JPH0756608A - 信号処理方法 - Google Patents

信号処理方法

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JPH0756608A
JPH0756608A JP20320593A JP20320593A JPH0756608A JP H0756608 A JPH0756608 A JP H0756608A JP 20320593 A JP20320593 A JP 20320593A JP 20320593 A JP20320593 A JP 20320593A JP H0756608 A JPH0756608 A JP H0756608A
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JP
Japan
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output
actual
error
model
signal processing
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Application number
JP20320593A
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English (en)
Inventor
Riyouichi Danki
亮一 段木
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 最適化に用いる実績値の経時変化成分に影響
されることなく最適化を可能にするとともに、近未来の
変動予測を可能にする。 【構成】 所定の処理条件下で与えられた入力情報に対
して前記シミュレーション・モデルからの予測出力と前
記現実の処理プロセスから得られる実績値とを評価する
評価関数として分散を定義し、モデル誤差のバラツキ
(分散あるいは標準偏差)を補正した後、実績値の経時
変化成分を抽出した経時変化情報で修正することによ
り、模擬対象である処理プロセス1の近未来の挙動を予
測する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ある物理現象を数式
で近似したシミュレーション・モデル、例えば制御モデ
ル、計測モデル、設定量決定モデル等のシミュレーショ
ン・モデルの最適化を必要とする分野において、これら
シミュレーション・モデルを模擬対象からの実績値に基
づいて最適化を行う信号処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼プラント等を構成する大規模な各処
理プロセス(物理現象)に対して、多品種製品のそれぞ
れに対し所望の特性が得られるように各処理条件を設定
し直す場合、実際に対象となる処理プロセスを稼働させ
て得られた結果(出力情報)に基づいて逐次最適な処理
条件の設定を行うと、膨大なコストが必要になる。
【0003】そこで、従来は予め上記処理プロセスを数
式で表したシミュレーション・モデル(特に、プロセス
特性を数式で表したモデル)を用意し、このシミュレー
ション・モデルに対して所望の特性となる出力結果が得
られるように処理条件を逐次変更し、所定の入力に対し
て所望の特性が得られるようになった時点で処理プロセ
スの処理条件を設定した後、実際に処理プロセスを稼働
させるのが一般的であった。
【0004】図20は、実際に稼働している処理プロセ
ス1の実際の出力結果(処理済み材料の各種測定値)が
所望の特性を有するように、最適な処理条件に設定し直
すための従来の信号処理方法を実現する信号処理装置A
の構造を示す図である。
【0005】この図において、従来の信号処理装置A
は、実際の対象となる処理プロセス1を数式で近似する
ように表されたシミュレーション・モデル3と、このシ
ミュレーション・モデル3からの出力(予測出力)と予
め用意されている所望特性4とを比較して誤差を算出
し、さらに上記所望特性4に近似した値を得るように、
このシミュレーション・モデル3に対して順次処理条件
の変更指示を行う誤差評価手段2から構成されている。
【0006】すなわち、従来の信号処理装置Aでは、実
際に処理プロセス1に供給される材料の情報として、セ
ンサ(図示せず)等により得られた各種測定値である複
数のパラメータ及び処理プロセスの設定条件パラメータ
j をシミュレーション・モデル3に入力し、上記処理
プロセス1の予測出力Xj としてシミュレーション・モ
デル3からその予測値を得ている。
【0007】このシミュレーション・モデル3からの予
測出力Xj を得る動作と平行して誤差評価手段2では、
逐次このシミュレーション・モデル3の予測出力Xj
所望特性4の誤差を求め、この誤差が所定範囲内にない
場合、新たにシミュレーション・モデル3に対して各処
理条件の変更を指示し、さらにシミュレーション・モデ
ル3の予測出力Xj が所望特性4に近づくように各種処
理条件の設定を行っている。
【0008】そして、上記誤差評価手段2は、シミュレ
ーション・モデル3の予測出力Xjと所望特性4との誤
差が許容範囲内になったと判断した場合、このシミュレ
ーション・モデル3にすでに指示している各種処理条件
を最適な処理条件として、上記実際の模擬対象である処
理プロセス1に対して最適な処理条件の設定指示を行
う。
【0009】ところが、上述した従来の信号処理装置A
において特に問題となるのは、この信号処理装置Aで行
なうシミュレーションの精度及び信頼性がシミュレーシ
ョン・モデル3の完成度に大きく依存している点であ
る。すなわち、処理プロセス1の動作を模擬するシミュ
レーション・モデル3がどの程度までこの処理プロセス
1の特性を近似しているか(十分に近似された数式で表
されているか)によって、当該信号処理装置Aが行うシ
ミュレーションの精度及び信頼性の良否が決るというこ
とである。
【0010】そこで、従来は一定期間ごとに従来の信号
処理装置Aにおけるシミュレーション・モデル3から得
られた予測出力Xj と現実の処理済み材料の各種測定値
(Tj )から、重回帰等の最適化手段5を用いて最適値
を算出し、この最適値にしたがって当該信号処理装置A
におけるシミュレーション・モデル3を現実の処理プロ
セス1に近似させるチューニングを人手により行ってい
た。
【0011】また、上述したシミュレーション・モデル
3は、必ずしも実際の物理現象(模擬対象である処理プ
