JPH08328061A - 非線形光学材料および非線形光素子ならびに光多重化方法 - Google Patents

非線形光学材料および非線形光素子ならびに光多重化方法

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JPH08328061A
JPH08328061A JP13313895A JP13313895A JPH08328061A JP H08328061 A JPH08328061 A JP H08328061A JP 13313895 A JP13313895 A JP 13313895A JP 13313895 A JP13313895 A JP 13313895A JP H08328061 A JPH08328061 A JP H08328061A
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linearly polarized
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fine particles
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JP13313895A
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Shigeaki Omi
成明 近江
Katsuaki Uchida
勝昭 内田
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Hoya Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複数種の光に対してそれぞれ別個に非線形光
学応答を示し、かつその製造が容易な非線形光学材料を
提供する。また、複数種の光についてそれぞれ別個に光
制御を行うことが可能で、かつその製造が容易な非線形
光素子を提供する。さらに、上記の非線形光素子によっ
て複数種の光を制御する際の被制御光を得るのに好適な
光多重化方法を提供する。 【構成】 本発明の非線形光学材料は、複屈折性を有す
る光学的に透明なマトリックスに微粒子を分散させてな
ることを特徴とする。また、本発明の非線形光素子は、
上記本発明の非線形光学材料によって光路の一部または
全部が形成されていることを特徴とする。そして、本発
明の光多重化方法は、偏光方位および波長がそれぞれ異
なる複数種の直線偏光を多重化して、非線形光素子によ
って制御される被制御光を得ることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非線形光学材料および非
線形光素子ならびに光多重化方法に係り、特に、複数種
の光に対してそれぞれ別個に非線形光学応答を示す非線
形光学材料および複数種の光についてそれぞれ別個に光
制御を行うことが可能な非線形光素子、ならびに前記の
非線形光素子によって制御される被制御光を得るのに好
適な光多重化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光の波長に比べて十分に小さい金属微粒
子、半導体微粒子もしくは複合微粒子をガラス、高分
子、結晶等の透明なマトリックス中に分散させた材料に
おいて3次の非線形光学特性が観察されており、当該材
料(以下「非線形光学材料」という)が比較的大きな非
線形感受率を示すことが既に報告されている(例えばAp
pl.Phys.,A47,347 (1988)およびJ.Ceram.Soc.Japan,10
1,1340 (1993)参照)。このため、上記の非線形光学材
料は光スイッチ等の非線形光素子の材料として注目を集
めており、当該非線形光学材料によって光路の一部また
は全部を形成した非線形光素子の開発が進められてい
る。
【0003】上記の非線形光素子は、従来、1種類の入
射光について光制御を行うものであったが、近年、複数
種の入射光についてそれぞれ別個に光制御を行うことが
可能な非線形光素子が開発されている(特開平6−20
8149号公報参照)。この非線形光素子は、異なる波
長の光を吸収して3次の非線形光学効果を示す複数種の
微粒子(金属微粒子または半導体微粒子)をマトリック
スに分散させてなる非線形光学材料を利用したものであ
り、マトリックスに分散されている複数種の微粒子各々
についての吸収波長の光に対してそれぞれ別個に光双安
定特性を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、複数種
の光についてそれぞれ別個に光制御を行うことが可能な
上記の非線形光素子を構成している前記の非線形光学材
料を得るためには、複数種の微粒子をそれぞれのサイズ
を制御しつつマトリックスに分散させる必要があり、こ
のような非線形光学材料を得ることは実際上極めて困難
である。
【0005】本発明の第1の目的は、複数種の光に対し
てそれぞれ別個に非線形光学応答を示し、かつその製造
が容易な非線形光学材料を提供することにある。
【0006】また、本発明の第2の目的は、複数種の光
についてそれぞれ別個に光制御を行うことが可能で、か
つその製造が容易な非線形光素子を提供することにあ
る。
【0007】そして、本発明の第3の目的は、上記第2
の目的を達成する非線形光素子によって複数種の光を制
御する際の被制御光を得るのに好適な光多重化方法を提
供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、マトリッ
クスに微粒子を分散させてなる非線形光学材料の光吸収
特性について詳細に研究した結果、非線形光学材料の光
吸収のピーク位置、ひいては3次の非線形感受率のピー
ク位置がマトリックスの屈折率に応じて変化することを
見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0009】すなわち、上記第1の目的を達成する本発
明の非線形光学材料は、複屈折性を有する光学的に透明
なマトリックスに微粒子を分散させてなることを特徴と
するものである。
【0010】また、上記第2の目的を達成する本発明の
非線形光素子は、上記本発明の非線形光学材料によって
光路の一部または全部が形成されていることを特徴とす
るものである。
【0011】そして、上記第3の目的を達成する本発明
の光多重化方法は、偏光方位および波長がそれぞれ異な
る複数種の光を多重化して、非線形光素子によって制御
される被制御光を得ることを特徴とするものである。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。まず本発
明の非線形光学材料について説明すると、この非線形光
学材料は、上述のように、複屈折性を有する光学的に透
明なマトリックスに微粒子を分散させてなるものであ
る。
【0013】ここで、本発明でいう「光学的に透明なマ
トリックス」とは、当該マトリックスに分散させようと
する微粒子についての吸収ピーク波長域における光吸収
係数αが概ね10cm-1以下であるものを意味する。非
線形光学材料の非線形光学特性は、当該非線形光学材料
中に分散されている微粒子の吸収ピーク波長(微粒子が
金属微粒子または金属のコアを有する複合微粒子の場合
は、金属微粒子またはコアのプラズモン吸収ピーク波
長)近傍で最も増大するので、当該非線形光学材料に非
線形光学応答を発現させるための光としては前記の吸収
ピークまたはその近傍の波長の光を使用することが好ま
しいわけであるが、微粒子の吸収ピーク波長またはその
近傍にマトリックスの吸収が存在すると、入射した光が
この吸収によって減衰ないし消失してしまう。マトリッ
クスとしては、上記の光吸収係数αが5cm-1以下のも
のが特に好ましい。
【0014】本発明の非線形光学材料でのマトリックス
は、複屈折性を有する光学的に透明なものであればよい
が、その中でも偏光方向における屈折率の最大差が0.
