JPH0822239B2 - 変異ヒト腫傷壊死因子 - Google Patents

変異ヒト腫傷壊死因子

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JPH0822239B2
JPH0822239B2 JP63169378A JP16937888A JPH0822239B2 JP H0822239 B2 JPH0822239 B2 JP H0822239B2 JP 63169378 A JP63169378 A JP 63169378A JP 16937888 A JP16937888 A JP 16937888A JP H0822239 B2 JPH0822239 B2 JP H0822239B2
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patnf
plasmid
amino acid
necrosis factor
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森男 池原
明 長谷川
浩治 伊中
美咲 久保田
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株式会社蛋白工学研究所
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は野生型(天然型)のヒト腫瘍壊死因子(以
下、hTNFと略す)のアミノ酸配列において、カルボキシ
末端(最末端)の1個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換
されたアミノ酸配列で示される変異hTNFに関するもので
ある。
[従来技術とその課題] 腫瘍壊死因子は、人間等の動物自身が体内で産生する
制癌作用のある物質であり、腫瘍細胞に対して特異的な
細胞毒性作用を持った抗腫瘍剤として、その結果が期待
されている。近年の遺伝子組換え技術の発達によって野
生型ヒト腫瘍壊死因子のcDNAがクローニングされ、該DN
Aを用いて高純度、かつ多量の組換hTNFを供給すること
が可能となった。しかしながら、活性がより高く、かつ
より安定であり、抗腫瘍剤として臨床上より有用なhTNF
誘導体の開発が望まれている。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、治療目的に適った、高活性で安定な変
異hTNFの開発を目的とし鋭意研究を重ねてきたが、その
過程で、野生型hTNFの安定性について以下の知見を得
た。
まず、野生型hTNFをコードしている遺伝子を合成し、
大腸菌トリプトファンオペロンプロモーターの支配下に
hTNF遺伝子を発現させるプラスミドpATNFを組み立てた
(第4図参照)。このプラスミドpATNFを用いて大腸菌K
12株C600を形質転換し、形質転換体から組換hTNFを常法
通り単離し、得られた組換hTNFを非還元型のNative電気
泳動にかけたところ、数本のバンドに分かれた。そこ
で、このhTNFをヒドロキシアパタイトカラムによるHPLC
にかけ、分離したピークを分取してその各々の安定性を
調べたところ、水溶液中、4℃で分離前のパターンに戻
ることが分かった。次に、これら各ピークの画分のアミ
ノ末端を分析し、アミノ末端としてMet、Val、Arg、Ser
の各アミノ酸を検出した。この結果を、hTNFのアミノ末
端領域の配列がVal−Arg−Ser−Ser−Serであることに
照らして考察すると、hTNFの精製品は、アミノ末端に様
々な欠損を有するコンフォーマーの集合体であると考え
られる。これは、野生型hTNFの不安定さを示すものであ
る。
次いで、野生型hTNFの安定性と構造上の特徴との関係
を明らかにするために、既知の野生型hTNFの1次構造を
チャウ(Chou)およびファスマン(Fasman)のアルゴリ
ズム(algorithm)にかけ、2次構造の予測を行った。
結果を第1図に示す。図中、AAAAAAAはアルファヘリッ