ロセス)を正確に表現することには限界があるため、こ
こで発生する予測誤差を処理済み材料から現実に得られ
た実績値との誤差で逐次的に補正しようとする手法があ
る。この手法は一般に移動平均手法と呼ばれている。具
体的には、例えば同手法の1つである指数平滑法は以下
の数式1に示すように、漸化式で表される数式につい
て、過去の予測値(過去の予測値とは、前回、次の予測
値として求められた値が次回の過去の予測値となる)を
用い、この過去の予測値を次の予測値にどれだけ寄与す
るかをパラメータαを定義することにより最新の予測値
を決定する手法であり(ただし、0<α<1の範囲をと
る実数で定義される)、過去の予測値の寄与は、αのk
乗で減衰することになる。したがって、最新の予測値
(誤差情報)△W(t+1)は、下記の関係にある。
【0012】
【数1】
【0013】ただし、tは正数とする。
【0014】なお、この手法のほかにも上述したように
最適値を得る最適化手段5が行っている最適化手法につ
いて以下説明する。
【0015】まず、直線回帰手法は、測定量X、Yにつ
いて一次関数の関係がある場合、n組の測定値をxi
i (i=1、2、…、n)として、 y(xi )=a+b・xi とおく。上式におけるxi の分散が無視できるほど小さ
く、かつyi が正規分布に従い、分散σ2 が全て等しい
時、上記一次関数の評価関数を
【0016】
【数2】
【0017】と定義し、この評価関数χ2 を最小にする
各係数a、bを求めるに当たり、
【0018】
【数3】
【0019】の連立方程式を解くことにより、最適化を
行う。したがって、この連立方程式を以下のように書き
直し、
【0020】
【数4】
【0021】正規方程式とすることで、最適解a、bを
得る。
【0022】
【数5】
【0023】ただし、
【0024】
【数6】
【0025】とする。
【0026】次に、曲線回帰手法について説明する。こ
の手法はn組の測定値xi 、yi (i=1、2、…、
n)が以下の2次関数の関係にある場合、 Y=a+b・X+c・X2 この関数に対して、評価関数を
【0027】
【数7】
【0028】で定義し、この評価関数χ2 を最小にする
各係数a、b、cを求めるため、以下の偏微分方程式 ∂χ2 /∂a=0,∂χ2 /∂b=0,∂χ2 /∂c=
0 から、以下の連立方程式を得る。
【0029】
【数8】
【0030】そして、この連立方程式について各係数
a、b、cを求めることにより、最適解を得る。
【0031】次に、以下の多項式について、最小2乗法
を用いて最適化を行う場合について説明する。
【0032】変数Yが変数XのP次式(下式)で表され
る場合、 Y=a+b・X+…k・XP この変数Xの分散は無視できる程小さく、かつ変数Yは
分散σ2 が一定の正規分布に従うとすると、n組の測定
値をxi ,yi (i=1、2、…、n)としたとき、各
係数a、b、…、kは、以下の正規方程式
【0033】
【数9】
【0034】の解として得られ、これら各係数が最適解
となる。
【0035】次に、以下の多元1次方程式について、最
小2乗法を用いて最適化を行う場合について説明する。
【0036】求める量をそれぞれx、y、…、tとし、
n組の測定値をqi (i=1、2、…、n)とした場
合、各係数ai 、bi 、…、ki についての多次元1次
方程式を、 ai ・x+bi ・y+…+ki ・t=qi について、以下の正規方程式から得られる各解(x、
y、…、t)を最適解として得る。
【0037】
【数10】
【0038】但し、wi は加重であり、各解が正規分布
のとき、この加重wi は wi =1/σi 2 となる。
【0039】なお、以上の最適化手法は、例えば竹村彰
通、”現代数理統計学”、(創文社現代経済学選書)に
開示されている。
【0040】また、従来のニューラルネットを用いる場
合には、予めこのニューラルネットを、入力層、1又は
2以上の中間層及び出力層からなる3層以上の構成にす
る必要がある。特に、模擬対象の情報(パラメータ)が
多かったり、内部で生成される非線形関数が複雑であっ
たりすると、1つの中間層を構成するニューロンの数を
増やしたり、中間層自体の層数を増やすような構成上の
修正を行っている。
【0041】
【発明が解決しようとする課題】従来の信号処理方法は
以上のように、現実の処理プロセス(物理現象)を近似
するシミュレーション・モデルを決定した後、実績値
(模擬対象である処理プロセスから得られる現実の物理
量)との誤差を求め、モデルのパラメータを最適化する
ことにより、モデルの予測精度を向上させていた。した
がって、モデル自身が誤っていた場合、パラメータを最
適化しても自ら限界がある一方、模擬対象である現実の
処理プロセスで発生する経時変化等の誤差をも含めてパ
ラメータが補正されていることになる。すなわち、経時
変化成分は時間の経過とともに変化するため、モデルの
予測精度もこれにつれて悪化する。
【0042】ここで、従来は精度が不十分なモデル予測
値に対して移動平均手法が用いられる。例えば指数平滑
法では図21に示すように、上記シミュレーション・モ
デル自身の誤差変化分(近似精度の変化)と経時変化分
とを同一の誤差として扱っていることから(同図
(a))、誤差の補正内容の規則性を抽出することは困
難であり、また、その時点ごとにどの程度の割合で過去
の情報を重視するかを人為的に行うことが要求されてい
た。すなわち、同図(b)に示すように、従来の最適化
手法によると、上記数式1におけるαの値を0<α<1
の範囲で人為的に決定することになるが、シミュレーシ
ョン・モデルの近似精度の悪化から発生する補正量と、
処理プロセスの経時変化から発生する補正量との誤差へ
の寄与の変化からαを変更することになり、同図(c)
に示すように、その時点でのαの値について法則性を持
たせることができない状況のもとで新たな補正量を決定
しなければならなかった。
【0043】以上のように、それぞれの要素(モデルの
近似誤差及び経時変化誤差)にはそれぞれ固有の規則性
が存在するが、補正するためのパラメータであるα(数
式1)の決定値は、時系列的に規則性が見出だせないと
うい課題があった。
【0044】また、上述したように現実の処理プロセス
を模擬するシミュレーション・モデルは不変(モデル形
式の固定であり、モデルのパラメータのみ最適化する)
であることから、モデル事態の予測精度が悪い場合、各
パラメータの最適化に限度があるという課題があった。
さらに、経時変化成分が学習データに含まれるため、現
