JPH08226061A - 繊維強化樹脂積層成形品およびその製法 - Google Patents

繊維強化樹脂積層成形品およびその製法

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JPH08226061A
JPH08226061A JP5665095A JP5665095A JPH08226061A JP H08226061 A JPH08226061 A JP H08226061A JP 5665095 A JP5665095 A JP 5665095A JP 5665095 A JP5665095 A JP 5665095A JP H08226061 A JPH08226061 A JP H08226061A
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fiber
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molded article
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JP5665095A
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Ryosaku Kadowaki
良策 門脇
Shuji Yumitori
修二 弓取
Takao Yokumoto
貴生 浴本
Toshiaki Okumura
俊明 奥村
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 強化繊維と繊維状もしくは粉粒状の熱可塑性
樹脂を含む加熱溶融成形体(A)の片面に、上記強化繊
維と同種もしくは異種の強化繊維及び上記熱可塑性樹脂
と同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を含む綿状成形体
(B)が、上記熱可塑性樹脂の融合一体化によって積層
された繊維強化樹脂積層成形品と、該成形品の工業的に
有利な製法を開示する。 【効果】 支持強化層となる加熱溶融成形体(A)と、
繊維間空隙を有し吸音機能等を備えた綿状成形体(B)
が、熱可塑性樹脂の融合一体化によって強固に積層接合
されると共に、構造強度と吸音等の諸機能を兼ね備えて
いる。従って、金属板等の支持強化層等による強化を全
く必要とせずそれ自体で自動車用アンダーシールド材等
として有用に利用できる。しかも本発明の方法によれ
ば、該積層成形体を極めて簡単な操作で生産性よく製造
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強化繊維と熱可塑性樹
脂を含む加熱溶融成形体よりなる基材の片面に、繊維間
空隙を有し、吸音、断熱、衝撃吸収等の諸機能を発揮す
る綿状成形体が、その界面で熱可塑性樹脂の溶融一体化
によって強固に積層接合された繊維強化樹脂積層成形
品、並びにその製法に関し、この繊維強化樹脂積層成形
品は、たとえば自動車等に用いられるアンダーシールド
材やノイズシールド材の如く、エンジン音の遮音や吸音
性能が求められる部材等として有効に活用できる。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車等の車体下部に取り付けら
れる吸音用のアンダーシールド材としては、従来より、
ガラス繊維マットをアルミ箔等で包み込んだ吸音性部材
を、鋼板等の金属基材の片面に接着剤等で接合したもの
が用いられている。
【0003】他方繊維強化熱可塑性樹脂系の複合材料
は、安価でしかも優れた機械的特性を有しており、また
リサイクル性にも優れているといった特徴を有している
ところから、様々の分野で広く活用されている。この種
の複合材料の代表的な材料構成は、強化繊維としてガラ
ス繊維や炭素繊維を使用し、熱可塑性樹脂としてポリプ
ロピレン等のポリオレフィン系樹脂を複合したものであ
り、最近では、この種の繊維強化熱可塑性樹脂系複合材
料を、上記の様なアンダーシールド材として有効利用し
ようとする動きも見られる。
【0004】ところが、通常の繊維強化熱可塑性樹脂系
複合材料は、安価で錆を生じることがなくしかもリサイ
クル性にも優れているといった利点を有している反面、
肝心の吸音性能は備えていない。従って、この複合材料
をアンダーシールド用の素材として利用する際には、あ
くまでも基板としての機能を期待し得るに止まり、その
表面に上記と同様のアルミ箔等で包み込んだガラス繊維
マット等の吸音部材を貼り付けなければならない。
【0005】何れにしても従来の吸音材は、基材の表面
にガラス繊維マット等を主たる構成素材とする吸音性部
