JP3668357B2 - 歯科用チップ装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用チップ装置に関し、更に詳しくは、歯周治療,歯内治療,予防処置や研磨処置などの歯科治療を行ったのちの使い捨てが可能である歯科用チップを備えた歯科用チップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯石やプラーク(歯垢)は、歯周病やウ蝕の主因を成している。そのため、歯面や歯根面,更には人工修復補綴物やインプラント材に付着したこれら歯石やプラークを除去することは、歯の病気の治療や予防にとって最も重要な処置である。
【0003】
このような歯科治療において、歯面のプラークや歯石の除去,ポケット内のデブライドメント,根面を滑沢にする歯根面の無毒化、すなわちプラークコントロールやスケーリング,ルートプレーニングは重要な基本処置となっている。
なお、スケーリングとは、歯肉の縁上および縁下のプラークや歯石などの付着物を除去する操作のことをいい、また、ルートプレーニングとは、歯根面を滑沢にして、歯根面の残存,埋入した歯石や壊死セメント質などを除去し、汚染された歯根面の無毒化をはかる操作のことをいう。
【0004】
前記したスケーリング操作やルートプレーニング操作は、通常、手用の金属製スケーラー、とくに手用キュレットスケーラーを用いて行われており、世界的にも現在、この方法が最も確実とされている。しかしながら手用のキュレットスケーラーによるスケーリングやルートプレーニングは、非常に熟練を要する操作であり、しかも手間のかかる操作である。
【0005】
また、手用キュレットスケーラーを用いる方法の外に、補助的にエンジン用ロトソニック,タービン用エアスケーラー,超音波スケーラーなどの治療具を用いることによりスケーリングやルートプレーニングを行うことがある。
これらの治療具のうち、超音波スケーラーは、所定振動数の超音波を発振する超音波振動源に所定の形状をした歯科用チップを接続したものである。そして、この歯科用チップは、基端部から先端部までが一体化物となっていて、その基端部を前記超音波振動源に着脱自在に接続できるようになっている。
【0006】
超音波振動源を超音波域で振動させると、その超音波振動は、基端部からチップの先端部にまで伝達される。そして、その先端部を歯表面の治療対象個所に押し当てることにより例えば歯石などが研削除去される。
したがって、この超音波スケーラーにおいて、前記したチップは超音波振動源で発振せしめた超音波振動の伝達部材として機能する。
【0007】
ところで、歯科治療としては、例えば、歯や人工物(人工歯根や人工歯,インレーやアマルガムなどの人工的な充填修復・補綴物など)への付着物の除去;病的部分の除去;表面の研削・研磨;洗浄;根管治療;唾石の破壊などの多岐に亘る内容が含まれる。
したがって、前記超音波スケーラーのチップの場合、上に列記した歯科治療を適切に行うことができるように、それぞれの歯科治療に適合する形状の専用チップになっているのが通例である。例えば、歯周治療のため歯面に沿った複雑形状のチップや予防用チップ,根管内の拡大清掃用チップ,根管充填用チップ,逆根管治療用チップなどがある。
【0008】
そして、これらチップは、ステンレス鋼のような耐蝕性,耐摩耗性に優れている金属材料を用いた一体化物として製造されているのが通例である。とくに、硬質の金属材料で製造した歯科用チップの場合には、使用過程におけるチップ摩耗が抑制されるとともに、短時間でも歯石などの付着物を効率よく除去できるので、歯科治療にとっては極めて有効なチップである。しかしながら、他方では、金属製のチップは、歯や人工物に損傷を与えやすく、一旦傷を付けると、その損傷個所に歯石やプラークなどが付着することにより新たにウ蝕や歯周病の原因を引き起こすこともある。
【0009】
また、この金属製のチップと超音波振動源との接続は、当該チップへの超音波振動を確実に伝達させるためにも、またチップを確実に固定して使用時の脱落が起こらないようにするためにも、ねじ螺合による接続が一般的である。
したがって、歯科治療の態様が変化する場合には、それまで装着していたチップと超音波振動源とのねじ接続を解除して当該チップを取り外し、次に実施すべき歯科治療に適合した形状の別のチップを超音波振動源にねじ接続して交換するという作業が必要になる。すなわち、歯科治療の態様が変化するたびに、その都度、それまで使用していたチップの取り外し−新たなチップのねじ螺合という作業が必要になる。
【0010】
しかしながら、このような作業は、専用の着脱用道具を必要とし、また、実際に歯科治療を行う歯科医の立場からすると、チップの交換に要する時間はロスタイムとなるのみならず煩雑な作業であり、また超音波スケーラーを効率的に活用しているとはいいがたい。
更に、これらのチップは、通常、その基端部から先端部にまで至る軸部の中に細い通水路を形成し、歯科治療時には、その通水路から洗浄水や薬液を噴出して実使用されている。しかし、チップそれ自体はその形状が複雑でかつ細いものであるため、上記した通水路の形成作業は高度の熟練を必要とし、その結果、チップを安価に大量生産することは困難である。したがって、歯科用チップの価格は非常に高価にならざるを得ない。
【0011】
一方、最近では、歯科治療の際、エイズや感染力の強い血清肝炎などの病気の感染を避けるために、治療に用いる器具、とくに、唾液や血液などの分泌物と直接接触するような器具、あるいは前記分泌物と直接接触し、しかも細管を有するような器具は、使い捨て(ディスポーザブル)にすることが望まれている。
しかしながら、従来の歯科用チップは、前記したように、非常に高価であるため、一度の歯科治療のたびごとに使い捨てるというわけにはいかないという問題がある。
【0012】
