JPH0831570A - 直流アークによる溶融金属の加熱方法および装置 - Google Patents

直流アークによる溶融金属の加熱方法および装置

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JPH0831570A
JPH0831570A JP16660894A JP16660894A JPH0831570A JP H0831570 A JPH0831570 A JP H0831570A JP 16660894 A JP16660894 A JP 16660894A JP 16660894 A JP16660894 A JP 16660894A JP H0831570 A JPH0831570 A JP H0831570A
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metal
arc
molten metal
good conductive
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JP16660894A
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English (en)
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Motohiro Imashiro
元広 今城
Nobumoto Takashiba
信元 高柴
Hiroshi Okamoto
浩志 岡本
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 直流アークによる溶鋼の加熱を行う際に、溶
鋼に浸漬する陽電極を効率よく冷却して溶損を防止する
と共にアーク偏向を矯正する。 【構成】 陽電極7をタングステン良導電金属筒体15と
してその内部に沸点の低い金属リチウムを冷媒として封
入したヒートパイプ構造とする。陽電極7の良導電金属
筒体15に対する溶鋼2からの入熱を、良導電金属筒体15
の内部に封入したリチウムの蒸発潜熱により冷却すると
共に、容器1の外側に設けたアーク方向制御用給電導体
26に電磁界を作用させ陰電極6から発生するアークの偏
りを矯正する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、取鍋等の容器内の溶融
金属に浸漬しないで上方に配置した陰電極と、該溶融金
属に浸漬する陽電極とを備え、陰電極と溶融金属との間
にアークを発生させる溶融金属の加熱方法および装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】容器内の溶融金属、たとえば転炉や電気
炉などの製鋼炉において一次精錬を行った溶鋼を取鍋に
受鋼し、取鍋内で二次精錬を行う取鍋精錬炉が知られて
いる。すなわち、鋼材品質要求の厳格化、多様化に答え
るため、製鋼分野において転炉から出鋼した溶鋼に対し
て二次精錬を施すことが一般的になっており、種々の取
鍋精錬法(溶鋼処理法)が開発され、実用されている。
たとえば、取鍋内の溶鋼に酸素ガスを上吹きし、別途添
加したアルミの酸化反応熱で溶鋼を加熱するとともに、
不要な成分を除去するCAS−OB法、真空設備の中に
取鍋を装入して脱ガス等を行うRHあるいはDH脱ガス
法、あるいは転炉での熱負荷軽減を狙いとしてASEA
−SKF法、LF法で代表するアーク加熱精錬法等であ
る。これら取鍋精錬での目的は、溶鋼に脱水素、脱窒
素、脱酸素、脱炭素、脱燐、脱硫黄の他、非金属介在物
の形態制御、目標成分への調整、溶鋼温度の調整等を行
うことであり、その目的達成に使用する取鍋精錬装置に
は、溶鋼攪拌、加熱、真空減圧、雰囲気調整、スラグ調
整、粉体吹込み等の多種機能を備えていることが要求さ
れる。
【0003】ところで、一般に取鍋精錬では、溶鋼にCa
O 、FeO 等のフラックスが吹込まれることが多いが、そ
のために精錬中に溶鋼温度の低下を来し、操業が続行で
きなくなったり、次工程に溶鋼を送れなくなるという問
