JPH08255668A - イオン生成装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】イオン生成装置により大気中に生成・放出する
正負の空気イオンのバランス量を極めて簡単な構成でし
かも安価に調整することができるイオン生成装置を提供
する。 【構成】正負の放電電極２，３に隣接して接地電極５を
設け、接地電極５を可変抵抗９を介して接地する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、空気中でコロナ放電を
発生させて、正負の空気イオンを大気中に生成・放出す
る直流式のイオン生成装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、イオン生成装置としては、直流式
のものが一般に知られており、この直流式のイオン生成
装置は正の放電電極及び負の放電電極にそれぞれ正の直
流高電圧及び負の直流高電圧を印加して空中にコロナ放
電を生ぜしめる。この時、正の直流高電圧が付与される
放電電極のコロナ放電によって、正の空気イオンが生成
されて放出され、負の直流高電圧が付与される放電電極
のコロナ放電によって、負の空気イオンが大気中に生成
されて放出される。

【０００３】このようなイオン生成装置にあっては、大
気中に生成・放出した空気イオンによって、帯電物の電
荷を中和することが可能であるため、一般に、帯電体の
除電を行うために使用される。そして、このような除電
を行う場合、要求される除電の程度や、除電を行う帯電
物の性質、あるいは環境等によって、正負の空気イオン
のバランス量（生成・放出される正負の空気イオンのそ
れぞれの量の相対的な割合）を調整する必要が生じる場
合が多々ある。

【０００４】すなわち、前記直流式のイオン生成装置を
用いて、例えば負に帯電した帯電体を除電する場合、該
帯電体は大気中に生成・放出された正の空気イオンによ
って中和されるものの、前記直流式のイオン生成装置
は、正負それぞれの空気イオンを各別に定常的に生成・
放出するため、正の空気イオンが負の空気イオンに較べ
て過剰に生成・放出されていると、一旦、正の空気イオ
ンによって中和された帯電体が、その後に生成・放出さ
れた正の空気イオンによって当初の帯電極性とは逆に正
に帯電してしまう。この場合、正負それぞれの空気イオ
ンの生成・放出される量が均等になるようにあらかじめ
設定しておけば、基本的には、上記のような不都合生じ
ることなく該帯電体を除電することが可能であるもの
の、例えば負に帯電し易い帯電体の除電や、負の帯電を
生じ易い環境下での除電に際しては、正の空気イオンの
量を負の空気イオンの量よりも多めにする等、正負の空
気イオンのバランス量を調整する必要がある。また、放
電電極の汚れ等によっても正負の空気イオンのバランス
量のずれを生じる場合もあり、このような場合にも正負
の空気イオンのバランス量を調整する必要がある。

【０００５】特に、半導体製品の製造ライン等において
除電を行う場合には、帯電体の僅かな帯電が製造上の支
障をきたす虞れが高いため、正負の空気イオンのバラン
ス量を除電環境等に則して的確に調整を行う必要性が高
い。

【０００６】さらに、除電用のイオン生成装置を製造し
て出荷するに際しても、各イオン生成装置の作動時に生
成・放出される正負の空気イオンの量は、同種の装置で
あっても装置毎にばらつきを生じることがあるため、正
負の空気イオンのバランス量を装置毎に調整する必要が
生じる場合が多々ある。

【０００７】このような正負の空気イオンの量の割合を
調整するために、従来は、放電電極に印加する正負の直
流高電圧の大きさを調整することにより行われていた。
しかしながら、このように放電電極に印加する高電圧を
調整するためには、一般に高電圧電源の構成が複雑なも
のとならざるを得ず、また、コスト的にも高価なものと
なるという不都合があった。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる不都合
を解消し、直流式イオン生成装置により大気中に生成・
放出する正負の空気イオンのバランス量を極めて簡単な
構成でしかも安価に調整することができるイオン生成装
置を提供することを目的とする。

【０００９】さらに、正負の空気イオンのバランス量を
簡単に把握することができるイオン生成装置を提供する
ことを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明は、正の放電電極と、負の放電電極と、前
記正の放電電極及び負の放電電極にそれぞれ正の直流高
電圧及び負の直流高電圧を印加して直流コロナ放電を生
ぜしめる直流高圧電源とを備え、各放電電極の直流コロ
ナ放電により各放電電極の極性に対応した正の空気イオ
ン及び負の空気イオンを大気中に生成・放出するイオン
生成装置において、前記両放電電極に隣接して接地電極
を設け、該接地電極を抵抗値を調整可能な可変抵抗を介
して接地したことを特徴とする。

