JPH08110794A - 信号分離方法 - Google Patents

信号分離方法

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JPH08110794A
JPH08110794A JP6245448A JP24544894A JPH08110794A JP H08110794 A JPH08110794 A JP H08110794A JP 6245448 A JP6245448 A JP 6245448A JP 24544894 A JP24544894 A JP 24544894A JP H08110794 A JPH08110794 A JP H08110794A
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signals
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separation method
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政樹 江口
Fumio Kokubo
文雄 小久保
Masayuki Miyamoto
雅之 宮本
Hiroaki Niwamoto
浩明 庭本
Tatsuya Nomura
竜也 野村
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 位相ズレのある場合でも精度の良い信号の分
離が可能で、かつエコーを生じない信号分離方法を提供
することを目的とする。 【構成】 各検出信号e1(t)とe2(t)は、適応フ
ィルタ37と38を介して抑制し合う信号分離フィルタ
200に入力される。この信号分離フィルタ200の出
力である分離信号s1(t)とs2(t)は抑制相手に対
応した各適応フィルタ37或いは38を介して、各検出
信号e1(t)或いはe2(t)から減算器25或いは2
6で減算される。また、各適応フィルタ37と38に対
してフィルタ係数調整部39と40が設けられ、抑制相
手の分離信号s1(t)とs2(t)のパワーを最小にす
るように適応フィルタ37と38のフィルタ係数が逐次
調整される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種通信システムや音
声認識システム等の音声入力装置における周囲雑音除去
や話者分離、あるいは生体電気信号計測時の信号源の分
離等のように、各種物理量検出時に雑音の中から信号成
分を分離する信号分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、複数の入力信号を動的に処理し
て、例えば静音化や消音等を図る技術、即ち信号分離方
法の発表が多くなされている。以下にこのような技術の
例につき説明する。なお、以下の例では扱う信号は全て
音声信号とする。
【0003】図8は、そのような信号分離方法の一例を
示すものであり、本発明の信号分離方法の第1の従来例
を表すブロック図である。同図において、1はH−J
(Herault−Jutten)ネットワーク、2は
信号伝播経路、3は重み付き加算器、4はゲイン係数調
整部である。
【0004】I個の信号源からの音声信号x1(t)、
2(t)、・・・、xI(t)は、信号伝播経路2を介
してそれぞれI個の検出信号e1(t)、e2(t)、・
・・、eI(t)として検出され、H−Jネットワーク
1内で処理されて、分離信号s1(t)、s2(t)、・
・・、sI(t)として出力される。
【0005】ここで、上述の信号伝播経路2は、次式で
与えられる伝達特性を有しているとする。
【0006】 E(t)=G・X(t) (1) ここに、E(t)=[e1(t)、e2(t)、・・・、
I(t)]T、X(t)=[x1(t)、x2(t)、・
・・、xI(t)]T、Gは逆行列G-1が存在するI行I
列の定数行列である。なお、[・・・]Tは転置を表
し、行列Gの各要素をgijとする。
【0007】(1)式のような静的な(時間変化のない
一様な)伝達特性を表す行列Gの各要素gijは、物理的
には、音声信号x1(t)、x2(t)、・・・、x
I(t)が信号伝播経路2において減衰して混合しあう
量を表している。従って、以下、行列Gの各要素g
ijを、「減衰量gij」と呼ぶ。
【0008】さて、このような信号伝播経路2を介して
信号検出手段(図示せず)において、検出信号E(t)
(=[e1(t)、e2(t)、・・・、eI(t)]T
として観測されるとき、H−Jネットワーク1の出力で
ある分離信号s1(t)、s2(t)、・・・、s
I(t)は、ベクトル表現を用いて、次式で与えられ
る。
【0009】 S(t)=E(t)−C・S(t) (2) =[I+C]-1G・X(t) ここに、行列Cはゲイン係数cij(但し、cii=0)を
要素とするI行I列の行列であり、IはI行I列の単位
行列である。なお、S(t)=[s1(t)、s
2(t)、・・・、sI(t)]Tである。
【0010】式(2)より、行列CのI・(I−1)個
の要素が計算できるならば、音声信号X(t)(=[x
1(t)、x2(t)、・・・、xI(t)]T)は、復元
することができ、各々の分離信号si(t)は、ただ1
つのxi(t)に比例することになる。この式(2)を
書き下すと、次式(3)のようになる。
【0011】
【数5】
【0012】さて、説明を簡略化するためI=2とし
て、2入力2出力のH−Jネットワークを例示する。図
9はそのような場合のH−Jネットワークを表してい
る。なお同図において、図8の重み付き加算器3は、加
算器5および乗算器6によって構成されている。
【0013】このとき、式(2)は、
【0014】
【数6】
【0015】で表され、ゲイン係数cijが次式(5)、
(6)の関係が成立すれば、分離信号siは音声信号xi
に一次比例する。
【0016】
【数7】
【0017】のとき、s1=g111、s2=g222を得
る。または、
【0018】
【数8】
【0019】のとき、s1=g122、s2=g211を得
る。
【0020】即ち、予め音声信号xiが信号検出手段に
至る間の減衰量gijが分かれば、ゲイン係数cijを式
(5)もしくは式(6)で算出し、式(3)に代入する