題がある。そこで、従来より溶鋼の熱不足を解消する技
術の開発が盛んであるが、直流アークによる加熱が最も
一般的な対策である。
【0004】直流アークにより溶鋼の加熱を行って精錬
する際に、金属導体からなる陽電極の内部に設けた冷却
用ガス通路に空気等の冷却ガスを通すことによって冷却
されているが陽電極は溶鋼中に浸漬されている通電面が
大きい。このため通電面からの入熱が大きく陽電極の溶
損量が著しく陽電極の寿命が短いという問題点があっ
た。
【0005】金属導体からなる陽電極の溶損量を減少さ
せるため特開昭60−254592号公報には、図8に示すよう
に内部に冷却ガス通路27aを有する陽電極7aが溶鋼金
属2a中に接触する可能性のある側面部範囲に熱遮断の
ための耐火物36aを施工して被覆し、金属電極7aの下
面のみが溶融金属2aに接触するようにすることによっ
て溶損を軽減するものが開示されている。16aは溶融金
属2a上のスラグを示す。また、6aは溶融金属2a上
に浮上するスラグ16aの上方近傍に配置された黒鉛製の
陰電極を示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記公報に開示されて
いる金属導体からなる陽電極7aの側面部は耐火物36a
によって被覆してあり、通電面はその下面全域となって
いる。しかしながら側面部を被覆している耐火物36aが
割落し易く、一旦割落が始まると割落部が拡大し受熱面
積が急増する。このため陽電極7a内を冷却用ガスによ
って冷却していても熱負荷が急激に上昇し溶損に至る。
【0007】陽電極7aの溶損を防止するためには操業
の合間に耐火物の補修を余儀なくされることになる。こ
のことは連続操業の支障となり生産性の低下はもちろん
のこと、補修作業は高温雰囲気下で行われるので作業員
に対する大きな負荷になっている。また前記のような加
熱方法を実施する装置では、2本の電極が平行に取付け
られているので、該電極にはお互いに逆方向の電流が流
れる。そして、両電極は距離dだけ離れているため、電
流Iの流れる給電導体には、図4に示すように、 F=μI2 /2πd μ:媒質の透磁率 なる電磁力Fが発生し、図8に示すようにアーク19aが
外側へ偏向する傾向がある。そのため、アーク19aが偏
向した方向にある取鍋耐火物は、局所的な熱負荷を受け
て損耗するため、全体として耐火物原単位が著しく低下
するという問題があった。また、該取鍋耐火物の熱負荷
を軽減するために、電流値Iを小さくすると、溶鋼加熱
時間が延長し、生産性の低下および放散熱量の増大に起
因する電力原単位の増加という別の問題もある。これは
アーク発生の陰電極が取鍋中央に位置していない場合に
はさらにアーク偏向が助長されるので、改善が望まれて
いた。
【0008】本発明は前記従来技術の問題点を解消し、
金属導体からなる陽電極の溶損量を軽減すると共に、ア
ーク偏向が発生しない、あるいはアーク方向を自在に制
御できる直流アークによる溶融金属の加熱方法および装
置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の請求項1記載の本発明は、容器内に入れた溶融金属の
上方に配置した陰電極と、該溶融金属に浸漬した陽電極
と、直流電源とを備え、前記陰電極と溶融金属との間に
アークを発生させて該溶融金属を加熱する方法におい
て、前記陽電極を良導電金属筒体としてその内部に沸点
の低い金属冷媒を封入したヒートパイプ構造とし、前記
陽電極に対する溶融金属からの入熱を良導電金属筒体の
内部に封入した沸点の低い金属冷媒の蒸発潜熱により冷
却すると共に、前記容器の外側に設けたアーク方向制御
用給電導体により電磁界を作用させ発生するアーク方向
を自在に調整することを特徴とする直流アークによる溶
融金属の加熱方法である。
【0010】請求項2記載の本発明は、陽電極をヒート
パイプ構造とする代わりに良導電金属筒体の内部に冷媒
用通路を設けると共にこの良導電金属筒体の下端部外周
に複数の金属電極を放射状に配設し、これら金属電極の
先端部のみが露出するように前記良導電金属筒体を耐火
物で被覆した構造とし、前記陽電極に対する溶融金属か
