JPH08243370A - 食品の混練方法及びその装置 - Google Patents

食品の混練方法及びその装置

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JPH08243370A
JPH08243370A JP7055620A JP5562095A JPH08243370A JP H08243370 A JPH08243370 A JP H08243370A JP 7055620 A JP7055620 A JP 7055620A JP 5562095 A JP5562095 A JP 5562095A JP H08243370 A JPH08243370 A JP H08243370A
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秀樹 佐渡
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Yasunobu Hiraoka
康伸 平岡
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 温度や圧力により流動状態が変化する食品に
ついて、食品の物性や形状のいかんにかかわらず高い精
度の定量搬送性と高吐出力を与え、かつ食品に一定度合
いの混練、あるいは剪断を加える混練方法及び装置を提
供することを目的とする。 【構成】 異方向に回転する二軸スクリューに定量搬送
部と、フォワード部とリバース部とからなる混練部を構
成した食品の混練方法と装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品の混練方法及びそ
の装置に関するものである。本発明は、バター、マーガ
リン、スプレッドのような可塑性食品やチーズ(以下チ
ーズを含めて可塑性食品という)あるいは粘性液体状食
品等の食品を定量的に搬送しながら一定度合いの混練及
び/又は剪断を加えることができる。
【0002】
【従来の技術】食品を加工処理する場合、含有成分の均
一化や微細化あるいは物性の変更や品質安定化等の目的
で、混練や剪断を付与することが行われている。従来、
食品に混練や剪断を付与する装置として、ニーダー型や
ミキサー型のバッチ式混練装置、あるいはエクストルー
ダーに代表されるスクリュー型の連続式混練装置が用い
られていた。
【0003】ニーダー型の混練装置は、高粘性食品や可
塑性食品、あるいは粉末状、粒子状、塊状、ペースト状
にした食品等ほとんど全ての食品の混練、混合あるいは
分散等に利用されており、特に、粉粒体食品に液体をな
じませ、混練する場合に効果がある。この装置の特徴
は、水平に取り付けた二軸の異方向に回転する一般にシ
グマ型あるいはZ型と呼ばれる羽根によって食品を混練
することにあるが、各種食品の物性や得られる製品の目
的に応じてS型や魚尾型をした形状の羽根を使用した
り、二軸の羽根を異なる速度で回転させたりして混練効
果を強化している。また、混練容器にジャケットを取り
付けて、食品を加熱あるいは冷却したり、更にはスクリ
ュー等の搬送機構を付けて、ニーダー部で食品を混練
し、スクリュー部で搬送する連続式の混練装置としても
利用できる。
【0004】ミキサー型の混練装置は、高粘性食品や可
塑性食品、あるいは粉末状、ペースト状にした食品等の
多くの食品の混練に利用できるが、主に製菓、製パン生
地の混練に効果的である。この装置の特徴は、垂直に取
り付けた一軸の特殊な形状の攪拌羽根を持ち、この羽根
を偏心させながら回転させ、軸の中央部分と固定された
容器の壁面部分の食品を入れ換えて混練度合いを強化し
ている。羽根の形状は、らせん型、柵型等やニーダーで
使われているシグマ型やZ型等が一般的であり、攪拌羽
根の回転数や形状の異なる羽根を使うことにより、混練
度合いを調整することができる。
【0005】また、スクリュー型の混練装置は、高粘性
食品の混練や混合に利用できるが、エクストルーダーに
代表されるように、熱交換効率が高いことから、食品の
加熱溶解や冷却を伴った混練や食品の組織化、あるいは
連続的な押し出しを行いながら食品を混練、均質化する
場合に効果的である。この装置には、一軸スクリューや
二軸スクリューを使用したもの、二軸スクリューでも噛