状の処理状況だけを良好に近似するシミュレーション・
モデルが得られるだけで、時間の経過に伴い現実の処理
プロセスの予測精度が低下してしまうという課題があっ
た。
【0045】さらに、従来の最適化手法として、重回帰
(一般に回帰手法)あるいはニューラルネット等の最適
化手法を説明したが、例えば重回帰によると、誤差評価
関数Eを以下のように定義し、 E=(X−Y)2 但し、式中Xはシミュレーション・モデルの予測出力、
Yは現実の処理プロセスから得られる実績値である。
【0046】この誤差評価関数Eの値(エネルギーとい
う)を最小にするXを得るための条件として、このシミ
ュレーション・モデルにおける各パラメータの最適値を
決定していた。特に、この誤差評価関数Eは二乗形式で
あるから必ず極小値が存在するため、エネルギを最小に
するということは、理想的にはE=0(X=Yとなる状
態)を要求することであるが、例えば図22(a)に示
すように、最適化に用いる実績値がオフセット成分(図
中、εで示す)を持つ場合、このオフセットも含めて最
適化されることになる(同図(b))。ここで、オフセ
ット成分とは、モデル自身の誤差、経時変化成分、計測
誤差等に起因する要素から構成されている成分であり、
これらの情報成分を含んだ状態で最適化がなされること
から、本来最適化すべきシミュレーション・モデルから
の予測出力の誤差だけに着目した最適化は困難となる。
【0047】以上を概念的に示したものが図23であ
る。本来シミュレーション・モデルは経時変化成分、セ
ンサ等の誤差(計測誤差)を含むオフセット成分を加味
したモデルではないことから、これら各誤差成分の時間
偏差は存在しないこととなる。しかし、実際にはこれら
各誤差成分には時間偏差が存在しているので、時間的に
変化するデータを用いて常に最適な予測可能なモデルと
なり得ることは不可能であることは明白であり、したが
って、ある時刻tのデータを用いて最適化した場合に
は、その近傍のデータ(時刻t近くの時間帯で得られた
データであって、経時変化成分の影響が少ないデータ)
に関して高精度に予測可能である一方、ある一定の時間
間隔を隔てたデータについては用いたデータの偏差情報
が直接影響することとなり、大きく予測と外れた結果を
得ることとなるため、定常的なシミュレーション・モデ
ルの見直しなければならないという課題があった。
【0048】また、上述したニューラルネットの場合、
模擬対象が複雑になるにつれて中間層中のニューロン数
あるいは中間層の層数を増やすように構成されるが、こ
の場合、処理能力は向上するが、ニューラルネットのネ
ットワーク構造自体が複雑になるため、学習済みのデー
タに対しては正確な出力を得る一方で、未学習データに
対しては正解からかけ離れた値を出力する現象である過
学習が誘発され、汎化能力が阻害されるという課題があ
った。さらに、ネットワーク内部に生成された関数形を
定量的に評価することができないため、ニューラルネッ
トの学習結果を制御プロセス中に組み込むことは困難で
あった。
【0049】以上に説明した課題を整理すると、以下の
ようになる。
【0050】 従来の信号処理方法では、誤差評価関
数E=(X−Y)2 をE=0とするように最適化する
際、オフセット成分(各種存在)も含めて最適化される
ため、汎化性に欠ける。
【0051】 従来の信号処理方法では、シミュレー
ション・モデルが最適化終了時点で固定され(パラメー
タのみ可変)、最適化に限界があった。さらにモデル予
測値の最適化を図るために実績値との誤差を指数平滑手
法により補正していることからモデルの誤差補正以外に
各種経時変化要因(オフセット成分)も合わせて補正し
ていたため、経時変化の規則性を見出だすことが出来
ず、その場限りの対処法を取っていた(具体的には、数
式1におけるαの値を人為的に決定していた)。
【0052】 従来の信号処理方法では、シミュレー
ション・モデルにおける普遍的な最適条件を抽出するこ
とが困難であった。
【0053】 従来の信号処理方法では、オフセット
成分のうち、特に時間変化成分を加味した最適化がなさ
れていなかったため、予測精度が悪かった。
【0054】 ニューラルネットを用いて最適化を行
なった場合でも、構築された関数形を把握・評価するこ
とが困難であることから、汎化性を保証することができ
なかった。(信頼性が要求される実ラインへの適用は困
難。) この発明は上記のような課題を解決するためになされた
もので、現実の処理プロセスを数式で近似するシミュレ
ーション・モデルの最適化を、処理プロセスからの実績
値に基づいて行うに際し、実績値が時間的変動要因(経
時変化成分)を有する場合であっても、この経時変化成
分に影響されることなく最適化を可能にするとともに、
この経時成分のみを抽出することにより、近未来の変動
予測を可能にする信号処理方法を提供することを目的と
する。
【0055】
【課題を解決するための手段】この発明に係る信号処理
方法は、模擬対象となる現実の処理プロセス、例えば鉄
鋼プラントにおける圧延プロセスを数式で表したシミュ
レーション・モデルを現実の物理量(鉄鋼材料から得ら
れた現実の物理量)を用いて最適化するとともに(オフ
ライン学習)、得られる現実の物理量から経時変化成分
を抽出し、この最適化されたシミュレーション・モデル
からの予測出力を補正することにより、模擬対象である
圧延プロセスの近未来の挙動を予測(オンライン学習)
することを特徴としている。
【0056】具体的には、所定の処理条件下で与えられ
た入力情報に対してシミュレーション・モデルからの予
測出力と現実の圧延プロセスから得られる実績値(処理
済み鉄鋼材料から得られた現実の物理量)との誤差を評
価する誤差評価関数(評価関数)として、以下に示すよ
うに、シミュレーション・モデルからのj番目の予測出
力Xj と実績値Tj との差分(任意の関数fで定義して
もよい)を取り、すでに得られた全データに対する平均
値からの距離あるいは距離の平均で定義する。
【0057】
【数11】
【0058】あるいは、
【0059】
【数12】
【0060】なお、差分の2乗値で定義する場合は、以
下のようになる。
【0061】
【数13】
【0062】あるいは、
【0063】
【数14】
【0064】次に、このように定義された誤差評価関数
Eを最小にするシミュレーション・モデルの各パラメー
タ(以下のようにai で示す)、あるいは関数形の最適
値を、一般化デルタルールを用いて、以下の微分方程式 dai /dt=−η∂E/∂ai ただし、ηは収束速度を決定するための学習係数(ある
