JPH08288782A - 弾性表面波素子、その製造方法及び電子機器 - Google Patents

弾性表面波素子、その製造方法及び電子機器

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JPH08288782A
JPH08288782A JP2827296A JP2827296A JPH08288782A JP H08288782 A JPH08288782 A JP H08288782A JP 2827296 A JP2827296 A JP 2827296A JP 2827296 A JP2827296 A JP 2827296A JP H08288782 A JPH08288782 A JP H08288782A
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aluminum
film
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acoustic wave
surface acoustic
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JP2827296A
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Osamu Iwamoto
修 岩本
Yuji Mitsui
雄治 三井
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 α水晶単結晶の、結晶の基本座標軸である電
気軸Xと光軸Zの作る平板を、X軸回りに回転角θが4
度から7度の間で反時計方向に回転してできる平板(以
下Kカット基板と略称)を基板とし、基板上に電極を具
備する弾性表面波素子において、周波数長期安定性を±
3ppm/年以下に向上させる。 【解決手段】 Kカット水晶基板上に、アルミニウム単
結晶膜を、成膜速度を毎秒25オングストローム以下と
いう低レートで、蒸着法・スパッタリング法等により成
膜し、(111)面が配向した単結晶膜を形成し電極と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は弾性表面素子に関
し、特にペイジングシステム、コードレス電話等の移動
体通信装置や、一般無線通信システム、さらに、TV・
VTR、自動車の自動ドアロック装置等の標準発信源や
フィルター等に用いられる弾性表面波素子とその製造方
法及びその弾性表面波素子を備えた電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の弾性表面波素子の電極は、アルミ
ニウムや金等の金属の多結晶構造により構成されてい
た。また、特にアルミニウム膜を用いる場合は、銅・チ
タン・パラジウム等を微量に添加しているが、やはり多
結晶構造であった。また、特開平3−14305、特開
平3−14307、特開平3−14308、特開平3−
14309号公報記載のように、アルミニウム膜を結晶
方位的に一定方向に配向させて用いる方法が提案されて
いる。さらに特開昭55−49014号公報記載のよう
に、電極をほぼ単結晶にする方法が提案されていた。
【0003】これらの従来技術は、弾性表面波素子にお
ける周波数変化を減少させるため、および弾性表面波素
子の耐電力性能を向上させるために開発されている。と
ころで、弾性表面波素子の周波数変化や電力性能の低下
は、素子動作中に発生するアルミニウム電極のマイグレ
ーションにより発生する。この事実は既に1981年に
おけるウルトラソニックシンポジウムにおいて報告され
ている。
【0004】さらに、半導体においても同様にアルミニ
ウムのマイグレーションに起因する断線は、エレクトロ
マイグレーションとして古くから研究されており、19
70年には、エレクトロマイグレーションにはアルミニ
ウムの単結晶膜が非常に優れているという報告がされて
いる。
【0005】そこで本出願人は、弾性表面波素子におけ
る耐マイグレーション性能を向上させるために、特開平
5−199062号公報において水晶基板上に形成する
弾性表面波素子においてアルミニウム電極を単結晶膜と
することを提案し、その製造方法も提案した。
【0006】さて、これらの弾性表面波素子の基板は、
水晶について考えると、STカット水晶基板や、LST
水晶基板が使用されていた。
【0007】他方、弾性表面波素子の安定性向上に関し
て、1994年6月米国FCSおよび1994年9月8