み合い型あるいは非噛み合い型を使用したものがある。
また、スクリューの形状も多種多様で、食品の性状や目
的に応じてそれぞれ使い分けるのが一般的である。これ
らのスクリューの中でも、混練を必要とする場合には、
噛み合い型の二軸同方向回転スクリューが混練力や剪断
力に優れているため、一般に食品の混練には、二軸同方
向回転スクリューを使用する場合が多い。
【0006】上記した混練装置は、攪拌羽根やスクリュ
ー等の形状、温度等の食品の状態、あるいは処理時間や
回転速度等の操作条件を調整することで、混練度合いを
調整することが可能である。しかしながら、ミキサー型
の混練装置は、搬送機構が無いため定量搬送が困難であ
るといった問題があり、またニーダー型の混練装置も、
定量的に押出すことができない。仮にニーダー型の混練
装置にスクリューを取り付けたとしても定量搬送性に欠
けるという問題がある。更に、上記したニーダー型及び
ミキサー型の装置はバッチ式であるため、大量処理を行
う場合は、大規模な装置になり、設備コスト及び運転コ
ストが高くなるという問題もある。
【0007】また、エクストルーダー、特に、噛み合い
型の二軸同方向回転スクリューを有する押し出し式混練
装置は、吐出量が食品の流動性に依存し、定量搬送性と
一定の混練性に欠けるという問題がある。すなわち、ス
クリューの谷の部分とスクリューを覆うバレルにより形
成される一般に8字形といわれる搬送空間を流路として
食品が移動するが、装置出口で温度、圧力等の食品の流
動状態に影響する因子と吐出量のバランスを保つため
に、押し出しゾーンあるいは混練ゾーンの長さを変化さ
せ、搬送空間の食品の充満率が100%になるようにし
ている。このため、食品の装置内における滞留時間が一
定とならず、食品が受ける混練力や剪断力も常に変化
し、一定度合いにならないという問題がある。
【0008】また、可塑性食品であるバターを例に挙げ
ると、バターの混練装置には、一般にオーガスクリュー
と呼ばれる非噛み合い型の二軸異方向回転スクリューを
有する装置があり、バターの混練、均質化とともに、押
し出し、搬送装置として利用されている。このオーガス
クリューは、その形状が平板状で、強力な混練力や高剪
断力を加えることは期待できないが、取り込み口部分に
おいてバターをロール状に滞留させ、このローリングし
ている滞留バターの量と吐出圧のバランスを調整しなが
ら、穏やかな混練を行うことができる。通常オーガスク
リューに供給されるバターの温度は、約5〜10℃で、
この温度範囲のバターはある一定の硬さを維持しながら
適度な流動性もあって、穏やかな混練を加えながら押し
出すことも可能である。
【0009】しかし、この温度範囲のバターは付着性が
強く、スクリューの軸とスクリュー表面に付着して共回
りを起こし易く、共回りした場合には、全く混練されな
い。一方、非噛み合い部分では、混練が起こり、スクリ
ューの軸部分と非噛み合い部分での混練度合いに差が生
じ、均一な混練が難しいといった問題がある。また、ロ
ーリングしているバターの滞留時間は、供給するバター
の温度に左右され、5℃以下の低温になると、バターの
硬度が増すために吐出圧が得られなくなって滞留時間が
長くなり、一方、10℃以上になると、流動性が増すた
め滞留時間が短くなる。このように供給するバターの温
度が変化すれば、吐出圧が変化し、また均一な混練を加
えることも難しくなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記したように従来の
食品の混練装置では、定量的に搬送し、かつ一定度合い
の均一な混練あるいは剪断を加えることが困難であっ
た。そこで、本発明は、温度や圧力により流動状態が変
化する食品について、食品の物性や形状のいかんにかか
わらず、高い精度の定量搬送性と高吐出力を与え、かつ
食品に一定度合いの混練あるいは剪断を加える混練方法
及びその装置を提供することを課題とする。対象となる
食品は、バターのような可塑性食品や、高粘性食品、あ
るいは粉末状、粒子状、塊状、ペースト状にした食品等
ほとんど全ての食品にわたる。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するため、以下の手段を採用するものである。すなわ
