JPH073389B2 - 水質検査方法及びその装置 - Google Patents

水質検査方法及びその装置

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JPH073389B2
JPH073389B2 JP23013892A JP23013892A JPH073389B2 JP H073389 B2 JPH073389 B2 JP H073389B2 JP 23013892 A JP23013892 A JP 23013892A JP 23013892 A JP23013892 A JP 23013892A JP H073389 B2 JPH073389 B2 JP H073389B2
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義郎 伊藤
奨 中村
健一 金子
修 根布
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Tohoku Electric Power Co Inc
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、水に含まれる不純物
の検査方法及びその装置に係り、特に、流出する水にパ
ルスレ−ザ−ビ−ムを照射しブレイクダウンを起させて
発生するプラズマ光線を測定するレ−ザ−ブレイクダウ
ン分光法を用いた水質検査方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、火力発電所では、火力による熱
で水を気化させこの水蒸気の圧力によりタ−ビンを回転
させ発電を行っている。よって、火力発電所におけるボ
イラ−水の水質管理、即ち、火力発電ユニットの定常運
転時の系統水の水質把握、水質異常の監視、及びユニッ
ト起動時の水質判定等の水質管理は、特に重要とされて
いる。
【0003】ユニット起動時には、ボイラ−給水のクリ
−ンアップが行われ、ボイラ−給水に含まれる不純物が
一定基準まで除去される。このクリ−ンアップ終了判定
には、代表して鉄濃度が測定され、基準値と比較され
る。尚、この鉄濃度の測定には約30分の時間を要する。
更に、ユニット起動時には、蒸気に含まれる鉄及びシリ
カの濃度も測定されるが、鉄濃度の測定に加えてシリカ
濃度の測定には約15分の時間を要する。
【0004】上記のように水質判定が終了されると、通
常運転を開始するための諸操作が行われるが、上記のよ
うにユニット起動時の水質判定に多くの時間がかかる場
合には、通常運転の開始時間に遅れを生じてしまう。ま
た、この水質管理がされない場合には、火力発電プラン
トの正常な運転に支障を来す虞がある。特に、近年で
は、週間停止起動、或いは日間停止起動を行うプラント
が多く、プラントの起動損失を低減できる水質管理が望
まれている。
【0005】プラント起動時のクリ−ンアップは、ボイ
ラ−水をサンプリングして全鉄濃度を確認しながら段階
的に系統のフラッシングが行われている。起動クリ−ン
アップの初期の段階のようにサンプリングされた水の懸
濁鉄濃度が大きい場合には、この水の濁度を測定するこ
とによって全鉄濃度の概略値を推測できる。しかし、ク
リ−ンアップ終了判定やドレン回収判定の全鉄濃度の水
質基準は、数μg/Lオ−ダ−であり、全鉄濃度を測定
するためには、全鉄を測定する必要がある。上記の理由
から、火力発電プラントの水質検査には、連続したオン
ライン測定が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の技術において
は、火力発電プラントの起動クリ−ンアップに時間がか
かり、プラントの起動損失が大きく、所望の発電量を得
るためには、多くの時間が必要とされている。また、プ
ラントの起動クリ−ンアップを行う場合、これまでの手
分析を主体とした全鉄濃度の測定方法では、測定値の信
頼性に欠け、迅速な測定値の把握ができず、測定に多く
の時間を必要とし、点検保守作業が容易でない、という
問題がある。
【0007】また、従来の計測機器では、ボイラ−水に
