JPH0820811A - 溶融金属処理剤 - Google Patents
溶融金属処理剤Info
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Abstract
を与えることができる製造及び取扱いの容易な溶融金属
処理剤を提供する。 【構成】 溶融金属の処理に必要な添加剤を鉄、ニッケ
ル又はアルミニウムを主成分とする固体金属板で被覆し
て粒状ないし塊状とした溶融金属処理剤。
Description
びアルミニウム合金等の製造に必要な溶融金属処理剤に
関するものであり、更に詳しくはこれらの金属の製造に
必要な黒鉛球状化処理、黒鉛のバーミキュラー化処理、
接種処理、脱硫処理、脱炭処理、脱酸処理、脱ガス処理
等に有効な溶融金属処理剤に関するものである。
鉛球状化を例に説明するに、球状黒鉛鋳鉄は開発されて
から約半世紀になるが、年々その用途が拡大されて鋳物
の主流になりつつあるものである。球状黒鉛鋳鉄はねず
み鋳鉄に比べて材料強度が優れているために鋳物の軽量
化ができ、鋳鋼よりも寸法精度、鋳造歩留りや切削性が
優れ、また鋳物コストが安価である。そのためねずみ鋳
鉄と鋳鋼の分野が球状黒鉛鋳鉄に代替されてきているの
である。黒鉛球状化処理には一般にマグネシウム合金が
用いられ、マグネシウムに約15種類以上の金属を組合
せて用いられてきた。現状では、フェロシリコン・マグ
ネシウム合金にカルシウムや希土類元素を含ませたもの
が主に用いられている。
り、処理する溶融鉄の温度は約1770Kであるため、
マグネシウムが溶融鉄に接触した瞬間に気化し、その蒸
気圧は約12気圧にもなり爆発的な反応を示す。
しく低いため、溶融鉄に接触する時間をできるだけ長く
とる必要がある。
ウム球状化剤では、過激な反応を緩和するために、マグ
ネシウムの含有量を約10%以下(通常は4〜5%)に
して溶融鉄との接触時間を長くし、球状化剤を溶融鉄の
最低部に設置し、その上をカバー材で覆って浮上を防止
するという手段がとられてきた。
理方法としては次の方法がある。 (a)置き注ぎ法:溶融鉄を受ける取り鍋底部のポケッ
ト部に球状化剤を置き、その上を打ち抜き鋼板屑やフェ
ロシリコンで被覆した後、溶融鉄を注入する。この方法
は簡便的なので現在最も多く採用されている。 (b)タンデッシュ法:置き注ぎ法の取り鍋の上部に蓋
をした状態で溶融鉄を注入する。 (c)圧力添加法:高純度マグネシウム球状化剤を高圧
シリンダーで溶融鉄中に圧入するか、高圧容器中で反応
させる。 (d)コンバータ法:球状化剤をセットした取り鍋を反
転させて反応させる。 (e)インモールド法:鋳型内で球状化剤を溶融鉄と反
応させる。
理時に著しい白煙が発生し、処理後の金属のマグネシウ
ムの歩留りも50〜60%と低い。この原因はフェロシ
リコン・マグネシウム合金の密度が約4.3g/cm3
で、溶融鉄の約7.2g/cm3よりもかなり小さいた
め、球状化剤が早期に浮上するからである。
収される前に、空気中の酸素と反応して、酸化マグネシ
ウムとなり、白煙を発生し溶融鉄中に捕捉されるマグネ
シウムを減少させてしまう。
方法として、特公昭45−32337(米国・インター
ナショナル・ニッケル・リミッテッド社)で、マグネシ
ウム粉末とカルボニルニッケル粉末及び鉄粉、銅粉の混
合物を圧縮して焼結し、多孔度が20〜50%で表面積
/体積が8より大きいブリケットにする方法が、また特
公昭56−5436(英国フォセコ・インターナショナ
ル・ニッケル・リミッテッド社)で、マグネシウム、カ
ルシウム、鉄の粉粒体を圧縮して密度が4.3をこえる
