JPH08285684A - 分光測定におけるスペクトルの安定化法 - Google Patents
分光測定におけるスペクトルの安定化法Info
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Abstract
スペクトル誤差成分および測定対象物に対する入射光の
入射角度の変化による透過率の変動を低減することであ
る。 【構成】 測定対象物に投射した光の透過もしくは反射
光エネルギースペクトルの測定エネルギースペクトルに
基づいて測定対象物中の特定成分の定量分析を行う方法
である。検量式を作成する場合は、特定成分の濃度が既
知の測定対象物の測定エネルギースペクトルの波長域を
複数の区間に分割し、各区間毎に設定した特定波長の測
定エネルギー値と区間内の測定エネルギー値の比を取
る。この比をとったスペクトルと既知濃度に基づいて検
量式を作成する。特定成分濃度が未知でこれを推定する
場合は、検量式を作成したときと同様の方法で、測定エ
ネルギースペクトルについて比をとる。この比をとって
得られたスペクトルと検量式に基づいて特定成分濃度を
推定する。
Description
光器内の温度変動や電源電圧変動などにより生じるスペ
クトルベースライン変動、および入射光の測定対象物に
対する入射角度の変化による透過率の変動を数値演算処
理により低減させて測定値を安定化させる分光測定にお
けるスペクトルの安定化法に関する。
定量分析は、特定成分濃度が既知であるサンプルの透過
光エネルギースペクトルもしくは反射光エネルギースペ
クトルを測定することにより予め作成した検量線を用い
て行うことができる。この検量線を作成する方法として
は、特定の1波長を用いる方法および複数波長を用いる
多変量解析法が一般に知られている。
器の内部および分光器の外部の温度変動や電源電圧変動
などにより、スペクトルベースライン変動が生じる。こ
のベースライン変動は、定量分析および定性分析の精度
を低下させるので、スペクトル中のこの誤差成分を除去
する必要がある。
って低減する手法としては、従来より、2波長ベースラ
イン補正法、ディジタル微分法および低周波フィルタリ
ングフーリエ変換法が一般に知られている。以下に、上
記3つの手法の各々について概略を述べる。
度が一定、すなわち次の数1および数2を同時に満足す
る2波長λ1およびλ2を用いて、スペクトル中のベース
ライン成分を差し引く方法である。
λ2での吸光度がconst3,const4のとき
は、このスペクトルから(const4−const
3)×(λ−λ1)/(λ2−λ1)+const3なる
補正用スペクトルを測定スペクトルから差し引くことに
なる。
微分することにより、低周波のドリフトを低減あるいは
除去する方法である。一般に、微分次数としては、1次
もしくは2次が用いられる。1次微分によって、波長に
依存しない定数成分が除去できる。2次微分によって、
波長に対する1次のドリフト成分が除去できる。ディジ
タル微分法では、吸光度を波長に対してディジタル微分
するので、2次よりも高次の微分は信号を大きく歪ませ
てしまう。このため、3次以上のディジタル微分は用い
られることは少ない。
フーリエ変換してエネルギースペクトルを時間空間から
周波数空間に変換してベースラインシフトの原因である
低周波成分をフィルタリングする方法である。
正法では、補正に用いる2つの波長λ1およびλ2が上記
数1および数2を同時に満足する必要がある。しかし、
3成分以上の多成分系溶液では上記数1および数2を同
時に満足するような波長が存在しないことが多い。この
ような場合には、2波長ベースライン補正法を用いるこ
とはできない。
よってランダムノイズのような高周波ノイズを拡大して
しまう、ベースライン変動のバンド幅は物質の光吸収の
バンド幅よりも広くしなければならない、ディジタル微
分であるためスペクトルが歪む、といった問題がある。
は、フィルタリングによって低周波領域に存在する物質
の光吸収情報がベースライン変動成分と同時に失われて
しまう、という問題がある。
リングフーリエ変換法には、次のような共通の欠点があ
る。すなわち、エネルギーEが時間tと波長λの2変数
関数であると考えると、E(λ,t)の全微分は次の数
3により表される。
リングフーリエ変換法はいずれも波長に対する演算処理
であるため、上記数3の時間tの関数である第2項(∂
E/∂t)λは低減あるいは除去することは不可能であ
る。
するスペクトル誤差成分およびスペクトル測定時に入射
光が測定対象物に入射する入射角度の変化による透過率
の変動を低減する分光測定におけるスペクトルの安定化
