JPH0763374B2 - ウシ副腎アドレノドキシン産生菌株 - Google Patents

ウシ副腎アドレノドキシン産生菌株

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JPH0763374B2
JPH0763374B2 JP13649690A JP13649690A JPH0763374B2 JP H0763374 B2 JPH0763374 B2 JP H0763374B2 JP 13649690 A JP13649690 A JP 13649690A JP 13649690 A JP13649690 A JP 13649690A JP H0763374 B2 JPH0763374 B2 JP H0763374B2
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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ウシ副腎由来のアドレノドキシンをコードす
るDNAを含有し、ウシ副腎由来のアドレノドキシンのミ
トコンドリア移行シグナル部分に相当するDNAを、酵母
チトクロムC酸化酵素サブユニットIVのミトコンドリア
移行シグナル部分に相当する部分に置き換えた、ウシ副
腎アドレノドキシンを発現するプラスミドおよび該プラ
スミドを導入した酵母菌株に関する。本発明により得ら
れる酵母菌株は、ウシ副腎アドレノドキシンを大量生産
しているので、該酵母菌株により生産した該酵素と、チ
トクロムP450およびNADPHアドレノドキシン還元酵素と
を用い、医薬品として有用なステロイド類を合成するこ
とができる。
従来技術および問題点 P450は微生物から哺乳動物にいたるまで広く生物界にに
存在するヘムタンパク質であり、広範囲の脂溶性化合物
を基質として、1原子酵素添加反応を触媒する。P450の
示すこうした広範囲な基質特異性はP450の分子多様性に
起因する。P450には多数の分子種が存在しているが、各
々のP450に電子を供給する経路は共通であり、ミクロソ
ームでは主として、フラビンアデニンジヌクレオチドと
フラビンモノヌクレオチドを分子内に補酵素として含有
するNADPH−チトクロムP450還元酵素(還元酵素)がNAD
PHからの電子を、基質を結合したP450へ供給する。一
方、ミトコンドリアではフラビンアデニンジヌクレオチ
ド、非ヘム鉄をそれぞれ補酵素として分子内に含有する
NADPH−フェレドキシン還元酵素、フェレドキシンがNAD
PHからの電子を、基質を結合したP450へ供給する。
本発明者らはすでに、酵素活性を有する数種のミクロソ
ーム型P450および還元酵素を酵母内で生産させることに
成功した。すなわち、ラット肝P450遺伝子、ウシ副腎P4
5017α遺伝子やP450C21遺伝子をそれぞれ単離し(特開
昭61−56072、特願昭62−204101、特願昭63−18157
1)、これらの遺伝子を含む発現プラスミドを作製し、
これら発現プラスミドで酵母を形質転換することによ
り、該酵素を産生する酵母菌株を得た。これらの酵母菌
株はP450依存性の1原子酸素添加活性を示した。また、
ラット肝還元酵素遺伝子や酵母還元酵素遺伝子を単離
し、P450還元能を有する該酵素の酵母内発現に成功した
(特開昭62−19085、特願昭63−202785)。さらに、発
明者らは、P450と還元酵素の両酵素を生産する酵母菌株
(特開昭62−104582)や両酵素の機能を1分子内に併せ
持つ新規モノオキシゲナーゼの作出に成功した(特開昭
63−44888、特願昭63−173761、特願昭1−71250)。
以上のような技術により、本発明者らは医薬品として有
用な数種のステロイド類の合成を可能にしたが、コレス
テロールを出発物質としてこれらステロイドホルモンの
合成を行う場合には、ミトコンドリア型P450依存性の1
原子酸素添加活性を発揮する酵母菌株の創製が必要であ
る。
課題解決の手段 アドレノドキシンは、副腎ミトコンドリア型電子伝達系
の主要酵素の1つで、補酵素として非ヘム鉄を分子内に
含有する水溶性酵素である。アドレノドキシンはNADPH
−アドレノドキシン還元酵素を介して受け取ったNADPH