材を貼り付けたものであるから、こうした構成から必然
的に生じてくる問題として、下記の如き様々の難点が指
摘される。
【0006】基材に吸音性部材を接着剤等で貼り付け
なければならないので、接合作業が煩雑で手数を要し、
生産効率の低下やコストアップの問題が避けられない。 ガラス繊維マット等の貼り付け作業時などにガラス繊
維の破断片が飛散し、作業者の皮膚を刺激したり環境汚
染を生じる。 アンダーシールド材を回収してリサイクルしようとす
ると、夫々の構成素材であるアルミ箔、ガラス繊維マッ
ト、基材を一旦分離しなければならず、その作業が非常
に煩雑で分別回収費用が嵩むため、工業規模でのリサイ
クルは殆んど行なわれていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、優れ
た吸音特性等を有すると共に軽量で取扱い性が良好であ
り、しかもリサイクル性にも優れた繊維強化樹脂積層成
形品を提供し、更にはその様な成形品を簡単な手順で生
産性よく製造することのできる方法を提供しようとする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る繊維強化樹脂積層成形品の構成
は、強化繊維と繊維状もしくは粉粒状の熱可塑性樹脂を
含む加熱溶融成形体(A)の片面に、上記強化繊維と同
種もしくは異種の強化繊維及び上記熱可塑性樹脂と同種
もしくは異種の熱可塑性樹脂を含む綿状成形体(B)
が、上記熱可塑性樹脂の融合一体化によって積層された
ものであるところに要旨を有するものである。該繊維強
化樹脂積層成形品においては、その構成要素となる加熱
溶融成形体(A)中における強化繊維の含有量を10〜
50重量%とし、綿状成形体(B)中における強化繊維
の含有量を50〜90重量%とすることにより、構造強
度においても又吸音、断熱、衝撃吸収等の諸機能におい
ても一段と優れたものとなる。
【0009】また本発明の方法は、上記構成の繊維強化
樹脂積層成形品を簡単な手順で生産性よく製造する方法
であって、その第1の方法は、強化繊維と熱可塑性樹脂
を含む綿状混合物(a)を、該熱可塑性樹脂の溶融温度
以上に加熱溶融成形して前記加熱溶融成形体(A)を得
た後、該加熱溶融成形体(A)の片面に、強化繊維と熱
可塑性樹脂を含む綿状混合物(b)を、該熱可塑性樹脂
の溶融温度以上に加熱し、繊維間空隙が残された状態の
綿状成形体(B)として積層し冷却固化するところに特
徴を有しており、また第2の方法は、強化繊維と熱可塑
性樹脂を含む綿状混合物(a)を、該熱可塑性樹脂の溶
融温度以上に加熱溶融成形して前記加熱溶融成形体
(A)を得た後、該加熱溶融成形体(A)の片面に、強
化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(b)を、該熱
可塑性樹脂の溶融温度以上の加熱状態で配置し、これを
加圧した後、加熱加圧された該混合物(b)中の熱可塑
性樹脂が冷却固化する前に加圧を解除もしくは軽減し、
強化繊維の弾性的復帰力により該強化繊維を起毛させ、
繊維間空隙を有する綿状成形体(B)として積層し冷却
固化するところに特徴を有している。
【0010】
【作用】本発明者等は、先に示した様な従来の繊維強化
樹脂成形品に吸音等の諸機能を付与する為の具体的な形
態について検討を進めてきた。そして、強化繊維として
用いられるガラス繊維等が有している剛性を生かし、構
造強度を確保するための支持層として利用すると共に、
該強化繊維の繊維間に空隙を残したままの状態とするこ
とによって吸音等の諸機能を与え、且つそれらを積層一
体化してやれば、それらの両特性を兼ね備えたものが得
られることを知り、ここに本発明の完成を見た。
【0011】即ち本発明の繊維強化樹脂積層成形品は、
例えば図1(断面模式図)に示すごとく、強化繊維と繊
維状もしくは粉粒状の熱可塑性樹脂を含み、積層体全体
としての構造強度を保障する支持層となる加熱溶融成形
体(A)の片面に、上記強化繊維と同種もしくは異種の
強化繊維及び上記熱可塑性樹脂と同種もしくは異種の熱
可塑性樹脂を含み、繊維間空隙を有して吸音、断熱、衝
撃吸収等の諸機能を発揮する綿状成形体(B)が、両者
の積層界面Cにおいて上記熱可塑性樹脂の融合一体化に
より強固に積層接合されたものであり、構造強度と吸音
等の諸機能を兼ね備えたものとして、例えば自動車用の
アンダーシールド材やノイズシールド材等として有効に
活用することができる。しかも、この繊維強化樹脂積層
成形品は、材料コストが低いので非常に安価に提供し得
るばかりでなく、軽量で取扱い性にも優れており、更に
は、その不良成形品や廃材等を再加熱することによって