法を提供することである。
づいてなされたものである。一般に、分光器における温
度や電源電圧変動などの外乱によるエネルギースペクト
ル中の誤差は、ドリフト、つまりスペクトルの経時変化
として表わすことができる。したがって、波長λにおけ
る時刻tの透過光強度I(λ,t),波長λrにおける
時刻tの透過光強度I(λr,t)は、次の数4および
数5によりそれぞれ表される。
波長λにおける時刻t0での透過光強度I0(λ,t0)
と時刻tでの透過光強度の比であり、次の数6を満足す
るものとする。
長λrにおける時刻t0での透過光強度I0(λr,t0)
と時刻tでの透過光強度の比であり、次の数7を満足す
るものとする。
度 p(λ,θ):波長λで光が入射角度θで入射したとき
の光の表面透過率 p(λr,θ):波長λrで光が入射角度θで入射したと
きの光の表面透過率 αi(λ):成分iの波長λの吸光係数 αi(λr):成分iの波長λrの吸光係数 θ:測定対象物面に対する光の入射角度 ci:成分iの濃度 l:実効セル長 である。
数8で表されるエネルギー強度の比INを得る。
るとする。
0を得る。
時刻tにおける入射光強度比k(λ,t)の波長依存性
を示し、また、(∂k/∂t)λは波長λにおける入射
光強度比k(λ,t)の時間変化を示す。
(λ,t)×I0(λ,t0)と波長λrにおける時刻t
の入射光強度k(λr,t)×I0(λ,t0)との比
を、次の数11に示すように、β(λ,λr,t)とお
く。
≦λ≦λj,max,λj,min≦λr≦λj,max)に限定す
ると、数10のdk(λ,t)の波長依存性を示す項
(∂k/∂t)λは数12により近似でき、したがっ
て、数13を得る。
4で表され、数14から数15を得る。
イン変動の時間依存性の誤差成分を低減あるいは除去で
きることが分かる。
比をとることによって入射光の入射角度の変化による透
過率の変動を低減することができることを示す。
入射したときの光の表面透過率p(λ,θ)および波長
λrで光が入射角度θiで入射したときの光の表面透過率
p(λr,θ)は、フレネル(Fresnel)の法則
により、次の数16,数17,数18および数19で表
される。
り、次の数20が成立する。
数21のようにおく。
次の数22で近似できる。
3を得る。
イン中のベースライン変動の時間依存性の誤差成分と入
射光の入射角度の変化による透過率の変動を同時に低減
できることが分かる。
もので、請求項1にかかる発明は、測定対象物に光を投
射し、その透過光のエネルギースペクトルもしくは反射
光のエネルギースペクトルを測定して測定対象物中の特
定成分の定量分析を行なう分光測定法であって、測定対
象物について透過光のエネルギースペクトルもしくは反
射光のエネルギースペクトルを測定し、測定した測定エ
ネルギースペクトルの波長域を複数の区間に分割し、各
区間毎に上記各区間内に設定した特定波長の測定エネル
ギー値と上記各区間内の測定エネルギー値との比をとる
ことによってスペクトル測定値を安定化させて上記特定
成分の定量分析を行うことを特徴とする。
物に光を投射し、その透過光エネルギースペクトルもし
くは反射光エネルギースペクトルを測定して測定対象物
中の特定成分の定量分析を行なう分光測定におけるスペ
クトルの安定化法であって、測定対象物の透過光エネル
ギースペクトルもしくは反射光エネルギースペクトルを
測定し、測定した測定エネルギースペクトルの波長域を
複数の区間に分割し、各区間毎に上記各区間内に設定し
た特定波長の測定エネルギー値と上記各区間内の測定エ
ネルギー値との比を取ることによってスペクトル測定値
を安定化させて、上記の比を取ったスペクトルに対して
多変量解析法を行って上記測定対象物中の特定成分の定
量分析を行うことを特徴とする。
1または2にかかる発明において、測定対象物中の上記
特定成分がグルコースであることを特徴とする。
の区間に分割し、各区間内に設定した特定波長の測定エ
ネルギー値と上記各区間内の測定エネルギー値との比を
取ることによってスペクトル測定値の時間依存性を有す
る誤差と入射光の入射角の変化による透過率の変動が同
時に補正される。
ることにより得られたスペクトルに対して多変量解析が
行われる。
ル、または反射光エネルギースペクトルが部分空間で比
を取ることにより補正される。
おけるエネルギースペクトルの比を取ることにより、ベ
ースライン変動の時間依存性の誤差と入射光の入射角度
の変化による透過率の変動を同時に低減することができ
るので、分光測定における分析の精度を向上させること
ができる。
定量分析の精度および信頼性がさらに向上する。