ち、二軸スクリューをバレルで囲んだ搬送装置の食品の
取り込み口から食品を取り込み、山の軸方向断面形状が
共に台形状に構成され、相互の山と谷とがほぼ完全にか
み合う二軸スクリューを互いに異方向に回転させ、相互
の山と谷が直接かみ合わない部分の谷部とバレルとの間
にほぼ密封された空間を形成する定量搬送部で該空間の
容積を変えずに食品を前方に定量移送し、かつ、二軸ス
クリューの後半で、互いの送り力と戻し力がほぼ等しい
フォワード部とリバース部を備え、スクリュー溝空間に
食品をほぼ充満させて、二軸スクリューの間あるいはス
クリューとバレルの間で混練及び/又は剪断を行う混練
部により定量搬送性を維持しながら食品に一定の混練及
び/又は剪断を加えることを特徴とする食品の混練方法
であり、その方法を実施する装置として次のような装置
を採用するものである。すなわち、二軸スクリューがバ
レルで囲まれ、該スクリューを一定速度で回転させる駆
動モーターを備えた搬送装置の先端部に食品取り込み口
を設けると共に、山の軸方向断面を共に台形状に構成
し、相互の山と谷とをほぼ完全にかみ合わせて互いに異
方向に回転した時、相互の山と谷が直接かみ合わない部
分の谷部とバレルとの間にほぼ密封された空間を形成す
る定量搬送部を設け、かつ二軸スクリューの後半に互い
の送り力と戻し力がほぼ等しいフォワード部とリバース
部を備え、二軸スクリュー間あるいはスクリューとバレ
ルの間で食品の混練及び/又は剪断を行う混練部から構
成されたことを特徴とする食品の混練装置であり、異方
向に回転する二軸スクリューの定量搬送部の後半に設け
る混練部は、スクリューの山の断面形状が、回転方向に
凸、その逆方向に凹であって、スクリュー軸方向に順に
送る方向に捩じれたフォワード部分と、戻す方向に捩じ
れたリバース部分とで構成されたことを特徴とする食品
の混練装置である。又、混練部のスクリューを2〜4条
ネジとし、かつスクリューの山が搬送部と連続していな
い混練部入口の山を一部切り欠き、食品の分散性及び混
練、剪断度合いを強化したことを特徴とする食品の混練
装置であり、更に食品の取り込み口部に位置する二軸ス
クリュー部分のピッチを搬送部より広くして供給される
食品の取り込み性を強化したことを特徴とする食品の混
練装置である。
【0012】ここで可塑性食品であるバターの混練を例
に挙げて説明する。バターは、各種加工食品の原材料と
して用いられるが、用途によっては、混練や剪断を加え
て、含有成分の均一化、微細化、組織化あるいは物性の
変更や品質安定化を図る場合がある。バターの主な成分
は、80%以上の乳脂肪と18%以下の水分からなり、
乳脂肪の固化温度は約10〜35℃で、水分の固化温度
は、塩分の含有量によって若干異なるが約0℃である。
製造した直後のバターは、流動性を有しているが、通常
塊状の形態で、−25〜5℃の温度範囲において冷蔵ま
たは冷凍により保蔵される。また、その大きさも様々
で、通常200g〜30kg/個程度の塊状である。
【0013】バターを取り扱う温度範囲は、通常−25
〜15℃であるが、バターの硬さや付着性、あるいは粘
度等の種々のレオロジー物性は、温度に依存して連続的
に変化し、明確な転移点を持たない。例えば、−20℃
のバターはかなり硬く、強い衝撃で破砕するが、−10
℃のバターは衝撃を加えても破砕せず、変形するだけで
ある。すなわち、昇温によって固体から可塑性物質へと
変化する。更に温度を上げていくと、次第に軟化し、同
時に付着性が増加していく。この傾向は、10℃付近ま
で続き、次第に流体としての物性を帯びてくる。そして
約15℃を越えると組織が不安定になる。
【0014】バターに混練や剪断を加える場合、通常5
〜15℃程度で取り扱うが、上記したように、バターは
温度によりその物性が次々と変化し、また、特にこの温
度範囲では付着性が強く、粉末状、粒子状、小片状ある
いは塊状にしたバターは、装置の取り込み口部分に付着
したり、互いに結着したりして架橋をつくり、取り込み
が困難になって搬送が難しい。本発明は、この様に付着
性の強いバターを取り込み、定量搬送するために、二軸
スクリューの山及び谷の軸方向断面を台形状とし、相互
の山と谷とをほぼ完全に噛み合わせ、前記スクリューを
互いに異方向に回転させて、相互の山と谷が直接噛み合
