JPH0752118A - 陶磁器板およびその製造方法 - Google Patents

陶磁器板およびその製造方法

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JPH0752118A
JPH0752118A JP19865993A JP19865993A JPH0752118A JP H0752118 A JPH0752118 A JP H0752118A JP 19865993 A JP19865993 A JP 19865993A JP 19865993 A JP19865993 A JP 19865993A JP H0752118 A JPH0752118 A JP H0752118A
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JP
Japan
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sheet
ceramic plate
shaped
thermal expansion
fired body
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JP19865993A
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English (en)
Inventor
Toshio Shimizu
寿雄 清水
Mitsunobu Otani
光伸 大谷
Yukio Noda
征雄 野田
Moichi Murata
茂一 村田
Teruki Ueda
輝基 上田
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ORIBESUTO KK
ORIENTAL ASBEST
Toray Industries Inc
Original Assignee
ORIBESUTO KK
ORIENTAL ASBEST
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 強度特性が優れ、反りや変形も少ない、薄型
で大型形状の陶磁器板を提供する。 【構成】 この陶磁器体はシート状焼成体の少なくとも
3層から成る多層構造体であって、それらシート状焼成
体のうちの少なくとも2つの層は熱膨張係数が異なって
いる。この陶磁器板は、陶磁器材料の粉末と繊維材料と
ガラス転移点10℃以下の有機質材料から成る少なくと
も2種類のスラリーから、焼成後の熱膨張係数が異なる
シート状成形体を別々に抄造し、それらシート状成形体
を3枚以上積層して一体化し、その積層体を焼成して製
造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抄造法を利用して製造さ
れる陶磁器板とその製造方法に関し、更に詳しくは、薄
くても強度特性や寸法精度に優れ、主として、建築の外
壁材、内壁材、床材などに使用して好適な陶磁器板とそ
れを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、大型形状の陶磁器板の市場が急速
に拡大している。この大型陶磁器板は、取扱いの容易さ
や施工のしやすさのことを考えて、軽量であることが要
求され、通常は薄板として製造されている。しかし、た
とえ陶磁器板が薄板であったとしても、その陶磁器板に
は、同時に、外部からの衝撃に対して充分に優れた強度
特性を備え、また、反りや変形などがなく、良好な寸法
精度を示すことが必要とされる。
【0003】このような薄い陶磁器板は、通常、抄造法
を利用して製造されているが、それらの方法としては、
たとえば、特公昭60−3038号公報に提案されてい
るような方法がある。すなわち、ハイ土粉末と繊維材料
とを必須成分とするスラリーを抄造して所定量の含有水
分を有する陶磁器板シートを製造し、また、釉薬と繊維
材料とを必須成分とするスラリーを抄造して所定量の含
有水分を有する釉薬シートを製造し、両シートを重ね合
わせ、それをロール型プレス機を用いて一体化したのち
焼成するという方法である。
【0004】また、本発明者らは、陶磁器材料の粉末と
繊維材料とバインダ成分とから成るスラリーを抄造して
薄い抄造シートを製造し、その抄造シートを必要枚数だ
け積層したのち、全体を加圧してこれら抄造シートを一
体化し、得られた積層体を焼成して同一組成のシート状
焼成体から成る多層構造の陶磁器板の製造方法を提案し
た(特願平4−58906号参照)。
【0005】この陶磁器板は、強度特性が優れ、また反
りや変形も少ないという特性を備えている。ところで、
最近は、陶磁器板に対し、更なる高性能化と高機能性が
