JPH0813134A - プラスチック成型用金型およびその製造方法 - Google Patents

プラスチック成型用金型およびその製造方法

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JPH0813134A
JPH0813134A JP16478894A JP16478894A JPH0813134A JP H0813134 A JPH0813134 A JP H0813134A JP 16478894 A JP16478894 A JP 16478894A JP 16478894 A JP16478894 A JP 16478894A JP H0813134 A JPH0813134 A JP H0813134A
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JP
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layer
film
mold
plating
thickness
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Application number
JP16478894A
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English (en)
Inventor
Atsuo Kawana
淳雄 川名
Yoshitaka Totsutori
由貴 鳥取
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 より優れた耐食性および耐摩耗性を有するプ
ラスチック成型用金型およびその製造方法を提供する。 【構成】 第1のプラスチック成型用金型は、キャビテ
ィ部分の表面にCrまたはNiからなるめっき膜である
第1層と、該第1層上にTi、Zr、Hf、V、Nb、
TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金属から
なるPVD膜である第2層と、該第2層上にTi、Z
r、Hf、V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少な
くとも1種の金属の炭化物、窒化物または炭窒化物から
なるPVD膜である第3層とを有し、第2の金型は、キ
ャビティ部分の表面にCrまたはNiからなるめっき膜
である第1層と、該第1層上にTi、Zr、Hf、V、
Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金
属の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるイオンプレ
ーティング膜であり、該第1層表面に対して垂直に配向
する膜と無配向する膜とが交互に重積した重積層とを有
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐摩耗性および耐食性に
優れたプラスチック成型用金型およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック成型用金型の摩耗を防止
し、寿命を延ばす手段として、めっき法やPVD法、C
VD法などにより金型の表面に硬質被膜を形成すること
が行なわれている。ここでは、硬質被膜として、めっき
法によりCrまたはNi被膜を、PVD法やCVD法な
どによりTi、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびCr
から選ばれる少なくとも1種の金属の炭化物、窒化物ま
たは炭窒化物からなる被膜を形成する。また、上記めっ
き被膜とPVD法やCVD法などによる被膜を組み合わ
せた2層膜を形成することも行われている。
【0003】これら硬質被膜を形成することにより金型
の耐摩耗性が向上し、金型が劣化するまでの寿命が延長
される。
【0004】しかし、上記硬質被膜には微小なピンホー
ルが存在するため、ある種のプラスチックの成型におい
てはそのピンホールから金型母材の腐食が進行し、硬質
被膜の下に空洞を作り、最終的に被膜の陥没、破壊に至
ることがある。腐食の原因は、プラスチック成型時に一
部プラスチック材料あるいは添加剤の熱分解にともなっ
て発生するHClやSOx 等の腐食性ガスにあり、この
熱分解は、特に射出成型時に溶融プラスチック流体中に
ガスが混入した場合にこのガスの断熱圧縮による局所的
な温度上昇により著しくなると考えられている。このよ
うな金型の腐食を引き起こす代表的な樹脂として、ポリ