いはステップ・サイズともいう)である。
【0065】からそれぞれ変化量を算出し、現時点の物
理モデルの各パラメータai (t)にそれぞれ加算して
新たなパラメータai (t+Δt)を決定し、 ai (t+Δt)=ai (t)−η∂E/∂ai これら一連の動作を上記誤差評価関数Eが最小(あるい
は最大)になるまで再帰的に決定していくことにより、
最適化を行っている(なお、ここまでの動作は現実の処
理プロセスの動作とは独立して行なわれるオフライン学
習である)。
【0066】そして、以上のように最適化されたシミュ
レーション・モデルからの最適予測出力(最適化された
シミュレーション・モデルからの予測出力Xj )を、実
績値のオフセット成分がほぼ一定と見做せる領域(例え
ば、図23中Cで示された領域)を1つの処理単位とし
て(この領域は複数設定してもよい)、モデル誤差を除
去するための補正量εを、
【0067】
【数15】
【0068】から求め、Yj =Xj −εからモデル自身
の誤差成分が除去された普遍予測出力Yj を得る。
【0069】さらに、得られた予測出力に対して現実の
経時変化に対応させるため、例えば移動平均手法のうち
指数平滑法を用いると、 εi+1 =α・εi +β・{(最近の最適予測出力)−
(最近の実績値)} 逐次的に補正し、最適な予測出力を得る。すなわち、こ
の式中α及びβはα=1−β(ただし、0<α<1)と
定義して、0<α<1、0<β<1かつα+β=1とす
ることにより、第1項と第2項の寄与の割合を決定する
ことができ、
【0070】
【数16】
【0071】であることを意味し、式中係数αは0<α
<1なる条件を満たすことから過去の情報ほど失われて
いく。
【0072】さらに、この発明では、処理プロセス(圧
延プロセス)から得られる実績値Tj (処理済み鉄鋼材
料から得られた現実の物理量)の経時変化情報を抽出
し、前記普遍予測出力を該経時変化情報により補正する
が、この経時変化情報を各時間における経時変化情報を
示す時間関数として与えるか、ベクトルで与える。
【0073】すなわち、各時間における実績値Tj の経
時変化成分を以下のようなテイラー展開級数で定義す
る。
【0074】
【数17】
【0075】普遍予測出力Yj (最新の予測値)と実績
値Tj との誤差をγ(0)として、逐次γ(t)を求め
ることで経時変化成分の時間特性が抽出されることか
ら、各巾乗係数ai 及び展開の中心である収束半径cを
決定することにより、この経時変化成分の時間特性を関
数フィッティングする。
【0076】したがって、時間関数γ(t)は時間tに
おける経時変化情報を示し、最終予測出力Wj は、上記
普遍予測出力Yj 及びこの経時変化情報γ(t1 )(な
お、t1 は各データのj番目に相当する時間を示してい
る)から、以下のように決定される。
【0077】Wj =Yj +γ(t1 ) 一方、経時変化情報がベクトルで与えられる場合は、最
新の実績値Tj から、N個遡ったデータについて、平均
ベクトルVM を求めるとともに、この最新の実績値Tj
とその一つ前の実績値Tj-1 から最新ベクトルVr を求
め、これら各ベクトルVM 及びVr を合成することによ
り、経時変化ベクトルVN を決定する。具体的には、こ
こで考える各ベクトルVM 及びVr は、すべて上記経時
変化成分の時間関数γから得られる量であり、したがっ
て、最終予測出力Wj は Wj =Yj +|VN | より決定される。
【0078】なお、最新の実績値Tj から、N個遡った
データについて、上記の実施例のような単純平均を取ら
ずに、時間の二乗に反比例する割合で各ベクトルの情報
を加味した平均ベクトルVM ´を求めてもよい。
【0079】
【作用】この発明における信号処理方法は、所定の処理
条件下で与えられた入力情報に対してシミュレーション
・モデルからの予測出力と現実の圧延プロセスから得ら
れる実績値(鉄鋼材料から得られた現実の物理量)とを
評価する評価関数として、シミュレーション・モデルか
らの予測出力と実績値との差分を取り、すでに得られた
全データに対する平均値からの距離あるいは距離の平均
で定義している。ここで、鉄鋼材料から得られた現実の
物理量としては、板厚、板幅、圧延荷重等が該当する。
これにより図5に示すように、現実の処理プロセス(圧
延プロセス)から得られる物理量に前述のオフセット成
分が含まれる場合であっても(同図(a))、そのオフ
セット成分(図中、εで示す)を中心に誤差分散を最小
化するように最適化されることから(同図(b))、こ
のオフセット成分の変動に影響されずに、本来の最適化
対象であるシミュレーション・モデル自身の最適化を実
現する。
【0080】そして、以上のように最適化されたシミュ
レーション・モデルからの最適予測出力(最適化された
シミュレーション・モデルからの予測出力Xj )を、実
績値のオフセット成分がほぼ一定と見做せる領域(例え
ば、図23に示す領域C)を1つの処理単位として(複
数設定してもよい)、モデル誤差に相当する補正量εで
補正することで普遍予測出力Yj を得ているので、この
普遍予測出力Yj は最適化されたシミュレーション・モ
デルが出力すべき真値Drを意味する。
【0081】さらに、この発明では、処理プロセス(圧
延プロセス)から得られる実績値Tj (処理済み鉄鋼材
料から得られた現実の物理量)の経時変化情報を各時間
における経時変化情報を示す時間関数として与えるか、
あるいはベクトルで与えるので、普遍予測出力Yj (最
新の予測値)をこの経時変化情報で補正しているので、
オフセット成分に含まれる経時変化の規則性を抽出でき
るとともに、オンライン状態において模擬対象である処
理プロセス(圧延プロセス)の近未来の挙動の正確な予
測を可能にする。
【0082】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図1乃至図19
を用いて説明する。なお、図中同一部分には同一符号を
付して説明を省略する。
【0083】図1は、この発明に係る信号処理方法を実
現する信号処理装置Bを含む全体構造を示す図であり、
特にこの信号処理装置Bは、現実に稼働している処理プ
ロセス1の挙動を予測するための最終予測出力Wj を出
力する予測モデル6と、この予測モデル6の最終予測出
力Wj と所望特性4とを比較し、その誤差が許容範囲に
なければさらに予測モデル6に対して処理条件の変更を
指示するが、その誤差が許容範囲にあれば現実の処理プ
ロセス1を最適な処理条件に設定する誤差評価手段2か
