JPH08259597A - 病原体付着阻害蛋白質及びその生産方法 - Google Patents

病原体付着阻害蛋白質及びその生産方法

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JPH08259597A
JPH08259597A JP7087626A JP8762695A JPH08259597A JP H08259597 A JPH08259597 A JP H08259597A JP 7087626 A JP7087626 A JP 7087626A JP 8762695 A JP8762695 A JP 8762695A JP H08259597 A JPH08259597 A JP H08259597A
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protein
asialo
bifidobacterium
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affinity
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JP7087626A
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Shigeru Fujiwara
茂 藤原
En Hashiba
炎 橋場
Tetsuji Hirota
哲二 廣田
Efu Fuoosunaa Jiyanetsuto
エフ フォースナー ジャネット
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Original Assignee
Snow Brand Milk Products Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 アシアロGM1に親和性を有する病原体の前
記アシアロGM1への付着を阻害することを特徴とする
ビフィドバクテリウム属に属する細菌が生産する蛋白
質。脱脂乳培地または半合成培地で、ビフィドバクテリ
ウム属に属する細菌を培養し、培養後に培養上清から蛋
白質を分離することを特徴とする前記蛋白質の生産方
法。前記蛋白質に結合性を有する抗体。 【効果】 本発明の蛋白質を使用することにより、アシ
アロGM1に親和性を有する病原体への感染を予防する
こと及びその感染症の治療をすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビフィドバクテリウム
(Bifidobacterium )属に属する細菌が生産する新規な
病原体付着阻害蛋白質、その生産方法及びその蛋白質に
対する抗体に関する。本発明の新規な蛋白質は、医薬
品、食品、食品添加物、生化学試薬等の多様な用途に利
用することが可能である。
【0002】
【従来の技術】ラクトバシラス(Lactobacillus)また
はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium )属に属す
る所謂腸内細菌は、ヒト消化管における主要細菌であ
る。これら腸内細菌は有機酸を生産し、さらにこれらの
あるものは、抗菌物質を生産すること等の性質を有する
ことから、腸内環境の維持改善に寄与するものと期待さ
れている。このため、予防的生物(probiotics)とし
て、整腸作用、便秘改善作用、感染防御作用の用途に使
用されている。また、最近では、宿主免疫系に対する活
性化因子としての働きも明らかとなり、種々のデータが
蓄積されている。このため最近では特に、潜在的な免疫
活性化因子としての作用も期待されるようになってきて
いる。
【0003】ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium
)属に属する細菌の感染防御活性に関する知見として
は、主としてインビボ(in vivo)の研究、特に臨床実
験や微生物叢がすべて知られているノトバイオート動物
(gnotobiotic animal)を用いた研究から、ビフィドバ
クテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)と大
腸菌(E.coli)との腸内フローラ内での拮抗現象が観察
され、この結果、両属の拮抗関係が存在することが知ら
れていた(Shoji Yamazaki et al. Bifidobacteria Mic
roflora,Vol.1,p55-59,1982) 。しかしながら、そのメ
カニズムについては、明らかとはなっていなかった。ま
たインビトロ(in vitro)の実験系においても、ビフィ
ドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve )
の培養上清中には、Hela細胞への赤痢菌(Shigella
flexineri)の付着を阻害する蛋白性因子が存在するこ
とが知られていた(Rintaro Nakaya,Bifidobacteria Mic
roflora,Vol.3,p3-9,1984) 。しかし、この因子がどの
ような特性を有するものであるのか、あるいはその付着
阻止のメカニズムや有効スペクトルがいかなるものであ
るのかについては全く検討されていなかった。さらに、
その活性因子の単離に関しても、全く検討されていなか
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、ビ
フィドバクテリウムに属する細菌が生産する新規な感染
防御蛋白質、その生産方法及びその蛋白質に対する抗体
を提供することを目的とする。本発明は、特に、アシア
ロGM1に親和性を示す病原体(パソジェン)(例:病
原性大腸菌、緑膿菌、プロテウス、カンピロバクター、
ロタウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シュー
ドモナススペーシア等)が、アシアロGM1へ付着する
ことにより感染が成立する際に、このアシアロGM1へ
の病原体の付着を拮抗的に阻害する新規蛋白質及びその
生産方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記ビフ
ィドバクテリウム(Bifidobacterium )属に属する細菌
が生産する有機酸(乳酸及び酢酸)以外の感染防御因子
のうち、従来知られていなかった機作を有する新規な感
染防御蛋白質を初めて見い出し、本発明を完成した。即
ち、本発明は、アシアロGM1に親和性を有する病原体
の前記アシアロGM1への付着を阻害することを特徴と
するビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属
する細菌が生産する新規蛋白質からなる。本発明の蛋白
質は下記の特性を有しており、下記の特性値〜に
より特定される。 アシアロGM1に付着性を有する病原体のアシアロG
M1への付着を阻害または抑制する性質を有する。 分子量:ゲルろ過法で測定した場合は、約104,0
00であり、SDS−PAGE法で測定した場合は、約
52,000である。 等電点:約5.8 サブユニット構造:ホモダイマー構造 N末端アミノ酸配列: Val-Asp-Pro-His-Ala-Ile-Val-Pro-Ser-Asn-Phe-Asp-Ph
e-Ala-Phe-Leu- また、本発明の蛋白質は、アシアロGM1をレセプター
とする大腸菌、緑膿菌、プロテウス、カンピロバクタ
ー、ロタウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス等の
病原体がこのレセプターに結合することを阻害する機能
を有する。
【0006】本発明の蛋白質を生産するビフィドバクテ
リウム(Bifidobacterium)属に属する細菌としては、
特に限定されず、いずれの細菌であっても本発明の蛋白
質を生産することができる。これらの細菌の例として
は、例えば、ビフィドバクテリウム・アニマリス(B.an
imalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifi
dum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.i
nfantis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム
(B.pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・アドレセ
ンティス(B.adrescentis) 、ビフィドバクテリウム・
ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガ
ム(B.longum)等の代表的なビフィドバクテリウム(Bi
fidobacterium)属に属する細菌を挙げることができ
る。本発明者らは、これらのビフィドバクテリウム(Bi
fidobacterium)属に属する細菌が、それらの培養液中
に本発明の蛋白質を生産することを確認している(下記
実施例1(2)及び図1参照)。
【0007】これらのビフィドバクテリウム(Bifidoba
cterium)属に属する細菌の中でも、特にビフィドバク
テリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)に属す
る細菌を用いることが好ましい。ビフィドバクテリウム
・ロンガム(Bifidobacterium longum)は、成人消化管
内に存在し、感染防御に重要な役割を果しており、また
入手も容易である。ビフィドバクテリウム・ロンガム
(Bifidobacterium longum)は、種々の菌株が入手可能
であるが、特に本発明において好ましい株として、工業
技術院生命工学工業技術研究所(旧:工業技術院微生物
工業技術研究所)に寄託されているBifidobacterium lo
ngum SBT 2928(微工研菌寄第10657号(F
ERM P−10657号))を使用することが好まし
い。本株は容易に入手することができる。また、本株
は、特に発酵特性に優れ、マイトージェン活性やオーラ
ルアジュバント活性(日本栄養・食糧学会誌、43巻3
号 p203-208 (1990)、同43巻5号 p327-333(199
0)、同44巻4号 p261-266 (1991))を有する等の
特性を保持している。
【0008】本発明はまた、本発明の蛋白質を生産する
方法にも関する。本発明の蛋白質は、一般的に次の方法
により生産され得る。即ち、ビフィドバクテリウム(Bi
fidobacterium)属に属する細菌を、ヒト、牛、羊、山
羊等の乳またはそれらの脱脂乳を基本とした培地におい
て培養した後に得られるホエー画分、または上記細菌を
ブリッグス肝臓培地(Briggs liver broth)やMRS培
地(MRS broth)等の半合成培地において培養した後に
得られる培養上清を出発物質として、アシアロGM1に
親和性を示す蛋白質画分を調製し、この蛋白質画分を精
製することにより得ることができる。尚、精製の前に、
後に詳しく説明するTLCオーバーレイ阻害アッセイ法
または細胞付着阻害アッセイ法により、目的の活性の存
在を確認することが好ましい。
【0009】本発明の蛋白質は、ビフィドバクテリウム
属(Bifidobacterium)に属する細菌を培養することに
よって、それらの菌体外に産生されるが、場合によって
は、菌体内から菌体を破砕して回収することもできる。
本発明の蛋白質の精製は、通常、ゲルろ過クロマトグラ
フィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティ
ークロマトグラフィー等の公知の精製操作を適宜組み合
わせて行うことができる。特にアフィニティークロマロ
グラフィーは、本発明の蛋白質が親和性を有する糖脂質
アシアロGM1を固定化した担体を用いることもでき
る。また、このような公知のクロマトグラフィーにより
部分精製した蛋白質を抗原として動物を免疫し、ポリク
ローナル抗体もしくはモノクローナル抗体を得て、これ
を用いて精製することもできる。
【0010】以下、本発明を、ビフィドバクテリウム・
ロンガム(Bifidobacterium longum)を使用した場合を
例に挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこの菌種
及び下記の方法、手順等に限定されるものではない。ビ
フィドバクテリウムに属する細菌を、乳若しくは脱脂乳
培地または合成若しくは半合成培地を用いて培養する。
特に、脱脂乳培地及び半合成培地が好ましい。培養は、
それぞれの菌種や菌株の最適条件において行なえばよ
い。通常は、0.3%酵母エキスを含む10%脱脂乳に
おいて培養したシードカルチャーを、直前に調製したブ
リッグス肝臓培地に、0.1〜0.5%になるように接種
する。ブリッグス肝臓培地は、「JCM Catalogue of Str
ains」に記載の方法に従って調製する(JCM Catalogue
of Strains、Fifth Edition、p402;Edited by Takashi
Nakase)。その後、恒温槽に静置し、35〜40℃で
48〜96時間、特に好ましくは37℃で72時間培養
を行う。
【0011】培養終了後に、培養物を遠心分離(15,
000rpm、10分間)し、沈殿を除去した後、グラス
ファイバーフィルターを用いて培養上清を吸引ろ過す
る。この上清を、10N NaOHで中和(pH6.0〜
7.0)した後、硫酸アンモニウム沈殿法等の方法によ
り蛋白質画分を回収する。硫酸アンモニウム沈殿を行う
場合は、粉砕硫酸アンモニウムを使用して、85%飽和
とする。4℃において一晩放置した後、再度、遠心分離
(15,000rpm、10分間)し、生じた沈殿画分を回
収する。この沈殿を水に再溶解し、水に対して充分に透
析を行う。透析膜は、10,000カット以上の能力を
有する膜を用いて行なえばよいが、特に、12,000
〜14,000の分画分子量を透析処理する能力を有す
る膜を用いることが望ましい。約1昼夜透析した後、凍
結乾燥を行い、粉末化するかまたは凍結保存し、次の精
製工程を行う。
【0012】(1)第1回クロマトグラフィーゲルろ過クロマトグラフィー 上記の凍結乾燥した試料を、約6〜8倍量の蒸留水に溶
解し、これをゲルろ過クロマトグラフィーにかける。ゲ
ルろ過クロマトグラフィー用担体としては、分画分子量
100,000以下のものが好ましく、例えば、0.04
%濃度のNaN3を含む生理食塩緩衝液(PBS)で平
衡化したアクリルアミドゲルカラム、例えば、バイオラ
ッドバイオゲル(BioRad Biogel)P100カラム(バ
イオラッド社製)等を挙げることができる。この担体
に、上記凍結乾燥試料を蒸留水に溶解した溶液または凍
結から解凍した試料を負荷し、最初に溶出してくるフラ
クションを回収する。この画分を回収し、上記と同様の
膜を用いて水に対して透析を行い、透析を終了した後、
−80℃で凍結保存する。
【0013】(2)第2回クロマトグラフィーイオン交換クロマトグラフィー イオン交換クロマトグラフィー用担体としては、ジエチ
ルアセチルエチル化架橋セルロース、例えばDEAE−
セファロース(ファルマシア製)を用いる。このクロマ
トグラフィーカラムを25mMのジエチルアミノエチル
(DEAE)緩衝液(pH8.5)で平衡化し、上記
(1)のP100カラムにより得られたボイドボリュー
ム画分を負荷し、さらに上記(1)と同じ緩衝液で洗浄
し、NaClの直線濃度勾配で蛋白質を溶出する。活性
は下記実施例に記載の方法でモニタリングし、活性画分
を含む蛋白質画分を濃縮脱塩した後、−80℃で保存す
る。
【0014】(3)第3回クロマトグラフィー疎水性クロマトグラフィー 疎水性クロマトグラフィー用担体としては、疎水性クロ
マトグラフィー用担体で架橋セルロースにオクチル基を
導入したもの、例えばオクチルセファロース(ファルマ
シア製)カラムを用いる。この疎水性クロマトグラフィ
ー用カラムを、1.2Mの硫酸アンモニウムを含む20m
Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化し、上
記(2)のDEAE−セファロース調製蛋白画分(20
mMトリス−塩酸緩衝液)を添加し、同緩衝液にて洗浄
した後、硫酸アンモニウムの直線濃度減少勾配を用いて
蛋白質を溶出する。活性を有する蛋白質画分を、濃縮脱
塩した後に、−80℃で凍結保存する。さらに、この画
分を用いてSDS−アクリルアミドゲル電気泳動を行
い、活性と精製純度の関係を測定しておく。
【0015】(4)第4回クロマトグラファイーゲルろ過クロマトグラフィー ゲルろ過クロマトグラフィー用担体として、アガロース
ビーズ、例えばバイオラッドバイオゲル(BioRad Bioge
l)A(バイオラッド社製)カラムを用いる。このゲル
ろ過クロマトグラフィー用カラムをNaN3を含むPB
Sにより平衡化し、上記(3)の疎水性クロマトグラフ
ィーによって調製した活性蛋白質画分を負荷し、上記
(3)と同一の緩衝液を用いて溶出する。活性を有する
蛋白質画分を、濃縮脱塩した後に、−80℃で凍結保存
する。
【0016】(5)クロマトフォーカシング イオン交換カラム、例えばPBE94(ファルマシア
製)カラムを、25mMイミダゾール−HCl緩衝液(p
H7.4)により平衡化する。このカラムに上記(4)で
得た活性蛋白質画分を負荷し、上記(4)と同じ緩衝液