01以上のものが好ましい。この最大差が0.01未満
のマトリックスを用いた場合には、偏光方位が異なる複
数の直線偏光についての吸収ピーク波長(3次の非線形
光学効果が発現する波長)の差が微小になる結果、これ
ら複数種の直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光学
応答を示す非線形光学材料を得ることが困難になる。偏
光方向における屈折率の最大差は0.05以上であるこ
とが特に好ましい。なお、本発明でいう「偏光方位」と
は直線偏光の振動方向の方位を意味し、振動方向が鉛直
方向である場合を0度として0〜180度の角度で表
す。また、本発明でいう「偏光方向における屈折率の最
大差」とは、屈折率楕円体の屈折率の最大値と最小値の
差を意味する。
【0015】光学的に透明で、かつ、偏光方向における
屈折率の最大差が0.01以上であるマトリックスの具
体例としては、TiO2 ,TeO2 ,CaCO3 ,YV
4,LiNbO3 ,NaNO3 ,NaNO2 ,PbM
oO4 ,Ba2LiNb515,HgS,Ag3SbS3
およびLiIO3 の各単結晶体が挙げられる。非線形光
素子を用いた光学系では、通常、波長300〜2000
nmの単色の直線偏光が使用されるわけであるが、上記
の各単結晶体は300〜2000nmの波長域において
実用上十分な耐光性を有しており、この点からも本発明
の非線形光学材料のマトリックスとして好適である。
【0016】上記の各単結晶体の中でも、偏光方向にお
ける屈折率差が大きく、また、耐候性に優れているとい
う観点からすると、TiO2 ,TeO2 ,CaCO3
YVO4 ,LiNbO3 ,NaNO3 およびPbMoO
4 の各単結晶体が好ましい。また、非線形光学材料にお
ける3次の非線形感受率|χ(3)|を当該|χ(3)|測定
時の測定光の波長下における光吸収係数αで規格化した
|χ(3)|/αの値が大きい非線形光学材料を得るうえ
からは 、当該非線形光学材料に非線形光学応答を発現
させるために使用する光の波長下における屈折率が高い
(例えば1.9以上)マトリックスが好ましい。そし
て、このような観点からすると、マトリックスに分散さ
せる微粒子が後述する金属ないし合金からなる微粒子ま
たは複合微粒子である場合には、上記の各単結晶体の中
でもTiO2 ,TeO2 ,YVO4,LiNbO3 およ
びPbMoO4 の各単結晶体が好ましい。さらに、非線
形光学応答の速度が速い非線形光学材料を得るうえから
は、マトリックスの熱伝導率は高い(例えば2W/mK
以上)方が好ましく、このような観点からすると、上記
の各単結晶体の中でもTiO2 およびLiNbO3 が好
ましい。
【0017】上述したマトリックスに分散させる微粒子
は、当該微粒子を分散させることによって非線形光学材
料を得ることができるものであればよいが、実用上は、
そのサイズが1〜500nmであるものが好ましい。微
粒子のサイズが1nm未満では、この微粒子をマトリッ
クスに分散させることによって発現する非線形光学特性
が微弱になり、非線形光素子に利用することができる非
線形光学材料を得ることが困難になる。一方、微粒子の
サイズが500nmを超えると、この微粒子をマトリッ
クスに分散させることによって発現する非線形光学特性
が微弱になる他、当該微粒子による光散乱が強くなって
光損失が増大するので、非線形光素子に利用することが
できる非線形光学材料を得ることが困難になる。微粒子
のサイズは2〜200nmであることが特に好ましい。
なお、本発明でいう微粒子のサイズとは、微粒子の形状
が球形である場合にはその直径を意味し、微粒子の形状
が非球形である場合には長手方向の長さ(最長寸法)を
意味する。
【0018】ただし、前述したように非線形光学材料に
非線形光学応答を発現させるための光としては、当該非
線形光学材料中に分散されている微粒子の吸収ピーク近
傍の波長の光を使用することが好ましく、また、非線形
光素子を用いた光学系では、通常、波長300〜200
0nmの単色の直線偏光が使用されることから、上記の
微粒子は、非線形性を増大させる吸収ピークが300〜
2000nmの波長域内にあるものが好ましい。さら
に、当該微粒子としては、マトリックスの屈折率の違い
に起因する光吸収ピーク位置、ひいては3次の非線形感
受率のピーク位置の変化が大きいものが好ましい。
【0019】上記の観点から、微粒子としては下記(i)
〜(ii)のものが好ましい。 (i) Cu,Au,Ag,Sn,Pt,Pd,Ni,C
o,Rh,Ir,Fe,Ru,Os,Mn,Mo,W,
Nb,Ta,Bi,SbおよびPbからなる群より選ば
れた金属単体、前記群より選ばれた金属同士の合金また
は前記群より選ばれた金属の1種もしくは複数種を総量
で80モル%以上含む合金からなるもの。
【0020】(ii) Cu,Au,Ag,Sn,Pt,P
d,Ni,Co,Rh,Ir,Fe,Ru,Os,M
n,Mo,W,Nb,Ta,Bi,SbおよびPbから
なる群より選ばれた金属単体、前記群より選ばれた金属
同士の合金または前記群より選ばれた金属の1種もしく
は複数種を総量で80モル%以上含む合金からなるコア
の表面を当該コアおよびマトリックスとは異なる物質か
らなるシェルで被覆してなる複合微粒子。当該複合微粒
子を構成するシェルの具体例としては、Cu,Au,A
gおよびAlの各金属単体およびこれらの金属同士の合
金が挙げられる。
【0021】上述した微粒子の中でも、Cu,Au,A
gおよびSnからなる群より選ばれた金属単体または前
記の群より選ばれた金属同士の合金からなるもの、なら
びにCu,Au,AgおよびSnからなる群より選ばれ
た金属単体または前記の群より選ばれた金属同士の合金
からなるコアの表面を当該コアおよびマトリックスとは
異なる物質からなるシェルで被覆してなる複合微粒子が
特に好ましい。
【0022】前述したマトリックスには、上述した微粒