ブリケットにする方法が提案されているが、現状ではフ
ェロシリコン・マグネシウム球状化剤にカバー材(打ち
抜き鋼板屑やフェロシリコン等)をかけて処理すること
を余儀なくされている。
く、金属が付着し易いためポケット部の補修を頻繁に行
なわなければならない。
設備が必要であり、(e)の方法では鋳造歩留りが低下
してコスト高となる。
ム球状化剤は約45%のシリコンを含有しているため、
球状化剤を増減する場合、製品の成分調整が複雑になっ
たり、フェロシリコン・マグネシウム球状化剤を大気中
に長期に放置すると、球状化剤の表面が酸化されて性能
が低下したりする。
点を述べたが、これらの問題点は溶融金属処理剤を用い
る他の処理にも共通したものである。
を解決することにあり、特に安定した処理を可能とし、
少ない使用量で高品質の製品を得ることができ、作業
性、経済性に優れた溶融金属処理剤を提供することにあ
る。
に必要な添加剤を鉄、ニッケル又はアルミニウムを主成
分とする固体金属板で被覆してなる粒状ないし塊状の溶
融金属処理剤である。
加剤としてはそれぞれの処理に応じ適宜周知の添加剤が
用いられる。本発明の好ましい態様を例記すれば次のと
おりである。(a)鉄を主成分とする溶融金属(溶銑、
鋳鉄、鋳鋼等)の脱硫処理、バーミキュラー化処理、黒
鉛球状化処理、黒鉛化促進と基地強化の接種処理、鋳鋼
の脱酸または脱炭処理に必要な添加剤を鉄を主成分とす
る固体金属板で被覆した上記処理用の溶融金属処理剤、
この場合の溶融金属処理剤単体のみかけ密度は4.5〜
7.6g/cm3であることが好ましい。 (b)鉄を主成分としニッケルを含有する溶融金属処理
に必要な添加剤を、ニッケルを主成分とする固体金属板
で被覆した上記処理用の溶融金属処理剤、この場合の溶
融金属処理剤単体のみかけ密度は4.5〜8.2g/c
m3であることが好ましい。 (c)アルミニウムを主成分とする溶融金属処理に必要
な添加剤をアルミニウムを主成分とする固体金属板で被
覆した上記処理用の溶融金属処理剤、この場合の溶融金
属処理剤単体のみかけ密度は1.5〜2.5g/cm3
であることが好ましい。
各処理に必要な添加剤を所定の固体金属即ち板によって
代表される連続状金属で被覆して小片状にした点に特徴
を有する、その形状は球状、円筒状、円板状、箱状等特
に限定されない。その大きさは通常0.1〜100cm
3程度、好ましくは1〜30cm3程度である。金属板
の肉厚は通常0.5〜10mm程度、好ましくは1〜5
mm程度である。
鋼管等の金属管内に添加剤を充填し、プレス等により両
端を密封したものであり、図2は鋼板等の金属平板を用
いて加工成形したものである。成形加工は研削、プレス
(鍛圧)、溶接、接着剤による接着、止め具、放電接着
等適宜の手段をとることができる。また金属塊を研削し
てくり抜いてカバー材で密封する等の手段をとることも
できる。
る固体金属板には通常小孔の気抜孔を設ける。この気抜
孔により内部の空気抜きと鋳込み時の処理剤内部の圧力
緩和が図られる。鍛圧成形による場合等は、接合面の間
隙が気抜孔の役割を果たすため別途に気抜孔を設ける必
要はない。
種々の溶融金属の処理に用いられるが、以下いくつかの
処理について個別的に説明する。
その典型例である置き注ぎ法に本発明の処理剤を用いる
ことにより、処理中の処理剤の浮上が実質的防止できる
と共に処理中の白煙の発生も防止でき、少ない使用量で
良好な品質の製品を得ることができる。また取り鍋のポ
ケット部とカバー材も不要となり作業性も向上する。
板の典型例としては鋼板がある。たとえばJIS・G・
3461・外径16〜32mm、肉厚1〜5mmの鋼管