により洗浄する。次いで、希釈したポリバッファー74
−HCl(pH5.0)で溶出する。活性を有する画分
を、脱塩した後、濃縮乾燥し、粉末とする。次いで、食
塩濃度勾配で溶出を行い、脱塩後、凍結乾燥粉末として
同様に保存する。活性を測定し、活性画分を集める。こ
の段階で、ほぼ単一ピークを示すように精製される。
【0017】(6)純度検定 上記操作で得られた活性画分を、純度検定の目的と分子
量の推定の目的のために、アガロースアクリルアミドポ
リマー、例えばウルトロゲル(Ultrogel)AcA22
(LKB製)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにか
ける。ウルトロゲルを用いた場合、本発明の蛋白質は、
分子量約10万の位置に溶出される。また、11%アク
リルアミドゲルを用いたSDS電気泳動を行った場合、
本発明の蛋白質は、還元条件下、非還元条件下のいずれ
においても、52kDのシングルバンドを与える。
【0018】(7)アシアロGM1コーティングポリス
チレンビーズを用いた精製 本発明の蛋白質は、アシアロGM1に親和性を有する。
従って、アシアロGM1を担体に固定化することによ
り、アシアロGM1を本発明の蛋白質の精製に用いるこ
とができる。アシアロGM1の担体への固定化は、タキ
(Taki)らが報告しているアシアロGM1コーティング
ポリスチレンビーズ法 (Taki et al, J.Biochem., 91,
p1813-1816,1982)に従って行なうことができる。上記
(1)−(6)の各工程にこのカラム処理を組み込んで
精製を行うことにより、本発明の蛋白質の精製効率をさ
らに向上させることができる。
【0019】(8)固定化抗体による精製 上記(7)の方法で精製した本発明の蛋白質若しくは部
分精製した本発明の蛋白質に対するモノクローナル抗体
またはポリクローナル抗体を用いて、本発明の蛋白質を
精製することができる。抗体は、上記の精製または部分
精製蛋白質を抗原として常法に従って調製することがで
きる。得られた抗体を、担体に固定化する。固定化方法
としては、架橋化法または包埋法等の公知の抗体固定化
方法を使用することができる。この抗体固定化担体をカ
ラムに充填した抗体固定化カラムを用いた精製を、上記
(1)の第1回クロマトグラフィーの工程の後に行うこ
とにより、本発明の蛋白質を容易に精製することができ
る。以下に実施例を示し本発明をさらに詳細に説明す
る。
【0020】
【実施例】
実施例1 本実施例では、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifi
dobacterium longum)SBT2928株の培養上清か
ら、本発明の蛋白質を単離し、得られた蛋白質の各精製
段階の活性を検定した。
【0021】(1)活性の検定方法 最初に、下記(2)において得られる本発明の蛋白質の
活性を検定するために用いる方法について説明する。 (a)TLCオーバーレイ阻害アッセイ(Overlay inhi
bition assay)法 本方法は、Karlsson及びStroenbergの方法(Karlsson
K.A.,Stroenberg N.,Methods in Enzymology 138, p220
-232,1987)に準じた方法である。アシアロGM1 5μ
gをスポットし、これを展開(クロロホルム:メタノー
ル:水=60:40:9)したシリカゲルプレートを風
乾した後、一旦水に浸漬し、その後、1%のゼラチン
(ELISA−グレード、バイオラッド製)を含むトリ
ス緩衝化生理食塩水(10mMTris−150mMNa
Cl−0.04%アジ化ナトリウム;pH8.0)にてブロ
ッキング(37℃、50rpm 、一晩)した。対象となる
病原菌については、トリプチケースソイブロース(TS
B)またはM−9培地(Antibodies a laboratory manu
al, p442, Ed Hanlow and David Lanes Eds., Cold Spr
ing Harbor Labolatory Publication)を用いて、35
−メチオニン(放射活性10ml/74MBq)にて代謝ラ
ベル(37℃、150rpm、12〜24時間)した。そ
の後、1%牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩
衝化生理食塩水(PBS;pH7.0)により、病原菌を
遠心洗浄(3回、6,000rpm、5分間)した。場合に
より、その後、被検定蛋白質画分を含む1%BSA添加
PBSに浸漬し、37℃において30分間保持すること
により前処理を行った。
【0022】一方、シリカゲルプレートは、1%BSA
添加PBSにより3回洗浄し(50rpm、10分間)、
場合によってはそのまま、または必要な場合には、同様
に被検定蛋白質画分を含む1%BSA添加PBSにより
37℃において30分間保持することにより前処理を行
い、その後、これをアスピレートして除いた。次いで、
被検定蛋白質画分を含む1%BSA添加PBSにて前処
理をしたラベル病原菌または前処理を施さない病原菌を
加え、37℃にて1時間オーバーレイ(50rpm)を行
った。オーバーレイは、旋回式のシェーカーにより10
mlの病原菌懸濁液とTLCプレートを合わせて旋回させ
て行った。オーバーレイ後、1%BSA添加PBSによ
り6回洗浄し(50rpm、3分間)、風乾した後、オー
トラジオグラムを撮った。必要に応じ、デンシトメトリ
ーにて定量化した後、被検定蛋白質画分の阻害活性を、
主としてIC50値により判定した。IC50値は、下記式
の値を50としたときの被検物質の濃度である。
【0023】
【数1】付着阻害強度=100×(1−被検物質存在下
での付着強度/被検物質存在下での付着強度)
【0024】尚、抗ロタウイルス付着活性に関しては、