ことにより、音声信号xiに一次比例する分離信号si
得ることができるというものである。
【0021】なお、行列Gが未知の場合には、音声信号
iが互いに独立かつ、分離信号siも互いに独立である
と仮定し、ゲイン係数cijを次のようにして推定する。
【0022】また、分離信号siの各々のパワー(電
力)を最小にするようにゲイン係数cijを調整すること
で上述の推定は達成でき、ゲイン係数cijは勾配法を用
いて次の式(7)で調整される。
【0023】
【数9】
【0024】ここに、εは学習(上述の調整過程)の効
率を定める正の小さな値であり、関数f1()とf2()
はcji≠cijとするために導入された互いに異なる奇関
数である。
【0025】さて、以上のような理論以外にも、例えば
騒音環境下で音楽や音声ソースを入力するときの騒音除
去技術として、以下の2つの方式が提案されている。図
10はそのような信号分離方法の第2の従来例を表すブ
ロック図である。同図において、7は音声信号x1を入
力するための第1のマイクロフォン、8は騒音信号x2
を入力するための第2のマイクロフォンである。9は適
応フィルタ、10は減算器である。
【0026】第1のマイクロフォン7では、音声信号x
1と、騒音信号x2が第1のマイクロフォン7まで伝播し
た信号x2 *が混合されて検出され、検出信号e1として
出力される。第2のマイクロフォン8は、その入力が主
として騒音信号x2となるような位置に配置され、検出
信号e2(≒x2)を得る。これら検出信号e1とe2は、
適応フィルタ9に入力される。適応フィルタ9の出力y
を検出信号e1から減算器10で減算することにより、
検出信号e1から騒音成分x2を除去した信号s1を得る
というものである。
【0027】このような騒音除去は、音声信号x1と騒
音信号x2が独立であると仮定し、信号s1のパワーを最
小にするよう適応フィルタ9の伝達特性を調整すること
により達成できる。
【0028】このような適応フィルタ9は、式(8)で
表されるような漸化式から成る有限インパルス応答(以
下「FIR」と略す)ディジタルフィルタで与えられ
る。
【0029】
【数10】
【0030】ここに、Kはフィルタ段数である。なお、
フィルタ係数ak(n)は、(9)式の漸化式で表され
る最小二乗法アルゴリズムで調整される。
【0031】 ak(n+1)=ak(n)+εs1(n)e2(n−k) (9) ここに、εは最小二乗法アルゴリズムによる学習の効率
を定める正の小さな値である(例えば、特開平5−22
392号公報あるいは特開平6−118967号公報な
ど)。
【0032】さて、図11は第3の従来例における信号
分離方法を用いた音声会議システムの話者選択システム
のブロック略図である。同図において、11と12はマ
イクロフォン、13と14は可変遅延器、15は遅延時
間設定部、16は加算器であり、マイクロフォン11と
12という2本のマイクロフォンを設置して、位置A、
B、Cに居る話者の音声を検出しようというものであ
る。
【0033】Aに位置する話者の音声を強調するには、
位置Aからマイクロフォン11に至る音波伝播時間t1
と、位置Aからマイクロフォン12に至る音波伝播時間
2を予め計測しておき、これらの時間差をそれぞれ可
変遅延器13と14で補正し、位置Aの話者の音声波形
と同相にして可変遅延器13と14から出力する。この
例では、遅延時間設定部15により可変遅延器13には
(t2−t1)が、また可変遅延器14には遅延時間0が
設定される。この2つの出力を加算器16で加算するこ
とにより、位置Aの話者の音声は強調されるというもの
である(例えば特開平5−158492号公報など)。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以上の
ような3つの従来の信号分離方法では、それぞれ以下の
ような問題点があった。
【0035】即ち、第1の従来例において示したH−J
ネットワークでは、式(1)から明らかなように行列G
は定数行列であるから、音源から発した音声信号x
i(t)が信号検出手段によって検出されるまでの時間
差による位相のズレが考慮されていないため、ほとんど
の場合、実用に耐えないという問題点がある。
【0036】例えば、図8のように2つの音源から音波
が発せられる場合を例にとると、2つの音源から信号伝
播経路2において伝わる音の強さは、障壁がなければ伝
播する距離に単純に反比例するから、音声信号x1とx2
から検出信号e1(t)とe2(t)を得るまでの距離を
位相のズレをなくすためには、等距離にしなければなら
ないことになる。ところが等距離とすると、音源から発
せられた音波が検出手段で検出されるときには、2つの
音源からの音波が混合される割合は同一となってしま
う。これでは、式(1)の行列Gには逆行列が存在しな
くなり、信号分離が行えなくなってしまうのである。現
実の環境では、位相のズレが無視できるほど小さく、し
かも音声信号x1とx2の混合の割合が十分異なるように
して検出信号e1とe2が得られる場合は、殆ど存在しな
いのである。
【0037】更にまた、第1の従来例では、式(1)に
おいて行列Gが定数行列であることから明らかなよう
に、音声信号xi(t)は、その信号伝播経路2におい
て、全ての周波数成分が一様な減衰を仮定しており、減
衰の周波数特性が一様でないときには信号分離の効果が
劣化するという問題点もある。
【0038】また第2の従来例では、適応フィルタ5に
おいて、位相と減衰の周波数特性が考慮されてはいる
が、騒音信号x2を検出する第2のマイクロフォン4で
は、音声信号x1が検出されないか、あるいは騒音信号
2に較べて十分に小さいという仮定が存在している。
これにより、第2のマイクロフォン4でも音声信号x1
が検出される場合には、出力信号s1にはエコーを生じ
てしまうという問題点がある。
【0039】また、このようなエコーが生じるため、適
応フィルタ5の適応過程において利用している信号s1
のパワーの最小化が、騒音成分のパワーを最小化するこ
ととは必ずしも一致しないという問題点もある。
【0040】更にまた、第3の従来例では、2つのマイ
クロフォン11と12で検出される音声信号において、
選択した話者の音声信号を同相にして加算するので、選
択した話者の音声についてはエコーを生じることがない