子の複数種を分散させてもよいが、目的とする非線形光
学材料を容易に製造するうえからは1種類の微粒子を分
散させることが好ましい。非線形光学材料に占める微粒
子の割合は、目的とする非線形光学材料の用途、微粒子
の材質、マトリックスの材質等に応じて適宜変更可能で
あるが、概ね0.0001〜60体積%の範囲内であ
る。
【0023】上述した微粒子を前述したマトリックスに
分散させてなる本発明の非線形光学材料は、例えば、所
望材質のマトリックスに微粒子形成用のイオン種をイオ
ン注入することにより、または、このイオン注入後に熱
処理を施すことにより得ることができる。複合微粒子を
形成する場合には、コア形成用のイオン種をイオン注入
することにより、または、このイオン注入後に熱処理を
施すことによりコアを形成し、この後、シェル形成用の
イオン種をイオン注入することにより、または、このイ
オン注入後に熱処理を施すことによりシェルを形成す
る。また、マトリックス用のバルク単結晶をチョクラル
スキー法等の液相法により作製する際に、単結晶の原料
に微粒子を添加したものからバルク単結晶を作製するこ
とによっても目的とする非線形光学材料を得ることがで
きる。
【0024】上述のようにして得られる本発明の非線形
光学材料に直線偏光を入射させた場合の光吸収のピーク
位置、ひいては3次の非線形感受率のピーク位置は、前
記の直線偏光の偏光方位に応じて異なる。すなわち、本
発明の非線形光学材料は、当該非線形光学材料に入射し
た直線偏光の偏光方位に対応した複数の光吸収ピーク、
ひいては3次の非線形感受率についての複数のピークを
有する。したがって、本発明の非線形光学材料における
光吸収ピークまたはその近傍の波長を有し、かつ、前記
の光吸収ピークが発現する偏光方位を有する単色もしく
は狭帯域の直線偏光を複数種多重化した光を本発明の非
線形光学材料に入射させた場合には、当該非線形光学材
料は前記多重化した光を構成している各直線偏光に対し
てそれぞれ別個に非線形光学応答を示す。
【0025】なお、本発明でいう「狭帯域の直線偏光」
とは、これらの直線偏光を多重化したときに干渉を起こ
さない、または、干渉を起こすものの、当該干渉が本発
明の非線形光学材料における非線形光学応答に実質的に
影響を及ぼさない直線偏光を意味する。
【0026】次に、本発明の非線形光素子について説明
する。本発明の非線形光素子は、前述したように、上述
した本発明の非線形光学材料によって光路の一部または
全部が形成されていることを特徴とするものである。こ
の非線形光素子は、光路の一部または全部を形成してい
る前記の非線形光学材料の非線形光学特性を利用して光
制御を行う非線形光素子であれば如何なる形態(例えば
ファブリ・ペロー共振器型,導波路型,方向性結合器
型,ループファイバー型等)および用途(例えば光スイ
ッチ,光変調器,光シャッタ,光フィルタ,光論理素
子,光メモリ,光交換器,光ゲート素子等)のものであ
ってもよい。
【0027】上記の非線形光素子は、例えば次のように
して駆動されて光制御を行う。すなわち、非線形光素子
によって制御しようとする光(以下「被制御光」とい
う)を当該非線形光素子に入射させるにあたり、非線形
光素子からの出射光強度をオフ状態にしたい場合には被
制御光の入射強度が前記の非線形光学材料に非線形光学
応答を生じさせない強度となるように当該被制御光の入
射強度を調整し、非線形光素子からの出射光強度をオン
状態にしたい場合には被制御光の入射強度が前記の非線
形光学材料に非線形光学応答を生じさせる強度となるよ
うに当該被制御光の入射強度を調整する。
【0028】このとき、後述する本発明の光多重化方法
によって複数種の直線偏光を多重化したものを上記の被
制御光として用い、当該被制御光を構成している各直線
偏光の入射強度をそれぞれ調整することにより、これら
の直線偏光の各々を別個に光制御することができる。
【0029】あるいは、非線形光学材料に非線形光学応
答を生じさせない入射光強度のバイアスポンピング光
(定常入力光)と、このバイアスポンピング光と同一波
長のトリガーポンピング光(パルス光)とを非線形光素
子に入射させ、非線形光素子からの出射光強度をオフ状
態にしたい場合には、バイアスポンピング光とトリガー
ポンピング光とが重畳された光の入射強度が前記の非線
形光学材料に非線形光学応答を生じさせない強度となる
ようにバイアスポンピング光またはトリガーポンピング
光の入射強度を調整し、非線形光素子からの出射光強度
をオン状態にしたい場合には、バイアスポンピング光と
トリガーポンピング光とが重畳された光の入射強度が前
記の非線形光学材料に非線形光学応答を生じさせる強度
となるようにバイアスポンピング光またはトリガーポン
ピング光の入射強度を調整する。
【0030】このとき、上記のバイアスポンピング光お
よびトリガーポンピング光のいずれか一方が被制御光と
して用いられ、他方が制御光として用いられる。そし
て、後述する本発明の光多重化方法によって複数種の直
線偏光を多重化したものを上記の被制御光として用い、
当該被制御光を構成している直線偏光と偏光方位および
波長の点で同じ直線偏光を多重化したものを制御光とし
て用い、かつ、当該制御光を構成している各直線偏光の
入射強度をそれぞれ調整することにより、被制御光を構
成している直線偏光の各々を別個に制御することができ
る。
【0031】次に、本発明の光多重化方法について説明
する。本発明の光多重化方法は、前述したように、偏光
方位および波長がそれぞれ異なる複数種の光を多重化し
て、非線形光素子によって制御される被制御光を得るこ
とを特徴とするものである。この方法は、上述した本発
明の非線形光素子によって複数種の直線偏光をそれぞれ
別個に光制御する際の被制御光を得るのに好適な方法で
あり、当該方法によって被制御光を得るにあたっては、
次のようにして直線偏光を多重化する。
