JPH0829067B2 - 血粉の殺菌方法 - Google Patents

血粉の殺菌方法

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JPH0829067B2
JPH0829067B2 JP61309381A JP30938186A JPH0829067B2 JP H0829067 B2 JPH0829067 B2 JP H0829067B2 JP 61309381 A JP61309381 A JP 61309381A JP 30938186 A JP30938186 A JP 30938186A JP H0829067 B2 JPH0829067 B2 JP H0829067B2
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【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、動物の血液から低温乾燥によって得られ
る乾燥血漿、乾燥血清、乾燥血球あるいは乾燥全血等の
未変性乾燥血液成分から、掻羽根型間接加熱式の殺菌機
を使用して食品または食品、医薬等の加工材料としての
諸特性を損なうことなく加熱殺菌された血粉を得ること
のできる血粉の殺菌方法に関するものである。
「従来の技術および問題点」 周知のように、牛、豚等の屠殺の血液は、高蛋白質、
低脂肪であり、しかも、蛋白質中に含まれるアミノ酸構
成も栄養的に優れたものである。
しかし、このような屠殺動物の血液の利用状況を見る
と、ごく一部が煮沸凝固等の簡単な処理法で低品質のも
のが製造され、肥料用または飼料用として利用されてい
るに過ぎず、大部分は未利用のまま排水処理され、排水
処理上の大きな負担になっているのが現状である。
そこで、近年、畜産動物の副生物質の有効利用と、屠
殺場の近代化の立場から血液成分の優れた栄養価値の他
に血液成分の持つ優れた食品等の加工上の諸物性を生か
す血液処理方法として、血液を遠心分離機にかけて血液
を血球と血漿に分離するか、あるいは血液からフィブリ
ンを取り除き、その血液を遠心分離機にかけて血球と血
清とに分離して、分離したそれぞれをスプレー乾燥,凍
結乾燥,真空乾燥等の低温乾燥によって蛋白を変性させ
ずに乾燥製品である血粉を得る方法が提供されている。
この方法で得た血粉の内、例えば、血漿または血清は、
淡黄色をしており、またゲル強度が乾燥血粉の状態で、
例えば、豚血漿では30g/cm2以上、牛血漿では500g/cm2
以上あり、本来、粘弾性、こし、歯ごたえ等が重要視さ
れる食品の添加剤となり得る。例えば、代用卵白などと
して有効利用が可能である。
しかし、前記従来の方法では、濃縮乾燥温度が低いた
めに、温度による殺菌は考えられず、得られる血漿また
は血清製品には、おおよそ1g当たり105〜107ヶ位の多量
の一般生菌数があるケースが多く、食品としての安全性
に問題があった。血粉を食品または食品等の加工材料と
する場合、最も注意を要するのは、微生物による汚染で
ある。そのためには、血粉の原料を得る採血工程で衛生
的な採血方法を採用する必要があり、また、それ以後の
分離乾燥工程においても、外部からの微生物の混入や工
程内での微生物の増殖を極力抑えることが大切である。
しかし、製造工程上で、これらの微生物を完全に抑える
ことが困難である。
そこで、得られた血粉の殺菌が重要となるが、従来、
血粉の殺菌の方法としては、一つにはエチレンオキサイ
ド、プロピレンオキサイド等によるガス殺菌が知られて
いる。この殺菌法は、蛋白質の変性も少なく、血粉の溶
解度やゲル強度の低下を起こすことなく、殺菌が可能で
あるが、使用ガスの残留毒性の問題が未解決である。そ
の他の殺菌法としては、加熱殺菌法がある。この殺菌法
は、衛生的には優れた殺菌法であるが、蛋白質の熱変性
が起こり、ゲル強度等の諸物性が低下し、血粉の商品価
値の著しい低下の原因となる。
ところで、本願発明に先立って、本出願人は血液また
は血漿等の血液成分から、それらの水溶性(溶解性)
と、熱凝固性を50%を越えて低下させずに殺菌された乾
燥製品を得る方法を提案した(特公昭60-15号)。この
方法は、血液または遠心分離機等によって分離された各
血液成分を低温乾燥し、含水率30重量%以下の乾燥品と
し、それらの乾燥品をそれぞれの含水率に対して80〜16
0℃の温度に加熱、殺菌するものであるが、粘弾性、こ
し、歯ごたえ等が重要視される添加剤としての物性であ
るゲル強度については考慮されていなかった。
ゲル強度は、溶解度(水溶性)や熱凝固性とは異なっ
た現象で、血球は赤褐色をしており、栄養的には血漿や
血清同様に優れた組成のものであり、蛋白質の含量の点
でみると約90%(乾物換算)と血漿や血清の70〜75%に
比較して優れているが、本来ゲル強度を有していない。
また、血漿や血清の乾燥製品を得る際に溶解度や熱凝固
性を維持できても、その乾燥製品を加熱凝固させた物が
ぼろぼろで軟らかいためにゲル強度を測定するのが不可
能になる場合も多い。たとえ、乾燥製品を得る際に溶解
度を80%程度に維持できても、このゲル強度は非常に低
下してしまう。
従って、全血、血球成分ばかりでなく、血漿成分、血
清成分をも含めたすべての種類の血液成分を各々乾燥品
とした各血粉を同等に殺菌する方法としては、処理後の
血粉の水溶性や熱凝固性を損なわないばかりでなく、ゲ
ル強度をも維持できる方法でなければならない。
本発明者らは、上記事情に鑑みて種々検討した結果、
前記の低温乾燥で得られた血漿、血清等の血粉を掻羽根
型の間接加熱機を用いて、その水分を12%以下の条件下
におくとともに、その品温を110℃以下に限定して加熱