アセタールや塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂やABS樹
脂(アクリルニトリル−ブタジェン−スチレン共重合
体)などが挙げられる。
【0005】また、硬質Crめっきでは最初から表面に
無数のクラックが生じており、腐食に対しては効果がな
い。Niめっきでは腐食対策として膜厚を厚くすること
により上記の微小なピンホールをなくすことが行われて
いるので、硬度が不足して、摩耗に対してあまり効果が
期待できないという問題がある。
【0006】さらに、めっき被膜とPVD膜あるいはC
VD被膜の2層膜では、硬質Crめっきの場合、耐摩耗
性はめっき被膜のみの場合より向上するものの、耐食性
は当該Crめっき表面のクラックが原因で効果が薄い。
Niめっきの場合、めっき層の厚みを厚くして耐食性は
向上させ得るものの、硬度が低いため上記硬質Crめっ
きの場合ほど耐摩耗性の向上は望めない。また、めっき
被膜との2層膜の場合、PVD膜あるいはCVD膜の成
膜条件によっては膜剥離を生じ、耐摩耗性を損なうこと
がある。この原因としては、めっき被膜表面にめっき処
理時に生成した酸化膜あるいは汚れがPVD処理あるい
はCVD処理前のクリーニングで十分除去できなかった
場合やその酸化膜や汚れを除去する目的で表面を研磨し
た際にめっき表面に歪みを生じ、これがPVD処理ある
いはCVD処理時の熱履歴によって解放され剥離を引き
起こすことが知られている。
【0007】一方、金型の材料自身に、より腐食に強い
ステンレス系の金属を用いることも行われているが、こ
の場合には金型の硬度が不足し、摩耗が起こりやすいと
いう問題がある。
【0008】以上の事情からプラスチック成型用金型表
面の被膜の改善、即ち耐摩耗性と共に耐食性にも優れた
被膜の開発が待たれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、上記事情に鑑み、より優れた耐食性および耐摩耗性
を有するプラスチック成型用金型およびその製造方法を
提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、第1の本発明のプラスチック成型用金型は、キャビ
ティ部分の表面に、CrまたはNiからなるめっき膜で
ある第1層と、該第1層上に設けられ、Ti、Zr、H
f、V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも
1種の金属からなるPVD膜である第2層と、該第2層
上に設けられ、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Taおよ
びCrから選ばれる少なくとも1種の金属の炭化物、窒
化物または炭窒化物からなるPVD膜である第3層とを
有し、第2の本発明のプラスチック成型用金型は、キャ
ビティ部分の表面にCrまたはNiからなるめっき膜で
ある第1層と、該第1層上にTi、Zr、Hf、V、N
b、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金属
の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるイオンプレー
ティング膜であり、該第1層表面に対して垂直に配向す
る膜(以下、垂直配向膜と称する)と無配向する膜(以
下、無配向膜と称する)とが交互に重積した重積層とを
有するものである。
【0011】また、第1の本発明方法は、キャビティ部
分の表面に、CrまたはNiからなる第1層をめっき法
で形成し、次に、該第1層上にTi、Zr、Hf、V、
Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金
属からなる第2層と、該第2層上にTi、Zr、Hf、
V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種
の金属の炭化物、窒化物または炭窒化物からなる第3層
とをPVD法で形成することからなり、第2の本発明方
法は、キャビティ部分の表面にCrまたはNiからなる
第1層をめっき法で形成し、次に、該第1層上におい
て、イオンプレーティング法でバイアス電圧の印加と非
印加とを交互に行なって、Ti、Zr、Hf、V、N
b、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金属
の炭化物、窒化物または炭窒化物からなり垂直配向膜と
無配向膜とが交互に重積した重積層を形成することから
なるものである。
【0012】
【作用】第1の本発明のプラスチック成型用金型の母材
の材質は、一般に使用されているダイス鋼などの鉄鋼材
