JPH0731930Y2 - ブローチ工具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、ピンミラーカッタに代えてクランクシャフ
トの円筒部を削るのに用いるブローチ工具に関する。

〔従来の技術〕

ブローチ工具に設ける従来の切屑ポケットは、工具の一
側面から他側面に至らしめてある。

また、２個所存在する切屑ポケットのコーナは、一方は
Ｒ曲面で立上っているが、他方はエッヂとなる形状であ
った。

さらに、加工幅を、スローアウェイチップ（以下TAと記
す）を用いた２以上の分割切刃で分担切削するものであ
って、TAを２側面の交差稜が切刃となるように縦使いす
るものについては、切刃のアプローチ角を小さな角度
（一般に９°以下）に設定している。

〔考案が解決しようとする課題〕

切屑ポケットを一側面から他側面に至らしめると、工具
本体の切削力受け部が長さ方向（工具の送り方向）に寸
断された状態になって工具剛性が著しく低下し、切屑の
流出方向も不安定になる。

また、切屑ポケットの切り上がりがエッヂになっている
と、当該部に切屑が滞留し易くなる。

さらに、切刃傾き角が小さいと切屑断面積が大きくなる
ので、分割切刃を用いる場合の切削抵抗低減効果が薄れ
る。

このような欠点の見られる工具は、使用中のビビリ、切
刃の損傷などを起し易い。また、本体の中央にある切刃
ほど切屑の流れが悪くなり、諸々のトラブルを招き易く
なる。

このほか、コーナチェンジの可能なTAを用いた分割切刃
は、各刃の軌跡が幅方向に所定寸法オーバラップするよ
うにステップ配置しなければならないが、幅方向の切刃
傾き角が小さいと、先行するTAの後部にある未使用刃
が、後続TAの使用中の刃の前方にくることを避けられな
いため、後続刃からの切屑で上記未使用刃を傷付けるこ
とがある。また、この問題対策としてTAの長手方向配列
ピッチを大きくすると、工具長が必要以上に長くなると
云う問題がある。

従来のブローチ工具は、上述した如き欠点をもつため、
支持形態面からも振動し易く、また、加工精度も要求さ
れるクランクシャフトの切削には利用できなかった。し
かし、ピンミラーカッタに頼っているクランクシャフト
円筒部の加工がブローチ工具で可能になれば加工能率は
大巾に向上する。

そこで、この考案は、かゝる要求に応え得るブローチ工
具を実現することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

この考案の工具は、上記の課題を解決するため、切刃を
工具の幅方向に分割して工具長手方向（送り方向）にス
テップ配置するブローチ工具において、切刃に添わせる
切屑ポケットを工具本体の一側面側と他側面側に分けて
設け、その左右のポケットの位置を長手方向にずらすこ
とにより、それぞれの切屑ポケット部に、各ポケットの
反設置側の本体側面と本体の上面とでリブを形成する。

なお、切屑ポケットの全てのコーナを滑らかなＲで切り
上げておくことは切屑の排出性改善に有効である。ま
た、分割切刃の各々をTAで構成する場合に、工具の両側
面部に配置するもの以外の切刃チップのアプローチ角を
所定範囲内で大きくして先行刃チップの後部外端を後続
刃チップの刃先部内端よりも内側に位置させておくこと
は、ビビリと未使用切刃の損傷防止並びに工具長の短縮
に有効である。

〔作用〕 切屑ポケットを千鳥配列にして設けると全てのポケット
部に本体の上面にまで立ち上るリブを形成することがで
き、そのリブが、本体の上部側を長手方向に連続させ
る。従って、本体は剛性が高まり、ビビリ難くなる。ま
た、そのリブが障壁となって切屑の流出方向を一方向に
限定するので、他側面側の切屑ポケットから排出される
切屑とのからみなどが無くなり、排出が円滑化する。

切屑ポケットの全コーナがＲ曲面である場合、切屑は擦
過抵抗が小さく、流出の方向性もより安定するので、そ
の排出性が更に良くなる。

また、TAを用いた分割切刃は、アプローチ角を大きくす
るほど切削断面積が小さくなって切削抵抗が軽減される
ので、ビビリと切刃の損傷が起き難くなる。加えて、傾
き角が大きいほど切屑は工具の外方に向かい排出され易
くなる。

さらに、一部の分割切刃のアプローチ角を大にして先行
刃チップの後部外端を後続刃の刃先内端よりも内側に置
けば、後続刃に削られた切屑の先行刃チップへの接触が
なくなるため、各TAの工具長手方向配列ピッチを小さく
しても先行刃チップの未使用刃を保護でき、これによっ
て、工具長さを短縮することが可能になる。

なお、切刃のアプローチ角をむやみに大きくすると、１
枚の切刃を構成するTAの組合せ数が増加して工具長の短
縮効果等が失われ経済的にも不利になる。この点も考慮
した切刃のアプローチ角は、TAを縦使いする場合におい
ては、10〜15°が適当であった。