わない部分のスクリューの谷部とバレルとの間にほぼ密
閉された空間(以下搬送チャンバーという)を形成させ
た。そして、取り込み口からバターを取り込み、スクリ
ューの山の側面部分で強力に搬送する搬送チャンバーを
通じて搬送することにより、脈動を発生させることな
く、定量的な搬送が可能になった。また、食品の取り込
み口は、その下部に位置する二軸スクリューのピッチを
搬送部より広くすることで、より食品の取り込み性を強
化できる。
【0015】バターの形状は、粉末状、粒子状、小片状
あるいは塊状で良く、スクリューピッチ以下の大きさの
バターがより好ましい。多少スクリューピッチより大き
い塊状バターであっても、スクリューの山の側面部分で
強力にスクリュー後方に移動させることができるため、
移動する部分すなわちスクリューの山の高さ以上のバタ
ーを削り取ったり、破砕することで取り込みを可能にし
ている。取り込んだバターは、搬送チャンバーでスクリ
ュー軸後方に強力に移動し、定量的に搬送することがで
きる。
【0016】またバターの混練、剪断あるいは双方を行
うために二軸スクリューの定量搬送部の後半に混練部を
設け、定量搬送性を維持しながら食品に一定の強い混練
力や高剪断力を加える。その構成は、スクリューの山の
断面形状が回転方向に凸、その逆方向に凹であって、ス
クリュー軸方向に順に送る方向に捩れたフォワード部分
と戻す方向の捩れたリバース部分とで構成されたもので
あって、これらの流路内で圧縮しながら混練したり、二
軸スクリューの間、あるいはスクリューとバレル間で剪
断を加えたりするものであるが、定量搬送部の定量搬送
を阻害しない状態、すなわち滞留ゾーンが搬送部に波及
しない状態で混練及び/又は剪断を行うことができる。
又1条ネジの定量搬送部より搬送されたバターを3条ネ
ジの混練部で分散したりすることでバターの混練、剪断
あるいは双方を行うことができる。そして剪断部のスク
リューを2〜4条ネジとし、かつスクリューの山が搬送
部と連続していない混練部入口の山を一部切り欠き、食
品の分散性、及び剪断混練度合いを強化する。
【0017】一般に異方向に回転する二軸の噛み合い型
スクリューは、同方向に回転する二軸の噛み合い型スク
リューに比べて混練力や剪断力で劣るが、本発明では、
搬送部を上記構成としたことにより、強力な搬送と定量
性を確保することが可能となったので、混練部での滞留
時間が一定になり、一定度合いの混練と剪断を効果的に
バターへ付加することが可能となった。すなわち、搬送
部の定量搬送性と混練部の混練・剪断作用により、どの
ような温度体のバターであっても、定量搬送性を維持し
ながらバターに一定度合いの強い混練力あるいは高剪断
力を加えることができる。従って、本発明の食品の混練
装置は、定量搬送性と高吐出力を必要とし、かつ食品に
一定度合いの混練力あるいは剪断力を必要とする高粘性
食品、可塑性食品、あるいは粉末状、粒子状、塊状、ペ
ースト状にした食品等ほとんど全ての食品に適用でき
る。
【0018】更に、この混練部においては、低温状態の
バターの揚温あるいは混練度合いの強化が可能である。
すなわち、本発明の混練装置は、スクリューの前半に定
量搬送部を、後半に混練部を設けており、搬送のための
エネルギーと、混練あるいは剪断のためのエネルギーが
必要である。これらのエネルギーは、主にスクリューを
回転させる駆動装置の機械的エネルギーを利用してい
る。流動性に富むバターは、混練部において分散されや
すいが、一方低温状態のバターは、ある程度の硬さを有
しているため、混練部において剪断応力を受けやすい。
そのため低温状態のバターは、混練部において発熱し、
混練あるいは剪断エネルギーがバターの昇温エネルギー
に変換する。このように混練あるいは剪断エネルギーに
より、低温状態のバターを容易に昇温することができる
が、更に、オリフィス等の装置を混練部の後半に設け、
混練部の背圧を調節することで、昇温度合いを制御する
ことができる。すなわち、搬送部では定量搬送が維持さ
れているため、混練部の圧力が上昇した場合、機械的エ
ネルギーが増加する。この機械的エネルギーは、搬送エ
ネルギーに費やされるとともに、その一部は昇温エネル
ギーに変換するため、背圧を調節することで昇温度合い
が制御可能となる。また、揚温によって流動性が増した