ら構成されている。
【0084】当該信号処理装置Bでは、実際に処理プロ
セス1に供給される材料の情報として、センサ(図示せ
ず)等により得られた各種測定値である複数のパラメー
タZj を各種処理条件とともに予測モデル6に入力し、
予め最適化され、モデル誤差成分が除去されたモデル予
測出力(普遍予測出力Yj )を得るとともに、この普遍
予測出力Yj を抽出された経時変化成分で補正して、上
記処理プロセス1の最終予測出力Wj として予測モデル
6の出力を得ている。
【0085】一方、この予測モデル6から最終予測出力
j を得る動作と平行して誤差評価手段2では、逐次こ
の予測モデル6の最終予測出力Wj と所望特性4の誤差
を求め、この誤差が所定範囲内にない場合、新たに予測
モデル6に対して処理条件の変更を指示し、さらに予測
モデル6の最終予測出力Wj が所望特性4に近づくよう
に処理条件の設定を行っている。
【0086】そして、上記誤差評価手段2は、予測モデ
ル6の最終予測出力Wj と所望特性4との誤差が許容範
囲内に収束したと判断した場合、この予測モデル6に与
えている処理条件を最適な処理条件として、上記実際の
模擬対象である処理プロセス1に対し、最適な処理条件
の設定指示を行っている。
【0087】図2は、上記予測モデル6の一部構成を示
す図であり、特に、材料から得た情報Zj を各種処理条
件とともに入力して模擬対象である処理プロセス1から
得られる実績値Tj に含まれるオフセット成分に影響さ
れずに最適化された普遍予測出力Yj を得る普遍予測モ
デル6aの構成を示している。
【0088】この普遍予測モデル6aでは、前述したシ
ミュレーション・モデル3における各パラメータの最適
値を決定する最適化手段7と、この最適化手段7により
最適化されたシミュレーション・モデル3の予測出力X
j からオフセット成分を除去するための補正量εを算出
する出力補正部8を備えており、加算手段9(負の加算
を含む)によりシミュレーション・モデル3からの予測
出力Xj と出力補正部8により算出された補正量εを加
算(減算)してオフセット成分の変動に影響されない普
遍予測出力Yj を得る。
【0089】特に、上記最適化手段7では、オフライン
状態において、所定の処理条件下で与えられた入力情報
に対してシミュレーション・モデル3からの予測出力X
j と現実の処理延プロセス1から得られる実績値Tj
の誤差を評価する誤差評価関数として、以下に示すよう
に、シミュレーション・モデル3からの予測出力Xj
実績値Tj との差分(任意の関数fで定義してもよい)
を取り、すでに得られた全データに対する平均値からの
距離あるいは距離の平均で定義する。
【0090】
【数18】
【0091】あるいは、
【0092】
【数19】
【0093】なお、差分の2乗値で定義する場合は、以
下のようになる。
【0094】
【数20】
【0095】あるいは、
【0096】
【数21】
【0097】続いて、この最適化手段7では、このよう
に定義された誤差評価関数Eを最小にするシミュレーシ
ョン・モデル3の各パラメータai あるいは関数形の最
適値を、一般化デルタルールを用いて、以下の微分方程
式 dai /dt=−η∂E/∂ai ただし、ηは収束速度を決定するための学習係数(ある
いはステップ・サイズともいう)である。
【0098】からそれぞれ変化量を算出し、現時点の物
理モデルの各パラメータai (t)にそれぞれ加算して
新たなパラメータai (t+Δt)を決定し、 ai (t+Δt)=ai (t)−η∂E/∂ai これら一連の動作を上記誤差評価関数Eが最小(あるい
は最大)になるまで再帰的に決定していくことにより、
シミュレーション・モデル3の最適化を行っている。な
お、最適化されたシミュレーション・モデル3の予測出
力Xj を特に最適予測出力という。
【0099】一方、出力補正部8では、以上のように最
適化されたシミュレーション・モデル3からの最適予測
出力Xj から、モデル自身の誤差が除去された普遍予測
出力Yj を得るための補正量εを、オフセット成分がほ
ぼ一定と見做せる領域、すなわち、以下の数式22中の
各Xi −Ti の値がほぼ等しいと見做せる領域(例えば
図24に示す領域C)を1つの処理単位として(複数設
定してもよい)、
【0100】
【数22】
【0101】から求め、加算手段9において最適化予測
出力Xj をこの補正量εで補正(Yj=Xj −ε)する
ことで、オフセット成分に影響されない普遍予測出力Y
j を得る。
【0102】なお、この補正量εは、以下の漸化式 εi+1 =α・εi +β・{(最近の最適予測出力)−
(最近の実績値)} で与えてもよい。すなわち、この式中α及びβはα=1
−β(ただし、0<α<1)と定義して、0<α<1、
0<β<1かつα+β=1とすることにより、第1項と
第2項の寄与の割合を決定することができる。
【0103】
【数23】
【0104】であることを意味し、式中係数αは0<α
<1なる条件を満たすことから過去の情報ほど失われて
いく。
【0105】さらに、図3は上記予測モデル6の全体構
成を示す図であり、この予測モデル6は上述した普遍予
測モデル6aと、オフセット成分のうち経時変化成分
(時間関数あるいはベクトルで表す)を抽出する経時変
化抽出部10を備えており、加算手段9により普遍予測
モデル6aからのモデル誤差が除去された普遍予測出力
j をこの経時変化抽出部10から出力される経時変化
情報γ(t)等で補正し、最終予測出力Wj を得る。
【0106】特に、上記経時変化抽出部10では、ま
ず、各時間における実績値の経時変化成分を以下のよう
なテイラー展開級数で定義する。
【0107】
【数24】
【0108】なお、具体的構成を図4に示すが、この経
時変化抽出部10では、入力情報に対して展開の中心で
ある収束半径cを加算(負の加算を含む)して巾乗項を
算出した後、これら巾乗項に対応して予め定義されてい
る巾乗係数ai をそれぞれ乗算したものをすべて加算し
て出力するよう構成されており、普遍予測出力Yj (最
新の予測値)と実績値Tj との誤差をγ(0)として、
逐次γ(t)を求めることで経時変化成分の時間特性が
抽出されることから、各巾乗係数ai 及び収束半径cを
決定することにより、この経時変化成分の時間特性を関
数フィッティングする。
【0109】したがって、時間関数γ(t)は時間tに
おける経時変化情報を示し、最終予測出力Wj は、上記
普遍予測出力Yj 及びこの経時変化情報γ(t1 )(な