クス構造、BBBBBはベータ−シート構造、そしてTTTTは
ターン構造を表す。第1図から、hTNFは全体にβ−シー
ト折り畳み構造に富んだ構造をとっていることが分る。
このようなβ−シート構造をとるタンパク質としてはマ
ウスEGFが知られている。マウスEGFの高解像度NMR分析
の結果から、マウスEGFはβ−シートの三層構造をとる
ことが分かっており、該タンパク質の末端部分を欠損さ
せて三層構造を崩すと生物活性(細胞増殖促進作用)が
低下することが報告されている[バイオケミストリー
(Biochemistry)115、2624(1976)およびネイチャー
(Nature)327(28)、339(1987)]。これらの報告
は、折り畳み構造が全体構造の安定性、生物活性に寄与
しており、特に末端領域のアミノ酸配列がそれらに大き
く影響を及ぼすことを示すものである。
このような観点から第1図のTNFの2次構造および第
2図のハイドロパシー特性を示すグラフを考察すると、
カルボキシ末端の10個のアミノ酸(148−157)は疎水性
アミノ酸群からなり、β−シート構造をとっていること
が分かる。また、アミノ酸147付近のSer−Gly−Gln配列
の領域は、β−ターン構造を形成していると考えられ
る。さらに69Cysと101Cysはジスルフィド結合を形成し
ているが、この領域では非並行(アンチパラレル)なβ
−シート構造を形成していることが分かる。なお、アミ
ノ末端は親水性のアミノ酸群から構成されているため
(第2図参照)、ランダムコイルを形成し、分子表面に
露出していると考えられる。また、カルボキシ末端部分
の147番目以降のアミノ酸配列は、Ser−Gly−Gln−Val
−Tyr−Phe−Gly−Ile−Ile−Ala−Leuとなっており、
タンパク質の立体構造をもとにして得られる平均露出面
積の値に基づいて検討すると、152Pheから157Leuまでの
配列は分子内部に見出される確率の高い配列である。従
って、TNF全体でこのカルボキシ末端領域は、タンパク
質内部にもぐりこんでいると予想される。以上から、野
生型hTNFの2次構造は、アミノ末端部分が突出し、カル
ボキシ末端がタンパク質内にもぐりこんでいる、β−シ
ートの折り畳み構造であると結論された。
以上の知見を得て、本発明者らは、野生型hTNFのアミ
ノ酸配列を、β−シート構造を破壊せずに一層安定性の
高い構造をとり得る配列に変換すれば、構造の安定化に
伴い、生物活性が増強されるという予測をたてた。とこ
ろで、hTNFについて、その末端のアミノ酸配列が安定性
および活性に極めて大きく寄与していることが知られて
いる。例えば、カルボキシ末端の1個のアミノ酸(ロイ
シン)を欠失すると失活することが分かっている。従っ
て、カルボキシ末端を変化させると、タンパク質構造全
体に大きい影響があるものと考えられる。本発明者らは
そのような観点から種々検討を加えた結果、カルボキシ
末端、とりわけ最末端の唯一個のアミノ酸(ロイシン)
を疎水性の高い他のアミノ酸に置換すると顕著にTNF活
性が高められることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
即ち、本発明は、野生型ヒト腫瘍壊死因子のカルボキ
シ末端のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されてなるアミ
ノ酸配列で示される変異ヒト腫瘍壊死因子を提供するも
のである。
本発明のカルボキシ末端変異hTNF(以下、hTNF−CFと
称する)は、野生型hTNFをコードしているDNA配列のC
末端アミノ酸に対応するコドンを他のアミノ酸に対応す
るコドンで置換し、得られたDNA配列を適当なベクター
に組み込み、該ベクターで宿主細胞を形質転換し、得ら
れた形質転換体を培養することにより製することができ
る。他のアミノ酸としては、疎水性の高いフェニルアラ
ニン、トリプトファン、チロシン、アラニン、およびヒ
スチジンを挙げることができるが、構造の安定化および