含まれる懸濁鉄の濃度が小さい場合には、懸濁鉄濃度の
正確な把握ができないばかりか、水質の経時変化に対応
した連続オンライン測定ができないという問題がある。
この発明の目的は、試料水の水質が連続オンライン測定
される水質検査方法及びその装置を提供するにある。ま
た、この発明の目的は、サンプリングされる試料水に含
まれる微量の不純物を正確に測定できる水質検査方法及
びその装置を提供するにある。また、この発明の目的
は、火力発電プラントの起動損失の少ない水質検査方法
及びその装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の装置によれ
ば、流体を連続して噴出するとともにこの流体を包囲す
る雰囲気ガスを噴出するノズルと、上記流体に照射する
パルスレ−ザ−ビ−ムを発振する光源と、上記流体がパ
ルスレ−ザ−ビ−ムを照射されて誘電破壊を起こしプラ
ズマ化されるとともに発生されるプラズマ光線を受光し
てその波長成分を検出する手段と、上記光源にパルスレ
−ザ−ビ−ムの発振を開始させる信号を与えるとともに
その同期信号を発振する手段と、この同期信号を受信し
所定の時間間隔を経過して、上記プラズマ光線の波長成
分を取込む時間領域を特定するゲ−ト信号を発振する手
段と、このゲ−ト信号を受信して特定の検出間隔及び検
出時間で波長成分を取込み積算する手段と、を備えてい
る。
【0009】またこの発明の方法によれば、流体を連続
して噴出させるとともに前記流体を包囲するように雰囲
気ガスを噴出させている状態でこの流体に開始信号に応
答してパルスレ−ザ−ビ−ムを照射し、このパルスレ−
ザ−ビ−ムによって前記流体の一部から発生されるプラ
ズマ光線を受光してその波長成分を検出し、前記開始信
号に同期する同期信号に応答して前記プラズマ光線の波
長成分を取込む時間領域を特定するゲ−ト信号に応じて
特定の検出間隔及び検出時間で波長成分を取込み積算す
る。
【0010】
【作用】この発明の構成に基づいて作用を説明すれば、
ボイラ−水及び水蒸気からサンプリングされる試料水
は、2重管構造に形成されたノズルの内側の管を通過さ
れ噴出される。このとき、ノズルの外側の管には、雰囲
気ガスが通過され試料水を包囲するように噴出される。
このように、雰囲気ガスに包囲されて噴出される試料水
には、レ−ザ−制御装置により発振制御されるパルスレ
−ザ−が集光レンズを介して微小スポットで照射され
る。パルスレ−ザ−が照射される試料水は、ブレイクダ
ウンを起しプラズマ化する。プラズマ化により得られる
プラズマ発光は、分光器によって検出される。
【0011】一方、レ−ザ−制御装置から発振されるQ
スイッチ信号は、ゲ−トパルサ−にも供給される。Qス
イッチ信号が供給されたゲ−トパルサ−は、Qスイッチ
信号受信後所定のディレイタイムを経て、分光器ヘッド
にゲ−ト信号を送り出す。このゲ−ト信号を受信してい
る時間間隔だけ分光器ヘッドに光情報がプロットされ
る。
【0012】
【実施例】以下図面を参照しながらこの発明の一実施例
に係る水質検査方法及びその装置について説明する。
【0013】図1、2に示すように、例えばYAGレ−
ザ−であるレ−ザ−光源1から発振される光強度の大き
いパルスレ−ザ−ビ−ム(例えば、パルス幅8ns 、波長
1.06μm)は、集光レンズ3を介して集光され、噴射ノ
ズル11から連続して噴出される試料水5の噴出方向と略
直角を成す方向から微小スポットで照射される。
【0014】パルスレ−ザ−ビ−ムが照射される試料水
5は、ブレイクダウン(誘電破壊)を起しプラズマ化す
るとともに発光する。このプラズマ発光を光ファイバ−
13を介して分光器7で受光し、スペクトル成分に分解す
る。
【0015】一方、レ−ザ−光源1は、レ−ザ−制御装
置2から発振されるQスイッチ信号によって発振制御さ
れる。レ−ザ−制御装置2より発振されるQスイッチ信
号は、同時にゲ−トパルサ−4にトリガ−信号として供
給される。
【0016】トリガ−信号を受信したゲ−トパルサ−4
は、スペクトルマルチチャンネル分光器(以下SMA)