日の日本国電気学会電子回路研究会において、東京工業
大学の大浦宣徳先生および中瀬、山北氏より周波数短期
安定性能が、従来のSTカットより1から2桁優れた水
晶Kカットの論文が公表された。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来技術
は以下のような課題があった。
【0009】まず、多結晶構造のアルミニウム膜では弾
性表面波素子として動作中に弾性表面波により基板表面
に応力が発生し、その発生した応力によりアルミニウム
等の結晶が移動し、その結果電極の応力が変化し、素子
の周波数が大きく変化するという課題を有している。こ
の変化を小さくするためには、銅やその他の金属を微量
に添加する方法があるが、長期的には周波数が変化する
という同じ課題を有している。また、金属の微量添加
は、製造工程においてその組成比を安定に保つことが難
しいという課題を有している。
【0010】さらに、配向したアルミニウム電極におい
ては、筆者らの実験によれば、特定の結晶面が一定方向
に配向していても他の面の配向が乱れている場合はやは
り動作中に応力による結晶粒界移動が生じ、周波数の経
時変化が発生するという課題を有している。例えば、ア
ルミニウムの(200)面、(220)面、(311)
面が配向しておらず、(111)面のみが一定方向に配
向している場合や、(200)面、(111)面等が一
定方向に配向しているが、(220)面の配向が乱れて
いる場合などである。すなわち、ある結晶面が一定方向
に配向しているだけでは、周波数の変化を抑制すること
は困難であるという課題を有している。
【0011】こうした動作中の応力による周波数の経時
変化を小さくするためには、電極を単結晶膜にすること
が有益である。しかしながら従来技術では、特開昭55
−49014号公報記載のようにほぼ単結晶的な膜しか
得られておらず、またこのほぼ単結晶膜を得るためには
分子線エピタキシー法を用いる必要があり、装置が非常
に高価なこと、またこの装置による生産量は非常に少な
い等の課題により、単結晶電極膜を容易に入手できない
という課題を有していた。
【0012】また、特開平5−199062号公報によ
れば33度STカット水晶基板、9.5度LSTカット
水晶基板上にアルミニウム単結晶膜を形成しているが、
前記Kカットについては、アルミニウム電極膜を形成す
る方法が公表されておらず、直ちに周波数長期安定性に
優れた弾性表面波素子を実用化できないという課題があ
った。
【0013】本発明の目的は、弾性表面波素子における
電極用金属膜の内部応力変化をなくし、弾性表面波共振
子のトータルな性能向上にとって不可欠な素子の動作中
の周波数変化を小さくすることであり、特にKカット水
晶基板を用いた弾性表面波素子の周波数長期安定性を±
3ppm/年以下に向上させることである。また、この
弾性表面波素子を容易に製造する方法を提供することに
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の目的の周波数変
化の小さな弾性表面波素子は、α水晶単結晶の、結晶の
基本座標軸である電気軸Xと光軸Zの作る平板を、X軸
回りに回転角θが4度から7度の間で反時計方向に回転
してできる平板を基板とし、基板上に電極を具備する弾
性表面波素子において、電極をアルミニウムまたはアル
ミニウム合金よりなる単結晶膜にすることにより達成さ
れる。
【0015】また、前記アルミニウムまたはアルミニウ
ム合金よりなる単結晶膜の配向が、基板表面に対し(1
11)面が配向していることを特徴とする。
【0016】また、アルミニウム単結晶膜は、単結晶圧
電体基板上に成膜されるが、成膜速度を毎秒25オング
ストローム以下という低レートで成膜することにより、
アルミニウム単結晶膜を蒸着法、スパッタリング法等に
より容易に製造することができる。
【0017】また、前記弾性表面波素子を備えた電子機
器に関する。
【0018】更に、前記製造方法によって製造された弾
性表面波素子を備えた電子機器に関する。
【0019】
【作用】上記のように、弾性表面波素子のアルミニウム
電極は、動作中に基板表面に発生した弾性表面波の振動
によりアルミニウムの結晶が移動し、その結果電極内部
の応力が変化し周波数の変化が生じる。このアルミニウ
ム結晶の移動は、公知技術によればアルミニウム結晶の
結晶粒界の表面自由エネルギーが最小となるように発生
すると考えられている。従って、基本的に粒界の存在し
ない単結晶膜の場合はこの粒界移動が発生せず、その結
果弾性表面波素子の周波数変化を極めて小さくできる。
