JPH08229054A - 歯科用チップ - Google Patents
歯科用チップInfo
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- JPH08229054A JPH08229054A JP33086795A JP33086795A JPH08229054A JP H08229054 A JPH08229054 A JP H08229054A JP 33086795 A JP33086795 A JP 33086795A JP 33086795 A JP33086795 A JP 33086795A JP H08229054 A JPH08229054 A JP H08229054A
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Abstract
置の際に歯や人工物などに損傷を与えることがなく、か
つ、容易に製造することができ、安価で使い捨て可能な
歯科用チップを提供する。 【解決手段】 この歯科用チップは、駆動源に接続され
る基端部1と、歯科における処置時に治療対象個所に作
用する先端部2とを備え、基端部1および先端部2が、
プラスチック基材とそれに配合された無機質充填材また
は/および有機質充填材とから成る複合材の成形体で構
成されている。
Description
し、更に詳しくは、歯や人工的な修復,補綴物やインプ
ラント材などを損傷することなく歯石などの付着物を除
去したり、根管の拡大清掃など歯内治療に用いることが
でき、また、容易に製作することができ、使い捨てが可
能である歯科用チップに関する。
蝕の主因を成している。そのため、歯面や歯根面,人工
修復補綴物やインプラント材に付着したこれら歯石やプ
ラークを除去することが、歯の病気の治療や予防に最も
重要である。このような歯科治療において、歯面の歯石
の除去,ポケット内のデブライドメント,根面を滑沢に
する歯根面の無毒化、すなわちスケーリングやルートプ
レーニングは重要な基本処置となっている。
び縁下のプラークや歯石などの付着物を除去する操作の
ことをいい、また、ルートプレーニングとは、歯根面を
滑沢にして、歯根面の残存,埋入した歯石や壊死セメン
ト質などを除去し、汚染された歯根面の無毒化をはかる
操作のことをいう。前記したスケーリング操作やルート
プレーニング操作は、通常、手用の金属製スケーラー、
とくに手用キュレットスケーラーを用いて行われてお
り、世界的にも現在、この方法が最も確実とされてい
る。しかしながら手用のキュレットスケーラーによるス
ケーリングやルートプレーニングは、非常に熟練を要す
る操作であり、しかも手間のかかる操作である。
方法の外に、補助的にエンジン用ロトソニック,タービ
ン用エアスケーラー,超音波スケーラーなどを用いるこ
とによりスケーリングやルートプレーニングを行うこと
がある。エンジン用ロトソニックは、例えば、六角錐状
の回転チップを先端に装着し、前記チップを回転させな
がら当該チップを歯石などに押し当てて、歯石などの付
着物を研削除去する治療具である。また、タービン用エ
アスケーラーは、例えば、金属製で棒状の専用チップを
エアタービンの高速回転運動を利用して回転、あるいは
前記回転運動を利用して振動させ、回転あるいは振動状
態にあるチップを歯石などに押し当てて、歯石などの付
着物を研削除去する治療具である。
大きく、歯面に傷をつけやすかったり、また、振動や音
により患者に不快感を与え、患者にはよい印象を与えて
いない。一方、超音波スケーラーは、歯面に沿うような
複雑形状を成す金属製の専用チップを超音波振動源に接
続し、前記超音波振動源を超音波域で振動させることに
より前記チップ先端に超音波振動を伝達し、超音波振動
した状態にある前記チップ先端を歯表面に付着した歯石
などに押し当てることによりこれを研削除去し、歯表面
を滑沢にするものである。
力パワーを大きくして用いると、歯面に傷をつけたり、
患者に疼痛を与えたりすることがある。このような欠点
を改善した新しい超音波スケーラーとして、歯肉にかく
れた状態で歯根面に付着した歯石などを研削、歯肉など
の軟組織を傷つけないような、パワーを低く抑えて歯石
などを研削除去する超音波スケーラーが、特開平5−1
54164号公報で開示されている。この超音波スケー
ラーは、チップの形状を歯根面に沿うような3次元的に
湾曲した形状にし、その固有振動数を超音波スケーラー
の超音波振動源の発振振動数近傍で共振するような振動
数に設定し、スケーリング時には共振状態で駆動させる
ものである。従って、この超音波スケーラーの場合、供
給される超音波エネルギーが極微小パワーであってもチ
ップ先端の振幅を大きくすることができ、患者に疼痛や
不快感を与えることなく超音波振動を有効に利用できる
ので、歯肉などの軟組織を損傷することなく、歯根面の
歯石の除去や処置を効率よく行うことができる。
に、チップを根管治療用チップ,ファイルなどにかえる
ことにより、根管治療(根管充填や根管内の拡大清掃,
洗浄など)にも使用することができる。このように、ス
ケーリング操作やルートプレーニング操作は、従来は、
手用のキュレットスケーラーが広く用いられてきたが、
チップを機械的に回転あるいは振動させるロトソニッ
ク,エアスケーラー,超音波スケーラーなどは、スケー
リング,ルートプレーニング,根管治療などを、比較的
簡便に、かつ効率よく行うことができるので、最近で
は、歯の病気の治療や予防に広く利用されるようになっ
ている。
と、患者に疼痛を与えるなど改善すべき点も残されてい
る。
トソニック,エアスケーラー,超音波スケーラーなどに
装着される歯科用チップは、ステンレス鋼のような耐蝕
性,耐磨耗性に優れている金属材料で製造されているの
が通例である。とくに、硬質の金属材料で製造した歯科
用チップの場合には、使用過程におけるチップ摩耗が抑
制されるとともに、短時間でも歯石などの付着物を効率
よく除去できるので、歯科治療にとっては極めて有効で
ある。
歯、またはインプラント材などで植立された人工歯根,
人工歯,インレー,アマルガムなどの人工的な充填修
復,補綴物(以下、単に人工物という)に当たると、こ
れら人工物に比べて硬質でありすぎるため、人工物を損
傷してしまうという問題が生じやすい。このように、歯
や人工物が損傷すると、その損傷部分に歯石やプラーク
などが付着しやすくなり、新たにウ蝕や歯周病の原因を
つくることになる。
に、健全な口腔環境を害するものであるため、歯科治療
においては、このような損傷の発生を極力抑制すること