【００１１】さらに、前記接地電極の電位に応じた表示
を行う表示手段を備えたことを特徴とする。

【００１２】また、前記接地電極の電位を検出する電位
検出手段と、該接地電極の電位と正負の空気イオンの生
成状態とのあらかじめ定められた相関関係に基づき、前
記電位検出手段により得られた前記接地電極の検出電位
に対応する正負の空気イオンの生成状態を表示する表示
手段とを備えたことを特徴とする。

【００１３】

【作用】本発明によれば、前記正負の放電電極の直流コ
ロナ放電によりそれぞれ生成されて放出される正負の空
気イオンは、その一部が前記接地電極に捕獲されて前記
可変抵抗に電流が流れ、該接地電極に電位が生じる。そ
して、該接地電極に生じる電位は可変抵抗の抵抗値を増
減することで変化し、該接地電極に生じる電位が正方向
に増加すると、正の空気イオンは該接地電極に捕獲され
にくくなると同時に負の空気イオンは該接地電極に捕獲
されやすくなって、大気中に生成・放出される正の空気
イオンが負の空気イオンに較べて増加し、両空気イオン
のバランス量が正側に偏っていく。逆に、接地電極に生
じる電位が負方向に増加すると、正の空気イオンは該接
地電極に捕獲されやすくなると同時に負の空気イオンは
該接地電極に捕獲されにくくなって、大気中に生成・放
出される負の空気イオンが正の空気イオンに較べて増加
し、両空気イオンのバランス量が負側に偏っていく。こ
れにより、前記可変抵抗の抵抗値を調整することで、大
気中に生成・放出される正負の空気イオンのバランス量
を調整することが可能となる。

【００１４】また、本願発明の発明者等の知見によれ
ば、前記可変抵抗の調整により生じる前記接地電極の電
位の変化は、正負の空気イオンのバランス量との間にほ
ぼ一定の相関関係を有し、正負の空気イオンのバランス
量は、その時の接地電極の電位に対応したものとなる。
そこで、前記接地電極の電位に応じた表示を行う前記表
示手段を備えることで、該表示手段の表示により、生成
・放出される正負の空気イオンの生成状態を把握するこ
とが可能となる。

【００１５】また、前記接地電極の電位を前記電位検出
手段により検出し、その検出電位から前記の相関関係に
基づき、正負の空気イオンの生成状態を表示手段に表示
することも可能となり、その表示により直接的に正負の
空気イオンの生成状態を把握することが可能となる。

【００１６】

【実施例】本発明の一実施例を図１及び図２を参照して
説明する。図１は本実施例のイオン生成装置及びそのイ
オン生成装置による正負空気イオンの生成状態を観測す
るための帯電プレートモニタ装置の説明的構成図、図２
は図１のイオン生成装置による正負の空気イオンの生成
状態を示す線図である。

【００１７】図１を参照して、本実施例のイオン生成装
置１は所定の間隔を存して配置された正の放電電極２及
び負の放電電極３と、放電電極２，３に接続された直流
高圧電源４と、両放電電極２，３間に両放電電極２，３
に隣接して配置された接地電極５と、これらを収容した
筐体６とを備えている。直流高圧電源４は、イオン生成
装置１の作動時に正負の直流高電圧をそれぞれ独立に生
成し、それを正の放電電極２及び負の放電電極３に印加
する。本実施例では、各放電電極２，３に印加する正負
の直流高電圧は、例えば＋５ｋＶ、−５ｋＶである。

【００１８】筐体６には、両放電電極２，３の先端側に
臨んで開口７が形成されている。そして、両放電電極
２，３の後方には、送風ファン８が設けられ、この送風
ファン８は、イオン生成装置１の作動時に、ファンモー
タ８ａにより回転駆動されて両放電電極２，３の後方か
ら筐体６の開口７に向かって送風する。

【００１９】接地電極５は、可変抵抗９を介して適宜の
外部接地部１０に接地され、該可変抵抗９は図示しない
操作子の操作によりその抵抗値を調整可能とされてい
る。本実施例では可変抵抗９は例えば０〜１００ＭΩの
範囲で抵抗値を可変としている。また、接地電極５と可
変抵抗９との間には、外部接地部１０に対する接地電極
５の電位を検出してそれを表示する電位計１１（表示手
段）が接続されている。尚、接地電極５は正負の放電電
極２，３の間で若干、負の放電電極３寄りの位置に設け
られている。