らの入熱を良導電金属筒体の内部に設けた冷却用通路に
供給する冷媒により冷却することを特徴とする請求項1
記載の直流アークによる溶融金属の加熱方法である。
【0011】請求項3記載の本発明は、冷却用通路に液
滴径が10μm以下の水滴を含有する気液二相流体、水ま
たは空気を供給することを特徴とする請求項2記載の直
流アークによる溶融金属の加熱方法である。請求項4記
載の本発明は、容器内に入れた溶融金属の上方に配置し
た陰電極と、該溶融金属に浸漬した陽電極と、直流電源
とを備え、前記陰電極と溶融金属との間にアークを発生
させて該溶融金属を加熱する装置において、良導電金属
筒体の内部に沸点の低い金属冷媒を封入したヒートパイ
プ構造の陽電極と、容器の外側に設けたアーク方向制御
用給電導体とを具備したことを特徴とする直流アーク二
よる溶融金属の加熱装置である。
【0012】請求項5記載の本発明は、陽電極をヒート
パイプ構造とする代わりに良導電金属筒体の内部に設け
た冷媒通路と、前記良導電金属筒体の下端部外周に放射
状に配設した複数の金属電極と、これら金属電極の先端
部のみが露出するように良導電金属筒体を被覆した耐火
物とを具備したことを特徴とする請求項4記載の直流ア
ークによる溶融金属の加熱装置である。
【0013】
【作用】以下、本発明の構成および作用で図面に基いて
詳細に説明する。図1は本発明に係る直流アーク型の取
鍋精錬装置を一部については断面で示す概略説明図であ
る。図1に示すように、取鍋1には転炉から出鋼した溶
鋼2を受け入れた後、台車3に乗せて運搬される。取鍋
1には鍋蓋4がウインチ等により着脱自在に被せてあ
り、鍋蓋4に穿設した2個の電極用貫通孔5の一方に
は、陰電極6が貫通し、他方には陽電極7が貫通してい
る。そして陰電極6の先端部は取鍋1内の溶鋼2中に浸
漬されず、一方、陰電極6から離して配置した陽電極7
の先端部は溶鋼2中に深く浸漬してある。鍋蓋4に穿設
した2個の電極用貫通孔5には蓋4Aが配設されてお
り、2本の電極6、7を炉内から引抜いた後に、これを
被せるようになっている。
【0014】前述のように取鍋1内には転炉で一次精錬
された溶鋼2が収容されており、溶鋼2上にはスラグ16
が浮上している。台車3により二次精錬位置に搬送され
た取鍋1に鍋蓋4を被せた後、2個の電極用貫通孔5の
蓋4Aを開放状態として、支持フレーム8にそれぞれ支
持された陰電極6と陽電極7を図示省略した旋回装置に
より退避位置から炉上方に旋回させて位置合わせを行
う。引続きシリンダ式の電極昇降装置10を作動して陰電
極6と陽電極7をそれぞれ独立に昇降して各電極貫通孔
5を貫通させて炉内に挿入する。陰電極6は取鍋1の中
央部に挿入し、陽電極7は陰電極6からdだけ離した位
置に挿入してある。
【0015】陰電極6はたとえば黒鉛等の導体を用いて
製作されているのは従来と同様であるが陽電極7は図2
および図3に示すように良導電金属筒体15が導通部とな
っており、内部空間に沸点の低い金属冷媒を封入したヒ
ートパイプ構造となっている。その構成材料としては、
たとえば溶鋼精錬の場合には沸点の低い金属冷媒として
常温では固体であるが溶鋼(溶銑)温度レベルでは蒸発
し、かつその蒸発潜熱が入熱量と見合う量の沸点の低い
金属たとえば金属リチウム(Li)を用いれば表1に示す
物性値であるので使用範囲が1000〜1800℃である溶鋼
(溶銑)に対する使用に適している。
【0016】
【表1】
【0017】また良導電金属筒体15にはリチウムに対す
る適応性がよく導電率(5.5 ×10-8オーム・m、常温)
がすぐれているタングステン(w)を使用することがで
きる。良導電金属筒体15の内面には上下方向に多数の流
下溝27を設けてあると共に、その内側にはタングステン
製の金網28を上下方向に固定してあり、金網28の内側中
央部が蒸発空間29となっている。また良導電金属筒体15
の上端部はリザーバ22となっており、リザーバ22の直下
には冷却部30が設けてあり、この冷却部には給水管31お
よび排水管32が接続してある。
【0018】図1において交流電源11からの交流電流は
遮断器12を介して炉用トランス13に導かれて変圧され、
