JPH08297163A - 音波伝搬時間測定値の補正方法 - Google Patents

音波伝搬時間測定値の補正方法

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JPH08297163A
JPH08297163A JP10433095A JP10433095A JPH08297163A JP H08297163 A JPH08297163 A JP H08297163A JP 10433095 A JP10433095 A JP 10433095A JP 10433095 A JP10433095 A JP 10433095A JP H08297163 A JPH08297163 A JP H08297163A
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JP
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receiver
sound
transmitter
data
propagation time
Prior art date
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JP10433095A
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Inventor
Naohiro Kimata
直弘 木全
Tomio Araya
富雄 新家
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Oki Electric Industry Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
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Publication date
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  • Measurement Of Velocity Or Position Using Acoustic Or Ultrasonic Waves (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 海中の音波伝搬時間の測定値の誤差を低減す
る。 【構成】 基準位置データメモリ103 から送受波器の基
準位置を読み出し、測定データメモリ105 から送受波器
の観測時の位置を読み出す。次に、演算処理部120 によ
り、各基準位置に対する送受波器の位置のずれの大きさ
を求め、その結果から送受波器の観測時の位置と各基準
位置の間の各距離{rS},{rR}を求める。更
に、距離{rS},{rR}のうちの最も小さな値
をとる場合の番号n,mを測定データメモリ105 に書き
込む。この番号n,mに対応する基準位置が送受波器の
観測時の位置に最も近い基準位置となり、送受波器の初
期位置からのずれによって生ずる音波伝搬時間の変動よ
りも該送受波器の基準位置からのずれによって生ずる音
波伝搬時間の変動の方が小さくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば海洋音響トモグ
ラフィ等における音波伝搬時間測定値の補正方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、
例えば、次のような文献に記載されるものがあった。 文献;JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH,90,[C5],SEPT
EMBER 2O, 1985、BRUCE D.CORNUELLE 著、“Simulation
s of Acoustic Tomography Array Performance With Un
tracked or Drifting Sources and Receivers ”P.9O79
-9088 従来、この種の音波伝搬時間測定値の補正方法は、前記
文献に開示されるものがあり、以下に述べる方法によっ
て、送波器及び受波器の位置のずれによって生ずる音波
伝搬時間の変動の大きさを求めていた。
【0003】トモグラフィ・データは、個別の経路に沿
って伝搬する複数の音響信号の到達時刻データからなっ
ている。音速c(x,y,z,t)の海中を通って送波
器から受波器まで伝搬する音響信号は、内部波(即ち、
海中の状態の変化)を無視すれば、数多くの取り得る音
線経路のうちの一つの経路Γk(k;経路番号)に沿っ
て進む。これらの音線経路は、海中の音速場によって決
まる。音速場とは、場として定義された範囲内の任意の
点(x,y,z)において音速c(x,y,z)を知
ることのできる領域である。このとき、海洋音響トモグ
ラフィ・システムの送波器及び受波器の設置位置が音速
場に含まれるように場の範囲を設定する。測定された送
波器と受波器間の経路Γkについての音波の伝搬時間D
k(t)は、次式(1)で与えられる。
【0004】
【数1】 但し、sは音線経路Γkに沿った弧の長さである。Ek
はさまざまな原因による音波伝搬時間の変動の大きさ全
体を表す項であり、時計のずれによる変動Ak(t)、
送受波器の位置のずれによる変動Bk(t)、及び内部
波がピーク位置に与える影響やピーク位置そのものの不
確かさによる変動εk(t)、といった種々の変動の伝
搬時間Dk(t)への寄与の総和である。海洋の音速場
が変化すれば、音波の伝搬時間も変化する。この変化が
小さければ、伝搬時間Dk(t)を求める式(1)は、
もとの状態c(x,y,z)を用いた1次式の形に書
くことができる。例えば、音速c(x,y,z,t)を
次式(2)のように書くことにする。
【数2】 ここで、c´はcに比べて小さい。1次の項までをと
れば、伝搬時間の変動D´kを表す式は、次式(3)の
ようになる。
【0005】
【数3】 ここで、Γkはもとの状態cにおける音線経路、D
kは次式(4)に示すもとの状態の音線経路Γkに
対する伝搬時間、及びD´kは観測された伝搬時間Dk