するのであれば、そのゲル強度がほとんど低下しないこ
とを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その
目的は、掻羽根型の間接加熱機を利用して、水溶性、熱
凝固性ばかりでなく、ゲル強度の低下をもほとんど生じ
させることなく、血粉の一般生菌、大腸菌等の滅菌(商
業滅菌)を行なうことができる血粉の殺菌方法を提供す
ることにある。
「問題点を解決するための手段」 この発明は、固定状態の容器の内部に回転軸により回
動自在な掻羽根を有し、または回動もしくは揺動可能な
容器の内周に掻羽根が固定されており、前記容器のジャ
ケット等に熱媒を通じて容器内部の被加熱物の加熱を行
なう間接加熱機を使用して行なう血粉の殺菌方法であっ
て、初期水分が3〜12重量%で、20メッシュ以下の未変
性乾燥血液成分を前記間接加熱機の容器中に充填し、前
記掻羽根を揺動角60°以下で揺動するとともに、前記容
器内の換気を連続的または断続的に行ないながら、前記
乾燥血液成分を90〜110℃に加熱することにより、殺菌
された血粉を得ることを特徴とする方法である。
「作用」 上記方法によれば、低温乾燥で得られた乾燥全血、乾
燥血球ばかりでなく、乾燥血漿、乾燥血清をも含めたす
べての種類の未変性乾燥血液成分を、その水溶性や熱凝
固性を損なわないばかりでなく、そのゲル強度をほとん
ど低下させずに充分殺菌することが可能となる。
係る血粉の殺菌において、血粉の内、乾燥血漿、乾燥
血清の殺菌がそのゲル強度を低下させないで、行なえる
条件であるならば、乾燥血球、乾燥全血の殺菌において
必要な血粉の水溶性、熱凝固性の維持も処理条件的に自
動的に確保される。従って、以下の実施例においては、
未変性乾燥血液成分として主に乾燥血漿を挙げて説明す
る。
「実施例」 第4図に示すように、套管状ナイフ等で家畜動物1か
ら衛生的に採血を行なうと同時に抗凝固剤タンク2のク
エン酸ソーダ水溶液等の抗凝固剤を直ちに血液に対して
例えばクエン酸ソーダとして0.5重量%程度混合して血
液の凝固を防止する。採血された血液は、ストレーナー
3を通して混入した肉片、脂肪片、毛などの夾雑物を除
去した後に、一旦検査タンク4に貯留する。検査タンク
4に貯留している間に屠体の検査等で病気の屠畜等の有
無を調べた後に、衛生的であると確認された血液のみを
次の熱交換器5を通し、冷却したあと、遠心分離機6に
送る。この高速連続式の遠心分離機6で分離を行ない、
軽液部分を血漿液、重液部分を血球液として回収する。
得られた血漿液を次の血漿真空低温乾燥機7に送り、こ
こで血漿液の濃度が薄い段階では品温を好ましくは40℃
以下に、濃度が50%以上と高くなった段階でも品温を50
℃以下に保ちながら低温で乾燥を行ない、血漿液中の蛋
白質が熱変性しないように留意する。真空低温乾燥機7
での乾燥の程度は、次の工程の殺菌段階を考慮に入れて
乾燥の度合を調整し、適切な水分の段階で乾燥を止め
る。乾燥した血漿粉は、粉砕機8で通常60メッシュアン
ダー位に粉砕を行なう。
なお、乾燥血漿に代えて乾燥血清を得る場合は、血液
から捕捉素子等を血液中で緩やかにかきまぜて血液中の
フィブリンをまつわりつけて取り除いた後、遠心分離機
で血清液と血球液に分離するか、遠心分離機で分離され
た血漿液をしばらく貯留槽に蓄え、フィブリンを凝固沈
澱させ、凝固したフィブリンを篩別、濾別またはストレ
ーナ等を用いて取り除いて血清液を得て、この血清液を
前記と同様に真空低温乾燥機で乾燥すればよい。
本発明を効果的に実施するためには、次工程である殺
菌工程以前の前記採血工程、分離工程、乾燥工程で蛋白
質を含む食品等の取り扱いに関する常識的な注意事項が
重量である。すなわち、採血の際に出来るだけ微生物が
血液に混入しないように注意を払うこと、採血後、冷却
を充分に行ない、好ましくは4℃以下とし、採血後の血
液中の微生物が増殖しないようにすることが大切であ
る。また、分離工程では遠心分離機で血液の温度が上が
るので、分離液を貯留する貯留槽(図示せず)では、再
度4℃以下に冷却するのが好ましい。乾燥工程では、水
分を蒸発させるため、血漿液、血清液ともに加熱の必要
があるが、この際、品温を50℃以下、好ましくは40℃以
下に保ち、蛋白質が変性を起こすような温度に上がるこ
とは極力避ける必要がある。
以上の説明のようにして製造した乾燥血漿、乾燥血清
は、乾燥全血を含めて本発明の未変性乾燥血液成分(以
下、単に乾燥血液成分という)に当たるものであり、と
もに溶解度として90%以上であり、血漿粉ゲル強度は、
牛の場合で500g/cm2以上、豚の場合で300g/cm2以上と、
屠畜の種類により若干異なるが、高い値を有し、物性の
上では非常に優れた中間製品である。しかし、微生物数
の面で見ると、おおよそ血粉1g当たり105〜107ヶ位の多
量の微生物が含まれているケースが多い。
つづいて、上記乾燥血漿および乾燥血清は、間接加熱
式殺菌機(間接加熱機)9に入れられる。ここでいう加
熱殺菌とは、食品用素材として使用して支障のない程度
に微生物を滅菌する商業滅菌(Commercial Sterilizato
in)を含むものである。すなわち、血粉の物性を余り低
下させることなく、有害殺菌の指標である大腸菌群の数
を減じる方法を含み、好ましくは100g当たり量確数とし
て30ケ以下にする方法である。
上記乾燥血漿および乾燥血漿の加熱殺菌の時に起こる
重要な物性の変化としては前記ゲル強度がある。食品お
よび食品加工の上から血漿および血清の価値を上げるに
はゲル強度が重要な物性である。
ここで、このゲル強度の測定法の概要を下記に示す。
まず、血粉を蒸留水に溶解して固形分10%の溶液に調
整する。これを直径30mmの塩化ビニリデンチューブに充
