JPH08260147A - 耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材及びその形成方法 - Google Patents

耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材及びその形成方法

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JPH08260147A
JPH08260147A JP8453395A JP8453395A JPH08260147A JP H08260147 A JPH08260147 A JP H08260147A JP 8453395 A JP8453395 A JP 8453395A JP 8453395 A JP8453395 A JP 8453395A JP H08260147 A JPH08260147 A JP H08260147A
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aluminide
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alcl
molten
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JP8453395A
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Masahiro Saito
正弘 齋藤
Masashi Takahashi
雅士 高橋
Yoshiyasu Ito
義康 伊藤
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、耐食耐酸化性とじん性を両
立させた耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材及びその
形成方法を得ることである。 【構成】 本発明の化学蒸着アルミナイド部材は、Ni
又はCoをベースとした被処理品の耐熱合金内側は、A
l組成比率の小さなアルミナイド皮膜とし、耐熱合金外
側は、Al組成比率の大きなアルミナイド皮膜としてい
る。この場合、必要に応じて耐熱合金外側に向かって徐
々にAl組成比率を傾斜させる。そして、本発明の化学
蒸着アルミナイド部材の形成方法は、Ni又はCoをベ
ースとした被処理品の耐熱合金とAl溶湯とを高温に加
熱される反応容器に収納し、Al原料器から溶湯にAl
Cl3 を供給し、Al溶湯からAlClとH2 との混合
ガスを耐熱合金に供給し、耐熱合金の表面に化学蒸着ア
ルミナイド皮膜を生成させるようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ニッケルNi又はコバ
ルトCoをベースとした耐熱合金の耐食耐酸化性向上の
ための耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材及びその形
成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ニッケルNi又はコバルトCoをベース
とした耐熱合金は、高温強度や耐食耐酸化性に優れるた
め、航空、宇宙、自動車、化学、エネルギー等の幅広い
分野で利用されている。特に発電用のガスタービンで
は、高温で腐食酸化雰囲気などの厳しい環境で使用さ
れ、運転温度の高温化が発電効率の向上に直接結び付く
ため、高温強度や耐食耐酸化性の向上のための多くの検
討が試みられている。
【0003】ところで、アルミニウムAlやクロムCr
等の耐食耐酸化性元素の添加による耐食耐酸化性の向上
対策では、耐熱部材の高温強度の低下を招くことが多
い。そこで、セラミックや金属間化合物による析出強化
に見られる合金化や一方向凝固や単結晶に代表される結
晶制御などの方法により、高温強度を向上させた耐熱合
金を基材とし、その表面に耐食耐酸化材料をコーティン
グすることにより高温強度と耐食耐酸化性の両立が図ら
れる方法が良く用いられている。
【0004】例えば、ガスタービンの代表的な高温部材
である動翼や静翼では、MCrAlY合金とよばれる耐
食耐酸化性合金が、溶射法により耐熱合金である動翼や
静翼の基材表面にコーティングされる場合が多い。MC
rAlY合金は、Ni、Co、Fe又はそれらの合金を
