JPH08254128A - 排気ガスタービン過給機の放風空気量制御弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、過給機の高負荷時における
空力的スラストのバランスを図り得ると共に、低負荷時
における空気の放出を低減／停止して過給機効率を向上
し得る排気ガスタービン過給機の放風空気量制御弁を提
供するにある。 【構成】 本発明の排気ガスタービン過給機の放風空気
量制御弁は、羽根車１の背面部にラビリンスパッキン２
と放風孔６を配設した構成の排気ガスタービン過給機に
おいて、羽根車１背後の放風孔６の入口に配設され、ラ
ビリンスパッキン２を通過した空気の温度変化に対応し
て放風孔６の開閉を制御し得るように弁体４ａに形状記
憶合金を使用したことを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は排気ガスタービン過給機
に適用される放風空気量制御弁に関する。技術の共通性
から一般の空気圧縮機・送風機等にも適用し得る。

【０００２】

【従来の技術】図５は従来の排気ガスタービン過給機の
放風孔周辺の構成を示す部分縦断面図である。（以降、
排気ガスタービン過給機は過給機と略す。） 図５に示されているように、羽根車１の回転によって加
圧された空気はディフューザ５から送出される。その
際、高圧空気の一部がラビリンスパッキン２を通過して
羽根車１の背面とケーシング３で囲まれる空間部に流れ
込む。羽根車１に作用するスラストのバランスをとるた
め、流入した高圧空気はケーシング３に穿設されている
放風孔６から大気中に放出される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記構成のよ
うにスラストのバランスをとるために放風孔６を設けた
過給機においては次のような問題点がある。空力的スラ
ストが比較的小さく、スラストのバランスをとる必要が
ないとされる低負荷域での過給機作動中にも、ラビリン
スパッキン２を通過して羽根車１の背面とケーシング３
で囲まれる空間部に流れ込んだ高圧空気は放風孔６から
放出され損失となっている。

【０００４】本発明の目的は、前記問題点を解決し、過
給機の高負荷時における空力的スラストのバランスを図
り得ると共に、低負荷時における空気の放出を低減／停
止して過給機効率を向上し得る排気ガスタービン過給機
の放風空気量制御弁を提供するにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の排気ガスタービ
ン過給機の放風空気量制御弁は、羽根車１の背面部にラ
ビリンスパッキン２と放風孔６を配設した構成の排気ガ
スタービン過給機において、過給機が低負荷域で作動中
であり、ロータ軸７に作用するスラストが比較的小さく
バランスをとる必要がないとされるときに、放風空気量
を低減もしくは放風を停止することによって過給機効率
の向上を図る手段として、羽根車１背後の放風孔６入口
に配設され、ラビリンスパッキン２を通過した空気の温
度変化に対応して放風孔６の開閉を制御し得るように弁
体４ａに形状記憶合金を使用したことを特徴としてい
る。

【０００６】

【作用】本発明による放風空気量制御弁４の弁体４ａ
は、材料が形状記憶合金であり、過給機の圧力比の上昇
によってラビリンスパッキン２を通過した空気の温度が
高くなり、変態温度以上に加熱されると変形する。この
空気の温度変化に対応する弁体４ａの変形によって放風
孔６を開閉し、放風孔６を通って大気中に放出される空
気量が制御される。従って低負荷域では放風孔６の開口
面積を絞り、高負荷域では開口面積を拡げる制御が実現
され、高負荷時の空力的スラストの平衡を図るという目
的を損なうことなく、低負荷時における過給機効率が向
上する。

【０００７】

【実施例】図１は本発明の実施例に係る放風空気量制御
弁を装着した過給機の通風孔周辺の構成を示す部分縦断
面図で、図２，図３に放風空気量制御弁（以降、単に制
御弁と略す。）の構成説明図と作用説明図を示した。図
１，２，３を参照して実施例に係る制御弁を装着した過
給機及び該制御弁の構成と作用について説明する。これ
らの図において、１は羽根車、２はラビリンスパッキ
ン、３はケーシング、４は放風空気量制御弁、４ａは弁
体、４ｂは取付けボルト、５はディフューザ、６は放風
孔、７はロータ軸、７ａは羽根車１背面の空間内空気温
度、Ｔｍは制御弁４の弁体４ａの材料の変態温度であ
る。

【０００８】過給機の羽根車１の入口から吸い込まれた
空気は圧縮されながら羽根に沿って出口方向に流れる。
羽根車１を出た空気はディフューザ５に流れ出るが、加
圧されている空気の一部はラビリンスパッキン２を通過
して羽根車１の背面とケーシング３の間の空間部に流れ
込み、入口部に制御弁４が配設されている放風孔６を通
って大気中に放出される。

