JPH08163471A - マトリクス型薄膜電子源の駆動方法 - Google Patents

マトリクス型薄膜電子源の駆動方法

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JPH08163471A
JPH08163471A JP30588594A JP30588594A JPH08163471A JP H08163471 A JPH08163471 A JP H08163471A JP 30588594 A JP30588594 A JP 30588594A JP 30588594 A JP30588594 A JP 30588594A JP H08163471 A JPH08163471 A JP H08163471A
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voltage pulse
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睦三 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】マトリクス型薄膜電子源において、放出電流量
を正確に制御する。 【構成】放出電子ビームの形状の情報から、非電子放出
期間に印加される電圧波形を求め、これから電子放出時
の印加電圧パルス幅あるいはパルス振幅に補正を加え
る。 【効果】放出電子ビームの形状によらず、各ドットから
の放出電流量を正確に制御することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属−絶縁体−金属の
三層構造を有し、真空中に電子を放出する電子源に適用
されるマトリクス型薄膜電子源の駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜型電子源とは、図2に示したよう
に、上部電極11−絶縁層12−下部電極13の三層構
造の薄膜の上部電極11−下部電極13間に電圧を印加
して、上部電極表面から真空中に電子を放出させるもの
である。上部電極11,下部電極13に金属を用いたM
IM(金属−絶縁層−金属)型電子源や、一方または両
方の電極に半導体を用いたMIS(金属−絶縁層−半導
体)型電子源などがある。MIM型電子源については、
例えば、特願平5−213744 号明細書に述べられている。
【0003】薄膜型電子源の動作原理を図3に示した。
上部電極11と下部電極13との間に電圧を印加して、
絶縁層12内の電界を1〜10MV/cm以上にすると、
下部電極13中のフェルミ準位近傍の電子はトンネル現
象により障壁を透過し、絶縁層12,上部電極11の伝
導帯へ出現する。これらの電子のうち、上部電極11の
仕事関数φ以上のエネルギを有する電子は、真空中に放
出されることになる。
【0004】下部電極13から上部電極11に流れる電
流をダイオード電流Id ,真空中に放出される電流を放
出電流Ieと呼ぶと、放射比Ie/Idは通常1/103
1/105 程度である。現在までに、Au−Al23
Al構造においてこの原理による電子放出が観測されて
いる。この電子源は、上部電極11の表面が環境ガスの
付着により汚染して仕事関数φが変化しても電子放出特
性には大きな影響がないなどの電子源として優れた性質
を有しており、新型電子源として期待されている。
【0005】複数本の互いに平行な下部電極13の上に
絶縁層12を形成し、その上に複数本の互いに平行な上
部電極11を下部電極13と直交して形成する。そし
て、下部電極13に適当な振幅の負のパルス電圧を、上
部電極11に正のパルス電圧を印加すると、下部電極と
上部電極の交点のMIM電子源素子から電子を放出させ
ることができる。このようにして、例えば、ヴァクーム
・テクニーク,第34巻,2号,44頁〜52頁(Vakuu
m-Technik,Vol.34,No.2,pp.44−52)に述べ
られているように、所望の場所から電子放出を起こすこ
とが可能になる。すなわち、任意のパターンの電子ビー
ムを得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】次にマトリクス状に配
置したMIM電子源の駆動方法の概略を述べる。図4は
マトリクス状に配置したMIM電子源を示したものであ
る。ここでは説明の簡略化のために4×4個のMIM電
子放出素子を配列したものを示した。1000×100
0個程度のMIM電子放出素子を配列した電子源につい
ても、以下に説明する駆動方法は本質的には同じであ
る。4本の下部電極13をそれぞれL1〜L4,4本の上
部電極11をそれぞれU1〜U4とし、L1〜L4は下部電
極駆動回路23に、U1〜U4は上部電極駆動回路21に
それぞれ結線する。
【0007】それぞれの電極へ印加する電圧波形の一例
を図5に示す。下部電極L1〜L4には走査電圧を印加す
る。走査電圧パルス41を印加しない期間のバイアス電
圧を例えば+3Vとし、パルス印加時の電圧を例えば−
3.5V とする。一方、上部電極へは所望の電子ビーム
パターンに対応した信号電圧を印加する。信号電圧パル
ス42を印加しないときのバイアス電圧を0V,印加時
の電圧を、例えば、+3Vとする。図5では、上部電極
2 に印加する電圧のみ示した。このとき、下部電極L
3 と上部電極U2 との交点、MIM素子(3,2)の両
端に印加される電圧を波形45に示した。走査電圧パル
ス41と信号電圧パルス42が同時に印加されたときに
は、大きな電圧がかかるが、それ以外のときは、半分程