ヘッド6にゲ−ト信号を送り出す。SMAヘッド6は、
このゲ−ト信号を供給されている時間間隔だけ分光器7
で検出された光信号をプロットする。分光器7で検出さ
れる光信号は、SMAヘッド6のダイオ−ドアレ−で電
気信号に変換されて積算される。これら一連の動作には
ディレイタイムを伴い、パルスレ−ザ−の発振に若干遅
れて分光器7の光検出動作が開始される。つまり、ゲ−
トパルサ−4にトリガ−信号が入力されてからSMAヘ
ッド6にゲ−ト信号を送り出すまでにディレイタイムが
生じる。尚、このディレイタイム及びゲ−ト幅は、所望
の値に調整される。
【0017】上記のようにSMAヘッド6で積算される
検出信号は、パ−ソナルコンピュ−タ−9の命令に従っ
て、SMAヘッド6で指定された回数だけSMAコント
ロ−ラ−8で読み込む。この検出信号をパ−ソナルコン
ピュ−タ−9で読み出して解析してプリンタ−10でプリ
ントアウトする。
【0018】図3に示すように、上記噴射ノズル11は、
同心軸の2重管構造に形成されており、ノズル11の内側
の管から試料水5を噴出させ、外側の管から雰囲気ガス
を噴出させることにより、試料水5が雰囲気ガスで包囲
された状態で連続して噴出される。次に上記のように構
成された装置を用いて試料水5の水質検査方法について
説明する。
【0019】本来、試料水5は、火力発電プラントのボ
イラ−水から抽出されるが、ここでは、蒸留水に所定量
の水酸化第2鉄の粉末を加えて調整し、超音波洗浄器等
を用いて十分攪拌混合した試料水5を用いて、試料水5
に含まれる鉄の定性及び定量分析方法について説明す
る。
【0020】試料水5の測定に先立って、水酸化第二鉄
粉末の発光スペクトルを測定した。水酸化第二鉄粉末
は、ダイスを使用して圧粉体に形成され、レ−ザ−出力
100mJ/パルス、発振周波数10Hzのパルスレ−ザ−が照射
され、ブレイクダウンを起し発光する。このプラズマ発
光強度を波長領域 200nm〜500nm の波長範囲で測定した
測定結果を図4に示す。このグラフから解るように、特
に 250nm〜300nm の波長領域において鋭いピ−クが現れ
ており、水酸化第二鉄が有する特徴的な発光スペクトル
は、この波長領域内に顕著に現れている。
【0021】上記の波長領域に合わせて、図5には、25
0nm(2500オグストロ−ム) 〜290nm(2900オグストロ−
ム) の波長領域における鉄片の発光スペクトルが示され
ており、特に259.96nm,261.32nm,263.24nm,273.95nm の
波長を有する光線に鋭いピ−クが現れている。これらの
ピ−ク値は、上記の水酸化第2鉄のそれと一致すること
から、両者に共通な鉄元素からの発光スペクトルと考え
ることができ、発光スペクトルは、物質の状態(水酸化
第2鉄或いは鉄片)によらない。従って、試料水5の発
光スペクトルに図5に示すようなピ−ク値が現れる場合
には、その試料水5には鉄元素が含まれていることが確
認できる。
【0022】また、図6には、空気だけをブレ−クダウ
ンさせた発光スペクトルと、蒸留水だけをブレ−クダウ
ンさせた発光スペクトルとが示されている。試料水5に
含まれる鉄元素の発光スペクトル以外のバックグラウン
ドの発光スペクトルには、これら2つの信号が考えられ
る。また、これらの発光スペクトルは、上記の波長領域
250nm〜290nm 内ではどちらもブロ−ドな信号であり、
突出したスペクトル線は見られないことが確認された。
従って、鉄の発光強度がバックグラウンドの発光強度と
比較して十分大きい場合には、試料水5の発光スペクト
ルに図5のような鉄元素に特有な発光ピ−ク点が確認で
きる。
【0023】次に、図7に示すように、試料水5の各濃
度における発光スペクトルを調べた。水酸化第二鉄の濃
度を10ppm から50ppm まで10ppm の間隔で変化させ、 2
50nm〜290nm の測定領域において、5種類の試料水5に
ついて発行スペクトルを測定した。照射光源には、レ−
ザ−出力100mJ/パルス、発振周波数10Hzのパルスレ−ザ
−が使用され、このレ−ザ−を10回照射した。その結