のうちの変動による成分である。
【数4】 式(3)は線形であるから、データ・セット{D´k}
からc´を推定するのに標準的な逆問題解析手法を用い
ることができる。図2は、送受波器の位置のずれを示す
図である。この図において、送波器iの位置(Xi,Y
i,Zi)を示すベクトルをv[Xi]で表し、受波器
jの位置(Xj,Yj,Zj)を示すベクトルをv[X
j]で表すことにする。送受波器の動きや錨の位置のオ
フセットによる送波器iから受波器jヘの経路Γkにつ
いての音波の伝搬時間の変動の大きさBkは、次式
(5)に示すように、先験的に仮定した初期位置v[X
i],v[Xj]からの送受波器のずれの大きさv
[X´i],v[X´j]の1次関数として表すことが
できる。
【0006】
【数5】 Bk;送受波器の位置のずれによって生ずる音波伝搬時
間の変動の大きさ Dk;送波器iから受波器jへの経路Γkについての音
波伝搬時間測定値 i;送波器の番号 j;受波器の番号 k;音線の番号 (Xi,Yi,Zi);送波器iの初期位置v
[Xi] (Xj,Yj,Zj);受波器jの初期位置v
[Xj] (Xi,Yi,Zi);送波器iの移動後の位置v[X
i] (Xj,Yj,Zj);受波器jの移動後の位置v[X
j] (X´i,Y´i,Z´i);送波器iの位置のずれの
大きさv[X´i] (X´j,Y´j,Z´j);受波器jの位置のずれの
大きさv[X´j] 式(5)の偏微分は、異なる座標への音線計算によって
見積もることができる。しかし、単純な変動を仮定すれ
ば、次の式(6a),(6b),(6c),(6d)に
示すように、これらの量を解析的に計算できることにな
る。
【0007】即ち、水平成分を、水平方向の距離に依存
した伝搬時間成分と個々のx座標或いはy座標に依存し
た水平方向の距離成分との2つに分ける。
【数6】 但し、 Rk;送受波器間の水平方向の距離成分
【数7】 図3は、送波器から受波器への方位と距離の定義を示す
図である。この図から水平位置についての距離の偏微分
は、単純な幾何計算によって求められる。即ち、送波器
iからみた受波器jの方位をφとすれば、次式(7
a),(7b),(7c),(7d)のようになる。こ
こで、東西方向にx軸をとり、東を正とする。同様に、
南北方向をy軸にとり、北を正とする。
【0008】
【数8】 但し、 φ;送波器からみた受波器の方位(正の方向は、反時計
方向。真東=0とする)
【数9】 図4は、送受波器の周囲の音線と等位相線を示す図であ
る。この図から、水平距離方向および垂直方向の位置に
依存した伝搬時間成分の大きさは、音線が有限の幅をも
ち、その等位相面が音線経路に垂直であると仮定するこ
とによって、近似により求めることができる。即ち、送
受波器の位置のずれによって生ずる伝搬時間の増分は、
等位相面が送受波器に到達するのに要する時間であると
見做すのである。音線経路Γkが送波器及び受波器の近
傍で局所的に直線とみなせると仮定すれば、次式(8
a),(8B),(9)が得られる。
【0009】
【数10】 但し、 θki;送波器iの初期位置v[Xi]における経路
Γkの水平面に対する角度(下向きの音線と水平面との
なす角を正、上向きの音線と水平面とのなす角を負とす
る) θkj;受波器jの初期位置v[Xj]における経路
Γkの水平面に対する角度(下向きの音線と水平面との
なす角を正、上向きの音線と水平面とのなす角を負とす
る) ci;送波器iの初期位置v[Xi]における局所的
な音速 cj;受波器jの初期位置v[Xj]における局所的
な音速 ここで、これらの式が次の仮定の上に成り立っていると
いうことに注意しなくてはならない。即ち、音線が同定
されており、送波器での音波の放射角θkiと受波器で
の音波の入射角θkjの両方が既知であるという仮定で
ある。
【0010】結局、式(5)〜式(9)より、送受波器
の位置のずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大き
さBkは次式(10)のように表される。
【数11】 以上のことから、点Pkiから送波器の初期位置v[X
i]に至る線分Γkに沿って伝搬する音波の伝搬時
間Tk(t)は、次の式(11)で与えられることが
わかる。
【数12】 但し、 Pki;送波器の初期位置v[Xi]における音線Γ
kの接線と、この接線に垂直で移動後の送波器位置v
[Xi]を含む平面との交点 同様に、受波器の初期位置v[Xj]から点Pkjに
至る線分Γkに沿って伝搬する音波の伝搬時間T
(t)は、次式(12)で与えられる。
【0011】
【数13】 但し、 Pkj;受波器の初期位置v[Xj]における音線Γ
kの接線とこの接線に垂直で移動後の受波器位置v[X
j]を含む平面との交点 式(10),(11),(12)から、送波器及び受波
器の位置のずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大
きさBkは、次式(13)のように書ける。
【数14】
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以上述
べた方法では、送波器及び受波器の位置のずれが大きく
なるにしたがって、求められた音波伝搬時間の変動の大
きさと実際の変動の大きさとの差が増大するという問題
点があった。即ち、送波器の初期位置v[Xi]から
受波器の初期位置v[Xj]に至る音線Γkに沿って
伝搬する音波の実際の伝搬時間Tk(t)は、式(1)
から、次式(31)で与えられる。
【数15】 同様に、送波器の移動後の位置v[Xi]から受波器の
移動後の位置v[Xj]に至る音線Γkに沿って伝搬
する音波の実際の伝搬時間Tk(t)は、次式(3
2)で与えられる。
【0013】
【数16】 式(31)及び式(32)から、送受波器の位置のずれ
によって生ずる音波伝搬時間の実際の変動の大きさUk
(t)は、次式(33)のように書ける。
【数17】 従って、送波器及び受波器の位置のずれによって生ずる
音波伝搬時間の実際の変動の大きさUkと従来の方法に
よって求められた変動の大きさBkとの差Vk(t)
は、式(13)及び式(33)から、次式(34)のよ
うになる。
【数18】 式(34)からわかるように、送波器及び受波器の位置
