JPH08311790A - ポリサルファイド蒸解液の製造方法 - Google Patents

ポリサルファイド蒸解液の製造方法

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JPH08311790A
JPH08311790A JP7150795A JP15079595A JPH08311790A JP H08311790 A JPH08311790 A JP H08311790A JP 7150795 A JP7150795 A JP 7150795A JP 15079595 A JP15079595 A JP 15079595A JP H08311790 A JPH08311790 A JP H08311790A
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liquor
sulfur
polysulfide
sodium
cooking
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JP7150795A
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Yoichi Shimoi
洋一 下井
Yoshiaki Kinoshita
芳明 木下
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Nippon Steel Eco Tech Corp
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Nittetsu Kakoki KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ポリサルファイド蒸解液を製造するための、
維持管理が容易な方法を提供する。また、濃度の異なる
ポリサルファイド蒸解液をも製造可能とするものであ
る。別の目的は、分離・回収が必要で、維持管理に手間
がかかる固体触媒を使用しない。システム全体の薬品バ
ランスを制御することができ、副生物の生成を抑制して
多硫化ナトリウムを効率的に生成させる。 【構成】 緑液を二酸化炭素含有ガスで処理してpH1
0以下に調整した後、触媒の存在下に酸素含有ガスと接
触させて硫黄を生成させ、生成した硫黄を分離もしくは
濃縮した後、白液と混合させて多硫化ナトリウムを生成
させる。さらには、白液を硫黄を分離もしくは濃縮した
残りの液と緑液とを併せて苛性化して得るようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パルプ製紙工業におい
て、パルプ歩留まりの向上を目的として行なわれるポリ
サルファイド蒸解に用いられるポリサルファイド蒸解液
の製造に関するものである。尚、本発明でいうポリサル
ファイドとは多硫化ナトリウム(NaSx)を意味す
るものである。
【0002】
【従来の技術】現在のパルプ製造において、蒸解液とし
て硫化ナトリウム(NaS)と水酸化ナトリウム(N
aOH)の混合液(白液)を用いるクラフト法(KP)
が最も一般的である。
【0003】パルプ製造における蒸解工程は、木材を構
成するリグノセルロース(セルロース+リグニン)か
ら、セルロースを結び付けるバインダーの役割をしてい
るリグニンを溶出し、セルロース繊維をバラバラにして
取り出しパルプ化する操作である。
【0004】蒸解の課程でヘミセルロースはピーリング
反応により末端のアルデヒド基の切断が生じ、ここから
始まって分子全体に分解が進行し、ついには低分子化し
たヘミセルロースがリグニンと共に溶出してしまい、パ
ルプの歩留まりを低下させている。
【0005】このため天然資源の木材の有効利用を図
り、パルプ歩留まりを改善するために、多くの提案がな
されており、その一つに上記のクラフト蒸解液に含まれ
ている硫化ナトリウムの一部を多硫化ナトリウムとした
ポリサルファイド蒸解液を用いる方法があり、この方法
によりパルプ歩留まりの増加することが知られている。
これはヘミセルロース末端のアルデヒド基がカルボニル
基に酸化されることで保護され、上述のピーリング反応
が阻止されるためであると言われている。
【0006】また、特公昭55−1398号公報や特公
昭57−19239号公報に記載されているように、蒸
解工程にベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン
等のキノンやジヒドロジヒドロキシアントラセンやその