要求されており、そのことに加えて、用途分野も多岐に
わたり、それに応じて陶磁器板に要求される品質も多岐
にわたっている。しかも、このような要求にも充分に対
応できる低コストの製造方法が要求されている。
【0006】しかしながら、前記した特願平4−589
06号に記載の方法で製造した陶磁器板は、上記した最
近の多様な要求に対して充分に応えるものとはいいがた
いという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特願平4−
58906号で提案した陶磁器板とその製造方法を改良
したものであって、とくに耐衝撃性や強度特性に優れ、
かつ反りや変形が少なく、寸法精度も優れている陶磁器
板とその製造方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、少なくとも3層の、陶磁器
材料を主成分とするシート状焼成体から成る陶磁器板で
あって、前記シート状焼成体の少なくとも2つの層は熱
膨張係数が異なっていることを特徴とする陶磁器板が提
供され、また、陶磁器材料の粉末、繊維材料、およびガ
ラス転移点が10℃以下の熱可塑性有機質材料を必須成
分とする少なくとも2種類のスラリーであって、それぞ
れのスラリーを抄造してなるシート状成形体を焼成した
ときに得られるそれぞれのシート状焼成体の熱膨張係数
が相違するような少なくとも2種類のスラリーを調製
し、それぞれのスラリーから少なくとも2枚のシート状
成形体を別々に抄造し、得られた各シート状成形体を積
層して少なくとも3層構造の積層体にし、その積層体を
加圧して一体化したのち焼成することを特徴とする陶磁
器板の製造方法が提供される。
【0009】本発明の陶磁器板は、後述するスラリーを
抄造して成るシート状成形体を少なくとも3枚積層し、
その積層体を加圧することにより前記シート状成形体を
互いに圧着して一体化し、ついで全体を焼成することに
より、各シート状成形体を、陶磁器材料を主成分とする
シート状焼成体に転化して製造される。ここで、積層す
る各シート状成形体のうちの少なくとも2枚は、それを
焼成してシート状焼成体にしたときに、各シート状焼成
体の熱膨張係数が相違するようなものであり、具体的に
は、後述するスラリーの組成、スラリーの主成分である
陶磁器材料の種類や粒度分布などを調整することによっ
て成形される。
【0010】したがって、本発明の陶磁器板は、シート
状焼成体が、少なくとも3層、積層されている構造にな
っている。そして、少なくとも3層存在するシート状焼
成体のうち、少なくとも2層は熱膨張係数が異なってい
ることを特徴とするものである。本発明の陶磁器板を製
造するときの焼成過程では、積層されているシート状成
形体はその組成や焼成条件に対応した熱収縮率で収縮す
る。
【0011】その場合、焼成後の熱膨張係数が異なる2
枚のシート状成形体の相互の界面では、各シート状成形
体の熱収縮率の違いに基づき、形成されてくるシート状
焼成体の界面には歪み応力が内在することになる。した
がって、この陶磁器板に外部から衝撃力が加わった場合
でも、歪み応力が内在している界面で小破壊が進行して
その衝撃力を吸収または分散させることになり、その結
果、陶磁器板の厚み方向に向かう衝撃力の伝播が大幅に
抑制され、クラックの発生が抑制されることになる。
【0012】また、焼成後の熱膨張係数が異なる2枚の
シート状成形体が互いに圧着した状態で焼成されると、
その焼成過程では、熱膨張係数が小さくなる層には圧縮
応力が発生し、熱膨張係数が大きくなる層には引張り応
力が発生する。したがって、隣接するシート状焼成体に
発生するそれぞれの応力を適正化すれば、得られた陶磁
器板の反りや変形の発生を抑制することができると同時
に、陶磁器板それ自体の強度も大幅に高めることができ
る。
【0013】このようなことを勘案すると、互いに隣接
するシート状焼成体の間では、熱膨張係数の差が0.2×
10-6〜2.0×10-6/℃となるように各シート状焼成
体の熱膨張係数が調整されていることが好ましい。とく
に、0.5×10-6〜1.0×10-6/℃に調整されている
ことが好ましい。熱膨張係数の差が0.2×10-6/℃よ
りも小さい場合には、上記した効果が充分に発揮され
ず、また2.0×10-6/℃よりも大きくなると、焼成過
程で層間剥離やクラックが発生しやすくなり、また焼成
過程での反りや変形などが発生するようになる。
【0014】なお、本発明において、上記した熱膨張係
数は次のようにして求められた値のことをいう。すなわ
ち、まず、焼成して得られた陶磁器板の表面から染料水
を厚み方向に含浸させる。シート状焼成体の各層はそれ
ぞれ孔構造が異なっているのでその孔構造の違いに対応