更に、個人で自分の歯石を除去して予防処置を行ったり、また歯面の研磨処置を行おうとした場合、上記したチップが高価であるということからして、なおさら使い捨てるというわけにはいかない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、超音波スケーラーに用いられる歯科用チップにおける上記した問題を解決し、歯周治療,歯内治療,予防処置や研磨処置など(以下、これらを称して歯科治療などという)を行う際における超音波スケーラーの操作時にはその対象となる治療個所に有効に作用することは勿論のこと、ワンタッチで簡単に装着・脱着することができ、しかも、安価に製造できるので治療終了後は使い捨てが可能である歯科用チップが装着されている歯科用チップ装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成するために鋭意研究を重ね、その過程で、従来の歯科用チップは、超音波振動が導入される基端部からその超音波振動で実際の歯科治療などを行う先端部までがある所定の材料から成り、複雑な形状をした一体化物であることに着目した。
【0015】
すなわち、実使用される歯科用チップは、全体のわずかな部分を占める先端部のみが実際の歯科治療などを実現するための作用部であり、他の大部分は単に前記先端部(作用部)に超音波振動を伝達するための伝達媒体として機能しているにすぎないという事実である。
そのため、実際の歯科治療などに使用された先端部を使い捨てようとしても、そのことは、いまだ長期使用が可能な状態にある伝達媒体をも同時に廃棄することになってしまう。
【0016】
このようなことから、本発明者らは、歯科用チップにおいて、治療個所に有効に作用する先端部と超音波振動の伝達部材とを別体として形成し、両者をワンタッチで着脱自在に装着・脱着可能であるようにして、歯科治療などが終了したのちには、先端部のみを廃棄すれば、実質的に使い捨て可能な歯科用チップにすることができるとの着想を抱き、本発明の歯科用チップ装置を開発するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の歯科用チップ装置は、超音波振動源から延び、前記超音波振動源からの超音波振動を伝達する伝達部材と、前記伝達部材の先端部に脱着可能に接続され、歯科治療に適合した先端形状を有する歯科用チップとを備えた歯科用チップ装置において、前記歯科用チップは、プラスチックからなり且つ前記伝達部材の先端部を抜き差し可能にして嵌入させる孔を有した基端部と、前記孔の内周面に形成された凹部とを有し、前記伝達部材は、その前記先端部の外周面にそれぞれ設けられ、前記歯科用チップの前記孔に前記伝達部材が嵌入したとき 、前記凹部に嵌合される凸部及び前記孔の内周面に食い込むダイヤモンド被覆を有する、ことを特徴とする。
【0018】
とくに、本発明においては、超音波振動の伝達部材の先端部に従来のような螺合接続を行うことなくワンタッチで装着することができ、また簡単に取り外しができる歯科用チップが装着されている歯科用チップ装置が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の歯科用チップ装置が組み込まれている超音波スケーラーの1例を示す分解図である。
図1において、後述する歯科用チップA 1と同じく後述する伝達部材Bが結合されて本発明の歯科用チップ装置が構成され、そして、その歯科用チップ装置が例えばハンドピースのような超音波振動源Cに接続される。
【0020】
まず、図1で示した伝達部材Bの場合は、従来から歯科用チップとして使用されているものであり、例えば全体形状は、基端部1aから先端部1bにかけて歯根面に沿って前後・左右に複雑に湾曲し、全体は一体化物として製造されている。
この伝達部材Bの基端部1aには例えば雌ねじ1cが刻設され、ここに、超音波振動源Cの先端に刻設されている雄ねじ(図示せず)が螺合されることにより、当該伝達部材Bは超音波振動源Cに接続されて超音波振動が伝達できるようになっている。また、基端部1aには軸線に沿って通水路1dが内設され、この通水路1dは伝達部材Bの途中の位置に開口し、ここから洗浄水や薬液を噴出できるようになっている。そして、伝達部材Bの先端部1bは、所望する直径と長さを有する線材形状になっている。
【0021】
なお、この伝達部材Bは、実際の歯科治療時には、超音波振動源Cからの超音波振動を先端部1bへと伝達するだけであって、直接、歯や人工物や根管などの治療対象個所に接触することはない。そのため、有効に超音波振動を伝達できるような材料で製造すればよい。また、形状も格別限定されるものではなく任意の適切な形状に製造すればよく、製造時における条件選択は緩徐になる。
【0022】
伝達部材Bの材料としては、具体的には、従来のように硬質な金属材料で製造してもよく、また、既に、本発明者らが特願平7−330867号として出願した材料、すなわち、プラスチック材料をマトリックスとし、ここに無機質充填材または/および有機質充填材を強化材として配合して成る複合材で製造してもよい。
【0023】
この伝達部材Bの先端部1bには、歯科治療用の歯科用チップA1が装着される。
図1で示した歯科用チップA 1は、先端部分が歯周治療,歯内治療,研磨や予防などの治療に適した形状の作用部2aになっている先端部材2とプラスチック材から成る結合部3との一体化物として構成されている。
【0024】
結合部3は、全体として一端封じのパイプ片形状をなしていて、その一端3aから封止端3bにかけては、前記した伝達部材Bの先端部1bの直径よりも若干小径の有底孔3cが形成されている。そして、封止端3bに前記した先端部材2の基部2bが一体的に結合されている。この先端部材2と結合部3の一体的な結合に関しては、プラスチック材の成形技術を適用して容易に行うことができる。
【0025】
具体的には、結合部3を成形できる金型の型面の封止端3bに相当する個所に、別体として製造した先端部材2の基部2bを配置した状態でプラスチック材を例えば射出成形すればよい。先端部材2の基部2bは成形された結合部3の封止端3bに埋設された状態で当該結合部と一体化する。
ここで、この歯科用チップA1の先端部材2を構成する材料は、金属材料であってもよく、その表面にダイヤモンドやブラシやラバーなどを付着または取り付けたものであってもよい。
【0026】
また、比較的硬度や弾性率の大きいプラスチック材料や木材などであってもよく、更には前記した特願平7−330867号として出願された複合材であってもよい。
この歯科用チップA1の先端部材2は、実際の歯科治療時に、直接、治療対象個所に押しつけられることを考えると、その治療対象個所を損傷しないような材料で構成されることが好ましい。
【0027】