【0020】また、アルミニウム膜の成膜速度を遅くす
ることにより、安定してアルミニウム単結晶膜を形成す
ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下本発明の好適な例を詳細に説
明する。
【0022】最初に、本実施例に用いた基板・成膜用の
アルミニウムについて説明する。続いて、本実施例にお
ける成膜工程を説明し、そして本実施例により作製され
た金属膜の性質、および金属膜を用いて構成した弾性表
面波素子の周波数変化特性について説明する。
【0023】まず、本実施例に用いた基板は、α水晶単
結晶の結晶の基本座標軸である電気軸Xと光軸Zの作る
平板をX軸回りに回転角θが6.51度だけ反時計方向
に回転してできる基板である。以下この基板を単にKカ
ット水晶基板と呼ぶことにする。この基板は人工的に合
成された単結晶状態の水晶ブロックをブレードソー・ワ
イヤーソー等により切断し、その後両面研磨される。研
磨はラッピングにより所定の厚みに加工され、引き続い
て表面をポリッシュする。ポリッシュは酸化セリウム砥
粒等により、ラッピングにより発生した水晶基板表面の
加工変質層を除去し鏡面に仕上げる工程である。そして
最後に、ポリッシュで発生した水晶基板表面の加工変質
層の除去および応力開放、ならびに後記するような島状
構造に仕上げるエッチング加工を行う。
【0024】エッチング加工は、フッ酸あるいはフッ化
アンモニウムの混合液等のエッチング液に浸すことによ
り、水晶基板表面を0.1ミクロンから2ミクロン程度
エッチングする。
【0025】続いて、アルミニウム単結晶膜の成膜工程
について説明する。成膜に用いたアルミニウムは、純度
が99.999パーセントのもの(以下5Nと呼ぶ)で
ある。本実施例では蒸着法とスパッタリング法により成
膜を行っている。まず、蒸着法によるアルミニウム単結
晶膜の成膜工程について説明する。基板作製工程の終了
したKカット水晶基板をプラネタリと呼ばれる基板保持
治具に取り付け、プラネタリをチャンバと呼ばれる真空
容器に取り付ける。そしてチャンバを真空排気する。チ
ャンバ内の圧力が、ある程度低くなった時点で基板加熱
を始める。本実施例による基板加熱の温度は約摂氏14
0度である。
【0026】この状態で0.5マイクロトリチェリまで
減圧する。この時チャンバ内の水分圧は約0.03マイ
クロトリチェリである。そして、この圧力においてアル
ミニウムの蒸着を始める。成膜速度は毎秒約5オングス
トロームである。また、蒸着中の圧力は約2から4マイ
クロトリチェリである。所定の膜厚に蒸着した後に蒸着
を止めてチャンバ内を室温まで冷却し、基板を取り出し
て蒸着工程を終了する。
【0027】以上がKカット水晶基板上へのアルミニウ
ム膜の蒸着工程の説明である。ただし、蒸着条件はこれ
らに限られることはない。また、基板のカット角度につ
いても6.51度に限られず、4度から7度程度が一般
に弾性表面波素子用として用いられているが、本成膜方
法によれば、回転角θは−5度から25度の範囲まで単
結晶アルミニウム膜が成膜可能である。また、基板加熱
温度は室温(摂氏20度)から摂氏200度まで可能で
ある。また、蒸着前の圧力は5マイクロトリチェリ程度
でもよい。さらに、本実施例では電子線加熱法による蒸
着を行ったが抵抗加熱法でも可能である。蒸着条件は上
記条件以外でも可能である。
【0028】次に、スパッタリング法によるアルミニウ
ム単結晶膜の成膜工程について説明する。スパッタリン
グ装置は平行平板型のマグネトロン方式である。スパッ
タリング電源は直流方式である。まず、チャンバと呼ば
れる真空容器内に基板を取り付け、0.5マイクロトリ
チェリまで真空排気する。基板加熱は本実施例では行わ
ないが基板汚染を除去する目的で加熱しても良い。この
圧力まで減圧した時点でスパッタリング用の不活性ガス
を導入する。不活性ガスは、本実施例ではアルゴンを用
いている。続いて放電を開始する。放電開始時のチャン
バ内の圧力は約6ミリトリチェリである。スパッタリン
グの成膜速度は毎秒5オングストロームである。以上が
スパッタリング法によるアルミニウム単結晶膜の成膜条
件であるが、成膜条件はこれらに限られることはない。
スパッタリング電源として高周波電源を用いることも可
能である。
【0029】さて、上記説明した単結晶アルミニウム膜
は、蒸着法、およびスパッタリング法により簡便に製造
できることが非常に大きな特徴である。このように簡便
に単結晶アルミニウム膜を得ることができた理由は成膜
速度を遅くしたことである。
【0030】従来のアルミニウムの成膜方法では、例え