填し、このチューブの上部から真空ポンプで脱気を行な
う。次にこのチューブを密閉し、温度90℃の湯浴中で30
分間加熱凝固させる。加熱凝固した後に、15℃に冷却
し、塩化ビニリデンチューブ剥ぎ、30mmの長さに切った
円筒型の試料をレオメーターを用いて破壊点を測定す
る。なお、後述の実施例では、不動工業(株)製NRM−2
002J、アダプタとして直径1.5cmの円板タイプ(粘弾性
用)のプランジャーを使用した。一試料につき、5回測
定を行ない、最高値と最低値を除き、3つの測定値の平
均値を算出し、下記の計算式でゲル強度を算出する。
なお、上記測定器NRM−2002Jの荷重目盛は、パーセン
ト表示で、100%の時の荷重が切り替え可能となってい
る。従って、上式は次のようにも表示される。
本殺菌工程の技術構成の主な事項としては、加熱殺菌
時の適切な品温、時間の維持および被殺菌物である乾燥
血液成分の初期水分の調整、ならびに使用する間接加熱
式殺菌機に関連して、この殺菌機の昇温用熱媒の温度調
整、殺菌室(容器)内の換気、攪拌等の適切な制御があ
る。以下、これら各事項について詳しく説明する。
(i)殺菌時の品温 殺菌時の品温としては、おおよそ90〜110℃の範囲、
好ましくは、95〜105℃位に維持するのが適切である。
乾燥血液成分中に含まれる微生物数が少ないか、または
含まれる微生物が殺菌しやすい微生物である場合は、90
℃位で、充分に目的を達する場合もあるが、微生物数が
多いか、または殺菌しにくい微生物が多い場合は、品温
を110℃位にする必要がある。品温を高くする程、殺菌
効果は良くなるが、ゲル強度の低下が起こりやすくなる
ので、好ましくは95℃〜105℃位がよい。
品温の維持時間については、バッチ式で行なう場合と
連続式の場合によって異なる。例えば、間接加熱のバッ
チ式では、昇温まで経時的に品温が上昇し、その間も殺
菌の効果があるので、所定の品温に達したら、ただちに
降温してもよいケースがある。このように、殺菌時間に
ついては、あまり正確な規制は難しい。しかし、間接加
熱のバッチ式の場合で、おおよそ殺菌温度に昇温した
後、10分間位行なうとよく、間接加熱の連続式の場合で
は、殺菌機容器内の滞留時間を20分〜60分位で行なうと
よい。
(ii)乾燥血液成分の初期水分 乾燥血液成分の初期水分は、非常に重要である。初期
水分が3重量%未満の低い水分で加熱殺菌を開始する
と、殺菌効果が劣り、初期水分が12重量%を越える水分
で開始すると、殺菌効果は良いが、ゲル強度の低下を起
こし品質が低下する。従って、ゲル強度の低下を起こす
ことなく、効果的な殺菌が実施できる初期水分の範囲
は、3〜12重量%、好ましくは4〜10重量%、さらに好
ましくは5〜6重量%である。
初期水分が3重量%未満の場合には、効果的に殺菌を
行なうためには、噴霧加湿を行ない、さらによく攪拌混
合して均一な加湿処理行なって、所定の水分まで増湿し
た後、加熱殺菌を実施することが好ましい。なお、本明
細書において、水分は次式で示した値である。
(iii)乾燥血液成分の粉砕 ゲル強度を有する血液成分である血漿液や血清液を乾
燥する方法としては、スプレードライヤーまたは攪拌式
の真空乾燥機等が用いられるが、これらを乾燥した状態
の血液(乾燥血液成分)は粒径が不揃いであり、また、
殺菌効果からも乾燥血液成分は、予め20メッシュアンダ
ー好ましくは60メッシュアンダーに粉砕した後に殺菌し
た方がよい。殺菌後に粉砕すると粉砕操作により殺菌後
の血粉が再度微生物により汚染される場合もあり、ま
た、あまり血粉の粒径が大きいと内部への伝熱量が少な
くなって殺菌の効果がよくない場合が起こる。
(iv)殺菌室内の換気 前記間接加熱式の殺菌機においては、殺菌を密閉状態
にして加熱滅菌した場合、乾燥血液成分に含まれる水分
が蒸発し、部分的に湿熱滅菌の状態になり、飽和状態に
近い高温の水蒸気により乾燥血液成分のゲル強度が低下
する恐れがある。従って、殺菌室に適切な量の窒素等の
不活性ガスや空気を送入し、発生した水蒸気を適宜追い
出して、殺菌室内を換気し、ゲル強度の低下を防止する
必要がある。換気する気体の通気量については、装置の
規模や乾燥血液成分の攪拌速度により異なり、一般に小
規模の装置においては、乾燥血液成分当たりの伝熱面積
が大きいため、伝熱が早く、必要な気体の通気量も大き
くなる。
これに反して、規模が大きくなると乾燥血液成分当た
りの伝熱面積が小さく、伝熱が遅くなるので、所要の通
気量は小さくて済む。一例を挙げれば、100〜200g位の
乾燥血液成分を殺菌する場合の必要な通気量は、乾燥血
液成分1g当たり毎分0.1〜0.2Nl程度の通気が必要である
が、30〜40Kgの規模では0.02Nl位の通気で足りる。ま
た、必要通気量は攪拌の速度にも影響される。従って、
必要通気量においては、使用する装置や規模毎に実験に
より確認する必要があるが、乾燥血液成分1g当たり毎分
0.02〜0.2Nlの通気量が好ましい。
(v)加熱媒体の温度 乾燥血液成分の昇温のため殺菌室のジャケットや掻羽
根を取り付けている熱媒コイル等に蒸気や鉱油等の熱媒
体を通す間接加熱においては、加熱媒体の温度が殺菌の
品温より高く、品温と加熱媒体の温度差が大きい程、昇
温は容易であるが、あまり高過ぎると、伝熱面の温度が
高くなり過ぎて、接触面で乾燥血液成分が加熱され、ゲ
ル強度の低下を生じる心配があるので、熱媒体の温度は
充分に検討しなければならない。
(vi)換気流入気体の加熱温度 前記間接加熱式殺菌機の殺菌室を換気するための流入
気体の温度は、室温でも特に支障はないが、予熱した気
体を送入する方が品温上昇のための伝熱面も少なくて済
み、また、加熱媒体の温度を余り高くする必要がない利