のずれが大きくなるにしたがって、以下のようなことが
起こる。
【0014】(a) 送波器の初期位置における音速c
iと実際の音速場における送波器の移動後の位置付近の
音速c(x,y,z,t)との差が増大する。そのた
め、式(34)の第1項の積分と第4項の積分の一部、
即ち、点Pkiから送波器の初期位置に至る直線経路Γ
Skに沿って求められる一定の音速ciを用いた積分と
音線Γkに沿って求められる位置と時間に依存した音
速c(x,y,z,t)を用いた積分のうちの送波器の
移動後の位置から送波器の初期位置付近までの積分との
差が増大する。 (b) 送波器の初期位置から受波器の初期位置に至る
音線経路Γkと送波器の移動後の位置から受波器の移動
後の位置に至る音線経路Γkのずれが増大する。その
ため、式(34)の第2項の積分と第4項の積分の一
部、即ち、送波器の初期位置から受波器の初期位置に至
る音線Γkに沿って求められる音速c(x,y,z,
t)を用いた積分と音線Γkに沿って求められる音速
c(x,y,z,t)を用いた積分のうちの送波器の移
動後の位置付近から受波器の移動後の位置付近までの積
分との差が増大する。
【0015】(c) 受波器の初期位置における音速c
jと実際の音速場における受波器の移動後の位置付近の
音速c(x,y,z,t)との差が増大する。そのた
め、式(34)の第3項の積分と第4項の積分の一部、
即ち、受波器の初期位置から点Pkjに至る直線経路Γ
kに沿って求められる一定の音速cjを用いた積分と
音線Γkに沿って求められる位置と時間に依存した音
速c(x,y,z,t)を用いた積分のうちの受波器の
初期位置付近から受波器の移動後の位置までの積分との
差が増大する。以上のことから、送受波器の位置のずれ
によって生ずる音波伝搬時間の実際の変動の大きさと従
来の方法によって求められた変動の大きさとの差Vkが
増大する。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するために、海中に配置された送波器が発生した音波
を該海中に配置された受波器が受波することにより該海
中の音波伝搬時間を求める海洋音響トモグラフィ・シス
テムに用いられ、該海中の音波伝搬時間の測定値の誤差
を補正するための音波伝搬時間測定値の補正方法におい
て、次のような処理を行うようにしている。即ち、前記
送波器及び受波器が設置された海中の音速を求めるため
に必要な海水のパラメータを観測データメモリに書き込
むデータ書き込み処理と、前記送波器及び受波器の全て
の位置において音速を知ることのできる領域である音速
場を設定し、前記観測データメモリに書き込まれたデー
タを用いて該音速場に対応したデータを音速場データメ
モリに書き込む音速場の生成処理と、前記送波器及び受
波器の位置のずれの範囲内で該送波器及び受波器の位置
のずれの大きさ及び該位置のずれによって生ずる音波伝
搬時間の変動の大きさを求める際の該送波器の1つ又は
複数の基準位置及び該受波器の1つ又は複数の基準位置
をそれぞれ設定し、該各基準位置を基準位置データメモ
リに書き込む基準位置の設定処理と、前記送波器及び受
波器の位置と海中の音速とによって決まる音波の伝搬経
路である複数の音線経路について、音波伝搬時間、該送
波器の前記各基準位置における音波の放射角度、及び該
受波器の前記各基準位置における音波の受波角度を求め
て固有音線データメモリに書き込む固有音線計算処理
と、測定された前記受波器が受信した受信データ及び該
受信データを測定した時点での前記送波器及び受波器の
位置のデータを測定データメモリに取り込む測定データ
取り込み処理とを、行うようにしている。
【0017】更に、前記送波器及び受波器の観測時の位
置と該送波器及び受波器の各基準位置の間の各距離をそ
れぞれ求め、該各距離のうちの最も小さい値を選択して
該送波器及び受波器の観測時の位置に最も近い基準位置
とする基準位置の選択処理と、測定された前記受波器が
受信した受信データ中の信号強度のピークにおける各音
波伝搬時間に、前記送波器の観測時の位置に最も近い基
準位置から前記受波器の観測時の位置に最も近い基準位
置に至る音線についての前記固有音線計算処理によって
得られた各音波伝搬時間データを対応付ける音線同定処
理と、前記測定データメモリから前記受信データを測定
した時点での前記送波器及び受波器の位置のデータと該
位置に最も近い基準位置及び該受信データ中の各ピーク
位置での音波伝搬時間データの全体を読み出し、次に前
記基準位置データメモリから該送波器の位置に最も近い
基準位置と該受波器の位置に最も近い基準位置を読み出
し、更に前記音速場データメモリから該送波器の位置に
最も近い基準位置と該受波器の位置に最も近い基準位置
における音速を読み出し、該各ピーク位置での音波伝搬
時間データから該送波器及び受波器の位置のずれによる
誤差及び該誤差以外の誤差の総和を除いて音波伝搬時間
を求める誤差の補正処理と、前記測定データメモリから
前記受信データを測定した時点での前記送波器及び受波
器の位置のデータと該位置に最も近い基準位置及び該受
信データ中の各ピーク位置での音波伝搬時間データの全
体を読み出し、更に前記固有音線データメモリから該送
波器の位置に最も近い基準位置から該受波器の位置に最
も近い基準位置に至る音線経路についての前記固有音線
計算によって得られた音波伝搬時間データの全体を読み
出すことによって伝搬時間差の算出を行うデータの読み
出し処理と、新たな音波が観測される毎に前記測定デー
タの取り込み処理から前記データの読み出し処理までを
繰り返し行い、観測時の前記送波器及び受波器の位置に
最も近い基準位置を選択する繰り返し処理とを、行うよ
うにしている。
【0018】
【作用】本発明によれば、以上のように音波伝搬時間測
定値の補正方法を構成したので、送波器及び受波器の初
期位置の他に該送波器及び受波器の各基準位置がそれぞ
れ設定される。次に、音響信号が観測されるごとに観測
時の前記送波器及び受波器の位置に最も近い基準位置が
それぞれ選択されて音波伝搬時間の変動の大きさが求め
られる。そのため、前記送波器及び受波器の初期位置か
らのずれによって生ずる音波伝搬時間の実際の変動の大
きさと該送波器及び受波器の位置のずれによって生ずる
