JPH07325008A - 半導体薄膜の吸収係数測定方法 - Google Patents

半導体薄膜の吸収係数測定方法

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JPH07325008A
JPH07325008A JP11666794A JP11666794A JPH07325008A JP H07325008 A JPH07325008 A JP H07325008A JP 11666794 A JP11666794 A JP 11666794A JP 11666794 A JP11666794 A JP 11666794A JP H07325008 A JPH07325008 A JP H07325008A
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JP
Japan
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resonance
thin film
semiconductor thin
wavelength
absorption
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JP11666794A
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English (en)
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Takashi Saka
貴 坂
Toshihiro Kato
俊宏 加藤
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Daido Steel Co Ltd
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 半導体薄膜の吸収係数を精度良く測定する方
法を提供する。 【構成】 試料10は半導体多層膜反射層14と半導体
薄膜18の表面22との間に光共振器が構成されている
ため、試料10に入射させられた光20は、その波長λ
が光共振器の共振波長λ0 である場合には光共振器内で
共振させられているうちに半導体薄膜18によって吸収
され、共振波長λ0 ではない場合には殆ど吸収されな
い。そのため、それぞれの場合の反射率R,R′を測定
することによって大きな共鳴吸収比(A−A′)/A′
が得られ、また、共鳴吸収による吸収率は吸収係数μの
小さな変動によって敏感に変動するものであるため、予
めシミュレーションによって求められた換算値(μ/μ
0 )と共鳴吸収比との関係の波長別特性図において、測
定値から得られた共鳴吸収比に対応する換算値を読み取
ることにより、吸収係数μを高い精度で求めることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体薄膜の吸収係数
の測定方法の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、様々な半導体薄膜(例えば、Ga
As等の化合物半導体、SiやGeおよびそれらの混晶
体等の半導体等)が、有機金属化学気相成長(Metal Or
ganicChemical Vapor Deposition :MOCVD)法や
分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MB
E)法等により、組成や添加不純物の種類、ドーピング
量を任意に設定して高精度で製造されるようになり、レ
ーザや発光ダイオードの発光素子、或いはフォトダイオ
ードや偏極電子線発生素子の受光素子等に利用されてい
る。
【0003】
【発明が解決すべき課題】ところで、半導体薄膜が光学
的な用途に用いられる際には、その屈折率、反射率や吸
収係数等の光学的特性を把握することが素子或いは装置
設計等のために必要であり、特に添加不純物の種類やド
ーピング量を変えた場合の特性を知ることが重要であ
る。一般に、これらの光学的特性は材料に光を照射して
反射光或いは透過光を検出することにより行われるが、
半導体薄膜においては膜厚が薄く吸収率が小さいため、
吸収係数を透過光の検出により測定することは困難であ
る。そのため、従来は反射光を検出することにより得ら
れる反射率から、以下のような式に従って算出されてい
た。
【0004】すなわち、光の吸収がある材料では、屈折
率は下記 (1)式の複素屈折率nj で与えられ、吸収係数
