JPH0751858A - スタッド溶接におけるドロップ時間の補償方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スタッド溶接において、加工片へのスタッド
の押し当て時間をほぼ理想的な一定値に維持しながらド
ロップ時間の変化を補償すること。 【構成】 スタッド溶接の各行程に際して、それより前
の所定回数の溶接についての実際の押し当て時間の平均
を、その都度計算する。押し当て時間の平均値が変化す
ると、リフトソレノイドに降下命令を与える時点を早く
したり遅くしたりしてドロップ時間を調節し、溶接機械
ないにおける老化や磨耗、機械的変化等を補償する。 【効果】 押し当て時間を自動的に理想的な値に非常に
近く維持することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、スタッド溶接、特に自
動車の製造に使用されるスタッド溶接に関する。さらに
詳細には、本発明は、溶接装置の部品の磨耗や老化等が
自動的に補償されて長い使用期間にわたり高い品質を維
持できるようにした方法及び装置の改良に関する。

【０００２】

【従来技術】スタッド溶接装置は、動力源と、溶接すべ
きスタッドを加工片に運ぶためのコレットを備えるガン
すなわちヘッドとからなる。溶接は、先ずスタッドと加
工片とを接触させ、パイロット電流と呼ばれる比較的弱
い電流を該スタッドと加工片に流すことにより行われ
る。このパイロット電流が流れている間に、比較的小さ
い所定の距離だけ加工片から離れるように、スタッドが
リフトソレノイドによって持ち上げられる。これによっ
て、パイロットアークが発生する。次いで、スタッドが
加工片から持ち上げられたときに発生したアークを通し
て、主アーク電流と呼ばれるもっと大きな電流が送られ
る。この主電流は、スタッドと加工片が溶融するに十分
な所定の時間にわたり与えられる。次いで、主アークが
停止してから所定の時間後に、スタッドが加工片に向け
て押し当てられてスタッドが加工片に溶接される。主ア
ークの停止からスタッドが加工片に接触するまでの時間
は重要である。この時間は「押し当て時間」と呼ばれ
る。この押し当て時間が長すぎると、スタッドと加工片
の一方又はその両方が冷却されて溶接できなくなる。押
し当て時間が短すぎると、溶融した金属が飛び散って溶
接の品質が悪くなるか、溶接が生じない結果となる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、時間が経過
し、何千回もの溶接、あるいは何十万回もの溶接を経た
とき、リフトソレノイドのスプリングなどに磨耗や老化
を生じる、ということである。他の部品も同様に磨耗
し、劣化することがある。これは、いわゆる「ドロップ
時間」が長くなることの原因となる。ドロップ時間は、
スタッドを降下させること、すなわちスタッドを加工片
に向けて動かすことについての命令がリフトソレノイド
に与えられた時点と、実際の接触が生じる時点との間の
経過時間である。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、押し当て時間
をほぼ理想的な一定値に維持しながらドロップ時間の変
化を補償するための方法及び装置を提供する。本発明
は、各スタッド溶接に際して、それより前の所定回数の
溶接についての実際の押し当て時間の平均を、その都度
維持するようにした方法及び装置を提供する。押し当て
時間の平均値が変化すると、リフトソレノイドに降下命
令を与える時点を早くしたり遅くしたりしてドロップ時
間を調節し、溶接機械ないにおける老化や磨耗、機械的
変化等を補償する。

【０００５】

【効果】本発明の方法及び装置によれば、押し当て時間
を自動的に理想的な値に非常に近く維持することができ
る。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の実施例を図について説明す
る。図１を参照すると、ガンすなわちヘッド１０を備え
るスタッド溶接機械に本発明を実施した例が示されてい
る。このヘッドすなわちガン１０にはリフトソレノイド
１２が設けられており、このソレノイド１２は、加工片
１８に溶接されるスタッド１６を支持するためのコレッ
ト１４を支持している。公知のように、スタッド１６
は、一つずつ手でコレット１４に導入してもよいし、自
動送り手段を設けてもよい。ガンすなわちヘッド１０を
備える溶接機械の残りの部分は、ブロック２０で示して
ある。ブロック２０は、制御及び電力供給部分２２と、
計算手段２４とを有する。計算手段２４は溶接機械と一
体に構成してもよいし、別の計算機又はマイクロプロセ
ッサとしてもよい。リフトソレノイドパワーラインと呼
ばれる一対のライン２６が部分２２とソレノイド１２を
接続している。同様にして、一対のパワーライン２８
が、部分２２とコレット１４と加工片１８とを接続し
て、最初にパイロットアークを、後で主アークを発生さ
せる。図２を参照すると、３本の線３０、３２、３４が
示されている。線３０は、スタッド１６を支持するコレ
ット１４を加工片１８に対して上昇させたり下降させた
りするための命令をソレノイド１２に与えるライン２６
上の信号を表す。線３２は、線３０の命令に応答して実
際に生じるスタッドの上昇及び下降を示す。線３４は、
ライン２８上の主アークを示す。パイロットアークは本
発明の目的にとっては重要でない。パイロットアーク
は、実質的に常時オンとしてもよいし、主アークを後で
通すためのパイロットアークを誘起させる目的で、行程
の初期にのみ発生させてもよい。