が、他の話者の音声を十分に除去できないという問題点
がある。また、可変遅延器13と14に与える遅延時間
を適応的に調整する手段を有していないため、話者の位
置が固定されるという問題点もある。
【0041】本発明は上記問題点に鑑み成されたもので
あり、位相ズレのある場合でも精度の良い信号の分離で
あり、かつエコーを生じない信号分離方法を提供するこ
とを目的とする。
【0042】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の信号分離方法は、時刻tにおいて、複数の
信号源から発せられた原信号xi(t)(但しi=1,
2,・・・,I)が所定の伝達特性を有する複数の経路
で混合されて伝播し、複数の信号検出手段において検出
信号ei(t)として検出されるとき、これら検出信号
i(t)から混合前の上記原信号xi(t)を推定し、
分離信号si(t)として分離するための信号分離方法
において、上記伝達特性に応じて決定される、所定のゲ
イン係数cij(t)と所定の遅延時間dij(t)を用い
て、上記分離信号si(t)を、
【0043】
【数11】
【0044】なる式によって導出することを特徴とする
ものである。
【0045】また、請求項2の方法では、上記遅延時間
ij(t)は、上記検出信号ei(t)と上記分離信号
i(t)の間の相互相関関数を用いて、両者の相関が
高くなるように逐次的に調整され、上記ゲイン係数cij
(t)は、各々対応する上記分離信号si(t)のパワ
ーを最小化するよう逐次的に調整されることを特徴とす
るものである。
【0046】また、請求項3の方法では、時刻tにおい
て、複数の信号源から発せられた原信号xi(t)(但
しi=1,2,・・・,I)が所定の伝達特性を有する
複数の経路で混合されて伝播し、複数の信号検出手段に
おいて検出信号ei(t)として検出されるとき、これ
ら検出信号ei(t)から混合前の上記原信号xi(t)
を推定し、分離信号si(t)として分離するための信
号分離方法において、上記伝達特性のインパルス応答に
応じて決定されるフィルタ係数aijk(t)(但しk=
0,1,・・・、K−1)と所定の離散時間Tを用い
て、上記分離信号si(t)を、
【0047】
【数12】
【0048】なる式によって導出することを特徴とする
ものである。
【0049】また、請求項4の方法では、上記フィルタ
係数aijk(t)は、εijを任意の正の小さな値とした
とき、上記分離信号si(t)のパワーを最小化するよ
う、
【0050】
【数13】
【0051】なる式に従って逐次的に調整されることを
特徴とするものである。
【0052】また、請求項5の方法では、時刻tにおい
て、複数の信号源から発せられた原信号xi(t)(但
しi=1,2,・・・,I)が所定の伝達特性を有する
複数の経路で混合されて伝播し、複数の信号検出手段に
おいて検出信号ei(t)として検出されるとき、これ
ら検出信号ei(t)から混合前の上記原信号xi(t)
を推定し、分離信号si(t)として分離するための信
号分離方法において、上記伝達特性のインパルス応答に
応じて決定される関数gij(t)を用いて、上記分離信
号si(t)を、
【0053】
【数14】
【0054】なる式によって導出することを特徴とする
ものである。
【0055】
【作用】請求項1の方法によれば、I=2としたとき、
障害物の無い自由空間に置かれた2つの音源から発せら
れる原信号x1(t)とx2(t)は、2つの信号検出手
段において、gijを音波がj番目の音源からi番目の信
号検出手段まで伝播する間の減衰量、τijをその伝播遅
延時間としたとき、i=1または2、j=1または2で
あるから、 e1(t)=g111(t−τ11)+g122(t−
τ12) e2(t)=g211(t−τ21)+g222(t−
τ22) なる検出信号e1(t)とe2(t)として検出され、遅
延時間をdij、ゲイン係数をcijとしたとき、 d12=τ12−τ2221=τ21−τ1111=g12/g2221=g21/g11 で与えると、分離信号s1(t)と原信号x1(t)の関
係は、 s1(t)−g111(t−τ11)=c1221(s1(t
−d12−d21)−g111(t−τ11−d12−d21)) となり、c1221<1であれば時間tの経過とともに s1(t)→g111(t−τ11) s2(t)→g222(t−τ22) というように漸近し、原信号x1(t)とx2(t)が分
離されることとなる。
【0056】また、請求項2の方法によれば、各原信号
i(t)が独立であると仮定し、各分離信号si(t)
に対する遅延時間dij(t)の決定に際して検出信号e
i(t)と分離信号sj(t)の相互相関関数Rij(d)
を次式に則り求め(E[]は期待値の演算を表す)、 Rij(d)=E[ei(t)sj(t−d)] 相関の最も高い遅延時間d(d≧0)を遅延時間d
ij(t)の推定値とすることとなる。また、ゲイン係数
ijの各々に対応する分離信号si(t)のパワーを最
小化するように逐次調整することにより、分離信号si
(t)は、互いに独立となり、信号分離が達成されるこ
ととなる。
【0057】また、請求項3の方法によれば、タップ係
数がフィルタ係数aijk(t)であるFIRディジタル
フィルタを構成し、分離信号si(t)の各周波数成分
について、請求項1におけるゲイン係数cij(t)およ
び遅延時間dij(t)が定義されたのと同様であると考
えることができるため、各々の周波数成分に対して原信
号x1(t)とx2(t)が分離されることとなる。
【0058】また、請求項4の方法によれば、各原信号
i(t)が互いに独立であるとき、
【0059】
【数15】
【0060】なる式を定義し、次式のようにsi 2(t)
をフィルタ係数aijk(t)で偏微分して勾配を求め、
【0061】
【数16】
【0062】この勾配方向と逆の方向に徐々に各フィル
タ係数aijk(t)を逐次的に調整し、各分離信号s
i(t)のパワーsi 2(t)の最小化を行われることと
なる。
【0063】また、請求項5の方法によれば、インパル
ス応答gij(t)を有するアナログフィルタを構成し、
分離信号si(t)の各周波数成分について、請求項1
におけるゲイン係数cij(t)および遅延時間d
ij(t)が定義されたのと同様であると考えることがで