お、t1 は各データのj番目に相当する時間を示してい
る)から、 Wj =Yj +γ(t1 ) より決定する。
【0110】一方、経時変化情報がベクトルで与えられ
る場合は、最新の実績値Tj からN個遡ったデータにつ
いて、平均ベクトルVM を求めるとともに、この最新の
実績値Tj とその一つ前の実績値Tj-1 から最新ベクト
ルVr を求め、これら各ベクトルVM 及びVr を合成す
ることにより、経時変化ベクトルVN を決定する。具体
的には、ここで考える各ベクトルVM 及びVr は、すべ
て上記経時変化成分の時間関数γから得られる量である
ので、最終予測出力Wj は Wj =Yj +|VN | より決定される。
【0111】なお、最新の実績値Tj から、N個遡った
データについて、上記の実施例のような単純平均を取ら
ずに、時間の二乗に反比例する割合で各ベクトルの情報
を加味した平均ベクトルVM ´を求めてもよい。
【0112】次に、具体的な例として現実の処理プロセ
ス1を現実の圧延プロセスとし、この圧延プロセスを数
式で表した物理モデル6の最適化について説明する。
【0113】図6は、模擬対象である圧延プロセスにお
ける圧延状況を、材料である鋼板の板幅方向の断面を示
して説明するための図である。
【0114】同図(a)は、板幅WIの左右方向(板の
端から中心に向かう方向)から圧延する(エッチング圧
延という)ものであり、左右から圧延されることによ
り、同図(b)に示すような断面を得る。この図より、
左右方向から圧延されるためエッジ部分が厚さHI方向
にはみ出るように潰されることになり(図中、白地の部
分がはみ出した部分)、中心に近いほど、エッジング圧
延の効果は少ないことがわかる。一般に、この白抜き部
分をドッグボーンという。
【0115】続いて、同図(b)のエッジング圧延され
た鋼板に対し水平方向(板の中心から端に向かう方向)
に圧延される(水平圧延という)と、同図(b)に示さ
れた厚みHI方向にはみ出した部分であるドッグボーン
も水平圧延により水平方向に厚さHOになるよう一定に
圧延される(同図(c))。
【0116】ここで、水平圧延(同図(b)から同図
(c)への処理過程)により水平方向に圧延される各部
分の寄与を考えると、水平圧延されることにより同図
(b)における白地部分であるドッグボーンは、同図
(c)における白地部分へ寄与し、一方、同図(b)に
おける斜線部分は、同図(c)における斜線部分へそれ
ぞれ寄与するモデルとして考える。
【0117】なお、以上の圧延プロセスをもとに、生成
された既存のシミュレーション・モデル3(以下、この
ようにオフライン状態でパラメータ値が固定されたモデ
ルを既存モデルという)を以下に示す。
【0118】WO=WH+WD+WE ここで、 WH=((HI/HO)α −1)・WE WD=β・(WI−WE)
【0119】
【数25】
【0120】
【数26】
【0121】であり、式中、各パラメータは WO:シミュレーション・モデル3の予測出力 WH:斜線部分の水平圧延による幅広がり量 WD:白地部分の水平圧延による幅広がり量 HI:入側板厚 HO:出側板厚 WE:エッジャ圧延後の板幅 LD:投影接触弧長 RR:水平ロール半径 RE:エッジャロール半径 である。
【0122】すなわち、最終的に圧延される出側板幅W
Oは、エッジング圧延後の板幅WEと、ドッグボーン部
の水平圧延への寄与WDと、矩形断面部分の水平圧延へ
の寄与WHとの総和で表される。
【0123】そして、この発明では各パラメータ-1.64
0、0.376 、0.016 、0.015 と、-1.877、0.063 、0.441
、0.989 、7.591 とを、それぞれX1 、X2 、X3
4 、X5 、X6 、X7 、X8 、X9 とすることによ
り、上記シミュレーション・モデル3を以下のように定
義する。
【0124】WO=h[((HI/HO)
f(X1 ,X2 ,X3 ,X4 )−1)+WE+g(X5 ,X6 ,X
7 ,X8 ,X9 )・(WI−WE)+WE] なお、この式中hはX1 〜X9 をパラメータとする関
数、f及びgはそれぞれX1 〜X4 、X5 〜X9 をパラ
メータとする関数である。
【0125】ここで、比較のため誤差評価関数Eとして
E=(WOj −Tj 2 を定義した場合(従来の最適化
方法)を用いて最適化を行った結果について説明する。
なお、各パラメータを再帰的に決定していく動作は前述
したように一般化デルタルールを用いて行うものとす
る。なお、図7はオフセットがない(0mm)データの
最適化過程を示した図であり、図8は人為的にオフセッ
トを4mmを加えた場合の最適化過程を示した図であ
り、図中、ERRを各時点での誤差、DIFを各時点で
の誤差分散を示している。
【0126】これら図7及び図8からも分かるように、
時間の経過とともに誤差(ERR)及び誤差分散(DI
F)は一様に減少しているが、各パラメータX1 〜X9
の最適値を決定するための最適化過程及び結果が図7と
図8の間で異なる結果を得ている。これは、予め加えた
オフセット4mmの情報を各パラメータX1 〜X9 が吸
収し、誤差評価関数Eを最小にするように最適化が進行
しているためであり、最適化された結果(学習された結
果)は図9に示すように、4mmずれた予測出力を得る
とともに、予測値のバラツキ(分散あるいは標準偏差)
は反対に増大する。しかも、この誤差評価関数Eを用い
て最適化されたシミュレーション・モデルの予測出力の
誤差(図中、◆で示す)からオフセット4mmを差し引
いてみてもオフライン状態でパラメータ値が固定された
既存モデルの予測出力(図中、○で示す)と比較し、予
測精度及び分散が悪化していることが同図より分かる。
【0127】次に、この発明の場合について、誤差評価
関数Eとして、
【0128】
【数27】
【0129】を定義し、実際の圧延データ(鉄鋼材料の
板幅)について、それぞれ0mm、4mm、8mm、1
6mmとした場合の最適化を行った結果を図10及び図
11に示し、各図の縦軸は以上の誤差評価関数Eを用い
て最適化されたシミュレーション・モデル3の最適予測
出力Xj 、横軸は実際の圧延データ(鉄鋼材料の板幅)
である。したがって、これらを独立な4つのデータ群と
して個別にパラメータX1 〜X9 の最適化を行い、各デ
ータ群とも、全て同一のパラメータの最適値が生成でき
れば、オフセットに影響されない最適化が可能であるこ
とが証明できる(もとのデータ群は同一であり、オフセ
ットのみ異なるため)。
【0130】また、図12及び図13は、上述した圧延