【００２０】かかるイオン生成装置１においては、直流
高圧電源４を起動すると、各放電電極２，３にそれぞれ
正の直流高電圧及び負の直流高電圧が印加され、各放電
電極２，３のコロナ放電が生じる。そして、そのコロナ
放電により、正の放電電極２側にあっては正の空気イオ
ンａが、負の放電電極３側にあっては負の空気イオンｂ
がそれらの放電電極２，３の前方の大気中に生成されて
放出される。そして、この時、送風ファン８を駆動する
ことにより、生成された正負の空気イオンａ，ｂが放電
電極２，３の前方に向かって流れる。

【００２１】この場合、生成された正負の空気イオン
ａ，ｂの一部は、筐体６内で前記接地電極５に捕獲さ
れ、それにより、該接地電極５と外部接地部１０との間
で可変抵抗９を介して電流が流れ、接地電極５に電位が
生じる。そして、この状態で、可変抵抗９の抵抗値を調
整すると、それに応じて接地電極５の電位が増減し、そ
れによって、各放電電極２，３のコロナ放電により生成
・放出される正負の空気イオンａ，ｂのバランス量が変
化する。

【００２２】このような正負の空気イオンａ，ｂの生成
状態の変化の様子を観測した試験について次に説明す
る。

【００２３】図１において、１２はイオン生成装置１に
よる正負の空気イオンａ，ｂの生成状態を観測するため
の帯電プレートモニタ装置であり、この帯電プレートモ
ニタ装置１２は、その本体部１３に複数の絶縁体１４，
１４を介して装着された１５０ｍｍ角の金属製プレート
１５を備え、該金属製プレート１５の電位を測定するも
のである。

【００２４】この帯電プレートモニタ装置１２のプレー
ト１５を前記イオン生成装置１の放電電極２，３に対向
配置し、この状態で前述のようにイオン生成装置１を作
動させつつ前記可変抵抗９の抵抗値を種々の値に調整
し、この時、帯電プレートモニタ装置１２のプレート１
５に生じる電位を測定すると共に、接地電極５に生じた
電位を前記電位計１１により計測した。この場合、プレ
ート１５に生じる電位は、イオン生成装置１により生成
・放出される正負の空気イオンａ，ｂのうち、正の空気
イオンａの量が負の空気イオンｂに較べて多いときには
正の電位となり、これと逆の場合には負の電位となる。

【００２５】その測定データを表１に示すと共に、それ
をグラフ化して図２に示す。尚、表１及び図２中の“オ
フセット電圧”は帯電プレートモニタ装置１２のプレー
ト１５に生じた電位である。

【００２６】

【表１】

【００２７】表１及び図２を参照して明らかなように、
可変抵抗９の抵抗値を増加させていくと、接地電極５の
電位は負電位で、その大きさが可変抵抗９の抵抗値の増
加に伴って漸増していく。また、オフセット電圧はその
大きさが正側から漸減し、その後、負側に漸増してい
き、このことは、可変抵抗９の抵抗値の増加によって接
地電極５の電位が負側に増加するに伴って、生成・放出
される正の空気イオンａの量が負の空気イオンｂの量に
較べて相対的に減少していくことを示している。これ
は、接地電極５の電位が負側に増加すると、正の空気イ
オンａが接地電極５に捕獲され易くなると同時に負の空
気イオンｂが該接地電極５に捕獲され難くなって、放電
電極２，３の前方の大気中に生成・放出される正の空気
イオンａの量が減少すると共に負の空気イオンｂの量が
増加するためと考えられる。尚、可変抵抗９の抵抗値が
０Ωのとき（接地電極５が外部接地部１０に直接的に接
地されているとき）に、オフセット電圧が正の電圧で、
正の空気イオンａの量が負の空気イオンｂの量よりも多
くなっているが、これは、接地電極５を負の放電電極３
寄りの位置に設けたため、負の空気イオンｂが正の空気
イオンａに較べて接地電極５に捕獲されやすくなってい
るためである。

【００２８】上記の試験データから、本実施例のイオン
生成装置１によれば、可変抵抗９の抵抗値を調整するこ
とで、生成・放出される正負の空気イオンａ，ｂのバラ
ンス量を調整することができることが判る。

【００２９】また、図２に見られるように、正負の空気
イオンａ，ｂのバランス量を示すオフセット電圧は接地
電極５の電位との間に相関関係をもち、従って、その相
関関係をあらかじめグラフデータ等として用意しておけ
ば、前記電位計１１により表示される接地電極５の電位
に基づき、その電位に対応して生成・放出されている正
負の空気イオンａ，ｂのバランス量を把握することがで
きる。例えば電位計１１により表示されている接地電極
５の電位が、−３０Ｖであれば、図３のデータから、正
負の空気イオンａ，ｂの量がほぼ均等なものとなってい
ることが把握できる。