ベースとし、耐食耐酸化性のCr、Al、Yなどを多く
含んだものである。これは、表面のMCrAlY合金
が、高温耐食酸化雰囲気に晒された際、Al2 3 やC
2 3 を主体とした非常に緻密な保護皮膜を形成する
ためである。すなわち、この保護皮膜により酸素の拡散
や透過速度が抑制されるので、強度メンバーである翼基
材の腐食や酸化損傷を防止できる。
【0005】ここで、MCrAlY合金のコーティング
層は、酸素の透過が小さいように緻密で、かつ、コーテ
ィング中におけるAlやCrの消耗がないことが必須で
ある。このことを考慮して、溶射法としてはArなど減
圧雰囲気でのプラズマ溶射法や高速の燃焼ガスによる溶
射法の高速ガス流を発生できる溶射法が用いられる。
【0006】さらに、高温耐食酸化性を向上させるため
の方法として、上記のMCrAlY合金皮膜表面にAl
の組成比率が高い層を設ける試みがある。その方法の一
つは、Alパック法とよばれているものである。そのA
lパック法では、翼材料等の耐熱合金の被処理品を、被
覆材料(Al又はAl合金)、活性剤(ハロゲン化アン
モニウム、又はハロゲン化アルカリ金属)とAl2 3
等の不活性充填材を含有するAlパック粉末中に埋設
し、Ar等の非酸化性雰囲気で750〜1250℃に加
熱保持することにより、Alが被処理品中に浸透し、表
面にMCrAlY合金のマトリクスとAlを含むNiA
l系やCoAl系の金属間化合物とが形成される。この
NiAl系やCoAl系の金属間化合物層の厚さは、処
理温度や処理時間などにより制御できる。また、Al源
から被処理品へのAlの移行を容易にする働きをする。
【0007】もう一つの方法として、Alハロゲン化ガ
スの熱分解や酸素還元を利用した化学蒸着法(CVD
法)が用いられている。このCVD法はガス反応を利用
した方法であるために、ガスが入り込む細い部分にコー
ティングできるという特徴を持つ。例えば、ガスタービ
ンの翼内部へ冷却ガスを送る冷却流路の内面への耐食コ
ーティングの応用がある。これは、近年のガスタービン
運転温度の高温化に伴い、翼自体の温度が上がり耐食耐
酸化性を付加する必要があるためであるにもかかわら
ず、前述の溶射法やAlパック法では、形状的にコーテ
ィングが不可能であるためである。
【0008】CVD法による一つの方法として、耐熱合
金の被処理品を高温に加熱した反応容器内に配置して一
度真空引きし、AlCl3 とH2 との混合ガスを供給し
て、AlCl3 を水素還元して生成されたAlを被処理
品中に浸透させる方法がある。この方法によると、熱力
学的に低温でのAlCl3 の水素還元反応は生じにくい
ので、耐酸化性を向上させるために必要な数〜数十μm
のNiAl系やCoAl系の金属間化合物に被処理品表
面に形成させようとすれば、1000℃以上の高温中
に、数十時間もの長時間保持する必要がある。そのため
に、このCVD処理中に耐熱合金の被処理品が熱的ダメ
ージを受け、被処理品の材料強度が低下するという問題
点がある。
【0009】さらに、もう一つの方法として、上記Al
Cl3 ガスを一度Al溶湯中に溶融Alと接触させ、A
l低次化物のAlClガスを反応ガスとして用いる方法
が提案されている。この方法によると、AlClの熱分
解によりAlが生成し、そのAlを被処理品中に浸透さ
せることができる。AlClの熱分解が低温で生じやす
いので、被処理品を高温に晒すことなく、表面にNiA
l系矢CoAl系の金属間化合物を形成できる。
【0010】以上のように、高温の腐食酸化雰囲気で使
用する耐熱合金の高温強度と耐食耐酸化性を両立させる
ために、耐熱合金表面に耐食耐酸化コーティングを施す
試みはある。CVD法について見れば、耐熱合金上にN
iAl系やCoAl系の金属間化合物を効率良く形成す
る方法や装置に関する検討はなされている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところが、耐熱合金上
に形成するNiAl系CoAl系の金属間化合物は非常
に脆いにもかかわらず、コーティングした被覆の強度的
な検討はほとんどなされてはいない。NiAl系やCo
Al系の金属間化合物は、定性的にはAlの組成比率が
大きいほど、耐食耐酸化は優れているが、じん性に劣る
という特性を有する。すなわち、耐熱合金上に形成する
コーティングした皮膜が単層だけでは、耐食耐酸化性と
じん性を両立させることができない。
【0012】本発明の目的は、耐食耐酸化性とじん性を