料でよい。この金型母材のキャビティ部分の表面にCr
またはNiからなるめっき膜である第1層が形成され
る。
【0013】この第1層の厚みは、10〜100μmが
好ましく、30〜70μmがより好ましい。厚みが10
μm未満ではクラックやピンホールなどのため充分な耐
食性が得られず、一方、100μmを超えると金型のキ
ャビティのエッジ部に膨れを形成し易く、成型品の寸法
精度に問題を生じ易くなる。
【0014】次に、この第1層上にTi、Zr、Hf、
V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少くとも1種の
金属からなるPVD膜である第2層を下記第3層との間
に介在させる。このPVD膜は、イオンプレーティング
法、スパッタリング法、蒸着法などのPVD法によって
形成された膜である。この第2層の介在によってプラス
チック成型用金型に優れた耐摩耗性および耐食性が与え
られる。これは、次のように考えられる。即ち、Crま
たはNiからなる第1層の表面に生じ、それを通して金
型母材が腐食されるクラックやピンホールがこの第2層
を形成する金属により埋められるため金型母材が使用雰
囲気である腐食性の気体や液体と遮断される。また、そ
のため上記第1層の厚みを厚くする必要がなくなるの
で、硬度の低下による耐摩耗性の低下も解消される。さ
らに、この第2層が、第1層表面に生じた歪みが後の処
理時の熱履歴によって解放されて引き起こされる前記剥
離に対して緩衝層として作用すると考えられる。この作
用効果は、第1層が無電解Niめっきの場合に著大であ
る。
【0015】この第2層の厚みは、0.5〜2μmが好
ましく、1〜2μmがより好ましい。厚みが0.5μm
未満では第1層のクラックやピンホールを埋める上記作
用が希薄で充分な耐食性が得られないと共に、緩衝層と
しての上記作用も充分でなく、一方、2μmを超えると
被膜全体の硬度が低下し、耐摩耗性が低下し易い。
【0016】さらに、第2層上にTi、Zr、Hf、
V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種
の金属の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるPVD
膜である第3層が形成される。このPVD膜も、イオン
プレーティング法、スパッタリング法、蒸着法などのP
VD法によって形成された膜である。なお、この第3層
は後述する垂直配向膜であっても無配向膜であってもよ
いが、表面がより硬質になる点で垂直配向膜の方が好ま
しい。また、この層の厚みは、2〜5μmが好ましい。
厚みが2μm未満では、金型使用時の面圧に耐えるべき
硬質膜としての機械的特性が得られず、一方5μmを超
えると被膜全体の脆性が増大し、機械的特性を損ない易
い。
【0017】次に、第2の本発明のプラスチック成型用
金型について説明する。母材およびこの母材のキャビテ
ィ部分の表面に形成される第1層については第1の本発
明の金型と同様である。
【0018】この第1層上に、Ti、Zr、Hf、V、
Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金
属の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるイオンプレ
ーティング膜である重積層が形成される。この重積層
は、垂直配向膜と無配向膜とが交互に重積したものであ
る。垂直配向膜は無配向膜より硬質であり耐摩耗性の向
上に寄与する。また、無配向膜は、垂直配向膜よりピン
ホールが少ないため上記第1層や垂直配向膜のピンホー
ルの影響を減少させるように作用すると共に、残留応力
はほとんどないため垂直配向膜中の残留応力に起因する
応力腐食割れを回避するように作用して耐食性の向上に
寄与する。従って、第1層側で無配向膜から始まるのが
好ましく、また、第1層と反対側では、表面がより硬質
になる点で垂直配向膜で終るのが好ましい。
【0019】交互に重積される垂直配向膜と無配向膜と
は夫々1膜以上あれば、特に膜数に制限はない。しか
し、垂直配向膜の厚みの合計は、2〜5μmが好まし
く、3〜5μmがより好ましい。厚みが2μm未満で
は、金型使用時の面圧に耐えるべき硬質膜としての機械
的特性が得られず、一方、5μmを超えると被膜全体の
脆性が増大し、機械的特性を損ない易い。また、無配向
膜の厚みの合計は、0.5〜2μmが好ましく、1〜2
μmがより好ましい。厚みが0.5μm未満では、ピン
ホールの影響を減少させると共に応力腐食割れを回避す
る上記作用が希薄で充分な耐食性が得られず、一方、2
μmを超えると被膜全体の硬度が低下し、耐摩耗性が低
下し易い。