活性の向上の両面でフェニルアラニンが最適である。
カルボキシ末端のロイシンが疎水性のフェニルアラニ
ンで置換された本発明のhTNF−CFをSDS−PAGEおよび非
還元型Native電気泳動にかけると、単一のバンドを示
し、野生型hTNFのようなコンフォーマーを形成していな
いことが示された(第8図)。このことは、カルボキシ
最末端の変化が、アミノ末端の安定化に寄与しているこ
とを意味するものである。
さらにこのhTNF−CFを上記アルゴリズムによって解析
すると、カルボキシ末端領域は依然β−シート構造を維
持しており、安定性に寄与していることが確認された
(第3図参照)。このhTNF−CFを、L929細胞を用いる細
胞毒性試験に委ねて生物活性を評価した結果、その活性
は野生型hTNFの約30倍であり、活性の著しい向上が達成
されたことが明らかになった。
本発明のhTNF−CFは、後述の如く、hTNF−CFをコード
する発現ベクターpATNF−CFを用いて適当な宿主細胞を
形質転換し、得られた形質転換体を培養し、次いで、培
養物から単離することにより得られる。
従って、本発明は、上記の変異hTNFをコードするDNA
配列、該DNA配列を含有する発現ベクター、および該発
現ベクターで形質転換された形質転換体、並びに該形質
転換体を培養することからなる変異hTNFの製造方法を提
供するものである。
本明細書中、アミノ酸は、当該技術分野で一般的な省
略形で表すこととし、またhTNFという語句は天然のhTNF
およびDNA組換え法で得られる天然のhTNFと同じアミノ
酸配列を有するhTNFを総称するものとする。
本発明を例示する発現ベクターpATNF−CFは、前記の
天然型hTNF発現用ベクターpATNFから、第6〜7図記載
の方法で得られた。このプラスミドpATNFはヒト成長ホ
ルモン発現プラスミドpGH−L9および高コピー数プラス
ミドpAT153を出発物質として第5図に示した工程に従っ
て組み立てられた。
プラスミドpATNFは、大腸菌内で複製および発現可能
であるが、大腸菌以外の適当な宿主細胞内で複製可能な
他のベクターを出発物質とし、本発明の変異hTNF遺伝子
を発現し得るプラスミドを組み立て得ることは当業者な
らば理解できるであろう。適当な宿主には、原核細胞お
よび下等な真核性微生物が含まれる。勿論適当な発現系
を用いればより高等な真核細胞においても本発明変異hT
NFを発現し得る。他の原核細胞には、グラム陽性または
グラム陰性の微生物、例えば大腸菌やバチルス(Bacill
i)が含まれる。好適な原核性宿主細胞は、実施例に示
した大腸菌K12C600(m-r-)であるが、その他、酵母AH2
2、大腸菌HB101または大腸菌JM101〜109等も適する。一
般に微生物類のベクターは、所望の宿主が認識し得る複
製起源、宿主内で機能し得るプロモーター、並びに抗生
物質耐性のような選択性遺伝子を含有している。
通常、プロモーターは、所望の宿主にとってホモロー
ガスであり、例えば、実施例に示す如く、pBR322由来の
トリプトファンオペロンのプロモーターを用いることが
でき、その他、目的に応じて種々の既知のプロモーター
類が利用可能である。そのようなプロモーターの例とし
て、1ac、tac.λPL等を挙げることができる。
本発明の発現ベクターpATNF−CFの組み立て出発物質
であるプラスミドpATNFには、Ball部位がhTNF遺伝子中
に1箇所、さらにベクター中に1箇所の計2箇所存在し
ている。この内、ベクター自身のBall部位付近にはpAT1
53ベクター由来のテトラサイクリン耐性付与遺伝子の転
写終止シグナルが存在していることが知られており、こ
の領域が除去された発現ベクターでは、Trpプロモータ
ーからの転写が終結せず、その複製や安定性に支障があ
る可能性がある。
従って、hTNF−CF遺伝子の作成に当たっては、ベクタ
ー中の該Ball部位を保存するために、第5図に示すよう
に、hTNFの構造遺伝子の一部をクローニングベクターpU