音波伝搬時間の変動の大きさとの差よりも、該送波器及
び受波器の基準位置からのずれによって生ずる音波伝搬
時間の実際の変動の大きさと該送波器及び受波器の位置
のずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大きさとの
差の方が小さくなる。従って、前記課題を解決できるの
である。
【0019】
【実施例】図1は、本発明の実施例の音波伝搬時間測定
値の補正方法を実施するための補正システムの構成図で
ある。この補正システムは、データの書き込み及び読み
出しを行う観測データメモリ101、音速場データメモ
リ102、基準位置データメモリ103、固有音線デー
タメモリ104、測定データメモリ105、補正データ
メモリ106、このシステムの外部とデータをやり取り
するためのデータ入出力部110、及びこれらを制御す
る演算処理部120を備え、これらがバス130を介し
て接続されている。図5は海洋音響トモグラフィの処理
フローチャート、及び図6は図1の動作を説明するため
のフローチャートである。これらの図を参照しつつ、図
1の動作を説明する。先ず、図5を用いて海洋音響トモ
グラフィ・システムによる観測対象海域の水温分布を得
る処理(a)〜(l)について述べる。
【0020】(a) 水温等のデータ観測 ステップS1において、海洋音響トモグラフィ・システ
ムの観測装置を設置する海域についての水温や塩分濃度
等、海中の音速を求めるために必要なデータを観測す
る。 (b) 音速場の生成 ステップS2において、ステップS1で観測された水温
等のデータを用いて、音速場を生成する。音速場とは、
場として定義された範囲内の任意の点(x,y,z)に
おいて音速c(x,y,z)を知ることのできる領域
である。このとき、海洋音響トモグラフィ・システムの
送受波器の設置位置が音速場に含まれるように、場の範
囲を設定する。
【0021】(c) 初期位置の設定 ステップS3において、送受波器を実際に設置した位置
を測定し、該送受波器の初期位置として設定する。この
とき、送波器の初期位置をv[XS](XS,Y
S,ZS)、及び受波器の初期位置をv[XR]
(XR,YR,ZR)とする。トモグラフィ観測
では、送波器から発信された音響信号を遠方の受波器に
到達させるために、送受波器をSOFAR チャネルと呼ばれ
る深度約1000〜1500m の海中に係留する。係留の方法
は、海底にアンカーを設置し、該アンカーから浮力材を
取り付けた送波器又は受波器までのケーブルの長さを調
節し、該送受波器の深度が1000〜1500m になるようにし
て該送受波器を海中に浮遊させる方法が一般的である。
従って、送波器及び受波器は、海流等の影響によりそれ
ぞれ観測期間中に、アンカーを中心とし、ケーブルの長
さを半径とする球面に沿って移動すると考えられる。
【0022】(d) 固有音線計算 ステップS4において、ステップS2で生成された音速
場のデータを用いて、送波器の初期位置から受波器の初
期位置に至る固有音線計算を行い、各音線経路Γ
(但し、kは音線経路の番号)について、音波伝搬時間
k、送波器の位置における音波の放射角度θkS、
受波器の位置における音波の受波角度θkRを求める。
ここで、固有音線とは、送受波器の位置と海中の音速に
よって決まる音響信号の伝搬経路で、一般に複数存在す
る。音波伝搬時間Dkは、次式(41)によって求め
られる。
【数19】 ここで、sは音線経路Γkに沿った弧の長さである。
一方、送波器の初期位置から受波器の初期位置に至る音
線経路Γinitkに沿って伝搬する音波の実際の伝搬時間
initkは、式(41)と同様にして、次式(42)で
与えられる。
【0023】
【数20】 (e) 測定データの取り込み ステップS5において、測定された受信データ及び該受
信データを測定した時点での送受波器の位置のデータを
取り込む。このとき、送波器の位置をv[XS](X
S,YS,ZS)、及び受波器の位置をv[XR](X
R,YR,ZR)とする。ここで、受信データとは、送
波器における音響信号の送信時刻を時刻零とし、この時
刻からの経過時間及び受波器における受信信号の強度の
変化を記録したものである。トモグラフィ観測では、音
響信号は、送受波器の位置と海中の音速場c(x,y,
z)によって決まる複数の音線経路に沿って伝搬するの
で、受信信号の中に強度が大きくなるピークが複数見ら
れる。或るピーク位置での音波伝搬時間をDとすれば、
Dは次式(43)によって表される。
【0024】
【数21】 ここで、Γは伝搬時間Dで受波器に到達した音響信号
が辿った音線経路、sは音線経路Γに沿った弧の長さ
である。又、Eはさまざまな原因による音波伝搬時間の
変動の大きさ全体を表す項であり、種々の変動の伝搬時
間Dへの寄与の総和である。 (f) 音線同定 ステップS6において、ステップS4の固有音線計算に
よって得られた音波伝搬時間データの全体{Dk}を
測定された送受波器間の受信データと比較して、音線同
定処理を行う。音線同定とは、固有音線計算によって得
られた音波伝搬時間{Dk}のうちの一つ一つを、測
定された送受波器間の受信データ中の信号強度のピーク
における音波伝搬時間の一つ一つに対応付ける処理であ
る。固有音線計算によって得られた音波伝搬時間D
に対応付けられた測定された一つの音波伝搬時間データ
DをDkと書くことにする。式(43)と同様に、Dk
は次式(44)のように表される。
【0025】
【数22】 但し、Ekは誤差を表す。又、送波器の位置v[XS]
から受波器の位置v[XR]に至る音線経路Γkに沿
って伝搬する音波の実際の伝搬時間Tkは、式(4
4)から、次式(45)で与えられる。
【数23】 (g) 誤差の補正 ステップS7において、式(44)で、誤差Ekは、逆
問題解析手法を用いた音速変動量の推定の精度を低下さ
せる。このうち、送受波器の位置のずれによる誤差Bk
を次式で求める。
【0026】
【数24】 但し、
【数25】 ここで、XS=XRのとき、YR>YSならば、φ=π
/2,YR<YSならば、φ=−π/2とする。又、Y
S=YRのとき、XR>XSならば、φ=0,XR<X
Sならば、φ=±πとする。
【0027】EkからBkを除くことにより、送受波器