ヨードビーズ(Iodobeads)を使用したNa−125I
ラベルを行うウィロービ(Willoughby)ら(J.Virolog
y,64(10),p4830-4835,1990)による方法に準じて、オー
バーレイアッセイを行い、同様に評価することができ
る。
【0025】(b)細胞付着阻害アッセイ(Cell-bindi
ng inhibition assay)法 本方法は、ラウックス(Laux)D.C.らの方法(J.Micr
obiological Methods2:p27-39,1984)に準じた方法であ
る。回盲部アデノカルシノーマ細胞株HCT−8(AT
CC CCL224)を検定細胞として用いる。このH
CT−8細胞を、ATCCの培養指針に従って、100
U/mlペニシリンG、100mg/mlストレプトマイシン
及び10%牛胎児血清(FCS)を含む25mM ヘペス
(HEPES)緩衝化RPMI1640(HEPES−
RPMI−FCS)により継代培養した。アッセイに
は、24穴カルチャープレート(コスター製)を用い
た。通常、1ウェル当たり1×105の細胞(1ml)を
シードし、加湿された5%炭酸ガス雰囲気下で、37℃
において48〜72時間培養し、コンフリュエントの状
態にした。コンフリュエントの状態に達した細胞を、加
温した25mM ヘペス緩衝化ハンクスBSS(HEPE
S−HANK'S)1mlにより洗浄した後、0.5mlの5
%BSA−PBSを加えて、1時間ブロッキングした。
1mlのHEPES−HANK'Sにより2回洗浄した
後、さらに目的蛋白質画分を含む0.5mlのHEPES
−HANK'Sにて30分間プレインキュベート(コン
トロールは、HEPES−HANK'Sのみ)した。こ
れをアスピレートした後、35S−メチオニン(10ml/
74MBq)により代謝ラベルした病原菌(1×109cfu
/0.5mlHEPES−HANK'S)を加え、(場合に
よっては、病原菌自体も、目的蛋白画分を含む0.5ml
のHEPES−HANK'Sにより30分間プレインキ
ュベートしておく)、約2時間インキュベートして付着
を完了させた。1.0mlのHEPES−HANK'Sによ
り6回洗浄した後、0.5mlの1%SDSを含む0.1N
NaOHにより37℃において1時間インキュベート
した。
【0026】その後、すべてを10mlのシンチレーショ
ンカクテル(Ready Protein+、ベックマン製)に加え、
ベータ線の放射活性より付着菌数を測定した。尚、抗ロ
タウイルス付着活性については、HCT−8細胞を標的
として用いた上で、ウィロービ(Willoughby)ら(J.Vi
rology, 64(10), p4830-4835,1990)の方法に従ってア
ッセイを行い、付着阻害活性を測定した。阻害活性は、
上記(a)のオーバーレイアッセイと同様の計算方法に
より、IC50値を求めて判定した。尚、精製工程での検
定はすべて病原性大腸菌を用いて行った。
【0027】(2)ビフィドバクテリウム・ロンガム
(Bifidobacterium longum)SBT2928株培養上清
からの目的蛋白質の単離 ビフィドバクテリウム・ロンガムの代表的な株である上
記ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium
longum)SBT2928株を用いて、本発明の蛋白質を
調製した。この株を、最初に0.3%酵母エキスを含む
10%脱脂乳で培養し、シードカルチャーを調製した。
このシードカルチャーを、直前に調製したブリッグス肝
臓培地(Briggs liver broth)に約3%接種した。その
後、静置で37℃において72時間培養を行った。
【0028】培養物を遠心分離(15,000rpm、10
分間)した後、グラスファイバーフィルターでろ過して
調製した培養上清を、10N NaOHにより中和(pH
6.0)し、粉砕硫酸アンモニウムを添加して、85%
飽和とした。4℃において、一晩放置した後、生じた沈
殿画分を、再度遠心分離(15,000rpm、15分間)
して回収した。この沈殿を水に溶解し、その後、水に対
して充分に透析(分画分子量:12,000〜14,00
0)し、凍結乾燥した。ビフィドバクテリウムに属する
細菌6菌種(ビフィドバクテリウム・アニマリス(B.an
imalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifi
dum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.i
nfantis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム
(B.pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・アドレセ
ンティス(B.adrescentis)及びビフィドバクテリウム
・ブレーベ(B.breve))を同様に培養し、蛋白質画分
を同様に調製した。
【0029】この試料を用いて、上記の細胞付着阻害ア
ッセイ(Cell-binding inhibitionassay)法で、アシア
ロGM1に対する大腸菌の結合阻害活性を測定した。対
照として、ブリッグス培養基、1%BSA添加PBSを
用いた。各細菌から調製した蛋白質画分は、もとの培養
上清の4分の1の量になるように蒸留水に溶解して試験
を行った。試験はTLCオーバーレイアッセイ法で検定
を行ったが、各細菌の培養上清はいずれも強い結合阻害
活性を示した。この結果を図1に示す。尚、この結合阻
害活性は、プロテアーゼ処理によって失活した。
【0030】第1回クロマトグラフィーゲルろ過クロマトグラフィー 0.04%NaN3を含むPBSにて平衡化したバイオラ
ッドバイオゲル(BioRad Biogel)P100カラム(1
50ml:27.6mm内径×250mm長)を用いてゲルろ