バターに混練力や剪断力を加えることで、混練度合いの
強化が可能となり、背圧を制御することで混練度合いを
調整することもできる。このバターの揚温あるいは混練
度合いの調整は、0℃以下の低温状態にあるバターの混
練及び揚温に効果的である。
【0019】一般に二軸同方向回転の噛み合い型スクリ
ューを備えた混練装置における熱交換では、スクリュー
を囲むバレルにジャケットを取り付け、そこに熱媒体を
循環させて行う。しかし、バターが低温の場合、循環す
る熱媒体の温度を上げる必要があり、熱媒体の温度制御
を精緻に行わないと、バレル内面に接触しているバター
の一部が融解する危険性があり、一旦融解したバター
は、品質が著しく劣化する。このようにジャケット加熱
による熱交換方法は品質低下の危険性があるが、本発明
の混練装置による低温バターの混練、揚温では、駆動装
置の機械的エネルギーを熱エネルギーに容易に交換させ
ることができるため、効果的にバターの揚温を行うこと
ができる。ジャケットによる熱交換は、補助あるいは断
熱の目的で利用するだけでよい。
【0020】
【実施例】以下、図面に示す混練装置の実施例について
説明する。図1に二軸スクリューを異方向に回転させて
行う食品の混練装置の全体図を示す。図1の混練装置
は、スクリュー(2)を覆うバレル(1)と、スクリュ
ーの前半部に山及び谷の断面形状が共に台形状である二
軸の噛み合い型スクリューを用い、噛み合ったスクリュ
ーの山及び谷とバレル間に搬送チャンバーを形成するよ
うな搬送部(A)と、かつスクリューの後半部に、二軸
スクリュー間あるいはスクリューとバレル間において食
品の混練あるいは剪断を行う混練部(B)を有するよう
なスクリュー(2)と、スクリューを互いに異方向に一
定の回転速度で回転させる駆動装置(3)と、駆動装置
とスクリューの連結部(4)と、スクリュー上部のバレ
ルの一部を除去した食品の取り込み部(5)、出口配管
あるいは食品を成形するためのノズル(6)、架台
(7)、更に好ましくは、食品を定量搬送させ、かつ混
練をより安定的な温度条件で行うための加熱冷却用ジャ
ケット(8)及びこのジャケットの熱媒体入口(9)、
出口(10)から構成される。
【0021】図2に異方向に回転する二軸の噛み合い型
スクリューを示したが、食品の取り込み部に位置するス
クリューはピッチを広げて食品の取り込み性を強化して
おり、搬送部(A)ではスクリューを互いに異方向に回
転させ、相互の山と谷が直接噛み合わない部分の谷部と
バレルとの間にほぼ密閉された空間、すなわちチャンバ
ーを形成させて、該空間がその容積を変えずに食品を前
方に移送する定量搬送部を形成している。混練部(B)
は定量搬送部(A)が1条ネジなのに対して、3条ネジ
にして食品を分散させ、更にフォワードスクリュー部に
対してリバーススクリュー部を設けてバックフォローを
生じさせることで食品への混練力、あるいは剪断力を強
化している。図4乃至図6は搬送部(A)と混練部
(B)を明確に図示したもので、図4は二軸スクリュー
を相互に離した状態の斜面図であり、図5は二軸スクリ
ューの噛み合い状態を示す斜面図である。前述した如く
搬送部は山及び谷の断面形状が共に台形状である二軸の
噛み合い型スクリューを用い、噛み合ったスクリューの
山及び谷とバレル間に搬送チャンバーを形成している。
混練部のスクリューは山の断面形状が回転方向に凸(1
1)、その逆方向に凹(12)でスクリュー軸方向に順
に送る方向に捩れたフォワード部(C)とその後半に戻
す方向に捩れたリバース部(D)とからなっており、
(C1 )(D1 )はそれらの谷部を示す。図6(a)、
(b)、(c)はこれを更に解り易く図示したもので、
スクリューネジの1つ(h)が矢印方向に回転すること
により、(a)、(b)、(c)の順に変化する。
【0022】図3は以上のようなスクリューの混練部の
断面形状の一例を示す。このスクリューは、スクリュー
噛み合い部分の混合、分散によって食品の混練力を、バ
レル内壁とスクリュー間の摩擦によって剪断力を加える
構造になっている。スクリューの山径と谷径の比は、供
給する食品の物性や形状によって変化させるが、粉粒状
食品や粘性液体状食品であれば取り込み部の山径と谷径
の比を小さく(山径:谷径=10:7)、塊状食品であ