【0032】すなわち、上述した本発明の非線形光素子
は、光路の一部または全部が前述した本発明の非線形光
学材料によって形成されているものであり、この非線形
光学材料に直線偏光を入射させた場合の光吸収のピーク
位置、ひいては3次の非線形感受率のピーク位置は、本
発明の非線形光学材料についての説明の中で既に述べた
ように、入射させた直線偏光の偏光方位に応じて異な
る。したがって、上記の被制御光を得るにあたっては、
当該被制御光を入射させようとする非線形光素子を構成
している非線形光学材料(本発明の非線形光学材料)に
おける光吸収ピークまたはその近傍の波長を有し、か
つ、前記の光吸収ピークが発現する偏光方位を有する単
色もしくは狭帯域の直線偏光を所望数多重化する。多重
度は特に限定されるものではないが、例えば市販の偏光
子を用いれば直線偏光の偏光方位を1度の精度で容易に
制御することができ、これにより多重度が90の被制御
光を容易に得ることができる。
【0033】上述のようにして複数種の直線偏光を多重
化してなる被制御光を前述した本発明の非線形光素子に
入射させた場合には、当該素子の光路の一部または全部
を形成している本発明の非線形光学材料の非線形光学効
果により、被制御光を構成している各直線偏光をそれぞ
れ別個に光制御することが可能になる。
【0034】
【作用】光学的に透明なマトリックスに微粒子を分散さ
せてなる非線形光学材料の光吸収のピーク位置、ひいて
は3次の非線形感受率のピーク位置は、マトリックスの
屈折率に応じて変化する。本発明の非線形光学材料にお
けるマトリックスは複屈折性を有するので、この非線形
光学材料に直線偏光を入射させた場合の光吸収のピーク
位置、ひいては3次の非線形感受率のピーク位置は、入
射させた直線偏光の偏光方位に応じて異なる。すなわ
ち、本発明の非線形光学材料は、当該非線形光学材料に
入射した直線偏光の偏光方位に対応した複数の光吸収ピ
ーク、ひいては3次の非線形感受率についての複数のピ
ークを有する。
【0035】したがって、本発明の非線形光学材料にお
ける光吸収ピークまたはその近傍の波長を有し、かつ、
前記の光吸収ピークが発現する偏光方位を有する単色も
しくは狭帯域の直線偏光を複数種多重化した光を本発明
の非線形光学材料に入射させた場合には、当該非線形光
学材料は前記多重化した光を構成している各直線偏光に
対してそれぞれ別個に非線形光学応答を示す。
【0036】また、本発明の非線形光学材料において
は、マトリックスに分散している微粒子はその組成から
みて2種類以上であっても勿論よいが、1種類で十分で
ある。したがって、異なる波長の光を吸収して3次の非
線形光学効果を示す複数種の微粒子をマトリックスに分
散させてなる従来の非線形光学材料に比べて、その製造
が容易である。
【0037】一方、本発明の非線形光素子では、上述し
た本発明の非線形光学材料によって光路の一部または全
部が形成されている。したがって、前記の非線形光学材
料における光吸収ピークまたはその近傍の波長を有し、
かつ、前記の光吸収ピークが発現する偏光方位を有する
単色もしくは狭帯域の直線偏光を複数種多重化した光を
当該非線形光素子による被制御光として用いることによ
り、当該被制御光を構成している直線偏光の各々を別個
に光制御することが可能になる。
【0038】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1 市販のTiO2 単結晶から板材を切り出し、両平面を光
学研磨して、TiO2結晶のZ面が主表面に位置してい
る厚さ0.2mmの板状試料を得た。市販のエリプソメ
ータを用いて、前記の板状試料の直線偏光(波長633
nm)に対する屈折率を当該直線偏光の偏光方位を0度
から90度まで変化させて測定したところ、図1に示す
ように、当該板状試料における偏光方向の違いによる屈
折率の最大差は約0.28であった。
【0039】次に、市販のイオン注入装置を用いて加速
エネルギー160keVの条件下で上記の板状試料にド
ーズ量2×107 イオン/cm2 までAg+ イオンを注
入して、当該板状試料中にAg微粒子を析出させた。こ
れにより、TiO2 単結晶基板からなるマトリックスに
Ag微粒子を分散させてなる非線形光学材料が得られ
た。
【0040】上記の非線形光学材料を透過型電子顕微鏡
(TEM)で観察したところ、TiO2 単結晶基板の表
面(イオン注入を行った側の表面)から100nmの深
さまでAg微粒子の析出が認められ、当該Ag微粒子は
ほぼ球形をなし、その平均サイズは30nm、微粒子サ
イズ分布の比標準偏差(標準偏差を平均半径で規格化し
た値)は0.2であった。また、この非線形光学材料
(イオン注入部)に占めるAg微粒子の割合は約30体
積%であった。
【0041】この非線形光学材料の光吸収曲線は、偏光
方位が0度,40度または90度の直線偏光についてそ
れぞれ図2に示す通りであった。そして、Ag微粒子の
プラズモン吸収ピーク位置は、偏光方位が0度の直線偏
光に対しては563nm、偏光方位が40度の直線偏光
に対しては593nm、偏光方位が90度の直線偏光に
対しては617nmであり、直線偏光の偏光方向による
差異が認められた。
【0042】上記の非線形光学材料について、(1)偏
光方位0度,波長563nmの直線偏光からなるパルス
幅5psのパルス光、(2)偏光方位40度,波長59
3nmの直線偏光からなるパルス幅5psのパルス光、
または(3)偏光方位90度,波長617nmの直線偏
光からなるパルス幅5psのパルス光を用いた縮退四光
波混合法により3次の非線形感受率|χ(3)|を測定
し、この測定結果と|χ(3)|測定時の上記パルス光の
波長下での光吸収係数αとから|χ(3)|/αの値を求
めた。その結果、上記(1)のパルス光を用いたときの
|χ(3)|/αは1.2×10-9 esu・cm、上記
(2)のパルス光を用いたときの|χ(3)|/αは1.