塩を添加することで、パルプ歩留まりが改善されること
は公知である。この場合は、蒸解速度の向上による蒸解
条件の緩和により、炭水化物の損傷が少なくなること
と、炭水化物の末端が酸化され保護されることで、これ
らもパルプとして回収されるためであり、前述のポリサ
ルファイド蒸解とは別の機構による部分もある。このた
め、互いに相乗効果を発現するので、併用することも可
能とされている。
【0007】多硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムを主
成分とするポリサルファイド蒸解液の製造方法として
は、クラフト法の蒸解薬液である白液に直接単体硫黄
を添加して多硫化ナトリウムを製造する方法、および
白液中の硫化ナトリウムを活性炭等の固体触媒を用いて
空気酸化を行なって多硫化ナトリウムとする方法に大別
される。しかしながら、これらには各々問題点があり、
実用化は困難とされていた。
【0008】クラフト法等の既存のパルプ製造方法は、
蒸解薬品の回収を前提として成り立っているシステムで
あるが、前者では系外から硫黄を添加するために、ナト
リウムと硫黄のバランスを長期に渡って維持することが
できないうえ、蒸解薬品の回収方法として適当な方法が
なかったため、広く採用されるには至らなかった。
【0009】また、後者では、硫化ナトリウムを酸化し
て多硫化ナトリウムとする際に、パルプ製造に何等の寄
与もしないチオ硫酸ナトリウム等が副生するとともに、
硫化ナトリウムの存在する高pH条件ではチオ硫酸が安
定であるが、多硫化ナトリウムは中間生成物であって不
安定であるため、硫化ナトリウムを効率的に利用できな
いとされてきた。
【0010】近年、硫化ナトリウムと水酸化ナトリウム
を主体とする白液を酸化してポリサルファイド蒸解液を
製造する方式として、活性炭を酸化触媒に用いる方法が
提案されている(特公平5−32100号公報および紙
パ技協誌第42巻第1号46〜51頁)。現在のとこ
ろ、ポリサルファイド蒸解液の製造方法として実用化さ
れていると思われるのは、前記の酸化触媒に活性炭を用
いる方法だけであり、特別な細孔構造を有する活性炭を
用いることで、副生反応を抑制して多硫化ナトリウムを
効率的に生成させることを可能としたとされている。
【0011】しかしながら、酸化触媒として活性炭を用
いる方法は、設備費が高価となり、活性炭の抵抗が大き
いために酸化用空気の動力費や活性炭の洗浄等の手間を
要するうえに、活性炭が消耗するので数年毎に活性炭を
入れ替えることが必要である。また、ポリサルファイド
の濃度としては5〜6g/l(S換算)程度で、これよ
りも高濃度とすることは難しかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、パル
プ製紙工業において、そのメリットが認められているポ
リサルファイド蒸解に用いられるポリサルファイド蒸解
液を製造するための、安価でしかも維持管理が容易な方
法を提供するものである。
【0013】また、本発明は、ポリサルファイド濃度の
異なる蒸解液を用いる二段蒸解法にも適用可能な高濃度
のポリサルファイド蒸解液をも製造せんとするものであ
る。
【0014】本発明の別の目的は、活性炭のように分離
・回収が必要で、維持管理に手間がかかる活性炭等の固
体触媒を使用しない方法を開発することである。
【0015】さらには、本発明はポリサルファイド蒸解
法で、システム全体の薬品バランスを制御することが可
能な方法で、チオ硫酸ナトリウム等の副生を抑制して多
硫化ナトリウムを効率的に生成させる方法とすることを
意図したものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、緑液を二酸化
炭素含有ガスで処理してpH10以下に調整した後、触
媒の存在下に酸素含有ガスと接触させて硫黄を生成させ
た後、生成した硫黄を分離もしくは濃縮した後、白液と
混合させて多硫化ナトリウムを生成させることを特徴と
するポリサルファイド蒸解液の製造方法である。
【0017】さらには、緑液を二酸化炭素含有ガスで処
理してpH10以下に調整した後、触媒の存在下に酸素
含有ガスと接触させて硫黄を生成させ、生成した硫黄を
分離もしくは濃縮した後、硫黄を分離もしくは濃縮した
残りの液と緑液とを併せて苛性化して得た白液と、前記
の分離した硫黄もしくは濃縮した硫黄含有液を混合させ
て多硫化ナトリウムを生成させることを特徴とするポリ
サルファイド蒸解液の製造方法である。
【0018】本発明では、ポリサルファイド蒸解液の製