さらにサイリスタ14で直流に整流される。サイリスタ14
の陰極側に給電導体17を介して陰電極6が接続され、ま
たサイリスタ14の陽極側給電導体18を介して陽電極7が
接続されている。取鍋精錬では直流アーク19の電圧と電
流は炉用トランス13とサイリスタ14によりサイリスタ位
相制御により独立して自由に制御される。
【0019】本発明では、陰電極6および陽電極7を制
御する電気回路とは別に本発明に係る3本のアーク方向
制御用給電導体26用の交流電源11’、遮断器12’、炉用
トランス13’およびサイリスタ14’からなる電気回路を
備えている。アーク方向制御用給電導体26は取鍋1のほ
ぼ中央部に配置してある陰電極6寄りに設置した例であ
る。
【0020】この取鍋精錬装置で溶鋼を加熱する作業
は、前述のようにまず加熱対象の溶鋼2やスラグ16が転
炉から取鍋1に出鋼された後、該取鍋1が該装置まで台
車3で搬送され、鍋蓋4がかぶせられ、陰電極6及び陽
電極7を溶鋼2に浸漬する。その際、電気回路には、図
1に示すように、両電極用のサイリスタ14とは別に、本
発明に係る上記給電導体26用のサイリスタ14’が設けら
れている。この電気回路により、陰電極6、陽電極7に
は加熱用電流が、給電導体26には取鍋外部から作用させ
る電磁界発生用の電流が通電される。その後直ちに、陰
電極6を溶鋼2上に存在するスラグ16の上方に引き上げ
てアーク発生をさせて、溶鋼2が加熱されるのである。
【0021】陽電極7を構成するタングステンで気密に
製作した良導電金属筒体15の溶鋼浸漬部からの溶鋼入熱
1 によって該良導電金属筒体15の中に封入してある沸
点の低いリチウム冷媒が蒸発して中央部の蒸発空間29を
通って上昇する。この時のリチウムの蒸発潜熱によって
陽電極7を冷却するものである。蒸発空間29内を上昇す
るリチウム蒸気は良導電金属筒体15の上部に設けた冷却
部30に給水管31から供給される冷却水により間接冷却さ
れ、リザーバ22に至る間に液化される。このようにして
液化されたリチウムはリザーバ22から良導電金属筒体15
の内面に形成した流下溝27および金網28を伝って下降す
る。
【0022】液化したリチウムが良導電金属筒体15の溶
鋼浸漬部まで下降するとそこで再び溶鋼入熱Q1 によっ
て蒸発されて蒸発空間29を通って上昇する。このような
過程を繰り返してリチウム蒸発潜熱によって強冷するの
で耐火物の被覆がなくても良導電金属筒体15を溶鋼2に
浸漬することに耐えることが可能になる。なお、良導電
金属筒体15の上部に冷却部30を設け、ここに冷却水を供
給して冷却する代わりに良導電金属筒体15の上部外周に
複数のフィンを配設し、ここに冷却空気を吹き付けて気
体冷却することも可能であり同様の効果を得ることがで
きる。
【0023】陰電極6および陽電極7に加熱用電流が、
アーク制御用給電導体26には取鍋外部から作用させる電
磁界発生用の電流が通電され、その後、直ちに陰電極6
を溶鋼2の上方に引き上げてアークを発生させて溶鋼2
が加熱されるのは前述の通りである。本発明では近年航
空宇宙分野で開発・適用の進んでいるヒートパイプで陽
電極を構成している。すなわち、常温では固体であるが
溶鋼2(溶銑)温度レベルで蒸発し、かつその蒸発潜熱
が入熱量と見合う量の冷媒を良導電金属筒体15に封入す
る。また、溶鋼2(溶銑)からの入熱で蒸発した金属冷
媒としてのリチウムを冷却して液体に戻すために冷却水
を流せばよい。上述の熱バランスは下式のように表され
る。
【0024】Q1 =Q2 =Q31 =q・S Q2 =h・m Q3 =△T・w・c Q1 :溶鋼からの入熱量(W) Q2 :冷媒による抜熱量(W) Q3 :冷却水による抜熱量(W) q :熱流束(W/m2 ) S :溶鋼(溶銑)接触面積(m2 ) h :冷媒の蒸発潜熱(J/kg) m :冷媒の質量流量(kg/s) △T:冷却水入出温度差(K) w :冷却水質量流量(kg/s) c :冷却水比熱(J/kg・K) これらの式を満たすように封入する冷媒の質量、冷却水
流量を決定すればよい。さらに、常温時には固体である