が望ましいことになる。しかし、前記した金属製の歯科
用チップは、それが歯や人工物に対して硬質でありすぎ
るため、上記した条件を満たすには難点がある。
レーニングに用いる歯科用チップは、内部に細い通水管
を有し、歯面や歯根面に沿うように、3次元的に湾曲し
た複雑な形状をしているので、その製造には、手作業に
よる熟練作業が必要であり、そのため、大量生産が困難
である。このようなことから、歯科用チップは不可避的
に高価格とならざるを得ない。
強い血清肝炎やエイズなどの病気の感染を避けるため
に、治療に用いる器具、とくに、唾液や血液などの分泌
物と直接接するような器具、あるいは前記分泌物と直接
接触し、しかも細管を有するような器具は、使い捨て
(ディスポーザブル)にすることが望まれている。しか
しながら、金属製の歯科用チップは、上記したように非
常に高価格となるために、一度の歯科治療や手術のたび
ごとに使い捨てるというわけにはいかない。
上記した問題を解決し、従来の金属製の歯科用チップと
同等の治療効果を発揮するだけではなく、歯や人工物を
損傷することがなく、かつ、製造が容易であり、したが
って、安価で、使い捨ても可能な歯科用チップの提供を
目的とする。
的を達成するために、金属材料に代わり得る材料の開発
に関し鋭意研究を重ねた結果、後述する材料は、従来の
金属材料ほど硬質ではないにも関わらず、歯や人工物を
損傷することなく、歯石などの歯への付着物を効果的に
除去できるとの知見を得、本発明の歯科用チップを開発
するに至った。
源に接続される基端部と、歯科における処置時に治療対
象個所に作用する先端部とを備え、前記基端部および前
記先端部が、プラスチック基材とそれに配合された無機
質充填材または/および有機質充填材とから成る複合材
の成形体であることを特徴とする。なお、ここでいう歯
科における処置とは、歯科の治療,歯の病気の予防など
の処置に関することを指し、このような処置としては、
例えば、歯,人工物(以下、本発明ではこれらを総称し
て治療対象個所という)に対して行われる、付着物の除
去,病的部分の除去,表面の研削,研磨,洗浄,根管治
療などをあげることができる。したがって、本発明の歯
科用チップの前記先端部は、上に列記した処置に適合し
た形状にすることが好ましい。すなわち、前記チップの
形状としては、例えば、ロトソニックやエアスケーラー
に用いられるチップ,超音波スケーラーによるスケーリ
ング,ルートプレーニングに用いられるような歯面に沿
った複雑形状を有するチップや予防用チップ,根管治療
に用いられるチップ(根管内の拡大清掃用チップ,根管
充填用チップや逆根管治療用チップ)などをあげること
ができる。
を図1に示す。この歯科用チップA1は超音波スケーラ
ーに装着されるものであって、基端部1と先端部2とを
備えた一体成形物として構成されている。基端部1は、
駆動源との接続部1aと支柱部1bとを備えており、接
続部1aは軸線に沿って直線状に延び、支柱部1bは、
接続部に対して個所a1で一方向に屈曲し、先端部2は
支柱部1bに対して個所a2で更に屈曲するとともに、
複雑な歯根面、直視できない歯根分岐部内や根管内に良
好に適合するために繊細、かつ、前後・左右に複雑に湾
曲した形状になっている。このように、歯科用チップA
1は、全体として、3次元的に湾曲して基端部1から先
端部2に向かって先細りする形状になっている。
じ3が刻設されていて、ここに、後述する超音波スケー
ラーの接続部である例えば雄ねじを螺合することによっ
て、歯科用チップA1は、図2で示したように、超音波
振動源であるハンドピースBに装着できるようになって
いる。前記した雌ねじ3の底からは、支柱部1bの軸線
に沿って、一方に開口5を有する通路4が形成され、通
路4を介して供給された洗浄水(または薬液)がこの開
口5から先端部2に向けて噴出できるようになってい
る。
チック基材をマトリックスとし、これに後述の無機質充
填材または/および有機質充填材を強化材として配合し
て成る複合材の成形体である。用いるプラスチック基材
としては、ポリフェニレンサルファイド,ポリアミド,
ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレ
ート,液晶ポリマー,ポリカーボネート,ポリエーテル
エーテルケトン,ポリエーテルケトン,ポリエーテルサ
ルホン,ポリサルホン,ポリエーテルイミド,ポリアミ
ドイミド,ポリイミド,ポリアセタールの群から選ばれ
る少なくとも1種を好適例としてあげることができる。
ドは、耐蝕性,耐熱性(複合材の成形体としての耐熱温
度が約260℃),耐薬品性が優れ、また無毒である。
したがって、ポリフェニレンサルファイドをマトリック
スとして製造した歯科用チップは、口腔内や手術中使用
しても安全であり、口腔内で唾液などと接触しても変質
することがなく、更には、当該歯科用チップに対し、オ
ートクレーブ滅菌,煮沸滅菌,薬液消毒などを行うこと
ができるので好適である。
としては、無機質充填材,有機質充填材のいずれをも使
用することができる。また、両者を混合して使用するこ
ともできる。用いる無機質充填材や有機質充填材の形状
は、粉末形状,繊維形状のいずれであってもよい。ま
た、無機質充填材の場合は、ひげ結晶状のものであって
もよい。なお、繊維形状のものは長繊維を適当な長さに
切断し、短繊維として使用される。
繊維,繊維状チタン酸カリウム,カラス繊維,アルミナ
繊維,酸化チタン,ボロン,タルクなどをあげることが
でき、とくに、カーボン繊維と繊維状チタン酸カリウム
は好適である。これらは、それぞれ単独で用いてもよ
く、また2種以上を適宜に混合して用いてもよい。一
方、有機質充填材としては、例えば、アラミド(芳香族
ポリアミド)繊維,ポリエチレン繊維,ポリビニルアル
コール繊維,ポリアリーレート繊維,ポリプチレンテレ
フタレート繊維の群から選ばれる少なくとも1種を好適
例としてあげることができ、とくにアラミド繊維は好適
である。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、また
2種以上を適宜に混合して用いてもよい。
材とを混合して用いてもよい。この歯科用チップA
1は、図2で示したように、ハンドピースBのような超
音波振動源(駆動源)に装着して実使用されるが、その
場合、前記駆動源の出力パワーが小さい場合であって
も、効果的な振動が得られるように、超音波振動源から
供給される振動エネルギーの減衰が小さく、超音波振動
源の発振振動数と共振できるような固有振動数を有して
いることが好ましい。
動数が、超音波振動源の振動数と多少ずれていても、歯