【０００７】「ドロップ時間」は線３０上に示されてい
る。これは、スタッドを加工片上に降下させるようにソ
レノイド１２に与えられる命令から、スタッドが実際に
加工片に接触する時点までの経過時間である。「押し当
て時間」は線３２、３４に関連して示されており、この
時間は、主アークのための電力の停止から、スタッド１
６が実際に加工片１８に接触するまでの時間である。ス
タッドと加工片との接触は線３８で示されている。計算
手段２４は、本発明の方法を達成できるように適切にプ
ログラムされていなければならない。本発明を成功させ
得るように構成された実施例では、プログラムは次の通
りである。以下の数学的解析において、 Ｗ＝加工位置 Ｄ_D ＝所望のドロップ時間 Ｃ＝始動時から測定したドロップ命令 Δ＝Ｄ_D −Ｗ Ｄ＝Ｎ回のサンプルにより測定したドロップ時間 とする。また、以下においては、左欄の値を右欄の値で
置換するものとする。

【０００８】Ｗ＝〔（Ｎ−１）／Ｎ）〕Ｗ Ｗ＝Ｗ＋（１／Ｎ）Ｄ Δ＝Ｄ_D −Ｗ Ｃ＝Ｃ＋Δ この解析を各溶接ごとに行い、次の溶接のための新しい
Ｄ_D を形成する。すなわち、この方法が継続的に実行さ
れる。たとえば、４個のサンプルを使用する場合には、 Ｗ＝3/4 Ｗ Ｗ＝Ｗ＋1/4 Ｄ Δ＝Ｄ_D −Ｗ Ｃ＝Ｃ＋Δ（次に第１ステップに戻る） となる。機械を最初に溶接のために設定する場合には、
熟練した作業員が、主アークの持続時間と強さを調節
し、押し当て時間の始まる時点、すなわち線３０上にお
けるスタッド降下命令に対する主アークの停止の時点を
測定しながら押し当て時間を決定する。しかし、ドロッ
プ時間は部品の磨耗や、スプリングの疲労と磨耗、その
他の要因により変化する。目的とするところは、主アー
クが遮断されてからの所定時点、すなわち理想的な押し
当て時間の終わりより早すぎず、また遅すぎない時点
で、スタッドが加工片に接触するようにすることであ
る。諸条件が、スタッドの溶接を適切にし得るようにす
ることが望まれる。ドロップ時間が上述の理由で変化す
るので、スタッドと加工片との接触の時点もドロップ時
間とともに変化し、押し当て時間も変化する。

【０００９】これらの変化を自動的に補償するために、
所定回数の先行する溶接における押し当て時間を継続的
に平均化し、その値を初期の設定時において熟練者が決
定した理想的な押し当て時間と比較する。この計算は、
各回の溶接がなされる度ごとに行われる。次の溶接行程
における押し当て時間が理想的な押し当て時間になるよ
うに、ドロップ命令３６を必要に応じて早めたり、遅く
したりすることができる。典型的な例を挙げると、本発
明の方法は、主アークを発生させる電流として、約５０
０ないし２０００アンペアの範囲で、５ないし５０ミリ
秒の期間にわたり電流を与えるような態様で実行でき
る。この場合、押し当て時間は、２ないし３ミリ秒とな
る。スタッドは、加工片から１．２７ｍｍ程度持ち上げ
られる。最後に、本発明による修正を行うに際して、計
算手段２４は、所定回数の先行する溶接におけるデータ
を基にして作動する。先行する溶接の４回ないし８回分
の押し当て時間を使用することにより良好な結果を得る
ことができる。加工片に対してスタッドを動かす手段と
してソレノイド１２を示したが、他の機械的な手段、た
とえばステップモーターや他の空気的又は他の形式の手
段を使用することもできる。したがって、「リフト手
段」という用語は、そのような手段をすべて含む意味に
使用する。

【００１０】以上、本発明を詳細に説明したが、詳細な
説明は、単なる例示であり、本発明の範囲は、特許請求
の範囲によってのみ限定される。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の実施例を示すスタッド溶接機械の概
略図である。

【図２】 本発明を説明するために使用される種々のパ
ラメータのタイミング線図である。

【符号の説明】

１０・・・・ガン又はヘッド、 １２・・・・ソレノイド、 １４・・・・コレット、 １６・・・・スタッド、 １８・・・・加工片、 ２０・・・・溶接機械、 ２４・・・・計算手段。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 アール ジェイ シュヌーア アメリカ合衆国 ミシガン州 48035 レ イクオリオン サウス ベルヴィュー 523

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶接すべき加工片に対して接近し又は遠
   ざかるようにスタッドを動かすためのリフト手段と、前
   記スタッドと前記加工片との間に主アークを発生させて
   前記スタッドと前記加工片の互いに溶接される部分を溶
   融させる手段とを備えるスタッド溶接装置における押し
   当て時間をほぼ理想的保持するためにドロップ時間の変
   化を補償する方法であって、各溶接ごとにおける実際の
   押し当て時間を測定し、所定回数の前記実際の押し当て
   時間の平均値を毎回計算し、次回のサイクルにおける前
   記リフト手段へのドロップ命令を変更することからなる
   スタッド溶接におけるドロップ時間の補償方法。
2. 【請求項２】 請求項１に記載した補償方法であって、
   前記平均値をえるための前記実際の押し当て時間の前記
   所定回数は、４ないし８であることを特徴とする補償方
   法。