両立させた耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材及びそ
の形成方法を得ることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の化学蒸着アルミ
ナイド部材は、Ni又はCoをベースとした被処理品の
耐熱合金の内側は、Al組成比率の小さなアルミナイド
皮膜とし、耐熱合金の外側は、Al組成比率の大きなア
ルミナイド皮膜としている。この場合、必要に応じて耐
熱合金の外側に向かって徐々にAl組成比率を傾斜させ
る。
【0014】そして、本発明の化学蒸着アルミナイド部
材の形成方法は、Ni又はCoをベースとした被処理品
の耐熱合金とAl溶湯とを高温に加熱される反応容器に
収納し、Al原料器から溶湯にAlCl3 を供給し、A
l溶湯からAlClとH2 との混合ガスを耐熱合金に供
給し、耐熱合金の表面に化学蒸着アルミナイド皮膜を生
成させるようにしている。
【0015】この場合、Al溶湯からのAlClは、最
初はその量を低くし、徐々にその量を高くし、又は、A
l溶湯の温度は、最初はその温度を低くし、徐々にその
温度を高くして、耐熱合金内側から外側へ向かってのA
l組成比率を傾斜させたアルミナイド皮膜を生成させ
る。
【0016】また、耐熱合金内側から外側へ向かっての
Al組成比率を傾斜させたアルミナイド皮膜を生成させ
る別の方法として、最初はAl溶湯でのAlCl3 ガス
と溶融Alとの接触面積を小さくし、徐々にAl溶湯で
のAlCl3 ガスと溶融Alとの接触面積を大きくす
る。この場合、AlCl3 ガスをAl溶湯での溶融Al
中にバブリングするか、又は、Al溶湯中の溶融Alに
振動を加えることにより、Al溶湯でのAlCl3 ガス
と溶融Alの接触面積を増大させる。
【0017】さらに、また、耐熱合金内側から外側へ向
かってのAl組成比率を傾斜させたアルミナイド皮膜を
生成させる別の方法として、最初は被処理品の温度を低
くし、徐々に被処理品の温度を高くして、耐熱合金内側
から外側へ向かってのAl組成比率を傾斜させたアルミ
ナイド皮膜を生成させる。
【0018】
【作用】本発明の化学蒸着アルミナイド部材は、Al組
成比率の小さなアルミナイド皮膜としている耐熱合金内
側でじん性を保持し、Al組成比率の大きなアルミナイ
ド皮膜としている耐熱合金外側で耐食耐酸化性を保持し
ている。従って、耐食耐酸化性とじん性を両立させるこ
とができる。耐熱合金外側に向かって徐々にAl組成比
率を傾斜させるた場合はその特性がより良好になる。
【0019】本発明の化学蒸着アルミナイド部材の形成
方法は、Ni又はCoをベースとした被処理品の耐熱合
金とAl溶湯とを反応容器内で高温に加熱し、Al原料
器からAl溶湯に供給されるAlCl3 を、Al溶湯中
のAlと接触させて生成したAlClとH2 との混合ガ
スを耐熱合金に供給し、AlClから熱分解したAlが
被処理品に浸透し、その表面にNiAl系やCoAl系
の金属間化合物を生成して耐熱合金の表面に化学蒸着ア
ルミナイド皮膜を生成する。
【0020】この場合、Al溶湯からのAlCl量を変
化させることにより、熱分解して生じるAl量が制御で
きるので、被処理品の表面に形成するNiAl系やCo
Al系の金属間化合物の組成比率を制御できる。また、
Al溶湯温度や、Al溶湯でのAlCl3 ガスと溶融A
lとの接触面積を変えることにより、被処理品に供給す
るAlClガス濃度が制御できるので、被処理品の表面
に形成するNiAl系やCoAl系の金属間化合物の組
成比率を制御できる。
【0021】また、Al溶湯の溶融AlCl3 ガスをパ
ブリングすることや、Al溶湯を振動させることによ
り、AlClへの反応が制御でき、一方、被処理品の温
度を変化させることにより、AlClガスからAlの熱
分解反応とAlの被処理品中の拡散を制御できるので、
被処理品の表面に形成するNiAl系やCoAl系の金
属間化合物の組成比率を制御できる。これによって、耐
熱合金内側から外側へ向かってのAl組成比率を傾斜さ
せたコーティングが可能となる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図
1は本発明の耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材(以
下化学蒸着アルミナイド皮膜という)の説明図である。