μは下記 (2)式で与えられることから、波長λの光の場
合の吸収係数μは減衰係数kが判れば算出できることに
なる。一方、吸収がある材料の反射率Rは下記 (3)式で
与えられ、吸収がない場合の屈折率nの材料および入射
光の波長依存性は種々の方法から決定されることから、
反射率Rを測定することにより減衰係数kが算出でき、
こうして求められた減衰係数kを (2)式に代入すること
で吸収係数μが求められるのである。
【0005】
【数1】
【0006】しかしながら、吸収がない場合の屈折率n
は減衰係数kに比して極めて大きく(例えば、GaAs
の場合には屈折率n(λ)は下記 (4)式で与えられるこ
とが知られており、波長λ0 =836nmの場合はn
(836)=3.655である。一方、減衰係数kは約
0.072程度に過ぎない。)、したがって、上記 (3)
式から明らかなように、反射率Rは減衰係数kの影響を
殆ど受けないのである。そのため、上記 (1)〜 (3)式に
従って反射率Rから吸収係数μを算出すると、誤差が極
めて大きいため実用的な値が得られないという問題があ
った。
【0007】
【数2】
【0008】そこで、従来、半導体薄膜の吸収係数μ
は、略同組成の厚さの大きい材料の吸収係数で代用され
ていた。厚さの大きい材料であれば透過光の吸収率が充
分大きくなるため、吸収係数の算出が可能となるのであ
る。ところが、前述のような薄膜製造法では上記のよう
な吸収係数μの測定に対して充分な厚さの材料を作製す
るのは困難であり、上記厚さの大きい材料は引き上げ法
等の他の方法で作製されたものが一般に用いられてい
る。そのため、測定に用いられる材料は、半導体薄膜と
は点欠陥等の格子欠陥、不純物の種類やドーピング量、
含有形態等が異なり、実際に必要な半導体薄膜の特性と
は異なる特性しか得られないという問題があったのであ
る。
【0009】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであって、その目的は、半導体薄膜の吸収係数を
精度良く測定する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するた
め、本発明の要旨とするところは、半導体薄膜に向かっ
て光を照射し、その反射率を測定することにより吸収係
数を測定する方法であって、(a) その半導体薄膜の後方
にその半導体薄膜の表面との間に光共振器を構成する反
射鏡を設け、その半導体薄膜の表面からその光共振器の
共振波長の光を入射して反射光量を測定することによ
り、共振状態での入射光量と反射光量との比である共振
時吸収率を求める共振時吸収率測定工程と、(b) 前記半
導体薄膜の後方に反射鏡を設け、その半導体薄膜の表面
とその反射鏡との間で光共振が生じさせないようにその
半導体薄膜の表面から光を入射して反射光量を測定する
ことにより、実質的に前記共振波長における入射光量と
反射光量との比である非共振時吸収率を求める非共振時
吸収率測定工程と、(c) 上記共振時吸収率と上記非共振
時吸収率との比である共鳴吸収比を算出する共鳴吸収比
算出工程と、(d) 予め求められた前記半導体薄膜の上記
共振波長における吸収係数と前記共鳴吸収比との関係か
ら、前記共鳴吸収比算出工程により得られた共鳴吸収比
に基づいてその半導体薄膜の上記共振波長における吸収
係数を求める吸収係数決定工程とを、含むことにある。
【0011】
【作用および発明の効果】このようにすれば、共振時吸
収率測定工程においては、半導体薄膜と反射鏡との間に
光共振器が構成されるため、共振波長の入射光はその光
共振器内で繰り返し反射されるうちに、専ら半導体薄膜
に吸収(すなわち共鳴吸収)されることによって反射率
が大きく低下させられる。そのため、共振時吸収率は半
導体薄膜の吸収係数の大きさに応じた大きな値となる。
一方、非共振時吸収率測定工程において測定される非共
振時吸収率(上記共振波長における共振が生じない状態
での吸収率)は、入射光が半導体薄膜内で殆ど吸収され
ないことからその半導体薄膜の吸収係数とは殆ど無関係
な小さな値となる。したがって、共振時吸収率と非共振
時吸収率との比である共鳴吸収比は吸収係数の変化に応
じて大きく変化させられることとなる。そこで、半導体
薄膜の上記共振波長における吸収係数と上記共鳴吸収比
との関係を予め求めておき、共鳴吸収比に対応する吸収
係数をそこから決定することによって、その半導体薄膜
の上記共振波長における吸収係数の正確な値が得られる
のである。
【0012】なお、上記の共鳴吸収比算出工程における