果、水酸化第2鉄濃度を増加させるとピ−ク点の発光強
度が増加するとともにバックグラウンドの発光強度も増
加した。
【0024】また、図8には、上記の条件と同じ条件の
パルスレ−ザ−を30回照射した場合が示されており、照
射回数を増やすことによりバックグラウンド及びピ−ク
点の発光強度がそれぞれ増加することが判明した。尚、
ここでいうレ−ザ−の照射回数とはコンピュ−タ−に取
込んだ検出デ−タ−の回数を示しており、1回で取込め
る微弱な発光スペクトルを複数回重ねて検出することに
より目的スペクトルを鮮明化することができる。
【0025】しかも、このピ−ク点の波長は、図5に示
した鉄片の発光スペクトルのピ−ク点の波長(259.96nm,
261.32nm,263.24nm,273.95nm) と一致した。よって、試
料水5には鉄元素からなる不純物が含まれていることに
なる。このことから、試料水5に含まれている鉄元素の
定性的評価が可能であることが判明した。
【0026】図7、8に示すグラフのピ−ク点(259.96n
m,261.32nm,263.24nm,273.95nm) について、試料水5の
水酸化第2鉄濃度と発光強度との関係を図9、10にそれ
ぞれ示す。尚、これらのピ−ク値の算出方法は、図10に
示すようにピ−ク波長Xに対応する発光強度χの値か
ら、ピ−ク波長Xから等距離にあるA点及びB点の発光
強度、即ちバックグラウンドの発光強度の加算平均値(a
+b)/2 即ちχ´を差し引いて求められている。
【0027】図9、10に示すように、試料水5の水酸化
第2鉄濃度を増加させると、各ピ−ク点(259.96nm,261.
32nm,263.24nm,273.95nm) におけるそれぞれの発光強度
も増加する。また、パルスレ−ザ−の照射回数を増加さ
せると、ピ−ク点における発光強度に、より顕著な増加
がみられる。即ち、バックグラウンドの発光強度とピ−
ク点の発光強度との差がより明らかにされる。以上のこ
とから、試料水5に含まれる水酸化第2鉄濃度が大きい
場合には発光ピ−クも大きくなることが判明した。ま
た、図9に示すグラフでは、水酸化第2鉄濃度と発光強
度とが略比例していることから、発光強度を調べること
により水酸化第2鉄の定量的評価が可能であることが判
明した。
【0028】次に、前述したノズル11を用いてアルゴン
雰囲気ガス中で試料水5のプラズマ発光を測定した場合
について説明する。尚、このときの照射条件は、レ−ザ
−出力100mJ/パルス、発振周波数10Hz、照射回数10回で
あった。
【0029】図12、13に示すように、アルゴン雰囲気ガ
スに包囲された状態で上記条件のパルスレ−ザ−を照射
し、各不純物濃度における発光強度を測定した。この結
果、大気中での測定と比較して、バックグラウンドの発
光強度が全体的に増加するとともに、不純物の発光強度
も増加した。これは、アルゴンガスの熱伝導率が空気と
比較して低く、熱の伝わりが空気よりも遅いために、プ
ラズマ発光部分が極めて高温に保たれるためと考えられ
る。
【0030】しかし、アルゴン雰囲気中でプラズマ発光
のスペクトルを得ると、不純物である鉄に固有の発光ス
ペクトルがバックグラウンドの発光スペクトルにマスク
される傾向にある。即ち、目的スペクトル(鉄)の発光
強度とバックグラウンドの発光強度とが同程度であるた
めに、目的スペクトルが鮮明化されない。このように不
純物の発光スペクトルがマスクされる場合には、得られ
る発光スペクトルのS/N比(ノイズ、即ちバックグラ
ウンドの発光強度に対する、シグナル、即ち目的スペク
トルの発光強度の割合)が低下し、高い精度の測定結果
が得られない。このため、S/N比を高くすることので
きる雰囲気ガスとしてヘリウムガスが用いられる。以下
にその理由を述べる。
【0031】図14は、雰囲気ガスとしてアルゴンガス、
窒素ガス、ヘリウムガスを使用した場合の試料水5の発
光スペクトルを示しており、このときのパルスレ−ザ−
の照射条件は、レ−ザ−出力100mJ/パルス、照射回数10
回であり、水酸化第2鉄濃度は 50ppmであった。
【0032】各雰囲気ガスの熱伝導率の違いにより、試