度の電圧か、あるいは逆方向の電圧が印加される。
【0008】図6は、個々のMIM電子放出素子につい
て、素子両端の電圧と放出電流との関係を示したもので
ある。MIM電子放出素子からの電子放出は、トンネル
現象に支配されているため、明確な閾値電圧Vthがあ
る。したがって、図5において、走査電圧パルス41と
信号電圧パルス42が同時に印加されたときの素子両端
電圧をVth以上とし、それ以外のときは、Vth以下にな
るように電圧値を設定すれば、走査電圧パルス41と信
号電圧パルス42とが重なったときのみ電子放出が起こ
る。
【0009】MIM素子(3,2)の両端には、走査電
圧パルス41が印加されるとき(時刻t3とt7)以外で
も、電圧が印加されている。しかし、その電圧値は、電
子放出閾値Vth以下なので、放出電流量には何ら影響を
与えず、実用上は問題ないと従来考えられていた。
【0010】しかし、実際には、例えば特願平6−18080
号明細書に述べられているように、電子放出閾値Vth
下の電圧を印加した場合でも、絶縁層内に蓄積された電
荷の分布を変化させるために、MIM素子の電子放出特
性を変化させてしまう。すなわち、時刻t3とt7におい
て同じ信号電圧パルス42を印加した場合でも、それ以
外の期間(t1〜t2,t4〜t6)にどのような信号電圧
パルスが印加されていたかにより、放出電流量が変わっ
てしまうことになり、放出電流量の正確な制御ができな
くなってしまう。
【0011】本発明の目的は走査信号により選択された
時刻において放出される電流量を正確に制御することに
ある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明では、信号電圧パ
ルスの時間幅あるいは電圧振幅を、走査信号により選択
された時刻以外の信号電圧に基づいて設定する。
【0013】
【作用】個々のMIM電子放出素子の上部電極11を接
地電位とし、下部電極13に図7に示した、パルス幅t
w,パルス非印加期間tIなる電圧波形を印加する。負電
位が印加される期間に上部電極11から電子放出が起こ
る。このときパルス非印加期間に印加される逆バイアス
電圧Vpと放出電流Ieとの関係は、特願平6−18080 号
明細書に述べられているように、図8のようになる。図
8の測定条件は、tW=1ms,tI=1ms,Vd1
5.67V である。
【0014】また、図9はパルス非印加期間tIを変え
たときの放出電流Ieの変化を示したものである。Vd1
=5.6V,tw=50マイクロ秒に固定してある。Vd2
は、Aでは0V、Bでは2.0V、Cでは2.5V、Dで
は3.0V、Eでは3.5Vである。図9からわかるよう
に、放出電流は、パルス印加よりも数100ms以前の
バイアス電圧にも影響される。したがって、時刻t0
の放出電流Ie(t0 )は次のように表される。
【0015】
【数1】
【0016】
【数2】
【0017】ここで、Ie0は、パルス非印加期間にバイ
アス電圧が印加されなかった場合の放出電流を示す。ま
た、v(t)は、時刻tでMIM電子放出素子の両端に印
加される電圧である。τ=t0−tである。f(v,τ)
は、図8,図9などのデータから実験的に求められる関
数である。ここで積分範囲Tは、バイアス電圧の影響が
及ぶ時間範囲にとる。すなわち、数100msから数秒
程度である。あるいは、いったん電子放出が起こるとそ
れ以前のバイアス電圧印加の影響はかなり消去されるの
で、マトリクス型薄膜電子源全体の走査に要する時間、
すなわち1フィールドの時間をTとして設定しても良
い。
【0018】図10に示したように、時刻t0 における
信号電圧パルス42のパルス幅Δt(t0 )を次式にした
がって設定する。
【0019】
【数3】
【0020】ここで、Δt0 は、パルス非印加期間にバ
イアス電圧が印加されなかった場合のパルス幅設定値で
ある。数1からわかるように、このようにすると、パル
ス非印加期間の電圧変化の影響が取り除かれ、所望の放
出電流Ie に正確に制御することができる。
【0021】なお、図6に示したように、放出電流Ie
は電子放出時の印加電圧にも依存するので、数1に基づ
いて信号電圧パルス42の電圧振幅値を調整しても同様
の効果が得られる。
【0022】
【実施例】本発明を用いた実施例を図1,図2,図4,
図10を用いて説明する。絶縁性の基板14上に下部電
極13としてAlを15nm形成する。Alの形成に
は、例えばRFマグネトロンスパッタリングを用いる。
このAlをフォトリソグラフィー法などでパターニング
した後、エッチングし、図4のように、互いに平行な電
極群13を形成する。このAlの表面を陽極酸化し、絶
縁層12を形成する。陽極酸化の化成電流を小さな値に
制限することにより、絶縁層12の膜質を向上させるこ
とができる。続いて、RFマグネトロンスパッタリング
や蒸着法によりAuを5nm程度成膜し、上部電極11
とする。この際、マスクなどを用いて、図4のように互
いに平行な電極群11を形成する。
【0023】このようにして作製したMIM電子放出源
の下部電極13にはそれぞれ下部電極駆動回路23を、
上部電極11には上部電極駆動回路21を接続する。こ
のMIM電子放出源を真空度1×(1/107)Torr程度
の真空槽内に入れて、上部電極駆動回路21と下部電極
駆動回路23で適当な電圧を発生させ、MIM電子放出
源を動作させる。
【0024】下部電極駆動回路23,上部電極駆動回路
21に入力する信号の処理回路を図1に示した。基準ク
ロック発生回路56で作った基準クロックを走査信号発