非共振時吸収率は、実質的に共振波長における非共振時
吸収率に相当する値を用いることができる。厳密には、
非共振時吸収率は、共振波長の光が共振させられず共鳴
吸収が生じない(例えば、半導体薄膜と反射鏡との間に
光共振器が構成されていない)状態で、共振波長の光を
半導体薄膜に入射して測定する必要があるが、そのよう
な測定が困難である場合には、共振波長の近傍に位置す
る共鳴吸収が生じない非共振波長における吸収率を測定
し、その値を代用することにより実質的に共振波長にお
ける共鳴吸収比を得ることができる。
【0013】すなわち、共鳴吸収が生じない状態におい
ては、上記共振波長の近傍における反射率曲線は、比較
的高い反射率が上記共振波長を含む広い入射光波長範囲
に亘って広がる所謂シルクハット型を成す。そして、共
鳴吸収が生じる状態においては上記反射率が共振波長に
おいて低下させられるが、共振波長の近傍に反射率が殆
ど低下せず上記比較的高い反射率が得られる非共振波長
が存在する。そのため、共振時吸収率を測定する場合と
同じ装置構成でこのような非共振波長の光を入射させ、
その反射率を測定することで実質的に共振波長における
非共振時吸収率が得られるのである。吸収係数は波長依
存性があるため、厳密には上記非共振波長における吸収
率は共振波長における非共振時吸収率とは異なる値であ
るが、半導体薄膜の厚さが充分に薄い場合にはその誤差
は僅かとなり、特に問題にはならないからである。
【0014】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。図1は本発明の一実施例に用いられる試料10
の構成を示す図である。この試料10は、基板12の上
に半導体多層膜反射層14、支持層16、および吸収係
数の測定対象である半導体薄膜18が、例えばMOCV
D法やMBE法等によって順次結晶成長させられている
ものである。本実施例においては、上記半導体多層膜反
射層14が反射鏡に相当する。
【0015】上記基板12は350μm程度の厚さを備
え、Znが不純物としてドープされることによりキャリ
ア濃度が5×1018(cm-3)程度とされたp−GaA
sであり、表面は(100)面である。また、上記半導
体多層膜反射層14は、厚さが66.5μmのp−Al
0.6 Ga0.4 Asと厚さが60.4μmのp−Al0. 1
Ga0.9 Asとを前者が基板12側になるように交互に
30ペア積層したもので、波長λの光20に対して充分
広い帯域幅を備えた反射特性を備えている。これら2種
類の半導体は、何れもZnが不純物としてドープされる
ことによりキャリア濃度が5×1018(cm-3)程度と
されている。なお、半導体多層膜反射層14の2種類の
半導体の膜厚は、各層の屈折率をnとしたとき、それぞ
れλB /4nとなるように設定されている。ここで、λ
B は半導体多層膜反射層14の中心反射波長であり、上
記帯域幅はこのλB を中心とする波長域である。
【0016】また、上記支持層16は、例えば2000
μm程度の厚さを備えたものであって、Znが不純物と
してドープされることによりキャリア濃度が5×1018
(cm-3)程度とされたp−GaAs0.830.17であ
る。また、上記半導体薄膜18は例えば140μm程度
の厚さを備え、Znが不純物としてドープされることに
よりキャリア濃度が5×1018(cm-3)程度とされた
p−GaAsである。なお、上記支持層16は、前記波
長λの光20のもつエネルギよりもバンドギャップエネ
ルギが充分高く、その光20を殆ど吸収せず透過させる
ように選択されたものである。また、図1における各半
導体の厚さは必ずしも正確な割合で示したものではな
い。
【0017】上記試料10は、基板12上に半導体多層
膜反射層14を備えているため、表面22から入射した
光20はその半導体多層膜反射層14で反射されると共
に、半導体薄膜18の表面22でも内部からの光が30
%程度の反射率で反射され、半導体薄膜18と半導体多
層膜反射層14との間では光20を共振させる光共振器
が構成されている。この光共振器で共振される光20の
波長λは、半導体薄膜18および支持層16の厚さおよ
び屈折率と、半導体多層膜反射層14の各層の厚さおよ
び屈折率とから定められるものである。共振波長の照射
光20は光共振器を構成する半導体薄膜18の表面22
と半導体多層膜反射層14で反射されて戻ってきたとき
に、同じ位相となって共振を起こし、半導体薄膜18を
繰り返し通過させられることによって、その半導体薄膜
18に光20が吸収(共鳴吸収)され、その吸収量に対