まず、被処理品の耐熱合金1は、Ni又はCoをベース
として高温強度に優れた超合金である。コーティング層
2は耐熱合金よりもAlの組成比率を大きくしたもので
あり、耐熱合金の耐食耐酸化性を向上させるものであ
る。具体的には、このコーティング層2は耐熱合金1側
ではAlの組成比率は耐熱合金と同様であるが、表面に
向かって徐々にAlの組成比率が増大している。また、
腐食性のガスの透過のない非常に緻密な層である。
【0023】次に、図2に耐熱合金のマトリクス成分で
あるNiとAlとの状態を、図3に耐熱合金のマトリク
ス成分であるCoとAlとの状態をそれぞれ示す。図2
及び図3から分かるように、Ni、Coともに、Niと
Al又はCoとAlの組成比率が異なる数多くの金属間
化合物が存在するのが明らかである。上記の耐熱合金か
ら表面に向かって徐々にAlの組成比率が増大したコー
ティング層2は、NiAl系では、Ni3 Al、NiA
l、Ni2 Al3 、NiAl3 の順、CoAl系では、
CoAl、Co2 Al5 、Co4 Al13、Co2 Al9
の順のように、耐熱合金から表面に向かってAlの組成
比率が増加したNiAl系又はCoAl系金属間化合物
の多層体や単層であっても、層中でそれらの金属間化合
物の析出割合が表面でAlの組成比率が多くなるように
変化しているものなどが含まれる。
【0024】図4は、本発明の耐熱合金への化学蒸着ア
ルミナイド皮膜を生成するための装置を示す。耐熱合金
への化学蒸着アルミナイド皮膜を形成するための装置
は、ガス供給系3、Al原料器4、Al溶湯5、反応容
器6、排気スクラバ系7とから構成される。これを用い
て、耐熱合金への化学蒸着アルミナイド皮膜の形成方法
を説明する。
【0025】まず、反応容器6内に被処理品8である耐
熱合金をセットした後、配管や反応容器6内を真空引き
し、H2 ガス等の不活性ガスに置換する。次に、このH
2 ガス雰囲気中でAl原料器4、Al溶湯5及び反応容
器6の温度を、それぞれ所定の温度まで上げる。Al原
料器4は、3価のAlハロゲン化ガスを生成するための
ものであり(3HCl+Al→AlCl3 +3/2
2 )、その温度T1 はAlCl3 の反応気化温度であ
る350℃以上とする。同時に反応容器6までの配管も
生成したAlClが固化しないように、リボンヒータな
どで350℃以上に保持する。
【0026】Al溶湯5は、3価のAlハロゲン化ガス
をAl溶湯5内の溶融したAlに接触させ、1価のAl
ハロゲン化ガスへ変換するためのものである(AlCl
3 +H2 →AlCl+2HCl)。この反応は高温であ
るほど進みやすいため、通常、AL溶湯温度T2 は、9
00℃以上とする。反応容器6では被処理品8の耐熱合
金表面にアルミナイド皮膜を形成する。Alハロゲン化
ガスからアルミナイド皮膜を形成する反応は、図5に示
すように、(a)AlCl3 を水素還元する方法、
(b)AlClを水素還元する方法、(c)AlClを
熱分解する方法の3種類がある。ここでは強度低下など
耐熱合金の熱的ダメージが少ないように、Alの融点
(668℃)から1000℃程度の低温で標準生成自由
エネルギーが最も小さいAlClを熱分解する方法を主
体的に利用する。前述のように、Al溶湯5でAlCl
3 をAlClに変換したのは、このためである。
【0027】反応容器6の温度T3 は、Alの融点以上
で、かつAl溶融温度T2 以下とする。このように、各
部の温度を上げた後、ガス供給系3からAlハロゲン化
ガスを生成するためのHClガス、AlCl3 をAlC
lに変化するためのH2 ガス、それらのキャリアのAr
ガスをそれぞれ所定の流量だけ供給する。同時に、排気
スクラバ系7では、反応容器6内の圧力を一定に保つた
めにポンプ9を作動し、また、有毒なHClが直接大気
放出されないように、スクラバ10で中和処理される。
この状態で保持することにより、被処理品8の耐熱合金
表面にアルミナイド皮膜が形成される。
【0028】所定のアルミナイド皮膜が形成された後
は、Al溶湯5及び反応容器6の加熱用のヒータ11を
停止する。同時にガス供給系3からの各ガスの供給を停
止した後、反応容器6内をArガスに置換しポンプも停
止する。反応容器6内の温度が200℃以下に低下すれ
ば、反応容器6内を大気解放しアルミナイド皮膜が形成
された被処理品8である耐熱合金を取り出す。
【0029】次に、以上のような耐熱合金への化学蒸着
アルミナイド皮膜の形成方法を用い、図1に示した耐熱