きるため、各々の周波数成分に対して原信号x1(t)
とx2(t)が分離されることとなる。
【0064】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
ながら説明する。図1は、本発明の第1の実施例におけ
る信号分離方法を応用した装置のブロック図である。同
図において、17と18は音源、19と20はマイクロ
フォン、21と22は低域通過フィルタ、23と24は
アナログ・ディジタル変換器(以下「AD変換器」と略
す)、25と26は減算器、27と28は乗算器、29
と30は遅延器、31と32は相関器、33と34は遅
延時間調整部、35と36はゲイン係数調整部である。
【0065】なお、減算器25と26、乗算器27と2
8、遅延器29と30、相関器31と32、遅延時間調
整部33と34、およびゲイン係数調整部35と36
は、MIMO(多入力他出力)構造をもつ信号分離フィ
ルタ100を構成する。以上のように構成された本発明
の実施例につき、以下にその動作を説明する。
【0066】音源17と18から発せられた音波x
1(t)とx2(t)は、マイクロフォン19と20で検
出する。マイクロフォン19の出力は低域通過フィルタ
21においてエーリアシング防止のための帯域制限を施
し、AD変換器23において所定の標本化周期Tで標本
化し、検出信号e1(n)として出力する。マイクロフ
ォン20の出力は同様に、低域通過フィルタ22におい
てエーリアシング防止のための帯域制限を施し、AD変
換器24において所定の標本化周期Tで標本化し、検出
信号e2(n)として出力される。ここに、t=nTで
ある。
【0067】これら検出信号e1(n)とe2(n)は、
信号分離フィルタ100において、
【0068】
【数17】
【0069】なる演算がi=1,2について行い、分離
信号s1(n)、s2(n)を出力するものである。ここ
に、dij(t)=dnij(n)Tである。
【0070】この演算過程を図1のブロック図の構成で
の信号の流れに則り説明すると、分離信号s2(n)
は、遅延器30に入力され、遅延時間調整部34で設定
された遅延時間dn12(n)だけ遅延される。遅延器3
0は、乗算器28に信号s2(n−dn12(n))を出
力し、この信号s2(n−dn12(n))は、乗算器2
8においてゲイン係数c12(n)を乗ぜられ、加算器2
5において検出信号e1(n)から減算されて分離信号
1(n)として出力される。
【0071】一方、この分離信号s1(n)は、遅延器
29に入力され、遅延時間調整部33で設定された遅延
時間dn21(n)だけ遅延される。遅延器29は、乗算
器27に信号s1(n−dn21(n))を出力し、この
信号s1(n−dn21(n))は、乗算器27において
ゲイン係数c21(n)を乗ぜられ、加算器26において
検出信号e2(n)から減算されて分離信号s2(n)と
して出力される。
【0072】さて、上述の遅延時間dn12(n)は、次
のような過程で計算される。検出信号e1(n)と分離
信号s2(n)を相関器32に入力し、次式(11)に
おいてi=1、j=2として相互相関関数R12(d0
を求め、
【0073】
【数18】
【0074】遅延時間設定部34に出力する。ここに、
0はd0≧0であり、遅延時間dn12()の推定値であ
る。
【0075】遅延時間設定部34では、相互相関関数R
12(d0)の絶対値が最大となる遅延時間d0を選択し、
これを遅延時間dn12(n+1)として遅延器30に送
り、次回(n+1)のときの演算に使用する。
【0076】同様に、上述の遅延時間dn21(n)は、
次のような過程で計算される。検出信号e2(n)と分
離信号s1(n)を相関器31に入力し、上式(11)
に従って相互相関関数R21(d0)を求め、遅延時間設
定部33に出力する。遅延時間設定部33では、相互相
関関数R21(d0)の絶対値が最大となる遅延時間d0
選択し、これを遅延時間dn21(n+1)として遅延器
29に送り、次回(n+1)のときの演算に使用する。
【0077】また、上述のゲイン係数c12(n)は、次
のような過程で計算される。分離信号s1(n)と遅延
器30の出力信号s2(n−dn12(n))がゲイン係
数調整部36に入力され、ゲイン係数調整部36は、分
離信号s1(n)のパワーを最小化するようにゲイン係
数c12(n)を次式(12)で表される漸化式において
i=1、j=2として更新する。
【0078】 cij(n+1)=cij(n)+εiji(n)sj(n−dnij(n)) ・・・ (12) このとき、ゲイン係数c12(n+1)として乗算器28
に出力する。このゲイン係数c12(n+1)は、次回
(n+1)において演算に用いる。なお、ここにε
ijは、学習の効率を定める小さな正の値である。
【0079】同様に、上述のゲイン係数c21(n)は、
次のような過程で計算される。分離信号s2(n)と遅
延器29の出力信号s1(n−dn21(n))がゲイン
係数調整部35に入力され、ゲイン係数調整部35は、
分離信号s2(n)のパワーを最小化するようにゲイン
係数c21(n)を上式(12)で表される漸化式におい
てi=2、j=1として更新し、ゲイン係数c21(n+
1)として乗算器27に出力する。
【0080】このゲイン係数c21(n+1)は、次回
(n+1)において演算に用いる。このように、信号分
離フィルタ100は、離散的に実現できるので、専用ハ
ードウェアは無論のこと、ディジタルシグナルプロセッ
サやマイクロプロセッサ等上でソフトウェアによって容
易に実現できる。
【0081】さて、上述のような信号分離フィルタ10
0によって、なぜ原信号x1(t)とx2(t)が混じり
あって検出された検出信号e1(n)とe2(n)から、
原信号x1(t)に比例した分離信号s1(n)と原信号
2(t)に比例した分離信号s2(n)に分離されるか
について、以下に説明する。なお、以下、離散時間nT
を連続時間tと近似するが、この処置によっても動作は
本質的に同質であると考えられる。
【0082】障害物の無い自由空間に置かれた2つの音
源17と18から発せられる原信号x1(t)とx
2(t)は、マイクロフォン19と20において混合し
合い、検出信号e1(t)とe2(t)として検出される
ものとする。このとき、検出信号e1(t)とe2(t)