し、各層の染色状態に濃淡差が生ずる。したがって、こ
の各層の濃淡差をたとえばマイクロファイバースコーブ
で拡大観察すれば、各層相互間の界面を識別することが
でき、同時に各層の厚みも測定することができる。
【0015】各層の間の孔構造の違いが小さい場合は、
EPMAによって厚み方向における組成の差を求め、そ
のことによって各層を識別することができる。このよう
にして各シート状焼成体の層を識別したのち、陶磁器板
を注意深くスライスして、測定対象のシート状焼成体の
層を試料(室温時の長さl0 とする)として採取し、そ
の試料を、市販の押棒式示差熱膨張計にセットし、試料
を室温(t0 ℃とする)から所定温度(t℃とする)に
加熱して試料の長さ(lとする)を測定し、次式: α=1−l0 /l/t−t0 に基づいて、平均熱膨張係数αとして算出する。tは通
常、400℃とする。
【0016】本発明の陶磁器板は、上記したシート状焼
成体の多層構造体として製造されているものである。そ
のときの層数は、目的とする耐衝撃性やその他の特性と
の関係から適宜に設定されるが、少なくとも3層である
ことが必要である。好ましくは5層以上にする。2層構
造の場合は、反りや変形が大きくなり、また、所望の耐
衝撃性も得られなくなるため好ましくない。
【0017】シート状焼成体の層数が多くなると、陶磁
器板全体の均質性が高まり、また焼成過程における各シ
ート状成形体の熱収縮も均一化して、焼成後の陶磁器板
に反りや歪みなどが発生しにくくなり、更に、全体の強
度も高くなるという利点がある。しかし、層数が過度に
多くなると、シート状成形体の積層体に後述する加圧処
理を施すときに、加圧効果が減退して各シート状成形体
を全体として一体化することが困難になり、また生産設
備の関係もあるので、一般的には、層数の上限は20と
する。
【0018】なお、後述する焼成過程で、各シート状焼
成体の界面では、それぞれの成分が混在してあって中間
層を形成することもあるが、本発明においては、このよ
うな中間層はシート状焼成体の層として数えない。各シ
ート状焼成体の積層状態は、陶磁器板へ加わる外部から
の応力の種類や方向との関係で適宜に選定される。たと
えば、熱膨張係数が異なるシート状焼成体が交互に積層
されている状態や、表面から厚み方向にかけて熱膨張係
数が漸増または漸減するように、シート状焼成体が順次
積層されている状態をあげることができる。
【0019】外部からの衝撃応力に対する抵抗を高める
ためには、一般に、表面層を熱膨張係数の小さいシート
状焼成体で構成して表面層に圧縮応力を存在させること
が好ましい。また、外部からの曲げ応力に対しては、そ
の曲げ応力によって引張り応力が発生する層を熱膨張係
数の小さいシート状焼成体で構成することにより、そこ
に圧縮応力を存在させるような構造にすることが好まし
い。
【0020】このように、互いに熱膨張係数が異なるシ
ート状焼成体を適宜に組み合わせた状態で積層一体化さ
せた構造にすることにより、外部からの衝撃応力や曲げ
応力に対しても充分耐えることができる陶磁器板にする
ことができるが、全体の多層構造においては、各シート
状焼成体に焼成過程で発生している圧縮応力と引張り応
力が互いにバランスするように配置することが好まし
い。たとえば、各シート状焼成体を陶磁器体の厚み方向
で対称に積層した構造であることが好ましい。陶磁器板
全体としての反りや変形を抑制することができるからで
ある。
【0021】本発明の陶磁器板におけるシート状焼成体
の厚みは、製品全体としての厚みや用いるシート状成形
体の積層枚数などに対応して適宜に決められるが、通
常、0.1〜2mmに設定することが好ましい。その場合、
各シート状焼成体の厚みはそれぞれ同じであっても異な
っていてもよい。なお、焼成後の熱膨張係数が小さくな
るシート状成形体、焼成後の熱膨張係数が大きくなるシ
ート状成形体のそれぞれの厚みを適宜に変え、それらを
積層して多層構造の積層体として焼成することにより、
各シート状焼成体に発生する応力の大小を調節したり、
またシート状焼成体の多層構造体における応力バランス
を調節して、強度特性が優れ、反りや変形の少ない陶磁
器板にすることができる。
【0022】用いるシート状成形体の厚みは、後述する
スラリーの組成や抄造条件を適宜に選定することにより
調整することができる。また、薄く、組成が同じである
シート状成形体を所望の枚数だけ積層して、その積層体
をもって、所望の厚みでかつ当該組成、すなわち所定の
熱膨張係数のシート状焼成体になるシート状成形体とし
て使用することもできる。
【0023】本発明の陶磁器板は次のようにして製造さ
れる。まず、少なくとも2種類のスラリーが調製され
る。これらのスラリーは、いずれも、陶磁器材料の粉末