なお、先端部材2をプラスチック材料や上記複合材で構成する場合には、その成形時にプラスチック材に更にアルミナ,シリカ,ジルコニア,ガラス,炭化ケイ素,炭化ホウ素,ダイヤモンドなどの微粉末から成る研磨材を配合したり、また表面に付着させると研磨効果が向上して有用である。また、先端部材2の先端に金属片,セラミックス片,ガラス片のような研削性物質の小片を配置して歯科用チップA1を構成すると切削効果の向上も得られる。
【0028】
この歯科用チップA1は、結合部3を伝達部材Bの先端部1bに装着して実使用に供される。
すなわち、歯科用チップA1の結合部3の先端3aから伝達部材Bの先端部1bを有底孔3cの中に挿入する。結合部3の有底孔3cは伝達部材Bの先端部1bの直径よりも若干小径になっており、そして結合部3は伝達部材Bの構成材料(通常は金属)よりも相対的に軟質なプラスチック材で構成されているので、伝達部材Bの先端部1bは結合部3の周壁と圧接して遊動することなく把持される。
【0029】
その結果、伝達部材Bと歯科用チップA1は結合部3を介して接続され、ここに歯科用チップが形成される。
この歯科用チップを超音波振動源Cに接続し、伝達部材Bに所定の超音波振動を導入すれば、その超音波振動は伝達部材Bの基端部1aから先端部1bに伝搬し、歯科用チップA1における結合部3を媒介にして更に先端部材2の作用部2aにまで伝搬していき、その結果、作用部2aが所定の歯科治療を実現する。
【0030】
そして、歯科治療の終了後、歯科用チップA1における結合部3と伝達部材B1の先端部1bとの結合状態を解体する、具体的には、歯科用チップA1を先端部1bから引き抜くことにより、使用済みの歯科用チップA1のみを分離し、それは廃棄することができる。そして、次の歯科治療に当たっては、伝達部材Bは再使用し、その先端部に、前記したと同じようにしてその歯科治療に適合した形状の新しい歯科用チップA1を装着すればよい。
【0031】
また、様々な治療を行うに当たり、各治療に適したチップを各治療ごとに取り換えて治療を行う場合にも、本発明においては、各治療に適した形状の歯科用チップを予め用意しておき、それらのチップを、治療ごとに伝達部材Bに順次着脱することにより、清潔なチップで効率的に目的とする治療を進めることができる。
【0032】
図1で示した歯科用チップ装置において重要な問題は、伝達部材Bを伝搬してその先端部1bに到達した超音波振動が結合部3を介して歯科用チップA1の先端部材2にまで確実に伝達していくことである。
そのためには、伝達部材Bの先端部1bと結合部3の内壁とが密着していることが好ましく、また、結合部3は伝達部材Bを伝達してきた超音波振動の周波数に共振するような性質を備えていることが好ましい。
【0033】
とくに、超音波スケーラーを安全に用いる場合、そのパワーはできるだけ小さい方が好ましいことになるが、そのときその振動パワーは小さいので、その振動パワーを確実に作用部2aに伝達するためには、上記した問題が非常に重要となる。
一般に、プラスチック材の場合、そこを伝達する超音波振動は金属材料の場合に比べて減衰が大きくなる。したがって、本発明の歯科用チップ装置の場合も、結合部3はプラスチック材であるため、超音波振動はこの結合部3で減衰し、先端部材2、ひいては作用部2aにまで充分に伝搬しないことも起こり得る。
【0034】
このような問題に対しては、この結合部3を構成するプラスチック材の材質や、内径の大小や、また長さや太さを適宜に選定することにより、歯科用チップA1が作用するに最適な状態となるようにプラスチック材の結合部を構成し、歯科用チップA1の作用部2aへの超音波振動の伝達効率を適切な状態に調節することができる。
その場合、結合部3を本発明者らが特願平7−330867号として出願した複合材で形成することが好適である。
【0035】
この複合材の場合、マトリックスとそこに充填される強化材の種類や組合せを変えたり、また強化材の充填割合を変えたり、更には形状を適切に選択することにより、その固有振動数を微調整することが可能であり、そのため、伝達部材Bの先端部1bに伝達されてきた超音波振動の周波数が変動しても、その周波数に対応して、結合部3を共振させることができるからである。
【0036】
すなわち、最適の固有振動数となるように結合部3の製造が可能である。
また、伝達部材Bの先端部1bの表面にダイヤモンドやSiCのような硬質材料を被着せしめて例えば梨子地状の表面にすると、そこに歯科用チップA1を外嵌したときに上記硬質材料が結合部3の内壁に食い込むことにより、伝達部材Bの先端部1bと歯科用チップA1の結合(密着)状態はよくなり、その結果、先端部材2への超音波振動の伝達効率が向上して好適である。
【0037】
その場合、前記硬質材料は先端部1bの全面に被着せしめてもよく、一部表面に被着せしめてもよい。
要は、先端部1bと結合部3の内壁とが密着する面積を大きくして、結合部3の内壁との間で密着した結合状態を実現できるように被着せしめればよい。
図2は、別の歯科用チップA 2を示す。この歯科用チップA2は、先端部材2が歯周治療に適合する金属製の針状形状になっていて、この先端部材2とプラスチック材から成る結合部3とが一体化しているものである。この歯科用チップA2は、歯科用チップA1の場合と同じように、結合部3の先端3aに図示しない伝達部材の先端部を嵌入して実使用に供される。そして、取り外すときは歯科用チップA1を引き抜けばよい。
【0038】
また、図3で示したように、先端部材の最先端に研削性物質の小片2’を配置すると切削効果が更に向上して好適である。
図4および図4のV−V線に沿う断面図である図4は、更に別の歯科用チップA 3を示す。この歯科用チップA3は、先端部材2がプラスチック材や木材から成り、歯間部に適合する牛刀状になっていて、その基部でプラスチック材から成る結合部3と一体化している。この歯科用チップA3も、結合部3の先端3aに伝達部材の先端部を嵌入して実使用に供される。
【0039】
図6は他の歯科用チップA 4を示す。この歯科用チップA4は、全体がプラスチック材から成り、その形状は鞘状をなしている。この歯科用チップA4はこれを振動部材の先端部1bにかぶせて実使用に供し、使用後は先端部1bから取り外して捨てる。この歯科用チップA4は、例えば、個人で歯石を除去したり、また歯面に付着したたばこヤニなどを除去したりするときに用いられ、研磨効果を期待するときには、プラスチック材に研磨性物質を混入すればよい。また、この歯科用チップA4は全体がプラスチック材から成るため、素人であっても安全を確保することができ、更には可撓性に富む軟質のプラスチックで成形することにより、伝達部材の先端部1bの形状に自由に対応させることができる。