合金側の表面に向かって徐々にAlの組成比率が増大し
たコーティング層の形成方法の一実施例を説明する。
【0030】アルミナイド皮膜の形成は、耐熱合金表面
でのAlClガスの熱分解と耐熱合金中のAlの拡散反
応によって決まる。従って、耐熱合金表面に形成される
アルミナイド皮膜の形態は、処理温度(反応容器温度)
によって決まる。実際、形成するNiAL系金属間化合
物の処理温度依存性を見ると、図6に示すように処理温
度が低いほど高Alの化合物(NiAl3 )となり、処
理温度が高いほど低Alの化合物(Ni3 Al)となる
のが分かる。このことを利用すれば処理温度を変化させ
ることにより、耐熱合金から表面に向かって徐々にAl
の組成比率が増大したコーティング層の形成が可能であ
る。
【0031】すなわち、最初は1200℃に加熱して耐
熱合金中に析出した金属間化合物と同様の低AlのNi
Al系金属間化合物Ni3 Alをコーティングし、徐々
に温度を下げることで、NiAl3 までAlの組成比率
が大きい金属間化合物が形成できる。また、各層の厚さ
は処理時間を変えることにより所望の厚さを得ることが
可能であり、処理温度とその処理時間とを変えることに
より、任意のAlの組成比率の変化を持たせた耐熱合金
への化学蒸着アルミナイド皮膜の形成が可能である。
【0032】耐熱合金側の表面に向かって、徐々にAl
の組成比率が増大したコーティング層のもう一つの形成
方法がある。耐熱合金表面で熱分解反応してAlを生成
するAlClガスの絶対量は濃度を制御する方法であ
る。処理温度が一定で耐熱合金へのAlの拡散条件が一
定の場合には、AlClガスの絶対量や濃度により耐熱
合金表面で熱分解反応を生成するAlの量を制御するこ
とができので、形成されるNiAl系金属間化合物の形
態を変えることができる。すなわち、AlClガスの絶
対量や濃度が小さい場合には、低AlのNiAl系金属
間化合物、ガスの絶対量や濃度が大きい場合には、高A
lのNiAl系金属間化合物となる。これを応用すれ
ば、前述の処理温度を変える方法と同様に、耐熱合金か
ら表面に向かって徐々にAlの組成比率が増大したコー
ティング層の形成が可能である。
【0033】以上の説明はNiについて説明したが、A
lの組成比率が異なる多数の金属間化合物を持つCoに
ついても同様である。
【0034】次に、AlClガスの熱分解反応や耐熱合
金中のAlの拡散反応ともに、温度に大きな影響を受け
る。AlClガスの熱分解反応について見れば、図5か
らも明らかなように、温度が低いほど標準生成自由エネ
ルギーが小さいので反応が進みやすく、多量のAlが生
成される。一方、耐熱合金中のAlの拡散反応である
が、実際には耐熱合金がNI、Coをベースとした多元
系合金で、多くの金属間化合物が存在するために反応が
複雑ではあるが、Alがベース材のNiやCoと反応す
ると、定性的には拡散反応Dは下記の一般式に従うと言
える。
【0035】D=D0 exp(−Q/RT) ただし、D0 ;拡散定数 Q;活性化エネルギー R;ボルツマン定数 T;温度
【0036】このことから、耐熱合金中のAlの拡散反
応、温度上昇により急激に進むのは明らかである。
【0037】以上のように、低温では多量のAlが生成
するにもかかわらず、耐熱合金中にAlが拡散していき
にくい。逆に、高温ではAlが生成しにくいが、耐熱合
金中をAlが拡散しやすい。すなわち、定性的には、低
温では耐熱合金表面で高Alとなり、高温では耐熱合金
表面で低Alとなる傾向にあることが分かる。実際、形
成されるNiAl系金属間化合物の処理温度依存性を見
ると、図6にも示すように処理温度が低いほど高Alの
化合物となる。また、処理時間が一定の場合、形成され
るアルミナイド皮膜の厚さは耐熱合金中のAlの拡散で
決まるので、処理時間が長いほど厚くなる。従って、処
理温度や処理時間を制御することにより、NiAl系金
属間化合物の形態や厚さを変えることが可能である。
【0038】AlClガスの絶対量を制御する方法とし
ては、ガス供給系で供給するHClガスを変える方法が
ある。Al原料器で、3HCl+Al→AlCl3 +3
/2H2 の十分な反応を起こさせると、HClを増加さ
せることで、ALCl3 の生成量も増加させることがで
きる。また、Al溶湯でAlCl3 +H2 →AlCl+
2HClの十分な反応を起こさせれば、HClを変える
ことで、AlClガスの絶対量を制御できる。