からの電子を副腎ミトコンドリア電子伝達系の末端酵素
であるチトクロムP450に伝達する。副腎ミトコンドリア
型P450は数種類存在するにもかかわらず、アドレノドキ
シンはいずれのチトクロムP450分子種に対してもNADPH
−アドレノドキシン還元酵素からの電子を供給すること
ができる。
アドレノドキシンは、186アミノ酸からなる前駆体(分
子量約19kDa)として細胞質で合成されたのち、そのア
ミノ末端部分に存在する移行シグナルが認識され、ミト
コンドリアへ取り込まれ、128アミノ酸からなる成熟型
(分子量約14kDa)になる。ウシ副腎アドレノドキシン
前駆体をコードするcDNAの全構造はすでにOkamuraらに
よって報告されている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、
5705(1985))。
本発明者らは、まず、ウシ副腎アドレノドキシン前駆体
を酵母内で発現させるプラスミドを構築した。このプラ
スミドにより系質転換した酵母のアドレノドキシン産生
量は低く、活性も検出されなかった。そこで本発明者ら
は、酵素活性を有するアドレノドキシンを酵母内で多量
に産生させるために、アミノ末端にMetを付加した成熟
型アドレノドキシン発現プラスミドおよびミトコンドリ
ア移行シグナル部分を酵母チトクロムc酸化酵素サブユ
ニットIVのものに置き換えた、改変アドレノドキシン発
現プラスミドを構築した。これらのプラスミドにより形
質転換した酵母のアドレノドキシン産生量は上昇し、産
生されたアドレノドキシンは活性型であった。すなわ
ち、これらのアドレノドキシンはウシ副腎NADPH−アド
レノドキシン還元酵素精製標品との再構成系においてチ
トクロムcに電子を伝達できた。また、酵母から部分精
製したアドレノドキシンは、ウシ副腎NADPH−アドレノ
ドキシン還元酵素精製標品およびウシ副腎P450SCC精製
標品とともに、コレステロールからプレグネノロンを生
成することができた。今後、ミトコンドリア型P450およ
びNADPH−アドレノドキシン還元酵素との同時発現によ
り、ステロイド化合物酸化反応用バイオリアクターとし
ての利用が期待できる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に用いるウシ副腎アドレノドキシンをコードする
cDNAは前述のように既に公知であり、通常の操作法でこ
れを単離することができる。本発明のアドレノドキシン
を発現する発現プラスミドはウシ副腎アドレノドキシン
遺伝子を適当な発現プラスミドに常法により挿入し構築
することができる。発現プラスミドとしては、公知の発
現ベクターを用いることができる。例えば、酵母アルコ
ール脱水素酵素(ADH1)遺伝子のプロモーターおよび同
ターミネーターを保持する酵母発現ペクターpAAH5(Met
hods in Enzymology,101,partC,p192−201)が挙げられ
るが、PGKプロモーター,G3PDHプロモーター,GAL10プロ
モーターを有する発現ベクターなど、宿主内で効率よく
機能するものであればよく、特に、限定されるものでは
ない。また、発現プラスミドの構造も限定されるもので
なく、酵母内で安定に保持されるものであればよい。宿
主として酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエAH22
株、サッカロミセス・セレビシエSHY3株やサッカロミセ
ス・セレビシエNA87−11A株などが、好都合に使用する
ことができる。ウシ副腎アドレノドキシン遺伝子を含む
発現プラスミドによる宿主酵母の形質転換は、アルカリ
金属(LiCl)を用いる方法、プロトプラスト法など公知
の方法で行うことができる。このようにして得られた形
質転換酵母菌体を培養することによりアドレノドキシン
を製造することができる。本発明により得られる形質転
換酵母の培養は通常の培養方法により行うことができ
る。
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。本発
明は実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技
術分野における通常の変更をすることができる。