応する量だけ反射率が低下させられる。本実施例におい
ては、前記のように各層の組成および厚さが設定されて
いるため、例えば光20が試料10の表面22に垂直に
(すなわち、図1においてθ=0で)入射させられる場
合は、下記 (5)式を満足する波長λ=807nm,83
6nmにおいて共鳴吸収が生じることになる。なお、各
層の屈折率は図2に示されるように波長依存性があり、
例えばGaAs(半導体薄膜18)においては前記 (4)
式に示される値をとる。
【0018】
【数3】
【0019】図3は上記の試料10を用いて半導体薄膜
18の吸収係数を測定するための装置構成の一例を示す
図である。この測定装置は、光源24およびモノクロメ
ータ26が一軸線上に、試料10が表面22の法線Aが
前記軸線すなわち光20の入射方向と所定の角度θを成
すように配置されると共に、入射光20の表面22によ
る反射光の方向すなわち法線Aと角θを成す方向に光検
出器28が設けられている。上記試料10は図示しない
保持装置によって紙面に垂直な軸回りに回動可能に保持
されており、これによって表面22への光20の入射角
度θが変更可能とされている。また、光源24は例えば
タングステンランプ等から成り、幅広い波長域の光を含
む白色光を発するものである。なお、測定装置を構成す
る光源24、モノクロメータ26、試料10、光検出器
28は全て真空中に配置されており、光源24から出射
された光20は真空中で処理される。
【0020】図4は、上記構成の測定装置によって前記
試料10の半導体薄膜18の吸収係数μを測定する手順
を説明する図である。吸収係数μは波長依存性があるた
め、測定は吸収係数を知りたい波長λ毎に行う必要があ
るが、後述するようにこの測定方法は共鳴吸収によって
反射率が大きく低下させられることを利用するものであ
り、上記波長λは試料10の光共振器の共振波長λ0
なければならない。
【0021】先ず工程1,1′において、共振波長λ0
について、共振時反射率(すなわち共鳴吸収が生じてい
る場合の反射率)R、および非共振時反射率(すなわち
共鳴吸収が生じない場合の反射率)R′をそれぞれ測定
する。次いで工程2,2′において、これらの値R,
R′から共振時吸収率A,非共振時吸収率A′をそれぞ
れ求めると共に、工程3において共鳴吸収比(A−
A′)/A′を算出する。一方、共鳴吸収比と吸収係数
μとの関係を波長毎に別途シミュレーションによって求
めて、例えば図5に示されるような波長別特性図を作成
する。そして工程4において、この波長別特性図上の共
鳴吸収比に対応する横軸の値を読み取ることにより、半
導体薄膜18の吸収係数μが得られるのである。なお、
本実施例においては、上記の共振時反射率を測定する工
程1,および共振時吸収率を求める工程2が共振時吸収
率測定工程に相当し、非共振時反射率を測定する工程
1′,および非共振時吸収率を求める工程2′が非共振
時吸収率測定工程に相当する。
【0022】なお、共振波長λ0 において非共振時反射
率R′を求めるには、共振波長λ0が入射された際に共
振が生じない(例えば半導体多層膜反射層14が設けら
れていない)試料を準備する必要があるが、そのような
試料を準備することが困難な場合には、隣接する共振し
ていない波長λ′での反射率を求めてその値を代用する
ことも可能である。この場合、吸収係数μは波長依存性
があるため、厳密には隣接波長λ′における反射率より
求めた吸収率は、共振波長λ0 における非共振時吸収率
とは異なる値となる。しかし、半導体薄膜18の膜厚が
充分に薄い場合にはその誤差は僅かであり、特に問題と
ならない。すなわち、共鳴吸収比を算出するための非共
振時吸収率は、実質的に共振波長λ0 における非共振時
吸収率と同様な値を用いれば良い。なお、更に精度を必
要とする場合には、上記の方法で各波長において求めた
吸収係数μをもとに同じ測定を再度行えば良い。
【0023】以下、上記の測定手順を詳述する。前述の
図3に示される測定装置において、光源24から白色光
を出射すると、モノクロメータ26によって所定の波長
λの光20のみが試料10に向かわせられて入射角度θ
で入射させられ、反射光が光検出器28によって検出さ
れて反射率が測定される。この反射率は、試料10への
入射光20の強度を予め測定して、その入射光20に対
する強度比として求めたものである。上記測定は、モノ
クロメータ26によって選択される波長λが順次変更さ
れることによって、前記試料10の共振波長λ0 および
半導体多層膜反射層14の反射帯域の波長を含む所定の
波長域における反射率が順次測定され、例えば図6に実