冷媒が、溶鋼(溶銑)に浸漬した場合には蒸発して体積
膨張するのでその体積膨張を吸収可能なように不活性ガ
スを封入したリザーバ22も設置する。こうすれば溶鋼
(溶銑)温度からの入熱に見合うだけの熱移動が可能な
ので耐火物で被覆しなくとも溶鋼(溶銑)に浸漬可能な
電極(ランス)を製作できる。
【0025】ヒートパイプの良導電金属筒体15には導電
性のよい材料を用いればいうまでもなく通電可能なので
溶鋼(溶銑)加熱が可能となる。この際、従来の装置で
は、図8に示すように取鍋外部から作用する電磁界が発
生しないので、陰電極6aからのアーク19aは偏向し
た。しかし、前記の本発明に係る装置では、前記電磁界
の作用によって偏向が防止されるのである。勿論、前記
電気回路に流す電流は、前述したF=F’の条件を満足
する必要がある。
【0026】図1では、電導体26が3本の場合を示した
が、電導体26の数は1本でも複数本であってもアーク19
を鉛直にすることができる。また、電導体26が取鍋1の
周囲を囲むように配置した場合には、各電導体26に流す
電流の大きさを変化させて、アーク19を任意の方向へ偏
向させること、あるいは図5に示すように電流値を1番
目からi番目までサイクリックに順次変化させて、アー
ク19を陰電極6の軸を中心に旋回させ、溶鋼2の攪拌、
フラックスの早期均一溶解を行うこともできる。
【0027】図4に示すように磁界中の電導体26にはフ
レミングの左手の法則に従う電磁力が作用するので、陰
電極6からLだけ離れた取鍋外に電極とは別の電導体26
を設け、それにI’=L/d×Ι×αの如く与えられる
電流を流せば、前記陽電極7の電流による電磁力Fと該
電導体26を流れる電流による電磁力F’がつりあうの
で、アークの偏向が防止できる。ここに、係数αは、取
鍋1などの周辺設備による磁界の減衰補正係数である。
むろん、図5に示すように、該電導体26を複数本設けて
も良いので、その場合には該電導体26を流れる電流が上
記陰電極6で発生するアークに及ぼす電磁力は、 F’=(μ/2π)・Σ(I’i /Li )cos θi ・αi I’i :i番目の給電導体の電流値(A) Li :i番目の給電導体と陰極との距離(m) θi :i番目の給電導体と陰極とのなす角度(°) αi :i番目の給電導体に対する補正係数 したがってF=F’となるように給電導体の配置と電流
値を設定すればアークを矯正して真っ直ぐにすることが
可能となる。また、複数本の給電導体に対して各々独立
に電流値を変化させてアークの方向を任意に制御するこ
とも可能である。給電導体は陰電極側のみに設けてもよ
いし、陽電極側、あるいは陽電極、陽電極の両方、ある
いは取鍋全周に設けてもよい。また、本発明における給
電導体は例えば安価な鋼製のケーブルを用いればよく、
設備費の増加もほとんどない。
【0028】アークの制御のためにサイリスタ14とは別
にアーク制御用サイリスタ14’を設けてI’−L/d・
I・αなる電流を流してアークを制御する。このとき、
給電導体26を複数本設置して(図示せず)アーク19の方
向を制御することも可能であるし、給電導体26の電流値
を1番目からi番目まで順次変化させてアーク19を旋回
させて溶鋼の攪拌、フラックスの均一早期溶解を行うこ
ともできる。
【0029】また、陽電極7の中央部からフラックスや
ガスを噴射して脱Sなどの冶金反応と攪拌による反応の
高速化、均一溶解、溶鋼温度の均一化も達成できる。所
定の冶金反応、昇温が終了すると、陽電極7、陰電極6
を引き上げて待機位置に戻し、鍋蓋4を外して取鍋1を
次工程へ運ぶ。なお、本発明は溶鋼、溶銑などのFe以外
の溶融金属すなわち非鉄金属にも適用可能であり、この
ような各種溶融金属を加熱する場合の陽電極を構成する
良導電金属筒体の材質および該金属筒体内に封入する沸
点の低い金属冷媒の材質例を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】表2に示すように精錬する溶融金属の融点
が金属筒体に封入する金属冷媒の蒸発温度以上という条
件に基き種々の金属の組み合せにより適宜に選択するこ
とが可能である。図6および図7は本発明に係る陽電極