の位置のずれによる誤差が減少する。又、他の原因によ
る誤差に対しても、それぞれの寄与の大きさを求め、求
められた値をEkから除くことにより誤差が減少する。
このようにして補正を行った後に残った誤差の大きさ全
体をE´kで表せば、式(44)は次式(47)のよう
に書ける。但し、Bk以外の誤差の寄与の総和をεkで
表す。
【数26】 但し、 E´k=Ek−Bk−εk ここで、送波器の初期位置XSにおける音線経路Γ
initkの接線と該接線に垂直で移動後の送波器位置v
[XS]を含む平面との交点から送波器の初期位置X
Sに至る線分ΓSOkに沿って伝搬する音波の伝搬時間T
SOkは、次式(48)で与えられる。
【0028】
【数27】 同様に、受波器の初期位置v[XR]から受波器の初
期位置v[XR]における音線経路Γinitkの接線と
この接線に垂直で移動後の受波器位置v[XR]を含む
平面との交点に至る線分ΓORkに沿って伝搬する音波の
伝搬時間TORkは、次式(49)で与えられる。
【数28】 式(46),(48),(49)から、送受波器の位置
のずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大きさBk
は、次式(50)のように書ける。
【0029】
【数29】 (h) 伝搬時間差の算出( ステップ508) ステップS8において、ステップS6の音線同定処理に
よって対応付けられて補正されたD´kとDkから、
次式(51)により両者の差δDkを求める。 δDk=D´k−Dk ・・・(51) 式(41)、式(47)から、式(51)は次式(5
2)のようになる。
【数30】 いま、 c(x,y,z,t) = c0 (x,y,z)+c´(x,y,z,t) ・・・(53) c´(x,y,z,t)<<c0 (x,y,z) ・・・(54) とすれば、δDkは次式(55)のように表すことがで
きる。
【0030】
【数31】 (i) 逆問題解析 ステップS9において、式(55)中のδDk,Γ
k,c0は既知であるから、標準的な逆問題解析手法
を用いて、音速変動量c´を推定する。 (j) 音速場に変動量を付加 ステップS10において、音速c(x,y,z)及び
推定された音速変動量c´(x,y,z,t)から、次
式(56)を用いて音速c(x,y,z,t)を求め
る。 c(x,y,z,t)=c0 (x,y,z)+c´(x,y,z,t) ・・・(56) (k) 音速を水温に換算 ステップS11において、求められた音速と既に観測さ
れている塩分濃度等のデータを用いて、音速を水温に換
算する。 (l) 繰り返し 新たな音響信号データが観測されるごとに、ステップS
5の測定データの取り込み処理からステップS11の音
速を水温に換算する処理までを繰り返し行う。次に、図
6を用いて送受彼器の基準位置を用いた音波伝搬時間の
測定値の補正方法(a)〜(j)について述べる。
【0031】(a) データの書き込み ステップS21において、海洋音響トモグラフィ・シス
テムの観測装置を設置する海域について観測された海中
の音速を求めるために必要な水温や塩分濃度等のデータ
を、データ入出力部110 を用いて観測データメモリ101
に書き込む。 (b) 音速場の生成 ステップS22において、観測データメモリ101 に書き
込まれたデータを読み出し、これらを用いて演算処理部
120 により音速場を生成し、音速場データメモリ102 に
書き込む。このとき、海洋音響トモグラフィ・システム
の送受波器の設置位置、及びこれらの送受波器の位置が
ずれた場合でも、それらの全ての位置が音速場に含まれ
るように場の範囲を設定して音速場を生成する。
【0032】(c) 基準位置の設定 ステップS23において、送受波器の位置のずれの範囲
内で該送受波器の基準位置を設定し、基準位置データメ
モリ103 に書き込む。送受波器の基準位置とは、送受波
器の位置のずれの大きさ及び該送受波器の位置のずれに
よって生ずる音波伝搬時間の変動の大きさを求める際
に、基準となる位置である。送波器のn番目の基準位置
をv[XS](XS,YS,ZS)、及び受波
器のm番目の基準位置をv[XR](XR,Y
R,ZR)とする。又、送波器の初期位置v[X
S](XS,YS,ZS)を送波器の0番目の基
準位置、及び受波器の初期位置v[XR](XR,
R,ZR)を受波器の0番目の基準位置とする。
これらの基準位置の個数はいくつでも構わないし、それ
らの位置は、送受波器の位置のずれの範囲内であれば、
どこでも構わない。
【0033】(d) 固有音線計算 ステップS24において、基準位置データメモリ103 か
ら基準位置のデータを順に読み出し、演算処理部120 に
より送波器の基準位置v[XS]から受波器の基準位
置v[XR]に至る音線経路Γnmkについて固有音線
計算を行う。固有音線計算では、設定された送波器の基
準位置{v[XS]}と受波器の基準位置{v[X
R]}のうちの一つ一つを順に当てはめていき、送受波
器の基準位置のすべての組み合わせについて実行する。
そのため、送波器の基準位置の個数がNで受波器の基準
位置の個数がMのときは、N×M回の固有音線計算を行
う。本実施例では、各音線経路Γnmkについて、音波伝
搬時間Dnmk、送波器の基準位置における音波の放射角
度θnmkS、及び受波器の基準位置における音波の受波
角度θnmkRを求め、固有音線データメモリ104 に書き
込む。
【0034】(e) 測定データの取り込み ステップS25において、測定された受信データ及び該
受信データを測定した時点での送受波器の位置のデータ
v[XS](XS,YS,ZS),v[XR](XR,
YR,ZR)を取り込み、測定データメモリ105 に書き
込む。 (f) 基準位置の選択 ステップS26において、先ず、基準位置データメモリ
103 から各基準位置v[XS](XS,YS,Z
S),v[XR](XR,YR,ZR)を、
測定データメモリ105 から送受波器の観測時の位置v
[XS](XS,YS,ZS),v[XR](XR,Y
R,ZR)を、それぞれ読み出す。
【0035】次に、演算処理部120 により、各基準位置
に対する送受波器の位置のずれの大きさ{v[X´
S](X´S,Y´S,Z´S)},{v[X