C19またはM13mp19にサブクローニングし、pUC−TNFまた
はM13TNFを作成し、これを出発物質として種々の変異体
を調製した。
プラスミドpUC19からの、hTNF−CF用発現ベクターpAT
NF−CFの構築は、以下の方法で行われた。
hTNF構造遺伝子のカルボキシ末端に存在するSall切断
部位およびそれより40bp上流に位置するBall部位を利用
してロイシンがフェニルアラニンで置換されたカルボキ
シ末端変異体をコードする式: で示されるDNAフラグメントを化学合成した。このDNAフ
ラグメントを用い、第6図記載の手順に従ってpATNF−C
Fを作成した。第6図の組立て模式図はpATNF−CFの構築
に関するものであるが、上記のDNAフラグメントにおい
てPheと表示されたコドンが他のアミノ酸をコードする
コドンで置き換えられたフラグメントを用い、該模式図
の手順に従って、他のカルボキシ末端変異hTNFの発現ベ
クターを構築することは容易である。このようにして得
られる他のカルボキシ末端変異hTNFもまた本発明の範囲
に包含される。
あるいは、M13TNFを用い、部位特異的突然変異誘発に
より、pATNF−CFを構築することもできる。この場合に
は、まず、式: 5"CTCATTAGAAAGCAATAAT3" (上記の式において、下線は変異を入れたPheに対応す
る部分を表す。で示されるプライマーを合成し、該プラ
イマーをアマーシャム社製のキットに適用してM13RFDNA
を作成し、以後は第7図記載の手順に従って目的のhTNF
−CF用発現ベクターを構築する。
本発明の変異hTNF発現ベクターは大腸菌内で複製可能
であり、該発現ベクターで形質転換された宿主細胞を適
当な条件下で培養することにより、所望の変異hTNFを産
生させることができる。形質転換体の培養方法は当業者
周知であり、適当な窒素および炭素供給源、ならびに、
微量元素を含有する培地中で、適当なpHおよび温度下で
培養する。
培養された形質変換体からの変異hTNFの分離は、非分
泌型の微生物細胞の場合は音波処理等によって細胞を溶
解し、遠心して上清中に得ることができる。分泌型の細
胞の場合には遠心して細胞を分離するだけでよい。その
ような方法は当業者に周知である。得られた変異hTNFを
精製するには、まず、粗生成物を含有している遠心上清
を、例えば陰イオンクロマトグラフィーにかけて塩基性
タンパク質とDNAを除去して粗精製し、ついで、濃縮し
てゲルろ過することによって高分子量および低分子量の
タンパク質を除去し、さらにヒドロキシアパタイトカラ
ムによる吸着クロマトグラフィーにかけて精製すること
ができる。
このようにして得られた変異hTNFはSDS−PAGEおよびN
ative電気泳動で単一のバンドとして確認され、天然
の、または組換え法によって得られた天然型のhTNFのよ
うなコンフォーマーを形成せず、安定であることが明ら
かとなった。また、本発明の精製された変異hTNFのイン
ビトロにおける生物活性を、L−929細胞に対する細胞
毒活性に基づいて評価したところ、天然または組換え体
TNFの約30倍の活性を有していることが分かった。
従って、本発明によれば、高活性のhTNFを容易に得る
ことができ、抗腫瘍治療を目的とする研究の推進を促
し、更には、臨床面での実用化に貢献することができ
る。
以下に製造例および実施例を挙げ、本発明を更に詳し
く説明する。
製造例 hTNF発現ベクターpATNFの組み立ておよびhTNF
の単離 1) プラスミドpATNFの組み立て 既知の天然のhTNFのアミノ酸配列に基き、常法に従っ
て、hTNF遺伝子を含むClaI−SalIフラグメントを化学合
成した。
ヒト成長ホルモン発現用ベクター、pGH−L9DNA1μg
を、ClaIおよびSalI制限酵素各3単位(unit)で切断し
た後、常法により、ベクターフラグメントを抽出した。
hTNF遺伝子を含んだClaI−SalIフラグメント(1μg、
約5eq)を、抽出したベクターと混合し、50mM Tris−HC
