JPH075470B2 - センノシド類を有効成分とする内服用薬液の製造方法 - Google Patents

センノシド類を有効成分とする内服用薬液の製造方法

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JPH075470B2
JPH075470B2 JP4112277A JP11227792A JPH075470B2 JP H075470 B2 JPH075470 B2 JP H075470B2 JP 4112277 A JP4112277 A JP 4112277A JP 11227792 A JP11227792 A JP 11227792A JP H075470 B2 JPH075470 B2 JP H075470B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はセンノシド類を有効成分
とする内服用薬液の製造方法に関し、比較的高温な条件
下でも生理活性作用が持続し、優れた品質安定性を示す
センノシド類含有薬液を製造できるものを提供する。
【0002】
【発明の背景】センナや大黄などは古来より緩下薬とし
て常用され、各国の薬局方にも収載された周知の生薬で
ある。その瀉下作用を呈する主要薬効成分はジアントロ
ン配糖体に属するセンノシド類であることが判明し、A
〜Gの種類が単離されてその化学構造が解明されてい
る。上記センナ、大黄などは生薬粉末を直接、又は煎剤
にして服用したり、その抽出エキスを錠剤や顆粒などの
固形剤にして繁用しているのが実情であるが、高齢化社
会の進む今日では、老人にとって飲み難く服用に煩雑な
点もある固形剤よりも、一層飲み易く服用が楽な薬液を
開発することが時代の要請になっている。
【0003】
【従来の技術】一般に、センナ、大黄などの抽出溶液は
薬効成分以外にも種々の異物が混入しているために、室
温に5〜6日放置すると活性が低下することが知られて
いる(Chem.Pharm.Bull.28(2)406―412(1980)参照;以下、
公知資料という)が、この抽出液を一旦エキス顆粒に精
製するとその水溶液は室温下でも3年以上の安定性を示
す。従って、センナ、大黄などを薬液化する場合、この
エキス顆粒の水溶液を液剤に調製することが考えられる
が、薬事法には加速試験が義務付けられ、6カ月間40
℃の高温で静置するという厳しい条件下でも品質安定性
が保証されることが薬液には必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、大黄成分を取り
扱う場合には許容される温度は60℃が上限であり、5
0℃以下で抽出、濃縮することが望ましいとされ、例え
ば、大黄粉末の懸濁水を100℃に加熱すると1.5時
間後には活性が略半減することが知られている(名取信
策ら編:天然有機化合物実験法 サイエンティフィック
(1977) 477頁参照)。これは、前記センノシド類が熱に
不安定であり、加熱によって徐々に褐色の不活性物質に
変化してしまうためである。
【0005】実際に、本発明者等はセンナ葉から得たエ
キス顆粒を精製水に溶解し、このエキス溶液を褐色瓶に
入れて40℃の高温下に静置し、センノシド類の有効成
分残存率の経時変化を調べた。
【0006】
【表4】
【0007】表4はその結果を示し、2カ月経過時点で
既にその残存率は75%前後にまで著しく低下し、溶液
の褐変を伴って有効含量の1/4程度が失活したことが
認められた。そこで、褐色瓶に含まれる鉄イオンの悪影
響を排除するために、無色瓶に入れ替えて40℃で保存
試験をしたところ、1カ月経過時の有効成分残存率は表
4の同時点での残存率と大差のない84.9%を示し、
有効含量のかなりの低下が認められた。また、還元型の
安定剤である酸性亜硫酸ナトリウムを上記エキス溶液に
添加することにより40℃で試験したところ、1カ月経
過時の有効成分残存率は0.1%の添加で81.0%、
0.5%添加では72.5%を示し、これらの数値は表4
の同時点での残存率より悪いうえ、添加濃度が増すと残
存率が減少していた。以上のように、センノシド類の含
有液剤は比較的高温な条件下ではきわめて品質安定性が