実施例1 ウシ副腎アドレノドキシン cDNAの取得 ウシ副腎からグアニジンチオシアネート法によりRNA画
分を抽出し、さらにオリゴ(dT)セルロースカラムにか
け、ポリ(A)RNAを得た。さらにこのポリ(A)RNA画
分を65℃で5分間熱処理した後、10−30%のショ糖密度
勾配で超遠心分離(270,000×g、1時間)分画した。
マーカーの18S rRNAよりもややサイズの大きい画分を回
収し、アマーシャム社製のcDNA合成システムを用いてcD
NAを合成した。さらに、λgt11をベクターとしたcDNAク
ローニングシステムを用いてcDNAライブラリーを作製し
た。前述の、既報のウシ副腎アドレノドキシンのcDNAの
構造を基にして以下の3種類、30merのDNAプローブを合
成した。5′ TACCGGCGTGCGGAGGACGCGCAGCGGAGG3′ 5′ ACCGCCGAAGAGCACGCTGGCGCGCGCCCT3′ 5′ GACTCGCATAGCCCCGCTCGCGTCTCGTCG3′ これらをカイネーション法により〔32P〕ラベルし、こ
れをプローブとして前述のcDNAライブラリーの約50,000
プラークについてプラークハイブリダイゼーションを行
った。ハイブリダイゼーションおよび洗浄は50℃で行っ
た。得られたポジティブクローンからファージDNAを調
製し、制限酵素により切断して解析した。ついで、ダイ
デオキシ法によりcDNAの塩基配列を決定した結果、この
プラスミドがウシ副腎アドレノドキシンのcDNAを含むこ
とを確認した。得られたプラスミドをpUADXと名付け
た。pUADXは約160bpの5′非翻訳領域、約560bpのウシ
副腎アドレノドキシンコーディング領域、約2Kbの3′
非翻訳領域を含むプラスミドであった。
実施例2 発現プラスミドpMXの構築 以下の実施例で、制限酵素によるDNAの切断、アルカリ
ホスファターゼによるDNAの脱リン酸化、DNAリガーゼに
よるDNAの結合など反応は、特に断らない限り、通常20
〜200μの反応容積を用いて、これらの酵素類を市販
するメーカー(例えば、宝酒造(株))が製品に添付し
た反応条件で実施した。
ウシ副腎アドレノドキシン前駆体発現プラスミドpAX
(参考例1)により形質転換した酵母のアドレノドキシ
ン産生量は非常に低かった(約104分子/菌体)。ウシ
副腎アドレノドキシン前駆体の移行シグナル部分をコー
ドする塩基配列は非常にG、Cリッチであり、このよう
にG、Cリッチなコドンは酵母ではあまり使用されてい
ない。そこで、アドレノドキシンの酵母内での産生量を
上げるため、ミトコンドリアへの移行シグナル部分を除
いた成熟型ウシ副腎アドレノドキシン発現プラスミドpM
Xを構築した。第1図にその構築を示す。
ウシ副腎アドニノドキシン遺伝子を含むプラスミドpUAD
Xを制限酵素Hind IIIとXba Iで同時消化し、約490bpのH
ind III−Xba I断片を低融点アガロースゲル電気泳動法
により回収した。この断片をさらにAlu Iで消化し、目
的とするAlu I−Xba I断片(約100bp)を低融点アガロ
ースゲル電気泳動法により回収した。この断片と合成リ
ンカーLADX2:5′ AGCTTAAAAAAATGAGCAG3′ 3′ ATTTTTTTACTCGTC5′ (左右両端にそれぞれHind III、Alu I認識部位を持
つ)と、市販のクローニングベクターpUC19のHind III
−Xba I断片とのリガーゼ反応を行い、大腸菌HB101株を
形質転換した。それぞれの形質転換体から、Birnboim−
Dolyの方法にしたがい、プラスミドDNAを調製し、制限
酵素消化による解析を行い、目的とする断片および合成
リンカーが挿入されたプラスミドを得た。さらに、塩基
配列を決定することにより、合成リンカー部分の配列を
確認し、得られたプラスミドをpUMXNとした。
一方、ウシ副腎アドレノドキシン遺伝子を含むプラスミ
ドpUADXをXmn Iで部分消化し、約5.4Kbの1カット断片
を低融点アガロースゲル電気泳動法により回収した。こ
の断片と市販のHind IIIリンカーとのリガーゼ反応を行
い、大腸菌HB101株を形質転換した。形質転換からプラ
スミドDNAを調製し、Xmn I部位がHind III部位に置き換