l、pH8.0、10mM MgCl2、5mM DTT、0.5mM ATPの存在下、
T4DNAリガーゼ(200単位)を加え、14℃で一夜反応させ
た。この反応液を用いて大腸菌K12 HB101を形質転換
し、得られた大腸菌の内、アンドピシリン耐性を示すク
ローンから形質転換体HB101/phTNFを選択した。この形
質転換体から、常法に従ってプラスミドphTNFを調製し
た。次いで、プラスミドphTNFをPstIおよびClaI制限酵
素各3単位で切断し、上記の如くにしてtrpプロモータ
ー領域を含むPstI−ClaIフラグメントを調製した。
高コピー数プラスミドpAT153(1μg)をPstIおよび
ClaI制限酵素各3単位で切断し、常法に従ってベクター
フラグメントを調製した。このようにして得られた両フ
ラグメントを混合し、上記と同様、14℃で一夜ライゲー
ション反応に付し、得られた反応混合物で大腸菌K12 HB
101を形質転換した。アンピシリン耐性の形質転換体か
らプラスミドDNAを調製し、制限酵素分析により、プラ
スミドpATrpを得た。このプラスミドpATrpは、大腸菌ト
リプトファンオペロンのプロモーターを用いており、出
発プラスミドのリボゾーム結合部位(SD配列)と開始コ
ドン(ATG)との距離を改良されたものである。
このpATrp(1μg)をCalIおよびSalI各3単位で切
断した後、常法通りベクターフラグメントを調製した。
他方、pHTNF(1μg)をClaIおよびSalI制限酵素各3
単位で切断した後、hTNFに相当するフラグメントを調製
し、これを先に調製したベクターフラグメントと一緒に
し、上記同様、14℃で一夜ライゲーション反応に付し
た。得られたライゲーション反応混合物を用いて大腸菌
K12 HB101を形質転換した。アンピシリン耐性の形質転
換体からプラスミドDNAを調製し、制限酵素分析によっ
て、野生型の合成hTNFを発現する所望のプラスミドpATN
Fを得た(第4図)。
実施例1 プラスミドpATNF−CFの組み立て 1)hTNF遺伝子の一部のサブクローニング 以下の如くにしてプラスミドpUCTNFおよびM13TNFを作
成し、hTNF遺伝子の一部(PstI−SalI制限フラグメン
ト)をサブクローニングした。
製造例1で得たプラスミドphTNF1μgをEcoRIバッフ
ァー中で、各2unitの制限酵素PstIおよびSalIで切断
し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、hTNF構造
遺伝子を含む405bp(塩基対)のPstI−SalIフラグメン
トを分離精製した。
このフラグメントを、プラスミドpUC19またはM13mp19
をPstIおよびSalIで切断して得た大きいフラグメント各
20mgと、50mMTris−HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、1mM AT
P、0.5mM DTT溶液中でT4−DNAリガーゼ300unitと一緒に
16℃で一夜反応させた。各反応混合物を用いて大腸菌
(E.coli)K−12JM109を常法によって形質転換し、得
られた形質転換体からプラスミドpUCTNFDNAまたはM13TN
FDNAを標準的な手法で得た。
プラスミドpUCTNFおよびM13TNFの組み立て模式図を第
5図に示す。
これらを出発物質として以下の2通りの方法でプラス
ミドpATNF−CFを組み立てた。
2)プラスミドpUCTNFを出発物質とする方法 2.1)変異hTNFのカルボキシ末端部分をコードするBalI
−SalIフラグメントの作成hTNF構造遺伝子のカルボキシ
末端のロイシン残基に対応するコドンがフェニルアラニ
ンに対応するコドンで置換されている、変異hTNFのカル
ボキシ末端部分をコードしているオリゴヌクレオチド35
マーおよび39マーを、DNA合成装置(Applied Biosystem
s製、DNASynthesizer)を用いて化学合成した。以下に
その配列を示す。