データにオフセットをそれぞれ設定した各デーダ群に対
する最適化過程を示した図であり、各データ群の学習過
程とも、ERRで示される誤差が、それぞれオフセット
情報を抽出するように最適化されることによって、各パ
ラメータX1 〜X9 はそれぞれの場合において全て同一
の最適化過程及び最適化結果を得ていることが分かる。
なお、図14〜図16はそれぞれオフセット4、8、1
6mmの場合のについて、各パラメータX1 〜X9 、誤
差ERRの学習過程を示した図である(同表より、各パ
ラメータは同一の情報が得られていることが確認でき
る)。
【0131】以上の理論検証に対し、実際の圧延データ
(未知のデータ)を用いて最適化した結果を図18に示
す。比較のために、従来の誤差評価関数(E=(X−
Y)2)を用いた場合の最適化結果を図17に示す。特
に、図17(a)は学習に用いた圧延データと時間的に
接近したデータ群(経時変化成分の影響が少ない)を最
適化した結果(シミュレーション・モデルの予測誤差)
を示す図であり、平均誤差、誤差分散、標準誤差がそれ
ぞれ59%、67%、43%改善され、高精度な予測出
力が得られることを確認した。一方、図17(b)は時
間的に隔たったデータ群(経時変化成分の影響が大き
い)を用いて最適化した結果(シミュレーション・モデ
ルの予測誤差)を示す図であり、平均誤差、誤差分散、
標準誤差がそれぞれ−24%、−6%、−3%と悪化
し、予測出力が既存モデルより悪化していることを確認
した。ただし、図中、○は既存モデルによる予測誤差を
示し、◆は最適化された従来のシミュレーション・モデ
ルによる予測誤差をそれぞれ示している。
【0132】この悪化しているデータ群(経時変化成分
の影響が大きいデータ群)に対し、上記数式27で定義
した誤差評価関数Eを用いて最適化した予測出力が図1
8であり、時間的に隔たったデータ群(経時変化成分の
影響が大きい)であっても高精度な予測が可能であるこ
とが分かる。また、図19(a)に示したヒストグラム
は、上記数式27で定義した誤差評価関数Eにより最適
化を行う前の予測出力を示し、同図(b)に示したヒス
トグラムは、上記数式27で定義した誤差評価関数Eに
より最適化を行った後の予測出力(最適予測出力)を示
したものであり、特に、これらヒストグラムでは横軸に
予測誤差、縦軸に度数に取っている。これらヒストグラ
ムより最適化が行われた後の方が誤差“0”を中心に予
測出力が分布していることが分かる。
【0133】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、現実の
処理プロセスから得られた実績値とシミュレーション・
モデルからの予測出力との差分を取り、すでに得られて
いる全データに対する平均値からの距離を求めているの
で、オフセット成分が存在する場合であっても、そのオ
フセットを中心に予測誤差のバラツキ(分散あるいは標
準偏差)を最小にするように最適化がされるので、オフ
セット成分の変動に影響されずに、本来の最適化対象で
あるシミュレーション・モデル自身の最適化が可能にな
るという効果がある。すなわち、モデルの最適化とは予
測誤差を最小化するのではなく、誤差のバラツキを最小
化することであり、絶対誤差の低減は指数平滑法等の移
動平均手法により行う。
【0134】また、以上のように得られた最適予測出力
からモデル誤差を除去することにより、オフセット成分
の変動に影響されずに本来シミュレーション・モデルか
ら得られるべき予測出力の真値となる普遍予測出力が得
られるという効果がある。
【0135】さらに、上記実績値の経時変化成分の規則
性を抽出するように構成したので、し、以上のように得
られた普遍予測出力から模擬対象である処理プロセスの
近未来の挙動を精密に予測する最終予測出力が得られる
という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る信号処理方法の一実施例を実現
する信号処理装置Bの構造を示す図である。
【図2】この発明に係る信号処理方法の一実施例を実現
する信号処理装置Bにおいて、予測モデル6の一部構造
を示す図である。
【図3】この発明に係る信号処理方法の一実施例を実現
する信号処理装置Bにおいて、予測モデル6の全体構造
を示す図である。
【図4】上記予測モデル6における経時変化抽出部9の
構造を示す図である。
【図5】この発明に係る信号処理方法の作用を説明する
ための図である。
【図6】この発明に係る信号処理方法の模擬対象とし
て、鉄鋼プラントにおける圧延プロセスの圧延動作を説
明するための図である。
【図7】この発明に係る信号処理方法の効果を説明する
ための比較例として、従来の用いられてきた誤差評価関
数による最適化過程及び最適化結果を示す図(その1)
である。
【図8】この発明に係る信号処理方法の効果を説明する
ための比較例として、従来の用いられてきた誤差評価関
数による最適化過程及び最適化結果を示す図(その2)
である。
【図9】この発明に係る信号処理方法の効果を説明する
ための比較例として、既存モデルの予測誤差と従来の誤
差評価関数(E=(X−Y)2 )を用いて最適化された
シミュレーション・モデルの予測誤差を示す図である。
【図10】この発明に係る信号処理方法の効果(オフセ
ット成分の影響を受けない)を説明するために、オフセ
ット0mm(a)、オフセット4mm(b)とした場合
の最適予測出力の誤差を示した図である。
【図11】この発明に係る信号処理方法の効果(オフセ
ット成分の影響を受けない)を説明するために、オフセ
ット8mm(a)、オフセット16mm(b)とした場
合の最適予測出力の誤差を示した図である。
【図12】この発明に係る信号処理方法において定義さ
れた誤差評価関数を用い、オフセット0mm(a)、オ
フセット4mm(b)とした場合の最適化過程及び最適
化結果を示す図(その1)である。
【図13】この発明に係る信号処理方法において定義さ
れた誤差評価関数を用い、オフセット8mm(a)、オ
フセット16mm(b)とした場合の最適化過程及び最
適化結果を示す図である。
【図14】この発明に係る信号処理方法において定義さ
れた誤差評価関数を用いて最適化された各パラメータX
1 〜X9 、誤差(ERR)及び誤差分散(VAR)の値
を示す図(オフセット:4mm)である。
【図15】この発明に係る信号処理方法において定義さ
れた誤差評価関数を用いて最適化された各パラメータX
1 〜X9 、誤差(ERR)及び誤差分散(VAR)の値