と繊維材料と熱可塑性の有機質材料を必須成分とする。
陶磁器材料としては、格別限定されるものではないが、
たとえば、各種の粘土類、カオリン、陶石、けい砂、け
い灰石、長石、ドロマイト、アルミナ、ジルコニア、フ
ライアッシュ、アプライト、抗火石のようなものをあげ
ることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよ
いし、また2種以上を適当な割合で混合して用いてもよ
い。
【0024】これらは、通常、200〜400メッシュ
(タイラー篩)程度の微粉末にして用いることが好まし
い。繊維材料としては、格別限定されるものではない
が、たとえば、各種の天然繊維、天然および合成パル
プ、レーヨンなどの再生繊維、ポリビニルアルコール
系、ポリアクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系な
どの合成繊維のような各種の有機質繊維;ガラス繊維、
セラミックファイバ、ロックウール、チタン酸カリウム
のような各種の無機質繊維;をあげることができる。
【0025】これらは、それぞれ単独で用いてもよく、
2種以上を適宜に組み合わせて用いてもよい。本発明の
スラリーに配合する熱可塑性有機質材料としては、示差
熱分析(TGA)や示差熱走査熱量測定法(DSC)で
測定されるガラス転移点が10℃以下であるポリマーが
用いられる。このようなポリマーとしては、例えば、天
然ゴム、合成ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ア
クリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸
エステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミ
ド、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、エチレン−
酢酸ビニル共重合体などをあげることができる。これら
はそれぞれ単独で用いてもよいし、また2種以上を適宜
に混合して用いてもよい。
【0026】この有機質材料は、スラリーを抄造して得
られたシート状成形体に柔軟性を与える。そして、シー
ト状成形体を積層しその積層体を加圧する過程で、各シ
ート状成形体間の結着性を高め、そのことにより、別の
結着剤を使用しなくても、各シート状成形体を均一に一
体化させることができる。その結果、加圧後の積層体の
柔軟性がよくなる。また、この有機質材料の配合量や後
述する加圧過程における圧力を調整することにより、後
述する空隙率や吸水率を適正な値に調整することができ
るようになる。
【0027】スラリーの組成は、格別限定されるもので
はないが、通常、主成分である陶磁器材料の粉末100
重量部に対し、繊維材料1〜25重量部、とくに好まし
くは1〜10重量部、熱可塑性有機質材料1〜50重量
部、とくに好ましくは1〜10重量部に設定することが
好ましい。繊維材料の割合が1重量部よりも少なくなる
と、スラリーの抄造が困難になり、抄造過程におけるシ
ート状成形体の歩留りが悪くなる。
【0028】また、繊維材料として前記した有機質繊維
を用いた場合、その割合が25重量部よりも多くなる
と、この有機質繊維が後述の焼成過程で熱分解して消失
するときに、シート状成形体の熱収縮が大きくなり、形
成されたシート状焼成体における反りや変形が大きくな
って、満足すべき陶磁器板が得にくくなる。繊維材料と
して前記した無機質繊維を用いると、この繊維材料の場
合は焼成過程で消失することがないので、シート状成形
体の収縮量を抑制し、更には、得られたシート状焼成体
の耐火度を高め、反りや変形の抑制、陶磁器板の強度向
上という効果を引き出すことができる。しかし、その割
合を10重量部よりも多くすると、得られた陶磁器板の
密度が高くならないという問題が発生してくる。
【0029】このようなことから、有機質繊維を用いる
場合は、陶磁器材料の粉末100重量%に対し1〜25
重量部、無機質繊維を用いる場合は1〜10重量部であ
ることが好ましい。また、両者の繊維を、重量比で2
0:80〜80:20程度に混合して用いてもよい。熱
可塑性有機質材料の割合が1重量部よりも少なくなる
と、この有機質材料による前記した効果が充分に発揮さ
れなくなり、また50重量部よりも多くなると、この有
機質材料の焼成過程における熱分解の影響で、得られた
陶磁器板の収縮量が大きくなりすぎて好ましくない。
【0030】本発明で用いるスラリーは、上記した3成
分を必須成分とするが、これら成分の外に、目的とする
陶磁器板の品質や性能を改良したり、また製造時におけ
る各工程を円滑に進めるために、各種の薬剤を配合して