´R](X´R,Y´R,Z´R)}を求め、
その結果から送受波器の観測時の位置と各基準位置の間
の距離{rS},{rR}を求める。更に、距離
{rS},{rR}のうちの最も小さな値をとる場
合の番号n,mを測定データメモリ105 に書き込む。こ
の番号n,mに対応する基準位置が、送受波器の観測時
の位置に最も近い基準位置である。但し、
【数32】 (g) 音線同定 ステップS27において、先ず、データ入出力部110 を
用いて、測定データメモリ105 から測定された送受波器
間の受信データと該送受波器の観測時の位置に最も近い
基準位置の番号n,mをそれぞれ読み出す。
【0036】次に、データ入出力部110 を用いて、番号
nの送波器の基準位置v[XS]から番号mの受波器
の基準位置v[XR]に至る音線経路{Γnmk}につ
いての固有音線計算によって得られた音波伝搬時間デー
タの全体{Dnmk}を固有音線データメモリ104 から読
み出す。そして、前記受信データと音波伝搬時間データ
の全体{Dnmk}とを比較して音線同定処理を行う。音
線同定処理の結果、固有音線計算によって得られた音波
伝搬時間Dnmkに対応付けられた受信データ中の各ピー
ク位置での音波伝搬時間データに番号kを付加し、デー
タ入出力部110を用いて、測定データメモリ105 に書き
込む。このようにして書き込まれた各ピーク位置での音
波伝搬時間データをDkと表すことにする。番号kは同
定されたすべてのピーク位置での音波伝搬時間データに
ついて書き込まれる。
【0037】(h) 誤差の補正 ステップS28において、先ず、測定データメモリ105
から受信データを測定した時点での送受波器の位置のデ
ータと該位置に最も近い基準位置の番号n,m、及び受
信データ中の各ピーク位置での音波伝搬時間データの全
体{Dk}を読み出す。次に、基準位置データメモリ10
3 から番号nの送波器の基準位置及び番号mの受波器の
基準位置を読み出す。更に、音速場データメモリ102 か
ら番号nの送波器の基準位置における音速及び番号mの
受波器の基準位置における音速を読み出す。演算処理部
120 により、これらのデータから各ピーク位置での音波
伝搬時間データについて次式(57)を用いて、送受波
器の位置のずれによる誤差Bnmk及びデータ入出力部11
0 を用いて読み込まれたBnmk以外の誤差の寄与の総和
εkを除いた伝搬時間D´kを求め、補正データメモリ
106 に書き込む。 D′k =D′k =Dk −Bk nm −εk ・・・(57) 但し、
【数33】 (i) データの読み出し ステップS29において、データ入出力部110 を用い
て、測定データメモリ105 から受信データを測定した時
点での送受波器の位置にもっとも近い基準位置の番号
n,m、及び受信データ中の各ピーク位置での音波伝搬
時間データの全体{Dk}を読み出す。更に、固有音線
データメモリ104 から番号nの送波器の基準位置v[X
S]から番号mの受波器の基準位置v[XmR]に至
る音線経路{Γnmk}についての固有音線計算によって
得られた音波伝搬時間データの全体{Dnmk}を読み出
す。そして、ステップS8の伝搬時間差の算出処理を行
うことができる。更に、この処理の結果を用いて、ステ
ップS9の逆問題解析処理からステップS11の音速を
水温に換算する処理までが実行される。
【0038】(j) 繰り返し 新たな音響信号データが観測されるごとに、ステップS
25の測定データの取り込み処理からステップS29の
データの読み出し処理までを繰り返し行う。以上の処理
(a)〜(j)の結果、以下のようになる。式(42)
及び式(45)から、送受波器の初期位置からのずれに
よって生ずる音波伝搬時間の実際の変動の大きさU
は、次式(71)のように書ける。
【数34】 従って、送受波器の初期位置からのずれによって生ずる
音波伝搬時間の実際の変動の大きさUkと式(46)
の方法によって求められた変動の大きさBkとの差V
kは、式(50)及び式(71)から、次式(72)の
ようになる。
【0039】
【数35】 一方、送波器の基準位置v[XS]から受波器の基準
位置v[XR]に至る音線経路Γstkに沿って伝搬す
る音波の実際の伝搬時間Tstkは、式(42)と同様に
して、次式(73)で与えられる。
【数36】 式(73)及び式(45)から、送受波器の基準位置v
[XS],v[XR]からのずれによって生ずる音
波伝搬時間の実際の変動の大きさUnmkは、次式(7
4)のように書ける。
【0040】
【数37】 又、式(48)と同様にして、送波器の基準位置v[X
S]における音線経路Γstkの接線と該接線に垂直で
移動後の送波器位置v[XS]を含む平面との交点から
送波器の基準位置v[XS]に至る線分ΓSnkに沿っ
て伝搬する音波の伝搬時間TSnkは、次式(75)で与
えられる。
【数38】 同様に、受波器の基準位置v[XR]から該受波器の
基準位置v[XR]における音線経路Γstkの接線と
該接線に垂直で移動後の受波器位置v[XR]を含む平
面との交点に至る線分ΓmRkに沿って伝搬する音波の伝
搬時間TmRkは、次式(76)で与えられる。
【0041】
【数39】 式(58),(75),(76)から、送受波器の基準
位置v[XR],v[XR]からのずれによって生
ずる音波伝搬時間の変動の大きさBnmkは、次式(7
7)のように書ける。
【数40】 従って、送受波器の基準位置v[XS],v[X
R]からのずれによって生ずる音波伝搬時間の実際の
変動の大きさUnmkと式(58)の方法によって求めら
れた変動の大きさBnmkとの差Vnmkは、式(74)及
び式(77)から、次式(78)のようになる。
【数41】 式(72)と式(78)が同一となるのは、n=0かつ
m=0の場合である。そうでないときは、以下のように
なる。
【0042】(a) n≠0のとき、送波器の初期位置
よりも送波器の基準位置の方が送波器の移動後の位置に
近いので、送波器の初期位置における音速csと実際の
音速場における送波器の移動後の位置付近の音速c
(x,y,z,t)との差よりも、送波器の基準位置に
おける音速cSと実際の音速場における送波器の移動
後の位置付近の音速c(x,y,z,t)との差の方が