過クロマトグラフィーを行った。上記の硫酸アンモニウ
ム沈殿粉末を、6〜8倍量の水に溶解し、得られた溶解
液15mlをこのカラムに負荷した。0.04%NaN3
含むPBSで溶出を行った。溶出画分は、フェノールレ
ッドを740nm、デキストランブルーを550nmで
モニターし、ボイド部分とカラム容量の溶出を確認し
た。次いで、280nmの吸収をモニタリングし、ボイ
ドボリュームに相当する部分を回収した(図2)。この
画分を水に透析した後、−80℃に凍結保存した。
【0031】第2回クロマトグラフィーイオン交換クロマトグラフィー 20mM DEAE緩衝液(ジエチルアミノエチル:pH
8.5)にて平衡化したDEAE−セファロースカラム
(50ml:146mm内径×300mm長)を用いてイオン
交換クロマトグラフィーを行った。このカラムに20m
MDEAE緩衝液で緩衝化した上記のボイドボリューム
画分を負荷した。次いで、このカラムを同じ緩衝液で洗
浄した後、食塩の直線濃度勾配(0−500mM)で溶
出した(図3)。蛋白画分は5つのフラクションに分け
て分取し、活性をTLCオーバーレイアッセイ法で検定
した。活性画分は主としてフラクション3に存在した。
この活性画分を濃縮脱塩後、−80℃に凍結保存した。
【0032】第3回クロマトグラフィー疎水性クロマトグラフィー 1.2Mの硫酸アンモニウムを含む20mMトリス−塩酸
バッファー(pH8.5)で平衡化したオクチルセファロ
ースカラム(15ml:9.7mm内径×200mm長)を用
いたクロマトグラフィーを行った。上記DEAE−セフ
ァロースカラムクロマトグラフィーによって得られた活
性画分を、このカラムの平衡化に用いた緩衝液で平衡化
した後カラムに負荷した。次いで、カラムを同一の緩衝
液で洗浄し、硫酸アンモニウムの直線濃度勾配で溶出し
た。硫酸アンモニウムは1.2M〜0.0M、その後の未
溶出の蛋白質は、CHAPSの0.0%〜1.0%の濃度
勾配で、図4に示したパターンで溶出を行った。蛋白質
画分は、フラクション1〜フラクション9にわけて分取
し、濃縮脱塩後に凍結保存した。活性は主にフラクショ
ン5に集中していた。各フラクションについて、SDS
−PAGE電気泳動を行い、活性画分の存在を確認し
た。7.5%のポリアクリルアミドゲルを用いてレムリ
ーの方法で電気泳動を行った結果を図5に示した。
【0033】第4回クロマトグラフィーゲルろ過クロマトグラフィー 上記疎水性クロマトグラフィーで得た活性フラクション
をゲルろ過クロマトグラフィーに付した。0.04%N
aN3を含むPBSにより平衡化したバイオラッドバイ
オゲル(BioRad Biogel)A0.5mカラム(115ml:
14.56mm内径×690mm長)を用いてクロマトグラ
フィーを行った。上記、疎水性クロマトグラフィーによ
り調製した活性蛋白質試料1.5mlを負荷し、平衡化に
用いたものと同じ緩衝液を用いて溶出した。溶出は28
0nmの吸収でモニタリングし、6つのフラクションを分
取した(図6)。活性の中心はフラクション1に存在し
た。蛋白質画分を濃縮脱塩した後、−80℃に凍結保存
した。
【0034】クロマトフォーカシング 上記のゲルろ過クロマトグラフィーで得た活性画分を、
さらにクロマトフォーカシングにより精製を行った。2
5mMイミダゾール−HCl(pH7.4)で平衡化したP
BE94カラム(10ml:6.5mm内径×300mm長)
を用いてクロマトグラフィーを行った。上記のフラクシ
ョン1の試料を負荷した後、平衡化に使用したものと同
じ緩衝液により洗浄した。次いで、8倍に希釈したポリ
バッファー74−HCl(pH5.0)を用いて、カラムの
10倍容積で溶出し、次いで溶出液を0〜1.0M食塩
の濃度勾配で溶出した。溶出の経過を図7に示す。目的
蛋白質画分は、溶出液を食塩に代えた直後に溶出され
た。図7に示されるメインピークが活性の中心であっ
た。この画分をバイオゲル(バイオラッド社製)P60
により脱塩した後、凍結乾燥にて濃縮し、粉末として−
20℃に保存した。以上の各精製工程での回収率、精製
率及び付着阻害IC50を下記表1に示す。
【0035】
【表1】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− フラクション 容量 蛋白質量 回収率 精製率 付着阻害IC50 (L) (mg) (倍) (mg/ml) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 中和培養上清 20 5000 − − − 塩析沈殿 3500 100 1 0.8 バイオラッド 1600 73.2 1.71 0.5 P100 DEAE− 112 25.6 8.01 0.1 セファロース オクチル− 11.3 5.2 16.09 0.05以下 セファロース バイオゲルA − 0.5m PBE94 0.5 0.46 32.2 0.025 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0036】表1に示されるように、本発明の蛋白質は
32.2倍に精製され、その回収率は0.46%であっ
た。
【0037】実施例2 本実施例では、実施例1で得た本発明の蛋白質の特性値
の分析例を示す。 (1)純度検定、分子量測定 実施例1により得られた蛋白質を、ウルトロゲル(Ultr
ogel)AcA22を用いたゲルろ過クロマトグラフィー
(0.04%NaN3を含むPBSにより平衡化:120m
l;10 mm×1200 mm長)にかけ、ゲルろ過法による分子
量測定を行なった。結果を図8に示す。図8より明らか
であるように、ゲルろ過法により単一のピークを示し
た。この溶出位置から、標準蛋白質をもとに作成したキ
ャリブレーションカーブにより分子量を決定した。本蛋
白質の分子量は、104,000であった(図9)。
【0038】さらに、本蛋白質を、SDS−PAGE