【0039】もう一つのAlClガスの絶対量を制御す
る方法としては、ポンプの能力を変える方法がある。当
然のことであるが、供給するガス量が一定の場合、ポン
プの能力を変えることにより、処理雰囲気圧力が変化
し、AlClガスの絶対量を変えることができる。
【0040】一方、濃度を制御する方法としては、反応
に寄与しない供給するガスのArやH2 の量を変える方
法がある。ガス供給系から供給するArやH2 のガス量
を変えることにより、被処理品の耐熱合金表面でのAl
ClとAr、H2 、AlCL3 などのガス濃度を制御す
ることができる。
【0041】もう一つのAlClガスの濃度を制御する
方法としては、Al溶湯での溶融Al温度やAlCl3
と溶融Alとの接触面積を変える方法などがある。Al
溶湯での溶融Al温度を下げれば、AlCl3 +H2
AlCl+2HClの反応が進みにくくなるために、A
lClを低下させることができる。また、AlCl3
溶融Alとの接触面積を小さくすれば、AlClを低下
させることができる。
【0042】また、上記のように、耐熱合金表面にアル
ミナイド皮膜を化学蒸着法により形成することにより、
Al元素がNiやCoの結晶中に侵入型で入り込むこと
や耐熱合金基材よりもアルミナイド皮膜の方が線膨張係
数が小さいことにより、高温でのアルミナイド処理後の
室温において、アルミナイド皮膜に圧縮の残留応力を印
加させることができる。
【0043】次に、本発明による耐熱合金への化学蒸着
アルミナイド皮膜及びその形成方法の効果について、図
7乃至図9を用いて説明する。
【0044】まず、Ni又はCoをベースとした耐熱合
金表面に、その耐熱合金よりもAlの組成比率が大きい
アルミナイド皮膜を形成させることにより、耐食耐酸化
性が向上できる。その耐食耐酸化性は、図7に示すよう
にAlの組成比率が大きいものほど優れている。また、
Ni又はCoをベースとした耐熱合金表面に、アルミナ
イド皮膜を形成させることにより、疲労強度を向上でき
る。その疲労強度は図7に示すように、Alの組成比率
が大きいものほど優れている。
【0045】また、Ni又はCoをベースとした耐熱合
金表面に、アルミナイド皮膜をCVD法により形成する
ことにより、アルミナイド皮膜に圧縮の残留応力が印加
される。したがって、疲労強度を向上することができ、
かつクラック等の進展を抑制することができる。
【0046】本発明では、耐熱合金表面でのAlの組成
比率が大きく(NiAl3 )、内部に向かってAlの組
成比率が小さくなるようにAl量が傾斜したAlコーテ
ィング材としている。従って、耐食耐酸化性は、主とし
て表面材料によるので、図8に示すように高AlのNi
Al系金属間化合物のNiAl3 コーティング材と同等
の耐食耐酸化性や疲労強度を有する。一方、じん性につ
いては図9に示すようにNiAl3 が非常に脆いために
熱衝撃寿命は短いが、本発明のAlコーティング材で
は、Alの傾斜組成でのじん性に優れるために、耐熱衝
撃性が向上する。すなわち、本発明のAlの組成比率が
傾斜したAlコーティング材では、耐食耐酸化性、疲労
強度、また耐熱衝撃性の全てが優れたものにできる。
【0047】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、耐食耐酸
化性に優れ、かつ耐熱衝撃特性(じん性)にも優れたN
i又はCoをベースとした耐熱合金表面への化学蒸着ア
ルミナイド部材及びその形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の耐熱合金の化学蒸着アルミナイド部材
の説明図
【図2】耐熱合金のマトリクス成分であるNiとAlと
の状態を示す説明図
【図3】耐熱合金のマトリクス成分であるCoとAlと
の状態を示す説明図
【図4】本発明の耐熱合金への化学蒸着アルミナイド皮
膜を生成するための装置を示す構成図
【図5】Alハロゲン化ガス〜アルミナイド皮膜を形成
する各々の反応の特性図
【図6】耐熱合金表面に形成されるアルミナイド皮膜の
形態と処理温度との関係の説明図
【図7】NiとAlとの組成比率が異なるいくつかの金
属間化合物についての耐食耐酸化性、疲労強度、及びじ
ん性の特性図
【図8】本発明の化学蒸着アルミナイド部材の耐食耐酸
化性特性の説明図
【図9】本発明の化学蒸着アルミナイド部材の耐熱衝撃
特性の説明図
【符号の説明】