【0040】
例えば図7で示したように、伝達部材の先端部1bが湾曲形状になっていても、歯科用チップA4は先端部1bの形状に適合して自由に変形して実使用することができる。
図8および図8のIX−IX線に沿う断面図である図9は、更に別の歯科用チップA 5を示す。
【0041】
この歯科用チップA5では、図1で示した歯科用チップA1の有底孔3cの壁面に小孔3dが凹部として形成されている。そして、この有底孔3cに嵌入される伝達部材Bの先端部1bには、前記小孔3dと略同径の小さな突起1eが形成されている。
この歯科用チップA5の実使用に際しては、当該歯科用チップA5を伝達部材Bの先端部1bに嵌め込み、必要に応じては、少し左右に軸回転する。先端部1bの突起1eと結合部3の小孔3dの位置が一致すると、当該突起1eは小孔3dに嵌まり込み、歯科用チップA5は伝達部材Bと合体してここに歯科用チップ装置が形成される。このようにして形成された歯科用チップ装置の場合、小孔3dと突起1eが嵌合しているので、チップ装置の実働時にチップA 5が伝達部材Bから外れるという事態は起こらない。
【0042】
歯科用チップA5を取り外すときには、当該歯科用チップA5をそのまま伝達部材Bの先端部1bから引き抜けばよい。先端部1bの突起1eはその形状が小さく、また結合部3は弾性を有するプラスチック材で構成されているので、上記引き抜き作業は容易である。
図10はリーマーファイルとして使用可能な別の歯科用チップA 6を示す。
【0043】
この歯科用チップA6においては、先端部材2に歯神経までの距離の指標であるマーカー4が取り付けられ、その基部2bはプラスチック材から成る結合部3と一体化している。そして、結合部3の上部には伝達部材Bの先端部1bよりも若干小径の貫通孔3eが形成されている。
なお、この貫通孔3eは、先端部材2の基部2bの位置を回避できるような個所であるならば、結合部3のどこに形成されていてもよい。
【0044】
この歯科用チップA6の実使用に際しては、前記貫通孔3eに伝達部材Bの先端部1bを挿入すればよい。また、取り外しのときは、引き抜けばよい。
なお、以上例示したチップA 2,A3,A4,A5,A6を用いて歯科用チップ装置を形成する場合、チップA 1に関して説明したように、装着する相手材である伝達部材Bの先端部1bの表面にダイヤモンドなどの硬質粒子を付着しておくと、当該先端部1bとチップとの結合状態は良好になり、超音波振動の伝達効率が向上して有効である。
【0045】
また、いずれの歯科用チップの場合も、歯科用チップA5の場合と同じように、孔の壁面に凹部を設け、相手材の伝達部材の先端部に前記凹部と嵌合する突起を設けてもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の歯科用チップ装置は、超音波振動源に接続されて超音波振動を伝達する伝達部材と、その先端部に着脱自在に装着され、歯科治療に適合した形状を有するチップとから成る。したがって、本発明の歯科用チップ装置の場合、歯科治療などの終了後、上記したチップのみを伝達部材から選択的に取り外してそれを廃棄することができ、そして伝達部材には次の歯科治療に適合した形状を有する別のチップを装着することにより次の処置に当たることができる。すなわち、本発明の歯科用チップ装置は実質的に使い捨て可能な状態になっている。
【0047】
また、実施例として示した本発明の歯科用チップ装置に装着されるチップA 1,A2,A3,A4,A5,A6のいずれの場合も、伝達部材Bの先端部1bにワンタッチで嵌め込むことができ、そして引き抜いて脱着することができる。したがって、歯科治療の態様が変化した場合であっても、それまで使っていたチップを伝達部材Bから取り外し、ついで、次に行うべき歯科治療に適合するチップを伝達部材Bに装着する作業を短時間で行うことができる。すなわち、チップの交換を簡単に行うことができるので、高い治療効率の実現が可能となる。
【0048】
更に、本発明の歯科用チップ装置に装着されるチップは、予め製造しておいた先端部材とプラスチック材とを例えば射出成形して製造することができるので、大量生産が可能であり、したがって製造コストも安価となり、ディスポザブルの要求に充分応えることができる。
また、前記した複合材で結合部を形成すれば、伝達部材からの超音波振動の伝達を調節することが可能となり、最適な状態での歯科治療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 歯科用チップA 1を装着した本発明の歯科用チップ装置の1例を示す分解図である。
【図2】本発明の歯科用チップ装置に装着される別の歯科用チップA 2を示す断面図である。
【図3】歯科用チップA 2の変形例を示す断面図である。
【図4】更に別の歯科用チップA 3を示す斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明の歯科用チップ装置に装着される他の歯科用チップA 4を示す断面図である。
【図7】歯科用チップA 4の別の例を示す断面図である。
【図8】本発明の歯科用チップ装置に装着される更に別の歯科用チップA 5を示す一部切欠断面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】本発明の歯科用チップに装着される別の歯科用チップA 6を示す一部切欠断面図である。
【符号の説明】
A1,A2,A3,A4,A5,A6 歯科用チップ
B 超音波振動の伝達部材
C 超音波振動源(ハンドピース)
1a 伝達部材の基端部
1b 伝達部材の先端部
1c ねじ
1d 通水路
1e 突起
2 先端部材
2’ 研磨性物質の小片
2a 先端部材2の作用部
2b 先端部材2の基部
3a,3b 結合部3の端部
3c 有底孔
3d 小孔
3e 貫通孔
4 マーカー
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用チップ装置に関し、更に詳しくは、歯周治療,歯内治療,予防処置や研磨処置などの歯科治療を行ったのちの使い捨てが可能である歯科用チップを備えた歯科用チップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯石やプラーク(歯垢)は、歯周病やウ蝕の主因を成している。そのため、歯面や歯根面,更には人工修復補綴物やインプラント材に付着したこれら歯石やプラークを除去することは、歯の病気の治療や予防にとって最も重要な処置である。
