JPH0757899A - 多連偏向電磁石装置 - Google Patents

多連偏向電磁石装置

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JPH0757899A
JPH0757899A JP20428693A JP20428693A JPH0757899A JP H0757899 A JPH0757899 A JP H0757899A JP 20428693 A JP20428693 A JP 20428693A JP 20428693 A JP20428693 A JP 20428693A JP H0757899 A JPH0757899 A JP H0757899A
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信太郎 福本
Kazunori Bessho
和典 別所
Yoshihiko Tsumura
嘉彦 津村
Shigeaki Matsui
重明 松井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 装置全体を小型化すると共に周期長及び周期
数を変えることができる多連偏向電磁石装置を提供す
る。 【構成】 本多連偏向電磁石装置は、垂直方向で対向配
置された上下一対の磁極1、1及び各磁極1、1をそれ
ぞれ励磁する励磁用コイル3、3を有する電磁石10を
備え、且つ上下の各電磁石10、10はそれぞれ電子ビ
ームの軌道に沿って複数配置され、電子を蛇行させる磁
場発生手段として構成され、上下の各磁極1、1の両側
端部間に非磁性材料からなるピラー8、8がそれぞれ介
装され、各ピラー8、8によって対向する電磁石10、
10を直接支持するように構成されたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シンクロトロン放射(s
ynchrotron radiation)の光源装置を構成する多連偏向
電磁石装置に関する。
【0002】
【従来の技術】シンクロトロン放射は、光とほぼ同じ速
度を持つ高エネルギー電子が磁界により円軌道を運動す
るときに発生する光であり、電子のエネルギーが十分に
高ければ、そのスペクトルは真空紫外領域からX線領域
に及ぶ連続分布を示し、その波長域の汎用光源になる。
【0003】そして、本出願人は、特願平3−2874
94号において図10、図11に示す多連偏向電磁石装
置を上述の光源装置として提案した。図10、図11に
おいて、1は磁極、2は継鉄、3は励磁用コイル、4
a、4bは架台、5は垂直磁場発生用電磁石、6は水平
磁場発生用電磁石、7は端部用電磁石である。
【0004】つまり、多連偏向電磁石装置は、図10に
示すように、磁極1、継鉄2及び励磁用コイル3によっ
て磁気回路が構成され、励磁用コイル3に電流を流すこ
とにより磁極間に偏向磁場が発生するように構成されて
いる。また図11に示すように、架台4a上に垂直磁場
発生用電磁石5及び水平磁場発生用電磁石6が交互に配
置され、両端に端部用電磁石7、7がそれぞれ配置され
ている。ここでこの装置を単純化して水平磁場発生用電
磁石6がないものと仮定すれば、他の垂直磁場発生用電
磁石5は、電子ビーム軸に沿って交互に極性が反転する
ように電気的な結線がなされている。また、図10、図
11によれば、端部用電磁石7も垂直磁場発生用電磁石
5と同様のものに看做されるが、端部用電磁石7は偏向
能力が内側の電磁石の半分になるようにする必要があ
り、それには全ての電磁石を直列励磁できるように端部
の電磁石は励磁用コイルの巻き数を減らすか、端部は別
電源とし、その励磁電流を減らすかして偏向の力を調整
するようにすればよい。
【0005】上述した条件下で垂直磁場発生用電磁石5
は周期的に変化する磁場を発生し、入射した電子ビーム
はローレンツ力により磁場と直交する力を受けて周期的
に蛇行する。この時、電子は加速度を受けシンクロトロ
ン放射を行なう。
【0006】例えば、上記周期磁場Byを式(1)で表
わせば、電子軌道のz軸に対する最大の傾きΨ0とγ-1
との比Kは、磁場強度B0(テスラ)と周期長λu(c
m)とで式(2)で表わされる。 By=B0sin(2πz/λu)・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1) K=Ψ0/γ-1=0.934B0(テスラ)λu(cm)・・・・・・・・(2) 但し、電子のエネルギーをE(GeV)とすればγは式
(3)で表わされる。 γ=1957・E・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) また、このシンクロトロン放射の基本波長λ1は、式
(4)で表わされる値になり、Kが大きくなる値、即ち
周期長λuが長く、磁場が高いほど、あるいは電子ビー