これら各フラグメント200pmolを混合し、最終濃度10m
M Tris−HCl(pH8.0)、7mM MgCl2、1mM ATP、5mM DTT
の溶液50μl中、T4ポリヌクレオチドキナーゼ8unitと
一緒に37℃で1時間インキュベートし、リン酸化反応を
行った。反応液にTE(pH8.0)200μlを加え、フェノー
ル:CHCl3(1:1)混液200μlで2回抽出し、1/10容量の
3M NaOAC(pH5.5)、次いで、2当量のエタノールを加
え、−80℃で30分間放置した。続いて、15,000rpmで5
分間遠心して上澄みを除去し、沈殿を得た。沈殿を乾燥
した後、50mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM MgCl2、100mM
NaCl溶液10μlに溶かし、制限酵素BalIおよびSalI各1
00unitを加え、37℃で1時間反応させた。反応液を上記
同様にフェノール抽出、およびエタノール沈殿に付し、
沈殿をTE(pH8.0)10μlに溶解し、10%ポリアクリル
アミドゲル電気泳動にかけ、通常の方法でDNAフラグメ
ントを回収した。
2.2)ライゲーションおよびプラスミドpUCTNF−CFの組
み立て 1)で調製したpUCTNFを、BalI−SalIで切断し、BalI
−SalIフラグメントを除いて得られた大きいフラグメン
トと、2)で化学合成したBalI−SalIDNAフラグメント
とを、上記1)と同様の条件下、ライゲーション反応に
付すことによりベクターpUCTNF−CFを組み立てた。実質
上、上記1)記載の方法に従い、ベクターpUCTNF−CFを
StuI−SalIで切断し、hTNF構造遺伝子のStuI−SalIフラ
グメントを得た。
他方、プラスミドpATNFをStuI−SalI消化に付し、大
きいフラグメントを得、このフラグメントと上記のhTNF
構造遺伝子のStuI−SalIフラグメントとを、既述のライ
ゲーション反応の条件下、T4−DNAライゲースの存在下
で反応させた。このライゲーション反応の反応混合物10
μlを用い、CaCl2法によって大腸菌K12株C600(m-r-
を常法通り形質転換した。アンピシリン50μg/mlを含ん
だL−プレート(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エ
キス、1%NaCl、1.5%バクトアガー)で37℃において1
5時間培養し、得られた形質転換細胞から常法に従って
プラスミドDNAを抽出した。
プラスミドDNAの制限酵素分析およびClaI部位からSal
I部位までの塩基配列の配列決定によって、目的のプラ
スミドpATNF−CFを得た。プラスミドpATNF−CFの組み立
て模式図を第6図に示す。
3)M13TNFを出発物質とする部位特異的突然変異誘発に
よるプラスミドpATNF−C群の組み立て 部位特異的突然変異誘発(サイト・ダイレクテッド・
ミュータジェネシス)のために以下の合成プライマーを
得、アマシャム製のキットを用い、その指示に従ってM1
3RFDNAを得た。
5"CTCATTAGAAAGCAATAAT3" (上記の式において、下線は変異を入れたPheに対応す
る部分を表す。このM13RFDNAから、上記2.2)に記載の
方法と同様の手順に従って目的プラスミドpATNF−CFを
得た。プラスミドpATNF−CFの組み立て模式図を第7図
に示す。
上記の方法と同様にして、カルボキシ末端のロイシン
がそれぞれトリプトファン、チロシン、アラニン、およ
びヒスチジンで置換された変異体をコードしているプラ
スミドpATNF−CW、pATNF−CY、pATNF−CA、pATNF−CH、
pATNF−CKおよびpATNF−CDを組み立てた。形質転換体大
腸菌(E.coli)K12株C600(m-r-)/pATNF−CFは、工業
技術院微生物工業技術研究所に寄託されている(受託番
号:微工研菌寄第10099号、寄託日:昭和63年6月24
日)。
実施例2 変異hTNFの大量生産、精製およびキャラクタ