えられたプラスミドをpUXHとした。
上述のプラスミドpUMXNとpUXHからそれぞれ約130bp、29
0bpのHind III−Xba I断片を低融点アガロースゲル電気
泳動法により回収した。これらの断片と市販のベクター
プラスミドpUC18のHind III断片にアルカリホスファタ
ーゼ処理を施したものとのリガーゼ反応を行った後、大
腸菌HB101株を形質転換した。形質転換体からプラスミ
ドDNAを調製し、pUMXN、pUXH由来のDNA断片をひとつず
つ含むプラスミドをpUMXとした。pUMXをHind III消化
し、成熟型ウシ副腎アドレノドキシンをコードする約41
0bpのcDNA断片を調製し、これと、Hind III消化後アル
カリフォスファターゼ処理を施した酵母発現ベクターpA
AH5N(特願昭63−202785)とのリガーゼ反応を行った
後、大腸菌HB101株を形質転換した。形質転換体からプ
ラスミドDNAを調製し、DNA構造を確認し、ウシ副腎アド
レノドキシン遺伝子がADHプロモーターとターミネータ
ーに対して、順方向に挿入されたプラスミドをpMXとし
た。
実施例3 発現プラスミドpCMXの構築 酵母ミトコンドリアでウシ副腎アドレノドキシンを安定
に高発現させることを目的として、ウシ副腎アドレノド
キシンの移行シグナルペプチド部分を酵母チトクロムc
酸化酵素サブユニットIV(CO V IV)のものに置換した
プラスミドpCMXを構築した。図2に発現プラスミドpCMX
の構築を示す。
市販のクローニングプラスミドpUC19のHind III−Xba I
断片と、ウシ副腎アドレノドキシン遺伝子を含むプラス
ミドpUADXのAlu I−Xba I断片(約100bp)と合成リンカ
ーLCX1: (左右両端にそれぞれHind III、Alu I認識部位を持
ち、内側にXba I認識部位を持つ)とのリガーゼ反応を
行い、大腸菌HB101株を形質転換した。形質転換体から
プラスミドDNAを調製し、目的とする断片および合成リ
ンカーが挿入されたプラスミドを得た。さらに、塩基配
列を決定することにより、合成リンカー部分の配列を確
認し、得られたプラスミドをpUCMXNとした。pUCMXNをXb
a Iで部分消化し、約2.9Kbの断片を得た。さらにHind I
IIで消化し、約200bpの断片を低融点アガロースゲル電
気泳動法により回収した。このHind III−Xba I断片
と、前述のpUXHのXba I−Hind III断片(約290bp)と、
市販のクローニングプラスミドpUC18のHind III断片と
のトリプルライゲーションを行い大腸菌HB101株を形質
転換した。形質転換体からプラスミドDNAを調製し、両
断片が挿入されたプラスミドpUCMXを得た。pUCMXをHind
III消化し、約490bpの改変成熟型ウシ副腎アドレノド
キシンcDNA断片を調製し、これと、Hind III消化後アル
カリフォスファターゼ処理を施した酵母発現ベクターpA
AH5N(特願昭63−202785)とのリガーゼ反応を行った
後、大腸菌HB101株を形質転換した。形質転換体から調
製したプラスミドDNAの構造を確認し、改変成熟型ウシ
副腎アドレノドキシン遺伝子がADHプロモーターとター
ミネーターに対して、順方向に挿入されたプラスミドを
pCMXとした。
実施例4 発現プラスミドによる酵母の形質転換 サッカロミセス・セレビシエAH22(ATCC 38626)
〔ρ〕株(ミトコンドリア様のオルガネラは存在する
が、ミトコンドリアDNAを持たない株)、〔ρ〕株
(正常なミトコンドリアおよび、そのDNAを持つ株)
を、5mlのYPD培地(1%酵母エキス、2%ポリペプト
ン、2%グルコース)中で、30℃、18時間培養したの
ち、1mlの酵母培養液を遠心分離し、集菌した。菌体
を、0.2M LiCl溶液1mlで洗浄したのち、1M LiCl溶液20
μに懸濁した。これに、70%ポリエチレングリコール
4000溶液30μ、発現プラスミド溶液10μ(約1μgD
NA)を添加して、充分に混合したのち、30℃で1時間イ
ンキュベートした。ついで、140μの水を加え、よく
攪拌したのち、この溶液をSD合成培地プレート(2%グ
ルコース,0.67%酵母窒素源アミノ酸不含、20μg/mlヒ