3×10-9 esu・cm、上記(3)のパルス光を用いた
ときの|χ(3)|/αは0.9×10-9 esu・cmであ
った。
【0043】次に、上記の非線形光学材料(厚さ0.2
mm)の両面に誘電体多層膜からなる厚さ2μmの反射
防止膜を蒸着した後、ミラーの反射率90%、共振器長
0.8mmのファブリ・ペロー共振器に挿入して、ファ
ブリ・ペロー共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し
た。
【0044】この光双安定スイッチ素子に、被制御光と
して(i)偏光方位0度,波長563nmの直線偏光か
らなるパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス
光、(ii)偏光方位40度,波長593nmの直線偏光
からなるパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス
光、および(iii)偏光方位90度,波長617nmの
直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μm
のパルス光を多重化したものを大気中、室温下で入射さ
せた。その結果、図3に示すように、上記(i)のパル
ス光に対しては入射光強度250mWで、上記(ii)の
パルス光に対しては入射光強度220mWで、上記(ii
i)のパルス光に対しては入射光強度280mWで、そ
れぞれ光双安定スイッチ動作が認められた。
【0045】したがって、上記の光双安定スイッチ素子
に上記の被制御光を入射させた場合には、当該被制御光
を構成している各パルス光(直線偏光)の入射強度をそ
れぞれ調整することにより、これらのパルス光(直線偏
光)の各々を別個に光制御することができる。
【0046】比較例1 複屈折性を有していないという点で本発明の限定範囲外
であるZnS基板をマトリックスとして用いた以外は実
施例1と同様にして、Ag微粒子が分散した厚さ0.2
mmのZnS基板(以下「Ag微粒子分散ZnS基板」
という)を得た。このAg微粒子分散ZnS基板をTE
Mで観察したところ、ZnS基板の表面(イオン注入を
行った側の表面)から80nmの深さまでAg微粒子の
析出が認められ、当該Ag微粒子はほぼ球形をなし、そ
の平均サイズは26nmであった。また、このAg微粒
子分散ZnS基板の光吸収曲線は、偏光方位が0度,4
0度および90度の直線偏光のいずれについても図4に
示す通りであり、直線偏光の偏光方向による差異は認め
られなかった。そして、Ag微粒子のプラズモン吸収ピ
ーク位置は、偏光方位が0度,40度および90度の直
線偏光のいずれに対しても450nmであった。
【0047】上記のAg微粒子分散ZnS基板につい
て、実施例1で用いた(1)〜(3)のパルス光と同じ
パルス光を用いた縮退四光波混合法により3次の非線形
感受率|χ(3)|を測定し、この測定結果と|χ(3)|測
定時の上記パルス光の波長下での光吸収係数αとから|
χ(3)|/αの値を求めた。その結果、前記(1)のパ
ルス光を用いたときの|χ(3)|/αは3.1×10-11
esu・cm、前記(2)のパルス光を用いたときの|χ
(3)|/αは1.8×10-11 esu・cm、前記(3)の
パルス光を用いたときの|χ(3)|/αは0.2×10
-11 esu・cmであった。
【0048】次に、上記のAg微粒子分散ZnS基板を
用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー共振器型
の光双安定スイッチ素子を作製し、この光双安定スイッ
チ素子に、被制御光として実施例1で用いた被制御光と
同じものを大気中、室温下で入射させた。その結果、被
制御光を構成している各パルス光(直線偏光)の入射光
強度をそれぞれ1000mWまで高めても光双安定スイ
ッチ動作は認められなかった。
【0049】実施例2〜実施例15 マトリックスおよび微粒子形成用のイオン種としてそれ
ぞれ表1に示すものを用い、イオン注入時のドーズ量を
表1に示す量とした以外は実施例1と同様にして、表1
に示すマトリックスに表1に示す微粒子を分散させてな
る非線形光学材料を得た。そして、これらの非線形光学
材料について、表2に示す偏光角および波長の直線偏光
からなるパルス光(パルス幅5ps)を用いたときの|
χ(3)|/αの値を実施例1と同様にして求めた。これ
らの結果を表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】表2に示したように、実施例2〜実施例1
5のそれぞれで得られた非線形光学材料は、所定の波長
および偏光角を有する複数の直線偏光、すなわち、当該
非線形光学材料における光吸収ピークの波長を有し、か
つ、前記の光吸収ピークが発現する偏光方位を有する複
数の直線偏光に対して、それぞれ別個に非線形光学応答
を示す。
【0053】次に、実施例2〜実施例15のそれぞれで
得られた非線形光学材料を用いて、実施例毎に実施例1
と同様にしてファブリ・ペロー共振器型の光双安定スイ
ッチ素子を作製した。そして、これらの光双安定スイッ
チ素子に、表2に示した直線偏光と偏光方位および波長
の点で同じ直線偏光からなるパルス光(実施例毎に3種
類づつ)を多重化して被制御光を得、この被制御光を大
気中、室温下でそれぞれ入射させて、光双安定スイッチ
動作が起こる入射光強度を前記のパルス光毎に測定し
た。その結果、光双安定スイッチ動作が起こる入射光強
度(前記のパルス光毎に測定したもの)は、いずれの光
双安定スイッチ素子においても400mW以下であっ
た。
【0054】実施例16 実施例1と同様にして厚さ0.2mmのTiO2 単結晶
基板からなるマトリックスにAg微粒子を分散させてな
る非線形光学材料を得、この非線形光学材料を用いて実
施例1と同様にしてファブリ・ペロー共振器型の光双安
定スイッチ素子を作製した。
【0055】この光双安定スイッチ素子に、被制御光と
して下記(i)〜(x) (i)偏光方位0度,波長563nmの直線偏光からな
るパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス光、
(ii)偏光方位15度,波長570nmの直線偏光から
なるパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス光、
(iii)偏光方位25度,波長575nmの直線偏光か
らなるパルス幅5p s,スポット径10μmのパルス
光、(iv)偏光方位35度,波長581nmの直線偏光
からなるパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス
光、(v)偏光方位42度,波長587nmの直線偏光
からなるパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス
光、(vi)偏光方位50度,波長595nmの直線偏光
からなるパルス幅5ps,スポット径10μmのパルス
光、(vii)偏光方位57度,波長600nmの直線偏
光からなるパルス幅5p s,スポット径10μmのパ
ルス光、(viii)偏光方位65度,波長605nmの直
線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μmの
パルス光、(ix)偏光方位76度,波長611nmの直
線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μmの
パルス光、(x)偏光方位90度,波長617nmの直
線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μmの
パルス光、の10種のパルス光を多重化したものを大気
中、室温下で入射させた。なお、これらのパルス光の波
長は、偏光方位が上記(i)〜(x)のそれぞれに記載
した角度である直線偏光を上記の非線形光学材料に入射
させたときにおける当該非線形光学材料の光吸収ピーク
位置と同じである(図1参照)。
【0056】その結果、上記(i)のパルス光に対して
は入射光強度250mWで、上記(ii)のパルス光に対
しては入射光強度230mWで、上記(iii)のパルス
光に対しては入射光強度260mWで、上記(iv)のパ
ルス光に対しては入射光強度220mWで、上記(v)
のパルス光に対しては入射光強度240mWで、上記
(vi)のパルス光に対しては入射光強度250mWで、
上記(vii)のパルス光に対しては入射光強度260m
Wで、上記(viii)のパルス光に対しては入射光強度2
60mWで、上記(ix)のパルス光に対しては入射光強
度270mWで、上記(x)のパルス光に対しては入射
光強度280mWで、それぞれ光双安定スイッチ動作が
認められた。
【0057】したがって、上記の光双安定スイッチ素子
に上記の被制御光を入射させた場合には、当該被制御光
を構成している各パルス光(直線偏光)の入射強度をそ
れぞれ調整することにより、これらのパルス光(直線偏
光)の各々を別個に光制御することができる。
【0058】実施例17 実施例1と同様にしてTiO2 単結晶から厚さ0.2m
mの板状試料を得、この板状試料に市販のイオン注入装
置を用いてCu+ イオンをドーズ量1.8×1017
オン/cm2 まで注入し、これにより当該板状試料中に
Cu 微粒子を析出させた後、Ag+ イオンをドーズ量
1.0×1017 イオン/cm2まで注入して、非線形光
学材料を得た。
【0059】Cu+ イオンを注入した後の板状試料をT
EMで観察したところ、TiO2 単結晶基板の表面(イ
オン注入を行った側の表面)から80nmの深さまでC
u微粒子の析出が認められ、当該Cu微粒子はほぼ球形
をなし、その平均サイズは16nmであった。また、最
終的に得られた非線形光学材料をTEMで観察したとこ
ろ、ほぼ球形をなす平均サイズ25nmの微粒子が観察
され、電子線回折分析の結果、当該微粒子の表面はAg
であることが確認された。このことから、当該非線形光
学材料は、CuからなるコアをAgからなるシェルで被
覆してなる複合微粒子がTiO2 単結晶基板に分散した
ものであることが判明した。なお、この非線形光学材料
(イオン注入部)に占める複合微粒子の割合は約18体
積%であった。
【0060】この非線形光学材料の光吸収特性を偏光方
位0度,40度または90度の直線偏光を用いてそれぞ
れ測定したところ、偏光方位0度の直線偏光についての
光吸収ピーク位置は650nm、偏光方位40度の直線
偏光についての光吸収ピーク位置は663nm、偏光方
位90度の直線偏光についての光吸収ピーク位置は68
6nmであった。
【0061】上記の非線形光学材料について、(1)偏
光方位0度,波長650nmの直線偏光からなるパルス
幅5psのパルス光、(2)偏光方位40度,波長66
3nmの直線偏光からなるパルス幅5psのパルス光、
または(3)偏光方位90度,波長686nmの直線偏
光からなるパルス幅5psのパルス光を用いた以外は実
施例1と同様にして|χ(3)|/αの値を求めた。その
結果、上記(1)のパルス光を用いたときの|χ(3)
/αは6.2×10-9 esu・cm、上記(2)のパルス
光を用いたときの|χ(3)|/αは7.1×10-9 esu
・cm、上記(3)のパルス光を用いたときの|χ(3)
|/αは6.9×10-9 esu・cmであった。
【0062】次に、上記の非線形光学材料を用いて実施
例1と同様にしてファブリ・ペロー共振器型の光双安定
スイッチ素子を作製し、この光双安定スイッチ素子に、
被制御光として(i)偏光方位0度,波長650nmの
直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μm
のパルス光、(ii)偏光方位40度,波長663nmの
直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μm
のパルス光、および(iii)偏光方位90度,波長68
6nmの直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径