石などを除去することにとって有効な振動が当該歯科用
チップA1に実質的に伝達されるような状態であれば、
その歯科用チップは充分に実使用可能である。具体的に
は、超音波振動源の発振振動数をfとし、歯科用チップ
の固有振動数をf0としたときに、f0とfが、次式: f−500(Hz)≦f0≦f+500(Hz) の条件を満たしている場合には、その歯科用チップは実
使用可能である。
波振動源の発振振動数の近傍で共振させるためには、以
下に示す4つの項目に関して検討を行い、これらの項目
を組合せることにより、超音波振動源の前記した発振振
動数近傍(幅は500Hz)に当該チップの固有振動数が
入るように調節することが好ましい。まず、第1の項目
は複合成形体の材質である。
る複合材の成形体の材質を、振動の減衰が少なく、か
つ、超音波振動源の発振振動数で共振する固有振動数
(共振振動数)を得ることができるものにすることが好
ましい。その場合、複合材の成形体の材質が軟らかすぎ
ると、目的とする共振が得られず、駆動源から供給され
る振動エネルギーが大きく減衰して超音波振動をチップ
の先端部2にまで有効に振動伝達させることが困難とな
る。逆に硬度を高くしすぎると、治療対象個所を損傷す
ることがあるとともに、破折も起こりやすくなる。
ては、それを駆動源に装着して作動させたときに、超音
波振動源の発振振動数と共振してその超音波振動を先端
部にまで確実に伝達できるとともに、治療対象個所を損
傷しないような材質であることが好ましい。すなわち、
適切な硬度と弾性率を有していることが必要になる。具
体的には、複合材の成形体の硬度はロックウェル硬度
(Mスケール)で65〜120の範囲内にあることが好
ましい。上記ロックウェル硬度が65より低い場合に
は、供給される振動エネルギーの減衰が大きくなり、ま
た120より高い場合には、治療対象個所の損傷を引き
起こすとともに破折が起こりやすくなるからである。
性率で2500〜25000MPaの範囲内にあることが
好ましい。この曲げ弾性率が2500MPaより小さい場
合には、供給される超音波振動の伝達効率が低下して有
効な治療効果が得にくくなり、また25000MPaより
大きくするとチップの破折が起こりやすくなる。硬度の
より好ましい値は、ロックウェル硬度(Mスケール)で
75〜100,曲げ弾性率のより好ましい値は1000
0〜25000MPaである。
率、したがって、供給された振動エネルギーのチップ先
端部への伝達効率は、用いるプラスチック基材の種類や
配合割合、充填材の種類や配合割合などによって変化す
る。例えば、充填材が粉末であった場合には、その粉末
の粒度によっても変化する。そして、充填材が短繊維で
あった場合には、その繊維径やアスペクト比によっても
変化する。したがって、上記した範囲の硬度や曲げ弾性
率を有する複合材の成形体は、上記の各因子を適切に組
み合わせることによって製造することができる。
有機質充填材であるかによって、得られた複合成形体の
歯科用チップとしての機能は変わってくる。一般に、有
機物質に振動エネルギーを供給した場合、当該有機物質
内を伝搬していく振動エネルギーは吸収され、その減衰
が大きくなるので、それを強化材として製造した複合材
の成形体も振動エネルギーの減衰能は大きくなる傾向を
示す。したがって、その複合材の成形体から成る歯科用
チップを超音波振動源に装着して作動させた場合、超音
波振動源の出力パワーを小さくすると、超音波振動源か
ら供給される振動エネルギーは、歯科用チップの先端部
に到達する前に減衰してしまい、結局、歯科用チップの
先端部は共振動作を起こさず、治療効果を発揮しなくな
ることがある。
る複合材の成形体の歯科用チップを実使用する場合に
は、超音波振動源の出力パワーを高めることが必要にな
る。しかし、有機質充填材の特徴の1つとして耐摩耗性
が低く、治療対象個所に損傷を与えにくいという点で歯
科用チップの充填材としては重要である。これに反し、
無機質充填材が配合されている場合には、上記した、振
動の減衰や吸収の問題は起こりづらい。
複合材の成形体の場合には、超音波振動源の出力パワー
を小さくしても、有効な歯科治療が可能となる。例え
ば、プラスチック基材がポリフェニレンサルファイド
で、充填材がカーボン繊維である複合材の成形体の場
合、カーボン繊維の配合割合は10〜50重量%(した
がって、ポリフェニレンサルファイドの割合は50〜9
0重量%)であることが好ましい。より好ましくは20
〜40重量%である。カーボン繊維の配合割合が10重
量%より少ないと、上記した適切な硬度が得られず、振
動の減衰が大きくなり、また50重量%より大きくなる
と、硬度と剛性が高くなりすぎて使用時にチップの破折
が起こりやすくなるからである。
カーボン繊維として、繊維径が7〜9μmでアスペクト
比が15〜100であるものを用いると、得られた複合
材の成形体のロックウェル硬度(Mスケール)は80〜
100,曲げ弾性率は8000〜20000MPaにな
り、超音波振動源の出力パワーが小さい場合であって
も、超音波振動の伝達効率は良好で、しかも目的とする
所望の固有振動数を有する複合材の成形体の製造が行い
やすくなるので好適である。
レンサルファイドを用い、これに充填材として繊維状チ
タン酸カリウムを10〜50重量%配合した複合材の成
形体の場合、この繊維状チタン酸カリウムとしては、繊
維径0.3〜0.6μm,アスペクト比15〜67のものを
用いると、そのロックウェル硬度(Mスケール)は80
〜110,曲げ弾性率が5000〜15000MPaとな
って硬度,曲げ弾性率は適正で、超音波振動源の出力パ
ワーが小さい場合であっても(例えば1W)、超音波振
動の伝達効率が高くなって好適である。
レンサルファイドに上記した充填材を加え、更に、繊維
径12μmのアラミド繊維を約5重量%配合した複合材
の成形体のロックウェル硬度(Mスケール)は75,曲
げ弾性率は7000MPaであり、前記した2つの複合材
の成形体に比べると、その超音波振動の伝達効率は低く
なることが推定される。したがって、この複合成形体を
歯科用チップとして実使用する場合には、前記した2つ
のものに比べ、高い出力パワー(例えば3W以上)の超
音波振動源を用いて作動させることが必要になる。
である。用いる複合材の成形体の組成が同じであったと
しても、チップ形状が異なると、そのチップを同じ超音
波振動源に装着して同一の条件で作動させた場合、異な
った共振動作を示す。例えば、図1で示した形状のチッ
プにおいて、全体の長さを変えたり、また、先端部2の