スチジン、2%寒天)上にまき、30℃で3日間インキュ
ベートすることにより、プラスミドを保持する形質転換
体を得た。プラスミドpMX、pCMXで形質転換した酵母
を、それぞれ、AH22〔ρ〕(pMX)株、AH22〔ρ
(pCMX)株、AH22〔ρ〕(pCMX)株とした。
実施例5 アドレノドキシンの生産 実施例4で得た酵母AH22〔ρ〕(pMX)株、AH22〔ρ
〕(pCMX)株、AH22〔ρ〕(pCMX)株および対照と
して、発現ベクターpAAH5で形質転換した酵母AH22〔ρ
〕(pAAH5)株を、それぞれ、SD合成培地(2%グル
コース,0.67%酵母窒素源アミノ酸不含、20μg/mlヒス
チジン)で、約2×107菌体/mlまで培養した。酵母培養
液0.9mlに、2N NaOH/8%、2−メルカプトエタノールを
0.1ml加え、氷中で10分間インキュベートしたのち、30
%トリクロロ酢酸0.2mlを加え、さらに、氷中で10分間
インキュベートした。12,000rpm2分間の遠心分離により
沈澱を集め、氷冷したアセトンで洗浄したのち、乾燥さ
せた。調製した酵母全タンパク質は、100℃で5分間加
熱したサンプルバッファー(4%ドデシル硫酸ナトリウ
ム、0.16Mトリス−塩酸(pH6.8)、0.38M 2−メルカ
プトエタノール、20%グリセロール、0.01%ブロムフェ
ノールブルー)50μを加え、100℃でインキュベート
することにより溶解させた。これを、7.5%SDS−ポリア
クリルアミドゲルに供し、Laemmliの方法(Nature,227,
680)に従って、電気泳動を行った。泳動後、アクリル
アミドゲルとニトロセルロースフィルターを重ね、ブロ
ッティングバッファー(25mMトリス−塩酸(pH8.8)、1
92mMグリシン、20%メタノール)中で、30Vの電圧をか
け、泳動したタンパク質をアクリルアミドゲルからニト
ロセルロースフィルターへ移行させた。ついでニトロセ
ルロースフィルターをTBSバッファー(50mMトリス−塩
酸(pH7.5)、200mM NaCl)に浸した後、3%ゼラチ
ン、0.05%ツィン20を含むTBSバッファー中で、37℃40
分間インキュベートした。つぎに抗ウシ副腎アドレノド
キシン抗体(K.Suhara et al.,Biochim.Biophys.Acta 2
63,272−278(1972)参照)、1%ゼラチン、0.05%ツ
ィン20を含むTBSバッファー中で、37℃3時間インキュ
ベートした。抗体との反応後、0.05%ツィン20を含むTB
Sバッファー中で、37℃30分間ずつ4回洗浄を繰り返し
たのち、3%ゼラチン、0.05%ツィン20を含むTBSバッ
ファー中で、37℃20分間インキュベートした。続いて、
このニトロセルロースフィルターを、2μCiの〔125I〕
プロテインA(アマシャム社より購入)、1%ゼラチ
ン、0.05%ツィン20を含むTBSバッファー中に浸し、37
℃1時間インキュベートした。0.05%ツィン20を含むTB
Sバッファー中で、37℃で30分間ずつ4回洗浄したの
ち、フィルターを風乾し、オートラジオグラフィーを行
った。AH22〔ρ〕(pMX)株、AH22〔ρ〕(pCMX)
株、AH22〔ρ〕(pCMX)株は、いずれも抗ウシ副腎ア
ドレノドキシン抗体と反応するタンパク質のバンドを示
し、その泳動位置は、ウシ副腎アドレノドキシン標品
(K.Suhara et al.,Biochim.Biophys.Acta263,272−278
(1972)参照)の泳動位置とほぼ同じであった。AH22
〔ρ〕(pAAH5)およびAH22〔ρ〕(pAAH5)株にウ
シ副腎アドレノイドキシン標品を50ng添加したサンプル
におけるウシ副腎アドレノドキシンのバンドの黒化濃度
と、AH22〔ρ〕(pMX)株におけるバンドの黒化濃度
の比較から、AH22〔ρ〕(pMX)株における成熟型ア
ドレノドキシンの発現量は約1.3×1.06分子/菌体と推
定された。これはAH22〔ρ〕(pAX)株(参考例1)
におけるアドレノドキシン前駆体の発現量の約130倍に
相当する。同様に、AH22〔ρ〕(pCMX)株、AH22〔ρ
〕(pCMX)株における成熟型アドレノドキシンの発現
量はそれぞれ、約2.5、4.9×106分子/菌体と推定され