【0003】
このような歯科治療において、歯面のプラークや歯石の除去,ポケット内のデブライドメント,根面を滑沢にする歯根面の無毒化、すなわちプラークコントロールやスケーリング,ルートプレーニングは重要な基本処置となっている。
なお、スケーリングとは、歯肉の縁上および縁下のプラークや歯石などの付着物を除去する操作のことをいい、また、ルートプレーニングとは、歯根面を滑沢にして、歯根面の残存,埋入した歯石や壊死セメント質などを除去し、汚染された歯根面の無毒化をはかる操作のことをいう。
【0004】
前記したスケーリング操作やルートプレーニング操作は、通常、手用の金属製スケーラー、とくに手用キュレットスケーラーを用いて行われており、世界的にも現在、この方法が最も確実とされている。しかしながら手用のキュレットスケーラーによるスケーリングやルートプレーニングは、非常に熟練を要する操作であり、しかも手間のかかる操作である。
【0005】
また、手用キュレットスケーラーを用いる方法の外に、補助的にエンジン用ロトソニック,タービン用エアスケーラー,超音波スケーラーなどの治療具を用いることによりスケーリングやルートプレーニングを行うことがある。
これらの治療具のうち、超音波スケーラーは、所定振動数の超音波を発振する超音波振動源に所定の形状をした歯科用チップを接続したものである。そして、この歯科用チップは、基端部から先端部までが一体化物となっていて、その基端部を前記超音波振動源に着脱自在に接続できるようになっている。
【0006】
超音波振動源を超音波域で振動させると、その超音波振動は、基端部からチップの先端部にまで伝達される。そして、その先端部を歯表面の治療対象個所に押し当てることにより例えば歯石などが研削除去される。
したがって、この超音波スケーラーにおいて、前記したチップは超音波振動源で発振せしめた超音波振動の伝達部材として機能する。
【0007】
ところで、歯科治療としては、例えば、歯や人工物(人工歯根や人工歯,インレーやアマルガムなどの人工的な充填修復・補綴物など)への付着物の除去;病的部分の除去;表面の研削・研磨;洗浄;根管治療;唾石の破壊などの多岐に亘る内容が含まれる。
したがって、前記超音波スケーラーのチップの場合、上に列記した歯科治療を適切に行うことができるように、それぞれの歯科治療に適合する形状の専用チップになっているのが通例である。例えば、歯周治療のため歯面に沿った複雑形状のチップや予防用チップ,根管内の拡大清掃用チップ,根管充填用チップ,逆根管治療用チップなどがある。
【0008】
そして、これらチップは、ステンレス鋼のような耐蝕性,耐摩耗性に優れている金属材料を用いた一体化物として製造されているのが通例である。とくに、硬質の金属材料で製造した歯科用チップの場合には、使用過程におけるチップ摩耗が抑制されるとともに、短時間でも歯石などの付着物を効率よく除去できるので、歯科治療にとっては極めて有効なチップである。しかしながら、他方では、金属製のチップは、歯や人工物に損傷を与えやすく、一旦傷を付けると、その損傷個所に歯石やプラークなどが付着することにより新たにウ蝕や歯周病の原因を引き起こすこともある。
【0009】
また、この金属製のチップと超音波振動源との接続は、当該チップへの超音波振動を確実に伝達させるためにも、またチップを確実に固定して使用時の脱落が起こらないようにするためにも、ねじ螺合による接続が一般的である。
したがって、歯科治療の態様が変化する場合には、それまで装着していたチップと超音波振動源とのねじ接続を解除して当該チップを取り外し、次に実施すべき歯科治療に適合した形状の別のチップを超音波振動源にねじ接続して交換するという作業が必要になる。すなわち、歯科治療の態様が変化するたびに、その都度、それまで使用していたチップの取り外し−新たなチップのねじ螺合という作業が必要になる。
【0010】
しかしながら、このような作業は、専用の着脱用道具を必要とし、また、実際に歯科治療を行う歯科医の立場からすると、チップの交換に要する時間はロスタイムとなるのみならず煩雑な作業であり、また超音波スケーラーを効率的に活用しているとはいいがたい。
更に、これらのチップは、通常、その基端部から先端部にまで至る軸部の中に細い通水路を形成し、歯科治療時には、その通水路から洗浄水や薬液を噴出して実使用されている。しかし、チップそれ自体はその形状が複雑でかつ細いものであるため、上記した通水路の形成作業は高度の熟練を必要とし、その結果、チップを安価に大量生産することは困難である。したがって、歯科用チップの価格は非常に高価にならざるを得ない。
【0011】
一方、最近では、歯科治療の際、エイズや感染力の強い血清肝炎などの病気の感染を避けるために、治療に用いる器具、とくに、唾液や血液などの分泌物と直接接触するような器具、あるいは前記分泌物と直接接触し、しかも細管を有するような器具は、使い捨て(ディスポーザブル)にすることが望まれている。
しかしながら、従来の歯科用チップは、前記したように、非常に高価であるため、一度の歯科治療のたびごとに使い捨てるというわけにはいかないという問題がある。
【0012】
更に、個人で自分の歯石を除去して予防処置を行ったり、また歯面の研磨処置を行おうとした場合、上記したチップが高価であるということからして、なおさら使い捨てるというわけにはいかない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、超音波スケーラーに用いられる歯科用チップにおける上記した問題を解決し、歯周治療,歯内治療,予防処置や研磨処置など(以下、これらを称して歯科治療などという)を行う際における超音波スケーラーの操作時にはその対象となる治療個所に有効に作用することは勿論のこと、ワンタッチで簡単に装着・脱着することができ、しかも、安価に製造できるので治療終了後は使い捨てが可能である歯科用チップが装着されている歯科用チップ装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成するために鋭意研究を重ね、その過程で、従来の歯科用チップは、超音波振動が導入される基端部からその超音波振動で実際の歯科治療などを行う先端部までがある所定の材料から成り、複雑な形状をした一体化物であることに着目した。