線で示されるような反射率曲線が得られる。なお、上記
の入射角度θは、入射された光20がその波長λに拘ら
ず試料10内で共振させられるように、その試料10内
での光路を変更するために変更されるものであり、例え
ば波長830nmの光20が入射される場合には、θ=
25.5(度)に設定されることにより共振が生じる。
すなわち、共振波長λ0 は入射角度θを変更することで
任意に設定可能であり、試料10の光共振器長に拘ら
ず、種々の波長λについての吸収係数μを測定すること
ができる。
【0024】前述のように、入射させられる光20の波
長λが光共振器の共振波長λ0 である場合には、光共振
器内で光20が繰り返し反射されることにより半導体薄
膜18に吸収されるため、上記の図6に示されるよう
に、その共振波長λ0 に対応する反射率Rが、図におい
て破線で示される共鳴吸収がない場合の反射率R′に比
較して大きく低下させられる。これにより、共振波長λ
0 における吸収率A,A′すなわち反射率100%を示
す線から反射率曲線R,R′までの距離は、共鳴吸収が
ある場合とない場合とで大きな差(A−A′)が生じ、
大きな共鳴吸収比{(A−A′)/A′}が得られる。
この共鳴吸収比は吸収係数μに対応する値であって、吸
収係数μの小さな変化に応じて大きく変化させられる。
【0025】なお、上記の共鳴吸収がない場合の反射率
曲線R′は、共振波長λ0 が入射された際に共振が生じ
ない(例えば、図1の半導体多層膜反射層14が設けら
れていない他は同様に構成された)試料を用いて、同じ
方法で求められる。但し、上記構造の試料の準備が困難
な場合には、図1の試料10を用いて測定することも可
能である。すなわち、図6の実線と破線との比較から明
らかなように、共振波長λ0 における非共振時反射率
と、波長λ0 に隣接する共鳴吸収が生じない波長λ′に
おける反射率とは殆ど差がない。そのため、共鳴吸収に
より反射率の低下した共振波長λの近傍に位置する共鳴
吸収の生じない非共振波長λ′の吸収率を、近似的に共
振波長λ0 の非共振時吸収率A′とみなすことが可能で
ある。
【0026】なお、反射率Rを求めるに際し、半導体薄
膜18の表面22の凹凸或いは僅かな汚れにより反射率
Rが変動する可能性がある。このような反射率Rの変動
は入射角度θが変動したことと同じである。したがっ
て、この変動は以下の方法で補正することが可能であ
る。すなわち、波長λ0 の共振時反射率R=(1−A)
および非共振時反射率R′=(1−A′)の比{(1−
A′)−(1−A)}/(1−A)=(A−A′)/
(1−A)が実験と最もよく一致するような縦軸のスケ
ールをパラメータとして選定し、シミュレーションを行
う。
【0027】そして、以上の測定により求められた共振
波長λ0 における共鳴吸収比に対応する横軸の値を前記
の図5から読み取ることにより、半導体薄膜18のその
共振波長λ0 における吸収係数μが得られる。なお、本
実施例においては、前述のように入射させられる光20
の波長λ=807,836nmのときに共鳴吸収が生じ
るため、図5の波長別特性はそれらの場合について示し
てある。また、本実施例においては、上記図5が請求の
範囲でいう「予め求められた半導体薄膜の共振波長にお
ける吸収係数と共鳴吸収比との関係」に相当する。な
お、図5において、横軸は各波長λにおける吸収係数の
概略値μ0 を1とした場合の換算値(μ/μ0 )であ
り、本実施例においては、上記の請求の範囲でいう「吸
収係数」に代えて換算値(μ/μ0 )が用いられてい
る。但し、この換算値(μ/μ0 )は、図5における横
軸の同一範囲内に複数の共振波長に対応する特性曲線を
示すために用いているものであり、吸収係数μがそのま
ま横軸に用いられても良い。
【0028】上記図5に示される波長別特性は以下のよ
うにして求められたものである。すなわち、半導体多層
膜反射層14の反射率Rは特性マトリックスから求め
る。例えばj番目の層の特性マトリックスはM(j)は
下記 (6)式で与えられることが知られており、一方、全
体でk層から成る試料10全体の特性マトリックスM
は、各層の特性マトリックスM(j)の乗積で表される
ため、これを下記 (7)式のように表すと、 (6), (7)両
式から反射率Rが下記 (8)式で与えられる。試料10で
は、半導体薄膜18が第1番目の層に、支持層16が第
2番目の層に、半導体多層膜反射層14が第3番目以降
の層に相当する。なお、実際の反射率RはS偏光の場合
とP偏光の場合との平均であるが、特に垂直入射(θ=