ムのエネルギーが低いほど基本波の波長が長くなること
が判る。 λ1=λu(1+K2/2)/2γ2・・・・・・・・・・・・・・・・・(4) 一方、放射光の強度は周期数Nを増すと、N倍から可干
渉性により最大でN2倍に増幅される。更に、高調波特
性がこのK値に強く依存し、K≪の場合にはスペクトル
は基本波のみとなり、K≫1の場合には円軌道のシンク
ロトロン放射によく似た高調波の列となり、広帯域連続
スペクトル光となる。K<3の放射をアンジュレータ放
射、K>3の場合をウィグラー放射と呼んでいる。特
に、アンジュレータ放射は、円軌道のシンクロトロン放
射の103〜104倍の高輝度が得られ、波長可変の準単
色光となり、電子ビームの蛇行面に平行な電気ベクトル
を持つ直線偏向となる。この特性は極めて実用的価値の
高いものである。
【0007】例えば、上述のような電磁石の配列が可能
な周期長(水平磁場発生用電磁石2台分の長さに相当す
る)λuを60(cm)として、電子のエネルギーが6
(GeV)の電子蓄積リングに用いる場合、式(3)に
よりγ=11742、K=2.5とし、式(1)より磁
場強度B0を0.0446(テスラ)とすれば、式(4)
よりアンジュレータ放射の基本波長は約900(nm)
になることが判る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
多連偏向電磁石装置は、上述のように構成されているた
め、個別の偏向電磁石を複数台並べて配置する必要があ
り、構造が複雑で且つ大掛りになるという課題があっ
た。また、波長の選択には式(3)、(4)からも明ら
かなように電子ビームエネルギーまたはK値(パラメー
タ)を制御する必要があり、また、多連偏向電磁石装置
を装着する電子蓄積リングのビームエネルギーは長期間
に亘って固定されているのが普通であるから、波長の選
択には日常的にはK値を可変にすることによって行なわ
れている。しかしながら、従来の多連偏向電磁石装置の
場合には周期長を可変にしたり周期数を変更することが
困難であるなどという課題があった。
【0009】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたもので、装置全体を小型化すると共に周期長及び周
期数を変えることができる多連偏向電磁石装置を提供す
ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載
の多連偏向電磁石装置は、電子ビームの軌道上に配置さ
れ、この電子を蛇行させるための磁場を発生させる磁場
発生手段を備え、この磁場発生手段は、複数の垂直また
は水平に対向配置される磁極を持つ電磁石を有するとと
もに、互いに対向する電磁石同士はこれら両者間に介装
した非磁性材料からなる支持部材により支持されたもの
である。
【0011】また、本発明の請求項2に記載の多連偏向
電磁石装置は、電子ビームの軌道上に配置され、この電
子を蛇行させるための磁場を発生させる磁場発生手段を
備え、この磁場発生手段は、複数の垂直または水平に対
向配置される磁極を持つ電磁石を有するとともに、互い
に対向する電磁石同士はこれらの一方の側縁部で非磁性
材料からなる湾曲支持部材により支持されたものであ
る。
【0012】また、本発明の請求項3に記載の多連偏向
電磁石装置は、電子ビームの軌道上に配置され、この電
子を蛇行させるための磁場を発生させる磁場発生手段を
備え、この磁場発生手段は、複数の偏向電磁石をビーム
軌道上に等間隔に配設して構成され、かつ各電磁石間の
間隔をそれぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を
備えたものである。
【0013】また、本発明の請求項4に記載の多連偏向
電磁石装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の
発明において、各磁極の対向面を電子ビームの軸方向の
長さを段階的に変化させて形成すると共に、これらの各
磁極を電子ビームの軸方向と直交する方向へ移動させる
移動機構を設けたものである。
【0014】また、本発明の請求項5に記載の多連偏向
電磁石装置は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
発明において、電子ビームの軌道軸及び磁場の方向に垂
直な方向に、薄い電磁鋼板を積層して各磁極及び継鉄を
形成したものである。
【0015】また、本発明の請求項6に記載の多連偏向
電磁石装置は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
発明において、各磁極の極性パターンを選択する励磁切
替回路を設けたものである。
【0016】
【作用】本発明の請求項1に記載の発明によれば、複数
の垂直または水平に対向配置される磁極を持つ電磁石か