もよい。そのような薬剤としては、例えば、アニオン系
の有機高分子電解液、カチオン系の有機電解液、カチオ
ン系の無機コロイド液、多価金属塩類などの定着剤や凝
集剤、アスベスト繊維、ガラス繊維、ワラストナイトな
どの無機質粉末のような脱水助剤をあげることができ
る。
【0031】また、陶磁器板を着色したり、意匠効果を
発揮させることを目的として、スラリーに、たとえば、
各種の顔料や着色微粒子、天然みかげ石の微粒子などを
分散させてもよい。上記した各成分を所定の割合で水に
投入し、全体をたとえば公知のパルパーなどを用いて撹
拌混合することにより、抄造用のスラリーが調製され
る。そのとき、スラリーの固形分濃度は、通常、0.5〜
10重量%に調整される。好ましくは、1〜5重量%に
調整される。
【0032】本発明においては、少なくとも2種類のス
ラリーが準備される。すなわち、それらのスラリーをか
ら少なくとも2種類のシート状成形体を抄造し、これら
シート状成形体を焼成したときに、得られたシート状焼
成体の熱膨張係数が互いに異なった値になるような少な
くとも2種類のスラリーである。このようなスラリー
は、たとえば、陶磁器材料の種類やその粒度分布、スラ
リー組成などを適宜に変化させることにより、それぞ
れ、調製することができる。
【0033】少なくとも2種類のスラリーを、たとえば
公知の長網式や丸網式の抄造機を用いて別々に抄造し、
少なくとも2種類のシート状成形体が別々に成形され
る。成形体の厚みは、通常、0.1〜10mmとなるように
調整される。得られたシート状成形体には、つぎに、た
とえば公知のロール乾燥機やトンネル乾燥機を用いるこ
とにより、乾燥処理が施される。
【0034】乾燥処理後におけるシート状成形体の含水
率に関しては、格別限定されるものではない。通常、次
の積層工程における取扱いやすさのことや、加圧後にお
ける積層体の空隙率や吸水率を好適な値に調整すること
や、加圧後におけるシート状成形体相互間の結着効果を
向上させることなどのためには、含水率が2重量%以
下、好ましくは1重量%以下となるように、乾燥処理時
の条件を設定することが望ましい。
【0035】乾燥処理が終了したシート状成形体は、つ
ぎに、所望する層構成となるように積層されたのち、そ
の積層体は加圧され、各シート状成形体が互いに圧着さ
れて一体化される。このときの加圧機としては、たとえ
ば、公知の平プレスやロールプレスを用いることができ
る。とくに、ロールプレスは、長尺のシート状成形体を
均一に、かつ連続的に効率よく加圧することができるの
で好適である。
【0036】印加する圧力は、線圧で少なくとも100
kg/cm以上、好ましくは300kg/cm以上、更に好まし
くは500kg/cm以上に設定することが好適である。線
圧が100kg/cmより小さい場合は、シート状成形体相
互間の結着力が小さくなり、次段の焼成過程で、形成さ
れるシート状焼成体の間で層間剥離が発生しやすくな
り、また、後述する空隙率を0.1〜0.4の範囲に調節す
ることが困難になるからである。
【0037】なお、上記した加圧処理に先立ち、各シー
ト状成形体を予め加熱しておくと、加圧処理時における
線圧を低圧にしても緻密でゆがみのない積層体にするこ
とができるので好適である。その場合、シート状成形体
を、それに含まれている前記熱可塑性有機質材料のガラ
ス転移点よりも50℃以上高い温度に加熱することが好
ましい。このような温度にすると、熱可塑性有機質材料
が充分に軟化して粘着性が高まり、その結果、低圧であ
っても、各シート状成形体間における結着性が良好にな
るからであると考えられる。
【0038】このようにして、各シート状成形体が多層
構造をなして一体化している積層体が得られる。本発明
においては、これまでの過程で、この加圧積層体の空隙
率は0.1〜0.4の範囲に調整され、また、その吸水率は
10〜30%の範囲、とくに、15〜25%の範囲に調
整されることが好ましい。
【0039】これら、積層体の空隙率や吸水率は、前記
したように、スラリー組成、とりわけ、ガラス転移点が
10℃以下の熱可塑性有機質材料の配合割合や、また積
層体の加圧過程における加圧力を適宜選定することによ
って調整することができる。ここで、本発明でいう空隙
率とは、次式: 1−〔W0 /V0 〕/〔W1 ・ρ1 +W2 ・ρ2 〕/W
0 (ただし、式中、V0 は積層体を105℃で24時間乾
燥したのちの積層体の容積:cm3 、W0 は積層体を10
5℃で24時間乾燥したのちの積層体の重量:g、W1
は積層体を400℃で2時間乾燥したのちの積層体の減
少重量:g、W 2 は積層体を400℃で2時間乾燥した
のちの積層体の残存重量:g、ρ1 は積層体に含まれて
いる有機材料全体の密度:g/cm3 、ρ2 は積層体に含