悪いが、本発明はセンナや大黄から高温安定性の良い薬
液を製造することを技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記公知資料には、室温
に5〜6日静置したセンナの抽出溶液の高速液体クロマ
トグラムにおいてはセンノシド類に特有のピークが消失
してしまうのに対して、メンブランフィルターに通した
室温静置溶液ではこの変化は観測されなかったことが開
示されている。本発明者等はこの知見を室温より条件の
厳しい高温静置に適用してセンノシド類の失活の難問を
クリアすることを着想し、本発明を完成した。
【0009】即ち、本発明1は、センナ、大黄などの薬
効成分であるセンノシド類の含有溶液を沈殿物の生じな
い状態で多孔濾材を介して濾過して、センノシド類含有
薬液を得ることを特徴とするセンノシド類を有効成分と
する内服用薬液の製造方法である。本発明2は、無機系
多孔体や有機系多孔体から成る吸着材を充填した吸着層
に、センナ、大黄などの薬効成分であるセンノシド類の
含有溶液を接触・通過させて、センノシド類含有薬液を
得ることを特徴とするものである。
【0010】上記センノシド類の含有溶液とは、(1)セ
ンナの葉、大黄の葉軸・果実・根茎などを水、リン酸液
や、アルコール類、希アセトン、ジオキサン、THFな
どの有機溶媒で処理した抽出溶液や、(2)この抽出溶液
から得られたエキス顆粒の水溶液などをいう。上記セン
ノシド類とは、化1に示すセンノシド(sennoside)A・B
(rhein―dianthrone glucoside;AとBは10,10′位の
立体異性体)やセンノシドC・D(rhein―aloe―emodin―
dianthrone glucoside;CとDは10,10′位の立体異性
体)、センノシドE・F・Gや、化2に示す1,8―ジヒドロ
キシアントラキノン誘導体であるレイン(rhein)、アロ
エ・エモジン(aloe―emodin)、クリソファノール(chryso
phanol)及びそれらの配糖体などの瀉下活性を示す総体
をいう。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】上記多孔濾材とは多数の微細孔を有する濾
過材であり、精密濾過、限外濾過、逆浸透などに使用す
る濾過材が好ましく、沈殿物の生じない状態で濾過する
ためには、例えば、孔径0.45μm以下のメンブラン
フィルターがより好ましい。濾材の材質はセルロース、
酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどのセルロース
系、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、
ポリエチレンオキシドなどの合成高分子系や、多孔質半
融ガラス、半融石英、多孔質炭素などの無機系など種々
のものが使用できる。濾材の形態は平膜、管状膜、中空
糸などを問わない。濾過処理は真空引きを伴う強制濾過
などにより一段又は多段で行う。
【0014】上記吸着材は基本的には粒子形態のもので
あり、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、カーボ
ンブラック、ケイソウ土、ガラスビーズなどの通常の無
機系材料、又は、ナイロン、ポリスチレン、ポリアクリ
ル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどの合成高
分子やセルロース、アガロース、デキストランなどの多
糖類等から成る有機系材料をいい、粒子表面が薄膜状や
ミクロン単位の多孔質層に形成されたり、粒子全体が多
孔質を形成するものを指す。例えば分離用高分子担体
(特に、分離カラム充填材)などに使用できるシリカゲ
ル、アルミナや多孔質ポリマービーズなどが好ましい。
但し、合成高分子から成る微細繊維集合物、例えば、ナ
イロン―ポリスチレン、ナイロン―ポリエチレン、PE
T―ポリスチレンなどの極細繊維集束繊維絡合体などを
吸着材に適用することも可能である。上記吸着材による
接触・通過処理は、基本的には流通管に上記吸着材を充
填し、この吸着層の流通上手側から下手側にセンノシド