ら構成し、対向する電磁石同士を非磁性材料部材で支持
したため、電磁石を小型化することができ、また、励磁
用コイルが内径側から寸法制限されるだけのため、電磁
石を容易且つ低コストで製作することができる。
【0017】また、本発明の請求項2に記載の発明によ
れば、複数の垂直または水平に対向配置される磁極を持
つ電磁石から構成し、対向する電磁石同士を非磁性材料
からなる湾曲支持部材の両端で支持したため、磁極周辺
の空間が広くなり、電磁石を分解することなく真空ダク
トを取り付け、取り外すことができ、保守点検の作業性
に優れている。
【0018】また、本発明の請求項3に記載の発明によ
れば、磁場発生手段として複数の偏向電磁石をビーム軌
道上に等間隔に配設して構成し、各電磁石間の間隔をそ
れぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を設けたた
め、電磁石を小型化して容易且つ低コストで製作するこ
とができ、しかもシンクロトロン放射の基本波長を容易
に変えることができる。
【0019】また、本発明の請求項4に記載の発明によ
れば、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明にお
いて、各磁極の対向面を電子ビームの軸方向の長さを段
階的に変化させて形成すると共にこれらの各磁極を電子
ビームの軸方向と直交する方向へ移動させる移動機構を
設けたため、磁場の周期を変えてシンクロトロン放射の
基本波長を容易に変えることができる。
【0020】また、本発明の請求項5に記載の発明によ
れば、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明にお
いて、電子ビームの軌道軸及び磁場の双方に垂直方向に
薄い電磁鋼板を積層して各磁極及び継鉄を形成したた
め、磁極間のピッチ及び磁極の長さを高精度に製作し、
しかも低コストで大量生産することができる。
【0021】また、本発明の請求項6に記載の発明によ
れば、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明にお
いて、各磁極の極性パターンを選択する励磁切替回路を
設けたため、必要に応じて励磁切換器を適宜切り換える
だけでシンクロトロン放射の基本波長を容易に変更する
ことができる。
【0022】
【実施例】以下、図1〜図9に示す実施例に基づいて従
来と同一または相当部分には同一符号を付して本発明を
説明する。図1は本発明の多連偏向電磁石装置の一実施
例を示す図で、同図(a)はその斜視図、同図(b)は
同図(a)のB−B線に沿った断面図、図2は本発明の
多連偏向電磁石装置の他の実施例を示す図で、同図
(a)はその斜視図、同図(b)は同図(a)のB−B
線に沿った断面図、図3は本発明の多連偏向電磁石装置
の更に他の実施例を示す図で、同図(a)はその斜視
図、同図(b)は同図(a)のB−B線に沿った断面
図、図4は本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施
例を示す斜視図、図5は本発明の多連偏向電磁石装置の
更に他の実施例を示す斜視図、図6は本発明の多連偏向
電磁石装置の更に他の実施例を示す図で、同図(a)は
その斜視図、同図(b)は同図(a)の磁極間でのビー
ム軌道を説明するための平面図、図7は本発明の多連偏
向電磁石装置の更に他の実施例を示す図で、同図(a)
はその鉄心部を示す斜視図、同図(b)は同図(a)の
電磁鋼板を示す平面図、図8は本発明の多連偏向電磁石
装置の更に他の実施例のコイルの結線状態を示す説明
図、図9(a)、(b)、(c)はそれぞれ図8に示す
多連偏向電磁石装置の励磁パターンを示す説明図であ
る。
【0023】実施例1.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図1(a)、(b)に示すように、垂直方向で対向
配置された上下一対の磁極1、1、これらの磁極1、1
がそれぞれ一体化した継鉄2、2及び各磁極1、1をそ
れぞれ励磁する励磁用コイル3、3を有する電磁石10
を備え、且つ上下の各電磁石10、10はそれぞれ電子
ビームの軌道に沿って所定間隔を空けてそれぞれ一体の
継鉄2、2に一体化した状態で複数配置され、電子を蛇
行させる磁場発生手段として構成されている。そして、
本実施例では、上下の各磁極1、1の両側端部間に非磁
性材料からなるピラー8、8がそれぞれ支持部材として
介装され、各ピラー8、8によって対向する電磁石1
0、10を直接支持するようになっている。そして、各
ピラー8、8は、同図(b)に示すように、励磁用コイ
ル3、3の内側に位置し且つ磁極1、1間に配設されて
いる。
【0024】従って本実施例によれば、非磁性材料から
なるピラー8を励磁用コイル3の大きさと無関係に磁極
1、1の対向面を直接支持するとができ、しかも継鉄2