小さくなる。そのため、式(72)の第1項の積分と第
4項の積分の一部、即ち送波器の初期位置v[XS]
における音線経路Γinitkの接線と該接線に垂直で送波
器の移動後の位置v[XS]を含む平面との交点から送
波器の初期位置v[XS]に至る直線経路ΓSOkに沿
って求められる一定の音速csを用いた積分と、音線経
路Γkに沿って求められる位置と時間に依存した音速
c(x,y,z,t)を用いた積分のうちの送波器の移
動後の位置から送波器の初期位置v[XS]付近まで
の積分との差よりも、式(78)の第1項の積分と第4
項の積分の一部、即ち、送波器の基準位置v[XS]
における音線経路Γstkの接線と該接線に垂直で移動後
の送波器位置v[XS]を含む平面との交点から送波器
の基準位置v[XS]に至る直線経路ΓSnkに沿って
求められる一定な音速cSを用いた積分と、音線経路
Γkに沿って求められる位置と時間に依存した音速c
(x,y,z,t)を用いた積分のうちの送波器の移動
後の位置から送波器の基準位置v[XS]付近までの
積分との差の方が小さくなる。
【0043】(b) n≠0,m≠0のうち少なくとも
いずれか一方が成り立つとき、送受波器の初期位置より
も送受波器の基準位置の方が送受波器の移動後の位置に
近いので、送波器の初期位置v[XS]から受波器の
初期位置v[XR]に至る音線経路Γinitkと送波器
の移動後の位置から受波器の移動後の位置に至る音線経
路Γkのずれの大きさよりも、送波器の基準位置v
[XS]から受波器の基準位置v[XR]に至る音
線経路Γstkと送波器の移動後の位置から受波器の移動
後の位置に至る音線経路Γkのずれの大きさの方が小
さくなる。そのため、式(72)の第2項の積分と第4
項の積分の一部、即ち、送波器の初期位置v[XS]
から受波器の初期位置v[XR]に至る音線Γinit
に沿って求められる音速c(x,y,z,t)を用いた
積分と、音線経路Γkに沿って求められる音速c
(x,y,z,t)を用いた積分のうちの送波器の移動
後の位置付近から受波器の移動後の位置付近までの積分
との差よりも、式(78)の第2項の積分と第4項の積
分の一部、即ち、送波器の基準位置v[XS]から受
波器の基準位置v[XR]に至る音線経路Γstkに沿
って求められる音速c(x,y,z,t)を用いた積分
と、音線経路Γkに沿って求められる音速c(x,
y,z,t)を用いた積分のうちの送波器の移動後の位
置付近から受波器の移動後の位置付近までの積分との差
の方が小さくなる。
【0044】(c) m≠0のとき、受波器の初期位置
よりも受波器の基準位置の方が受波器の移動後の位置に
近いので、受波器の初期位置における音速cRと実際の
音速場における受波器の移動後の位置付近の音速c
(x,y,z,t)との差よりも、受波器の基準位置に
おける音速cRと実際の音速場における受波器の移動
後の位置付近の音速c(x,y,z,t)との差の方が
小さくなる。そのため、式(72)の第3項の積分と第
4項の積分の一部、即ち、受波器の初期位置v[X
R]から該受波器の初期位置v[XR]における音
線経路Γinitkの接線と該接線に垂直で受波器の移動後
の位置v[XR]を含む平面との交点に至る直線経路Γ
ORkに沿って求められる一定な音速cRを用いた積分
と、音線経路Γkに沿って求められる位置と時間に依
存した音速c(x,y,z,t)を用いた積分のうちの
受波器の初期位置付近から該受波器の移動後の位置まで
の積分との差よりも、式(78)の第3項の積分と第4
項の積分の一部、即ち、受波器の基準位置v[XR]
から該受波器の基準位置v[XR]における音線経路
Γstkの接線と該接線に垂直で受波器の移動後の位置v
[XR]を含む平面との交点に至る直線経路ΓmRkに沿
って求められる一定な音速cRを用いた積分と、音線
経路Γkに沿って求められる位置と時間に依存した音
速c(x,y,z,t)を用いた積分のうちの受波器の
基準位置v[XR]付近から受波器の移動後の位置ま
での積分との差の方が小さくなる。
【0045】以上のように、本実施例によれば、送受波
器の初期位置v[XS],v[XR]の他に該送受
波器の基準位置v[XS],v[XR]を設けてい
るので、音響信号の観測が行われた時点の送受波器位置
に最も近い基準位置を選択して音波伝搬時間の変動の大
きさを求めることにより、送受波器の初期位置v[X
S],v[XR]からのずれによって生ずる音波伝搬
時間の実際の変動の大きさUkと該送受波器の位置の
ずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大きさBkと
の差Vkよりも、該送受波器の基準位置v[X
S],v[XR]からのずれによって生ずる音波伝
搬時間の実際の変動の大きさUnmkと該送受波器の位置
のずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大きさBnm
kとの差Vnmkの方が小さくなる。
【0046】尚、本発明は上記実施例に限定されず、種
々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次
のようなものがある。 (a) 実施例では、海底に設置したアンカーから浮力
材を取り付けた送受波器までをケーブルで接続し、該送
受波器を海中に浮遊させる設置方法に適用した例を説明
したが、受信データを測定した時点での送受波器の位置
を観測すれば、錨を下ろして停泊した船舶から送波器又
は受波器を吊り下げるといった設置方法にも適用可能で
ある。 (b) 実施例では,観測海域に送受波器をそれぞれ一
器ずつ設置するシステムに適用した例を説明したが、設
置された複数の送受波器の中から一器ずつを選び出して
実施例の方法を順に適用し、全ての送受波器の組み合わ
せについて処理を実行するようにしてもよい。
【0047】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、送波器及び受波器の初期位置の他に該送波器及び
受波器の各基準位置をそれぞれ設け、音響信号の観測が
行われた時点の該送波器及び受波器の位置に最も近い基
準位置をそれぞれ選択して音波伝搬時間の変動の大きさ
を求めるようにしたので、該送波器及び受波器の初期位