類含有溶液を通過させて行うが、その前後のいずれか、
又は両側に上記多孔濾材による濾過処理工程を直列状に
加えても差し支えない。
【0015】
【作用】例えば、センナ、大黄などのエキス顆粒を精製
水に溶解したセンノシド類含有水溶液を原溶液として多
孔濾材により沈殿が生じない状態で比較的緩やかな速度
で濾過すると、40℃の高温静置下での濾液の有効成分
残存率は未処理液に対して高い数値を示す。因みに、前
記公知資料には濾過後に単に室温静置することが開示さ
れているだけであるが、本発明1によれば濾過後に高温
静置してもその濾液は長期の活性を示すという予測外の
結果が得られるのである。これは、濾材の多孔表面が化
学的に活性なために、センノシド類含有水溶液が多孔濾
材の微細孔を透過する際に、微細孔の孔内表面にセンノ
シド類を失活させる成分が吸着されて安定阻害要因が除
かれることによるか、センノシド類が濾材の多孔表面と
反応してその生理活性な部位(例えば、官能基など)を化
学的に安定な状態に固定するために、濾過後の高温静置
でも失活しないと推定できる。
【0016】一方、センノシド類含有溶液を濾材で濾過
する替わりに上記所定の吸着材を充填した吸着層に通し
ても同様の活性保持作用が認められるが、これは上記吸
着材の表面あるいは全体が多孔質であり、この多孔質構
造が濾材と同様な活性作用をするためと推定できる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を順次述べる。 《実施例1》センナ葉から製造された市販のセンナエキ
ス顆粒を精製水に溶解して25mg/mlのエキス水溶
液を調製するとともに、酢酸セルロースを材質とし孔径
サイズが0.22μmである市販のメンブランフィルタ
ーでこのエキス水溶液を濾過処理したのちに、40℃の
高温下に静置した当該濾過液のセンノシド類有効成分残
存率の経時変化を、未処理のエキス水溶液を比較例とし
て調べた。但し、濾過処理はアスピレータを使用した強
制濾過で行い、その濾過速度を変化させて2種類の資料
を得た。上記有効成分残存率は日本薬局方外医薬品成分
規格1991のセンナエキス定量法に準じ、有効成分を総ヒ
ドロキシアントロン配糖体としたうえで各所定期間経過
時の各試料溶液1.5mlにつき、メタノールを対照と
して層長1cm、波長516nmでの吸光度を夫々測定
するとともに、この所定期間経過時の吸光度と当初試料
溶液の吸光度との比率をもって算出した。
【0018】
【表1】
【0019】表1はその結果を示し、有効成分残存率は
未処理溶液では3カ月後に60.7%に大幅に低下して
いたのに対し、低速濾過した試料1では3カ月後に9
5.3%、6カ月後でも92.6%の低下に止まり、高速
濾過した試料2では3カ月後に85.9%、6カ月後で
は83.3%の低下に止まって、濾過処理をした溶液は
高温静置の条件下でも生理活性をほとんど失わないこと
が確認できた。特に、センナエキスの水溶液を低速濾過
処理すると6カ月の経過時点でも有効成分の失活を1/
10以下に抑制できた。これは冒述の加速試験をクリア
してセンノシド類の含有薬液を商品化するに充分な数値
である。
【0020】但し、表1では試料1と2の濾過速度は
1:2であり、試料1の残存率が試料2のそれを上回る
のは、より緩やかな濾過によりエキス溶液がメンブラン
フィルターの微細孔の表面と化学的に反応する機会が増
すためであろうと推定できる。
【0021】《実施例2》上記実施例1と同様の条件で
低速濾過処理及び高温静置することを前提として、メン
ブランフィルターの孔径サイズを変化させて、センナエ
キスの濾過水溶液のセンノシド類有効成分残存率が1カ
月後にどのように変化するかを調べた。
【0022】
【表2】
【0023】表2はその結果を示し、センノシド類の有
効成分残存率はメンブランフィルターの孔径が0.1μ
m及び0.22μmでは93.5%、0.45μmでは9
0.2%、0.65μmでは88.1%であって、基本的
に孔径の微細な方が残存率が高かった。孔径が細かくな
るとメンブランフィルターの微細孔の積算表面積が増し
て、エキス溶液が当該微細孔の表面と接触する機会が増