(還元及び非還元の2条件)によるゲル電気泳動を行っ
た。アクリルアミドゲルは11%濃度のものを用い、レ
ムリーの方法により行った。還元は2−メルカトールエ
タノールを添加することにより行った。図10に示すよ
うに、いずれの条件下でも単一バンドとなり、またゲル
電気泳動による分子量は、52,000であった。本発
明の蛋白質は、この分子量52,000の蛋白質が二量
体となったホモダイマーであると推定される。
【0039】(2)等電点電気泳動 本発明蛋白質の等電点を、バイオラッド社の等電点測定
キットを用いて測定した。本発明の蛋白質は単一のバン
ドとなり、等電点(pI)は、5.85であった(図1
1)。
【0040】(3)活性 本発明の蛋白質の生物活性を検定した。実施例1におい
て精製された本発明の蛋白質及び病原性大腸菌(E.coli
Pb176;CFA/II(CS1+CS3))株を用いて、アシアロGM1
への付着阻止を検定した。検定は、TLCオーバーレー
ヤー(OVER LAYER)法で行った。図12に示される結果
から明らかなように、本発明の蛋白質は、病原性大腸菌
のアシアロGM1に対する付着を投与濃度に応じて阻害
した。また、本発明の蛋白質の部分精製物もこの活性を
有していた。実施例1に記載したバイオゲルP100に
よるゲルろ過のボイドボリューム画分と上記病原性大腸
菌株を用いて、細胞付着阻害アッセイ(Cell-binding i
nhibition assay)法で活性を検定した。結果を図13
に示す。本発明の蛋白質は、HCT−8細胞への大腸菌
の付着を顕著に抑制することが明らかである。
【0041】(4)N末端アミノ酸配列 アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社
のモデル477Aを用いて、実施例1で得られた本発明
の蛋白質のN末端アミノ酸配列分析を行い、N末端から
16個目までの配列を決定した。この配列は下記の通り
である。 Val-Asp-Pro-His-Ala-Ile-Val-Pro-Ser-Asn-Phe-Asp-Ph
e-Ala-Phe-Leu-
【0042】実施例3 本実施例では、アシアロGM1をコーティングしたポリ
スチレンビーズを用いた本発明の蛋白質の精製方法を示
す。タキ(Taki)らの方法(J.Biochem., 91,p1813-181
6,1982)により、アシアロGM1コーティングポリスチ
レンビーズを調製し、これを充填したアフィニティカラ
ムを作製した。このカラムを、実施例1の第1回クロマ
トグラフィー後に使用した。カラムは、カラム容量0.
25ml(5mm×12.7mm)で、0.04%NaN3を含
むPBSで平衡化した後、クロマトグラフィー操作を行
った。10mlの試料(蛋白質濃度1mg/ml程度)をカラ
ムに負荷し、その後、0.04%NaN3を含むPBSで
洗浄した。次いで、5mlの1M NaSCNで蛋白質を
溶出し、この溶出蛋白質を水に対して透析した。蛋白質
画分は−80℃で凍結保存するかまたは凍結乾燥した。
このカラム操作により、純度85%以上の本発明の蛋白
質を得ることができた。その後の操作は、実施例1と同
様のクロマトグラフィー操作を行い、純粋な本発明の蛋
白質を得ることができた。回収率は、ほぼ50%であっ
た。
【0043】実施例4 本実施例では、実施例1で得た蛋白質を抗原としてモノ
クローナル抗体を得て、この抗体により本発明の蛋白質
を精製した例を示す。実施例1で得た精製蛋白質で免疫
したBALB/cマウス脾臓細胞とマウスミエローマ細
胞(SP2/O-Ag14)を、常法に従って、ポリエチレングリ
コール存在下で融合させ、ハイブリドーマを作製した。
このハイブリドーマを培養し、得られた目的とするIg
Gクラスの抗体(IgG1)を産生するハイブリドーマを選
択した。無血清培地で培養した当該ハイブリドーマの培
養上清をプロテインAカラム(プロテインA−セファロ
ースカラム)を通過させ、さらに吸着された抗体を、常
法に従ってメチルピメリミデートで固定化した。この抗
体固定化カラムを、実施例1に記載した最初のゲルろ過
クロマトグラフィーの後に使用して、精製を行った。調
製した抗体固定化カラムは、ゲル5ml当たりに蛋白質と
して5mgが固定化されていた。抗体を固定化した担体
を、10mMのリン酸緩衝液(pH6.8)で洗浄した
後、4℃で10mMのリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁
し、試料を加え、2時間撹拌を続け、抗体に本発明の蛋
白質を吸着させた。同一の緩衝液で洗浄した後、担体を
カラム(1cm×6.36cm)に充填し、さらに25mlの
同一緩衝液で洗浄した。100mMのグリシン緩衝液
(pH2.5)で溶出し、蛋白質のフラクションに直ち
に、フラクション量の1/20容量の1Mリン酸緩衝液
(pH8.0)を加えて、中和した。活性の失活はほと
んど認められず、本カラムを用いた1回のクロマトグラ
フィー操作で純度95%以上の本発明の蛋白質を回収す
ることができた。尚、本発明蛋白質で免疫した動物の抗
血清を用いたポリクロナール抗体カラムを用いても同様
の純度の本発明の蛋白質を回収することができた。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、アシアロGM1に親和
性を有する病原体の前記アシアロGM1への付着を阻害
するビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属
する細菌が生産する新規蛋白質及びその生産方法が提供
される。本発明のビフィドバクテリウム(Bifidobacter
ium )属に属する細菌が生産する蛋白質を使用すれば、
アシアロGM1に親和性を有する病原体への感染を予防
すること及びそれらの病原体の感染症の治療をすること