を用いその内部にマグネシウムと希土類元素を充填し、
プレスにより図1に示す形状に加工成形したり、同様の
鋼板を用いて図2に示す形状に加工成形される。
易くなり、他方被覆される添加剤成分であるマグネシウ
ムは923Kで溶融する。これらの特性を利用し鋼材を
約770〜970Kに加熱する鋼管の変形能は常温の3
倍以上になり、マグネシウムを内蔵した状態で非常に弱
い力で自由に成型加工ができるという特徴を示す。一方
常温に於いても鋼管や鋼板を冷間で鍛圧成形し、その中
に添加剤を自動的に封印することもできる。
アルミニウム合金を被覆用金属材料として用いることも
できる。
溶融金属処理剤を図3に示す方法で200kgと500
kgの取り鍋底に設置し、溶融鉄を注入して溶融金属処
理剤の浮上の有無と熱的挙動、製品のマグネシウム歩留
りと金属組織および機械的性質を確認した結果を下記に
要約する。
伝対を設置して溶融金属処理剤の表層から内部への熱的
挙動を測定した結果、図4に示すように、溶融鉄が取り
鍋に満たされた後に、溶融金属処理剤は浮上せずに表層
から順次溶解し、球状化剤と接種剤が順次溶鉄中に拡散
されることが確認された。しかも拡散開始時には上部に
多大の溶湯量と溶湯圧が存在するため、溶融金属処理剤
が溶鉄中へ更に吸収され易い条件にあることが実証され
た。
7.6g/cm3で特に浮上防止に良好な結果を得た。
最も安定して浮上防止できる密度は6.2g/cm3以
上であった。また浮上防止を促進するもう一つの理由と
しては、被覆用金属鋼板の溶解温度が約1700Kで、
溶融鉄の注入温度の約1770Kより低く、被覆金属鋼
板の表面が溶けて融解熱をうばい温度が下がり、溶融金
属処理剤同志が半溶融状態で強固に融着し合うこともあ
げられる(図4)。
g(マグネシウム含有率1.21%、接種用フェロシリ
コン含有率4.7%、密度7.0g/cm3)の球状化
用溶融金属処理剤を設置し、その上に500kgの溶融
鉄を1770Kで注入した。注入時、処理剤の浮上もな
く、注入終了直後からバブリングと溶湯の対流が発生し
約58秒間継続した。白煙の発生も非常に少なく反応は
穏やかであった。
された球状黒鉛鋳鉄のマグネシウム歩留りは約80%で
あり、従来法の54%に対して添加量を約40%低減で
きた。金属組織や黒鉛粒数に於いても従来法に比べて約
2倍となり、機械的性質も良好な結果を示した。
処理量に対して任意の形状、寸法に成型でき、その成型
体は強固な鋼板で被覆されているため取扱いが容易であ
る。
シリコン系の処理剤よりも安価に製造できる。
を用いた溶融金属処理剤は、バーミキュラー黒鉛鋳鉄
(CV鋳鉄)の添加剤やねずみ鋳鉄の接種剤にも適用で
きる一方、キュポラ等による銑鉄の脱硫用溶融金属処理
剤としてその特徴が生かされる。
材を用いれば、ニッケル含有量の多い合金鋳鉄(ニレジ
スト鋳鉄等)の溶融金属処理剤として、またステンレス
鋳鋼の脱炭処理剤としても応用できる。
を用いれば、アルミニウム溶湯の脱水素処理剤として適
用できる。
に浮上すること無く、バブリングと溶湯対流により溶湯
中に均一に拡散されるため、目的に対して効率的な働き
をするという特徴を示すことによる。
用溶融金属処理剤について述べる。バーミキュラー黒鉛
鋳鉄は黒鉛形状が芋虫状で、ねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄
との中間形態を示す。球状黒鉛鋳鉄と強度的に劣らない
だけでなく、鋳造性が良いために、工業的に均衡のとれ
た一般性を有する材料として評価され、自動車部品やイ
ンゴットケースなどへの使用が拡大されつつある。
り、その製造法としては(a)マグネシウム添加量を調