コースである場合には、グルコース濃度を高精度で検出
することができ、人体の血糖値測定に適用することによ
り信頼性および精度の高い血糖値の測定を行うことがで
きる。
例を説明する。
製の近赤外分光器(形式名「System2000」)
を用い、5分毎に4000cm-1〜8000cm-1の波
長域における透過エネルギースペクトルを11回測定し
た。これらの透過エネルギースペクトルに、(1)無処
理,(2)1波長での測定エネルギースペクトルとの比
をとる1波長比率演算処理,(3)部分空間において比
をとる部分空間比率演算処理,(4)1次微分,(5)
2次微分,(6)フーリエ変換をそれぞれ施した。そし
て、4000cm-1〜8000cm-1の波長域内で選択
した各波長での透過エネルギースペクトルのCV値(=
100×標準偏差/平均)をそれぞれ算出した。なお、
以下では、各波長でのCV値をプロットしたスペクトル
をCVスペクトルという。
ギースペクトルを図1に示す。また、その上記CVスペ
クトルを図2に示す。
における11本の各透過エネルギースペクトルと、60
00cm-1との比のスペクトルを図3に示す。また、そ
のCVスペクトルを図4に示す。
ギースペクトルの4000cm-1〜8000cm-1の波
長域を、次の8つの波長域に分割した。 4000cm-1〜4500cm-1(4250cm-1), 4500cm-1〜5000cm-1(4750cm-1), 5000cm-1〜5500cm-1(5250cm-1), 5500cm-1〜6000cm-1(5750cm-1), 6000cm-1〜6500cm-1(6250cm-1), 6500cm-1〜7000cm-1(6750cm-1), 7000cm-1〜7500cm-1(7250cm-1), 7500cm-1〜8000cm-1(7750cm-1)。 そして、4000cm-1〜8000cm-1の波長域内で
選択した上記各波長のうち、分割された8つの上記波長
域の各々に属する各波長の透過エネルギースペクトル
と、括弧内に示す波長の透過エネルギースペクトルとの
比のスペクトルを図5に示す。また、そのCVスペクト
ルを図6に示す。
エネルギースペクトルの1次微分スペクトルを図7に示
す。また、そのCVスペクトルを図8に示す。
エネルギースペクトルの2次微分スペクトルを図9に示
す。また、そのCVスペクトルを図10に示す。
エネルギースペクトルに低周波フィルタリングフーリエ
変換を施したときのスペクトルを図11に示す。また、
そのCVスペクトルを図12に示す。
図4,図10および図12のCVスペクトルと対比する
と、部分空間比率演算処理を施した場合の方が、無処
理,1波長比率演算処理,1次微分,2次微分,フーリ
エ変換の各処理を施した場合よりも各波長でのCV値が
全体的に小さくなっており、部分空間比率演算処理によ
って透過エネルギースペクトルが安定化されていること
が分かる。
水溶液を飲用させた後、指に近赤外光を照射し、12分
毎にパーキンエルマー社製の近赤外分光器(形式名「S
ystem2000」)を用いて反射エネルギースペク
トルを測定した。この反射エネルギースペクトルの測定
と同時に、株式会社京都第一科学製のグルコースモニタ
で上記被験者の血糖値を測定した。この同時測定は合計
44回行った。
エネルギースペクトルに、(1)無処理,(2)1波長
比率演算処理,(3)部分空間比率演算処理,(4)1
次微分,(5)2次微分,(6)フーリエ変換をそれぞ
れ施した。なお、上記(2)の1波長比率演算処理で
は、以下に示す波長Aの括弧外の各波長を6000cm
-1で比率演算処理した。また、上記(3)の部分空間比
率演算処理では、上に示した波長Aの括弧外の各波長を
括弧内の波長で比率演算処理した。 波長A 4250cm-1(4300cm-1),4350cm-1(4400cm-1), 4450cm-1(4700cm-1),4500cm-1(4700cm-1), 4550cm-1(4700cm-1),4600cm-1(4700cm-1), 4650cm-1(4700cm-1),4750cm-1(4700cm-1), 4800cm-1(4700cm-1),4850cm-1(4700cm-1), 5500cm-1(6300cm-1),5600cm-1(6300cm-1), 5700cm-1(6300cm-1),5800cm-1(6300cm-1), 5900cm-1(6300cm-1),6000cm-1(6300cm-1), 6100cm-1(6300cm-1),6200cm-1(6300cm-1), 6400cm-1(6300cm-1),6500cm-1(6300cm-1), 6700cm-1(7100cm-1),6800cm-1(7100cm-1), 6900cm-1(7100cm-1),7000cm-1(7100cm-1), 7200cm-1(7100cm-1),7300cm-1(7100cm-1), 7400cm-1(7100cm-1),7500cm-1(7100cm-1)。