料水5の発光強度は、アルゴンガス雰囲気が一番強く、
次いで窒素ガス、ヘリウムガスの順であった。しかし、
各雰囲気ガスにおける発光スペクトルのS/N比は、ヘ
リウムガス雰囲気が一番強く、次いで窒素ガス、アルゴ
ンガスの順であった。よって、ヘリウムガス雰囲気でプ
ラズマ発光を測定することにより高いS/N比が得ら
れ、測定精度を高くでき、検出の限界を高められる。
【0033】また、このように雰囲気ガスを使用するこ
とにより試料水5の流出時における飛散を防ぐ作用を有
する。試料水5の飛散を防ぐことにより、測定装置の汚
れを防止し、安定した連続測定が可能になる。
【0034】また、試料水5が常に流動している状態で
測定が行われているので、連続した測定が可能となるば
かりか、経時的にその状態が変化される試料水5のオン
ライン測定が可能となる。
【0035】更に、試料水5をノズル11から噴出させる
ことにより、従来用いられていた試料水5のサンプリン
グ用のセル容器が不必要となり、測定値のS/N比を高
くすることができる。つまり、試料水5をセル容器に入
れた状態でブレイクダウンさせる場合には、セル材料が
励起光を吸収し、或いはセル自体が発光し、不純物から
の励起光をマスクすることになる。また、不純物やブレ
−クダウン生成物が容器に付着して、この付着物がレ−
ザ−光を吸収してセルの損傷や光強度の減少を引き起こ
す。また、セル容器を使用する場合の別の悪影響として
は、セル容器中ではブレイクダウンによって気泡が発生
し、この気泡が消失するまで次のレ−ザ−パルスを照射
できないという問題がある。このため、短い時間間隔で
の連続したレ−ザ−照射が不可能となり、測定に要する
時間が多くかかる問題がある。従って、試料水5をノズ
ル11から流動的にしかも連続的に噴出させる方法によっ
て、試料水5の連続オンライン測定が可能となる。
【0036】また、試料水5をノズル11から噴出させる
場合は、試料水5の噴出流とパルスレ−ザ−とが交差す
る点が発光点となるので、光学系を組やすく、光学系の
調整が容易になる。次に、よりS/N比の高い発光スペ
クトルを得るためのタイミングゲ−トについて説明す
る。
【0037】図1に示すように、レ−ザ−光源1のQス
イッチ開閉制御をするレ−ザ−制御装置2は、レ−ザ−
光源1にQスイッチ信号を送るとともにゲ−トパルサ−
4にもトリガ−信号を送る。Qスイッチ信号を受信した
レ−ザ−光源1は、約100nsの時間間隔を置いてレ−ザ
−ビ−ムを発振する。このとき同時にトリガ−信号を受
けたゲ−トパルサ−4は、一定の時間(ディレイタイ
ム)をおいてSMAヘッド6にゲ−ト信号を送る。この
ゲ−ト信号は、分光器7で検出したレ−ザ−ビ−ムのス
ペクトルを所定の時間間隔(ゲ−ト幅)だけSMAヘッ
ド6に取込ませるために送られる。尚、このディレイタ
イムは、20ns〜1600nsの時間間隔に設定でき、ゲ−ト幅
は、20ns〜3000nsの時間間隔に設定できる。
【0038】図15に示すように、レ−ザ−光源1は、レ
−ザ−制御装置2からQスイッチ信号(2μs)を受け
て、レ−ザ−ビ−ムを発振する。このレ−ザ−ビ−ム
は、Qスイッチ信号が発振されてから約100ns 後に出力
のピ−クをむかえる。一方、上記のレ−ザ−ビ−ムを受
けてブレイクダウンを起し発生されるプラズマ光は、分
光器7で解析され、スペクトルに分解される。分光器で
分解された光成分は、SMAヘッド6で電気信号に変換
され、上記Qスイッチ信号(トリガ−信号)の発振から
所定のディレイタイムを経過された後、所定のゲ−ト幅
だけSMAヘッド6にプロットされる。
【0039】図16、17には、ディレイタイムを150ns か
ら450ns まで50ns間隔で変化させた時の試料水5(100p
pm)の発光スペクトルが示されており、ヘリウム雰囲気
中でレ−ザ−出力100mJ/パルスのパルスレ−ザ−を50回
照射した。試料水5から測定される発光スペクトルに
は、鉄のスペクトルの他に水及び雰囲気ガスの発光スペ
クトルが含まれており、これら全てのスペクトルが重な
り合っている。この発光スペクトルの寿命(発光時間)