リゼーション 1) 培養 プラスミドpATNF−CFを含有する形質転換細胞K12C600
(m-r-)/pATNF−CFを以下の方法で大量培養した。
実施例1で得た形質転換体を含んだプレートから得た
極く少量の菌体をLB培地(アンピシリン50μg/ml)5ml
中で6時間培養した後、この培養液を種にして、LB培地
(アンピシリン50μg/ml)100ml中で一夜前培養を行っ
た。続いてM9最小培地(0.6%Na2HPO4、0.3%KH2PO4
0.05%NaCl、0.1%NH4Cl、0.5%カザミノ酸、2mM MgS
O4、0.2%グルコース、0.1mM CaCl2、アンピシリン50μ
g/ml)15に、上記の種菌75mlを加え、37℃の旋回培養
機で培養した。600nmにおける吸光度を30分毎に測定
し、ODが0.2に達したとき、IAA(インドールアクリル
酸)40μl/mlを加えて24時間培養した。
2) 精製 上記1)で得た培養液を6,000rpmで20分間遠心して集
菌し、これに20mM Tris−HClpH(8.0)および30mM NaCl
溶液を加え、懸濁した後、遠心分離して菌体を得た。菌
体の混重量による収量は15gであった。菌体を同液に再
懸濁し、超音波処理によって菌体を完全に破砕した。こ
れを26,000rpmで1時間超遠心して上清25mlを得た。こ
の上清をDEAE−トヨパール650Sを用いた陰イオンクロマ
トグラフィーにかけ、塩基性タンパク質とDNAを除き、
粗精製した。上記のクロマトクラフィーは、20mMTris−
HCl(pH8.0)溶媒中、0mM〜300mMのNaCl勾配を用い、1m
l/minの流速で300分間溶出させることで行なわれた。各
フラクションをSDS−PAGEで分析し、17,000のバンドが
現れる画分を回収した。
次いで、試料をYM−10膜(アミコン)を用いて5mlま
で濃縮した後、セファクリル(Sephacryl)S−200スー
パーファイン(Super Fine)を用いたゲル濾過に付し、
低分子量のタンパク質および高分子量のタンパク質を除
いた。溶出液には、20mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM N
aClを用い、流速1.0ml/minで行った。その他の測定条件
は、チャートスピード0.02cm/min、OD280フルスケール
2.0である。SDS−PAGEで17,000のバンドの現れるフラク
ションを集めてこれを50mM Tris−HCl(pH8.0)に対し
て一夜透析した後、CM−トヨパール650Sによるイオン交
換クロマトグラフィーにかけた。NaCl 0mM〜500mMを用
い、流速1.0ml/min、300分間で勾配溶出した。その他の
測定条件は、チャートスピード0.02cm/min、洗浄液100m
l、OD680フルスケール2.0である。このようにして得ら
れた試料は、SDS−PAGE、およびNativeGEL電気泳動で単
一のバンドとして確認された。これを水に対して透析し
た後、凍結乾燥し、白色粉末状のカルボキシ末端変異hT
NF7mgを得た。最終生成物のSDS−PAGEおよびNativeGEL
電気泳動の結果を第8図に示す。
3) キャラクタリゼーション 上記のカルボキシ末端変異hTNFをアミノ酸分析に付し
た。結果を表1に示す。
表1の右欄のアミノ酸残基数/タンパク質モル数の値
を、野生型hTNFのそれと比較すると、ロイシンは18から
17に減少し、フェニルアラニンは4から5に増加してい
る。このことは、本願発明のhTNF−CFのカルボキシ末端
には、ロイシンの代わりにフェニルアラニンが存在して
いることを示すものである。
本願発明のhTNF−CFのpI(等電点)は等電点電気泳動
(pH域3.5〜9.5、電流50mA、電圧1500V)の結果、6.8で
あった。
本発明の変異hTNFの生物活性を以下の実験例に示す方
法で検討した。
実験例1 L−929細胞の培養液の上清を除き、5mlの新鮮な培地