ば蒸着方法においては、その成膜速度は一般に毎秒30
オングストローム以上の高速成膜であった。また特開平
3−14305号公報記載のように毎秒20オングスト
ローム以上により配向膜が得られている。しかしながら
筆者らの実験によれば、基板の平坦性が向上するにした
がい、アルミニウム膜の結晶性が単結晶から乱れていく
という事実が判明した。これは基板表面に飛来したアル
ミニウム粒子のマイグレーションが、基板の平坦性が向
上するにしたがい大きくなり、その結果規則正しいアル
ミニウム膜の成長が阻害され結晶性が悪くなり、単結晶
膜が得られなくなるものと考えられる。従って、単結晶
膜を得るためには基板表面に飛来するアルミニウム粒子
のエネルギーを小さくすることが重要であると考えられ
る。
【0031】こうした考えに基づき、筆者らはKカット
水晶基板を用い、蒸着速度を毎秒35オングストロー
ム、毎秒25オングストローム、毎秒10オングストロ
ーム、および毎秒5オングストロームの4種類でアルミ
ニウム膜の形成実験を行った。その結果成膜速度毎秒3
5オングストロームでは単結晶膜は得られなかったが、
毎秒25、10、5オングストロームの蒸着膜は単結晶
膜となった。すなわち低速度で成膜することによりアル
ミニウム単結晶膜を得ることができた。また、低速度で
成膜したアルミニウム膜ほど結晶性が優れていた。
【0032】ただし、蒸着速度を制御しても基板表面が
汚染されているとやはり多結晶構造の膜になる。従って
基板表面を清浄な状態に保つことが重要である。
【0033】次に、本実施例により毎秒5オングストロ
ームで作製されたアルミニウム膜と、従来技術により毎
秒35オングストロームで作製されたアルミニウム膜の
評価について説明する。アルミニウム膜の膜厚は各々約
2500オングストロームである。膜の評価はX線回折
装置による回折特性図により行った。基板は本実施例も
従来技術のものと同じ表面粗さを持つKカット水晶基板
である。
【0034】X線回折測定用の試料は、成膜後のKカッ
ト水晶基板を15ミリメートル角の大きさに切断して作
製した。測定は試料を回転して行う標準測定法により行
った。
【0035】図1は、本実施例の蒸着法により作製され
たアルミニウム単結晶膜の標準測定によるX線回折の回
折特性図である。また、図5は従来技術により作製され
たアルミニウム多結晶膜の標準測定によるX線回折の回
折特性図である。本標準測定におけるX線の入射角度は
基板表面に対して約1度である。また管球はCuであ
り、管電圧50KV、管電流100mAで測定した。ま
た、図1・図5の横軸は回折角度であり、単位は度であ
る。縦軸は回折強度である。
【0036】図1と図5を比較すると、図5の従来技術
によるアルミニウム膜は結晶化を示すピークが観察され
ているのに対し、図1の本実施例によるアルミニウム膜
はピークが全く観察されていない。
【0037】上記したように、標準測定では試料を回転
させて測定しているため、試料が多結晶状態の場合、
(111)面が試料表面に対して平行に向いている結晶
や、(200)面が試料表面に対して平行に向いている
結晶等が存在するため、複数の結晶面のピークが観察可
能である。しかし、試料が単結晶状態であり、結晶面が
試料表面に対して一定の角度を持ち、特定の方向に配向
している場合はピークを観察することは不可能である。
図5より、従来技術によるアルミニウム膜は、試料表面
に対して平行な結晶面が4つあること、すなわち(11
1)面が試料に対して平行な結晶、(200)面が試料
に対して平行な結晶、(220)面が試料に対して平行
な結晶、(311)面が試料に対して平行な結晶という
少なくとも4種類の結晶面からなることがわかり、この
意味で図5の従来技術によるアルミニウム膜は多結晶膜
である。これに対し本実施例により得られたアルミニウ
ム膜は図1に示すように結晶化を示すピークが一つも現
れていない。通常結晶化を示すピークが現れない場合は
アモルファス(非晶質)状態か、単結晶状態である。ア
モルファス状態では結晶化ピークは鋭くなく丘のように
裾が広い回折特性図を示す。従って、図1に示す本実施
例で得られたアルミニウム膜の回折特性図とは異なって
おり、本実施例で得られたアルミニウム膜はアモルファ
ス状態ではないといえる。
【0038】本実施例で得られたアルミニウム膜は上記
したように多結晶状態でもなく、アモルファス状態でも
ない。一般に図1に示すように回折角0度から100度
の間で全く回折ピークが現れない場合、アルミニウムに
関して現れるべき4つの面、すなわち(111)面、
(200)面、(220)面、(311)面は、全て各