7の他の実施態様の構造を示しているが、陽電極7を除
く構成は前述の図1と同じであるので説明を省略する。
【0032】図6および図7に示すように陽電極7にお
ける良導電金属筒体15は有底中空としてその中空部に内
管33を挿通して該内管33の先端部を良導電金属筒体15内
で開口させてあり冷媒通路の供給側と排出側を形成して
いる。また良導電金属筒体15と内管33との間にはデイス
タンスピース34が配設してある。良導電金属筒体15が導
通部を兼ねており、下端部外周面に放射状に溶接により
固定した複数の金属電極35が配設してある。これら金属
電極35の先端部のみが露出するように良導電金属筒体15
に耐火物36が被覆してある。良導電金属筒体15が導電部
を兼ねているので、放射状の金属電極35にアーク電流が
流れる。良導電金属筒体15にはその外周にアンカ37が固
定してあり、耐火物36を保持している。
【0033】良導電金属筒体15を被覆する耐火物として
導電性を備えたたとえばMgO −C耐火物を用いると耐火
物の溶損量が従来品の1/5程度となる。また、割落も
少ないので、放射状に伸びている金属電極35の側面が溶
鋼2に接触することがない。さらに、耐火物としてMgO
−Cを用いた副次的な効果として、アークの初期着火性
の改善がある。すなわち耐火物中のC(カーボン)は導
電性を有しているので、金属電極35の補助材の役目を果
たし、従来の耐火物よりも操業性が著しく改善される。
さらに、電流が金属電極35のみならず、MgO −Cにも流
れてその分金属電極35の通電量が減少するのでジュール
発熱が減少して、金属電極35の溶損量が低減する。MgO
−C耐火物中のカーボン含有量に関してはカーボンが多
くなるほど導電性は向上するが溶損時の溶鋼に対するカ
ーボンの汚染量が増大すること。また、耐スポーリング
性はカーボン含有量が15〜20%以上としてもさほど改善
されないこと、スラグに対する耐侵食性はカーボン15〜
30%程度がすぐれることを考慮して、MgO −C中のカー
ボン含有量は15〜30%とすればよい。
【0034】本発明では良導電金属筒体15から放射状に
金属電極35を配して、金属電極35の個々の受熱面積を
小さくすることで入熱量の軽減とその結果として溶損量
低減を達成している。図1に示すように陰電極6からL
だけ離れた取鍋外に給電導体を設けその導体にI’=L
/d×I×αの如く与えられる電流を流せば陽電極7に
よる電磁力:Fと給電導体による電磁力:F’が釣り合
うのでアークが制御できるのは前述の通りである。また
良導電金属筒体15の上端部には冷媒供給管38が設けてあ
り、冷媒供給管38から供給された冷却水は内管33を流下
したのち内管33と良導電金属筒体15との間を上昇し冷媒
排出管39より排出される。
【0035】なお、取鍋精錬炉で溶鋼を製錬する場合に
は、良導電金属筒体15、内管33および金属電極35はいず
れも安価な鉄製である。良導電金属筒体15の中空部に挿
通した内管33の中央部にフラックス供給管(図示せず)
を設け、先端部からフラックスをキャリアガスと共に噴
射するような構造にすれば脱Sなどの冶金反応と攪拌に
よる反応の高速化、均一溶解、溶鋼温度の均一化が達成
できることになる。なお良導電金属筒体15の内部を冷却
する冷媒通路の構造は前記に限定されるものではなくた
とえば従来例の図8のような構造でもよい。
【0036】このような構造の陽電極7を溶鋼2中に浸
漬し、他方の陰電極6で発生するアークにより溶鋼2の
加熱が行われる。このときの冷却媒体としては空気でも
よいが、気体中に水滴を浮遊させたフォグの方が、水滴
の蒸発潜熱によって抜熱を行うので冷却効果が大きい。
液滴径が10μm以下のフォグを用いると搬送中に管壁へ
の付着がないためドレンの発生がなく万一溶鋼が差し込
んだ場合でも水蒸気爆発の危険が軽減されることにな
る。冷却水も使用可能であるが万一、破損した場合に水
蒸気爆発の危険を伴うことになる。
【0037】加熱対象によって必要投入電力量が決定さ
れるのでそれに対応した金属電極35の本数を増減させ、
許容電流密度以下となるように調整すればよい。なお本