整する、(b)球状化阻害元素(主にチタン)とマグネ
シウムを併用添加する、(c)カルシウム或いはセレン
を添加する方法が従来より採用されている。
材質で、芋虫状の不安定な金属組織を要求されるため
に、(a)では添加剤を非常に狭い範囲で管理しなけれ
ばならず、工程管理が困難である一方、(b)、(c)
では添加剤の量を増やせるため管理し易いが、添加剤の
量により品質への影響が出やすいという問題点をもって
いる。
発明の溶融金属処理剤(マグネシウム含有率1.21
%)をつくり、置き注ぎ法にて溶融鉄に2.2%添加し
た。他方、従来法として、市販のバーミキュラー黒鉛鋳
鉄用添加剤(マグネシウム含有率5%)1%とカバー材
3%を添加して製品の金属組織と機械的性質について評
価したところ同等の結果を得た。従ってバーミキュラー
黒鉛鋳鉄に於いても本発明の溶融金属処理剤を球状黒鉛
鋳鉄と同様の効果をもって適用可能であるといえる。
るに、接種は鋳鉄溶湯に対し、通常0.2〜0.3%の
粒状添加物を添加することにより、鋳鉄の黒鉛化を促進
して黒鉛形状や黒鉛粒数を改善し、材質を向上させ機械
的性質の向上を計るために行なわれる。
め、接種剤を効率的に用いるためには、接種剤が溶湯中
に均一に分散され、できるだけ鋳込みに近い時点に接種
することが大切である。その目的で、従来(a)取り鍋
に注湯するとき、取り鍋底に接種剤をセットしたり、湯
流れに沿って添加する取り鍋接種法、(b)取り鍋から
鋳型に鋳込む時に湯に添加するストリーム法やワイヤー
法、(c)鋳型内に接種剤をセットするインモールド法
等が用いられてきた。
の均一に分散が十分でないため添加量が多くなり、フェ
ーディングも起きやすく、(b)の方法は、一定量の接
種剤を添加する供給設備が必要であり、また(c)法で
は製品の歩留りが低くなるという問題点を有する。
系の接種剤を鋼板で被覆し、図1に示す形状の接種用溶
融金属処理剤とし取り鍋底にセットして用いた結果、接
種剤使用量は、従来法の0.3%に対して0.15%で
同等の接種効果を得た。これはバブリングによる溶湯対
流が約30秒間持続され、接種剤の拡散が十分行なわれ
たからであると考えられる。
説明する。溶鉄中に硫黄が多い場合、マグネシウムが硫
黄に消費され、黒鉛の球状化が阻害される。通常は、処
理する溶鉄中の硫黄は0.02%以下が望ましいとされ
ている。溶鉄中の硫黄が多い場合球状化剤を増やせば、
コスト高の他にドロスや介在物欠陥の原因となる。従っ
て、約0.1%の硫黄を含有しているキュポラ製銑鉄か
ら球状黒鉛鋳鉄を製造する場合は、先ず脱硫処理を行な
う必要がある。
2(英国・マグネシウム・エレクトロン社)に、転炉溶
銑の脱硫剤としてマグネシウム、酸化マグネシウムとフ
ッ化カルシウムを粘結剤で固めたブリケットが、また特
開昭52−97318(フォセコ・ジャパン社)に、キ
ュポラ転炉溶銑の脱硫剤として、マグネシウム、カルシ
ウムやそれらの合金を粘結剤で固めたブリケットが提案
されているが、現在までのところカーバイトやソーダ灰
を用いて主に次のような脱硫方法が採用されている。
トを取り鍋に投入して、取り鍋底部の多孔質耐火プラグ
から窒素ガスを吹き込んで溶銑を攪拌する方法で、最も
多く適用されている。 (b)取り鍋内機械攪拌法:取り鍋に投入したカーバイ
トと溶銑を回転羽根で攪拌する。 (c)インジェクション法:粉末のカーバイトやソーダ
灰を窒素ガスを用いて溶銑中に吹き込む。
要になり、使用量も多く多量のスラグが発生する。
鋼板で被覆して脱硫用溶融金属処理剤を製造し、取り鍋
にセットしてキュポラ製銑鉄を注入した。硫黄量が0.