【0020】第1の本発明のプラスチック成型用金型の
製造方法は、前記第1の本発明の金型を製造する方法で
ある。まず、キャビティ部分の表面にCrまたはNiか
らなる第1層をめっき法で形成する。このめっき法は、
CrまたはNiの電解めっき法、無電解めっき法など公
知のものを使用することができる。
【0021】次に、必要に応じ、この第1層表面の汚
れ、酸化物を除去し、また平滑性を向上させるためにバ
フ研磨などの処理をした後、第1層上にPVD法、好ま
しくはイオンプレーティング法でTi、Zr、Hf、
V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種
の金属からなる第2層を形成する。PVD法は、前記種
々の方法の中、バイアス電圧を印加したり、しなかった
りして配向の制御を行う上でイオンプレーティング法が
好ましい。
【0022】本発明において、上記第2層をイオンプレ
ーティング法で形成するに先立ち金属イオン照射により
金型母材の加熱を行なう場合、金属イオンを加速する電
界は負バイアス電圧の値として500〜2000Vが好
ましく、800〜1500Vがより好ましい。そして、
第2層を形成する際は、この層を構成する金属を蒸発源
に用いて真空下で金属の蒸発、イオン化を行ない、イオ
ン化した金属を負バイアス電圧の値として好ましくは0
〜500V、より好ましくは0〜200Vとする電界中
で加速すればよい。
【0023】さらに、第2層上にPVD法、好ましくは
イオンプレーティング法でTi、Zr、Hf、V、N
b、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金属
の炭化物、窒化物または炭窒化物からなる第3層を形成
する。この層をイオンプレーティング法で形成する際、
層を構成する金属を蒸発源に用い、反応性ガスとしてN
i、NH3 、炭化水素、(CH33Nなどの窒素を含ん
だ有機化合物などを用いることができる。反応性ガスの
圧力は、通常10-3〜10Torrの範囲内で適宜選択
すればよい。この層を形成する場合の負バイアス電圧
は、50〜700Vが好ましく、100〜500Vがよ
り好ましい。また、時間は30〜40分が好ましい。
【0024】第2の本発明のプラスチック成型用金型の
製造方法は、前記第2の本発明の金型を製造する方法で
ある。まず、第1の本発明の方法と同様に、キャビティ
部分の表面にCrまたはNiからなる第1層をめっき法
で形成する。
【0025】次に、必要に応じ前記と同様、バフ研磨な
どの処理をした後、第1層上にイオンプレーティング法
でバイアス電圧を印加するのと印加しないのとを交互に
行なって、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびC
rから選ばれる少なくとも1種の金属の炭化物、窒化物
または炭窒化物からなり垂直配向膜と無配向膜とが交互
に重積してなる重積層を形成する。垂直配向膜は金型に
負バイアス電圧を印加して成膜され、無配向膜は負バイ
アス電圧を印加せずに成膜される。印加する負バイアス
電圧は、500〜2000Vが好ましく、800〜15
00Vがより好ましい。また、印加する時間は合計で2
0〜40分が好ましい。
【0026】
【実施例】
(実施例1)材質がSKD11ダイス鋼(ビッカース硬
度Hv=850)の金型のキャビティ部分の表面を電解
脱脂で表面の汚れを除去して水ぬれをよくした後、クロ
ム酸350g/l、硫酸1g/l、ケイフッ酸16g/
lなる組成の電解液を使用し、温度35℃、陰極電流密
度5A/dm2 の条件で1分間電解することにより第1
層として硬質Crめっき層を形成した。次に、この第1
層をバフ研磨し、エタノール中超音波洗浄した後、第1
層上にイオンプレーティング法で次のようにTiからな
る第2層を形成した。即ち、Tiカソードを備えたカソ
ードアーク方式のイオンプレーティング装置内に金型を
セットし、反応容器内を10-5Torrまで排気した
後、金型に1000Vの負バイアス電圧を印加し、Ti
カソードより放電電流60Aのアーク放電を2分間続け
ることにより第1層表面のスパッタクリーニングを行な
った。このアーク放電中、第1層の表面温度を赤外放射
温度計により監視し、その温度が最高250℃まで上昇
したことを観測した。その後、負バイアス電圧を150
Vまで下げて30分間Ti層を形成した。
【0027】さらに、第2層上にイオンプレーティング
法で次のようにTiNからなる第3層を形成した。即
ち、Tiカソードへの電圧印加を停止し、反応容器内に
窒素ガスを導入し、該容器内の圧力を3×10-2Tor
rに保つように窒素ガスを流しながら金型に250Vの
負バイアス電圧を印加し、Tiカソードより放電電流6
