことに
より、耐熱多孔質基体の露出表面にオスミウム−ルテニ
ウム(Os−Ru)合金等からなる薄膜層を被覆した既
知の含浸形陰極における1000℃の動作温度時に得ら
れる電子放射特性と同等の電子放射特性を、850℃の
動作温度時において実現可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる製造方法の第1実施例によって
製造された含浸形陰極の第1構成例を示す断面構成図で
ある。
【図2】モリブデン(Mo)、酸化モリブデン(MoO
3 )、酸化スカンジウム(Sc23)からなるスパッタ
ターゲットに対する投入電力比と、それによって得られ
た含浸形陰極の放出電流密度との関係を示す特性図であ
る。
【図3】本発明に係わる製造方法の第2実施例によって
製造された含浸形陰極の第2構成例を示す断面構成図で
ある。
【図4】第1及び第2実施例の製造方法によって製造さ
れた含浸形陰極の活性化時間と放出電流密度との関係を
示す特性図である。
【図5】本実施例の製造方法によって製造された含浸形
陰極と既知の含浸形陰極における耐イオン衝撃特性を示
す特性図である。
【符号の説明】
1 耐熱多孔質基体 2 電子放出物質 3 陰極ペレット 4 陰極スリーブ 5 障壁層 6 モリブデン(Mo)、酸化モリブデン(Mo
3 )、酸化スカンジウム(Sc23)からなる混合薄
膜層 7 バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、酸素
(O)からなる複合層 8 ヒータ 9 バリウム(Ba)化合物の薄膜層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質基体の細孔に電子放出物質を含浸
    させた耐熱多孔質基体を陰極スリーブの一端に嵌合さ
    せ、前記耐熱多孔質基体の露出表面に、多元スパッタリ
    ング装置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリブデ
    ン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)をスパ
    ッタターゲットとした同時スパッタリングを行い、モリ
    ブデン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化ス
    カンジウム(Sc23)からなる混合薄膜層を形成した
    ことを特徴とする含浸形陰極の製造方法。
  2. 【請求項2】 多孔質基体の細孔に電子放出物質を含浸
    させた耐熱多孔質基体を陰極スリーブの一端に嵌合さ
    せ、前記耐熱多孔質基体の露出表面に、多元スパッタリ
    ング装置を用いて、バリウム化合物をスパッタターゲッ
    トとするスパッタリングを行い、バリウム化合物の薄膜
    層を形成し、この薄膜層の上に、前記多元スパッタリン
    グ装置を用いて、モリブデン(Mo)、酸化モリブデン
    (MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)をスパッ
    タターゲットとする同時スパッタリングを行い、モリブ
    デン(Mo)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化スカ
    ンジウム(Sc23)からなる混合薄膜層を形成したこ
    とを特徴とする含浸形陰極の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記同時スパッタリングを行う際のスパ
    ッタターゲットに対する投入電力比は、モリブデン(M
    o)が0.05乃至0.40、酸化モリブデン(MoO
    3 )が0.40乃至0.70、酸化スカンジウム(Sc
    23)が0.13乃至0.40の各範囲内から選んでい
    ることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載
    の含浸形陰極の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記バリウム化合物は、炭酸バリウム
    (BaCO3 )であることを特徴とする請求項2に記載
    の含浸形陰極の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記モリブデン(Mo)、酸化モリブデ
    ン(MoO3 )、酸化スカンジウム(Sc23)からな
    る混合薄膜層は、膜厚が50乃至850nmであること
    を特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の含浸
    形陰極の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記バリウム化合物は、膜厚が30乃至
    450nmであることを特徴とする請求項2に記載の含
    浸形陰極の製造方法。
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