は、 e1(t)=g111(t−τ11)+g122(t−τ12) (13) e2(t)=g211(t−τ21)+g222(t−τ22) (14) として表される。ここに、gijは減衰量、τijは伝播遅
延時間である。また、i=1または2、j=1または2
である。
【0083】いま、これらの検出信号e1(t)とe
2(t)を、信号分離フィルタ100を通過させて、出
力である分離信号s1(t)とs2(t)が、
【0084】
【数19】
【0085】なる式で関係づけられるものとする。ここ
に、cij(t)はゲイン係数、dij(t)は遅延時間で
ある。
【0086】このとき、ゲイン係数cij(t)と遅延時
間dij(t)を定数、かつ d12=τ12−τ22 (16) d21=τ21−τ11 (17) c11=g12/g22 (18) c21=g21/g11 (19) とすると、分離信号s1(t)と原信号x1(t)の関係
は、次式(20)で与えられる。
【0087】 s1(t)−g111(t−τ11) =c1221(s1(t−d12−d21)−g111(t−τ11−d12−d21)) ・・・ (20) ここで、c1221<1であれば時間tの経過とともに、 s1(t)→g111(t−τ11) (21) というように漸近する。
【0088】また、同様に、分離信号s2(t)と原信
号x2(t)の関係は、 s2(t)→g222(t−τ22) (22) というように漸近し、原信号x1(t)とx2(t)は、
分離信号s1(t)とs2(t)として分離されて出力さ
れる。また、この分離信号s1(t)とs2(t)には、
エコーを含まないことが(21)式と(22)式から分
かる。
【0089】また、各原信号xi(t)が独立であると
仮定し、各分離信号si(t)に対する遅延時間d
ij(t)の決定に際して、検出信号ei(t)と分離信
号sj(t)の相互相関関数Rij(d)を、 Rij(d)=E[ei(t)sj(t−d)] (23) として求める。ここに、E[]は期待値の演算を表す。
【0090】このとき、相関の最も高い遅延時間d(d
≧0)を遅延時間dij(t)の推定値とする。このよう
に、逐次的に遅延時間dij(t)を調整すれば、原信号
1(t)とx2(t)の遅延時間τが未知あるいは時間
変動のある場合においても、常に最適に調整されるもの
である。なお、信号源が2つより多い場合において、初
期動作時に必ずしも最適な遅延時間dij(t)が得られ
ない場合も存在するが、逐次調整が行われて行く過程に
おいて、徐々に最適な値に近づいていく。
【0091】また、ゲイン係数cijの各々に対応する分
離信号si(t)のパワーを最小化するように逐次調整
することにより、分離信号si(t)は、互いに独立と
なり、信号分離が達成されることとなる。
【0092】次に、この分離信号si(t)のパワーの
最小化が、各分離信号si(t)を互いに独立にするこ
とにつながることについて説明する。ここで、「各分離
信号si(t)が互いに独立」とは、原信号xi(t)が
独立であり、その伝播経路において混合されて検出信号
i(t)となるのであるから、この過程は原信号x
i(t)間の線形和をとることに相当する。これを再び
独立に戻すということは、原信号xi(t)に一次比例
する分離信号si(t)を得ること、即ち信号の分離を
意味することになる。
【0093】いま、説明を簡単にするため、原信号xi
(t)はランダム過程であり、その期待値E[x
i(t)]は0であると仮定する。このとき、検出信号
1(t)とe2(t)は、遅延時間d12とd21に関して
のみ相互相関が存在する。これら分離信号s1(t)と
2(t)および検出信号e1(t)とe2(t)を2次
元のベクトルとして表すと、図2のようになる。
【0094】同図において、ある時刻t1における分離
信号s1(t1)は、式(15)に示されるように、検出
信号e1(t1)から分離信号s2(t1−d12)を減算し
た形となっている。このとき図2において、ゲイン係数
12を変化させると、分離信号のベクトルs1(t1
は、検出信号のベクトルe1(t1)の終点Bに接し、か
つ分離信号のベクトルs2(t1−d12)と平行な線上L
を移動することができる。
【0095】図2から明らかなように、分離信号のベク
トルs1(t1)が最小となるのは、分離信号のベクトル
1(t1)とs2(t1−d12)が直交するときである。
このとき、 E[s1(t1)s2(t1−d12)]=0 (24) となり、(24)式は、遅延時間d12に関して分離信号
1(t1)とs2(t1−d12)が無相関になることを意
味する。即ち、分離信号s1(t)とs2(t)は独立と
なり、原信号xi(t)に一次比例する分離信号s
i(t)を得ること、換言すれば信号の分離が達成され
る。
【0096】以上のように、本実施例によれば、信号分
離フィルタ100を実現するための(15)式におい
て、遅延時間dij(t)として時間変動を含めた形で考
慮し、かつゲイン係数をcij(t)として時間変動を考
慮した形式としているので、原信号xi(t)から検出
信号ei(t)への伝達において、時間変動のある動的
な遅延を含む場合でも精度の良い信号の分離が可能とな
り、かつ(21)式と(22)式から明らかなようにエ
コーも十分に抑制されるという効果がある。
【0097】図3は、本発明の第2の実施例における信
号分離方法を応用した装置のブロック図を示すものであ
る。同図において、25と26は減算器、37と38は
適応フィルタ、39と40はフィルタ係数調整部であ
る。また、減算器25と26、適応フィルタ37と3
8、フィルタ係数調整部39と40は、信号分離フィル
タ200を構成する。以上のように構成された本実施例
につき、以下にその動作を説明する。
【0098】さて、図示しないが、検出信号e1(t)
とe2(t)は、第1の実施例と同様に2つの音源から
発せられた音波x1(t)とx2(t)を2つのマイクロ
フォンで検出し、それぞれ低域通過フィルタとAD変換
器を介して検出される。
【0099】これら検出信号e1(n)とe2(n)は、
信号分離フィルタ200において、
【0100】
【数20】
【0101】なる演算がi=1,2について行い、分離
信号s1(n)、s2(n)を出力するものである。
【0102】分離信号s2(n)は、適応フィルタ38