10μmのパルス光を多重化したものを大気中、室温下
で入射させた。その結果、上記(i)のパルス光に対し
ては入射光強度80mWで、上記(ii)のパルス光に対
しては入射光強度75mWで、上記(iii)のパルス光
に対しては入射光強度85mWで、それぞれ光双安定ス
イッチ動作が認められた。
【0063】したがって、上記の光双安定スイッチ素子
に上記の被制御光を入射させた場合には、当該被制御光
を構成している各パルス光(直線偏光)の入射強度をそ
れぞれ調整することにより、これらのパルス光(直線偏
光)の各々を別個に光制御することができる。
【0064】実施例18 チョクラルスキー法により、Auコロイド微粒子(平均
サイズ50nm)を含有するLiNbO3 融液から単結
晶を作製した。この単結晶は、平均サイズ23nmのA
u微粒子を含有するLiNbO3 からなるものであり、
当該単結晶に占めるAu微粒子の割合は12体積%であ
った。上記の単結晶から板材を切り出し、両面を光学研
磨して、厚さ0.2mmの板状を呈する非線形光学材料
を得た。この非線形光学材料の光吸収特性を偏光方位0
度,40度または90度の直線偏光を用いてそれぞれ測
定したところ、偏光方位0度の直線偏光についての光吸
収ピーク位置は608nm、偏光方位40度の直線偏光
についての光吸収ピーク位置は615nm、偏光方位9
0度の直線偏光についての光吸収ピーク位置は624n
mであった。
【0065】上記の非線形光学材料について、(1)偏
光方位0度,波長608nmの直線偏光からなるパルス
幅5psのパルス光、(2)偏光方位40度,波長61
5nmの直線偏光からなるパルス幅5psのパルス光、
または(3)偏光方位90度,波長624nmの直線偏
光からなるパルス幅5psのパルス光を用いた以外は実
施例1と同様にして|χ(3)|/αの値を求めた。その
結果、上記(1)のパルス光を用いたときの|χ(3)
/αは1.2×10-9 esu・cm、上記(2)のパルス
光を用いたときの|χ(3)|/αは1.1×10-9 esu
・cm、上記(3)のパルス光を用いたときの|χ(3)
|/αは0.9×10-9 esu・cmであった。
【0066】次に、上記の非線形光学材料を用いて実施
例1と同様にしてファブリ・ペロー共振器型の光双安定
スイッチ素子を作製し、この光双安定スイッチ素子に、
被制御光として(i)偏光方位0度,波長608nmの
直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μm
のパルス光、(ii)偏光方位40度,波長615nmの
直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径10μm
のパルス光、および(iii)偏光方位90度,波長62
4nmの直線偏光からなるパルス幅5ps,スポット径
10μmのパルス光を多重化したものを大気中、室温下
で入射させた。その結果、上記(i)のパルス光に対し
ては入射光強度250mWで、上記(ii)のパルス光に
対しては入射光強度7250mWで、上記(iii)のパ
ルス光に対しては入射光強度280mWで、それぞれ光
双安定スイッチ動作が認められた。
【0067】したがって、上記の光双安定スイッチ素子
に上記の被制御光を入射させた場合には、当該被制御光
を構成している各パルス光(直線偏光)の入射強度をそ
れぞれ調整することにより、これらのパルス光(直線偏
光)の各々を別個に光制御することができる。
【0068】比較例2 TiO2 単結晶基板へのCu+ イオンのドーズ量を0.
2×107 イオン/cm2 とした以外は実施例3と同様
にして、TiO2 単結晶基板にCu微粒子を分散させて
なる材料(以下「Cu微粒子分散TiO2 材料」とい
う)を得た。このCu微粒子分散TiO2 材料をTEM
で観察したところ、TiO2 単結晶基板の表面(イオン
注入を行った側の表面)から90nmの深さまでCu微
粒子の析出が認められ、当該Cu微粒子はほぼ球形をな
し、その平均サイズは0.6nmであった。また、この
Cu微粒子分散TiO2 材料(イオン注入部)に占める
Cu微粒子の割合は約18体積%であった。
【0069】上記のCu微粒子分散TiO2 材料の光吸
収特性を偏光方位0度,40度または90度の直線偏光
を用いてそれぞれ測定したところ、偏光方位0度の直線
偏光についての光吸収ピーク位置は612nm、偏光方
位40度の直線偏光についての光吸収ピーク位置は62
0nm、偏光方位90度の直線偏光についての光吸収ピ
ーク位置は625nmであった。
【0070】このCu微粒子分散TiO2 材料につい
て、(1)偏光方位0度,波長612nmの直線偏光か
らなるパルス幅5psのパルス光、(2)偏光方位40
度,波長620nmの直線偏光からなるパルス幅5ps
のパルス光、または(3)偏光方位90度,波長625
nmの直線偏光からなるパルス幅5psのパルス光を用
いた以外は実施例1と同様にして|χ(3)|/αの値を
求めようとした。その結果、いずれのパルス光を用いた
場合においても信号が検出されず、|χ(3)|/αの値
は測定限界(0.5×10-13 esu・cm)未満であっ
た。
【0071】次に、上記のCu微粒子分散TiO2 材料
を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子を作製し、この光双安定スイ
ッチ素子に、被制御光として(i)偏光方位0度,波長
612nmの直線偏光からなるパルス幅5ps,スポッ
ト径10μmのパルス光、(ii)偏光方位40度,波長
620nmの直線偏光からなるパルス幅5ps,スポッ
ト径10μmのパルス光、および(iii)偏光方位90
度,波長625nmの直線偏光からなるパルス幅5p
s,スポット径10μmのパルス光を多重化したものを
大気中、室温下で入射させた。その結果、上記3種類の
パルス光の入射光強度をそれぞれ100Wまで高めても
光双安定スイッチ動作は認められなかった。
【0072】比較例3 Ag3SbS3 単結晶基板に実施例1と同様にしてAg+
イオンを注入して、Ag微粒子が分散したAg3SbS