容易に回収再利用することができ、リサイクル性におい
ても優れた特徴を有している。
【0012】以下、本発明の方法を詳述しつつ、本発明
に係る繊維強化樹脂積層成形品の特徴や素材構成等につ
いて説明していく。本発明に係る繊維強化樹脂積層成形
品を製造する方法としては、前述の如く大別して2つの
方法が挙げられるので、以下夫々の方法について詳述す
る。
【0013】第1の方法は、例えば図2(A)に示す如
く、まず強化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物
(a)を、成形用金型1a,1b内へ装入し、該綿状混
合物(a)中の熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱溶融
して圧縮成形することにより、強化繊維間の隙間に熱可
塑性樹脂が実質的に充満し、通常の繊維強化樹脂に相当
する剛性と構造強度を持った支持層としての機能を保障
する加熱溶融成形体(A)を成形する[図2(B)]。
尚、綿状混合物(a)の加熱溶融は、金型内で行なって
もよく、あるいは加熱溶融させてから金型へ装入しても
良い。
【0014】次いで、図2(C)に示す如く金型1a,
1bを開き、該加熱溶融成形体(A)の片面に、強化繊
維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(b)を装入し、該
熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱しつつ、繊維間空隙
を残す程度の比較的低い圧力で押し付ける。そうする
と、図2(D)に示す如く綿状混合物(b)中の溶融し
た熱可塑性樹脂は、加熱溶融成形体(A)との界面側で
該成形体(A)中の熱可塑性樹脂と融合一体化すると共
に、その上方側では、溶融した熱可塑性樹脂が非溶融の
強化繊維の主として交差部に融着する。従ってこれを冷
却固化すると、綿状混合物(b)の溶融固化によって形
成される綿状成形体(B)は、前記加熱溶融成形体
(A)との界面で強固に接合一体化すると共に、該綿状
成形体(B)内では、強化繊維の交差部で融着固化した
熱可塑性樹脂が3次元網目状構造を規制するバインダー
としての機能を果たし、無数の繊維間空隙が確保される
ことになる。
【0015】なお上記方法を実施するに当たっては、加
熱溶融成形体(A)が冷却する前の高温状態で綿状混合
物(b)の加熱押付けを行えば、積層界面Cにおける熱
可塑性樹脂の融合一体化をより確実に行うことができる
ので好ましい。綿状混合物(b)は、金型内の加熱溶融
成形体(A)上へ綿状のままで装入してもよく、或は予
め圧縮し必要によりニードルパンチ等による保形処理を
施してから装入してもよい。また該混合物(b)の加熱
は金型内へ装入してから行なってもよく、或は所定温度
まで加熱してから金型内へ装入することも可能である。
また金型内での加熱は、電熱加熱、赤外線加熱、高温ガ
ス加熱等を採用することができる。更には金型加熱に代
えて、両者を重ね合わせた後、その上面全域から加熱圧
搾空気を吹き付けて加熱と押付けを同時に行うこともで
き、この方法を採用すれば、綿状混合物(b)中の溶融
した熱可塑性樹脂が加熱溶融成形体(A)方向へ押しや
られる結果、積層界面Cでの接合一体化が一段と確実に
なるという利点が得られる。
【0016】尚図示例では、成形用金型を用いて積層と
共に金型内面で賦形する方法を示したが、金型の例えば
上面に加熱ガス吹出し口を設けて加熱と共に圧搾賦形で
きる様な構成を採用してもよく、あるいは上下一対の加
熱プレートを使用し上下面からの加熱と圧搾賦形を行う
構成とすることも可能である。また上記押付け時の圧力
は、前述の如く綿状成形体(B)としての繊維間空隙を
充分に残しつつ、加熱溶融成形体(A)との界面で確実
に融合一体化できる様に設定すればよく、その圧力が高
すぎると繊維間空隙が少なくなり過ぎて吸音等の諸機能
が有効に発揮されなくなることがあるので、好ましくは
5〜20kg/cm2 程度に調節することが望ましい。
【0017】本発明に係る第2の方法は、例えば図3に
示す通りである。この方法を実施する際の最初の工程
は、前記第1の方法と実質的に同じであり、まず強化繊
維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(a)を、加熱成形
用金型1a,1b内へ装入し[図3(A)]、該綿状混
合物(a)中の熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱溶融
し圧縮成形することによって、強化繊維間の隙間に熱可
塑性樹脂が実質的に充満させ、通常の繊維強化樹脂に相