点がある。しかし、殺菌温度以上のあまり高い温度にす
ると、直接、被殺菌物である乾燥血液成分と接触するの
で、ゲル強度の低下が生じ、好ましくない。換気流入気
体の予熱温度としては110℃以下が好ましい。また、換
気用通気気体としては、もっとも安価な空気を使用して
もよく。その流入空気は商業滅菌を目的とする場合、特
に殺菌された無菌空気を使用しなくても差し支えない。
(vii)攪拌 乾燥血液成分を全く攪拌しないで殺菌を行なうと、乾
燥血液成分中に蒸気がこもり、ゲル強度の低下の原因と
なるので、必要によって攪拌を行なう。
一般に、攪拌の方法としては、殺菌機内周にに掻羽根
が固定され、この容器全体を回転させる方法と、殺菌容
器内にスクリュー式、パドル式等の掻羽根を入れ、これ
により攪拌する方法がある。さらに、掻羽根を用いる方
法でも掻羽根を被殺菌物(被加熱物)中に50%以上浸漬
させるいわゆるパドル羽根式と、30%程度浸漬させた掻
羽根を設け、この羽根により試料を散布攪拌する掻羽根
式とが知られている。
従来行なわれている殺菌機の容器全体を回転させる方
式や、掻羽根式で、その羽根の浸漬割合(以下、充満率
という)を少なくして、被殺菌物を容器内一面に広げる
方式では、被殺菌物である血粉の粒度が通常細く、かつ
血粉の見掛け比重が軽いため、通風により乾燥血液成分
が排気側に飛散してしまう。そのため、飛散防止対策が
必要となる。また、容器全体を回転させるような方式
は、攪拌の効果としては良好であるが、乾燥血液成分が
容器内に飛散し、通風の際にさらに乾燥血液成分の飛散
が多くなる。そのため、この方式を採用する場合、十分
な集塵設備を設置し、乾燥血液成分を回収する必要があ
った。
これらを解決するために、本発明では、殺菌容器は固
定しておき、この容器の内部に掻羽根を有する間接加熱
式殺菌機または回動もしくは揺動可能な容器の内周にそ
の回動もしくは揺動方向にほぼ直交して掻羽根が固定さ
れた間接加熱式殺菌機を使用し、掻羽根を全回転させず
に、垂直面に対して左右に60°以内で回動(揺動)する
ように設定して加熱殺菌を行なうようにしている。この
ように、本発明では、掻羽根の左右回転角度(揺動角)
を60°以内に設定して乾燥血液成分の撹拌を行なうこと
によって乾燥血液成分の飛散を防ぐようにしている。
ここで、上記に概略を示した本願発明に係る血粉の殺
菌方法に用いて好適な掻羽根型の間接加熱式殺菌機の一
具体例の構成を第1図ないし第3図により説明する。
第1図中、符号20は円筒状の殺菌容器を示すものであ
り、この容器20の中心にはモータ21によって回動、回転
自在とされた中空回転軸22が貫通するように容器20の両
側部において軸受22a、22bにより支持されて載置されて
いる。そして、この容器20の上部一側方には血粉投入口
20aが形成され、底部に血粉吐出口20bが形成されてい
る。さらに、この容器20の他側面上部には換気空気入口
20cが形成され、上部中央に換気空気出口20dが形成され
ている。そして、容器20の一側面の下部には温度計取付
口20eが形成されている。
上記中空回転軸22の内部には、第2図に示すように、
容器20内に熱媒を供給するための熱媒供給管22cと、熱
媒の戻り配管22dとが二重管構造で形成されている。前
記熱媒供給管22cには、第1図に示すように、容器20の
一側部に熱媒供給ロータリージョイント22eが取り付け
られ、前記熱媒戻り配管22dには戻りの熱媒を取り出す
熱媒戻りロータリージョイント22fが取り付けられてい
る。また、前記容器20内の中空回転軸22の外周には、第
2図および第3図に示すように、熱媒コイル23が放射状
および同心円状に配置、連結され、同回転軸22には、こ
れら熱媒コイル23を回転軸22に取り付けるための支持ア
ーム24が固定されるとともに、前記熱媒コイル23の同心
円状部分23a、23bには等間隔に掻羽根25a、25bが取り付
けられている。前記熱媒コイル23は、中空構造であり、
上記したように、中空回転軸22を中心とした同心円状部
分23a、23bと、これら同心円状部分23a、23bを回転軸22
に連結している多数の放射状部分23cとから構成されて
いる。前記掻羽根25a,25bは、第3図に示すように、半
径方向から角度β=20°傾けられて取り付けられてい
る。これは、この掻羽根25a,25bが最大に揺動(最大揺
動角度=60°)された場合でも、この掻羽根25a,25b自
体が傾斜していて、水平にはならず、この掻羽根25a,25
bにすくい上げられた乾燥血液成分がこの掻羽根25a,25b
から容易に落ちるようにするためである。さらに、これ
ら掻羽根25a、25bのうち外側の掻羽根25aは、内側の掻
羽根25bと異なり、殺菌終了後に中央下部に乾燥血液成
分を集め排出するために回転軸線に対して角度γ=4°
傾けて形成されている。なお、乾燥血液成分を排出する
場合は、回転軸は揺動ではなく一方向に回転させる。
また、容器20の外壁(ジャケット)は、二重構造にな
っており、この容器20の各側面および外周面の要所には
熱媒導入口26aおよび熱媒排出口26bが設けられており、
ジャケットを加熱できるように構成されている。
上記構成において、中空回転軸22中には熱媒供給ロー
タリージョイント22e−熱媒供給管22cを介して外部から
加温オイル、加熱蒸気等の熱媒が導入され、この回転軸
22中の熱媒供給管22cから全熱媒コイル23中を循環して
再び中空回転軸22中の熱媒戻り配管22dに戻り、熱媒戻
りロータリージョイント22fを介して外部へ流れでるよ
うに構成されている。また、このような熱媒コイル23お
よび掻羽根25が取り付けられている中空回転軸22は回
転、回動自在であり、本発明では所定角度(垂直面を中