は、各構成要素に固有の値であるので、測定される目的
の構成要素の発光寿命に合わせて測定範囲を決定するこ
とが望ましい。
【0040】即ち、鉄の発光スペクトルを測定する場合
には、鉄の発光寿命に合わせたタイミングゲ−トの制御
がされる。レ−ザ−照射直後の発光スペクトルは、バッ
クグラウンドの発光強度が大きく、鉄の発光スペクトル
がマスクされてしまう。鉄固有の発光スペクトルが現れ
はじめるのは、レ−ザ−制御装置2からのQスイッチ信
号がゲ−トパルサ−4に入力されてから約250ns のディ
レイタイムが経過された後である。このため、測定する
発光スペクトルは、約300ns のディレイタイムが経過さ
れた後に適切なゲ−ト幅だけ測定することが望ましい。
このように、試料水5の発光スペクトルが所定のディレ
イタイム及びゲ−ト幅をもって測定されることにより、
バックグラウンドの発光スペクトルにマスクされること
のないS/N比の高い発光スペクトルを得ることができ
る。また、試料水5は、これに限らず鉄の代わりに他の
元素が混合されてもよく、その測定元素にあったタイミ
ングゲ−トがかけられる。
【0041】
【発明の効果】この発明のように流体が雰囲気ガスによ
り包囲されて噴出される場合には、流体が空気中に噴出
される場合と比較して、発光強度の大きいプラズマ発光
を得ることができる。即ち、雰囲気ガスで流体を包囲す
ることにより、プラズマ発生点を高温に保つことがで
き、発光強度を大きくすることができる。
【0042】さらに流体をノズルから噴出させることに
より連続した流体の提供が可能となり、流体を容器に抽
出して検査する場合と比較して、容器自体の発光がな
く、容器による光の吸収がなく、ブレ−クダウン生成物
による影響をなくすことができる。
【0043】また、本発明のように流体を噴出する方法
によれば、ブレイクダウンにより発生した気泡は流体の
流れに伴って移動され、気泡による影響がなくなり、短
い時間間隔での連続したレ−ザ−照射が可能となり測定
時間を短くできる。また、連続した測定が可能であり火
力発電において要求されている連続オンライン測定に対
応できる。また、流体の流れとレ−ザ−光とが交差する
点が発光点となるので、装置の光学系の設置及び調整が
容易にできる。
【0044】流体の各構成要素ごとに特有な発光スペク
トルの中で、検出目的要素の発光スペクトルだけを突出
させるためのタイミングゲ−トをかけることにより、S
/N比の高い検出結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施例における水質検査
装置を示す概略図。
【図2】図2は、この発明の一実施例における水質検査
装置の測光部分を示す概略図。
【図3】図3は、この発明の一実施例における水質検査
装置のノズルを示す概略図。
【図4】図4には、この発明の一実施例の水酸化第二鉄
圧粉体にレ−ザ−出力100mJ/パルス、発振周波数10Hzの
パルスレ−ザ−を照射した時の発光スペクトルを示す。
【図5】図5には、鉄片にレ−ザ−出力100mJ/パルス、
発振周波数10Hzのパルスレ−ザ−を照射した時の発光ス
ペクトルの 250nm〜290nm の波長領域内の発光スペクト
ルを示す。
【図6】図6には、空気および蒸留水にレ−ザ−出力10
0mJ/パルス、発振周波数10Hzのパルスレ−ザ−を照射し
た時のバックグラウンド発光のスペクトルの 250nm〜29
0nm の波長領域内の発光スペクトルを示す。
【図7】図7には、試料水の不純物濃度を10ppm から50
ppm まで変化させて、レ−ザ−出力100mJ/パルス、発振
周波数10Hzのパルスレ−ザ−を大気中雰囲気で10回照射
した時の 250nm〜290nm の波長領域内の発光スペクトル
を示す。
【図8】図8には、試料水の不純物濃度を10ppm から50
ppm まで変化させて、レ−ザ−出力100mJ/パルス、発振
周波数10Hzのパルスレ−ザ−を大気中雰囲気で30回照射
した時の 250nm〜290nm の波長領域内の発光スペクトル
を示す。
【図9】図9は、図7の各ピ−ク値における試料水の不