【0015】
すなわち、実使用される歯科用チップは、全体のわずかな部分を占める先端部のみが実際の歯科治療などを実現するための作用部であり、他の大部分は単に前記先端部(作用部)に超音波振動を伝達するための伝達媒体として機能しているにすぎないという事実である。
そのため、実際の歯科治療などに使用された先端部を使い捨てようとしても、そのことは、いまだ長期使用が可能な状態にある伝達媒体をも同時に廃棄することになってしまう。
【0016】
このようなことから、本発明者らは、歯科用チップにおいて、治療個所に有効に作用する先端部と超音波振動の伝達部材とを別体として形成し、両者をワンタッチで着脱自在に装着・脱着可能であるようにして、歯科治療などが終了したのちには、先端部のみを廃棄すれば、実質的に使い捨て可能な歯科用チップにすることができるとの着想を抱き、本発明の歯科用チップ装置を開発するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の歯科用チップ装置は、超音波振動源から延び、前記超音波振動源からの超音波振動を伝達する伝達部材と、前記伝達部材の先端部に脱着可能に接続され、歯科治療に適合した先端形状を有する歯科用チップとを備えた歯科用チップ装置において、前記歯科用チップは、プラスチックからなり且つ前記伝達部材の先端部を抜き差し可能にして嵌入させる孔を有した基端部と、前記孔の内周面に形成された凹部とを有し、前記伝達部材は、その前記先端部の外周面にそれぞれ設けられ、前記歯科用チップの前記孔に前記伝達部材が嵌入したとき 、前記凹部に嵌合される凸部及び前記孔の内周面に食い込むダイヤモンド被覆を有する、ことを特徴とする。
【0018】
とくに、本発明においては、超音波振動の伝達部材の先端部に従来のような螺合接続を行うことなくワンタッチで装着することができ、また簡単に取り外しができる歯科用チップが装着されている歯科用チップ装置が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の歯科用チップ装置が組み込まれている超音波スケーラーの1例を示す分解図である。
図1において、後述する歯科用チップA 1と同じく後述する伝達部材Bが結合されて本発明の歯科用チップ装置が構成され、そして、その歯科用チップ装置が例えばハンドピースのような超音波振動源Cに接続される。
【0020】
まず、図1で示した伝達部材Bの場合は、従来から歯科用チップとして使用されているものであり、例えば全体形状は、基端部1aから先端部1bにかけて歯根面に沿って前後・左右に複雑に湾曲し、全体は一体化物として製造されている。
この伝達部材Bの基端部1aには例えば雌ねじ1cが刻設され、ここに、超音波振動源Cの先端に刻設されている雄ねじ(図示せず)が螺合されることにより、当該伝達部材Bは超音波振動源Cに接続されて超音波振動が伝達できるようになっている。また、基端部1aには軸線に沿って通水路1dが内設され、この通水路1dは伝達部材Bの途中の位置に開口し、ここから洗浄水や薬液を噴出できるようになっている。そして、伝達部材Bの先端部1bは、所望する直径と長さを有する線材形状になっている。
【0021】
なお、この伝達部材Bは、実際の歯科治療時には、超音波振動源Cからの超音波振動を先端部1bへと伝達するだけであって、直接、歯や人工物や根管などの治療対象個所に接触することはない。そのため、有効に超音波振動を伝達できるような材料で製造すればよい。また、形状も格別限定されるものではなく任意の適切な形状に製造すればよく、製造時における条件選択は緩徐になる。
【0022】
伝達部材Bの材料としては、具体的には、従来のように硬質な金属材料で製造してもよく、また、既に、本発明者らが特願平7−330867号として出願した材料、すなわち、プラスチック材料をマトリックスとし、ここに無機質充填材または/および有機質充填材を強化材として配合して成る複合材で製造してもよい。
【0023】
この伝達部材Bの先端部1bには、歯科治療用の歯科用チップA1が装着される。
図1で示した歯科用チップA 1は、先端部分が歯周治療,歯内治療,研磨や予防などの治療に適した形状の作用部2aになっている先端部材2とプラスチック材から成る結合部3との一体化物として構成されている。
【0024】
結合部3は、全体として一端封じのパイプ片形状をなしていて、その一端3aから封止端3bにかけては、前記した伝達部材Bの先端部1bの直径よりも若干小径の有底孔3cが形成されている。そして、封止端3bに前記した先端部材2の基部2bが一体的に結合されている。この先端部材2と結合部3の一体的な結合に関しては、プラスチック材の成形技術を適用して容易に行うことができる。
【0025】
具体的には、結合部3を成形できる金型の型面の封止端3bに相当する個所に、別体として製造した先端部材2の基部2bを配置した状態でプラスチック材を例えば射出成形すればよい。先端部材2の基部2bは成形された結合部3の封止端3bに埋設された状態で当該結合部と一体化する。
ここで、この歯科用チップA1の先端部材2を構成する材料は、金属材料であってもよく、その表面にダイヤモンドやブラシやラバーなどを付着または取り付けたものであってもよい。
【0026】
また、比較的硬度や弾性率の大きいプラスチック材料や木材などであってもよく、更には前記した特願平7−330867号として出願された複合材であってもよい。
この歯科用チップA1の先端部材2は、実際の歯科治療時に、直接、治療対象個所に押しつけられることを考えると、その治療対象個所を損傷しないような材料で構成されることが好ましい。
【0027】
なお、先端部材2をプラスチック材料や上記複合材で構成する場合には、その成形時にプラスチック材に更にアルミナ,シリカ,ジルコニア,ガラス,炭化ケイ素,炭化ホウ素,ダイヤモンドなどの微粉末から成る研磨材を配合したり、また表面に付着させると研磨効果が向上して有用である。また、先端部材2の先端に金属片,セラミックス片,ガラス片のような研削性物質の小片を配置して歯科用チップA1を構成すると切削効果の向上も得られる。
【0028】
この歯科用チップA1は、結合部3を伝達部材Bの先端部1bに装着して実使用に供される。