心として左右に60°以内)回動させて使用される。
この装置において、乾燥血液成分(血粉)の殺菌は、
乾燥血液成分を血粉投入口20aから容器20内に投入し、
上記のように熱媒を中空回転軸22および熱媒コイル23中
を循環させながら回転軸22を所定角度回転させることに
より掻羽根25で容器20内の乾燥血液成分を散布し、同時
に加熱して行なう。この時、換気空気入口20cから容器2
0内に空気を導入するとともに、換気空気出口20dから排
気して加熱に伴って乾燥血液成分より発生した水蒸気を
適宜追い出して高温の水蒸気により乾燥血液成分のゲル
強度が低下してしまうのを防止する。このようにして殺
菌処理が施された乾燥血液成分は、容器20底部の吐出口
20bから取り出し、次工程に送る。
以上のような技術的な要素に従って、乾燥血液成分の
加熱殺菌を行なうことにより商業滅菌の目的を達するこ
とが可能であるとともに、ゲル強度の低下を極力抑制
し、優れた食品ないし食品等の加工用原料として付加価
値の高い血粉の製造が可能となる。
このようにして殺菌された血粉は、必要により袋詰機
10で袋詰めされる。なお、第4図中、符号11、12、13、
14は、それぞれ血球液を対象とした真空低温乾燥機、粉
砕機、間接加熱式殺菌機(間接加熱機)袋詰機を示すも
のであり、前記血漿液について説明した諸条件と同じ条
件で乾燥血球の製造および加熱殺菌等が行われる。次
に、前記実施例の効果を確認するために行なった実験例
を説明する。
この実験に用いた装置は、周知のロータリーエバポレ
ータ(ヤマト科学株式会社製RE−45型)を改造したもの
である。この実験装置の概略構成を第5図に示した。図
中符号30は図示しないコンプレッサーからの圧縮空気を
貯える圧縮空気貯槽、31は圧力計、32は空気入口温度
計、33は空気流量計、34は空気送入用連結ゴム管、35は
加温用油浴、36は加温用熱媒、37は試料、38はナス型フ
ラスコ、39は棒状温度計、40は空気送入管、41は空気排
出管、42はナス型フラスコ38をロータリージョイント46
を介して回転させつつ支承する軸受要部、43は冷却管、
44はゴム栓、45は排気用連結ゴム管である。このロータ
リーエバポレータは真空下でナス形フラスコ38中の試料
37を真空下で濃縮または乾燥するのに用いるのが通常で
あるが、本実験の場合は、ゴム栓44の部分にあった切り
替えコックを取り外し、このゴム栓44を取り付け、さら
にこのゴム栓44に棒状温度計39と空気送入管40と空気排
気管41とを取り付けたものである。なお、棒状温度計39
の温感部は、ナス型フラスコ38の試料37内部に挿入され
るようにし、また空気送入管40の先端は試料37の表面に
空気が広く分配されるように拡大した。さらに、空気排
気管41も同様にナス型フラスコ38の内部に達し、先端部
は試料37から発生した湿気を含む空気が集まり易いよう
に広げた構造にした。ナス型フラスコ38の内部での空気
送入管40と空気排気管41の先端部設置位置は、空気送入
管40の方が試料37の表面に近く、空気排気管41の先端部
は、試料37の表面から遠くし、送入空気により飛散する
試料がなくなるべく空気排出管41から流出しないように
工夫した。
以下に本装置の運転方法の概要を説明する。
まず、ナス型フラスコ38に適量の試料(乾燥血液成
分)37を採取する。加温油浴の温度を予め一定の温度に
昇温する。圧縮空気を圧縮空気貯留槽30に送り、圧力と
温度を測定する。ナス型フラスコ38をロータリージョイ
ント46に取り付け、油浴中で回転させる。空気流量計33
を用い、所定の空気を空気送入管40を通じて送入し、排
気は空気排気管41を通じて排出される。試料37の品温
は、試料37中に挿入された棒状温度計39で測定される。
送入した空気の量は、測定した温度と圧力により標準状
態(1気圧、0℃)に補正して表示した。また、ゲル強
度の測定は、前記した方法によった。
(実験例1) 加熱殺菌した場合の乾燥血液成分の品温とゲル強度の
影響を確認するため、牛の血液(採血時、抗凝固剤とし
てクエン酸ソーダを血液に対して0.5重量%添加したも
の)を4000rpmで、20分間遠沈管型遠心分離機にかけ、
分離した血漿液を品温を40℃以下に保って真空乾燥し、
得た乾燥血漿を対象に前記実験装置(第5図)で試験し
た。
実験条件を下記に示す。
・使用フラスコ・・・1容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・牛乾燥血漿(水分重量7%、ゲル強度
584g/cm2、粒度60メッシュアンダー) ・試料充填量・・・120g ・殺菌温度・・・80、90、95、100、105、110、120℃
(品温) ・殺菌時間・・・10分 ・換気空気(無殺菌)量および温度・・・0.15Nl/g・mi
n、20℃ ・回転数・・・6r.p.m. ・分析項目・・・水分、ゲル強度、一般生菌数、大腸菌
群 実験結果を次の表1に示す。この表の結果より牛乾燥
血漿の場合で、90〜110℃の範囲までの品温が適切であ
ることが判る。なお、前記牛血からフィブリンを除いて
遠心分離を行ない、同様に真空乾燥して得た牛乾燥血清
を対象に同様な試験を行なった結果、血漿の場合とほぼ
同様な結果であった。また、豚乾燥血漿粉および豚乾燥
血清粉についてもほぼ同様の結果が得られた。
(実験例2) ゲル強度を低下させずに加熱殺菌するためには、乾燥
血液成分の加熱殺菌前の初期水分が大切である。
豚血漿粉および血清粉を用いて初期水分の加熱殺菌に
対する影響を調べた実験の結果を以下に示す。実験には
第5図に示した実験装置を用いた。まず、豚の血液(採
血時、抗凝固剤としてクエン酸ソーダを血液に対して0.