造の際に、原料となる緑液を二酸化炭素含有ガスで処理
してpH10以下に調整してから、反応を促進するため
の触媒の存在下で、空気等の酸素含有ガスと接触させて
酸化することにより硫黄を生成させ、生成した硫黄分を
濃縮して含有する液あるいは分離した生成硫黄と白液と
を混合させて多硫化ナトリウムを生成させることを特徴
とするものである。
【0019】本発明の方法は、前述したの白液に単体
硫黄を添加して多硫化ナトリウムを製造する方法とは、
技術的に全く異なるものである。すなわち、前述した
の方法は系外から硫黄を多量に添加するため、時間の経
過とともに系内の硫黄量が増加してマスバランスが維持
できなくなるのに対し、本発明では系内で硫黄量を制御
するとの技術思想に基づくもので、システム全体のマス
バランスに配慮したものである。
【0020】
【作用】本発明で言う白液とは、本質的に硫化ナトリウ
ム(NaS)と水酸化ナトリウム(NaOH)の混合
液である。また、クラフト法等の蒸解薬品の回収工程
で、黒液を濃縮・燃焼してスメルトとした後、これを水
に溶解した緑液を清澄化してから生石灰を加えて苛性化
して得られる白液を用いることもできる。蒸解廃液はリ
グニン、ヘミセルロースそのほかの有機物の分解生成物
と、ナトリウム塩および木材の灰分に由来する無機物を
含み、黒色を呈するため黒液と呼ばれ、黒液から前記の
ようにして得たものが緑液で、主成分は硫化ナトリウム
(NaS)と炭酸ナトリウム(NaCO)であ
る。
【0021】本発明では、まず原料となる緑液を二酸化
炭素含有ガスで処理してpH10以下に調整する。これ
は、この後の酸化工程でpH10を越える強アルカリ領
域では、触媒が存在していても硫黄の生成が困難となる
ためである。緑液を炭酸ガスあるいは回収ボイラー排ガ
ス,キルン排ガス等の二酸化炭素含有ガスと接触させて
処理し、pH6〜10に調整する。調整するpH領域と
しては、好ましくはpH7.5〜9.5の弱アルカリ領
域、より好ましくはpH9前後である。
【0022】また、緑液を二酸化炭素含有ガスで処理す
る際の反応は、COの溶解度を増大させるため、緑液
の温度は低い方がよく、薬品回収工程の中で連続して操
業するような場合には、黒液を濃縮・燃焼してスメルト
とした後、これを水に溶解した緑液の温度は約90℃程
度であるので、これを30〜50℃、望ましくは40℃
程度に冷却して用いるようにする。
【0023】この二酸化炭素含有ガスによる処理によ
り、緑液中の炭酸ナトリウムは重炭酸ナトリウム(Na
HCO)に、酸化ナトリウムは水硫化ナトリウム(N
aSH)に変化する。
【0024】次いで、pH10以下に調整した緑液に触
媒に添加してから、空気等の酸素含有ガスと接触させて
水硫化ナトリウムを酸化し硫黄を生成させる。前記の酸
化反応の際に生ずる水酸化ナトリウムは、炭酸ナトリウ
ムとなる。この時副反応として硫酸やチオ硫酸が若干生
成しそれらの塩となるので、できるかぎり副反応を抑制
して硫黄の回収率を高くするような条件で反応を進める
ようにする。
【0025】pH調整を行なった緑液の酸化反応を促進
するための触媒としては、リグニン、アントラキノン、
ナフトキノンおよびそれらの塩類、ピクリン酸、ニトロ
フェノール、ニトロ安息香酸等とそれらの塩類および五
酸化バナジウム等から選択して、触媒量を添加する。こ
れらの中でも人手の容易さや取扱い易さを考慮すると、
リグニン、アントラキノンとその塩、ナフトキノンスル
ホン酸ナトリウムおよびピクリン酸の使用が好ましい。
【0026】リグニンは、そのものでも、リグニン含有
液であってもよく、前述のようにパルプの蒸解工程から
得られる黒液にはリグニンが多く含まれていることか
ら、これを濾過して触媒として用いることもできる。
【0027】アントラキノンとその塩、ナフトキノンス
ルホン酸ナトリウムは、木材の蒸解工程においても蒸解
反応を促進する蒸解助剤として作用するために、その除
去に特別な操作を要することはないので、このような点
でも有利である。
【0028】触媒の添加量としては、緑液の組成、酸化
条件等によって異なるが、用いる原料の液量に対し数g
/l程度の触媒として作用する量であればよい。
【0029】緑液に含まれている硫化ナトリウムは、単
なる空気酸化程度では充分に酸化されないため、本発明
では触媒を存在させた状態で、空気、酸素、酸素と不活
性ガスとの混合気体等の酸素含有ガスと接触させ、酸化
反応を進めて液中に硫黄を生成させる。
【0030】その後生成した硫黄を含む液を濃縮してか