湾曲形状を変えたりすると、同じ組成の複合材の成形体
であっても、共振振動数が変わってくる。
端部で治療効果を発揮する良好な超音波振動を得るため
に、チップの形状を超音波振動源の発振振動数で共振す
るような形状とすることが好ましい。この場合、初期の
設計段階で、前記した良好な超音波振動が得られる形状
を検討しておくことは重要であるが、本発明の歯科用チ
ップは、マトリックスが軟質なプラスチック基材である
ため切削が容易であり、歯科用チップを製作したのちに
例えば基端部を多少切削するなどして全体の形状を修正
してその固有振動数を微調整することもできる。
源との結合状態に関する問題である。上記した結合が確
実である場合には、超音波振動源からの振動エネルギー
は当該結合部で反射や減衰することなく、効率よく歯科
用チップに伝達される。したがって、超音波振動源との
結合状態を良好にするためには、結合部において、振動
の反射や減衰が起きないようにすることが望ましく、そ
の接続方法としては、図1で示したように、基端部1a
にねじ3を刻設して超音波振動源との間でねじ止めする
ことを好適例としてあげることができる。
示したように、基端部1の接続部1bに上部が開口し底
部に通路4と連通する小孔を有する金属部材6を埋め込
み、この金属部材6の内面に雌ねじ3を刻設すると、超
音波振動源との接続を確実に行うことができ、前記した
結合状態が良好になるので好適である。また、図3で示
した態様の代わりに、図1で示した雌ねじ3の部分に例
えば無電解めっきを行って、当該雌ねじ3の表面を所定
の金属で被覆してもよい。
もよい。これらの場合、結合部の数を可能な限り少なく
して全体を一体化することが超音波振動の減衰要因を減
少させることになる。また、途中にアダプターを介在さ
せて使用することもできるが、しかし、これらは不安定
要因になることがある。第4の因子は、歯科用チップを
超音波振動源に装着したときの全体の系における固有振
動数に関する問題である。
共振状態を発揮させるためには、チップのみではなく、
超音波振動源に装着したときの全体の系における固有振
動数が適切になっていることが重要であり、それは、チ
ップと超音波振動源とを、振動エネルギーを伝達するた
めの一体化物として検討することによって対処すること
ができる。
にして治療対象個所に対する先端部の研磨効果を一層高
めることができる。まず、前記した充填材の外に、更に
研磨性物質をも同時に配合して複合材の成形体に前記研
磨性物質を混入し、均一分散させたり、プラスチック基
材と充填材とから成る複合材の成形体の表面に前記研磨
性物質を膜状に付着させる方法である。
場合は、それを実使用したときに、治療対象個所を研削
する過程で先端部が経時的に摩耗していく場合でも、前
記研磨性物質はチップ内に均一分散しているので、摩耗
後に表出してくる面には必ず存在することになり、研磨
効果の低下は起こらず、常時所望の研磨効果は維持され
ることになる。
場合は、その表面(チップ先端の表面)を被覆する膜状
の研磨性物質が治療対象個所に対する研磨効果を発揮す
ることになる。この後者の研磨性物質の付着方法として
は、例えば、塗着,蒸着,イオンプレーティングなど、
公知の成膜技術を採用することができる。なお、上記し
た前者の方法と後者の方法を比較した場合、後者のチッ
プはその膜状の研磨性物質が摩耗すると研磨効果を発揮
しなくなってしまうが、前者のチップは、チップ全体が
摩耗するまでの間は研磨効果を発揮し続けることができ
るので、歯科の治療・予防に対応して複雑な形状の部位
を形成する場合にも適用することができ、極めて好適で
ある。
は、治療対象個所に対する研磨効果を発揮するものであ
れば何であってもよく、例えば、アルミナ,シリカ,ジ
ルコニア,ガラス,炭化ケイ素,炭化ホウ素,ダイヤモ
ンドなどをあげることができる。とくに、アルミナは好
適である。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、ま
た2種以上を一緒にして用いてもよい。
均一分散させる研磨性物質がアルミナである場合、あま
り細かい粒度のものは均一分散が困難となり、またあま
り粗い粒度のものは歯科用チップの表面が粗くなって、
研磨というよりもむしろ傷をつけることになるので、粒
度は1〜50μm程度の範囲にあるものを用いることが
好ましい。そして、配合割合が少なすぎると、研磨効果
は低下するようになり、逆に配合割合が多くなりすぎる
と、複合材の成形体の硬度や曲げ弾性率、更には振動エ
ネルギーの伝達効率などに好ましくない影響が出はじめ
るので、その配合割合は、5〜20容積%程度にするこ
とが好ましい。
効果を高めるためには、更に、図4に歯科用チップA3
として示したように、先端部2の少なくとも1部に研削
部7を形成してもよい。すなわち、チップ全体をプラス
チック基材と充填材から成る複合材の成形体で製作し、
先端の一部に研削性物質から成る小片を研削部7として
埋め込む、あるいは、基端部(接続部と支柱部)を複合
材の成形体で構成し、支柱部の先に研削部を接続して先
端部を研削部で置き換えることを行ってもよい。なお、
ここでいう研削とは、病的根面,根管壁,軟組織や付着
物を切削除去し、その後、切削面を研磨して滑沢にする
作業のことを指す。
は、研削効果に優れた物で構成されていればよく、格別
限定されるものではないが、例えば、金属片,セラミッ
クス,ガラス片などをあげることができる。また、先端
部全体と置き換える研削部としては、針状のファイルを
あげることができる。このように、先端部にファイルを
有するチップは、根管治療に好適である。ここで、前記
ファイルは、表面に更にダイヤモンドを蒸着したファイ
ルであってもよく、その場合には、一層研削効果の向上
を実現することができるので、根管内の研削,清掃にと
っては好適である。
合には、研磨性を備えたプラスチック材でコーティング
してもよい。なお、上記した根管治療とは、根管の拡
大,根管内からの軟組織や壊死物質の除去,根管内の機
械的拡大,清掃,洗浄および根管充填などの処置や外科
処置時の逆根管治療などのことを指す。
ず、所定のプラスチック基材と充填材とを所定の割合で
混合し、得られた混合物またはそのペレットを、所定の
金型の中に例えば射出成形して目的形状に成形する。す
なわち、本発明の歯科用チップは、従来のプラスチック
成形技術,装置をそのまま援用して製造することがで
き、一旦、金型形状を設定すれば、大量生産が可能であ
るため安価になる。
である本発明の歯科用チップの場合、プラスチックの種
類と充填材の種類や諸スペックと両者の配合割合が一定