当する剛性と構造強度を持った支持層としての機能を保
障する加熱溶融成形体(A)を成形する[図3
(B)]。このとき、加熱溶融させた綿状混合物(a)
を金型内へ投入することも可能である。
【0018】次いで、図3(C)に示す如く金型1a,
1bを開き、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物
(b)を、該熱可塑性樹脂の溶融温度以上の加熱状態で
前記加熱溶融成形体(A)の上に配置して加圧する。そ
うすると、図3(D)に示す如く該混合物(b)中の溶
融した熱可塑性樹脂は、前記加熱溶融成形体(A)との
界面で融合一体化する。その後、加熱加圧された該混合
物(b)中の熱可塑性樹脂が冷却固化する前に加圧を解
除もしくは軽減すると、上記加圧工程で圧縮されていた
混合物(b)中の強化繊維は、加圧解除もしくは加圧軽
減に伴って、該強化繊維群の剛性による弾性的復帰力に
よって圧力低下方向に膨出乃至起毛し、強化繊維の間に
多数の隙間が形成される[図3(E)]。従って、この
状態で全体を冷却固化させると、前記図1に示した様
に、強化繊維間に熱可塑性樹脂が充満した剛性の加熱溶
融成形体(A)の片面に、熱可塑性樹脂が融合一体化し
て固化した積層界面Cを介して、繊維間空隙を有する綿
状成形体(B)が一体に積層接合された繊維強化樹脂積
層成形品を得ることができる。
【0019】上記第2の方法では、綿状形成体(B)に
おける繊維空隙の形成に強化繊維の剛性によって生じる
弾性的復帰力を利用する点で前記第1の方法とは異なる
が、何れにしても熱可塑性樹脂の加熱溶融によって積層
界面Cでは熱可塑性樹脂の溶融一体化が起こり、加熱溶
融成形体(A)と綿状成形体(B)を強固に積層接合す
ることができる。この方法を採用する場合も、綿状混合
物(b)は、金型内の加熱溶融成形体(A)上へ綿状の
ままで装入し、或は予め圧縮成形し必要によりニードル
パンチ等の保形処理を施してから装入してもよく、また
該綿状混合物(b)は金型内で加熱してもよく、或は所
定温度まで加熱してから金型内へ装入することも可能で
ある。
【0020】金型内での加熱も、同様に電熱加熱、赤外
線加熱、高温ガス加熱等を採用することもできるが、該
加熱後に行なわれる加圧処理は、融合一体化した積層界
面Cの形成を主目的とするものであり、繊維間空隙の形
成はその後の加圧解除もしくは軽減にともなう強化繊維
の弾性的復帰力を利用して行なうものであるから、該加
熱加圧工程では、実質的に空隙が残らない程度まで加圧
してもよい点で、前記第1の方法とは若干異なる。そし
て該加圧後の加圧解除もしくは軽減により強化繊維を弾
性的に復帰させて繊維間空隙を形成するには、該加圧解
除もしくは軽減の時期を、綿状混合物(b)中の熱可塑
性樹脂が溶融状態を保っている高温状態の時に合わせな
ければならず、熱可塑性樹脂が冷却固化した状態では、
その固着力によって強化繊維が拘束されるので、上記の
様な膨出・起毛が起こらず、本発明で意図する様な繊維
間空隙を形成することができない。
【0021】かくして上記第1,2の方法を採用すれ
ば、強化繊維間の隙間に熱可塑性樹脂が充満し高い構造
強度を持った支持層としての機能を果たす加熱溶融成形
体(A)と、繊維間空隙を有し吸音、断熱、衝撃吸収等
の諸機能を発揮する綿状成形体(B)が、熱可塑性樹脂
の融合一体化した接合界面Cを介して強固に積層接合し
た繊維強化樹脂積層成形品を容易に得ることができる。
【0022】尚、上記方法を実施する際の加熱条件は、
使用する熱可塑性樹脂の種類(特にその溶融温度)によ
って変わってくるので一律に決めることはできないが、
熱可塑性樹脂として最も一般的なポリプロピレン系樹脂
を使用するときの好ましい加熱温度は180〜250
℃、より好ましくは200〜230℃である。
【0023】本発明において、上記加熱溶融成形体
(A)および綿状成形体(B)の主たる構成素材となる
熱可塑性樹脂の種類は特に制限されず、前記したポリプ
ロピレン系樹脂の他、ポリエチレン等の他のポリオレフ
ィン系樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート
等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹
脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポ
リアセタール系樹脂、ポリアクリレート系樹脂等の汎用
樹脂、更にはポリスルホン、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリア
ミドイミド等の耐熱性に優れた熱可塑性樹脂等も用いる