5重量%添加したもの)を4000r.p.m.、20分間遠心分離
機にかけ、分離した血漿液を品温50℃以下で真空乾燥
し、得た豚乾燥血漿を用いて実験を行なった。実験条件
を下記に示す。
・使用フラスコ・・・1容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・豚乾燥血漿[初期水分14、12、10、
8、6、4、3、2重量%、粒度60メッシュアンダー] ・試料充填量・・・120g ・殺菌温度・・・100℃(品温) ・殺菌時間・・・10分 ・換気空気(無殺菌)量および温度・・・0.15Nl/g・mi
n、20℃ ・回転数・・・6r.p.m. ・分析項目・・・ゲル強度、一般生菌数、大腸菌群 なお、豚乾燥血漿は、水分7.5重量%、ゲル強度351g/
cm2であったので、実験に使用する8〜14重量%水分の
乾燥血漿は、無菌水を加湿し、また6重量%以下の水分
試料については、試料容器を予め滅菌した真空乾燥機を
用いて乾燥して調整した。実験結果を下記表2に示す。
上表に示したように初期水分が2重量%以下になると
品質は良好であるが、一般生菌数の殺菌効果が劣る。ま
た、水分12重量%以上では殺菌効果は良好であるが、ゲ
ル強度は低下する。殺菌温度や通風量、回転数等の殺菌
条件により若干差異があるが、初期水分は3〜12重量%
の範囲を保つべきである。
前記抗凝固剤を添加した豚血液からフィブリンを除い
て遠心分離を行なって同様に真空乾燥で得た豚乾燥血清
を対象に上記同様の実験を行なった。その結果を次の表
3に示す。実験条件は豚乾燥血漿の場合と同一である。
上表に示したように豚乾燥血清についても豚乾燥血漿
の場合とほぼ同様な傾向であった。実施例1の牛乾燥血
漿、血清についても同様な実験を行なったが、同様な結
果が得られた。
加熱殺菌における傾向として初期水分が少なすぎる
と、品質低下への影響は少ないが、目的の殺菌効果が劣
る。また、初期水分が多すぎると、殺菌効果は良好であ
るが、ゲル強度の低下が大きくなり、商品価値が低下す
る。初期水分は3〜12重量%、好ましくは4〜1重量0
%、さらに好ましくは5〜6重量%である。
(実験例3) 乾燥血漿の粒度の違いによる殺菌効果の影響について
上記実験例2と同様の方法で得た水分6.7重量%、ゲル
強度374g/cm2の豚乾燥血漿について、粒度をフィルタで
分け、各粒度について前記実験装置(第2図)を用いて
実験した。
実験条件を下記に示す。
・使用フラスコ・・・1容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・豚乾燥血漿(水分6.7重量%、ゲル強
度374g/cm2) ・粒度・・・4メッシュアンダー20メッシュオン、20メ
ッシュアンダー60メッシュオン、60メッシュアンダー ・試料充填量・・・120g ・殺菌温度・・・105℃ ・殺菌時間・・・10分 ・換気空気(無殺菌)量および温度・・・0.15Nl/g・mi
n、20℃ ・回転数・・・6r.p.m. ・分析項目・・・ゲル強度、一般生菌数 実験結果を下記表4に示す。
上表に示したように、粉砕の粒度の細かい方が殺菌効
果は優れている。粒径を20メッシュ以下、好ましくは60
メッシュ以下にした後に殺菌する方がよい。
(実験例4) 間接加熱式の加熱殺菌において、殺菌室の換気を行な
う場合と、全く換気を行なわない場合との殺菌効果およ
び乾燥血漿のゲル強度の比較を行なった。実験例1と同
様な方法で得た水分7.0重量%、ゲル強度579g/cm2の牛
乾燥血漿を前記実験装置(第5図)を用いて行なった。
実験条件を下記に示す。
・使用フラスコ・・・100ml容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・牛乾燥血漿(水分7.0重量%、粒度60
メッシュアンダー) ・試料充填量・・・15g ・殺菌温度・・・105℃(品温) ・殺菌時間・・・10分 ・[換気空気(無殺菌)量および温度]・・・0.15Nl/g
・min、20℃ ・回転数・・・6r.p.m. ・分析項目・・・ゲル強度、一般生菌数 実験結果を次の表5に示す。
上表の実験結果から明らかなように、間接加熱式の加
熱殺菌における換気、無換気ともに一般生菌、大腸菌の
殺菌効果は良好であった。耐熱芽胞菌は殺菌前の試料か
ら陰性であった。しかし、ゲル強度については、換気の
場合、低下が少なく、ほぼ製品の品質目標値を維持でき
ているが、換気しない場合は、著しいゲル強度の劣化を
生じている。
同様な条件で中の乾燥血清についての実験を行なった
が、ほぼ同様な結果を得た。乾燥血漿、乾燥血清ともに
換気を行なうことにより加熱殺菌によるゲル強度の低下
を抑え、製品品質の目標値を維持することが可能であっ
た。なお、耐熱菌については、一般に加熱殺菌の効果が
少ないとされているが、新鮮な血液を用い、衛生的な前
処理を行なうことにより、乾燥血粉の段階でほとんど目
標値以下の値が得られることが確認されており、本実験
でも殺菌前の乾燥血漿の段階で300ケ/g以下であり、陰
性であった。
(実験例5) 間接加熱殺菌において必要な殺菌室内の換気を行なう
気体の温度の影響について、実験例2と同様の方法で得
た水分6.7重量%、ゲル強度385g/cm2、60メッシュアン
ダーの豚乾燥血漿を用いて、前記実験装置(第5図)で