であり、かつ形状も全く同一であるときには、それらの
歯科用チップは、すべてある値の硬度や曲げ弾性率、更
には一定の固有振動数を有していることになる。なお、
複合材の成形体を製造する場合には、次のような方法を
採用することができる。
発明の歯科用チップとして使用することができる2種類
またはそれ以上の複合材料を調製し、これらを所定の混
合比率で混合して所定形状の金型に例えば射出成形する
ことにより、目的とする固有振動数,硬度,曲げ弾性率
を有する複合材の成形体にする方法である。その場合、
前記2種類の複合材料の混合比率を変化させ、その混合
比率に対応する成形体を製造し、得られた成形体の固有
振動数,硬度,曲げ弾性率、とりわけ固有振動数をそれ
ぞれ測定することにより上記特性と混合比率との相関関
係を把握し、その相関関係に基づいて2種類の複合材料
の混合比率が決定される。
体が製造される。まず、所定のプラスチックに所定の充
填材の所定量を混合して、組成が異なる2種類の複合材
料a,bを調製する。その場合、複合材料a,bは次の
ようにして調製される。すなわち、複合材料a,bをそ
れぞれ例えば射出成形して成形体a’,b’にしたとき
に、得られた成形体a’の固有振動数がf1,成形体
b’の固有振動数がf2になった場合、それぞれの固有
振動数f1,f2が、使用する超音波発振器の発振振動数
と共振可能な振動数になるように、複合材料a,bそれ
自体でも本発明の歯科用チップの素材として使用できる
ように、複合材料a,bの組成が調整される。
先立ち、次のような準備操作が行われる。すなわち、複
合材料aと複合材料bの混合比率を様々に変えて混合
し、得られた各混合物を例えば射出成形して組成が異な
る混合物の成形体を製造し、超音波発振器の最適発振振
動数に対するそれぞれ成形体の共振振動数を測定し、そ
の共振振動数を前記した混合比率に対してプロットして
共振振動数と混合比率の相関関係を表すグラフを作成し
ておく。
科用チップの製造に移る。すなわち、その共振振動数が
fnである歯科用チップを製造する場合、前記したグラ
フから、共振振動数がfnになる複合材料aと複合材料
bの混合比率を読み取る。そして、読み取った混合比率
となるように、複合材料aと複合材料bを混合した状態
で例えば所定型面の金型内に射出成形する。かくして、
所定の形状と、目的とする共振振動数fnを有する歯科
用チップが容易に複合材として成形される。
ことなく、2種類の複合材料の混合比率をかえるだけ
で、目的とする特性の複合材の成形体、すなわち歯科用
チップを製造することができ、大幅に製造コストの低減
を実現することができるので好適である。
でアスペクト比が100のカーボン繊維30重量%を混
練してペレット化し、得られたペレットを射出成形し
て、図1で示した形状の複合材の成形体を製造した。
が36.3mmであり、先端部2は、個所a1,個所a2で2
回に亘って湾曲した形状になっていて、歯科処置におい
て口腔内の複雑な部位に存在する歯石などの付着物を効
率よく研削除去できるとともに、超音波振動源に結合さ
せた場合に全体で良好な共振動作が起こるように設計さ
れている。そして、チップと超音波振動源との結合部に
は、ねじ部が設けられている。
すように、ハンドピースBに歯科用チップとして取り付
け、ハンドピースBを作動した。なお、このハンドピー
スに内蔵されている超音波振動源は0.1〜10Wのパワ
ーで発振し、その発振振動数の最適値は31kHz,その
幅は±2kHzに設定してある。
チップの共振振動数は32.8±0.3kHzを示した。そし
て、その状態で歯科処置を行ったところ、従来の金属製
歯科用チップのときよりも出力パワーを小さくすると性
能は劣っていたものの、十分に、臨床に使用できる性能
を示した。同時に、歯や人工物にとくに損傷を与えるこ
とはなかった。
料を用いて、特性測定用の試験片を成形し、その硬度
(ロックウェル硬度,Mスケール)と曲げ弾性率を測定
したところ、それぞれ、104,20000MPaであっ
た。なお、上記した形状の複合成形体と同じ材料を用い
て、特性測定用の試験片を成形し、その硬度(ロックウ
ェル硬度,Mスケール)と曲げ弾性率を測定したとこ
ろ、それぞれ、104,20000MPaであった。
でアスペクト比が100のカーボン繊維30重量%を用
いて複合材の成形体を製造したこと、超音波振動源との
結合状態を良好にして超音波振動の伝達効率を向上させ
るために、図3で示したように接続部1aに金属(ステ
ンレス鋼)6を埋め込み、そこへ雌ねじ3を刻設したこ
とを除いては実施例1と同様にして図1で示した形状の
歯科用チップを製造し、それを同様の条件で作動させ
た。
チップの共振振動数は30.6±0.3kHzを示した。そし
て、その状態で歯科処置を行ったところ、実施例1の場
合よりも性能は向上し、出力パワーを3Wに下げても従
来の金属製歯科用チップと同等の性能を示した。しかも
実使用の過程では、歯や人工物に損傷を与えることはな
かった。
0.6μmでアスペクト比15〜67の繊維状チタン酸カ
リウム40重量%を混練してペレット化し、得られたペ
レットを射出成形して図1で示した形状の複合材の成形
体を製造した。この複合材の成形体を実施例1と同様に
ハンドピースBに装着し、歯科用チップとして作動させ
た。
チップの共振振動数は30.4±0.3kHzを示した。そし
て、その状態で歯科処置を行ったところ、性能は実施例
1の場合よりも優れていて、出力パワーを1〜2Wに下
げても従来の金属製歯科用チップと同等の性能を発揮
し、治療に実使用している過程で、歯や人工物に損傷を
与えることはなかった。
くすると、その結合部でクラックが発生して破折しやす
い傾向を示した。なお、上記した形状の複合材の成形体
と同じ材料を用いて、特性測定用の試験片を成形し、そ
の硬度(ロックウェル硬度,Mスケール)と曲げ弾性率
を測定したところ、それぞれ、104,14000MPa
であった。
でアスペクト比が100のカーボン繊維30重量%,繊
維径0.3〜0.6μmでアスペクト比15〜67の繊維状
チタン酸カリウム10重量%を混練して成るペレットを
用いて図1で示した形状の複合材の成形体を製造し、そ
れを実施例1と同様の条件で作動させた。
チップの共振振動数は32.8±0.3kHzを示した。そし
て、その状態で歯科処置を行ったところ、性能は実施例
1の場合よりも優れ、実施例3と同等、従来の金属製歯
科用チップと同等の性能を発揮し、治療に実使用してい
る過程で、歯や人工物に損傷を与えることはなかった。
結合部におけるクラックなどは発生しづらくなった。な
お、上記した形状の複合材の成形体と同じ材料を用い