ことができる。これらの中でも、コストや性能等を総合
的に考慮して特に好ましいのは、ポリプロピレン系樹脂
である。該ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピ
レンのホモポリマーは勿論のこと、ポリプロピレン−エ
チレンブロック共重合体、ポリプロピレン−エチレンラ
ンダム共重合体、無水マレイン変性ポリプロピレン系樹
脂等を使用することができ、これらの熱可塑性樹脂は夫
々単独で使用してもよく、あるいは2種以上を複合して
使用することも可能である。
【0024】該熱可塑性樹脂は、加熱溶融成形体(A)
と綿状成形体(B)で夫々異なったものを使用すること
も可能であるが、積層界面Cでの融合一体化をより確実
にする意味から、少なくとも相互に融合し得る熱可塑性
樹脂を選択し、より好ましくは同種の熱可塑性樹脂を選
択使用することが望ましく、そうすれば、廃品を回収し
てリサイクルする際にも、加熱溶融成形体(A)と綿状
成形体(B)を一括して加熱溶融して再生し得るという
利点も生じてくる。
【0025】次に、強化繊維としては、例えばガラス繊
維、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維、アラミド
繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊
維等の人工繊維が挙げられるが、これらの中でも最も一
般的なのはガラス繊維や炭素繊維である。このほか麻や
綿等の天然繊維、更には古紙を解繊したセルロース系繊
維等を使用することも可能であり、特に古紙を解繊した
セルロース系繊維を利用することは、リサイクルおよび
環境保護の両面からして有利である。但し、古紙を解繊
したセルロース繊維等の天然繊維は、強化繊維としては
剛性不足の嫌いがあり、殊に前記第2の方法を実施する
際の弾性的復帰力が不十分となって綿状成形体(B)の
繊維間空隙が不足気味になる傾向があるので、剛性の高
い上記の様な人工繊維を主たる強化繊維として使用し、
それらに強度特性や弾性的復帰力を阻害しない範囲で天
然繊維を混合して使用することが望ましい。
【0026】尚該強化繊維についても、加熱溶融成形体
(A)と綿状成形体(B)で夫々異なるものを使用する
ことも可能であるが、リサイクル性を考慮すると共通の
強化繊維を選択使用することが望ましい。
【0027】これら熱可塑性樹脂と強化繊維を混合し、
原料素材となる綿状混合物(a),(b)を得る方法は
特に制限されないが、好ましいのは、圧縮空気等の圧縮
気体を混合媒体とする気流混合法であり、この方法によ
り繊維を解繊しながら混合する方法を採用すると、繊維
状もしくは粉粒状の熱可塑性樹脂と強化繊維をその種類
や配合比率等に無関係に均一に混合することができる。
【0028】上記強化繊維や熱可塑性樹脂の寸法サイズ
は特に制限されないが、強化繊維としては繊維長が1〜
100mm、より好ましくは5〜50mm程度のものが
好ましく、また繊維状の熱可塑性樹脂を使用する場合は
繊維径が1〜200μm、より好ましくは3〜50μm
程度で繊維長が1〜100mm程度のもの、粉粒状のも
のを使用する場合は平均粒子径が10μm〜3mm程
度、より好ましくは100μm〜1mm程度のものが好
ましい。熱可塑性樹脂と強化繊維の配合比率は、最終製
品に求められる強度特性や吸音、断熱、衝撃吸収等の性
能等に応じて10〜90%:90〜10%といった広い
範囲から選択できるが、より好ましいのは30〜70
%:70〜30%の比率である。
【0029】尚本発明では、上記の様に加熱溶融成形体
(A)を剛性の支持層とし、綿状成形体(B)を繊維間
空隙を持った吸音、断熱、衝撃緩和等の作用を有する機
能層として利用するものであり、こうした機能をより効
果的に発揮する上では、夫々の機能を考慮して強化繊維
の配合比率を適正に調節するのが好ましく、加熱溶融成
形体(A)中に占める強化繊維の含有率は10〜50重
量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲とするこ
とによって支持強化層としての機能をより有効に発揮さ
せ、一方綿状成形体(B)中に占める強化繊維の含有率
は50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%
の範囲とすることによって繊維間空隙をより多く形成
し、吸音等の諸機能がより効果的に発揮させる様にする
ことが望ましい。
【0030】また加熱溶融成形体(A)と綿状成形体
(B)の好ましい厚さも、求められる強度特性や吸音等
の機能性に応じて適宜に決めるべきであるが、標準的な