(MEM−Eagle、10%FCS)を加え、細胞数が3.0×104個/
100mlになるように1μg/mlのアクチノマイシンを含む
懸濁液を調製した。一方、10〜10-5μg/mlとなるように
PBSで希釈したTNF、およびコントロールとしてのPBS各1
00μlを96穴のプレートに分注し、該プレートを37℃の
CO2インキュベーター内で暖めておいた。このプレート
に上記の細胞懸濁液100μlずつを分注し、該プレート
を再度37℃のCO2インキュベーター内で18時間培養し
た。
プレートから培養上清を除き、PBS約100μlで洗浄し
た後、0.5%クリスタルバイオレット溶液(0.5%クリス
タルバイオレット、25%メタノール)を100μlずつ分
注し、生細胞を室温で1時間染色した。染色後、液を除
き、蒸留水で3回、色素を洗い流した後、100%メタノ
ールを100μずつ分注して色素を抽出した。メタノール
抽出したクリスタルバイオレットの濃度を540nmにおけ
る吸光度として測定した。吸光度は生き残った細胞数に
比例する。コントロールの50%の値に対応する希釈率を
求めて単位U/mlとした。本発明のカルボキシ末端変異hT
NFは30×106U/mgの値を示した。これは、天然のhTNFや
組換え体hTNFの約30倍に相当する。第9図に各希釈倍率
におけるL−929細胞に対する細胞毒性作用の作用曲線
を示した。横軸は希釈率を、縦軸は細胞増殖抑制率を示
す。図から明らかなように、本発明の変異hTNF(▽)
は、白血球の調整培地から単離された天然のhTNF(●)
や野生型の合成遺伝子から得られたhTNF(○)よりも2
〜3桁高い抑制効果を示した。
【図面の簡単な説明】
第1図は天然のhTNFのアミノ酸配列に基づくChouおよび
Fasmanのアルゴリズムによるタンパク質の推定の2次構
造を示す模式図、第2図はhTNFタンパク質のハイドロパ
シーを表す模式図、第3図はhTNF−CFタンパク質の推定
の2次構造を示す模式図、第4図はプラスミドpATNFの
組み立て模式図、第5図はプラスミドpUCTNFおよびM13T
NFの組み立て模式図、第6図はpATNF−CFの組み立て模
式図、第7図は別法によるプラスミドpATNF−CFの組み
立て模式図、第8図は最終生成物hTNF−CFのSDS−PAGE
およびNative−Gel電気泳動の結果を示す模写図、第9
図は変異hTNFのL−929細胞に対する細胞毒性の作用曲
線を示すグラフである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 1/21 8828−4B 15/09 ZNA //(C12P 21/02 C12R 1:19)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】野生型ヒト腫瘍壊死因子のカルボキシ末端
    のアミノ酸が疎水性アミノ酸で置換されてなるアミノ酸
    配列を有する変異ヒト腫瘍壊死因子。
  2. 【請求項2】疎水性アミノ酸がフェニルアラニンである
    請求項1記載の変異ヒト腫瘍壊死因子。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の変異ヒト腫瘍壊死
    因子をコードしているDNA配列。
  4. 【請求項4】請求項3記載のDNA配列を含有し、微生物
    宿主内で複製及び発現可能な変異ヒト腫瘍壊死因子用発
    現ベクター。
  5. 【請求項5】プラスミドpATNF−CFである請求項4記載
    のベクター。
  6. 【請求項6】請求項4または5のいずれかに記載のベク
    ターを含有する形質転換体。
  7. 【請求項7】大腸菌K12C600(m-r-)/pATNF−CFである
    請求項6記載の形質転換体。
  8. 【請求項8】請求項6または7記載の形質転換体を培養
    することからなる変異ヒト腫瘍壊死因子の製造方法。
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