て、特性測定用の試験片を成形し、その硬度(ロックウ
ェル硬度,Mスケール)と曲げ弾性率を測定したとこ
ろ、それぞれ、94,25000MPaであった。
でアスペクト比が100のカーボン繊維30重量%,繊
維径0.3〜0.6μmでアスペクト比15〜67の繊維チ
タン酸カリウム10重量%を混合し、更にここに、粒度
1〜25μmのアルミナ粉末25容積%を混入し全体を
混練して成るペレットを用いて図1で示した形状の複合
材の成形体を製造し、それを歯科用チップとして実施例
1と同様の条件で作動させた。
チップの共振振動数は32.1±0.3kHzを示した。そし
て、その状態で歯科処置を行ったところ、従来の金属製
歯科用チップと同等の性能を示し、更にはとりわけ優れ
た研磨性を発揮し、またその研磨性は長期に亘って持続
し、また、出力パワーを0.3Wに下げても充分に治療効
果を発揮した。
あれば、歯や人工物にとくに損傷を与えることはなかっ
た。これは、アルミナの分散状態が良好であり、どの部
分でも同等の研磨効果を発揮しているからである。事
実、このチップの表面と内部を電子顕微鏡で観察する
と、どの個所でもアルミナが均一に分散していた。 実施例6 実施例4の複合材の成形体の先端部に、金属片(ステン
レス鋼)7を埋め込んで図4で示した歯科用チップA3
を製造した。
同様の条件で作動させた。チップは共振動作を起こし
た。そのときのチップの共振振動数は31.8±0.3kHz
を示した。そして、その状態で歯科処置を行ったとこ
ろ、従来の金属製歯科用チップと同等の性能を示し、ま
た実施例4に比べると、とりわけ優れた研削性を発揮し
た。 実施例7 ポリアセタール80重量%、繊維径8μmでアスペクト
比100のカーボン繊維20重量%を混練してペレット
化し、得られたペレットを射出成形して、図1で示した
形状の複合材の成形体を製造した。
ハンドピースに歯科用チップとして装着して作動させ
た。実施例3,4のチップに比べて共振動作は悪くなっ
た。とくに、出力パワーが0.3Wのときは作動しなくな
った。また、出力パワーを8Wに高めたところ先端部の
破折が起こった。出力パワーを3Wにすると、この時点
で、チップは治療に用いるためには不充分な状態であっ
たが、一応、共振動作を起こした。そのときのチップの
共振振動数は30.9±0.3kHzを示した。
ろ、従来の金属製歯科用チップと同等の性能は発揮せ
ず、治療に実使用している過程で、歯や人工物に損傷を
与えることはなかったが、しかし治療に充分な効果は得
られなかった。なお、上記した形状の複合材の成形体と
同じ材料を用いて、特性測定用の試験片を成形し、その
硬度(ロックウェル硬度,Mスケール)と曲げ弾性率を
測定したところ、それぞれ、78,5600MPaであっ
た。
酸カリウム35重量%,繊維径12μmのアラミド繊維
5重量%を混練してペレット化し、得られたペレットを
射出成形して、図1で示した形状の複合材の成形体を製
造した。この複合材の成形体を、実施例1で用いたハン
ドピースに歯科用チップとして装着して作動させた。出
力パワーが1Wのときには共振動作を起こさなかった。
しかし、出力パワーを上げると、チップは共振動作を起
こした。そのときのチップの共振振動数は31.5±0.3
kHzを示した。
実施例3のチップに比べると性能は劣っていた。しか
し、実施例3のチップに比べて軟らかく、すべる感触を
受けた。また、超音波振動源の出力パワーを大きくして
も、歯や人工物に損傷を与えることはなかった。なお、
上記した形状の複合材の成形体と同じ材料を用いて、特
性測定用の試験片を成形し、その硬度(ロックウェル硬
度,Mスケール)と曲げ弾性率を測定したところ、それ
ぞれ、75,7200MPaであった。
0.3〜0.6μm,アスペクト比15〜67の繊維状チタ
ン酸カリウム40重量部を混合して複合材料aを調製し
た。ポリフェニレンサルファイド60重量部に対し、平
均径8μm,アスペクト比100のカーボン繊維30重
量部,繊維径0.3〜0.6μmでアスペクト比15〜67
の繊維状チタン酸カリウム10重量部を混合して複合材
料bを調製した。
比率を変えた状態で2種類の材料を金型内に射出成形し
て、図1で示した形状の歯科用チップ各20個を製造し
た。そして、各歯科用チップの共振振動数fnを測定し
て平均値と標準偏差を求め、その結果を表1と図5に示
した。
を変えて図6で示した形状の複合材の成形体A1’を歯
科用チップとして20個製造した。この複合材の成形体
A1’は、全体が34.1mmであり、先端部2は、個所
a1,個所a2、そして個所a3の3個所で湾曲してい
る。そして、各歯科用チップの共振振動数fnを測定し
て平均値と標準偏差を求め、その結果を表2と図7に示
した。
成形体A1,A1’はいずれも同じ組成のものであるにも
かかわらず、形状が異なっているので、固有振動数が異
なったものになっている。上記の表1、図5で示した結
果を基にして共振振動数が31kHzである曲線上の点A
を求め、そのときの混合比率を読み取った。複合材料a
は15重量%,複合材料bは85重量%になっている。
混合比率となるようにして射出成形を行い、図1で示し
た形状の歯科用チップを製作し、その共振振動数を測定
したところ、平均値は31.08kHz,標準偏差は±0.2
1kHzであった。すなわち、目標とする固有振動数との
誤差は、平均値で0.08kHzであった。表2、図7の結
果を基にして固有振動数が31kHzになる歯科用チップ
を次のようにして製造した。
kHzである曲線状の点Bを求め、そのときの混合比率を
読み取った。複合材料aは52.5重量%,複合材料bは
47.5重量%になっている。ついで、複合材料aと複合
材料bが上記の混合比率となるようにして射出成形を行
い、図6で示した形状の歯科用チップを製作し、その共
振振動数を測定したところ、平均値は30.97kHz,標
準偏差は±0.26kHzであった。すなわち、目標とする
共振振動数との誤差は、平均値で0.03kHzであった。
チップを示す側面図である。この歯科用回転チップA4
は、ロトソニックによる歯科治療に用いられていた従来
の金属製の回転チップと同形状になっていて、ロトソニ
ックに接続される接続部8aと支柱部8bとを備える基
端部8と、六角錐状の先端部9とで構成されている。
プA4の形状は、従来用いられているロトソニック用の
金属チップと同形状に成形することにより、これを、そ
のまま従来装置に装着できるので好適である。この歯科
用回転チップA4は、実施例4と同じ組成の複合材の成
形体で製造されている。