置からのずれによって生ずる音波伝搬時間の実際の変動
の大きさと該送波器及び受波器の位置のずれによって生
ずる音波伝搬時間の変動の大きさとの差よりも、該送波
器及び受波器の基準位置からのずれによって生ずる音波
伝搬時間の実際の変動の大きさと該送波器及び受波器の
位置のずれによって生ずる音波伝搬時間の変動の大きさ
との差の方を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の音波伝搬時間変動の補正方法
を実施するための補正システムの構成図である。
【図2】送受波器の位置のずれを示す図である。
【図3】送波器から受波器への方位と距離の定義を示す
図である。
【図4】送受波器の周囲の音線と等位相線を示す図であ
る。
【図5】海洋音響トモグラフィの処理フローチャートで
ある。
【図6】図1のフローチャートである。
【符号の説明】
101 観測データメモリ 102 音速場データメモリ 103 基準位置データメモリ 104 固有音線データメモリ 105 測定データメモリ 106 補正データメモリ 110 データ入出力部 120 演算処理部 S21 データ書き込み処理 S22 音速場の生成処理 S23 基準位置の設定処理 S24 固有音線計算処理 S25 測定データ取り込み処理 S26 基準位置の選択処理 S27 音線同定処理 S28 誤差の補正処理 S29 データの読み出し処理

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海中に配置された送波器が発生した音波
    を該海中に配置された受波器が受波することにより該海
    中の音波伝搬時間を求める海洋音響トモグラフィ・シス
    テムに用いられ、該海中の音波伝搬時間の測定値の誤差
    を補正するための音波伝搬時間測定値の補正方法におい
    て、 前記送波器及び受波器が設置された海中の音速を求める
    ために必要な海水のパラメータを観測データメモリに書
    き込むデータ書き込み処理と、 前記送波器及び受波器の全ての位置において音速を知る
    ことのできる領域である音速場を設定し、前記観測デー
    タメモリに書き込まれたデータを用いて該音速場に対応
    したデータを音速場データメモリに書き込む音速場の生
    成処理と、 前記送波器及び受波器の位置のずれの範囲内で該送波器
    及び受波器の位置のずれの大きさ及び該位置のずれによ
    って生ずる音波伝搬時間の変動の大きさを求める際の該
    送波器の1つ又は複数の基準位置及び該受波器の1つ又
    は複数の基準位置をそれぞれ設定し、該各基準位置を基
    準位置データメモリに書き込む基準位置の設定処理と、 前記送波器及び受波器の位置と海中の音速とによって決
    まる音波の伝搬経路である複数の音線経路について、音
    波伝搬時間、該送波器の前記各基準位置における音波の
    放射角度、及び該受波器の前記各基準位置における音波
    の受波角度を求めて固有音線データメモリに書き込む固
    有音線計算処理と、 測定された前記受波器が受信した受信データ及び該受信
    データを測定した時点での前記送波器及び受波器の位置
    のデータを測定データメモリに取り込む測定データ取り
    込み処理と、 前記送波器及び受波器の観測時の位置と該送波器及び受
    波器の各基準位置の間の各距離をそれぞれ求め、該各距
    離のうちの最も小さい値を選択して該送波器及び受波器
    の観測時の位置に最も近い基準位置とする基準位置の選
    択処理と、 測定された前記受波器が受信した受信データ中の信号強
    度のピークにおける各音波伝搬時間に、前記送波器の観
    測時の位置に最も近い基準位置から前記受波器の観測時
    の位置に最も近い基準位置に至る音線についての前記固
    有音線計算処理によって得られた各音波伝搬時間データ
    を対応付ける音線同定処理と、 前記測定データメモリから前記受信データを測定した時
    点での前記送波器及び受波器の位置のデータと該位置に
    最も近い基準位置及び該受信データ中の各ピーク位置で
    の音波伝搬時間データの全体を読み出し、次に前記基準
    位置データメモリから該送波器の位置に最も近い基準位
    置と該受波器の位置に最も近い基準位置を読み出し、更
    に前記音速場データメモリから該送波器の位置に最も近
    い基準位置と該受波器の位置に最も近い基準位置におけ
    る音速を読み出し、該各ピーク位置での音波伝搬時間デ
    ータから該送波器及び受波器の位置のずれによる誤差及
    び該誤差以外の誤差の総和を除いて音波伝搬時間を求め
    る誤差の補正処理と、 前記測定データメモリから前記受信データを測定した時
    点での前記送波器及び受波器の位置のデータと該位置に
    最も近い基準位置及び該受信データ中の各ピーク位置で
    の音波伝搬時間データの全体を読み出し、更に前記固有
    音線データメモリから該送波器の位置に最も近い基準位
    置から該受波器の位置に最も近い基準位置に至る音線経
    路についての前記固有音線計算によって得られた音波伝
    搬時間データの全体を読み出すことによって伝搬時間差
    の算出を行うデータの読み出し処理と、 新たな音波が観測される毎に前記測定データの取り込み
    処理から前記データの読み出し処理までを繰り返し行
    い、観測時の前記送波器及び受波器の位置に最も近い基
    準位置を選択する繰り返し処理とを、 行うことを特徴とする音波伝搬時間測定値の補正方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010237041A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Yamaha Corp 形状算出装置
KR20150068237A (ko) * 2013-12-11 2015-06-19 광주과학기술원 수중위치 추정 시스템 및 방법

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