ら白液と混合させて多硫化ナトリウムを生成させる。あ
るいは、生成した硫黄を、濾過、遠心分離等の周知の分
離手段により分離し、分離した硫黄を白液と混合して多
硫化ナトリウムを生成させるようにしているが、本発明
でこのような構成としたのは次のような理由からであ
る。白液と混合することによって多硫化ナトリウムを生
成させる以外に副反応として白液中の硫化ナトリウムが
酸化されてチオ硫酸ナトリウム(Na)や硫
酸ナトリウム(NaSO)が生成する。
【0031】従来の白液中の硫化ナトリウムを活性炭等
の固体触媒の存在下に空気酸化を行なって多硫化ナトリ
ウムとするポリサルファイド蒸解液の製造方法では、副
反応を抑えながら多硫化ナトリウムを生成する反応を進
めるものの、チオ硫酸ナトリウムや硫酸ナトリウム等の
パルプ蒸解に寄与しない化合物の生成を避けることがで
きずに、ほぼ特定の割合で生成する。
【0032】これに対して本発明では、単体硫黄が既に
生成ずみであり、副反応が本質的に起こりにくく、酸化
処理を行なう液量と処理後に混合する白液の量を任意に
選定できるため、システム全体でのマスバランスをとる
ことが容易である。
【0033】さらに、ポリサルファイドは常温付近では
安定であるが、蒸解液のように水酸化ナトリウムリッチ
の高pHの環境では、温度が高くなると不安定となり、
分解してチオ硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウム等を生
成する傾向がある。そのため、本発明ではせっかく生成
させたポリサルファイドを有効に利用するため、ポリサ
ルファイドが不安定な状態に存在する時間を可能なかぎ
り短くするように考慮したものである。すなわち、前述
のように高pHの環境で高温度にすると、生成したポリ
サルファイドが分解・減少する可能性があるため、本発
明では緑液中のS分を一旦硫黄にまで酸化しておき、蒸
解の前で、位置的にも近い場所で、生成した硫黄を含む
濃縮液あるいは分離した硫黄と白液とを混合させて多硫
化ナトリウムを生成するようにしたものである。本発明
により酸化処理にかける緑液量が少なくてすむうえに、
パルプ製造に寄与しないチオ硫酸ナトリウム等の生成を
抑制することができる。
【0034】本発明の第二発明の場合は、硫黄を分離し
た残りの液と緑液とを併せて苛性化することになるた
め、硫黄含有量が少ない状態で苛性化工程にかかり、こ
の工程におけるチオ硫酸ナトリウム等の副生を減少させ
ることができ、当然得られる白液中のそれらも少ないも
のとなる。
【0035】また、本発明ではpH調整を行なった緑液
を、酸素含有ガスと接触させて硫黄を生成させているの
で、その一部を分離することができ、緑液を酸化して生
成した硫黄を分離した残りの液の還流量を制御すること
も可能である。このため全体のマスバランスをとること
が容易となる。
【0036】近年、浸透釜と木釜の二段構成の二段蒸解
釜が開発されている。これは、蒸解の初期、特に最初の
30分間が歩留まりに大きく影響するために、一段目の
浸透釜で高硫化度の蒸解液または高濃度のポリサルファ
イド蒸解液によって、蒸解の初期操作を行なうことで、
連続的な蒸解操作と歩留まりの向上を図ったものであ
る。
【0037】ポリサルファイド蒸解液の場合を例に具体
的に説明すると、ポリサルファイド濃度として10g/
lasSの高濃度の液(A液)と通常の5g/lasS
の濃度の液(B液)を用意し、A液を浸透釜にB液を木
釜に用いることで、蒸解工程全体として高濃度のポリサ
ルファイド蒸解液によって処理したと同様の効果が得ら
れるとされている。その効果としては、KPのパルプ歩
留まりを50%(対木材)とすると、通常のポリサルフ
ァイド蒸解で約51%、二段蒸解釜で前記の方法では5
2〜53%と言われている。
【0038】本発明は、蒸解液のポリサルファイド濃度
の制御が容易であるし、高濃度のものが得やすいため、
前記した二段蒸解釜に適用することにも適している方法
である。すなわち、本発明では出発原料としている緑液
の炭酸化工程と苛性化工程への分配率を制御すること
で、ポリサルファイド濃度の異なる蒸解液を得ることが
容易にできる。緑液を炭酸化工程と苛性化工程に二分割
し、その分配率を変えたケースで説明すると、炭酸化工
程を経て硫黄を生成させる液量の割合を均等(分配率5
0%)から、炭酸化工程への配分を増加していくにつ
れ、白液と混合して得られる蒸解液のポリサルファイド
濃度としては、5.5g/lasSから約9g/las
Sの高濃度のものまでが得られる。この場合の蒸解液の