転チップの場合、歯科用回転チップの素材となる複合材
の成形体の硬度は、歯石などの付着物を効果的に除去で
きかつ治療対象個所を損傷しないように、適切な硬度と
することが好ましい。すなわち、実施例1の場合と同じ
ように、歯や人工物の表面を損傷することなく歯石など
の付着物は研削除去できるということで、歯科用回転チ
ップの複合材の成形体の硬度は、ロックウェル硬度(M
スケール)で90以上にすることが好ましい。
形体の製造時にはプラスチック基材と充填材との組合せ
において、実施例1と同様な材料を用いることもでき
る。この歯科治療用回転チップは、ロトソニックに、従
来の金属製チップと同様にして取り付けられる。本発明
の歯科治療用回転チップは、従来の金属製のチップと同
様に歯科における処置に使用することができ、歯石の除
去能力は従来の金属製チップと同等の性能を発揮しなが
ら、歯や歯冠修復物に傷を付けることを極力抑えること
ができる。
ある。この歯科用チップA5は、基端部10と研削先端
部であるファイル11とを備えている。基端部10は、
超音波スケーラーの超音波振動源に接続される接続部1
0aとファイル11を支持する支柱部10bとを有す
る。接続部10aには、ねじ部10cが刻設されてお
り、ここに、超音波スケーラーが接続される。ファイル
11はその表面にダイヤモンドが蒸着されている。
まず、前記形状の基端部10を、前記した各実施例の場
合と同様にして複合材の成形体として成形し、ついで、
支柱部10bの先端にファイル11が接続される。ファ
イル11の接続方法としては、例えば、ファイル11の
基端部に雄ねじ11aを刻設し、支柱部11bの先端に
雌ねじ11dを刻設してこれらをねじ止めすることが好
適である。また、ファイル11を加熱することにより、
支柱部10bに融着させて接続することもできる。
ーの超音波振動源に装着することにより根管治療に用い
られ、とくに、根管の拡大,清掃,洗浄などの処置や手
術時の逆根管治療などに効果を発揮する。この歯科用チ
ップA5は、基端部を射出成形により形成しているの
で、比較的容易に製作でき、また、先端ファイルの金属
部は射出成形時に一体的に組み込むことができ、全体が
金属から成る従来のチップに比べ、製作コストを低減す
ることができ、使い捨てにすることも充分可能である。
で示したように、支柱部10bの先端を湾曲させ、かつ
内部には、ねじ部10cから支柱部10bの先端に至る
通路12を成形し、支柱部10bの先端にファイル11
を接続した根管治療用のチップA6にすることもでき
る。このチップ6の場合には、通路12から洗浄水(ま
たは薬液)をファイル11に噴射または噴霧することが
できる。
軟質であるプラスチック基材をマトリックスとし、各種
の充填材を強化材とする複合材の成形体で形成されてい
るので、歯科における処置の際に、歯や人工物を損傷す
ることなく処置が可能であり、処置表面に傷がつかず、
歯石やプラークが新たに歯の表面に付着することを抑制
できる。また、この複合材の成形体は、複雑形状のチッ
プの場合であっても、射出成形により、容易かつ迅速に
製造することができ、また大量生産が可能であるので、
歯科用チップの製造コストは従来の金属製歯科用チップ
に比べて大幅に低減する。このように、本発明による歯
科用チップは製造コストが低いので、使い捨てが可能で
あり、前記チップを1回の処置で捨てることにより、治
療時に感染力の強い血清肝炎やエイズなどの病気に感染
するという虞れを解消することができる。更に、基材が
プラスチックであるので成形後も、研削することにより
容易に形状を修正することができ、チップを患者の個々
の治療対象個所に適合した形状にして用いることもでき
る。
る超音波振動源の発振振動数で共振できる固有振動数を
有しているので、治療時には有効に共振して治療効果を
発揮することができる。請求項3の歯科用チップは、複
合材の成形体の硬度および曲げ弾性率を所定の範囲に調
整しているので、歯科用チップが例えば超音波スケーラ
ーに装着された場合、その発振振動数と適正な状態で共
振して駆動することが容易である。
であるプラスチック基材がいずれも入手容易なプラスチ
ックであるため、製造しやすく、生産性に優れている。
請求項5の歯科用チップは、プラスチック基材として用
いるポリフェニレンサルファイドが、耐食性,耐熱性,
耐薬品性に優れているので、口腔内で使用しても唾液な
どによる変質を抑制することができるとともに、生体へ
の影響も少なく、また、高温・高圧で用いるオートクレ
ーブによる滅菌が可能であり、更に、薬液グルタールに
よる化学滅菌や各種の消毒も行うことができるので好適
である。
体の充填材として、複合材の成形体の硬度および曲げ弾
性率の調整が容易なカーボン繊維,繊維状チタン酸カリ
ウム,ガラス繊維,アルミナ繊維,酸化チタン,ボロ
ン,タルクの1種または2種以上を用いているので、固
有振動数を所望する値に調整することが容易であるとと
もに、しかも、歯や人工物を損傷することなく、治療時
には効率よく歯石などの付着物を除去することができ
る。
波振動源から供給された振動エネルギーの減衰が小さい
ので、超音波振動源の出力パワーを小さくしても、治療
に有効な共振動作を起こすことができ効率よく歯石など
の付着物を除去することができる。そのため、軟組織を
損傷することなく、歯肉に囲まれた直視できないような
部位,歯根分岐部,手術中の根面や根尖部など複雑な部
位へも使用が可能である。
た効果が一層優れているので好適である。請求項8,9
の歯科用チップは、充填材が有機質充填材であるため、
全体としては請求項6,7のチップに比べて軟質であ
り、治療対象個所の損傷をより起こしづらい材質になっ
ている。しかし、歯科治療にとって有効な共振動作を行
わせるためには、用いる超音波振動源の出力パワーを、
請求項6,7のチップの時よりも高めることが必要にな
るという問題があるので、無機質充填材と合わせて用い
ることが有効である。
レンサルファイドに対し、カーボン繊維,または/およ
び繊維状チタン酸カリウムを10〜50重量%配合して
成る複合材の成形体で構成されているので、耐蝕性およ
び耐熱性に優れ、かつ、所望の固有振動数,硬度,曲げ
弾性率を有するものとなっている。請求項11の歯科用
チップは、複合材の成形体に、更に、請求項12で列記
したような研磨性物質が配合されているので、研磨効果
の優れた歯科用チップになっている。そして、この歯科
用チップは、チップ自体を研削することによりチップ形
状を修正したり、また歯科処置の実使用時に表面が摩耗
した場合であっても、研磨性物質が内部に均一に分散し