純物濃度と発光強度との関係を示すグラフ。
【図10】図10は、図8の各ピ−ク値における試料水の不
純物濃度と発光強度との関係を示すグラフ。
【図11】図11は、発光スペクトルのピ−ク値の算出方法
の説明図。
【図12】図12は、試料水の不純物濃度を10ppm から50pp
m まで変化させて、レ−ザ−出力100mJ/パルス、発振周
波数10Hzのパルスレ−ザ−をアルゴン雰囲気で10回照射
した時の 250nm〜290nm の波長領域内の発光スペクトル
を示すグラフ。
【図13】図13は、図12の各ピ−ク値における試料水の不
純物濃度と発光強度との関係を示すグラフ。
【図14】図14は、アルゴン、窒素、ヘリウム雰囲気での
試料水(濃度50ppm )にレ−ザ−出力100mJ/パルスパル
スレ−ザ−を10回照射した時の 250nm〜290nm の波長領
域内の発光スペクトルを示すグラフ。
【図15】図15は、タイミングゲ−トのかけ方を示す説明
図。
【図16】図16は、不純物濃度100ppmの試料水を用い、レ
−ザ−出力100mJ/パルスのパルスレ−ザ−をヘリウム雰
囲気で50回照射した時の 250nm〜290nm の波長領域内の
発光スペクトルを示し、ディレイタイムを150ns から25
0ns まで50ns間隔で変化させた時の発光スペクトルを示
すグラフ。
【図17】図17は、不純物濃度100ppmの試料水を用い、レ
−ザ−出力100mJ/パルスのパルスレ−ザ−をヘリウム雰
囲気で50回照射した時の 250nm〜290nm の波長領域内の
発光スペクトルを示し、ディレイタイムを300ns から25
0ns まで50ns間隔で変化させた時の発光スペクトルを示
すグラフ。
【符号の説明】
1…レ−ザ−光源 2…レ−ザ−制御装置 3…集光レ
ンズ 4…ゲ−トパルサ− 5…試料水 6…スペクト
ルマルチチャンネル分光器(SMA)ヘッド 7…分光器 8…SMAコントロ−ラ− 9…パ−ソナ
ルコンピュ−タ− 10…プリンタ− 11…ノズル 13…
光ファイバ−
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金子 健一 新潟県新潟市桃山町二丁目200番地 東北 電力株式会社新潟火力発電所内 (72)発明者 根布 修 新潟県新潟市桃山町二丁目200番地 東北 電力株式会社新潟火力発電所内 (56)参考文献 特開 平1−259240(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】流体を連続して噴出するとともに前記流体
    を包囲する雰囲気ガスを噴出するノズルと、 前記流体に照射するパルスレ−ザ−ビ−ムを発振する光
    源と、 前記流体がパルスレ−ザ−ビ−ムを照射されて誘電破壊
    を起こしプラズマ化されるとともに発生されるプラズマ
    光線を受光してその波長成分を検出する手段と、 前記光源にパルスレ−ザ−ビ−ムの発振を開始させる信
    号を与えるとともにその同期信号を発振する手段と、 前記同期信号を受信し所定の時間間隔を経過して、前記
    プラズマ光線の波長成分を取込む時間領域を特定するゲ
    −ト信号を発振する手段と、 前記ゲ−ト信号を受信して特定の検出間隔及び検出時間
    で波長成分を取込み積算する手段と、を有する水質検査
    装置。
  2. 【請求項2】流体を連続して噴出させるとともに前記流
    体を包囲するように雰囲気ガスを噴出させている状態で
    この流体に開始信号に応答してパルスレ−ザ−ビ−ムを
    照射し、このパルスレ−ザ−ビ−ムによって前記流体の
    一部から発生されるプラズマ光線を受光してその波長成
    分を検出し、前記開始信号に同期する同期信号に応答し
    て前記プラズマ光線の波長成分を取込む時間領域を特定
    するゲ−ト信号に応じて特定の検出間隔及び検出時間で
    波長成分を取込み積算する水質検査方法。
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