085〜0.091%の元湯にこの脱硫用溶融金属処理
剤を1.4〜2.7%添加した際の脱硫率は78〜83
%という高い値を示した。
について説明する。高合金鋳鉄の一つとしてニレジスト
球状黒鉛鋳鉄があるが、この溶湯処理には従来ニッケル
マグネシウム・フェロシリコン合金が主に使用されてい
る。その理由は、ニレジスト鋳鉄は約15%以上のニッ
ケルを含有しているために、添加剤にニッケルを含有さ
せることにより、溶湯成分に影響を与えずに添加剤の密
度を上げて浮上を抑制し、処理効率を上げることができ
るからである。
のために炭素含有量を0.03%以下にすることが必要
である。従って製造時に混入してくる炭素を脱炭する必
要があり、通常は溶解時に酸素を吹き込んで脱炭する
が、過剰に吹き込むと溶湯中の酸素含有量が増加しガス
欠陥や介在物欠陥の原因となる。それ故溶湯中に均一に
拡散され、かつ効率的に反応する本発明の処理剤を用い
ることにより効率的な脱炭、処理が可能である。
のステンレス鋼管を用いてマグネシウムを被覆成形して
溶湯処理剤を製造し、ニレジスト球状黒鉛鋳鉄を製造し
た結果、処理剤の浮上も無く、反応も穏やかで、機械的
性質も従来法と同様の結果を得た。この場合の処理剤の
密度は約7.4g/cm3であり、元湯の約7.5g/
cm3と同等で浮上もなく、反応が安定し、フェロシリ
コンを含んでいないため成分調整も容易であった。
のステンレス鋼管で酸化鉄(ベンガラ)を被覆成形して
製造した脱炭用処理剤を用いてステンレス溶鋼(SCS
13)を処理した結果、元湯の炭素を0.05%から
0.02%に脱炭できた。この場合の溶湯処理剤の密度
は8.1g/cm3であり、元湯の約8.0g/cm3
と同等であるため、処理剤の浮上は認められなかった。
この場合脱炭剤としてカルシウムを始め種々の金属酸化
物の適用が可能である。
ば、脱酸用の処理剤として利用できる。
ついて説明する。アルミニウム鋳物で問題となる鋳造欠
陥の一つにガス欠陥がある。その原因は水素ガスであ
り、水素ガスは溶解中に空気中より溶湯中に吸収され易
く、るつぼ重油炉では、水素の溶解度は最大0.35c
c/100gに達する。凝固時の水素の溶解度は0.0
36cc/100gと低いため、余分な水素が凝固時に
排出され、気泡を生成してガス欠陥となる。従って脱水
素を目的として、溶解時に不活性ガスや塩素ガスを吹き
込んだり、脱ガス添加剤(フラックス)を添加して対応
している。一般的に溶湯中の水素の溶解度が0.2cc
/100gに達すると、ガス欠陥が発生すると言われて
いる。フラックスはカリウムやナトリウムの塩化物とふ
っ素化合物とで構成され吸湿性が強いため、水素源とな
り、乾燥して使用することが必要である。
ウム管を用いてフラックスを被覆成形して製造した溶湯
処理剤を用いて、20kgのアルミニウム溶湯を処理
し、製品を鋳込んだ結果、製品にはガス欠陥も無く、健
全な鋳物を製造することができた。この処理剤はアルミ
ニウムで被覆されているため、保存性が良いことも特徴
の一つである。
金属処理剤は簡単な構造をもち製造容易でありながら顕
著に優れた効果を示すが、本発明の基本思想は添加剤を
固体金属板状物で被覆することにより処理剤の密度をで
きるだけ溶湯の密度に接近させること、被覆材同志の融
着効果により溶融金属処理剤の浮上を防止し、表層から
順次溶解させ、添加剤を溶湯対流により均一に拡散させ
ることにある。処理目的に応じ最適密度は異なるが、本
発明では被覆金属板の厚さ、大きさ、形状等により最適
密度に調節可能である。全体的な密度範囲としては処理
剤単体のみかけ密度が1.5〜8.2g/cm3の範囲
で適宜調節可能である。
め、添加剤もそれぞれの処理用に必要な元素だけにでき
るだけ絞ることが好ましく、密度の低いフェロシリコン
(密度約5g/cm3)等の不純物の混入を防ぐことが
好ましい。
有するため添加剤の保存性を維持し、搬送時の破損を防
止できるという効果を有すると共に、小孔を開けて内部
圧力を調節する等の処理が容易であるという利点も有す
る。
く説明する。
9mmの市販の鋼管を用いて図1に示す形状の溶融金属
処理剤を製造し、溶融金属処理剤の浮上と処理中の熱的
挙動を実測した。図1中、1は2.9mmの鋼板を、2