ているので、摩耗して新しく表出した面にも必ず研磨性
物質が存在していることになり、そのため、形状がかわ
っても所望の研磨効果が長期に亘って確保される。
がアルミナであるため、分散性もよく、研磨効果は一層
優れたものになっている。請求項14の歯科用チップ
は、先端部の一部に、請求項16で列記したような研削
性物質から成る研削部を有しているので、病的根面や付
着物に対する研削性が向上したものになっている。ま
た、先端部の全体を研削部に取り替える、すなわち基端
部の先に研削部を接続した構成のものは、根管治療など
に用いることができる。これらの歯科用チップは、研削
部以外はプラスチック基材をマトリックスとする複合材
の成形体から成るので、全体が金属から成る従来の歯科
用チップに比べ安価に製造することができる。そのた
め、充分使い捨てに対応できる。
てファイルを用いているので、根管治療にとってより好
適である。請求項17の歯科用チップは、基端部におけ
る駆動源との結合個所に金属を埋め込んだり、金属をめ
っきしたり、また外側から帯状の金属で緊締したりして
いるので、駆動源とチップとの結合状態が良好となり、
供給された振動エネルギーの伝達効率は高まり、超音波
振動をより確実にチップの先端部にまで伝達することが
できる。
科用チップは、基材にプラスチックを用いているので、
成形が容易であり、各種形状のチップを比較的簡単にし
かも安価に製造することができる。そのため、各種歯科
処置に柔軟に対応できるチップになっている。また、歯
や人工物を損傷することなく歯石などを効率よく除去す
ることができるので、歯面に、新たに歯石やプラークが
付着することが抑制され、歯や人工歯根を健全な状態に
長期間保持することができ、ウ蝕や歯周病の予防効果が
充分に発揮される。更に、安価に製造できるため使い捨
てが可能であり、感染力の強い血清肝炎やエイズなどの
病気の感染の予防上からもきわめて有効である。
である。
状態を示す斜視図である。
プA2の構成を示す断面図である。
ップA3の構成を示す断面図である。
の成形体A1を製造する際に、複合材料a,bの混合比
率と、得られた複合材の成形体の固有振動数との関係を
示すグラフである。
である。
の成形体A1’を製造する際に、複合材料a,bの混合
比率と、得られた複合材の成形体の固有振動数との関係
を示すグラフである。
ある。
構成を示す側面図である。
A6を示す側面図である。
Claims (17)
- 【請求項1】 駆動源に接続される基端部と、歯科にお
ける処置時に治療対象個所に作用する先端部とを備え、
前記基端部および前記先端部が、プラスチック基材とそ
れに配合された無機質充填材または/および有機質充填
材とから成る複合材の成形体であることを特徴とする歯
科用チップ。 - 【請求項2】 前記駆動源が超音波振動源であり、前記
複合材の成形体は前記超音波振動源の発振振動数近傍で
共振可能な固有振動数を有する請求項1の歯科用チッ
プ。 - 【請求項3】 前記複合材の成形体は、硬度がロックウ
ェル硬度(Mスケール)65〜120、曲げ弾性率が2
500〜25000MPaである請求項1または2の歯科
用チップ。 - 【請求項4】 前記プラスチック基材が、ポリフェニレ
ンサルファイド,ポリアミド,ポリエチレンテレフタレ
ート,ポリブチレンテレフタレート,液晶ポリマー,ポ
リカーボネート,ポリエーテルエーテルケトン,ポリエ
ーテルケトン,ポリエーテルサルホン,ポリサルホン,
ポリエーテルイミド,ポリアミドイミド,ポリイミド,
ポリアセタールの群から選ばれる少なくとも1種である
請求項1の歯科用チップ。 - 【請求項5】 前記プラスチック基材がポリフェニレン
サルファイドである請求項4の歯科用チップ。 - 【請求項6】 前記無機質充填材が、カーボン繊維,繊
維状チタン酸カリウム,ガラス繊維,アルミナ繊維,酸
化チタン,ボロン,タルクの群から選ばれる少なくとも
1種である請求項1の歯科用チップ。 - 【請求項7】 前記無機質充填材が、カーボン繊維また
は/および繊維状チタン酸カリウムである請求項6の歯
科用チップ。 - 【請求項8】 前記有機質充填材が、アラミド(芳香族
ポリアミド)繊維,ポリエチレン繊維,ポリビニルアル
コール繊維,ポリアリーレート繊維,ポリプチレンテル
フタレート繊維の群から選ばれる少なくとも1種である
請求項1の歯科用チップ。 - 【請求項9】 前記有機質充填材がアラミド(芳香族ポ
リアミド)繊維である請求項8の歯科用チップ。 - 【請求項10】 前記複合材の成形体が、ポリフェニレ
ンサルファイド50〜90重量%、ならびに、カーボン
繊維または/および繊維状チタン酸カリウム10〜50
重量%から成る請求項1の歯科用チップ。 - 【請求項11】 前記複合材の成形体には、更に、研磨
性物質が配合されている請求項1の歯科用チップ。 - 【請求項12】 前記研磨性物質が、アルミナ,シリ
カ,ジルコニア,ガラス,炭化ケイ素,炭化ホウ素,ダ
イヤモンドの群から選ばれる少なくとも1種である請求
項11の歯科用チップ。 - 【請求項13】 前記研磨性物質がアルミナである請求
項12の歯科用チップ。 - 【請求項14】 前記先端部の少なくとも1部に研削性
物質を付着させて研削部が形成されている請求項1の歯
科用チップ。 - 【請求項15】 前記研削部がファイルである請求項1
4の歯科用チップ。 - 【請求項16】 前記研削性物質が、金属片,セラミッ
クス片,ガラス片の群から選ばれるいずれか1種である
請求項14の歯科用チップ。 - 【請求項17】 前記基端部における駆動源との接続部
には、金属材料が埋め込まれているか、金属めっきが施
されているか、または帯状の金属が巻かれているかして
いる請求項1の歯科用チップ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33086795A JP3646748B2 (ja) | 1994-12-29 | 1995-12-19 | 歯科用チップの製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33978794 | 1994-12-29 | ||
JP6-339787 | 1994-12-29 | ||
JP33086795A JP3646748B2 (ja) | 1994-12-29 | 1995-12-19 | 歯科用チップの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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