実験を行なった。その結果、80〜120℃の加熱空気を用
いることにより目的の品温に到達するのに10〜20分を要
していたものが、5分以内に短縮された。
しかし、加熱空気の温度を余り高くすると、品質への
影響が生じるので、品温と同様に110℃以下にすること
が好ましい。加熱空気温度のゲル強度に対する影響の実
験結果を次の表6に示す。
なお、加熱殺菌中、乾燥血漿の品温は100℃に昇温
後、その温度を10分間保った後、降温した。
従って、間接加熱式の加熱殺菌における殺菌室への送
風空気は、常温でも支障はないが、予熱した空気を送る
方が昇温に要する時間が少なく、また、熱媒の温度も低
くて済む。
上記実験の条件を下記に示す。
・使用フラスコ・・・1容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・豚乾燥血漿(水分6.7重量%、粒度60
メッシュアンダー) ・試料充填量・・・150g ・殺菌温度・・・100℃(品温) ・殺菌時間・・・10分 ・換気空気(無殺菌)量・・・0.15Nl/g・min ・換気空気温度・・・80、90、100、110、120℃ ・回転数・・・6r.p.m. (実験例6) 加熱殺菌における攪拌の影響を調べるため、前記実験
例2と同様の方法で得た水分6.7重量%、ゲル強度385g/
cm2の豚乾燥血漿を用いて前記実験装置(第5図)で実
験した。
実験条件を下記に示す。
・殺菌温度・・・100℃(品温) ・使用フラスコ・・・1容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・豚乾燥血漿(水分6.7重量%、粒度60
メッシュアンダー) ・試料充填量・・・120g ・換気空気(無殺菌)量および温度・・・0.16Nl/g・mi
n、20℃ ・回転数・・・0、1、2、5、10、20r.p.m. ・油浴温度・・・120〜125℃ 実験結果を表7に示した。
上表に示したように、回転数は0ではゲル強度が劣化
するが、毎分1回転でも試料が動いていれば、品温の劣
化を防ぐことができる。なお、攪拌が少ない場合は、境
膜部分に過熱が起こり得るので、熱媒温度を幾分低目に
制御した方がよい。
(実験例7) 前記したように、間接加熱式の殺菌を行なうために
は、通風は最も重要な要件である。
装置の大小や、攪拌回転数により、必要な通風量はか
なりの差異がある。
以下、小型の実験装置での実験結果を示す。
実施例1と同様な方法で得た水分6.8重量%、ゲル強
度565g/cm2の牛乾燥血漿を前記実験装置(第5図)を用
いて殺菌した。実験条件を下記に示す。
・殺菌温度・・・105℃(品温) ・使用フラスコ・・・100ml容ヒダ付ナスフラスコ ・試料種類・・・牛乾燥血漿(水分6.8重量%、粒度60
メッシュアンダー) ・試料充填量・・・15g ・換気空気通風量・・・(1)0.5Nl/min、(2)1.0Nl
/min、(3)1.5Nl/min、(4)2.5Nl/min、 ・換気空気温度・・・105℃ ・殺菌時間・・・10分 ・回転数・・・6r.p.m. ・油浴温度・・・125℃ ・分析項目・・・水分、ゲル強度 実験結果を表8に示した。この表に示すように、ゲル
強度を500g/cm2以上に保つことができるのは、単位試料
当たりの通風量が0.15Nl/g・min程度以上とした場合で
ある。なお、上記各々について、一般生菌数および大腸
菌群の測定を行なった。殺菌を行なったものについて
は、一般生菌数は、300ヶ/g以下、大腸菌群は陰性であ
った。表8に示した実験結果を基に同様の方法で得た水
分7.0重量%、ゲル強度591g/cm2、粒度60メッシュアン
ダーの牛乾燥血漿で品温100℃と105℃について再実験を
行ない、菌数測定した結果を表9に示した。
なお、通風量と回転数との関係であるが、回転数を下
げた場合、若干換気通風量を増やした方がよく、回転数
を1r.p.m.にした場合、溶解度を90%に維持するには、
おおよそ0.2Nl/g・minの単位試料当たりの通風量が必要
であった。
前記実験装置による実験に続いて、実装置の一例とし
て前記した装置(第1図ないし第3図)により必要通風
量の確認を行なったところ、必要通風量は、ほぼ0.02Nl
/g・min以上であることが判った。豚血清粉、牛血清粉
についても同様な実験結果が得られた。なお、実験装置
と実装置との間には必要通風量の差異があるが、実験装
置は容器が小さく、送入した空気のショートパスが起こ
ることによるものと考えられる。従って、小型の装置で
は、この点に留意し、通風量を多目にとる必要がある。
(実施例8) 第1図ないし第3図に示した掻羽根式の間接加熱式殺
菌機を用いて試料の殺菌を行なう場合の羽の揺動角と試
料の飛散との関係を調べた実験例を以下に示す。
実験条件を下記に示した。
・試料種類・・・豚乾燥血漿(水分6.8重量%) ・試料粒度・・・60メッシュアンダー ・殺菌温度・・・100℃(品温) ・熱媒温度・・・120℃ ・揺動周期・・・6r.p.m. ・揺動角(左右)・・・40°、60°、80°、100° ・換気空気温度・・・90℃ ・換気通風量・・・8Nm3/min ・試料充填量・・・80kg ・殺菌時間・・・10分 試料血漿粉の殺菌前の一般生菌数は3.2×104であり、
殺菌後の一般生菌数は300ヶ/g以下で、揺動角の差異に