々試料表面に対し一定の角度を持ち、特定の方向に極め
て正しく配向していると判断できる。さらに、図1の測
定試料は試料のどの部分においても同一である。このよ
うに、任意の結晶面(結晶軸)に着目したとき、試料の
どの部分においてもその向きが同一である結晶質固体は
単結晶と定義されているから、本実施例のアルミニウム
膜は単結晶であると判断できる。
【0039】次に、図1の回折特性を示す本実施例のア
ルミニウム膜の配向状態を調べるため、ロッキングカー
ブ法による測定を行った。
【0040】ロッキングカーブ法とは膜の結晶面が配向
している方向に試料をセットし、かつX線の入射角度を
変化させ、最も回折強度が大きくなる入射角度を探し、
半値幅等の膜の特性を評価する方法である。本測定によ
れば本実施例のアルミニウム膜は(111)面が基板表
面に対し約6.7度の傾きを保ち配向している。また半
値幅は約0.25度であった。
【0041】なお本実施例に用いた基板は、α水晶単結
晶の結晶の基本座標軸である電気軸Xと光軸Zの作る平
板をX軸回りに回転角θが6.51度だけ反時計方向に
回転してできる基板であるため、アルミニウム膜(11
1)面の傾き角は6.7度であるが、回転角θが4度か
ら7度範囲では、基板表面からの(111)面の傾斜角
度はθに応じて変化する。
【0042】以上、2種類のアルミニウム膜についてX
線回折結果を説明してきたが、この観察結果によれば、
本実施例によるアルミニウム膜は基板表面に対し(11
1)面が配向している単結晶膜であると結論できる。ま
た、アルミニウムの膜厚は100オングストロームから
10000オングストロームまで実験を行ったが、いず
れの膜厚でも単結晶膜を得ることができた。これ以上の
膜厚でも可能であると考えられる。
【0043】本実施例では蒸着用のアルミニウムに5N
の純度のアルミニウムを用いたが、純度は99%以上で
あれば望ましい。また、不純物としてたとえば銅を添加
することもできる。この場合、添加量としては重量%で
20%以内が望ましく、0.1パーセントから3パーセ
ント程度が適当である。
【0044】続いて、本実施例により作製されたアルミ
ニウム単結晶膜を用いて形成された弾性表面波素子およ
び弾性表面波素子の周波数変化特性について説明する。
【0045】図2に、本実施例によるアルミニウム単結
晶膜を用いて構成された弾性表面波共振子1を示す。ア
ルミニウム単結晶膜の成膜速度は毎秒5オングストロー
ムである。また、素子構成は一対の櫛歯形電極2とその
両側に格子状の反射器電極3を配置した1ポート型共振
子である。ただし電極の本数は減らして図示してある。
周波数は256メガヘルツであり、電極の厚みは約30
00オングストロームである。
【0046】素子はKカット水晶基板全面にアルミニウ
ム膜を成膜後、エッチング法により素子を複数個形成
し、その後にダイシングソーにより切断分離される。そ
の後、素子をステムと呼ばれるパッケージに導電性接着
剤を用いて接着し、外部端子との接続をアルミニウム線
により行う。そして、窒素雰囲気中においてカンを抵抗
溶接により封止する。従来技術によるアルミニウム膜を
用いて作製された弾性表面波素子も同様に作製される。
【0047】さて、図3は本実施例の弾性表面波共振子
を動作させ、経時変化による周波数変化を測定した特性
図である。また、図4は従来技術により形成された多結
晶アルミニウム電極を具備する弾性表面波共振子を動作
させ、経時変化による周波数変化を測定した特性図であ
る。本試験の投入電力は約30ミリワットである。
【0048】図3によれば、本実施例による共振子は周
波数変化が極めて小さく、非常に安定して動作している
ことがわかる。たとえば、1000時間後の周波数変化
は約2ppmであった。このようにKカット水晶基板を
用いた場合でも、アルミニウム電極を単結晶膜にするこ
とにより弾性表面波素子の経時変化による周波数変化を
極めて小さくすることが可能である。一方、図4の従来
技術による素子は、時間の経過とともに大きく周波数が
下方にシフトしていることがわかる。
【0049】なお、Kカット水晶基板において切断の傾
斜角度は本実施例では6.51度であったが、4度から
7度程度が適している。
【0050】次に、本実施例の素子の周波数安定度が優
れている理由を説明する。弾性表面波は基板の表面に沿
って伝播する波であり、その振動は電極の硬度・粘性な
どにより大きく変化する。そのため、電極を構成する材
質の内部応力が変化すると上記粘性等が変化し、その結
果周波数が変化する。電極が多結晶状態であることを考
えると素子が動作しているとき電極の結晶が移動し、結