3 単結晶基板(以下「Ag微粒子分散Ag3SbS3
料」という)を得た。このAg微粒子分散Ag3SbS3
材料をTEMで観察したところ、Ag3SbS3 単結晶
基板の表面(イオン注入を行った側の表面)から120
nmの深さまでAg微粒子の析出が認められ、当該Ag
微粒子はほぼ球形をなし、その平均サイズは25nmで
あった。また、このAg微粒子分散Ag3SbS3 材料
(イオン注入部)に占めるAg微粒子の割合は約21体
積%であった。
【0073】上記のAg微粒子分散Ag3SbS3 材料
の光吸収特性を偏光方位0度, 40度または90度の
直線偏光を用いてそれぞれ測定したところ、Ag微粒子
のプラズモン吸収ピークは認められなかった。Ag微粒
子のプラズモン吸収ピークは500〜550nmの波長
域にあると推定されるが、この波長域はAg3SbS3
結晶の吸収端(約600nm)よりも短波長側であるこ
とから、Ag3SbS3単結晶の大きな吸収(500〜5
50nmの波長域における光吸収係数は2000cm-1
以上)に埋没された結果としてAg微粒子のプラズモン
吸収ピークが認められなかったもとの考えられる。した
がって、マトリックスに分散させる微粒子がAg微粒子
である場合には、Ag3SbS3 単結晶は本発明でいう
「 光学的に透明なマトリックス」に該当しない。
【0074】次に、上記のAg微粒子分散Ag3SbS3
材料について、その|χ(3)|/αを500〜550n
mの波長域で測定しようとしたが、信号が全く検出され
ず、|χ(3)|/αの値は測定限界(0.5×10-13 e
su・cm)未満であった。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば複
数種の光に対してそれぞれ別個に非線形光学応答を示
し、かつ、その製造が容易な非線形光学材料を提供する
ことが可能になる。そして、この非線形光学材料を用い
た本発明の非線形光素子および当該非線形光素子へ入射
させる被制御光を得るのに好適な本発明の光多重化方法
を実施することにより、複数種の光についてそれぞれ別
個に光制御を行うことができる非線形光素子を容易に提
供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TiO2 単結晶からなる板状試料に波長633
nmの直線偏光を入射させたときにおける、当該板状試
料の屈折率と前記直線偏光の偏光方位との関係を示すグ
ラフである。
【図2】実施例1で得た非線形光学材料についての、偏
光方位および波長が異なる直線偏光に対する光吸収曲線
である。
【図3】実施例1で得た光双安定スイッチ素子について
の、偏光方位および波長が異なる直線偏光に対する光履
歴特性を示すグラフである。
【図4】比較例1で得たAg微粒子分散ZnS基板の光
吸収曲線である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複屈折性を有する光学的に透明なマトリ
    ックスに微粒子を分散させてなることを特徴とする非線
    形光学材料。
  2. 【請求項2】 マトリックスにおける偏光方向による屈
    折率の最大差が0.01以上である、請求項1に記載の
    非線形光学材料。
  3. 【請求項3】 マトリックスが、TiO2 ,TeO2
    CaCO3 ,YVO4,LiNbO3 ,NaNO3 ,N
    aNO2 ,PbMoO4 ,Ba2LiNb515,Hg
    S,Ag3SbS3 およびLiIO3 から選ばれた単結
    晶体である、請求項1または請求項2に記載の非線形光
    学材料。
  4. 【請求項4】 微粒子のサイズが1〜500nmであ
    る、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非線形
    光学材料。
  5. 【請求項5】 微粒子が、(i) Cu,Au,Ag,S
    n,Pt,Pd,Ni,Co,Rh,Ir,Fe,R
    u,Os,Mn,Mo,W,Nb,Ta,Bi,Sbお
    よびPbからなる群より選ばれた金属単体、前記群より
    選ばれた金属同士の合金または前記群より選ばれた金属
    の1種もしくは複数種を総量で80モル%以上含む合金
    からなるものであるか、または、(ii) Cu,Au,A
    g,Sn,Pt,Pd,Ni,Co,Rh,Ir,F
    e,Ru,Os,Mn,Mo,W,Nb,Ta,Bi,
    SbおよびPbからなる群より選ばれた金属単体、前記
    群より選ばれた金属同士の合金または前記群より選ばれ
    た金属の1種もしくは複数種を総量で80モル%以上含
    む合金からなるコアの表面を該コアおよびマトリックス
    とは異なる物質からなるシェルで被覆してなる複合微粒
    子である、求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の非
    線形光学材料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記
    載の非線形光学材料によって光路の一部または全部が形
    成されていることを特徴とする非線形光素子。
  7. 【請求項7】 偏光方位および波長がそれぞれ異なる複
    数種の直線偏光を多重化して、非線形光素子によって制
    御される被制御光を得ることを特徴とする光多重化方
    法。
  8. 【請求項8】 複屈折性を有する光学的に透明なマトリ
    ックスに微粒子を分散させてなる非線形光学材料によっ
    て光路の一部が形成されている非線形光素子に、偏光方
    位および波長がそれぞれ異なる複数種の直線偏光を多重
    化してなる被制御光を入射させ、前記非線形光素子によ
    り前記複数種の直線偏光をそれぞれ別個に光制御するこ
    とを特徴とする、非線形光素子による光制御方法。
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