0)の場合にはΦj =0であるため、gj =2πλ
-1(nj j )、uj =nj (S偏光、P偏光とも)と
なり、偏光による差はなくなる。下記 (8)式において、
各波長の吸収係数の概略値μ0 およびμ0 の値より±数
%ずらした値について反射率を求め、一方、 (8)式で第
1層および第2層のみが存在する場合の反射率も各波長
の吸収係数の概略値μ0 およびμ0 より±数%ずらした
値について反射率を求め、それらの比率より共鳴吸収比
が求められて図5が得られる。なお、各波長における吸
収係数の概略値μ0 は、例えば前述の従来の測定方法に
よって (1)〜 (3)式から算出された値等が用いられる。
【0029】
【数4】
【0030】すなわち、本実施例によれば、試料10は
基板12上に半導体多層膜反射層14、支持層16、半
導体薄膜18が積層形成されているため、半導体多層膜
反射層14と半導体薄膜18の表面22との間に光共振
器が構成されており、試料10に入射させられた光20
は、その波長λが光共振器の共振波長λ0 である場合に
は光共振器内で繰り返し反射されるうちに半導体薄膜1
8によって吸収され、共鳴吸収がない場合の吸収率より
も大きな吸収率が得られる。そのため、共振時反射率R
および非共振時反射率R′をそれぞれ測定することによ
って前述のように大きな共鳴吸収比(A−A′)/Aが
得られ、また、共振時吸収率Aは吸収係数μの小さな変
動によって敏感に変動するものであるため、予めシミュ
レーションによって求められた換算値(μ/μ0 )と共
鳴吸収比との関係の波長別特性を示す図5において、測
定値から得られた共鳴吸収比に対応する換算値を読み取
ることにより、吸収係数μを高い精度で求めることがで
きるのである。
【0031】また、本実施例によれば、吸収係数μを測
定する半導体薄膜18、支持層16、および半導体多層
膜反射層14が一体的に設けられているため、入射させ
られた光20が試料10内で共振させられる際に各層の
界面における散乱が発生せず、精度良く測定が行われて
吸収係数μが一層正確に求められる。
【0032】また、反射鏡として半導体多層膜反射層1
4が用いられているため、支持層16の裏面側における
反射率が向上させられて半導体薄膜18以外の部分によ
る吸収が抑制され、吸収係数μが一層正確に測定され
る。すなわち、半導体多層膜反射層14の各層は厚さが
1/4λ(但し、λは半導体多層膜反射層14を構成す
る各層における波長)とされているため、図7に示すよ
うに各層の界面で反射される光20が全て共振させられ
るのである。更に、半導体多層膜反射層14は幅広い反
射帯域を備えているため、幅広い波長帯域の光20を支
持層16の裏面で反射させることが可能である。そのた
め、光20の表面22への入射角度θを変更することに
よって光路を変化させ、共振波長λ0 を変化させること
が可能である。したがって、一つの試料10によって吸
収係数μの波長依存性を求めることができる。
【0033】また、本実施例によれば、基板12上に順
次結晶成長させられた半導体多層膜反射層14、支持層
16、および半導体薄膜18によって、その半導体薄膜
18の吸収係数を測定できるため、製造方法(MOCV
DやMBE等)、添加不純物の種類、量、含有形態等
を、実際に光学素子等に用いられる半導体材料と同様に
することが可能であり、光学素子等に用いられる真の吸
収係数μが得られる。例えば試料10においては、半導
体薄膜18は支持層16上に格子定数の差(格子不整
合)に起因する格子歪が付与された状態で設けられてい
るが、これはスピン方向が2種類のうちの一方に偏在し
ている電子群から成る偏極電子線を取り出すための偏極
電子線発生素子において、光電層として用いられる半導
体薄膜と同様な状態であり、すなわち、実際に用いられ
るそのままの状態での吸収係数μが得られるのである。
【0034】また、図6に示される反射率曲線において
共鳴吸収が生じる波長の間隔Δλは、半導体薄膜18の
屈折率に対応して変化するものであり、したがって、本
実施例によれば、入射させられる光20の波長λを変化
させながら測定することにより、吸収係数μと同時に屈
折率を測定することが可能である。この場合、屈折率の
波長依存性をλB を中心にした下記 (9)式に示す線形関
係で近似し、n(λB)が既知であるときに、aをパラ
メータとして計算した間隔と最もよく一致するn(λ)
を正しい屈折率として採用すれば良い。
【0035】
【数5】
【0036】なお、半導体薄膜18により吸収された光
20は、バックグラウンドとしての光或いは熱に変換さ