まれている無機材料全体の密度:g/cm3 を表す)に基
づいて算出される値のことをいう。
【0040】また、吸水率(%)とは、積層体を105
℃で2時間乾燥し、その乾燥積層体を室温下で水中に2
4時間浸漬して吸水させたのち、表面の水分を拭き取
り、吸水試験前後における重量から、次式: (吸水試験後の重量−吸水試験前の重量)×100/吸
水試験前の重量 に基づいて算出される値のことをいう。
【0041】これらの特性のうち、たとえば、空隙率は
積層体の焼成過程における収縮率に影響を与える因子で
あり、従来から、陶磁器板の製造に当たっては、この空
隙率を小さくすると焼成過程で反りや変形が少なくな
り、また空隙率を大きくすると焼成過程における収縮率
も大きくなるということが知られている。したがって、
空隙率を小さくする方が反りや変形の少ない陶磁器板を
製造する際には好適であるが、しかし、空隙率の小さい
積層体は相対的に無機材料が多量に含まれているので、
可撓性に乏しく、また脆性でもあり、薄く大型形状の陶
磁器板用の積層体としては、取扱いにくい不適当な材料
になる。
【0042】しかしながら、本発明で用いる積層体は、
比較的多量の陶磁器材料や繊維材料が含まれていて、空
隙率が小さくても、同時にガラス転移点が10℃以下の
熱可塑性有機質材料も所定量配合されているので、その
積層体は柔軟性に富み、全体としての取扱いが容易にな
る。したがって、従来の陶磁器板の製造に用いる積層体
では不適当とされている空隙率0.4以下であっても、本
発明で用いる積層体の場合は、それを焼成する過程で、
大きな熱収縮があまり起こらず、その結果、反りや変形
の発生も抑制され、全体の表面が平滑である陶磁器板に
することができる。しかし、空隙率が0.1よりも小さい
ような場合は、その積層体はあまりにも過度に圧縮され
た状態にあるため、加圧時に発生した残留応力の影響
で、焼成過程でワレや反りが多発するようになってしま
う。
【0043】このようなことから、積層体の空隙率を0.
1〜0.4に調整することが好ましい。以上のようにして
得られた積層体を、つぎに、たとえば公知のローラーハ
ースキルンを用いて、1000〜1350℃、好ましく
は、1000〜1300℃の温度で焼成して、焼成の過
程で発生してくる分解ガスを速やかに除去しつつ、各シ
ート状成形体をシート状焼成体に転化し、これらシート
状焼成体の多層構造体として本発明の陶磁器板が製造さ
れる。
【0044】この焼成過程では、250〜500℃の温
度域における昇温速度を20℃/分以下、とくに10℃
/分以下に設定することが好ましい。上記温度域におけ
る昇温速度を過度に速くすると、積層体に含まれている
有機質繊維や熱可塑性有機質材料の熱分解に伴う分解ガ
スが急激に発生したり、また異常発熱によってシート状
焼成体の間で層間剥離が多発するようになるからであ
る。
【0045】なお、以上の製造過程において、所望色彩
の顔料が配合されているスラリーを抄造して各種色彩の
シート状成形体を製造し、そのシート状成形体で全体の
表面層を構成したり、また表面層と裏面層を別色彩のシ
ート状成形体で構成したり、更には、各層を異色のシー
ト状成形体で構成したりすると、得られた陶磁器板に多
様な意匠効果を発揮させることができる。
【0046】また、加圧工程において、加圧機としてエ
ンボスロールを用いて表面に所望の凹凸模様を付与した
り、更には、釉薬紙や模様印刷のフィルムを添着するこ
とにより、陶磁器板の表面に各種の模様を付与すること
もできる。更に、本発明においては、加圧後の積層体
を、たとえば800〜1350℃の温度で一旦仮焼成し
たのち、その表面に所望の釉薬を施釉し、ついで、50
0〜1350℃の温度で焼成することにより、施釉陶磁
器板を製造することができる。
【0047】
【実施例】
実施例1、比較例1、2 長石25重量部、けい石15重量部、ろう石25重量
部、カオリン30重量部、ワラストナイト5重量部とか
ら成る陶磁器材料粉末と、クラフトパルプ5重量部と、
スチレン−ブダジエンゴムラテックス(ガラス転移点:
−20℃)5重量部とを水に投入したのち全体を充分に
撹拌し、固形分濃度が2重量%のスラリー(A)を調製
した。
【0048】また、長石35重量部、けい石15重量
部、ろう石25重量部、カオリン20重量部、ワラスト
ナイト5重量部から成る陶磁器材料粉末と、クラフトパ
ルプ5重量部と、スチレン−ブダジエンゴムラテックス
(ガラス転移点:−20℃)5重量部とを水に投入した
のち全体を充分に撹拌し、固形分濃度が2重量%のスラ
リー(B)を調製した。
【0049】これらのスラリー(A)、(B)から、長
網式抄紙法機を用いることによって幅120cmのエンド
レスシートを別々に抄造し、更に、各シートを多筒式乾