の幅を磁極1と同一幅に形成することができるため、電
磁石10を小型化することができる。また、励磁用コイ
ル3は、内径側から寸法制限されるだけのため、電磁石
10を容易に製作することができる。
【0025】実施例2.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図2(a)、(b)に示すように、垂直方向で対向
配置された上下一対の磁極1、1、これらの磁極1、1
がそれぞれ一体化した継鉄2、2及び各磁極1、1をそ
れぞれ励磁する励磁用コイル3、3を有する電磁石10
を備え、且つ上下の各電磁石10、10はそれぞれ電子
ビームの軌道に沿って所定間隔を空けてそれぞれ一体の
継鉄2、2に一体化した状態で複数配置され、電子を蛇
行させる磁場発生手段として構成されている。そして本
実施例では、上下の各磁極1、1間に非磁性材料からな
る真空ダクト9が真空ダクト兼支持部材として介装さ
れ、この真空ダクト9よって対向する電磁石10、10
を直接支持するように構成されている。そして、真空ダ
クト9は、同図(b)に示すように、励磁用コイル3、
3の内側に位置し且つ磁極1、1間に配設されている。
【0026】従って、本実施例によれば、実施例1と同
様の作用効果を期することができる他、本実施例では真
空ダクト9を磁極1、1間に介装してあるため、真空ダ
クト9を組み立てた状態のまま電磁石10、10間に組
み込むことができ、従来の真空ダクトのように組み立て
時に上下に分解できる構造にしておく必要がなく、真空
ダクト9に組み立てを簡素化することができ、これによ
って真空ダクトを別途設ける必要がない。
【0027】実施例3.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図3(a)、(b)に示すように、垂直方向で対向
配置された上下一対の磁極1、1、これらの磁極1、1
がそれぞれ一体化した継鉄2、2及び各磁極1、1をそ
れぞれ励磁する励磁用コイル3、3を有する電磁石10
を備え、且つ上下の各電磁石10、10はそれぞれ電子
ビームの軌道に沿って所定間隔を空けてそれぞれ一体の
継鉄2、2に一体化した状態で複数配置され、電子を蛇
行させる磁場発生手段として構成されている。そして、
本実施例では、上下の各磁極1、1を形成する継鉄2、
2それぞれの一側端が非磁性材料を湾曲してC型に形成
されたC型ピラー11にそれぞれ接続され、C型ピラー
11によって対向する電磁石10、10を直接支持する
ように構成されている。
【0028】従って、本実施例によれば、実施例1と同
様の作用効果を期することができる他、本実施例ではC
型ピラー11で磁極1、1を支持するようにしたため、
磁極1、1周辺の空間が広くなり、電磁石10を分解す
ることなく真空ダクトを取り付け、取り外すことがで
き、保守点検の作業性に優れている。
【0029】実施例4.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図4に示すように、垂直方向で対向配置された上下
一対の磁極1、1、これらの磁極1、1が形成された継
鉄2、2及び各磁極1、1をそれぞれ励磁する励磁用コ
イル3、3を有する電磁石10を備え、且つ上下の各電
磁石10、10はそれぞれ独立した状態で電子ビームの
軌道に沿って等間隔を空けて複数配置され、電子を蛇行
させる磁場発生手段として構成されている。そして、本
実施例では、上下の各磁極1、1を継鉄2、2を介して
C型に形成された偏向電磁石12として一体化し、しか
も上下の各電磁石10がそれぞれ隣の上下の電磁石10
から独立し、これらはレール13上を移動できるように
構成されている。更に、各電磁石10は、それぞれの上
側の継鉄2においてそれぞれ連結器14により連結さ
れ、図示しない駆動機構により連結器15を駆動して互
いの間隔を等しく保ったまま狭くしたり、広くしたりす
ることができるように構成されている。尚、上記レール
13及び連結器14により電磁石10、10間の間隔を
それぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を構成し
ている。
【0030】従って、本実施例によれば、端部に配置さ
れた偏向電磁石10のみをビーム軸Bの方向で移動させ
ると、他の電磁石10も連結器14を介して連動して引
っ張られ、各電磁石10、10の間隔を常に等しくした
状態で移動させ、磁場の周期長を変えてシンクロトロン
放射の基本波長λ1を容易に変えることができる。その
他上記各実施例に準じた作用効果を期することができ
る。
【0031】実施例5.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図5に示すように、垂直方向で対向配置された上下
一対の磁極1、1、これらの磁極1、1が一体化した継
鉄2、2及び各磁極1、1をそれぞれ励磁する励磁用コ