れば大きく(山径:谷径=10:5)することが好まし
く、混練部もその比に合わせて異なる。取り込み部と混
練部の山径と谷径の比は、必ずしも等しくする必要はな
く、取り込み部と混練部のスクリュー径を2段にするこ
とで、山径と谷径の比を変えることも可能である。山径
と谷径の比と同様に、混練部の長さあるいはフォワード
部(C)とリバース部(D)の比は、適宜決定すること
が望ましい。
【0023】以下に混練方法の実施例について説明す
る。 実施例1 温度が約−16℃、大きさが約50L×30W×20H
(mm)の煉瓦状バターを、図1の混練装置に図2の異
方向回転の混練スクリューを設置して混練したところ、
投入された煉瓦状バターは、投入口で架橋をつくらず、
良好に取り込まれ、連続体となって良好な吐出が可能で
あった。また、製造中バターの離水やホイッピングは全
く認められなかった。この製造における運転条件は、ス
クリュー回転数が90rpm、バターの供給量が約40
kg/hrで、図7に示したように約−16℃の煉瓦状
バターを、出口では約5℃まで昇温しており、また吐出
部の圧力は約1.9kgf/cm2 で安定していた。
尚、約−16℃のバターが、混練により約5℃まで昇温
したが、このバターの昇温に使われたエネルギーは、そ
の大部分がモーターエネルギーであり、モーター負荷約
0.9kWの約80%が昇温に使われていた。混練度合
いの指標の一つとして、バター中に約16%含まれる水
の分散状態を位相差顕微鏡で観察したところ、原料とし
たブロックバターの平均水滴径が約5μm、標準偏差約
2.5μmであったのに対して、得られた混練バターは
約4μm、標準偏差約1.5μmであり、原料よりも緻
密な分散状態が観察され、良好な混練、均質化が行われ
ていた。また、約−16℃の煉瓦状バターが、混練によ
り約5℃まで昇温したが、3インチの出口配管における
温度分布は約±1.5℃で、バター温度からも良好な混
練が行われたことが認められた。
【0024】実施例2 粉砕機を使用し、大きさが350L×315W×200
H(mm)の約−20℃の凍結ブロックバターを粉砕
し、粒径が約0.1〜30mmの粉砕バターを得た。こ
の粉砕バターを、図1の混練装置に図2の異方向回転の
混練スクリューを設置して混練したところ、投入された
粉砕バターは、投入口で付着せずに取り込まれ、連続体
となって良好な吐出が可能であった。また、製造中バタ
ーの離水やホイッピングは全く認められなかった。この
製造における運転条件は、スクリュー回転数が90rp
m、バターの供給量が約50kg/hr、吐出部の圧力
が平均で1.5kgf/cm2 であり、ほとんど脈動が
なかった。混練度合いの指標の一つとして、バター中の
水の分散状態を位相差顕微鏡で観察したところ、原料ブ
ロックバターの平均水滴径が約5μm、標準偏差が約
2.5μmであったのに対して、得られた混練バターは
約3μm、標準偏差約1μmであり、原料バターよりも
緻密な分散状態が観察され、良好な混練、均質化が行わ
れていた。また、約−14℃の粉砕バターが、混練によ
り約4℃まで昇温したが、3インチの出口配管における
温度分布は±1℃以下で、バター温度からも良好な混練
が行われたことが認められた。上記と同様な方法でマー
ガリンやチーズでも実施したが、バターの場合と同様に
良好な混練製品が得られた。以上何れにしても、本発明
は定量搬送部とフォワード部分とリバース部分とからな
る、混練部を備えた異方向に回転する二軸スクリューで
構成された食品の混練装置であって、混練部において、
フォワード部分の食品の流れとリバース部分の食品の流
れとが相殺し合って滞留ゾーンが搬送部に波及せず、す
なわち定量搬送部の定量搬送を阻害せずに強い混練力と
高剪断力が加えられるもので、定量搬送性と高吐出力を
維持しながら連続的に一定度合いの混練力と剪断力を加
えることができる。したがって、定量搬送部の定量搬送
に影響を与えず、混練部のみで、混練と剪断が行われる
ものならば、図示以外の混練部の設計変更は任意であ
る。
【0025】
【発明の効果】本発明の請求項1、2にかかる食品の混
練方法及びその装置は、バターのような可塑性食品や、
高粘性食品、あるいは粉末状、粒子状、塊状、ペースト
状にした食品等ほとんど全ての食品に関して、定量搬送