られた測定データのうち、偶数番目に測定した22個を
検量線作成用セット、奇数番目に測定した22個を濃度
推定用セットとして、上記波長Aの括弧外の28波長で
の吸光度値を使用し、これら吸光度値をPLS多変量解
析法に基づいて処理することにより定量分析を行った。
処理,(3)部分空間比率演算処理,(4)1次微分,
(5)2次微分および(6)フーリエ変換の各処理に基
づく定量分析結果を、図13,図14,図15,図1
6,図17および図18にそれぞれ示す。また、上記
(1)〜(6)の各処理に基づく定量分析結果につい
て、相関係数Rおよび濃度推定誤差SEPを表1に示
す。
により定義される。
図17および図18と対比すると、エネルギースペクト
ルを部分空間で比をとることにより、血糖実測値により
近い血糖推定値を得ることができ、濃度定量分析精度が
向上したことが分かる。また、上記表1から、エネルギ
ースペクトルの部分空間で比をとることによる血糖濃度
推定値の相関係数Rは、(1)無処理,(2)1波長比
率演算処理,(4)1次微分,(5)2次微分,(6)
フーリエ変換による各血糖濃度推定値の相関係数Rより
も大きく、濃度推定誤差SEPは最小であることが分か
る。
変化による表面透過率P(λ,θ)の変動を比率演算処
理した場合と比率演算処理をしなかった場合について調
べた。
化(Δθi=θi,1−θi,2)による表面透過率P
(λ,θ)の相対変化量Δp(λ,θi)/p(λ,
θi)は、次の数25によって求めた。
対変化量による表面透過率PN(λ,θ)の変化Δp
N(λ,θi)/pN(λ,θi)は次の数26によって求
めた。
す。
式会社) (注3) n2:水の屈折率 上記理科年表に記載の次の数27により計算した。
N(λ,θ)の相対変化量ΔpN(λ,θi)/pN(λ,
θi)の方が表面透過率P(λ,θ)の相対変化量Δp
(λ,θi)/p(λ,θi)よりも値が小さい。このこ
とから、比率演算処理を施すことにより、入射角θiの
変化による表面透過率P(λ,θ)の変動は低減され
る、つまり光の測定対象物に対する入射角度の変化によ
る透過率の変動を低減できることが分かる。
エネルギースペクトルである。
-1で比率演算処理したエネルギースペクトルである。
率演算処理したエネルギースペクトルである。
スペクトルである。
スペクトルである。
ルタリングフーリエ変換したスペクトルである。
である。
示すデータである。
を示すデータである。
ある。
ある。
の定量分析結果のデータである。
Claims (3)
- 【請求項1】 測定対象物に光を投射し、その透過光エ
ネルギースペクトルもしくは反射光エネルギースペクト
ルを測定して測定対象物中の特定成分の定量分析を行な
う分光測定におけるスペクトルの安定化法であって、 測定対象物について透過光エネルギースペクトルもしく
は反射光エネルギースペクトルを測定し、測定した測定
エネルギースペクトルの波長域を複数の区間に分割し、
各区間毎に上記各区間内に設定した特定波長の測定エネ
ルギー値と上記各区間内の測定エネルギー値との比をと
ることによってスペクトル測定値を安定化させて定量分
析を行うことを特徴とする分光測定におけるスペクトル
の安定化法。 - 【請求項2】 測定対象物に光を投射し、その透過光エ
ネルギースペクトルもしくは反射光エネルギースペクト
ルを測定して測定対象物中の特定成分の定量分析を行な
う分光測定におけるスペクトルの安定化法であって、 測定対象物の透過光エネルギースペクトルもしくは反射
光エネルギースペクトルを測定し、測定した測定エネル
ギースペクトルの波長域を複数の区間に分割し、各区間
毎に上記各区間内に設定した特定波長の測定エネルギー
値と上記各区間内の測定エネルギー値との比を取ること
によってスペクトル測定値を安定化させて、上記の比を
取ったスペクトルに対して多変量解析法を行って上記測
定対象物中の特定成分の定量分析を行うことを特徴とす
る分光測定におけるスペクトルの安定化法。 - 【請求項3】 測定対象物中の特定成分がグルコースで
あることを特徴とする請求項1または2記載の分光測定
におけるスペクトルの安定化法。
Priority Applications (6)
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