イル3、3を有する電磁石10を備え、且つ上下の各電
磁石10、10はそれぞれ電子ビームの軌道に沿って所
定間隔を空けてそれぞれ一体の継鉄2、2に複数配置さ
れ、電子を蛇行させる磁場発生手段として構成されてい
る。そして本実施例では、上下の各磁極1、1の両側端
部間に非磁性材料からなるピラー8、8がそれぞれ実施
例1の場合と同様に介装され、各ピラー8、8によって
対向する電磁石10、10を直接支持するように構成さ
れている。そして、各ピラー8、8は、励磁用コイル
3、3の内側に位置し且つ磁極1、1間に配設されてい
る。
【0032】また、各継鉄2、2のうち上側の継鉄2に
は電子ビームの軌道軸方向に沿って細長い長孔15が形
成され、上側の各磁極1には磁極固定ボルト16が取り
付けられ、これらの各磁極固定ボルト16により上側の
各磁極1が移動可能に連結されている。そして、上記各
電磁石10、10は磁極固定ボルト16を介して電子ビ
ームの軌道軸に沿ってそれぞれ移動させ、磁極固定ボル
ト16により適宜固定できるように構成されている。更
に、上記電磁石10は位置決めピン17によって所定位
置で位置決めできるように構成されている。
【0033】従って、本実施例によれば、各電磁石10
は、継鉄2の長孔15及び磁極固定ボルト16を介して
電子ビームの軌道軸方向の任意の位置で固定して磁極
1、1の周期を変えてシンクロトロン放射の基本波長λ
1を容易に変えることができる。また、電磁石10を固
定する際には下側継鉄2の磁極側位置決めピン17によ
って精度良く位置決めすることができる。その他上記各
実施例に準じた作用効果を期することができる。
【0034】実施例6.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図6(a)に示すように、垂直方向で対向配置され
た上下一対の磁極1、1、これらの磁極1、1がそれぞ
れ一体化した継鉄2、2及び各磁極1、1をそれぞれ励
磁する励磁用コイル3、3を有する電磁石10を備え、
且つ上下の各電磁石10、10はそれぞれ電子ビームの
軌道に沿って所定間隔を空けてそれぞれ一体の継鉄2、
2に一体化した状態で複数配置され、電子を蛇行させる
磁場発生手段として構成されている。そして、本実施例
では、上下の各磁極1、1を形成する継鉄2、2それぞ
れの一側端が非磁性材料を湾曲してコ字状に形成された
ピラー11にそれぞれ接続され、コ字状ピラー11によ
って対向する電磁石10、10を直接支持するように構
成されている。そして、上記各磁極1は、同図(b)に
示すように、上記各磁極1、1の対向面を上記電子ビー
ムの軌道軸B方向の長さを段階的に変化させて形成する
と共に、これらの各磁極1、1を電子ビームの軌道軸B
方向と直交する方向へレール13に沿って移動させるよ
うに構成されている。
【0035】従って、本実施例によれば、上記各磁極
1、1の対向面を上記電子ビームの軌道軸B方向の長さ
を段階的に変化させて形成すると共に、これらの各磁極
1、1を電子ビームの軌道軸B方向と直交する方向へレ
ール13に沿って移動させるように構成されているた
め、磁極1、1間の間隔を段階的に変えることにより同
図(b)の電子ビームの各軌道軸B1、B2、B3での磁
場の周期を変えてシンクロトロン放射の基本波長λ1
容易に変えることができる。その他上記各実施例に準じ
た作用効果を期することができる。
【0036】実施例7.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図7(a)に示すように、その鉄心部18の構造を
上記各実施例と異にする以外は上記各実施例に応じて構
成されている。そこで、本実施例に用いられる鉄心部1
8について説明すると、この鉄心部18は、同図に示す
ように、電子ビームの軌道軸及び磁場の双方に垂直方向
に薄い電磁鋼板19を積層して各磁極1及び継鉄2が一
体的に形成され、そして各電磁鋼板19は連結固定柱2
0及び締付ボルト21によってそれぞれ一体化されてい
る。また、縦列の各磁極1及び継鉄2はそれぞれ端板2
2及びキー23によって連結され、これら両者によって
磁極1、1間の相対的な位置を位置決めするように構成
されている。
【0037】従って、本実施例によれば、電子ビームの
軌道軸及び磁場の双方に垂直方向に、同一パターンに打
ち抜いた薄い電磁鋼板19を積層して各磁極1及び継鉄
2が一体的に形成されているため、磁極1、1間のピッ
チ及び磁極1の長さを高精度に製作することができ、こ
れによって磁場の周期の精度を向上させることができ
る。また、各電磁石10を構成する磁極1、継鉄2をモ
ジュール化することにより、磁極1の追加、削減を容易
に行なうことができ、用途に応じて放射光強度の選定を
容易に行なうことができる。更に、各磁極1が図7
(b)に示すように単一形状の電磁鋼板19からなるた