1 耐熱合金 2 コーティング層 3 ガス供給系 4 Al原料器 5 Al溶湯 6 反応容器 7 排気スクラバ系 8 被処理品 9 ポンプ 10 スクラバ 11 ヒータ

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni又はCoをベースとした被処理品の
    耐熱合金内側でAl組成比率の小さなアルミナイド皮膜
    を、前記耐熱合金外側でAl組成比率の大きなアルミナ
    イド皮膜を生成させたことを特徴とする耐熱合金の化学
    蒸着アルミナイド部材。
  2. 【請求項2】 Ni又はCoをベースとした被処理品の
    耐熱合金内側は、Al組成比率の小さなアルミナイド皮
    膜とし、耐熱合金外側に向かって徐々にAl組成比率を
    傾斜させ、前記耐熱合金外側はAl組成比率の大きなア
    ルミナイド皮膜としたことを特徴とする耐熱合金の化学
    蒸着アルミナイド部材。
  3. 【請求項3】 Ni又はCoをベースとした被処理品の
    耐熱合金とAl溶湯とを高温に加熱される反応容器に収
    納し、Al原料器から前記Al溶湯にAlCl3 を供給
    し、前記Al溶湯からAlClとH2 との混合ガスを前
    記耐熱合金に供給し、前記耐熱合金の表面に化学蒸着ア
    ルミナイド皮膜を生成させるようにしたことを特徴とす
    る化学蒸着アルミナイド部材の形成方法。
  4. 【請求項4】 前記Al溶湯からのAlClは、最初は
    その量を低くし、徐々にその量を高くし、耐熱合金内側
    から外側へ向かってのAl組成比率を傾斜させたアルミ
    ナイド皮膜を生成させるようにしたことを特徴とする請
    求項3に記載の化学蒸着アルミナイド部材の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記Al溶湯の温度は、最初はその温度
    を低くし、徐々にその温度を高くし、耐熱合金内側から
    外側へ向かってのAl組成比率を傾斜させたアルミナイ
    ド皮膜を生成させるようにしたことを特徴とする請求項
    3に記載の化学蒸着アルミナイド部材の形成方法。
  6. 【請求項6】 最初は前記Al溶湯でのAlCl3 ガス
    と溶融Alとの接触面積を小さくし、徐々にAl溶湯で
    のAlCl3 ガスと溶融Alとの接触面積を大きくし、
    耐熱合金内側から外側へ向かってのAl組成比率を傾斜
    させたアルミナイド皮膜を生成させるようにしたことを
    特徴とする請求項3に記載の化学蒸着アルミナイド部材
    の形成方法。
  7. 【請求項7】 前記AlCl3 ガスを前記Al溶湯での
    溶融Al中にバブリングすることにより、前記Al溶湯
    でのAlCl3 ガスと前記溶融Alの接触面積を増大さ
    せたことを特徴とした請求項6に記載の化学蒸着アルミ
    ナイド部材の形成方法。
  8. 【請求項8】 前記Al溶湯中の溶融Alに振動を加え
    ることにより、前記Al溶湯でのAlCl3 ガスと前記
    溶融Alの接触面積を増大させたことを特徴とした請求
    項6に記載の化学蒸着アルミナイド部材の形成方法。
  9. 【請求項9】 最初は前記被処理品の温度を低くし、徐
    々に前記被処理品の温度を高くし、耐熱合金内側から外
    側へ向かってのAl組成比率を傾斜させたアルミナイド
    皮膜を生成させるようにしたことを特徴とする請求項3
    に記載の化学蒸着アルミナイド部材の形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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FR2860245A1 (fr) * 2003-09-29 2005-04-01 Howmet Res Corp Methode de formation de revetements de diffusion a base d'aluminure
US9909202B2 (en) 2014-05-02 2018-03-06 General Electric Company Apparatus and methods for slurry aluminide coating repair

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