た。
実施例6 アドレノドキシンの酵母内局在性 形質転換体が産生するアドレノドキシンの酵母内局在性
を調べるために、酵母培養液から細胞小器官を調製し、
各画分のチロクロムc還元活性を測定した。
形質転換体を約2×107菌体/mlまで培養し、約2×1010
菌体分を集菌し、ザイモリアーゼ溶液(10mM トリス−
塩酸(pH7.5)、2.0Mソルビトール、0.1mMジチオスレイ
トール、0.1mMEDTA、0.3mg/mlザイモリアーゼ100,000)
に懸濁し、30℃で1時間インキュベートし、スフェロプ
ラストを調製した。これを、ソニケーションバッファー
(10mM トリス−塩酸(pH7.5)、0.65Mソルビトール、
0.1mMジチオスレイトール、0.1mM EDTA、1mM フッ化
フェニルメチルスルホニル〔PMSF〕)懸濁し、テフロン
ホモジナイザーでホモジナイズすることにより、菌体を
破砕した、3000×g、5分間の遠心分離により、沈澱1
(未破砕菌体・各画分)を取り除き、上清1を得た。こ
れを10,000×g、20分間遠心分離し、沈澱2(ミトコン
ドリア画分)と上清2を得た。上清2をさらに120,000
×g、70分間遠心分離し、沈澱3(ミクロソーム画分)
と上清3(細胞質画分)に分けた。一方、チトクロムc
還元活性は、30mMリン酸カリウム(pH7.4)、200μMチ
トクロムc、10mM KCN、10mM NADPH、300μMアドレノ
ドキシン還元酵素からなる反応混液に、各細胞小器官画
分を加え、全容を3mlとし、30℃で550nmの吸光度変化を
測定した。その結果、AH22〔ρ〕(pMX)株では、活
性のほとんどが細胞質画分に存在していた。すなわち、
本株が産生する成熟型アドレノドキシンはミトコンドリ
アへの移行シグナルを欠いているため、細胞質画分に局
在すると考えられた。AH22〔ρ〕(pCMX)株、AH22
〔ρ〕(pCMX)株では、ミトコンドリア画分および細
胞質画分がほぼ同程度の活性を示した。しかし、細胞質
画分の活性は、酵母細胞小器官の調製時にミトコンドリ
ア画分から漏出したアドレノドキシンによる可能性があ
る。従って、これらの株では、COX IV由来のミトコンド
リア移行シグナルが酵母内で認識され、大部分のアドレ
ノドキシンがミトコンドリアへ取り込まれたと考えられ
る。
実施例7 再構成系におけるコレステロール側鎖切断活
性 AH22〔ρ〕(pCMX)株から粗精製したアドレノドキシ
ンとP450SCC、ウシ副腎アドレノドキシン還元酵素との
再構成系において、P450SCC依存性コレステロール側鎖
切断活性を測定した。
25pmolウシ副腎P450SCC標品、50pmolウシ副腎アドレノ
ドキシン還元酵素、AH22〔ρ〕(pCMX)株から粗精製
したアドレノドキシン500pmol、30mMリン酸カリウム(p
H7.4)、0.1M NaCl、0.3%ツィン20、43pmol〔3H〕コレ
ステロール、0.8mM NADPHからなる反応混液0.6mlを37℃
でインキュベートした。0.8mlメタノール、0.8mlクロロ
ホルムを添加することにより反応を停止し、激しく攪拌
したのち、クロロホルム層を分取した。これを乾固した
のち、100μのエタノール:酢酸エチル=1:1溶液に溶
解し、50μをHPLCで分析した。HPLCの条件を以下に示
す。
1.カラム;μBondapak C18(ウォーターズ社製) 2.溶媒;アセトニトリル 3.流速;1.0ml/min 4.温度;50℃ 5.検出;Trace7140(パッカード社製) 反応時間10分で、約4%のコレステロールがプレグネノ
ロンに変換された。すなわち、酵母内で生産されたアド
レノドキシンがウシ副腎アドレノドキシン精製標品と同
様に、P450SCCに対して電子を伝達できることが判っ
た。
参考例1 発現プラスミドpAXの構築 第3図にプラスミドpAX構築の概要を示した。プラスミ
ドpUXH(実施例2)をHind IIIで部分消化し、約2.7Kb
のHind III−Hind III断片を低融点アガロースゲル電気
泳動法により回収した。これを、さらに、Eco52Iで消化
し約2.4kbの断片を得た。この断片と、合成リンカーLAD
X1: (左右両端にそれぞれHind III、Eco52I認識部位を持
