JPH076536U - ウエーブコイルスプリング - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】端末巻部１２において対圧板２に対する線接触
が生じ難く、荷重−変位特性の線形性を保持することが
できるウエーブコイルスプリングを提供する 【構成】弾性を有する帯状薄板１１を順次波形部を連続
して形成しながら厚み方向に沿って螺旋状に巻回してな
り、隣接する波形部の山と谷を互いに対向させたウエー
ブコイルスプリングにおいて、厚み方向両端側の端末巻
部１２，１２における前記波形部の波頂点の曲率半径Ｒ
1 を、厚み方向内側の中間巻部１３における前記波形部
の曲率半径Ｒ2 よりも小さくする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車の自動変速機におけるクラッチ等に使用されるウエーブコイ ルスプリングに関する。

【０００２】

【従来の技術】

例えば、自動車の自動変速機（いわゆる、ＡＴ）における多板クラッチを駆動 する油圧ピストンのリターン用バネとしては、実開平２−７８８２０号公報に開 示されたように、従来のコイルバネに比べ密着高さが低いウエーブコイルスプリ ングが使用されるようになってきている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、従来のウエーブコイルスプリングは、座巻部分を除いて各波形 部が同一寸法に形成されているため、変位が大きくなるとばね定数が変化して非 線形になり易く、線形特性を前提とした設計どおりの荷重特性が得られないため 、ウエーブコイルスプリングが使用される機器の設計上問題となっていた。

【０００４】 すなわち、この種のウエーブコイルスプリング１は、図４に示す如く端末巻部 が対圧板２（自動車のＡＴであればピストンの端面部材等）の平面状の端面に押 付けられ、この平面に対して伸び縮みするように使用されるのが通常である。そ して、波形部の曲率半径は、要求される仕様を満足させるために、比較的大きな 値に設定されるから、収縮量（変位）が大きくなると、図４に示す如く、波形部 同士は点接触状態が保持されているのに、端末巻部の波頂部と前記対圧板２との 間が幅広な線接触状態となり易かった。そして、このような端末巻部における線 接触が生じると、変位δの大きな範囲で実際には図５における鎖線のようにばね 定数が増加してしまい、ばね定数一定として予想した理論値（図５における実線 ）とは顕著な差が生じてしまう。したがって、例えばこのウエーブコイルスプリ ング１を押し縮めるのに要する力（自動車のＡＴであればピストンの押圧力）を 計算値よりも余裕を持って設定する、あるいは変位がこのような線接触が生じる 範囲に達しないようにする等の余分な設計上の配慮が必要となっていた。

【０００５】 なお、上記のような線接触状態を考慮に入れてウエーブコイルスプリングのば ね特性を予想し、ウエーブコイルスプリング自体あるいはこれが使用される機器 の設計を行なうことは、極めて難しく実用上不可能に近い。

【０００６】 本考案は、このような従来の事情に着目してなされたもので、端末巻部におい て対圧板に対する線接触が生じ難く、線形特性が保持され易いウエーブコイルス プリングを提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

かかる目的を達成するための本考案の要旨とするところは、 １ 弾性を有する帯状薄板（１１）を順次波形部を連続して形成しながら厚み方 向に沿って螺旋状に巻回してなり、隣接する波形部の山と谷を互いに対向させた ウエーブコイルスプリングにおいて、 厚み方向両端側の端末巻部（１２，１２）における前記波形部の波頂点の曲率 半径（Ｒ1 ）を、厚み方向内側の中間巻部（１３）における前記波形部の曲率半 径（Ｒ2 ）よりも小さくしたことを特徴とするウエーブコイルスプリング。

【０００８】 ２ 前記端末巻部（１２ａ，１２ａ）における前記波形部の高さ（Ｈ1 ）を、前 記中間巻部（１３）における前記波形部の高さ（Ｈ2 ）よりも大きくしたことを 特徴とする項１記載のウエーブコイルスプリングに存する。

【０００９】

【作用】

本考案のウエーブコイルスプリングであると、端末巻部（１２，１２）におけ る波形部の波頂点の曲率半径（Ｒ1 ）のみが相対的に小さく設定されているから 、他の部分の波形部の曲率半径（Ｒ2 ）を大きく設定しても、前述した線接触が 発生し難い。このため、ばねとしての所望の仕様を満足しつつ、しかもこの特性 を変位が大きな範囲でも設計どおりに維持することができる。すなわち、前述の 線接触が起きないために、変位が大きな範囲においても荷重−変位特性の線形性 が維持され、通常の理論計算で予想できるばね定数の値に保持される。

【００１０】 また、端末巻部（１２ａ，１２ａ）における前記波形部の高さ（Ｈ1 ）が、前 記中間巻部（１３）における前記波形部の高さ（Ｈ2 ）よりも大きく設定された 場合には、さらに変位が大きな範囲においても前記線接触が生じ難くなり、設計 どおりの特性が正確に発揮され易くなる。