厚さとしては加熱溶融成形体(A)が1〜6mm、より
一般的には2〜4mm、綿状成形体(B)が3〜20m
m、より一般的には5〜10mmの範囲である。また両
者の好ましい厚み比は、加熱溶融成形体(A)/綿状成
形体(B)で1/20〜2/1、より一般的には1/1
0〜1/1の範囲である。
【0031】
【実施例】以下実施例によって本発明をさらに詳述する
が、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・
後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て
本発明の技術範囲に包含される。
【0032】実施例1 繊維径が約13μm、繊維長が約13mmのガラス繊維
(旭ファイバーグラス社製「FT599」)と、平均粒
子径が500μmのポリプロピレン系樹脂粉末(昭和電
工社製「MA810B」)およびマレイン酸変性ポリプ
ロピレン粉末(昭和電工社製「ER320P」)を、3
0/64/6の重量比率で使用し、これを圧縮空気を用
いた気流混合装置を用いて解繊しながら均一に混合して
綿状混合物(a)を得た。また、上記と同じガラス繊維
とポリプロピレン系樹脂粉末を70/30の重量比率で
使用し、気流撹拌装置を用いて解繊しながら均一に混合
して綿状混合体(b)を製造した。
【0033】上記で得た綿状混合物(a)を220℃に
加熱し熱可塑性樹脂を溶融させてから金型内へ装入し、
温度100℃、面圧100kgf/cm2 で15秒圧縮
成形し、強化繊維間の隙間がほぼ熱可塑性樹脂で満たさ
れた厚さ約3mmの加熱溶融成形体(A)を形成した
後、金型を開き、該加熱溶融成形体(A)の上に、上記
で得た綿状混合物(b)を圧搾し厚さ5mmのマット状
に予備成形して220℃に加熱したものを重ね合わせ
た。次いで、その上から300℃の圧縮空気を吹き付け
て賦形した後、冷風を吹き付けて冷却し、繊維間空隙を
有する厚さ8mmの綿状成形体(B)を形成した。
【0034】得られた積層成形体における加熱溶融成形
体(A)と綿状成形体(B)の積層界面では、熱可塑性
樹脂が相互に融合一体化して強固に接合しており、また
綿状成形体(B)は、強化繊維の交差部に溶融固化した
熱可塑性樹脂が付着固化して3次元構造の網目状を呈し
ていた。この積層成形体から直径88mmの試験片を切
り出して吸音特性を測定したところ、1500Hzにお
ける吸音係数は0.5であり、優れた吸音特性を有して
いることが確認された。
【0035】実施例2 繊維径が約13μm、繊維長が約13mmのガラス繊維
(同前)と、平均粒子径が500μmのポリプロピレン
系樹脂粉末(同前)を、25/75の重量比率で使用
し、これを圧縮空気を用いた気流混合装置を用いて解繊
しながら均一に混合して綿状混合物(a)を得た。ま
た、上記と同じガラス繊維とポリプロピレン系樹脂粉末
を80/20の重量比率で使用し、気流撹拌装置を用い
て解繊しながら均一に混合して綿状混合体(b)を製造
した。
【0036】上記で得た綿状混合物(a)を220℃に
加熱して熱可塑性樹脂を溶融させてから金型内へ装入
し、温度100℃、面圧100kgf/cm2 で15秒
圧縮成形し、強化繊維間の隙間がほぼ熱可塑性樹脂で満
たされた厚さ約3mmの加熱溶融成形体(A)を形成し
た後、上型を開き、該加熱溶融成形体(A)の上に、上
記で得た綿状混合物(b)を圧搾し厚さ5mmのマット
状に予備成形して220℃に加熱したものを重ね合わせ
た。次いで、その上に上型を乗せて100℃、50kg
f/cm2 で5秒間圧縮した後、上型を上昇させて上型
による圧力を5kgf/cm2 まで降下させ、同温度で
60秒間維持してから冷却した。
【0037】その間、上記綿状混合物(b)内の強化繊
維が加熱降圧時に弾性的復帰力で起毛して膨張し、繊維
間空隙を有する厚さ6mmの綿状成形体(B)が形成さ
れると共に、該綿状成形体(B)と上記加熱溶融成形体
(A)の積層境界部では熱可塑性樹脂が相互に融合一体
化し、その後の冷却固化によって、両者が強固に接合さ
れると共に、綿状成形体(B)は、強化繊維の交差部に
溶融固化した熱可塑性樹脂が付着して3次元構造の網目
状を呈していた。得られた積層成形体から直径88mm
の試験片を切り出して吸音特性を測定したところ、15
00Hzにおける吸音係数0.4はであり、優れた吸音
特性を有していることが確認された。
【0038】比較例1 上記実施例2において、綿状混合物(b)を加熱して加
熱溶融成形体(A)上に重ね合わせ、100℃、50k
gf/cm2 で60秒間圧縮した後、該圧力を維持した
状態で降温し固化させた以外は上記と全く同様にして積
層成形体を製造した。
【0039】この積層成形体における、綿状混合物