0Aのアーク放電を1時間続けた。
【0028】製造された金型の被膜の厚みをボールクレ
ーター法によって測定した結果(以後も、被膜の厚みの
測定は特記しない限りこの方法による)、第1層のCr
層が56μm、第2層のTi層が1.3μm、第3層の
TiN層が3.5μmであった。
【0029】次に、この金型の耐久性試験を次のように
行なった。即ち、この金型を使用して、難燃材を添加し
たABS樹脂を200℃の温度、1200kg/cm2
の圧力で射出成型した。その結果、200,000ショ
ットを行なっても金型に腐食点は観察されず、なお、成
型は可能であった(この結果は、実施例2〜8も同様で
ある)。
【0030】(実施例2)材質がSKD11ダイス鋼
(ビッカース硬度Hv=850)の金型のキャビティ部
分の表面を電解脱脂で表面の汚れを除去して水ぬれをよ
くした後、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリ
ウム10g/l、ヒドロキシ酢酸ナトリウム50g/l
なる組成で、温度90℃の無電解Niめっき液中に2時
間浸漬して形成した被膜を342℃で2時間熱処理しN
3 Pを析出させることにより第1層としてNiめっき
層を形成した。
【0031】次に、この第1層をバフ研磨し、エタノー
ル中超音波洗浄した後、第1層上にイオンプレーティン
グ法で次のようにCrからなる第2層を形成した。即
ち、CrカソードとTiカソードを備えたカソードアー
ク方式のイオンプレーティング装置内に金型をセット
し、反応容器内を10-5Torrまで排気した後、金型
に1000Vの負バイアス電圧を印加し、Crカソート
とTiカソードより放電電流60Aのアーク放電を2分
間続けることにより第1層表面のスパッタクリーニング
を行なった。このアーク放電中、第1層の表面温度を赤
外放射温度計により監視し、その温度が最高250℃ま
で上昇したことを観測した。その後、負バイアス電圧を
0Vまで下げて30分間Cr層を形成した。
【0032】さらに、第2層上にイオンプレーティング
法で次のようにTiNからなる第3層を形成した。即
ち、Crカソードへの電圧印加を停止し、反応容器内に
窒素ガスを導入し、該容器内の圧力を3×10-2Tor
rに保つように窒素ガスを流しながら金型に250Vの
負バイアス電圧を印加し、Tiカソードより放電電流6
0Aのアーク放電を1時間続けた。
【0033】製造された金型の被膜の厚みは、第1層の
Ni層が45μm、第2層のCr層が1.1μm、第3
層のTiN層が3.2μmであった。
【0034】(実施例3)第1層としてのNiめっき層
を、硫酸ニッケル130g/l、塩化アンモニウム15
g/l、ホウ酸15g/lなる組成の電解液を使用し、
温度40℃、陰極電流密度0.5A/dm2 の条件で1
分間電解することにより形成した以外は、実施例2と同
様に試験した。
【0035】製造された金型の被膜の厚みは、第1層の
Ni層が45μm、第2層のCr層が1.1μm、第3
層のTiN層が3.2μmであった。
【0036】(比較例1)第1層として硬質Crめっき
層を形成した後、第2層および第3層を形成することな
く金型とした以外は、実施例1と同様に試験した。
【0037】その結果、第1層のCr層の厚みは53μ
mであった。また、耐久性試験では、6,000ショッ
ト後金型表面のクラック部分で腐食が進行しているのが
観察され、20,000ショットで成型品の表面状態の
不良のため成型不能となった。
【0038】(比較例2)第1層としてNiめっき層を
形成した後、第2層および第3層を形成することなく金
型とした以外は、実施例2と同様に試験した。
【0039】その結果、第1層のNi層の厚みは65μ
mであった。また、耐久性試験では、35,000ショ
ットで成型品の表面状態の不良のため成型不能となっ
た。なお、その時点で金型に腐食点は観察されなかっ
た。
【0040】(比較例3)材質がSKD11ダイス鋼
(ビッカース硬度Hv=850)の金型のキャビティ部
分の表面を電解脱脂で表面の汚れを除去して水ぬれをよ
くした後、イオンプレーティング法で次のようにTiN
からなる第1層を形成した。即ち、Tiカソードを備え
たカソードアーク方式のイオンプレーティング装置内に
金型をセットし、反応容器内を10-5Torrまで排気
した。その後、Tiカソードへの電圧印加を停止し、反
応容器内に窒素ガスを導入し、該容器内の圧力を3×1
-2Torrに保つように窒素ガスを流しながら金型に
250Vの負バイアス電圧を印加し、Tiカソードより
放電電流60Aのアーク放電を1時間続けた。そして、
このまま金型とした。
【0041】その結果、第1層のTiN層の厚みは3.