すなわち、歯科用チップA1の結合部3の先端3aから伝達部材Bの先端部1bを有底孔3cの中に挿入する。結合部3の有底孔3cは伝達部材Bの先端部1bの直径よりも若干小径になっており、そして結合部3は伝達部材Bの構成材料(通常は金属)よりも相対的に軟質なプラスチック材で構成されているので、伝達部材Bの先端部1bは結合部3の周壁と圧接して遊動することなく把持される。
【0029】
その結果、伝達部材Bと歯科用チップA1は結合部3を介して接続され、ここに歯科用チップが形成される。
この歯科用チップを超音波振動源Cに接続し、伝達部材Bに所定の超音波振動を導入すれば、その超音波振動は伝達部材Bの基端部1aから先端部1bに伝搬し、歯科用チップA1における結合部3を媒介にして更に先端部材2の作用部2aにまで伝搬していき、その結果、作用部2aが所定の歯科治療を実現する。
【0030】
そして、歯科治療の終了後、歯科用チップA1における結合部3と伝達部材B1の先端部1bとの結合状態を解体する、具体的には、歯科用チップA1を先端部1bから引き抜くことにより、使用済みの歯科用チップA1のみを分離し、それは廃棄することができる。そして、次の歯科治療に当たっては、伝達部材Bは再使用し、その先端部に、前記したと同じようにしてその歯科治療に適合した形状の新しい歯科用チップA1を装着すればよい。
【0031】
また、様々な治療を行うに当たり、各治療に適したチップを各治療ごとに取り換えて治療を行う場合にも、本発明においては、各治療に適した形状の歯科用チップを予め用意しておき、それらのチップを、治療ごとに伝達部材Bに順次着脱することにより、清潔なチップで効率的に目的とする治療を進めることができる。
【0032】
図1で示した歯科用チップ装置において重要な問題は、伝達部材Bを伝搬してその先端部1bに到達した超音波振動が結合部3を介して歯科用チップA1の先端部材2にまで確実に伝達していくことである。
そのためには、伝達部材Bの先端部1bと結合部3の内壁とが密着していることが好ましく、また、結合部3は伝達部材Bを伝達してきた超音波振動の周波数に共振するような性質を備えていることが好ましい。
【0033】
とくに、超音波スケーラーを安全に用いる場合、そのパワーはできるだけ小さい方が好ましいことになるが、そのときその振動パワーは小さいので、その振動パワーを確実に作用部2aに伝達するためには、上記した問題が非常に重要となる。
一般に、プラスチック材の場合、そこを伝達する超音波振動は金属材料の場合に比べて減衰が大きくなる。したがって、本発明の歯科用チップ装置の場合も、結合部3はプラスチック材であるため、超音波振動はこの結合部3で減衰し、先端部材2、ひいては作用部2aにまで充分に伝搬しないことも起こり得る。
【0034】
このような問題に対しては、この結合部3を構成するプラスチック材の材質や、内径の大小や、また長さや太さを適宜に選定することにより、歯科用チップA1が作用するに最適な状態となるようにプラスチック材の結合部を構成し、歯科用チップA1の作用部2aへの超音波振動の伝達効率を適切な状態に調節することができる。
その場合、結合部3を本発明者らが特願平7−330867号として出願した複合材で形成することが好適である。
【0035】
この複合材の場合、マトリックスとそこに充填される強化材の種類や組合せを変えたり、また強化材の充填割合を変えたり、更には形状を適切に選択することにより、その固有振動数を微調整することが可能であり、そのため、伝達部材Bの先端部1bに伝達されてきた超音波振動の周波数が変動しても、その周波数に対応して、結合部3を共振させることができるからである。
【0036】
すなわち、最適の固有振動数となるように結合部3の製造が可能である。
また、伝達部材Bの先端部1bの表面にダイヤモンドやSiCのような硬質材料を被着せしめて例えば梨子地状の表面にすると、そこに歯科用チップA1を外嵌したときに上記硬質材料が結合部3の内壁に食い込むことにより、伝達部材Bの先端部1bと歯科用チップA1の結合(密着)状態はよくなり、その結果、先端部材2への超音波振動の伝達効率が向上して好適である。
【0037】
その場合、前記硬質材料は先端部1bの全面に被着せしめてもよく、一部表面に被着せしめてもよい。
要は、先端部1bと結合部3の内壁とが密着する面積を大きくして、結合部3の内壁との間で密着した結合状態を実現できるように被着せしめればよい。
図2は、別の歯科用チップA 2を示す。この歯科用チップA2は、先端部材2が歯周治療に適合する金属製の針状形状になっていて、この先端部材2とプラスチック材から成る結合部3とが一体化しているものである。この歯科用チップA2は、歯科用チップA1の場合と同じように、結合部3の先端3aに図示しない伝達部材の先端部を嵌入して実使用に供される。そして、取り外すときは歯科用チップA1を引き抜けばよい。
【0038】
また、図3で示したように、先端部材の最先端に研削性物質の小片2’を配置すると切削効果が更に向上して好適である。
図4および図4のV−V線に沿う断面図である図4は、更に別の歯科用チップA 3を示す。この歯科用チップA3は、先端部材2がプラスチック材や木材から成り、歯間部に適合する牛刀状になっていて、その基部でプラスチック材から成る結合部3と一体化している。この歯科用チップA3も、結合部3の先端3aに伝達部材の先端部を嵌入して実使用に供される。
【0039】
図6は他の歯科用チップA 4を示す。この歯科用チップA4は、全体がプラスチック材から成り、その形状は鞘状をなしている。この歯科用チップA4はこれを振動部材の先端部1bにかぶせて実使用に供し、使用後は先端部1bから取り外して捨てる。この歯科用チップA4は、例えば、個人で歯石を除去したり、また歯面に付着したたばこヤニなどを除去したりするときに用いられ、研磨効果を期待するときには、プラスチック材に研磨性物質を混入すればよい。また、この歯科用チップA4は全体がプラスチック材から成るため、素人であっても安全を確保することができ、更には可撓性に富む軟質のプラスチックで成形することにより、伝達部材の先端部1bの形状に自由に対応させることができる。
【0040】
例えば図7で示したように、伝達部材の先端部1bが湾曲形状になっていても、歯科用チップA4は先端部1bの形状に適合して自由に変形して実使用することができる。
図8および図8のIX−IX線に沿う断面図である図9は、更に別の歯科用チップA 5を示す。