め、製作の機械化が容易で、低コストで大量生産するこ
とができる。その他上記各実施例に準じた作用効果を期
することができる。
【0038】実施例8.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図8に示すように、上下の各磁極1、1を励磁する
各励磁用コイル3、3に各磁極1、1の極性パターンを
選択する励磁切換器24と、この切換器24に電源を供
給する電源装置25を備えた以外は上記各実施例に準じ
て構成されている。従って、この励磁切換器24によっ
て上記各磁極1、1の極性パターン、つまり磁場の周期
長を適宜切り換えるように構成されている。例えば、図
9(a)のように全て励磁用コイル3、3によって上下
の各磁極1、1を全て励磁した場合の各磁極1、1の極
性パターンの周期長をλuとすれば、同図(b)のよう
に一つ置きに上下の各磁極1、1を励磁用コイル3、3
によって励磁すれば、この時の磁場の周期長は2λu
なり、同図(c)のように二つ置きに上下の各磁極1、
1を励磁用コイル3、3によって励磁すれば、この時の
磁場の周期長は3λuとなるように構成されている。
【0039】従って、本実施例によれば、励磁切換器2
4によって各磁極1、1の極性パターンを図9の
(a)、(b)、(c)に示すように切り換えるように
したため、必要に応じて励磁切換器24を適宜切り換え
るだけで磁場の周期長、つまりシンクロトロン放射の基
本波長を容易に変更することができる。その他上記各実
施例に準じた作用効果を期することができる。
【0040】尚、上記各実施例では、磁極1、1をそれ
ぞれ上下で対をなすものについて説明したが、各磁極
1、1は水平方向で対をなすように配置しても同様の作
用効果を期することができる。また、本発明は、上記各
実施例に何等制限されるものではなく、本発明の要旨を
逸脱しない限り、全て本発明に包含される。
【0041】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の発明によれ
ば、複数の垂直または水平に対向配置される磁極を持つ
電磁石から構成し、対向する電磁石同士を非磁性材料部
材で支持したため、電磁石を小型化することができ、ま
た、励磁用コイルが内径側から寸法制限されるだけのた
め、電磁石を容易且つ低コストで製作することができる
多連偏向電磁石装置を提供することができる。
【0042】また、本発明の請求項2に記載の発明によ
れば、複数の垂直または水平に対向配置される磁極を持
つ電磁石から構成し、対向する電磁石同士を非磁性材料
からなる湾曲支持部材の両端で支持したため、磁極周辺
の空間が広くなり、電磁石を分解することなく真空ダク
トを取り付け、取り外すことができ、保守点検の作業性
に優れた多連偏向電磁石装置を提供することができる。
【0043】また、本発明の請求項3に記載の発明によ
れば、磁場発生手段として複数の偏向電磁石をビーム軌
道上に等間隔に配設して構成し、各電磁石間の間隔をそ
れぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を設けたた
め、電磁石を小型化して容易且つ低コストで製作するこ
とができ、しかも磁場の周期長を変えてシンクロトロン
放射の基本波長を容易に変えることができる多連偏向電
磁石装置を提供することができる。
【0044】また、本発明の請求項4に記載の発明によ
れば、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明にお
いて、各磁極の対向面を電子ビームの軸方向の長さを段
階的に変化させて形成すると共にこれらの各磁極を電子
ビームの軸方向と直交する方向へ移動させる移動機構を
設けたため、磁場の周期長を変えてシンクロトロン放射
の基本波長を容易に変えることができる多連偏向電磁石
装置を提供することができる。
【0045】また、本発明の請求項5に記載の発明によ
れば、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明にお
いて、電子ビームの軌道軸及び磁場の双方に垂直方向に
薄い電磁鋼板を積層して各磁極及び継鉄を形成したた
め、磁極間のピッチ及び磁極の長さを高精度に製作し、
しかも低コストで大量生産することができる多連偏向電
磁石装置を提供することができる。
【0046】また、本発明の請求項6に記載の発明によ
れば、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明にお
いて、各磁極の極性パターンを選択する励磁切替回路を
設けたため、必要に応じて励磁切換器を適宜切り換える
だけで磁場の周期長を変えてシンクロトロン放射の基本
波長を容易に変えることができる多連偏向電磁石装置を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多連偏向電磁石装置の一実施例を示す