ができる。さらに、本発明によれば、本発明の蛋白質に
結合性を有する抗体が提供される。この抗体を用いれ
ば、本発明の蛋白質を精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属
に属する細菌の培養上清が、病原性大腸菌のアシアロG
M1への付着阻害活性を有することを確認した結果を示
すグラフである。グラフは、平均値±SDの値を示す。
【図2】バイオラッドバイオゲルP100カラムによる
ゲルろ過クロマトグラフィーのパターンを示す。図中の
デキストランブルーの溶出位置はボイドボリュームを示
し、フェノールレッドの溶出位置はカラムボリュームを
示す。
【図3】DEAE−セファロースカラムによるイオン交
換クロマトグラフィーのパターンを示す。
【図4】オクチルセファロースカラムによるクロマトグ
ラフィーのパターンを示す。上段は、硫酸アンモニウム
の濃度勾配及びCHAPS緩衝液の濃度勾配を示す。
【図5】オクチルセファロースカラムによるクロマトグ
ラフィーで得たフラクションのSDSゲル電気泳動パタ
ーンを示す。
【図6】バイオゲルAを用いたクロマトグラフィーのパ
ターンを示す。中心の活性は、フラクション1の画分に
存在する。
【図7】PBE94カラムを用いたクロマトグラフィー
のパターンを示す。上段はポリバッファー74−HCl
(pH7.4)により溶出する際のpH変化及び食塩濃
度勾配を示す。
【図8】ウルトロゲルAcA22カラムを用いたゲルろ
過クロマトグラフィーのパターンを示す。
【図9】ゲルろ過法クロマトグラフィーにより測定した
溶出時間から推定した本発明の蛋白質の推定分子量を求
めた検量線を示す。
【図10】本発明の蛋白質の還元状態、非還元状態のS
DS−PAGEゲル電気泳動パターンを示す。
【図11】本発明の蛋白質の等電点を決定した検量線を
示す。
【図12】本発明の蛋白質が大腸菌のアシアロGM1へ
の付着を阻害する活性をTLCオーバーレーヤー法で検
定した結果を示す。
【図13】本発明の蛋白質が大腸菌のアシアロGM1へ
の付着を阻害する活性を細胞付着阻害アッセイ法で検定
した結果を示す。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アシアロGM1に親和性を有する病原体
    の前記アシアロGM1への付着を阻害することを特徴と
    するビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属
    する細菌が生産する蛋白質。
  2. 【請求項2】 下記特性値で特定される請求項1記載の
    蛋白質。 分子量:ゲルろ過法で測定した場合は、約104,00
    0で、SDS−PAGE法で測定した場合は、約52,
    000 等電点:約5.8 サブユニット構造:ホモダイマー構造 N末端アミノ酸配列: Val-Asp-Pro-His-Ala-Ile-Val-Pro-Ser-Asn-Phe-Asp-Ph
    e-Ala-Phe-Leu-
  3. 【請求項3】 アシアロGM1に親和性を有する病原体
    が、大腸菌、緑膿菌、プロテウス、カンピロバクター、
    ロタウイルス、レオウイルスまたはポリオウイルスに属
    するものである請求項1または2記載の蛋白質。
  4. 【請求項4】 ビフィドバクテリウム(Bifidobacteriu
    m)属に属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガ
    ム(Bifidobacterium longum)SBT 2928(工業
    技術院生命工学工業技術研究所(旧:工業技術院微生物
    工業技術研究所)受託番号「微工研菌寄第10657号
    (FERM P−10657)」)である請求項1〜3
    のいずれかに記載の蛋白質。
  5. 【請求項5】 脱脂乳培地または半合成培地で、ビフィ
    ドバクテリウム属に属する細菌を培養し、培養後に培養
    上清から蛋白質を分離することを特徴とする請求項1〜
    4のいずれかに記載の蛋白質の生産方法。
  6. 【請求項6】 培養上清を回収する際に、アシアロGM
    1をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィー
    を使用することを特徴とする請求項5記載の蛋白質の生
    産方法。
  7. 【請求項7】 培養上清を回収する際に、請求項1〜4
    いずれかに記載の蛋白質に対する抗体を用いたアフィニ
    ティークロマトグラフィーを使用することを特徴とする
    請求項5記載の蛋白質の生産方法。
  8. 【請求項8】 ビフィドバクテリウム(Bifidobacteriu
    m)属に属する細菌が生産しアシアロGM1に親和性を
    有する病原体のアシアロGM1に対する付着を阻害する
    ことを特徴とする蛋白質に結合性を有する抗体。
  9. 【請求項9】 抗体が、モノクローナル抗体である請求
    項8記載の抗体。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2522358A1 (en) 2007-06-27 2012-11-14 Laboratorios Ordesa, S.l. Peptides against rotavirus infection

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2522358A1 (en) 2007-06-27 2012-11-14 Laboratorios Ordesa, S.l. Peptides against rotavirus infection

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