は添加剤を示し、3は減圧用小孔を示す。内側の隙間が
3mmになるように鋼管を平らにプレスした後、片方を
プレスにより閉じ、その内部に粒状のマグネシウム(以
下Mg)と接種用フェロシリコン(以下FeSi)の添
加剤を充填封印し球状化用溶融金属処理剤とした。この
溶融金属処理剤の単体の重量と体積は、夫々30gと
4.3cm3で、みかけ密度は7.04g/cm3であ
った。また金属の熱間性質を利用した溶融金属処理剤の
製造方法として、被覆材を約1000Kに加熱して、そ
の中に粒状のMgとFeSiを充填した場合、成形が容
易で溶融金属処理剤のみかけ密度も上昇した。これは熱
間での被覆材の強度が大幅に低下して伸びが大幅に上昇
することと、Mgが約920Kで溶融するため粒状のF
eSiの間隙にMgが浸透したためである。
すような200kgの取り鍋にセットし、1773Kの
溶湯を注入して溶湯金属処理剤の浮上と処理中の熱的挙
動を実測した。図4に示すa、b、cは熱伝対の位置を
示し、夫々溶湯接触面より10mm、30mm、60m
m離れた内部の熱的挙動を示す。図4の9は200kg
の元湯を、10は溶融金属処理剤を示す。
溶融金属処理剤の浮上は無く、その後、図3の8に示す
ような溶湯対流が約25秒間続いた。反応は穏やかで白
煙も非常に少なく、添加剤の拡散が均一に行なわれる状
況が観察された。
度を変えて、溶融金属処理剤の浮上、溶湯対流時間、環
境、Mg歩留りと金属組織を調査した。表1に500k
g溶湯を処理した結果を示す。尚本発明の溶融金属処理
剤を用いる場合は、元湯のSiを従来法より0.3%高
くした。これは本発明の溶融金属処理剤中のSiが非常
に少ないからである。
た場合、密度が5.6以上になれば浮上は無く、反応は
穏やかで白煙も少なく、Mg歩留りも約80%と高く、
接種剤の溶湯中の拡散が均一になるため、球状黒鉛粒数
も従来法の約2倍以上となった。
m3、Mg含有率1.21%、接種用Fe−Si含有率
4.7% 20.7kgを図3に示すように、500k
g取り鍋にセットして1773Kの溶湯を注湯した。従
来法に於いては、Mg含有率5%の市販のフェロシリコ
ン・マグネシウム(以下Fe−Si−Mg)球化剤7.
6kgと1.5kgのFe−Si系接種剤を500kg
取り鍋にセットして、その上を約24kgのカバー材で
被覆して注湯した。本発明の溶融金属処理剤では元湯の
Siを従来法より0.28%高くした。これは発明の溶
融金属処理剤に含まれるSiが極めて少ないからであ
る。元湯の化学成分を、表2に示す。
応も穏やかで溶湯対流は58秒間継続した。表3に処理
した製品の化学成分を、図5、図6に夫々従来法と本発
明の溶融金属処理剤を用いた場合の顕微鏡組織を示す。
本発明でのMg歩留りは約80%と高く、機械的性質も
良好で、顕微鏡組織に於いては黒鉛粒数も2倍以上の緻
密な組織を示した。
融金属処理剤を用いることにより、添加剤の使用量を大
幅に低減でき、作業環境が改善される。また本発明の黒
鉛接種用溶融金属処理剤が元湯中に均一に拡散されるた
め、黒鉛が微細化されて粒数も大幅に増加することによ
り、製品肉厚による金属組織の変動(チル化、フェーデ
イング)が回避されて機械的性質が向上する。
9mmの市販の鋼管を用いて図1に示す形状の溶融金属
処理剤を実施例1と同様に製造してバーミキュラー球状
黒鉛鋳鉄用溶融金属処理剤とし、バーミキュラー球状黒
鉛鋳鉄(以下CV黒鉛鋳鉄)を製造した。従来法として
は、市販のCV用球状化剤(Fe−Si、Ca、Mg、
Ti系)2kgと6kgのカバー材を、本発明に於いて
は上記の溶融金属処理剤(Mg含有率1.3%、密度
7.1g/cm3)4.0kgを置き注ぎ法にて200
kg溶湯に添加して溶湯処理を実施した。また元湯のS
iに関しては、本発明では従来法よりも0.25%高く
設定した。その結果を表4に示す。
より、処理剤の浮上防止と溶湯拡散が十分行なわれた結
果、化学成分、機械的性質共に従来法と同等であり、ま
たMgの歩留りは約80%となり、CV黒鉛鋳鉄のよう
な不安定な材質に於いて、低添加でも安定した金属組織
と機械的性質を得ることができた。図7にこの実施例で
製造したYブロック試験片によるCV球状黒鉛鋳鉄の組
織を示す。
接種剤を用いて、図1に示す形状で、密度を夫々7.