【００１１】

【実施例】

以下、図１に基づき請求項１記載の考案の一実施例を説明する。 図１は、本実施例のウエーブコイルスプリングを周方向に展開した図である。 このウエーブコイルスプリングは、弾性を有する帯状薄板１１を順次波形部を連 続して形成しながら厚み方向に沿って螺旋状に巻回してなり、隣接する波形部の 山と谷を互いに対向させたもので、厚み方向両端側の端末巻部１２，１２におけ る波形部の波頂点の曲率半径Ｒ1 （自由状態におけるもの）が、厚み方向内側の 中間巻部１３における波形部の山あるいは谷の曲率半径Ｒ2 （自由状態における もの）よりも小さく設定されている。なおこの場合、前記端末巻部１２，１２に おける波形部の高さＨ1 は、前記中間巻部１３における波形部の高さＨ2 と略等 しく設定されている。

【００１２】 このウエーブコイルスプリングであると、端末巻部１２，１２における波形部 の波頂点の曲率半径Ｒ1 のみが相対的に小さく設定されているから、大部分の波 形部の曲率半径Ｒ2 を大きく設定しても、前述した端末巻部１２，１２における 線接触が発生し難い。このため、ばねとしての所望の仕様を満足しつつ、しかも この特性を変位の大きな範囲でも設計どおりに維持することができる。すなわち 、変位が大きな範囲においても、図３に示すような点接触が維持され、荷重−変 位特性の線形性が保たれて、通常の理論計算で予想できるばね定数の値に保持さ れる。

【００１３】 したがって、上記ウエーブコイルスプリングを、例えば自動車のＡＴにおける クラッチのリターン用として使用すれば、ピストンの押圧力やクラッチの作動ス トローク等を設定する上でリターンスプリングのばね定数の変化を考慮する必要 がなくなって設計の幅が広がるとともに、またこのリターンスプリングの耐久予 測等も正確になるため、ひいてはＡＴの性能あるいは信頼性の向上等に貢献でき る。

【００１４】 次に、図２により請求項２記載の考案の一実施例を説明する。 図２は、本実施例のウエーブコイルスプリングを周方向に展開した図である。 このウエーブコイルスプリングは、やはり弾性を有する帯状薄板１１を順次波形 部を連続して形成しながら厚み方向に沿って螺旋状に巻回してなり、隣接する波 形部の山と谷を互いに対向させたもので、厚み方向両端側の端末巻部１２ａ，１ ２ａにおける波形部の波頂点の曲率半径Ｒ1 が、厚み方向内側の中間巻部１３に おける波形部の山あるいは谷の曲率半径Ｒ2 よりも小さく設定されている。そし てこの場合、前記端末巻部１２ａ，１２ａにおける波形部の高さＨ1 は、前記中 間巻部１３における波形部の高さＨ2 よりも大きく設定されている。

【００１５】 このウエーブコイルスプリングであると、波形部の高さＨ2 が大きい分だけ、 さらに変位が大きな範囲でも前記図３に示す点接触が確実に維持され、荷重−変 位特性の線形性が極めて広範囲に保持され、自動車のＡＴ等の設計がさらに容易 かつ信頼性の高いものとなる。

【００１６】

【考案の効果】

本考案にかかるウエーブコイルスプリングによれば、変位が大きな範囲におい ても、荷重−変位特性の線形性が保たれて、通常の理論計算で予想できるばね定 数の値に保持される。したがって、このウエーブコイルスプリングを、例えば自 動車のＡＴにおけるクラッチのリターン用として使用すれば、リターンスプリン グの設計性能を信頼性高くかつ広範囲に発揮して、ひいてはＡＴの性能あるいは 信頼性の向上等に貢献できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】請求項１記載の考案の一実施例であるウエーブ
コイルスプリングを示す展開図である。

【図２】請求項２記載の考案の一実施例であるウエーブ
コイルスプリングを示す展開図である。

【図３】本考案のウエーブコイルスプリングの動作を示
す図である。

【図４】従来のウエーブコイルスプリングの動作を示す
図である。

【図５】従来のウエーブコイルスプリングの荷重−変位
特性を示す図である。

【符号の説明】

１１…帯状薄板 １２，１２ａ…端末巻部

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】弾性を有する帯状薄板を順次波形部を連続
   して形成しながら厚み方向に螺旋状に巻回してなり、隣
   接する波形部の山と谷を互いに対向させたウエーブコイ
   ルスプリングにおいて、 厚み方向両端側の端末巻部における前記波形部の波頂点
   の曲率半径を、厚み方向内側の中間巻部における前記波
   形部の曲率半径よりも小さくしたことを特徴とするウエ
   ーブコイルスプリング。
2. 【請求項２】前記端末巻部における前記波形部の高さ
   を、前記中間巻部における前記波形部の高さよりも大き
   くしたことを特徴とする請求項１記載のウエーブコイル
   スプリング。