ポリサルファイド濃度をNaで表わすならば、X
としてはおおよそ1.8〜4.2の範囲となる。
【0039】次に本発明を実施するための装置につい
て、図面に基づいて説明する。図1は、その一例であ
り、Aは炭酸化塔で、各種の気泡塔や、内部にプラスチ
ック製や磁器製等の充填物を充填した充填塔等の装置を
用いることができる。炭酸化塔Aには、上部に原料とな
る緑液の導入口1および下部に二酸化炭素含有ガスの導
入口2が設けられている。
【0040】原料の緑液は、図示していない冷却装置を
経て所定の温度に冷却されてから、炭酸化塔Aの上部に
入り、塔の中を流下する間に炭酸化塔の下部から導入さ
れる二酸化炭素含有ガスと接触してpHが低下し、塔の
底部にpH10以下に調整された緑液となって溜る。
尚、二酸化炭素含有ガスの多くは、熱回収を行なった後
も相当程度の温度であるため、普通図示していない冷却
装置を経て所定の温度に冷却されてから炭酸化塔に導入
される。また、pHの低下に従い緑液から硫化水素(H
S)の放散が生ずる場合には、その発生をできるだけ
低減するようにすると共に、炭酸化塔の上部や別途回路
を設けて苛性アルカリの水溶液や白液、緑液等を用いて
吸収することが望ましい。
【0041】pH調整された緑液は酸化槽Bに移され、
触媒を添加された後、空気等の酸素含有ガスを送り込ん
で反応させ、硫黄を生成させる。反応をうまく進めるた
めに必要に応じて循環ポンプPを使って反応液を系内に
循環させるようにしてもよい。
【0042】次いで、分離装置もしくは濃縮装置Cに
て、生成した硫黄を含有する液を濃縮するか、生成した
硫黄を分離する。これらの装置には、通常の濾過装置や
液体サイクロン、スーパーデカンター、さらには機能膜
を利用した分離技術等が利用できる。本発明の方法によ
り生成する硫黄は、微粒子でコロイド状であることから
完全に分離することが難しいため、硫黄分を濃縮し、硫
黄含有液あるいは硫黄含有スラリーとした方が取扱い易
くなる。
【0043】分離装置もしくは濃縮装置Cにて準備され
た硫黄あるいは濃縮された硫黄含有液は、混合槽Dで白
液と混合し多硫化ナトリウムを生成させてから、蒸解工
程へ供給する。蒸解工程への移送に時間をかけないよう
にするため、蒸解工程に近い場所にて前記の混合・反応
を行なうことが望ましい。
【0044】本発明の第二の発明の場合には、分離装置
もしくは濃縮装置Cにて硫黄分を分離した残りの液と緑
液とを併せて苛性化する工程が付け加わるだけで、基本
的な構成はこれまでの説明と同様である。
【0045】
【実施例】
実施例1 図1に示した装置を使い、緑液からポリサルファイド蒸
解液を調整し、次の結果を得た。液組成がNaS27
g/l(NaO換算),NaCO107g/l
(NaO換算)の緑液を均等に分け、炭酸化工程と苛
性化工程へ送付した。
【0046】緑液の一方を図示していない冷却装置を経
て約40℃に冷却した後、炭酸化塔Aの上部にある緑液
の導入口1から塔内に導入し、塔の下部から冷却された
回収ボイラー排ガス(CO4500Nm/h)を導
入して反応させた。
【0047】炭酸化塔Aの液溜りからpH9に調整され
た緑液を酸化槽Bに移し、触媒として黒液の濾液を前記
の炭酸化された緑液に対し5重量%の割合で添加し、槽
内に空気を送り込み酸化を行ない、硫黄を11.1g/
l含む液を得た。尚、前記反応の際に、副反応によりチ
オ硫酸ナトリウムや硫酸ナトリウムが硫黄に対し20%
程度生成したので、単体硫黄への転化率は約80%であ
った。
【0048】次いで、スーパーデカンターを用いて濃縮
し、硫黄分約20%のスラリーとした。前記硫黄含有ス
ラリーを分離した残液と緑液とを併せて苛性化し、白液
とした。
【0049】上述の硫黄含有スラリーと、用意した液組
成がNaS14g/l(NaO換算),NaOH1
18g/l(NaO換算)の白液とを混合させて多硫
化ナトリウムを生成させ、以下の組成のポリサルファイ
ド蒸解液を製造した。
【0050】
【0051】実施例2 実施例1と同じ手順で、緑液を使用してポリサルファイ
ド蒸解液を調整し、次の結果を得た。ただし、緑液を炭
酸化工程60%と苛性化工程40%に分配した。
【0052】液組成がNaS26g/l(NaO換
算),NaCO107g/l(NaO換算)の緑
液を約40℃に冷却した後、炭酸化塔Aの上部にある緑
液の導入口1から塔内に導入し、塔の下部から回収ボイ
ラー排ガス(CO6700Nm/h)を導入して反
応させた。
【0053】炭酸化塔Aの液溜りからpH9に調整され
た緑液を酸化槽Bに移し、触媒としてピクリン酸を0.