れ、所定量以上吸収されるとその後の吸収率が低下する
こととなるが、上述の吸収係数μの測定は充分低強度の
光で行うことが可能であるため、測定中に吸収率が低下
して測定が不安定となるおそれは殆どない。但し、万全
を期すために、例えば半導体薄膜18を接地しても良
い。
【0037】次に、本発明の他の実施例を説明する。な
お、以下の説明において前述の実施例と共通する部分に
は同一の符号を付して説明を省略する。図8は本実施例
において用いられる試料32の構成を示す図である。試
料32は、測定対象である半導体薄膜18が、例えば1
mm程度の厚さの透明ガラス基板34上に結晶成長させ
られて構成されている。このガラス基板34は、前述の
実施例における支持層16に代えて設けられているもの
であり、その支持層16と同様に照射される光20を殆
ど吸収せず透過させるものである。
【0038】上記試料32は反射鏡を一体的に備えてお
らず、反射率Rを測定するに際しては、図9に示すよう
に試料32の後方に反射鏡36が配置される。この反射
鏡36は、前述の実施例における半導体多層膜反射層1
4が表面に形成されているものでも良いが、その他に一
般的な金属鏡やガラスの裏面に反射膜が設けられた鏡等
でも良い。反射鏡36は、試料32の半導体薄膜18の
表面22との間に光共振器が構成される距離に配置さ
れ、これにより試料32に入射させられた光20は前述
の実施例と同様に半導体薄膜18に共鳴吸収される。し
たがって、本実施例においても前述の実施例と同様な手
順によって、半導体薄膜18の吸収係数μが正確に求め
られるのである。
【0039】しかも、本実施例によれば、半導体薄膜1
8の表面22と反射鏡36との距離すなわち共振器長
は、試料32或いは反射鏡36を互いに接近或いは離隔
する方向に移動させることにより容易に変更することが
可能であり、吸収係数μの波長依存性を一層簡単に測定
することができる。
【0040】なお、上記の測定においては、ガラス基板
34から出射して反射鏡36に入射する光の反射鏡36
の表面での散乱、或いは、反対に反射鏡36により反射
されてガラス基板34に入射する光のガラス基板36の
裏面での散乱は、ガラス基板34の裏面および反射鏡3
6の表面を平滑にすることにより抑制することができ
る。
【0041】図10は、更に他の装置構成例を示す図で
ある。試料10には光20がハーフミラー38を介して
表面22に垂直に入射させられ、試料10から図の左方
に向かう反射光はハーフミラー38により図の下方に位
置する光検出器28に向かわせられる。本実施例におい
ても前述の実施例と同様に反射率Rを測定することによ
って吸収係数μが正確に得られる。しかも、光20が試
料10の表面22に垂直に入射させられるため、表面2
2による反射および散乱が抑制され、吸収係数μを一層
正確に求めることが可能である。
【0042】以上、本発明の一実施例を図面を参照して
詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施され
る。
【0043】例えば、前述の実施例においては、光源2
4に白色光を用いてモノクロメータ26を通して光20
を照射することによって、試料10に入射させられる光
20の波長λを変更していたが、レーザ等の単波長の光
源を用いて直接試料10に光を照射するようにしても良
い。また、照射光20は円偏光や直線偏光などでも良
い。
【0044】また、実施例においては、試料10が回動
させられることによって入射角度θが変更されるが、光
源24およびモノクロメータ26が回動させられること
によって入射角度θが変更されるように構成されても良
い。
【0045】また、試料10において、半導体薄膜18
には支持層16によって格子歪が付与されていたが、例
えば半導体薄膜18の歪のない状態での吸収係数μを測
定したい場合には、支持層16に半導体薄膜18と格子
不整合の小さい材料を用いれば良い。例えば、実施例の
ように半導体薄膜18がGaAsである場合には、格子
定数の差が小さいAlx Ga1-x Asを支持層16に用
いれば、格子歪が殆ど発生せず、純粋な材料特性の測定
が可能となる。
【0046】また、実施例では半導体薄膜18の表面2
2と半導体多層膜反射層14或いは反射鏡36との間で
光共振器が構成されていたが、前述のように半導体薄膜
18の表面22の反射率は30%程度に過ぎない。その
ため、半導体薄膜18の上に更に半導体多層膜反射層を
設け、その反射率を半導体多層膜反射層14の反射率よ
りも小さく、且つ半導体薄膜18の表面22の反射率よ