【0041】
この歯科用チップA5では、図1で示した歯科用チップA1の有底孔3cの壁面に小孔3dが凹部として形成されている。そして、この有底孔3cに嵌入される伝達部材Bの先端部1bには、前記小孔3dと略同径の小さな突起1eが形成されている。
この歯科用チップA5の実使用に際しては、当該歯科用チップA5を伝達部材Bの先端部1bに嵌め込み、必要に応じては、少し左右に軸回転する。先端部1bの突起1eと結合部3の小孔3dの位置が一致すると、当該突起1eは小孔3dに嵌まり込み、歯科用チップA5は伝達部材Bと合体してここに歯科用チップ装置が形成される。このようにして形成された歯科用チップ装置の場合、小孔3dと突起1eが嵌合しているので、チップ装置の実働時にチップA 5が伝達部材Bから外れるという事態は起こらない。
【0042】
歯科用チップA5を取り外すときには、当該歯科用チップA5をそのまま伝達部材Bの先端部1bから引き抜けばよい。先端部1bの突起1eはその形状が小さく、また結合部3は弾性を有するプラスチック材で構成されているので、上記引き抜き作業は容易である。
図10はリーマーファイルとして使用可能な別の歯科用チップA 6を示す。
【0043】
この歯科用チップA6においては、先端部材2に歯神経までの距離の指標であるマーカー4が取り付けられ、その基部2bはプラスチック材から成る結合部3と一体化している。そして、結合部3の上部には伝達部材Bの先端部1bよりも若干小径の貫通孔3eが形成されている。
なお、この貫通孔3eは、先端部材2の基部2bの位置を回避できるような個所であるならば、結合部3のどこに形成されていてもよい。
【0044】
この歯科用チップA6の実使用に際しては、前記貫通孔3eに伝達部材Bの先端部1bを挿入すればよい。また、取り外しのときは、引き抜けばよい。
なお、以上例示したチップA 2,A3,A4,A5,A6を用いて歯科用チップ装置を形成する場合、チップA 1に関して説明したように、装着する相手材である伝達部材Bの先端部1bの表面にダイヤモンドなどの硬質粒子を付着しておくと、当該先端部1bとチップとの結合状態は良好になり、超音波振動の伝達効率が向上して有効である。
【0045】
また、いずれの歯科用チップの場合も、歯科用チップA5の場合と同じように、孔の壁面に凹部を設け、相手材の伝達部材の先端部に前記凹部と嵌合する突起を設けてもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の歯科用チップ装置は、超音波振動源に接続されて超音波振動を伝達する伝達部材と、その先端部に着脱自在に装着され、歯科治療に適合した形状を有するチップとから成る。したがって、本発明の歯科用チップ装置の場合、歯科治療などの終了後、上記したチップのみを伝達部材から選択的に取り外してそれを廃棄することができ、そして伝達部材には次の歯科治療に適合した形状を有する別のチップを装着することにより次の処置に当たることができる。すなわち、本発明の歯科用チップ装置は実質的に使い捨て可能な状態になっている。
【0047】
また、実施例として示した本発明の歯科用チップ装置に装着されるチップA 1,A2,A3,A4,A5,A6のいずれの場合も、伝達部材Bの先端部1bにワンタッチで嵌め込むことができ、そして引き抜いて脱着することができる。したがって、歯科治療の態様が変化した場合であっても、それまで使っていたチップを伝達部材Bから取り外し、ついで、次に行うべき歯科治療に適合するチップを伝達部材Bに装着する作業を短時間で行うことができる。すなわち、チップの交換を簡単に行うことができるので、高い治療効率の実現が可能となる。
【0048】
更に、本発明の歯科用チップ装置に装着されるチップは、予め製造しておいた先端部材とプラスチック材とを例えば射出成形して製造することができるので、大量生産が可能であり、したがって製造コストも安価となり、ディスポザブルの要求に充分応えることができる。
また、前記した複合材で結合部を形成すれば、伝達部材からの超音波振動の伝達を調節することが可能となり、最適な状態での歯科治療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 歯科用チップA 1を装着した本発明の歯科用チップ装置の1例を示す分解図である。
【図2】本発明の歯科用チップ装置に装着される別の歯科用チップA 2を示す断面図である。
【図3】歯科用チップA 2の変形例を示す断面図である。
【図4】更に別の歯科用チップA 3を示す斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明の歯科用チップ装置に装着される他の歯科用チップA 4を示す断面図である。
【図7】歯科用チップA 4の別の例を示す断面図である。
【図8】本発明の歯科用チップ装置に装着される更に別の歯科用チップA 5を示す一部切欠断面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】本発明の歯科用チップに装着される別の歯科用チップA 6を示す一部切欠断面図である。
【符号の説明】
A1,A2,A3,A4,A5,A6 歯科用チップ
B 超音波振動の伝達部材
C 超音波振動源(ハンドピース)
1a 伝達部材の基端部
1b 伝達部材の先端部
1c ねじ
1d 通水路
1e 突起
2 先端部材
2’ 研磨性物質の小片
2a 先端部材2の作用部
2b 先端部材2の基部
3a,3b 結合部3の端部
3c 有底孔
3d 小孔
3e 貫通孔
4 マーカー
Claims (1)
- 超音波振動源から延び、前記超音波振動源からの超音波振動を伝達する伝達部材と、
前記伝達部材の先端部に脱着可能に接続され、歯科治療に適合した先端形状を有する歯科用チップと
を備えた歯科用チップ装置において、
前記歯科用チップは、
プラスチックからなり且つ前記伝達部材の先端部を抜き差し可能にして嵌入させる孔を有した基端部と、前記孔の内周面に形成された凹部とを有し、
前記伝達部材は、
その前記先端部の外周面にそれぞれ設けられ、前記歯科用チップの前記孔に前記伝達部材が嵌入したとき、前記凹部に嵌合される凸部及び前記孔の内周面に食い込むダイヤモンド被覆を有する、
ことを特徴とする歯科用チップ装置。
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