生回路57に入力し、図10のL1〜L4に対応した走査
信号を発生させる。これを下部電極駆動回路23に入力
して、所望の電圧振幅とバイアス電圧を有する波形とす
る。例えば、走査電圧パルス41を印加しない期間のバ
イアス電圧を+3V,パルス印加時の電圧を−3.5V
とする。一方、MIM電子放出源から放出させようとす
る電子ビームのパターンに対応する画像データをいった
んフィールドメモリ53に貯える。
【0025】図10の時刻t7 における信号電圧パルス
42を決める方法を述べる。フィールドメモリ53に貯
えられている情報をもとに、時刻t3 から時刻t7 まで
の信号電圧波形がわかるので、数2に基づいてα(t7 )
を計算する。この計算は、補正係数演算回路54におい
て行う。この計算結果をもとに、パルス幅変調回路55
において数3に基づいたパルス幅に、フィールドメモリ
からの出力信号を調整する。この信号を直列/並列変換
回路58を通じて、所定の上部電極駆動回路21に入力
し、図10のU2 に示したような電圧を発生させる。例
えば、信号電圧パルス42を印加しない期間のバイアス
電圧を0V,パルス印加時の電圧を+3.0 Vとする。
このようにして、図10に示した電圧波形を発生させ
る。
【0026】なお、先に述べたように、放出電流Ie
調整するのに、信号電圧パルスのパルス幅を変える代わ
りに電圧振幅を変えてもよい。この場合、図1のパルス
幅変調回路55を取り除き、代わりに補正係数演算回路
54の出力信号を上部電極駆動回路21に入力し、電圧
振幅を調整すればよい。
【0027】また、本実施例の代わりに、上部電極11
に走査電圧パルス41を印加し、下部電極13に信号電
圧パルス42を印加しても良い。ただし、この場合、走
査電圧パルス41が正電圧パルスになり、信号電圧パル
ス42が負電圧パルスになる。
【0028】図11は、本発明の別の実施例を示したも
のである。Siなどの基板上にAlやWなどの金属を成
膜し、これをフォトリソグラフィーなどでストライプ状
にパターン化し、下部電極リード15を形成する。この
上に、蒸着法などで多結晶シリコンを100nm程度の
膜厚で形成し、下部電極13とする。次いで、多結晶シ
リコンの表面約5nmを熱酸化などによりSiO2
し、絶縁層12とする。さらに、その上部に下部電極リ
ード15に直交するパターンで、ストライプ状にAuな
どの金属薄膜を形成し、上部電極11とする。
【0029】このように形成した、薄膜型電子放出源の
下部電極リード15に下部電極駆動回路23を、上部電
極11に上部電極駆動回路21を結線する。各駆動回路
から発生させる電圧波形は、先に述べた実施例と同様で
ある。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、MIM電子放出素子を
マトリクス状に配列したMIM電子放出源を駆動する際
に、放出させようとする電子ビームパターン全体の情報
を、印加電圧にフィードバックすることにより、ビーム
パターンの変化による放出電流の変動を防ぎ、放出電流
量を正確に制御することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いた実施例における信号処理回路の
ブロック図。
【図2】MIM電子放出素子の構造を示した断面図。
【図3】MIM電子放出素子に電圧を印加した時の電子
のエネルギの説明図。
【図4】MIM電子放出源への駆動回路の結線を示した
説明図。
【図5】従来の印加電圧波形を示したタイミングチャー
ト。
【図6】MIM電子放出素子の放出電流と印加電圧の関
係を示した特性図。
【図7】MIM電子放出素子に印加する電圧波形を示し
た説明図。
【図8】MIM電子放出素子からの放出電流とバイアス
電圧との関係を示した特性図。
【図9】MIM電子放出素子からの放出電流とパルス非
印加期間との関係を示した特性図。
【図10】本発明を用いた実施例における印加電圧波形
を示したタイミングチャート。
【図11】本発明を用いた別の実施例を示した断面図。
【符号の説明】
21…上部電極駆動回路、23…下部電極駆動回路、5
3…フィールドメモリ、54…補正係数演算回路、55
…パルス幅変調回路、55,56…基準クロック発生回
路、57…走査信号発生回路、58…直列/並列変換回
路。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】互いに平行な複数本の第一電極群とそれと
    直交する第二電極群との間に絶縁層を挟み込んだ構造を
    有するマトリクス型薄膜電子源を動作させる際に、前記
    第一電極群に走査電圧パルスを印加し、前記第二電極群
    に信号電圧パルスを印加して、前記走査電圧パルスと前
    記信号電圧パルスの組合せにより所望のドットから電子
    放出を起こして所望の形状パターンの電子ビームを放出
    させる駆動方法において、前記形状パターンの情報に基
    づいて、前記信号電圧パルスのパルス幅あるいは電圧振
    幅を前記ドットごとに補正をして、放出電流量を正確に
    制御することを特徴とするマトリクス型薄膜電子源の駆
    動方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007042414A (ja) * 2005-08-03 2007-02-15 Hitachi Ltd 画像表示装置

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