(b)が溶融圧縮成形された層と加熱溶融成形体(A)
とは、積層界面で熱可塑性樹脂の融合一体化によって強
固に接合していたが、上記加熱溶融成形体(A)と、綿
状混合物(b)が溶融圧縮成形された層の何れも、強化
繊維間空隙に熱可塑性樹脂の溶融固化物がほぼ充満して
おり、繊維間空隙は殆んど形成されていなかった。
【0040】この積層成形体から直径88mmの試験片
を切り出して吸音特性を測定したところ、1500Hz
における吸音係数は約0.15で非常に低く、吸音材と
して実用化し得る様なものではなかった。
【0041】
【発明の効果】本発明の繊維強化樹脂積層成形体は以上
の様に構成されており、支持強化層となる加熱溶融成形
体(A)と、繊維間空隙を有し吸音機能等を備えた綿状
成形体(B)が、熱可塑性樹脂の融合一体化によって強
固に積層接合されると共に、構造強度と吸音等の諸機能
を兼ね備えている。従って、金属板等の支持強化層等に
よる強化を全く必要とせずそれ自体で自動車用アンダー
シールド材等として有用に利用できる。しかも本発明の
方法によれば、該積層成形体を極めて簡単な操作で生産
性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る繊維強化樹脂積層成形品の構造を
例示する断面模式図である。
【図2】本発明の製法を例示する概略工程説明図であ
る。
【図3】本発明に係る他の製法を例示する概略工程説明
図である。
【符号の説明】
A 加熱溶融成形体 B 綿状成形体 C 積層界面 1a,1b 金型 a,b 綿状混合物
フロントページの続き (72)発明者 奥村 俊明 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 強化繊維と繊維状もしくは粉粒状の熱可
    塑性樹脂を含む加熱溶融成形体(A)の片面に、 上記強化繊維と同種もしくは異種の強化繊維及び上記熱
    可塑性樹脂と同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を含む綿
    状成形体(B)が、上記熱可塑性樹脂の融合一体化によ
    って積層されたものであることを特徴とする繊維強化樹
    脂積層成形品。
  2. 【請求項2】 加熱溶融成形体(A)中における強化繊
    維の含有量が10〜50重量%であり、綿状成形体
    (B)中における強化繊維の含有量が50〜90重量%
    である請求項1に記載の成形品。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の繊維強化樹脂
    積層成形品を製造する方法であって、 強化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(a)を、該
    熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱溶融成形して前記加
    熱溶融成形体(A)を得た後、 該加熱溶融成形体(A)の片面に、 強化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(b)を、該
    熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱し、繊維間空隙が残
    された状態の綿状成形体(B)として積層し冷却固化す
    ることを特徴とする繊維強化樹脂積層成形品の製法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載の繊維強化樹脂
    積層成形品を製造する方法であって、 強化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(a)を、該
    熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱溶融成形して前記加
    熱溶融成形体(A)を得た後、 該加熱溶融成形体(A)の片面に、 強化繊維と熱可塑性樹脂を含む綿状混合物(b)を、該
    熱可塑性樹脂の溶融温度以上の加熱状態で配置し、これ
    を加圧した後、加熱加圧された該混合物(b)中の熱可
    塑性樹脂が冷却固化する前に加圧を解除もしくは軽減
    し、強化繊維の弾性的復帰力により該強化繊維を起毛さ
    せ、繊維間空隙を有する綿状成形体(B)として積層し
    冷却固化することを特徴とする繊維強化樹脂積層成形品
    の製法。
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