数が多くなる場合には良導電金属筒体15の外周面に配設
した金属電極35を複数段とすればよい。この場合、溶鋼
2との接触面が増えるので、たとえ一部の金属電極35に
スラグが付着して無効になっても、その他の金属電極35
が稼働しており、電流の著しい偏りがなく安定した操業
ができるので有利である。金属電極35の形状は正方形や
楕円形などいろいろ考えられるが、電流が通る根元での
接合(溶接など)の均一性を考慮すると円形が望まし
い。
【0038】なお、図1に示すように陰電極6および陽
電極7の2本電極とするのではなく3本以上の電極を使
用し、各電極に流す電流を個々に制御してアークの方向
制御を行うことも可能であり、この場合には必ずしも取
鍋外にアーク制御用導電体を設けなくてもよい。
【0039】
【実施例】以下本発明の実施例について説明する。取鍋
製錬装置にて溶鋼に2次精錬において、低S、低Pの高
清浄度鋼を溶製した。 実施例1 図1に示す装置を用い陽電極として図2、図3に示すも
のを使用した。
【0040】操業条件:ヒートサイズ 285 t/ch トランス容量 28000kVA(460V×52kA) 昇温量(溶鋼)50℃ 陽電極の外径 φ400 (タングステン筒体にリチウム封
入) 陰電極の外径 φ500 (黒鉛) 冷却水量 35t/h 陽電極の浸漬深さ 200mm 浸漬時のリチウム蒸発量 75kg/h 前記本発明による実施例1の結果を図8に示す陽電極の
側面に耐火物を被覆すると共にアーク制御用導電体を配
置しない従来例の評価指数により比較して表3に示す。
【0041】実施例2 図1に示す装置を用い、陽電極として図6、図7に示す
ものを使用した。 操業条件:ヒートサイズ 285 t/ch トランス容量 28000kVA(460V×52kA) 昇温量 50℃ 耐火物 MgO −C(C含有量30%)のキャスタブ
ル 陽電極の直径 φ400 (鉄筒体に耐火物被覆) 陰電極の直径 φ500 (黒鉛) 金属電極の形状・寸法 厚さ16mm、長さ400mm 、幅100m
m 本数 16本
【0042】
【表3】
【0043】その結果、実施例1と同様に良好な結果が
得られた。実施例に示すように本発明によれば、陽電極
をタングステン製筒体にリチウムを封入したヒートパイ
プ構造にするか鉄製筒体に放射状に鉄製金属電極を配設
した上、耐火物で被覆した構造としてあるので、気体冷
却鉄製筒体の側面を耐火物を被覆する従来例に比較して
極めて良好な結果が得られた。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、陽
電極のジュール発熱による熱負荷を軽減できる、アーク
の初期着火性が向上する、電極寿命が向上するなどの操
業性向上と原単位削減に対する寄与が大きい。さらに、
アークの方向を自在に制御できるので取鍋の耐火物原単
位が飛躍的に低減する、アークによる耐火物損耗が少な
いので通電量を増加することが可能で昇温時間が短くな
る。それに加えてフラックス・インジェクションを行う
場合には処理時間が短くなり生産性も向上するので本発
明による総合的結果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る直流アーク型の取鍋製錬装置を一
部について断面で示す概略説明図である。
【図2】本発明に係る陽電極の構造を示す断面図であ
る。
【図3】図2のA−A矢視を示す断面図である。
【図4】偏向したアークの矯正原理を示す装置の断面図
である。
【図5】複数本の電導体を配置した装置の平面図であ
る。
【図6】本発明に係る他の陽電極の構造を示す断面図で
ある。
【図7】図6のA−A矢視を示す断面図である。