燥機に通し、いずれも含水率が0.5重量%に調整されて
いるシート状成形体(A)、シート状成形体(B)を製
造した。これらのシート状成形体(A)、(B)の厚み
はいずれも2.0mmとなるように調整した。
【0050】ついで、表1で示したように、シート状成
形体(A)とシート状成形体(B)を交互に積層して5
層構造の積層体にしたのち、全体を線圧が350kg/cm
の油圧式カレンダーロールに通して加圧した。加圧後の
積層体を長手方向に切断して、長さ3m、幅1.2m、厚
み7mmのグリーンを得た。このグリーンの空隙率と吸水
率を測定した。
【0051】ついで、このグリーンをローラーハースキ
ルンにより温度1225℃で60分間焼成し、シート状
成形体(A)の焼成体であるシート状焼成体(A)と、
シート状成形体(B)の焼成体であるシート状焼成体
(B)が交互に積層一体化している5層構造の陶磁器板
にした。得られた陶磁器板につき、シート状焼成体
(A)、シート状焼成体(B)の各熱膨張係数を測定し
た。陶磁器板の曲げ強度と衝撃強度を、それぞれ、JI
SA5209、JIS K7111の規格に準拠して測
定した。また、陶磁器板の反りや変形を5段階評価
(級:評価点5が最良)で判定した。
【0052】なお比較のために、シート状成形体(A)
のみから成る5層構造の積層体を焼成した陶磁器板を比
較例1として製造し、またシート状成形体(B)のみか
ら成る5層構造の積層体を焼成した陶磁器板を比較例2
として製造し、それぞれについても実施例1と同様にし
て特性を調べた。以上の結果を一括して表1に示した。
【0053】
【表1】 表1のデータから明らかなように、本発明の陶磁器板
は、反りや変形がほとんどなく、また曲げ強度、耐衝撃
性はいずれも比較例のものよりも優れている。 実施例2〜4、比較例3、4 表2で示した組成のスラリーを調製し、これら5種類の
スラリーを実施例1と同じようにして抄造し、5種類の
シート状成形体(C)、(D)、(E)、(F)、
(G)、(H)を製造した。
【0054】
【表2】 これらのシート状成形体を、表3で示したような態様で
交互に積層して5層構造の積層体にしたのち、実施例1
と同様の条件で加圧し、同じ寸法形状のグリーンにし
た。各グリーンの空隙率と吸水率を測定し、その結果を
表3に示した。ついで、実施例1と同様の条件で各グリ
ーンを焼成して各シート状成形体(C)、(D)、
(E)、(F)、(G)をそれぞれシート状焼成体
(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)に転
化し、各シート状焼成体が交互に積層一体化している5
層構造の陶磁器板にした。各陶磁器板につき、実施例1
と同様にして各特性を調査した。その結果を表3に示し
た。
【0055】
【表3】 表3のデータから明らかなように、各シート状焼成体間
における熱膨張係数の差が0.2×10-6〜2.0×10-6
(1/℃)の範囲内にある陶磁器板は、反りや変形がな
く、また強度特性も優れている。 実施例5〜7 実施例1において、シート状成形体(A)、シート状成
形体(B)の厚みを表4で示すように調整したこと、シ
ート状成形体(A)を表面層にして各シート状成形体の
積層枚数を表4で示したように設定したことを除いて
は、実施例1と同様の条件で陶磁器板を製造した。
【0056】各グリーンの特性、各陶磁器板の特性を一
括して表4に示した。
【0057】
【表4】 表4のデータから明らかなように、シート状成形体の積
層枚数が多い陶磁器板ほど、耐衝撃性は向上している。 実施例8、比較例5、6 実施例1において、スチレン−ブタジエンゴムラテック
スの配合量とカレンダーロールの線圧を表5で示したよ
うに変化させたことを除いては、実施例1と同様の条件
で陶磁器板を製造した。
【0058】これら陶磁器板に用いたグリーン、および
陶磁器板の特性を実施例1と同様にして測定し、その結
果を一括して表5に示した。
【0059】
【表5】 表5のデータから明らかなように、空隙率を0.4以下、
吸水率を30%以下に調整したグリーンを用いて製造し
た本発明の陶磁器板は、曲げ強度、衝撃強度のいずれも
が優れている。 実施例9 実施例1におけるスラリー(A)に、更に、酸化コバル
ト系青色顔料を2重量部配合したスラリーを用いて抄造
したことを除いては、実施例1と同様にして陶磁器板を
製造した。
【0060】得られた陶磁器板は優れた強度特性を有す
るとともに、その表面は青色に着色しており、建築の内
装材や外装材として好適な材料であった。 実施例10 実施例1におけるスラリー(A)に、更に、みかげ石の
微粉末10重量部を配合してシート状成形体を製造し、
そのシート状成形体を表面に積層配置したことを除いて