【０００９】制御弁４は、図２に示すように弁体４ａの
一方の端部が取付けボルト４ｂによってケーシング３に
固着され、一端支持の薄板状の弁体部によって放風孔６
の入口部を封止するように形成されている。該弁体４ａ
の材料には形状記憶効果を有するＴｉＮｉ合金等が用い
られ、変態温度Ｔｍがおよそ１００℃程度となるように
成分元素の組成が調整されている。

【００１０】次に図３を参照して制御弁４が放風孔６を
開閉する作用について説明する。制御弁４の弁体４ａ
は、前記のように形状記憶合金を材料としているので、
エンジンの負荷が増大し、過給機の圧力比が上昇して、
羽根車１背面の空間内の空気温度Ｔａがおよそ１００℃
程度に設定されている弁体４ａ材料の変態温度Ｔｍを超
えると、弁体材料の形状記憶効果によって弁体４ａは変
形し、放風孔６が開かれて前記空間内の空気は大気中に
放出される（図３（ａ）参照）。

【００１１】一方、エンジンが低負荷で、過給機の圧力
比が低く、羽根車１背面部の空気温度Ｔａが弁体材料の
変態温度Ｔｍより低い場合には、弁体４ａは変形せず放
風孔６は閉じられた状態に保たれ空気の放出はない（図
３（ｂ）参照）。

【００１２】このように形状記憶合金を材料とした弁体
４ａは、過給機の出口空気温度の上昇により変態温度Ｔ
ｍ以上に加熱されると変形し、この変形によって放風孔
６は（閉→開）または（開→閉）と制御され、放風孔６
を通過して大気中へ放出される空気量が制御される。

【００１３】従って低負荷域では放風孔６の開口面積を
絞り、高負荷域では開口面積を拡げる制御が実現され、
高負荷時の空力的スラストの平衡を図る目的を損なうこ
となく、低負荷時の過給機効率が向上する。

【００１４】放風孔６の入口に制御弁４を配設したこと
で過給機の効率が改善されていることを図４を参照して
説明する。図４は過給機の圧力比と過給機効率の関係を
示しているが、図に見られるように前記制御弁４を配設
したことによって、比較的低負荷域の過給機圧力比約
１．８において過給機効率が約２％向上しており、圧力
比が高くなるにつれて従来の放風孔使用の際の効率に近
づいていることが分る。

【００１５】

【発明の効果】本発明による排気ガスタービン過給機の
放風空気量制御弁４においては、羽根車１背面部の空気
の温度変化に対応して放風空気量を低減させ、もしくは
放風を停止させるように、前記制御弁の弁体４ｂの材料
に形状記憶合金を使用し、該弁体の温度変化による変形
により放風孔６の開閉を制御している。これにより、過
給機の高負荷時におけるスラストの平衡を図り得るとと
もに、低負荷時における空気の放出を低減／停止して過
給機効率を向上させている。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係る放風空気量制御弁を装着
した過給機の部分縦断面図。

【図２】図１に示した放風空気量制御弁の構成説明図。

【図３】図１に示した放風空気量制御弁の作用説明図。

【図４】図１に示した放風空気量制御弁による過給機効
率向上の説明線図。

【図５】従来の過給機の放風孔周辺の構成を示す部分縦
断面図。

【符号の説明】

１…羽根車、２…ラビリンスパッキン、３…ケーシン
グ、４…放風空気量制御弁、４ａ…弁体、４ｂ…取付け
ボルト、５…ディフューザ、６…放風孔、７…ロータ
軸、Ｔａ…羽根車１背面部の空気温度、Ｔｍ…弁体４ａ
の材料の変態温度。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 羽根車（１）の背面部にラビリンスパッ
   キン（２）と放風孔（６）を配設した構成の排気ガスタ
   ービン過給機において、過給機が低負荷域で作動中であ
   り、ロータ軸（７）に作用するスラストが比較的小さく
   バランスをとる必要がないとされるときに、放風空気量
   を低減もしくは放風を停止することによって過給機効率
   の向上を図る手段として、羽根車（１）背後の放風孔
   （６）入口に配設され、ラビリンスパッキン（２）を通
   過した空気の温度変化に対応して放風孔（６）の開閉を
   制御し得るように弁体（４ａ）に形状記憶合金を使用し
   たことを特徴とする排気ガスタービン過給機の放風空気
   量制御弁。