えることは容易に推定できるが、表2の結果はこの推定
にも良く合致する。但し、孔径が0.65μm以上では
1/10以上が失活するので、メンブランフィルターの
孔径は0.45μm以下が好ましい。また、0.1μm及
び0.22μmでの各残存率は同じなので、フィルター
の孔径は微細に過ぎる必要はない。
【0024】《実施例3》18mm径の吸着処理用流通
管(分取用カラムでも良い)に粒径10nmの合成ゼオラ
イトX(ZSM―5でも可)を充填して層厚50mmの吸着層
を形成し、上記実施例1で使用したセンナエキス水溶液
をこの流通管の一端よりポンプで圧送して(流速0.5m
l/min)当該吸着層に接触・注入させ、他端より流出
した通過水溶液を40℃の高温下に静置してセンノシド
類有効成分残存率の経時変化を調べた。
【0025】
【表3】
【0026】表3はその結果を示し、吸着処理したセン
ナエキス水溶液の残存率は3カ月経過時には94.7
%、6カ月経過時には92.4%であり、未処理溶液の
3カ月経過時の残存率である61.2%に比べると極め
て良好な数値であって、上記実施例1の濾過処理に比べ
ても大差がない。また、化学分析などに使用する分離用
高分子担体は当該ゼオライトや前記メンブランフィルタ
ーのように多孔質な構造なので、例えば、セルロースゲ
ルやポリスチレンゲルを保持体粒子とする分離用高分子
担体をセンナエキス水溶液の吸着処理に適用しても、略
同様に良好な高温静置下の活性保持効果が得られた。
【0027】
【発明の効果】上記実施例に示すように、センノシド類
含有溶液を多孔濾材で濾過するか、所定の吸着材に接触
させるという極めて簡便な操作で、40℃の高温静置に
よっても6カ月の長期に亘りセンノシド類の有効成分残
存率の低下を抑制し、当該溶液の生理活性を高く保持で
きる。即ち、本発明の処理をしたセンノシド類含有溶液
は高温静置下でも長期の品質安定性を示し、前記薬事法
の加速試験をクリアできる。従って、本発明方法によれ
ば、従来では困難であったセンナ、大黄などからセンノ
シド類を有効成分とする内服用薬液を新規に効率良く製
造できる。
【0028】因みに、薬液の服用時期は数カ月の幅でバ
ラつく場合が少なくない現実下では、センノシド類のよ
うに高温安定性が低い場合、数カ月後に服用しても効く
ように有効成分を余剰ぎみに調剤すると早い時期の服用
では成分が濃過ぎる問題が起こり、早期の服用に合わせ
て調剤すると遅い時期では成分濃度が低下して効き目が
悪くなるという問題が起こる。これに対して、本発明で
処理した薬液は長期の品質安定性があるので、少し高め
の成分濃度で調剤することで、服用時期にかなりの幅が
あっても成分濃度の低下を適正な薬効範囲内に収めるこ
とができる。例えば、センノシド類の有効成分残存率を
10%以内に抑えるようにしておけば、調剤直後に飲ん
でも6カ月後に服用してもほとんど同じ薬効を期待でき
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 センナ、大黄などの薬効成分であるセン
    ノシド類の含有溶液を沈殿物の生じない状態で多孔濾材
    を介して濾過して、センノシド類含有薬液を得ることを
    特徴とするセンノシド類を有効成分とする内服用薬液の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 0.45μmよりも細かい孔径の多孔濾
    材を使用する請求項1に記載のセンノシド類を有効成分
    とする内服用薬液の製造方法。
  3. 【請求項3】 無機系多孔体や有機系多孔体から成る吸
    着材を充填した吸着層に、センナ、大黄などの薬効成分
    であるセンノシド類の含有溶液を接触・通過させて、セ
    ンノシド類含有薬液を得ることを特徴とするセンノシド
    類を有効成分とする内服用薬液の製造方法。
JP4112277A 1992-04-03 1992-04-03 センノシド類を有効成分とする内服用薬液の製造方法 Expired - Lifetime JPH075470B2 (ja)

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