0、6.6、および6.4g/cm3に加工して、接種
用溶融金属処理剤をつくり、取り鍋にセットし、500
kgの溶湯を1773Kで注入した。接種用溶融金属処
理剤の構成と、500kgの溶湯への添加量を表5に示
す。
の接種剤はFe−Si系よりも密度が低いため、被覆材
の割合を増す必要がある。しかし、接種効果を示すチル
試験に於いて、本発明の溶融金属処理剤を適用すれば、
何れも従来法の約60%の接種剤量で従来法と同等のチ
ル深さを得ることができた。これは、接種剤が徐々に溶
湯中に溶解し、溶湯対流により均一に拡散されることに
より少量で持続性のある接種が行なわれた結果に他なら
無い。
トおよび蛍石を実施例1に示す方法で図1の形状に加工
成形して、脱硫用溶融処理剤とし、200kgの取り鍋
にセットした後注湯した。各脱硫用溶融処理剤の密度を
6.5〜6.6g/cm3に揃えた結果、処理剤中の各
脱硫用添加剤含有率は12.5〜16.5%に変動し
た。これは各脱硫用添加剤の密度が異なるためである。
0.54%、P=0.55%でS=0.085〜0.9
1%の化学成分をもつ水冷、冷風キュポラ製の溶銑中の
S量をすべて脱硫できる量の脱硫用溶融処理剤を添加し
て脱硫効果を調査した。尚従来法として、同量のカーバ
イトを用い、取り鍋底のポーラスプラグから窒素ガスを
吹込み攪拌脱硫を行なった。表6にその結果を示す。
処理剤は、浮上せず、溶湯撹拌が持続され、粉塵も少な
く、約80%の高い脱硫効率をえた。またカーバイトを
用いた溶融処理剤で200kgの溶銑を1753Kで処
理した結果、他とは異なり溶銑との発熱反応により溶湯
温度低下が見られなかった。
種用FeSiを用いて、実施例1に示す方法にて添加剤
をステンレス鋼板で被覆し、図1の形状に加工成形し
た。この処理剤は、高ニッケル(以下Ni)のニレジス
ト球状黒鉛鋳鉄の球状化処理に関して、鉄の代わりにス
テンレスを被覆材としたもので、Niの密度が高いた
め、更に高密度の処理剤が可能となる。表7にここで用
いた処理剤の構成を示す。この処理剤の密度は7.4g
/cm3と高く、単重29.5g(Mg含有率1.15
%)のこの溶融金属処理剤3040gを50kgの元湯
に添加し、1773Kで反応させた。浮上防止と溶湯攪
拌が維持され、反応も穏やかであった。表8に製品の化
学成分、機械的性質を示す。
結果、表8に示すように、適正な化学成分と機械的強度
が得られ、図8に示すようなニレジスト球状黒鉛鋳鉄の
金属組織が得られた。
の脱炭にも利用できる。JIS・G・3459・スケジ
ュール40のステンレス鋼管と酸化鉄(以下Fe
2O3)を用いて、実施例1に示す方法にてFe2O3
をステンレス鋼板で被覆し、図1の形状に加工成形して
ステンレス鋳鋼の脱炭用溶融金属処理剤とし、50kg
のステンレス溶鋼に1853Kで添加、反応させた。こ
の溶融金属処理剤の密度と浮上の関係と、脱炭効果を表
9に示す。
金属処理剤の密度が6.4g/cm3以上であれば浮上
が防止され、溶融金属処理剤の密度が高いほど脱炭効率
も高い傾向がある。
g/cm3の溶融金属処理剤1015gを1853Kの
50kgのステンレス溶鋼に添加反応させ、脱炭効率を
調査した。表10、11にこの溶融金属処理剤の性状と
産出化学成分を示す。
下Al)管を用いて、実施例1に示す方法にて市販のA
l脱ガス用フラックスをAl管で被覆し、図1の形状に
加工成形した処理剤を、脱ガス用Al溶融金属処理剤と
し、20kgのAl溶湯を用いて処理剤の密度と浮上の
関係を調査した。
の密度が1.5g/cm3以上であれば浮上が防止され
る。表12にその結果を示す。
m3、フラックス含有率9.8%のこの溶融金属処理剤
610gを20kgのAl元湯に添加、反応させて、浮
上と製品の確認を行なった。元湯には予め馬鈴薯1個を
添加して溶湯中の水素含有量を最大にしておいた。この