に入力され、その出力y12(n)が次式(26)で算出
される。
【0103】
【数21】
【0104】ここに、aijk(n)(k=0,1,・・
・,K−1)はフィルタ係数である。
【0105】適応フィルタ38の出力y12(n)は、減
算器25において検出信号e1(n)から減算され、分
離信号s1(n)が出力される。同様に、分離信号s
1(n)は、適応フィルタ37に入力され、その出力y
21(n)が式(26)で算出され、減算器26において
検出信号e2(n)から減算されて分離信号s2(n)と
して出力される。
【0106】更に、分離信号s1(n)とs2(n)は、
フィルタ係数調整部39と40に入力され、フィルタ係
数調整部40では分離信号s1(n)のパワーを最小化
するようにフィルタ係数a12k(n)を次式(27) aijk(n+1)=aijk(n)+εiji(n)sj(n−k) (27) で調整する。ここに、εijは、学習の効率を定める小さ
な正の値である。
【0107】同様に、フィルタ係数調整部39では、分
離信号s2(n)のパワーを最小化するようにフィルタ
係数a21k(n)を上式(27)で調整する。
【0108】本実施例における信号分離フィルタ200
の演算も、第1の実施例における信号分離フィルタ10
0の演算と同様に、ディジタルシグナルプロセッサやマ
イクロプロセッサ等の上のソフトウェアにより実現でき
るが、式(25)にそれぞれの値を当てはめて分離信号
1(n)とs2(n)を計算しようとすると、右辺にs
j(n)を含むため、このままの形では計算できない。
【0109】そこで、式(25)の右辺から時間刻みn
の分離信号sj(n)を消去した形(式(28)〜(3
1)に変形する。なお、説明を簡略化するため、図3の
ように信号分離フィルタ200を2入力2出力とする。
【0110】
【数22】
【0111】
【数23】
【0112】ここに、
【0113】
【数24】
【0114】
【数25】
【0115】である。なお、式(29)〜(31)は、
式(25)を単に変形したものであるから、完全に等価
である。
【0116】さて、上式(27)は、次式(32)
【0117】
【数26】
【0118】を離散化したものである。この式(32)
は、以下のようにして導出される。
【0119】各分離信号si(t)のパワーsi 2(t)
を最小化するためには、次式(33)
【0120】
【数27】
【0121】を、次式(34)のようにフィルタ係数a
ijk(t)で偏微分すればよい。
【0122】
【数28】
【0123】この式(34)で与えられた勾配方向と逆
の方向に徐々にフィルタ係数aijk(t)を調整すれ
ば、分離信号si(t)のパワーsi 2(t)を最小化す
ることができる。
【0124】式(32)はこのようなフィルタ係数a
ijk(t)の調整方法を表し、この式に則りフィルタ係
数aijk(t)を逐次的に調整することにより、各遅延
時間kTに関して分離信号si(t)(ここではs
1(t)とs2(t))は、互いに独立となり、信号の分
離が達成される。
【0125】以上のように、本実施例によれば、信号分
離フィルタ200を実現するための(25)式におい
て、遅延時間を時間刻みkとして時間変動を含めた形で
考慮し、かつフィルタ係数をaijk(t)として時間変
動を考慮した形式としているので、原信号xi(t)か
ら検出信号ei(t)への伝達において、時間変動のあ
る動的な遅延を含む場合でも精度の良い信号の分離が可
能となるという効果がある。
【0126】図4は、本発明の第3の実施例における信
号分離方法を応用した装置の回路ブロック図を示すもの
である。同図において、41−1〜41−(K−1)は
トランスコンダクタンス増幅器、42−1〜42−(K
−1)はコンデンサ、43−0〜43−(K−1)と4
4−0〜44−(K−1)は乗算器、45−0〜45−
(K−1)は積分器である。以上のように構成された本
実施例につき、以下にその動作を説明する。
【0127】同図の回路は、第2の実施例における適応
フィルタ38とフィルタ係数調整部40に相当し、分離
信号s1(t)とs2(t)から出力y12(t)を生成す
る過程のみを表している。
【0128】分離信号s2(t)は、トランスコンダク
タンス増幅器41−1とコンデンサ42−1で構成され
た1次の低域通過フィルタ(フォロワ積分回路)をK−
1個縦続結合した遅延回路網400に入力される。この
とき、コンデンサの容量は、低域通過フィルタ1段分の
遅延時間が第2の実施例における標本化時間Tと等価な
ように設計する。
【0129】この遅延回路網400の各ノードkにおけ
る出力信号は、それぞれ乗算器43−kと44−kの両
方に入力され、それぞれの乗算器44−kでは分離信号
1(t)との積が取られ、その積は積分器45−kに
入力されて積分される。このとき積分器45−kでは式
(28)によるフィルタ係数a12k(t)の調整が行わ
れる。また、式(28)における学習の効率ε12は、そ
れぞれの積分器45−kに与えられる時定数によって設
定される。
【0130】積分器45−kの出力であるフィルタ係数
12k(t)は、それぞれの乗算器43−kに入力さ
れ、遅延回路網400の各ノードkの出力信号s2(t
−(k−1)T)との積が取られる。ついで各乗算器4
3−kで得られた各々の積は、加算器46−kで全て加
算され、出力信号y12(t)が出力される。この信号y
12(t)は、図3における適応フィルタ38の出力に相
当する。なお、全く同様の回路によって、図3の適応フ
ィルタ37とフィルタ係数調整部39を構成することが
できる。
【0131】また、遅延回路網400は、図5に示す回
路によっても実現できる。同図において、52−1〜5
2−(K−1)と53−1〜53−(K−1)は、アナ
ログスイッチ、54−1〜54−(K−1)と55−1
〜55−(K−1)はトランスコンダクタンス増幅器、
56−1〜56−(K−1)と57−1〜57−(K−
1)はコンデンサである。これらはサンプル・ホールド
回路500−1〜500−(K−1)を構成している。
【0132】アナログスイッチ52−kは、サンプルホ
ールド信号S/H1によって開閉が制御され、アナログ
スイッチ53−kは、サンプルホールド信号S/H2に
よって開閉が制御される。これらサンプルホールド信号