2g/lの割合で添加し、槽内で空気酸化を行ない、硫
黄を11g/l含む液を得た。尚、前記反応の際に、副
反応によりチオ硫酸ナトリウムや硫酸ナトリウムが硫黄
に対し20%程度生成したので、単体硫黄への転化率は
約80%であった。
【0054】次いで、精密濾過膜を用いて濾過し、硫黄
分20%のスラリーとした。前記硫黄含有スラリーを分
離した残液と緑液とを併せて苛性化し、白液とした。
【0055】上述の硫黄含有スラリーと用意した前記液
組成がNaS11g/l(NaO換算),NaOH
120g/l(NaO換算)の白液を混合させて多硫
化ナトリウムを生成させ、以下の組成のポリサルファイ
ド蒸解液を製造した。
【0056】
【0057】上記のポリサルファイド蒸解液を使用して
得られたパルプは、KP法に比べ約3〜4%の歩留まり
の改善効果が認められた。また、品質を測定したとこ
ろ、比引裂度、比破裂度、裂断長、耐折度、密度等はほ
とんど従来のKP法と変わらず、同程度の品質のパルプ
を得ることができた。
【0058】尚、上記の実施例では生成した硫黄分を濃
縮し、硫黄含有スラリーとして処理したが、生成した硫
黄を分離してから白液と混合してもよいことは当然であ
る。
【0059】
【発明の効果】本発明はポリサルファイド蒸解液の簡易
な調整ができるため、これまで実用化の遅れていたポリ
サルファイド蒸解の実現に貢献するものである。
【0060】さらには、本発明では、システム全体の薬
品バランスを制御することができるうえ、チオ硫酸ナト
リウム等の副生を抑制して多硫化ナトリウムを効率的に
生成することが可能となる。硫化度を調整することが容
易であり、二段蒸解等に適用することもできる。
【0061】また、活性炭を用いる方法と比べると、装
置が簡略化できるので、設備費が約1/2、運転の際の
動力費も1/3程度に節減することが可能になる。さら
に、活性炭の洗浄、入替え等の維持管理が不要となり、
そのための費用も発生しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための装置の一例を示す説明
図である。
【符号の説明】
A 炭酸化塔 1 緑液の導
入口 B 酸化槽 2 二酸化炭
素含有ガスの導入口 C 分離装置もしくは濃縮装置 D 混合槽 P 循環ポンプ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 緑液を二酸化炭素含有ガスで処理してp
    H10以下に調整した後、触媒の存在下に酸素含有ガス
    と接触させて硫黄を生成させ、生成した硫黄を分離もし
    くは濃縮した後、白液と混合させて多硫化ナトリウムを
    生成させることを特徴とするポリサルファイド蒸解液の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 緑液を二酸化炭素含有ガスで処理してp
    H10以下に調整した後、触媒の存在下に酸素含有ガス
    と接触させて硫黄を生成させ、生成した硫黄を分離もし
    くは濃縮した後、硫黄を分離もしくは濃縮した残りの液
    と緑液とを併せて苛性化して得た白液と、前記の分離し
    た硫黄もしくは濃縮した硫黄含有液とを混合させて多硫
    化ナトリウムを生成させることを特徴とするポリサルフ
    ァイド蒸解液の製造方法。
JP7150795A 1995-05-16 1995-05-16 ポリサルファイド蒸解液の製造方法 Pending JPH08311790A (ja)

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