晶は結晶粒界の表面自由エネルギーが最小となるように
移動していく。この現象はアルミニウム結晶の粒界拡散
と呼ばれるものである。この現象が起きると電極にはヒ
ロックと呼ばれる突起粒子が発生したり、また逆に粒界
で亀裂が発生し断線状態になる。こうして電極膜が多結
晶アルミニウム膜の場合は、素子が動作している最中に
振動によりアルミニウム電極の内部応力が変化し、素子
の周波数が変化する。
【0051】以上の現象はアルミニウム膜結晶の粒界に
より生じるものであり、本実施例のように粒界のない単
結晶アルミニウム膜には発生しない。従って本実施例に
よる弾性表面波共振子は周波数安定度が高いのである。
【0052】また、弾性表面波素子として本実施例では
1ポート型の共振子について説明したが、2ポート型の
共振子や、フィルタ素子、コンボルバ素子等にも応用可
能である。また光素子、磁気素子、半導体素子等との組
み合わせ素子にも応用可能である。さらに水晶バルク型
発振子、例えばAT振動子や音叉型振動子等にも応用可
能である。
【0053】また、本実施例のアルミニウム単結晶膜は
弾性表面波素子以外の電子デバイス、たとえばセンサー
やマイクロマシニング技術へ応用可能である。また、ア
ルミニウム膜の成膜方法は本実施例では蒸着法とスパッ
タリング法による方法を説明したが、これらに限られる
ことはなく、CVD法(化学的気相成長法)・MBE法
(分子線エピタキシー法)などこれら真空成膜法とリフ
ロー法の組み合わせでも良い。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ア
ルミニウムの成膜速度を毎秒25オングストローム以下
という遅い成膜速度で行うことにより、蒸着法およびス
パッタリング法という簡便な方法で、Kカット水晶基板
上にアルミニウム単結晶膜を容易に製造できるという効
果を有する。また、本発明による単結晶アルミニウム電
極を具備する弾性表面波素子は動作中における経時変化
による周波数変化が極めて小さく、周波数長期安定性に
優れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例の単結晶アルミニウム膜
の標準測定によるX線回折の回折特性図である。
【図2】本発明による一実施例の単結晶アルミニウム膜
により作製された弾性表面波共振子の正面図である。
【図3】本発明の一実施例による弾性表面波共振子の周
波数経時変化を示す特性図である。
【図4】従来技術による弾性表面波共振子の周波数経時
変化を示す特性図である。
【図5】従来技術による多結晶アルミニウム膜の標準測
定によるX線回折の回折特性図である。
【符号の説明】
1 弾性表面波共振子 2 櫛歯型電極 3 反射器電極

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α水晶単結晶の、結晶の基本座標軸であ
    る電気軸Xと光軸Zの作る平板を、該X軸回りに回転角
    θが4度から7度の間で反時計方向に回転してできる平
    板を基板とし、該基板上に電極を具備する弾性表面波素
    子において、該電極がアルミニウムまたはアルミニウム
    合金よりなる単結晶膜であることを特徴とする弾性表面
    波素子。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウムまたはアルミニウム合
    金よりなる単結晶膜の配向が、前記基板表面に対し(1
    11)面が配向していることを特徴とする請求項1記載
    の弾性表面波素子。
  3. 【請求項3】 α水晶単結晶の、結晶の基本座標軸であ
    る電気軸Xと光軸Zの作る平板を、該X軸回りに回転角
    θが4度から7度の間で反時計方向に回転してできる平
    板を基板とし、該基板上にアルミニウムまたはアルミニ
    ウム合金よりなる単結晶電極を具備する弾性表面波素子
    の製造方法において、前記単結晶電極が真空成膜法によ
    り形成され、成膜速度が毎秒25オングストローム以下
    であることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2記載の弾性表面
    波素子を備えた電子機器。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の製造方法によって製造さ
    れた弾性表面素子を備えた電子機器。
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