りも大きく設定することにより、共鳴吸収による吸収率
を増大させることが可能である。この構造によれば共鳴
吸収比の変化が一層大きくなるため、吸収係数μを一層
高い精度で求めることができる。
【0047】また、半導体薄膜18は必ずしも最上層に
設けられている必要はない。例えば、半導体薄膜18の
上に支持層16と同様な支持層を設け、半導体薄膜18
が2つの支持層に挟まれた構造としても良い。このよう
にした場合は、上側に設けられた支持層の表面(すなわ
ち真空との界面)と半導体多層膜反射層14とによって
光共振器が構成される。
【0048】また、半導体薄膜18としては、様々な半
導体が適用され得、その厚さは、実際に光学素子等に用
いられる厚さと同様にするために適宜設定される。例え
ば、GaAsP、AlGaAs、InGaAs、InG
aAsP等の化合物半導体や、SiやGeおよびそれら
の混晶体等の半導体等の薄膜も本発明の測定方法によっ
て吸収係数μを測定し得る。これらの場合において、支
持層16の組成は目的(すなわち、半導体薄膜18を歪
ませるか否か等)に応じて適宜選択され、その厚さは光
共振器が構成されるように適宜設定されるものである。
また、入射させられる光20の波長λは、半導体薄膜1
8の吸収波長帯や共振波長(更に、半導体多層膜反射層
14が用いられる場合は反射帯域)に応じて適宜設定さ
れる。
【0049】また、実施例においては、真空中で測定を
行うことにより吸収係数を測定したが、例えば大気中で
測定が行われても良い。但し、大気中で測定を行う場合
には、光20の減衰や試料10の各層の酸化等の考慮或
いは防止が必要となるため、真空中で測定を行うことが
望ましい。
【0050】その他、一々例示はしないが、本発明はそ
の主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定方法に用いられる試料の構成を示
す図である。
【図2】図1の試料を構成している半導体の屈折率の波
長特性を示す図である。
【図3】図1の試料を用いた場合の本発明の測定方法の
装置構成を示す図である。
【図4】図2の装置によって吸収係数を測定する手順を
説明する図である。
【図5】シミュレーションによって求めた吸収係数と共
鳴吸収比の波長別特性を示す図である。
【図6】図2の装置によって測定された反射率の分布を
示す図である。
【図7】半導体多層膜反射層の機能を説明する図であ
る。
【図8】本発明の他の測定方法に用いられる試料の構成
を示す図である。
【図9】図8の試料を用いた場合の本発明の他の測定方
法の装置構成を示す図である。
【図10】本発明の更に他の測定方法の装置構成を示す
図である。
【符号の説明】
14:半導体多層膜反射層(反射鏡) 18:半導体薄膜

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体薄膜に向かって光を照射し、その
    反射率を測定することにより吸収係数を測定する方法で
    あって、 該半導体薄膜の後方に該半導体薄膜の表面との間に光共
    振器を構成する反射鏡を設け、該半導体薄膜の表面から
    該光共振器の共振波長の光を入射して反射光量を測定す
    ることにより、共振状態での入射光量と反射光量との比
    である共振時吸収率を求める共振時吸収率測定工程と、 前記半導体薄膜の後方に反射鏡を設け、該半導体薄膜の
    表面と該反射鏡との間で光共振を生じさせないように該
    半導体薄膜の表面から光を入射して反射光量を測定する
    ことにより、実質的に前記共振波長における入射光量と
    反射光量との比である非共振時吸収率を求める非共振時
    吸収率測定工程と、 上記共振時吸収率と上記非共振時吸収率との比である共
    鳴吸収比を算出する共鳴吸収比算出工程と、 予め求められた前記半導体薄膜の上記共振波長における
    吸収係数と前記共鳴吸収比との関係から、前記共鳴吸収
    比算出工程により得られた共鳴吸収比に基づいて該半導
    体薄膜の上記共振波長における吸収係数を求める吸収係
    数決定工程とを、含むことを特徴とする半導体薄膜の吸
    収係数測定方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102252825A (zh) * 2011-04-14 2011-11-23 西安电子科技大学 基于光腔衰荡法的光学谐振腔损耗测量系统

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