5μmであった。また、耐久性試験では、10,000
ショット後金型表面上に腐食点が散在しているのが観察
され、20,000ショットで被膜の剥離が生じ始め、
22,000ショットで使用不能となった。
【0042】(比較例4)実施例1と同様に第1層をバ
フ研磨し、エタノール中超音波洗浄するまで行なった
後、Tiからなる第2層を形成せず、実施例1と同様に
スパッタクリーニング、TiNからなる第2層の形成以
後を行なった。
【0043】製造された金型の被膜の厚みは、第1層の
Cr層が1.1μm、第2層のTiN層が3.1μmで
あったが、この金型の表面にはエッジ部に応力の集中に
よると考えられる微小な剥離が観察されたので、耐久試
験は行なわなかった。
【0044】(比較例5)材質がSKD11ダイス鋼
(ビッカース硬度Hv=850)の金型をそのまま耐久
性試験に供した。その結果、2000〜3000ショッ
トで金型表面に腐食部分が観察され始め、15,000
ショットで成型品の表面状態の不良のため成型不能とな
った。
【0045】(実施例4)実施例2と同様に第1層とし
てNiめっき層を形成するまで行なった後、イオンプレ
ーティング法でTiNからなる無配向膜と垂直配向膜と
を重積させた重積層を次のようにして形成した。即ち、
Tiカソードを備えたカソードアーク方式のイオンプレ
ーティング装置内に金型をセットし、反応容器内を10
-5Torrまで排気した。その後、金型に1000Vの
負バイアス電圧を印加し、Tiカソードより放電電流6
0Aのアーク放電を2分間続けることにより第1層表面
のスパッタクリーニングを行なった。このアーク放電
中、第1層の表面温度を赤外放射温度計により監視し、
その温度が最高250℃まで上昇したことを観測した。
次に、Tiカソードへの電圧印加を停止し、反応容器内
に窒素ガスを導入し、該容器内の圧力を3×10-2To
rrに保つように窒素ガスを流しながら金型に負バイア
ス電圧を印加せず、Tiカソードより放電電流60Aの
アーク放電を20分間続けることにより無配向膜を形成
した。さらに、金型に500Vのバイアス電圧を印加し
て該放電を40分間続けることにより垂直配向膜を形成
した。
【0046】製造された金型の被膜の厚みは、第1層の
Ni層が55μm、重積層が4.2μmであった。ま
た、薄膜X線法によって測定すると、無配向膜は1.4
μm、垂直配向膜は2.8μmであった(以後も、無配
向膜と垂直配向膜の厚みの測定はこの方法による)。
【0047】(実施例5)実施例2と同様に第1層とし
てNiめっき層を形成するまで行なった後、イオンプレ
ーティング法でTiNからなる垂直配向膜と無配向膜と
垂直配向膜とを重積させた重積層を次のようにして形成
した。即ち、実施例3のようにスパッタクリーニングを
行なった後、アーク放電を続ける時間を3膜のいずれの
膜形成においても20分間とした以外は実施例3のよう
に垂直配向膜と無配向膜を形成した。
【0048】製造された金型の被膜の厚みは、第1のN
i層が43μm、重積層が4.3μm(製膜順に垂直配
向膜1.5μm、無配向膜1.4μm、垂直配向膜1.