図で、同図(a)はその斜視図、同図(b)は同図
(a)のB−B線に沿った断面図である。
【図2】本発明の多連偏向電磁石装置の他の実施例を示
す図で、同図(a)はその斜視図、同図(b)は同図
(a)のB−B線に沿った断面図である。
【図3】本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施例
を示す図で、同図(a)はその斜視図、同図(b)は同
図(a)のB−B線に沿った断面図である。
【図4】本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施例
を示す斜視図である。
【図5】本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施例
を示す斜視図である。
【図6】本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施例
を示す図で、同図(a)はその斜視図、同図(b)は同
図(a)の磁極間でのビーム軌道を説明するための平面
図である。
【図7】本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施例
を示す図で、同図(a)はその鉄心部を示す斜視図、同
図(b)は同図(a)の電磁鋼板を示す平面図である。
【図8】本発明の多連偏向電磁石装置の更に他の実施例
のコイルの結線状態を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)、(c)はそれぞれ図8に示す
多連偏向電磁石装置の励磁パターンを示す説明図であ
る。
【図10】従来の多連偏向電磁石装置の一例を示す正面
図である。
【図11】図10に示す多連偏向電磁石装置を示す側面
図である。
【符号の説明】
1 磁極 2 継鉄 3 励磁用コイル 8 ピラー 9 真空ダクト 10 電磁石 11 C型ピラー 12 偏向電磁石 13 レール(移動機構) 14 連結器(移動機構) 15 長孔(移動機構) 19 電磁鋼板 24 励磁切換器
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年12月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正内容】
【0006】例えば、上記周期磁場Byを式(1)で表
わせば、電子軌道のz軸に対する最大の傾きΨ0とγ-1
との比Kは、磁場強度B0(テスラ)と周期長λu(c
m)とで式(2)で表わされる。 By=B0sin(2πz/λu)・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1) K=Ψ0/γ-1=0.934B0(テスラ)λu(cm)・・・・・・・・(2) 但し、電子のエネルギーをE(GeV)とすればγは式
(3)で表わされる。 γ=1957・E・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) また、このシンクロトロン放射の基本波長λ1は、式
(4)で表わされる値になり、Kが大きくなるほど、即
ち周期長λuが長く、磁場が高いほど、あるいは電子ビ
ームのエネルギーが低いほど基本波の波長が長くなるこ
とが判る。 λ1=λu(1+K2/2)/2γ2・・・・・・・・・・・・・・・・・(4) 一方、放射光の強度は周期数Nを増すと、N倍から可干
渉性により最大でN2倍に増幅される。更に、高調波特
性がこのK値に強く依存し、K≪の場合にはスペクトル
は基本波のみとなり、K≫1の場合には円軌道のシンク
ロトロン放射によく似た高調波の列となり、広帯域連続
スペクトル光となる。K<3の放射をアンジュレータ放
射、K>3の場合をウィグラー放射と呼んでいる。特
に、アンジュレータ放射は、円軌道のシンクロトロン放
射の103〜104倍の高輝度が得られ、波長可変の準単
色光となり、電子ビームの蛇行面に平行な電気ベクトル
を持つ直線偏向となる。この特性は極めて実用的価値の
高いものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】また、本発明の請求項3に記載の発明によ
れば、磁場発生手段として複数の偏向電磁石をビーム軌
道上に等間隔に配して構成し、各電磁石間の間隔をそ
れぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を設けたた
め、電磁石を小型化して容易且つ低コストで製作するこ
とができ、しかもシンクロトロン放射の基本波長を容易
に変えることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】実施例4.本実施例の多連偏向電磁石装置
は、図4に示すように、垂直方向で対向配置された上下