溶融金属処理剤は浮上もなく、未処理の溶湯を鋳込んだ
製品にはガス欠陥が発生したが、この溶融金属処理剤で
処理した溶湯を鋳込んだ製品は健全であった。表13に
その結果を示す。
理剤は次のような特性を有する。 (1)粒状または塊状の本発明の溶融金属処理剤の密度
を、処理する溶湯の密度に非常に近くでき、処理時の溶
融金属処理剤の浮上を確実に防止できる。従来の球状黒
鉛鋳鉄の球状化剤の密度は約4.5g/cm3であり、
密度を上げるために、粉粒体を加圧、焼結しても密度を
6g/cm3以上にすることは困難なため、密度が約
7.2g/cm3の溶融鉄中では浮上する。その対策と
して、カバー材を用いたり、設備的な対応が必要とな
る。 (2)本発明の溶融金属処理剤は、処理時に被覆してい
る固体の金属板が融解熱を奪って周囲の温度下げ、被覆
している金属板同志が融着して浮上防止を助けるため、
低密度でも浮上しずらい。 (3)本発明の溶融金属処理剤は、処理後、表層から順
次溶解して溶湯対流を起こす故、添加剤の接種時間が長
く、拡散が均一となる。そのため、製品は非常に微細な
金属組織となり、材料特性が向上する。 (4)本発明の溶融金属処理剤中には、必要最小限の添
加剤を含ませることができるため、不純物が少なく、介
在物等の欠陥が少なくなる。 (5)本発明の溶融金属処理剤は、黒鉛の球状化だけで
なく、これまで改善が困難な脱硫、接種、脱炭、Al脱
ガス等にも適用できる。 (6)本発明の溶融金属処理剤は、強固な金属板で添加
剤を被覆保護しているため、搬送時の破損や添加剤の酸
化、吸湿等に対する保存性を維持できる。 (7)本発明の溶融金属処理剤を用いることにより、白
煙、粉塵等の作業環境を改善でき、取り鍋の清掃管理が
容易になる。 (8)本発明の溶融金属処理剤は簡単に製造できるた
め、製造コストも低い。
融金属処理剤の形状の一例を示す概略図。
した溶融金属処理剤の形状の一例を示す概略図。
フ。
真(倍率100)。
織を示す顕微鏡写真(倍率100)。
真(倍率100)。
真(倍率100)。
接部位、5 取り鍋、 6 溶融金属処理剤、 7 元
湯、 8 溶湯対流、9 元湯、 10 溶融金属処理
剤
Claims (7)
- 【請求項1】 溶融金属の処理に必要な添加剤を鉄、ニ
ッケル又はアルミニウムを主成分とする固体金属で被覆
してなる粒状ないし塊状の溶融金属処理剤。 - 【請求項2】 被覆層が気抜部を有する請求項1記載の
溶融金属処理剤。 - 【請求項3】 溶融金属処理剤単体のみかけ密度が1.
5〜8.2g/cm3である請求項1又は2記載の溶融
金属処理剤。 - 【請求項4】 鉄を主成分とする溶融金属の脱硫処理、
バーミキュラー化処理、黒鉛球状化処理、黒鉛化促進と
基地強化の接種処理、鋳鋼の脱酸または脱炭処理のいず
れかに必要な添加剤が、鉄を主成分とする固体金属板で
被覆されており、みかけ密度が4.5〜7.6g/cm
3である請求項1又は2記載の溶融金属処理剤。 - 【請求項5】 鉄を主成分とする溶融金属でニッケルを
含有する溶融金属処理に必要な添加剤が、ニッケルを主
成分とする固体金属板で被覆されており、みかけ密度が
4.5〜8.2g/cm3である請求項1又は2記載の
溶融金属処理剤。 - 【請求項6】 アルミニウムを主成分とする溶融金属処
理に必要な添加剤が、アルミニウムを主成分とする固体
の金属板で被覆されており、みかけ密度が1.5〜2.
5g/cm3である請求項1又は2記載の溶融金属処理
剤。 - 【請求項7】 被覆層が一体金属、金属管又は金属板で
構成され、研削、鍛圧、溶接、接着剤、止め具又は放電
接着により内部に添加剤を有する包囲体に成形加工され
ている請求項1〜6のいずれか1項記載の溶融金属処理
剤。
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