4μm)であった。
【0049】(実施例6)実施例4と同様にTiNから
なる無配向膜と垂直配向膜とを重積させた後、もう1回
繰り返して無配向膜と垂直配向膜とを重積させた重積層
を形成した。但し、アーク放電を続ける時間を4膜のい
ずれの膜形成においても15分間とした以外は実施例4
のように無配向膜と垂直配向膜を形成した。
【0050】製造された金型の被膜の厚みは、第1のN
i層が42μm、重積層が3.8μm(製膜順に無配向
膜1.0μm、垂直配向膜1.0μm、無配向膜0.9
μm、垂直配向膜1.0μm)であった。
【0051】(実施例7)実施例2と同様にして第1層
のNiめっき層をバフ研磨し、エタノール中超音波洗浄
するまで行なった後、反応性ガスとしてアセチレンガス
を使用した以外は実施例4と同様にして、TiCからな
る無配向膜と垂直配向膜とを重積させた重積層を形成し
た。
【0052】製造された金型の被膜の厚みは、第1層の
Ni層が42μm、重積層が3.9μm(無配向膜1.
3μm、垂直配向膜2.6μm)であった。
【0053】(実施例8)実施例2と同様にして第1層
のNiめっき層をバフ研磨し、エタノール中超音波洗浄
するまで行なった後、反応性ガスとして窒素ガスとアセ
チレンガスの混合ガスを使用した以外は実施例5と同様
にして、TiCNからなる垂直配向膜と無配向膜と垂直
配向膜とを重積させた重積層を形成した。
【0054】製造された金型の被膜の厚みは、第1のN
i層が53μm、重積層が4.2μm(製膜順に垂直配
向膜1.4μm、無配向膜1.4μm、垂直配向膜1.
4μm)であった。
【0055】
【発明の効果】以上から明らかなように、本発明は、優
れた耐食性および耐摩耗性を有するプラスチック成型用
金型およびその製造方法を提供することができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キャビティ部分の表面に形成され、Cr
    またはNiからなるめっき膜である第1層と、該第1層
    上に形成され、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Taおよ
    びCrから選ばれる少なくとも1種の金属からなるPV
    D膜である第2層と、該第2層上に形成され、Ti、Z
    r、Hf、V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少な
    くとも1種の金属の炭化物、窒化物または炭窒化物から
    なるPVD膜である第3層とを有するプラスチック成型
    用金型。
  2. 【請求項2】 第1層の厚さが10〜100μm、第2
    層の厚さが0.5〜2μm、第3層の厚さが2〜5μm
    である請求項1記載のプラスチック成型用金型。
  3. 【請求項3】 キャビティ部分の表面に形成され、Cr
    またはNiからなるめっき膜である第1層と、該第1層
    上に形成され、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Taおよ
    びCrから選ばれる少なくとも1種の金属の炭化物、窒
    化物または炭窒化物からなるイオンプレーティング膜で
    あり、該第1層表面に対して垂直に配向する膜と無配向
    する膜とが交互に重積した重積層とを有するプラスチッ
    ク成型用金型。
  4. 【請求項4】 第1層の厚さが10〜100μm、該第
    1層表面に対して垂直に配向する膜の厚さの合計が2〜
    5μm、無配向する膜の厚さの合計が0.5〜2μmで
    ある請求項3記載のプラスチック成型用金型。
  5. 【請求項5】 キャビティ部分の表面にCrまたはNi
    からなる第1層をめっき法で形成し、次に、該第1層上
    にTi、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびCrから選
    ばれる少なくとも1種の金属からなる第2層をPVD法
    で形成し、さらに、該第2層上にTi、Zr、Hf、
    V、Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種
    の金属の炭化物、窒化物または炭窒化物からなる第3層
    をPVD法で形成することからなるプラスチック成型用
    金型の製造方法。
  6. 【請求項6】 PVD法はイオンプレーティング法であ
    る請求項5記載のプラスチック成型用金型の製造方法。
  7. 【請求項7】 キャビティ部分の表面にCrまたはNi
    からなる第1層をめっき法で形成し、次に、該第1層上
    において、イオンプレーティング法でバイアス電圧の印
    加と非印加とを交互に行って、Ti、Zr、Hf、V、
    Nb、TaおよびCrから選ばれる少なくとも1種の金
    属の炭化物、窒化物または炭窒化物からなり該第1層表
    面に対して垂直に配向する膜と無配向する膜とが交互に
    重積した重積層を形成することからなるプラスチック成
    型用金型の製造方法。
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