性と高吐出力を維持しながら、連続的に一定度合いの強
い混練力と高剪断力を加えることができる。これによ
り、食品の含有成分の均一化や微細化あるいは物性の変
更や品質安定化等において大きな効果が得られる。更
に、低温状態の食品の揚温あるいは混練度合いの強化に
好適である。請求項3の発明によれば、定量搬送部の定
量搬送を阻害することなく、混練部で混練又は剪断を行
うことができる。請求項4の発明によれば、食品の分散
性及び混練、剪断度合いを強化できる。請求項5の発明
によれば、供給される食品の取り込み性を強化すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の食品の混練装置の全体正面断面図
【図2】本発明の混練装置に使用されるスクリュー図
【図3】a、b、cは図2に示したスクリューの混練部
の断面形状を示す図
【図4】二軸スクリューの分解斜面図
【図5】二軸スクリューの噛合状態斜面図
【図6】a、b、cは混練部のみを示す正面図
【図7】実施例1のモーター負荷、原料バターと吐出部
のバター温度及び吐出部の圧力の変動を示す図
【符号の説明】
1 バレル 2 スクリュー 3 駆動装置 4 連結部 5 取り込み部 6 ノズル 7 架台 8 ジャケット 9 ジャケット入口 10 ジャケット出口 11 スクリュー断面凸部 12 スクリュー断面凹部

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二軸スクリューをバレルで囲んだ搬送装
    置の食品の取り込み口から食品を取り込み、山の軸方向
    断面形状が共に台形状に構成され、相互の山と谷とがほ
    ぼ完全にかみ合う二軸スクリューを互いに異方向に回転
    させ、相互の山と谷が直接かみ合わない部分の谷部とバ
    レルとの間にほぼ密封された空間を形成する定量搬送部
    で該空間の容積を変えずに食品を前方に定量移送し、か
    つ、二軸スクリューの後半で、互いの送り力と戻し力が
    ほぼ等しいフォワード部とリバース部を備え、スクリュ
    ー溝空間に食品をほぼ充満させて、二軸スクリューの間
    あるいはスクリューとバレルの間で混練及び/又は剪断
    を行う混練部により、定量搬送性を維持しながら食品に
    一定の混練及び/又は剪断を加えることを特徴とする食
    品の混練方法。
  2. 【請求項2】 二軸スクリューがバレルで囲まれ、該ス
    クリューを一定速度で回転させる駆動モーターを備えた
    搬送装置の先端部に食品取り込み口を設けると共に、山
    の軸方向断面を共に台形状に構成し、相互の山と谷とを
    ほぼ完全にかみ合わせて互いに異方向に回転した時、相
    互の山と谷が直接かみ合わない部分の谷部とバレルとの
    間にほぼ密封された空間を形成する定量搬送部を設け、
    かつ二軸スクリューの後半に互いの送り力と戻し力がほ
    ぼ等しいフォワード部とリバース部を備え、二軸スクリ
    ュー間あるいはスクリューとバレルの間で食品の混練及
    び/又は剪断を行う混練部から構成されたことを特徴と
    する食品の混練装置。
  3. 【請求項3】 異方向に回転する二軸スクリューの定量
    搬送部の後半に設ける混練部は、スクリューの山の断面
    形状が、回転方向に凸、その逆方向に凹であって、スク
    リュー軸方向に順に送る方向に捩じれたフォワード部分
    と、戻す方向に捩じれたリバース部分とで構成されたこ
    とを特徴とする請求項2記載の食品の混練装置。
  4. 【請求項4】 混練部のスクリューを2〜4条ネジと
    し、かつスクリューの山が搬送部と連続していない混練
    部入口の山を一部切り欠き、食品の分散性及び混練、剪
    断度合いを強化したことを特徴とする請求項2又は3記
    載の食品の混練装置。
  5. 【請求項5】 食品の取り込み口部に位置する二軸スク
    リュー部分のピッチを搬送部より広くして供給される食
    品の取り込み性を強化したことを特徴とする請求項2乃
    至4の何れかに記載の食品の混練装置。
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