【図8】従来の陽電極構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 取鍋 2 溶鋼 3 受鋼台車 4 鍋蓋 5 電極用開孔 6 陰電極 7 陽電極 8 支持フレーム 9 ガイドポスト 10 電極昇降装置 11 交流電源 12 遮断器 13 炉用トランス 14 サイリスタ 15 良導電金属筒体 16 スラグ 17 給電導体(陰極側) 18 給電導体(陽極側) 19 直流アーク 20 陽電極把持部 21 陰電極把持部 22 リザーバ 24 蒸気の流路 25 液体の流路 26 アーク方向制御用給電導体 27 流下溝 28 金網 29 蒸発空間 30 冷却部 31 給水管 32 排水管 33 内管 34 デイスタンスピース 35 金属電極 36 耐火物 37 アンカ 38 冷媒供給管 39 冷媒排水管

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 容器内に入れた溶融金属の上方に配置し
    た陰電極と、該溶融金属に浸漬した陽電極と、直流電源
    とを備え、前記陰電極と溶融金属との間にアークを発生
    させて該溶融金属を加熱する方法において、前記陽電極
    を良導電金属筒体としてその内部に沸点の低い金属冷媒
    を封入したヒートパイプ構造とし、前記陽電極に対する
    溶融金属からの入熱を良導電金属筒体の内部に封入した
    沸点の低い金属冷媒の蒸発潜熱により冷却すると共に、
    前記容器の外側に設けたアーク方向制御用給電導体によ
    り電磁界を作用させ発生するアーク方向を自在に調整す
    ることを特徴とする直流アークによる溶融金属の加熱方
    法。
  2. 【請求項2】 陽電極をヒートパイプ構造とする代わり
    に良導電金属筒体の内部に冷媒用通路を設けると共に、
    この良導電金属筒体の下端部外周に複数の金属電極を放
    射状に配設し、これら金属電極の先端部のみが露出する
    ように前記良導電金属筒体を耐火物で被覆した構造と
    し、前記陽電極に対する溶融金属からの入熱を良導電金
    属筒体の内部に設けた冷却用通路に供給する冷媒によ
    り、冷却することを特徴とする請求項1記載の直流アー
    クによる溶融金属の加熱方法。
  3. 【請求項3】 冷却用通路に液滴径が10μm以下の水滴
    を含有する気液二相流体、水または空気を供給すること
    を特徴とする請求項2記載の直流アークによる溶融金属
    の加熱方法。
  4. 【請求項4】 容器内に入れた溶融金属の上方に配置し
    た陰電極と、該溶融金属に浸漬した陽電極と、直流電源
    とを備え、前記陰電極と溶融金属との間にアークを発生
    させて該溶融金属を加熱する装置において、良導電金属
    筒体の内部に沸点の低い金属冷媒を封入したヒートパイ
    プ構造の陽電極と、容器の外側に設けたアーク方向制御
    用給電導体とを具備したことを特徴とする直流アークに
    よる溶融金属の加熱装置。
  5. 【請求項5】 陽電極をヒートパイプ構造とする代わり
    に、良導電金属筒体の内部に設けた冷媒通路と、前記良
    導電金属筒体の下端部外周に放射状に配設した複数の金
    属電極と、これら金属電極の先端部のみが露出するよう
    に良導電金属筒体を被覆した耐火物とを具備したことを
    特徴とする請求項4記載の直流アークによる溶融金属の
    加熱装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011096170A1 (ja) * 2010-02-08 2011-08-11 株式会社大紀アルミニウム工業所 アルミニウムの精製方法及びその装置
JP2018016843A (ja) * 2016-07-27 2018-02-01 新日鐵住金株式会社 極低硫低窒素鋼の溶製方法

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WO2011096170A1 (ja) * 2010-02-08 2011-08-11 株式会社大紀アルミニウム工業所 アルミニウムの精製方法及びその装置
JPWO2011096170A1 (ja) * 2010-02-08 2013-06-10 株式会社大紀アルミニウム工業所 アルミニウムの精製方法及びその装置
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