S/H1とS/H2は、位相がそれぞれπだけずれた2
相の信号であり、アナログスイッチ52−kをサンプル
ホールド信号S/H1で開閉することにより、各ノード
kの信号s2(t−kT)を保持し、所定時間T後にア
ナログスイッチ53−kを開閉することにより、次段
(k+1)に信号s2(t−(k+1)T)が伝えられ
る。
【0133】なお、同図におけるノード1〜(K−1)
の各点は、図4におけるノード1〜(K−1)までの各
点に対応しており、この連続動作により遅延回路網とし
て機能する。
【0134】なお、このような回路構成は、アナログC
MOS(コンプリメンタリ・メタル・オキサイド・セミ
コンダクタ)回路等によって容易に設計できる。
【0135】以上のように、本実施例によれば、アナロ
グ回路によって第2の実施例における信号分離方法を実
現しているで、AD変換器を省略することができ、構成
を簡略化できるという効果がある。
【0136】さて、図6は、本発明の第4の実施例にお
ける信号分離方法を応用した装置を表すブロック略図で
ある。同図において、音源17と18、マイクロフォン
19と20および減算器25と26は、第1の実施例に
おけるそれらと同一であり、詳しい説明は省略する。6
0と61はアナログフィルタである。なお、フィルタ6
0と61および減算器25と26は信号分離フィルタ6
00を構成する。以上のように構成された本実施例につ
き、以下にその動作を説明する。
【0137】音源17から発せられた音波x1(t)と
音源18から発せられた音波x2(t)は、図示のよう
な伝達関数H11(ω)、H12(ω)、H21(ω)、H22
(ω)を有する伝達経路を介してマイクロフォン19と
20に集音されて、検出信号e1(t)とe2(t)にな
る。ここに、Hij(ω)は、音波xj(t)から検出信
号ei(t)までの伝達関数であり、ωは角周波数を表
し、またi=1,2、j=1,2である。
【0138】これら伝達関数H11(ω)、H12(ω)、
21(ω)、H22(ω)が既に計測されており、既知と
すると、アナログフィルタ60と61の伝達関数G
12(ω)とG21(ω)を次式(35)と(36)のよう
にして求める。
【0139】 G12(ω)=H12(ω)/H22(ω) (35) G21(ω)=H21(ω)/H11(ω) (36) これら式(35)と式(36)で表される伝達関数G12
(ω)とG21(ω)のインパルス応答、換言すれば周波
数領域で記述された伝達関数を時間領域へ逆フーリエ変
換した変換結果を、それぞれg12(t)とg21(t)と
すると、信号分離フィルタ600の出力分離信号s
1(t)とs2(t)は、次式(37)で与えられる。
【0140】
【数29】
【0141】ここに、i=1,2、j=1,2である。
【0142】なお、同式(37)において、時間積分項
は、インパルス応答g12(t)(またはg21(t))と
分離信号s2(t)(またはs1(t))との間の畳み込
みを表しており、アナログフィルタ60(または61)
を分離信号s2(t)(またはs1(t))が通過した結
果を表している。
【0143】このような式(37)で表されるインパル
ス応答gij(t)は、第2の実施例における式(25)
で表した離散時間表現の方程式において、フィルタ係数
ijk(n)を連続時間において固定値化したものにす
ぎない。従って、第2の実施例と同様の議論によって分
離信号s1(t)とs2(t)を独立とし、検出信号e1
(t)とe2(t)を分離することができることは、自
明となる。
【0144】以上のように本実施例によれば、予め音源
17と18からの伝達経路の伝達関数を計測し、アナロ
グフィルタ60と61を決定するようにしているので、
第1の実施例から第3の実施例のように複雑な調整過程
を必要としないという効果がある。
【0145】さて、参考のため、以上のような信号分離
方法を用いた装置の応用例として、送話音声から周囲騒
音成分を除去する電話機のハンドセットを図7にあげ
る。同図において、携帯電話機のハンドセット47に
は、送話音声を検出する第1のマイクロフォン48のほ
かに、ハンドセット47の背面に周囲騒音検出用の第2
のマイクロフォン49が設置される。この第2のマイク
ロフォン49は、送話者の音声をできる限り混入するの
を避けるために受話部50の背面に設置する。
【0146】第1のマイクロフォン48の検出信号e1
(t)と第2のマイクロフォン49の検出信号e
2(t)は、信号分離回路51に入力される。この信号
分離回路51に用いる信号分離方法は、上述の第1〜第
3の実施例のいずれでもよい。
【0147】このとき、分離信号s1(t)には、検出
信号e1(t)から周囲騒音が除去された信号が出力さ
れ、これが送話信号として送信される。これにより、S
/N比(信号対雑音比)の良い送話信号の送信が可能と
なるものである。また、信号分離回路51を第3の実施
例に示したようなアナログ回路で構成し、これをCMO
S回路で設計すれば、非常に低消費電力の装置が構成で
きることとなる。
【0148】なお、以上の説明では、信号分離フィルタ
は2入力2出力としたが、さらに多入力多出力のMIM
Oフィルタであっても同様の効果を得ることができる。
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではな
く、種々変形実施可能である。
【0149】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、請求項1
の方法では、各信号源と各信号検出手段の間の伝達特性
に関連して決定されるゲイン係数cij(t)と遅延時間
ij(t)を用いて、時刻tにおける分離信号s
i(t)を請求項1に記載した式を用いて導出する事に
より、原信号xi(t)が各信号検出手段まで伝播し、
各信号検出手段で検出される原信号xi(t)間に時間
ズレがある場合でも、精度の良い信号の分離が可能とな
り、かつエコーも十分に抑制されるという効果がある。
【0150】また、請求項2の方法では、各分離信号s
i(t)に対する遅延時間dij(t)の決定に際し、検
出信号ei(t)と分離信号sj(t)の相互相関関数を
求め、相関の高い遅延時間を採用することによって、遅
延時間dij(t)を逐次調整し、ゲイン係数cij(t)
は、各々対応する分離信号si(t)のパワーを最小化