一対の磁極1、1、これらの磁極1、1が形成された継
鉄2、2及び各磁極1、1をそれぞれ励磁する励磁用コ
イル3、3を有する電磁石10を備え、且つ上下の各電
磁石10、10はそれぞれ独立した状態で電子ビームの
軌道に沿って等間隔を空けて複数配置され、電子を蛇行
させる磁場発生手段として構成されている。そして、本
実施例では、上下の各磁極1、1を継鉄2、2を介して
C型に形成された偏向電磁石12として一体化し、しか
も上下の各電磁石10がそれぞれ隣の上下の電磁石10
から独立し、これらはレール13上を移動できるように
構成されている。更に、各電磁石10は、それぞれの上
側の継鉄2においてそれぞれ連結器14により連結さ
れ、図示しない駆動機構により連結器1を駆動して互
いの間隔を等しく保ったまま狭くしたり、広くしたりす
ることができるように構成されている。尚、上記レール
13及び連結器14により電磁石10、10間の間隔を
それぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を構成し
ている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松井 重明 神戸市兵庫区和田崎町1丁目1番2号 三 菱電機株式会社神戸製作所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子ビームの軌道上に配置され、この電
    子を蛇行させるための磁場を発生させる磁場発生手段を
    備え、この磁場発生手段は、複数の垂直または水平に対
    向配置される磁極を持つ電磁石を有するとともに、互い
    に対向する電磁石同士はこれら両者間に介装した非磁性
    材料からなる支持部材により支持されたことを特徴とす
    る多連偏向電磁石装置。
  2. 【請求項2】 電子ビームの軌道上に配置され、この電
    子を蛇行させるための磁場を発生させる磁場発生手段を
    備え、この磁場発生手段は、複数の垂直または水平に対
    向配置される磁極を持つ電磁石を有するとともに、互い
    に対向する電磁石同士はこれらの一方の側縁部で非磁性
    材料からなる湾曲支持部材により支持されたことを特徴
    とする多連偏向電磁石装置。
  3. 【請求項3】 電子ビームの軌道上に配置され、この電
    子を蛇行させるための磁場を発生させる磁場発生手段を
    備え、この磁場発生手段は、複数の偏向電磁石をビーム
    軌道上に等間隔に配設して構成され、各電磁石間の間隔
    をそれぞれ等しく保ったまま移動させる移動機構を備え
    たことを特徴とする多連偏向電磁石装置。
  4. 【請求項4】 各磁極の対向面を電子ビームの軸方向の
    長さを段階的に変化させて形成すると共に、これらの各
    磁極を上記電子ビームの軸方向と直交する方向へ移動さ
    せる移動機構を設けたことを特徴とする請求項1〜請求
    項3のいずれかに記載の多連偏向電磁石装置。
  5. 【請求項5】 垂直または水平に対向配置された電磁石
    の磁極および継鉄を、電子ビームの軌道軸及び磁場の方
    向に垂直な方向に薄い電磁鋼板を積層して形成したこと
    を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の多
    連偏向電磁石装置。
  6. 【請求項6】 各磁極の極性パターンを選択する励磁切
    替回路を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5の
    いずれかに記載の多連偏向電磁石装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010146628A1 (ja) * 2009-06-18 2010-12-23 株式会社日立製作所 挿入光源
JP2011034818A (ja) * 2009-08-03 2011-02-17 Hitachi Ltd 偏向電磁石装置及び挿入光源装置
JP2014075294A (ja) * 2012-10-05 2014-04-24 Toshiba Corp 荷電粒子偏向装置、荷電粒子照射装置、荷電粒子加速器、及び、荷電粒子偏向装置の製造方法
CN108696981A (zh) * 2018-05-31 2018-10-23 北京鑫智能技术股份有限公司 一种用于辐照加速器的α磁铁

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JP2011034818A (ja) * 2009-08-03 2011-02-17 Hitachi Ltd 偏向電磁石装置及び挿入光源装置
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