は、実施例1と同様にして陶磁器板を製造した。
【0061】得られた陶磁器板は、曲げ強度、耐衝撃性
のいずれもが優れていると同時に、表面はみかけ石調の
意匠を備えており、建築の内装材や外装材として好適な
ものであった。
【0062】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
陶磁器板は、熱膨張係数が異なるシート状焼成体の多層
構造体であるため、各シート状焼成体間の界面において
は、外部応力の吸収や外部応力の分散効果が発現するこ
とになり、その結果、耐衝撃性が非常に向上する。ま
た、製造に際しては、焼成後の熱膨張係数が異なるシー
ト状成形体を必要枚数積層したのち、その積層体を焼成
するので、たとえば、各シート状成形体の組成を変えて
焼成過程における各層間の熱収縮量を調節することによ
り、焼成後における各シート状焼成体に発生する応力を
制御し、もって、陶磁器板全体の強度特性を高めたり、
また反りや変形を抑制することができる。
【0063】また、シート状成形体の原料であるスラリ
ーには、ガラス転移点が10℃以下の有機質材料が配合
されているので、得られたシート状成形体は柔軟であ
り、また、積層時には、各シート状成形体は相互に良好
に結着することができる。更に、本発明の陶磁器板の製
造方法では、用いるシート状成形体の積層状態を任意に
変化させることができるため、多様な製造設計が可能と
なり、多様なニーズに対応することができる。たとえ
ば、表面層のシート状成形体に着色材を添加したり、各
種の模様を付与したりして、所望する意匠効果を与える
こともできる。
【0064】本発明の陶磁器板は、建築の外壁材、内装
材、床材、家具の天板、カウンター、各種インテリア素
材、土木関係など、広汎な各種の用途に供することがで
き、その工業的価値は大である。
フロントページの続き (72)発明者 野田 征雄 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 (72)発明者 村田 茂一 滋賀県滋賀郡志賀町小野朝日1丁目2番4 号 (72)発明者 上田 輝基 滋賀県野洲郡野洲町永原388番地

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも3層の、陶磁器材料を主成分
    とするシート状焼成体から成る陶磁器板であって、前記
    シート状焼成体の少なくとも2つの層は熱膨張係数が異
    なっていることを特徴とする陶磁器板。
  2. 【請求項2】 互いに隣接するシート状焼成体間の間で
    は、熱膨張係数の差が0.2×10-6〜2.0×10-6/℃
    になっている請求項1の陶磁器板。
  3. 【請求項3】 各シート状焼成体の厚みが0.1〜2.0mm
    である請求項1の陶磁器板。
  4. 【請求項4】 シート状焼成体が5層以上積層されてい
    る請求項1の陶磁器板。
  5. 【請求項5】 全体の表面を形成するシート焼成体の熱
    膨張係数の方が、そのシート状焼成体と隣接するシート
    状焼成体の熱膨張係数よりも小さくなっている請求項1
    の陶磁器板。
  6. 【請求項6】 少なくとも表面のシート状焼成体には着
    色材が配合されている請求項1の陶磁器板。
  7. 【請求項7】 陶磁器材料の粉末、繊維材料、およびガ
    ラス転移点が10℃以下の熱可塑性有機質材料を必須成
    分とする少なくとも2種類のスラリーであって、それぞ
    れのスラリーを抄造してなるシート状成形体を焼成した
    ときに得られるそれぞれのシート状焼成体の熱膨張係数
    が相違するような少なくとも2種類のスラリーを調製
    し、それぞれのスラリーから少なくとも2枚のシート状
    成形体を別々に抄造し、得られた各シート状成形体を積
    層して少なくとも3層構造の積層体にし、その積層体を
    加圧して一体化したのち焼成することを特徴とする陶磁
    器板の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記スラリーは、陶磁器材料の粉末10
    0重量部に対し、繊維材料1〜25重量部、ガラス転移
    点が10℃以下の熱可塑性有機質材料1〜50重量部を
    必須の組成とする請求項7の陶磁器板の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記積層体の空隙率は0.1〜0.4、吸水
    率は10〜30%に調整される請求項7の陶磁器板の製
    造方法。
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