【００３０】さらに、この場合、例えば生成・放出され
る正負の空気イオンａ，ｂのバランンス量をそれらの空
気イオンａ，ｂの生成状態として、それを表示するよう
にすることも可能である。この場合には、図１に破線で
示すように、接地電極５の電位を検出する電位検出器１
６（電位検出手段）と表示装置１７（表示手段）とを備
え、表示装置１７には、接地電極５の電位と、正負の空
気イオンａ，ｂの量の割合を示す例えば前記オフセット
電圧との相関関係を示すデータを図示しないメモリに記
憶保持しておく。そして、イオン生成装置１の作動に際
して、電位検出器１６により検出された接地電極５の電
位に基づき、表示装置１７により上記のデータを用いて
該検出電位に対応するオフセット電圧を求め、それを空
気イオンａ，ｂのバランス量を示すものとして表示す
る。このようにすることで、該表示装置１７の表示によ
り、正負の空気イオンａ，ｂの生成状態を直接的に容易
に把握することができる。そして、正負の空気イオン
ａ，ｂの生成状態を把握しながら随意に可変抵抗９の抵
抗値を調整して正負の空気イオンａ，ｂのバランス量を
所望のバランス量に調整することができる。

【００３１】尚、以上説明した実施例においては、電位
計１１により接地電極５の電位そのものを表示するよう
にしたが、例えば多数のＬＥＤをバー状に並べ、接地電
極５の電位に応じてそれらのＬＥＤを棒グラフ状に点灯
表示させるようにしてもよい。

【００３２】

【発明の効果】上記の説明から明らかなように、本発明
によれば、直流式のイオン生成装置において正負の放電
電極に隣接して接地電極を設け、該接地電極を可変抵抗
を介して接地したことによって、前記可変抵抗の抵抗値
を調整することで、各放電電極のコロナ放電により生成
・放出される正負の空気イオンのバランス量を容易に調
整することができると共に、そのような調整を可変抵抗
を用いた極めて簡単且つ安価な構成で行うことができ
る。

【００３３】また、接地電極の電位に応じた表示を行う
表示手段を設けたことによって、該接地電極の電位と相
関関係を有する正負の空気イオンのバランス量を前記表
示手段の表示によって把握することができる。

【００３４】あるいは、接地電極の電位を電位検出手段
により検出し、その検出電位から上記の相関関係に基づ
いて正負の空気イオンの生成状態を表示手段に表示する
ことによって、その表示により、正負の空気イオンの生
成状態を直接的に容易に把握することができる。そし
て、その空気イオンの生成状態を把握しつつ可変抵抗の
抵抗値を調整することで空気イオンの生成状態を容易に
所望の生成状態に調整することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の態様の一例のイオン生成装置及
びそのイオン生成装置による正負空気イオンの生成状態
を観測するための帯電プレートモニタ装置の説明的構成
図。

【図２】図１のイオン生成装置による正負の空気イオン
の生成状態を示す線図。

【符号の説明】

１…イオン生成装置、２，３…放電電極、４…直流高圧
電源、５…接地電極、９…可変抵抗、１１…電位計（表
示手段）、１６…電位検出器（電位検出手段）、１７…
表示装置（表示手段）。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菅野 功 神奈川県横浜市鶴見区元宮１−10−８ シ シド静電気株式会社横浜工場内 (72)発明者 和泉 健吉 神奈川県横浜市鶴見区元宮１−10−８ シ シド静電気株式会社横浜工場内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】正の放電電極と、負の放電電極と、前記正
   の放電電極及び負の放電電極にそれぞれ正の直流高電圧
   及び負の直流高電圧を印加して直流コロナ放電を生ぜし
   める直流高圧電源とを備え、各放電電極の直流コロナ放
   電により各放電電極の極性に対応した正の空気イオン及
   び負の空気イオンを大気中に生成・放出するイオン生成
   装置において、前記両放電電極に隣接して接地電極を設
   け、該接地電極を抵抗値を調整可能な可変抵抗を介して
   接地したことを特徴とするイオン生成装置。
2. 【請求項２】前記接地電極の電位に応じた表示を行う表
   示手段を備えたことを特徴とする請求項１記載のイオン
   生成装置。
3. 【請求項３】前記接地電極の電位を検出する電位検出手
   段と、該接地電極の電位と正負の空気イオンの生成状態
   とのあらかじめ定められた相関関係に基づき、前記電位
   検出手段により得られた前記接地電極の検出電位に対応
   する正負の空気イオンの生成状態を表示する表示手段と
   を備えたことを特徴とする請求項１記載のイオン生成装
   置。