つ)とのリガーゼ反応を行い、大腸菌HB101株を形質転
換した。形質転換体からプラスミドDNAを調製し、目的
とする、合成リンカーが挿入されたプラスミドを得た。
さらに、塩基配列を決定することにより、合成リンカー
部分の配列を確認し、得られたプラスミドをpULXHとし
た。pULXHをHind IIIで消化し、約590bpのウシ副腎アド
レノドキシン前駆体cDNA断片を回収し、これと、Hind I
II消化後アルカリフォスファターゼ処理を施した酵母発
現ベクターpAAH5Nとのリガーゼ反応を行った後、大腸菌
HB101株を形質転換した。形質転換体から調製したプラ
スミドDNAの構造を確認し、ウシ副腎アドレノドキシン
前駆体遺伝子がADHプロモーターとターミネーターに対
して、順方向に挿入されたプラスミドをpAXとした。
このプラスミドを酵母AH22〔ρ〕株に導入して得た形
質転換体の全菌体タンパク質を分析した結果、菌体当た
り約104分子のアドレノドキシン前駆体が発現していた
が、チトクロムc還元活性は検出されなかった。
発明の効果 本発明により、ウシ副腎アドレノドキシンを発現するプ
ラスミドを導入した酵母菌株が得られた。そして、得ら
れた酵母菌株はウシ副腎アドレノドキシンを大量生産し
ているので、該酵母菌株により生産した該酵素と、チト
クロムP450およびNADPHアドレノドキシン還元酵素とを
用い、医薬品として有用なステロイド類を合成すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の発現プラスミドpMXの構築工程を示
す。 第2図は、本発明の発現プラスミドpCMXの構築工程を示
す。 第3図は、参考例1のプラスミドpAXの構築工程を示
す。 制限酵素切断部位は、Hd:Hind III,Ec:EcoR I,Xb:Xba
I,Xm:Xmn I,Nt:Not I,Ec52:Eco52 Iを示す。また、P、
TはそれぞれADHプロモーター、ターミネーターを示
す。また、図中の はウシ副腎アドレノドキシン翻訳領域を、 は酵母チトクロムc酸化酵素サブユニットIV翻訳領域を
示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:865) (C12N 9/02 C12R 1:865) (72)発明者 村上 裕子 兵庫県宝塚市高司4丁目2番1号 住友化 学工業株式会社内 (72)発明者 大川 秀郎 兵庫県宝塚市高司4丁目2番1号 住友化 学工業株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ウシ副腎由来のアドレノドキシンをコード
    するDNAを含有し、ウシ副腎由来のアドレノドキシンの
    ミトコンドリア移行シグナル部分に相当するDNAを、酵
    母チトクロムC酸化酵素サブユニットIVのミトコンドリ
    ア移行シグナル部分に相当する部分に置き換えた、ウシ
    副腎アドレノドキシンを発現するプラスミド
  2. 【請求項2】酵母アルコール脱水素酵母遺伝子のプロモ
    ーターを含む請求項1記載のプラスミド
  3. 【請求項3】pCMXと命名した請求項2記載のプラスミド
  4. 【請求項4】ウシ副腎由来のアドレノドキシンをコード
    するDNAを含有し、ウシ副腎由来のアドレノドキシンの
    ミトコンドリア移行シグナル部分に相当するDNAを、酵
    母チトクロムC酸化酵素サブユニットIVのミトコンドリ
    ア移行シグナル部分に相当する部分に置き換えた、ウシ
    副腎アドレノドキシンを発現するプラスミドを導入した
    酵母菌株
  5. 【請求項5】酵母アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモ
    ーターを含むプラスミドを導入した請求項4記載の酵母
    菌株
  6. 【請求項6】プラスミドpCMXを導入した請求項5記載の
    酵母菌株
  7. 【請求項7】サッカロミセス・セレビシエAH22/pCMXと
    命名した請求項6記載の酵母菌株
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