伴う溶解度、ゲル強度の差異はほとんど認められなかっ
た。しかし、試料の殺菌時の飛散率は、揺動角60°近く
までは少なかったが、60°を越えると急激に増加した。
これは、揺動角が大きくなると、通風ゾーンにまで試料
が散布されるためと考えられる。
次の表10にこの揺動角と飛散率との関係を示した。
なお、前記実験例において、乾燥血液成分を得るの
に、真空乾燥法を用いたが、これに限らず、スプレー乾
燥法、凍結乾燥法を用いてもよい。また、間接加熱式の
加熱殺菌において、殺菌室内の換気は、断続的に行なっ
てもよく、さらに殺菌室に気体を送風機で送る方式に代
えて、殺菌室内の気体を吸引するようにして換気をおこ
なってもよい。また、乾燥血液成分を製造する真空間接
加熱の乾燥機をその真空手段を換気手段に替えてそのま
ま殺菌機として使用してよいのは勿論である。
以上、説明したように、本発明は、固定状態の容器の
内部に回転軸により回動自在な掻羽根を有し、または回
動もしくは揺動可能な容器の内周に掻羽根が固定されて
おり、前記容器のジャケット等に熱媒を通して容器内部
の被加熱物の加熱を行なう間接加熱機を使用して行なう
血粉の殺菌方法であって、初期水分が3〜12重量%で、
20メッシュ以下の未変性乾燥血液成分を前記間接加熱機
の容器中に充填し、前記掻羽根を揺動角60°以内で揺動
するとともに、前記容器内の換気を連続的または断続的
に行ないながら、前記未変性乾燥血液成分を90〜110℃
に加熱することにより殺菌された血粉を得ることを特徴
とする方法である。
本発明によれば、低温乾燥で得られた乾燥全血、乾燥
血球ばかりでなく、乾燥血漿、乾燥血清をも含めたすべ
ての種類の乾燥血液成分を、その水溶性や熱凝固性を損
なわないばかりでなく、そのゲル強度をほとんど低下さ
せずに効率よく充分殺菌することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第3図は本発明に係る血粉の殺菌方法に用
いて好適な実装置の構成図であり、第1図は装置の側面
図、第2図は装置の殺菌容器内部にある加熱、攪拌部分
の側面断面図、第3図は同加熱、攪拌部分の正断面図、
第4図は血粉の製造工程図、第5図は本発明方法の実験
に用いた実験装置の構成図である。 20……殺菌容器、20a……血粉投入口、20b……血粉吐出
口、20c……換気空気入口、20d……換気空気出口、20e
……温度計取付口、22……中空回転軸、23……熱媒コイ
ル、24……支持アーム、25……掻羽根、26a……熱媒導
入口、26b……熱媒排出口。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永澤 晴彦 東京都大田区蒲田本町1丁目9番3号 株 式会社新潟鉄工所内 (72)発明者 西村 美子 東京都大田区蒲田本町1丁目9番3号 株 式会社新潟鉄工所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固定状態の容器に回転軸により回動自在な
    掻羽根を有し、または回動もしくは揺動可能な容器の内
    周に掻羽根が固定されており、前記容器のジャケット等
    に熱媒を通して容器内部の被加熱物の加熱を行なう掻羽
    根型間接加熱機を使用して行なう血粉の殺菌方法であっ
    て、 初期水分が3〜12重量%で、20メッシュ以下の未変性乾
    燥血液成分を前記間接加熱機の容器中に充填し、前記掻
    羽根を揺動角60°以下で揺動させるとともに、前記容器
    内の換気を連続的または断続的に行ないながら、前記未
    変性乾燥血液成分を90〜110℃に加熱することにより殺
    菌された血粉を得ることを特徴とする血粉の殺菌方法。
  2. 【請求項2】未変性乾燥血液成分がその品温を50℃以下
    に保って血液または血液成分を乾燥したものであること
    を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の血粉の殺菌方
    法。
  3. 【請求項3】未変性乾燥血液成分が60メッシュ以下に粉
    砕されたものであることを特徴とする特許請求の範囲第
    1項記載の血粉の殺菌方法。
  4. 【請求項4】未変性乾燥血液成分が乾燥血漿、乾燥血
    清、乾燥血球または乾燥全血であることを特徴とする特
    許請求の範囲第1項記載の血粉の殺菌方法。
  5. 【請求項5】室内の換気を乾燥血液成分1g当たり0.02〜
    0.2Nl/minの気体を前記容器内に通すことにより行なう
    ことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の血粉の殺
    菌方法。
  6. 【請求項6】容器内の換気を110℃以下に加熱した気体
    を前記容器内に通すことにより行なうことを特徴とする
    特許請求の範囲第1項または第5項記載の血粉の殺菌方
    法。
  7. 【請求項7】換気のために容器内を通す気体が空気であ
    ることを特徴とする特許請求の範囲第1項、第5項また
    は第6項記載の血粉の殺菌方法。
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