を示す図(オフセット:8mm)である。
【図16】この発明に係る信号処理方法において定義さ
れた誤差評価関数を用いて最適化された各パラメータX
1 〜X9 、誤差(ERR)及び誤差分散(VAR)の値
を示す図(オフセット:16mm)である。
【図17】従来の誤差評価関数(E=(X−Y)2 )を
用いて最適化されたモデルについて、経時変化成分の影
響が小さい未知のデータに対する予測誤差(a)、及び
経時変化成分の影響が大きい未知のデータに対する予測
誤差(b)を、それぞれ既存のモデルの予測誤差と比較
して示した図である。
【図18】この発明に係る誤差評価関数を用いて最適化
されたモデルの予測誤差を、経時変化成分の影響が大き
い未知のデータについて既存のモデルの予測誤差と比較
して示した図である。
【図19】この発明に係る誤差評価関数を用いて最適化
されるモデルについて、経時変化成分の影響が大きい未
知のデータに対する最適化前の予測誤差(a)、及び最
適化後予測誤差(b)を、それぞれ度数で示したヒスト
グラムである。
【図20】従来の信号処理方法を実現する信号処理装置
Aの構造を示した図である。
【図21】時間変化によるモデル予測出力の変動を説明
するための図である。
【図22】従来の信号処理方法による最適化を概念的に
説明するための図である。
【図23】モデル予測出力及びオフセット成分の時間変
化を概念的に説明するための図である。
【符号の説明】
1…処理プロセス(圧延プロセス)、2…誤差評価手
段、3…シミュレーション・モデル、4…所望特性、6
…予測モデル、6a…普遍予測モデル、7…最適化手
段、8…出力補正部、9…加算手段、10…経時変化抽
出部。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 模擬対象となる現実の処理プロセスを数
    式で表したシミュレーション・モデルから、所定の入力
    情報及び設定条件における該処理プロセスの挙動を予測
    するための予測出力を得る信号処理方法において、 所定の処理条件下で与えられた入力情報に対して前記シ
    ミュレーション・モデルからの予測出力と前記現実の処
    理プロセスから得られる実績値とを評価する評価関数と
    して、 前記シミュレーション・モデルからの予測出力と前記処
    理プロセスから得られる実績値との差分を取り、すでに
    得られた全データに対する平均値からの距離あるいは距
    離の平均で定義し、 前記誤差評価関数を最大あるいは最小にする前記シミュ
    レーション・モデルの各パラメータ、あるいは最適関数
    を再帰的に決定していくことにより、該シミュレーショ
    ン・モデルの最適化を行った後、該最適化されたシミュ
    レーション・モデルからの最適予測出力から前記処理プ
    ロセスから得られた実績値との誤差のバラツキを最小に
    すべく補正された普遍予測出力を得ることを特徴とする
    信号処理方法。
  2. 【請求項2】 模擬対象となる現実の圧延プロセスを数
    式で表したシミュレーション・モデルから、所定の入力
    情報及び設定条件における該圧延プロセスの挙動を予測
    するための予測出力、あるいは圧延のための設定予測値
    を得る信号処理方法において、 所定の処理条件下、及び前記圧延プロセスに与える鉄鋼
    材料から得られた現実の物理量に対し、前記シミュレー
    ション・モデルからの予測出力と該圧延プロセスにより
    圧延加工された処理済み鉄鋼材料から得られた現実の物
    理量とを評価する評価関数として、 前記シミュレーション・モデルからの予測出力と前記処
    理済み鉄鋼材料から得られた現実の物理量との差分を取
    り、すでに得られた全データに対する平均値からの距離
    あるいは距離の平均で定義し、 前記誤差評価関数を最大あるいは最小にする前記シミュ
    レーション・モデルの各パラメータ、あるいは最適関数
    を再帰的に決定していくことにより、該シミュレーショ
    ン・モデルの最適化を行った後、該最適化されたシミュ
    レーション・モデルからの最適予測出力から前記処理済
    み鉄鋼材料から得られた現実の物理量との誤差のバラツ
    キを最小にすべく補正された普遍予測出力を得ることを
    特徴とする信号処理方法。
  3. 【請求項3】 前記処理プロセスから得られる実績値、
    あるいは前記処理済み鉄鋼材料から得られた現実の物理
    量の経時変化情報を抽出し、前記普遍予測出力を該経時
    変化情報により補正することにより、模擬対象物におけ
    る近未来の挙動を予測するための最終予測出力を得るこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の信号処理方法。
  4. 【請求項4】 前記経時変化情報は、前記処理プロセス
    から得られる実績値、あるいは前記処理済み鉄鋼材料か
    ら得られた現実の物理量と、前記普遍予測出力との誤差
    情報の時間変化を表した時間関数の関数値であることを
    特徴とする請求項3記載の信号処理方法。
  5. 【請求項5】 前記経時変化情報は、過去N個分の実績
    値あるいは現実の物理量の平均である第1のベクトル
    と、最新の実績値あるいは現実の物理量と1つ前の実績
    値あるいは現実の物理量で形成される第2のベクトルと
    の合成ベクトルであることを特徴とする請求項3記載の
    信号処理方法。
  6. 【請求項6】 前記普遍予測出力を得るために前記最適
    予測出力へ加える補正量は、過去に補正した際の補正量
    を一定の割合で加算して決定することを特徴とする請求
    項1〜3のいずれか一項記載の信号処理方法。
  7. 【請求項7】 前記普遍予測出力を得るために前記最適
    予測出力へ加える補正量の初期値として、すでに得られ
    た全データの平均値を用いることを特徴とする請求項1
    〜3のいずれか一項記載の信号処理方法。
  8. 【請求項8】 最適化に用いる前記実績値あるいは現実
    の物理量の範囲を、予測値と実績値との差分が略一定と
    見做せる範囲を1単位として1又は2以上設定し、該各
    範囲ごとに個別に最適化に用いることを特徴とする請求
    項1〜6のいずれか一項記載の信号処理方法。
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