するように逐次調整することにより、上記伝達特性が未
知である場合や信号源の移動がある場合にも信号の分離
が可能になるという効果がある。
【0151】また、請求項3の方法では、各信号源と各
信号検出手段の間の伝達特性に関連して決定されるフィ
ルタ係数aijk(t)(k=0,1,・・・,K−1)
を用いて、時刻tにおける分離信号si(t)を請求項
3に記載の式で算出することにより、原信号xi(t)
の各検出過程における遅延特性と減衰特性が周波数軸上
で一様でない場合も精度よく信号を分離することができ
るという効果がある。
【0152】また、請求項4の方法では、請求項3の方
法において、フィルタ係数aijk(t)を請求項4に記
載の式で調整することにより、上記伝達特性が未知の場
合や信号原の移動がある場合でも信号の分離が可能とな
るという効果がある。
【0153】また、請求項5の方法では、各信号源と各
信号検出手段の間の伝達特性に関連して決定されるイン
パルス応答gij(t)を用いて、時刻tにおける分離信
号si(t)を請求項5に記載の式で算出することによ
り、原信号xi(t)の各検出過程における遅延特性と
減衰特性が周波数軸上で一様でない場合も精度よく信号
を分離することができるという効果がある。また、請求
項2と4の方法のような調整過程を含む必要がないとい
う効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例における信号分離方法
を応用した装置のブロック図である。
【図2】 同実施例におけるゲイン係数の適応動作を説
明するベクトル図である。
【図3】 本発明の第2の実施例における信号分離方法
を応用した装置のブロック図である。
【図4】 本発明の第3の実施例における信号分離方法
を応用した装置のブロック図である。
【図5】 同実施例における遅延回路網の他の構成例を
示す回路図である。
【図6】 本発明の第4の実施例における信号分離方法
を応用した装置のブロック図である。
【図7】 本発明の信号分離方法を応用した装置を電話
機のハンドセットに適用した場合の構成図である。
【図8】 本発明の第1の従来例における信号分離方法
を応用した装置のブロック図である。
【図9】 同従来例の装置を2入力2出力に簡略化した
場合のブロック図である。
【図10】 本発明の第2の従来例における信号分離方
法を応用した装置のブロック図である。
【図11】 本発明の第3の従来例における信号分離方
法を応用した装置のブロック図である。
【符号の説明】
17、18 音源 19、20 マイクロフォン 21、22 低域通過フィルタ 23、24 AD変換器 25、26 減算器 27、28 乗算器 29、30 遅延器 31、32 相関器 33、34 遅延時間調整部 35、36 ゲイン係数調整部 37、38 適応フィルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 庭本 浩明 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 野村 竜也 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 時刻tにおいて、複数の信号源から発せ
    られた原信号xi(t)(但しi=1,2,・・・,
    I)が所定の伝達特性を有する複数の経路で混合されて
    伝播し、複数の信号検出手段において検出信号e
    i(t)として検出されるとき、これら検出信号e
    i(t)から混合前の上記原信号xi(t)を推定し、分
    離信号si(t)として分離するための信号分離方法に
    おいて、 上記伝達特性に応じて決定される、所定のゲイン係数c
    ij(t)と所定の遅延時間dij(t)を用いて、上記分
    離信号si(t)を、 【数1】 なる式によって導出することを特徴とする信号分離方
    法。
  2. 【請求項2】 上記遅延時間dij(t)は、上記検出信
    号ei(t)と上記分離信号sj(t)の間の相互相関関
    数を用いて、両者の相関が高くなるように逐次的に調整
    され、上記ゲイン係数cij(t)は、各々対応する上記
    分離信号si(t)のパワーを最小化するよう逐次的に
    調整されることを特徴とする請求項1に記載の信号分離
    方法。
  3. 【請求項3】 時刻tにおいて、複数の信号源から発せ
    られた原信号xi(t)(但しi=1,2,・・・,
    I)が所定の伝達特性を有する複数の経路で混合されて
    伝播し、複数の信号検出手段において検出信号e
    i(t)として検出されるとき、これら検出信号e
    i(t)から混合前の上記原信号xi(t)を推定し、分
    離信号si(t)として分離するための信号分離方法に
    おいて、 上記伝達特性のインパルス応答に応じて決定されるフィ
    ルタ係数aijk(t)(但しk=0,1,・・・、K−
    1)と所定の離散時間Tを用いて、上記分離信号s
    i(t)を、 【数2】 なる式によって導出することを特徴とする信号分離方
    法。
  4. 【請求項4】 上記フィルタ係数aijk(t)は、εij
    を任意の正の小さな値としたとき、上記分離信号s
    i(t)のパワーを最小化するよう、 【数3】 なる式に従って逐次的に調整されることを特徴とする請
    求項3に記載の信号分離方法。
  5. 【請求項5】 時刻tにおいて、複数の信号源から発せ
    られた原信号xi(t)(但しi=1,2,・・・,
    I)が所定の伝達特性を有する複数の経路で混合されて
    伝播し、複数の信号検出手段において検出信号e
    i(t)として検出されるとき、これら検出信号e
    i(t)から混合前の上記原信号xi(t)を推定し、分
    離信号si(t)として分離するための信号分離方法に
    おいて、 上記伝達特性のインパルス応答に応じて決定される関数
    ij(t)を用いて、上記分離信号si(t)を、 【数4】 なる式によって導出することを特徴とする信号分離方
    法。
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