〔実施例〕

以下、添付図に基いてこの考案の実施例を説明する。

例示のブローチ工具は、第１図に示すように、中仕上部
１を間にして粗加工部２、仕上部３の３者を一連のベー
ス金具４に直列に止着した構造である。

中仕上部の本体５に設ける切刃６は、第３図乃至第６図
に示すように、５個を１組とするTA6a〜6eを、実質的な
切刃幅がＷ（第４図）になるように、かつ、一側面側の
３個（6a〜6c）と他側面側の２個（6d、6e）が千鳥位置
に群分けされるように、工具の幅方向と長さ方向にステ
ップ配置して構成されている。また、そのステップ配置
は、TA6a、6bに10〜15°の切刃アプローチ角αを、一
方、TA6dには前２者と同一値で傾き方向は逆になる切刃
アプローチ角αを各々付して、隣り合うTA間に設計上必
要な刃部のオーバラップ量Ｓ（第７図参照）を確保し、
その一方で、後続TAの刃部は先行するTAの後方から幅方
向に位置ずれさせてTA6aには6bを、6bには6cを、また、
6dには6eを充分に接近させた状態にしてある。

第８図のようにαを９°以下にしてＳのオーバラップ量
を確保すると、後方のTAの刃部が前方のTAの後部にきて
切屑Ｂが前方のTAの未使用刃を傷付けるのでTAの配列ピ
ッチＰを大きくしなければならないが、α＝10〜15°で
あるとＰの値を充分に小さくして工具長を短くすること
ができる。このほか、５個が１組のTAは、複数組を工具
長手方向に所定間隔で配置し、また、後続の組の切刃の
高さ位置は徐々に高くして各組の切刃による切削量をほ
ゞ均一化してある。

７は、TA6a〜6cの取付部、及びTA6d、6eの取付部に各々
各TAに添うものをひとまとめにした状態にして設けた切
屑ポケットで、いずれも本体５の片方の側面と上面にの
み開放し、もう一方の側面との間にリブ８を形成してい
る。また、そのポケットは外側の切刃に添うものほど深
さを大とし、さらに全てのコーナをＲ曲面にして各刃か
らの切屑が第５図及び第６図に矢印で示すように位置を
変えて流出するようにしてある。

第１図の粗加工部２、仕上部３に設ける粗加工刃９、仕
上刃10も、中仕上刃と同様に複数個を１組とするTAをス
テップ配置して構成される。また、それ等に設ける切屑
ポケット７も、本体の剛性低下を少なくするため、工具
の片方の側面と上面にのみ開放させて他側の側面との間
にリブ８を生じさせてある。

なお、粗加工部２において同一ポケット部に隣接配置し
たTAは内側にあるものゝ切刃アプローチ角を大にしてあ
る。

また、仕上部３のTAのうち最外側にあるTA10aを除くTA
は、いずれも高さ調整機構を具備するロケータ11で支持
して切刃の刃振れ調整及び取代調整を可能ならしめてあ
る。

以上から成る例示の工具は、被加工円筒部を中心にして
クランクシャフトＡを第１図の矢示イの方向に回転させ
つゝ、工具を矢示ロの方向に所定速度で送って粗加工部
２の最先行刃から被削部に切込ませ、第２図に斜線に入
れて示すクランクシャフト円筒部の取代を切削してい
く。そして、粗加工、中仕上、仕上の手順を経てTA10a
が通過したところで加工を終了する。

〔効果〕

以上のように、この考案のブローチ工具は、全ての切屑
ポケット部に本体の上部側を長手方向に連続させるリブ
を設けて本体の剛性を向上させ、さらに、そのリブを障
壁として切屑の流出方向を安定させたものであるから、
使用中のビビリ、切屑のからみが防止され、クランクシ
ャフトを支障なく加工することが可能になる。

また、切屑ポケットの全コーナをＲで立ち上げたもの
は、切屑の排出が円滑化して切屑詰まりがなくなる。

さらに、TAを用いた分割切刃を請求項の３に記載の配置
にしたものは、切削抵抗が低減されるのでより一層ビビ
リ難くなり、かつ、切屑も外側に向かって更に円滑に排
出されるようになる。しかも、TAの未使用刃の保護効
果、工具長の短縮効果を併せて得ることができ、その有
用性が更に高まる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案の一実施例を使用状態にして示す斜
視図、第２図はクランクシャフト円筒部の取代を示す
図、第３図は中仕上部の側面図、第４図はその平面図、
第５図は第４図のＸ−Ｘ線に、第６図は同じくＹ−Ｙ線
に沿った断面図、第７図は第４図の一部を拡大して示す
平面図、第８図はαを９°以下である場合のTAの配置を
示す平面図である。 １……中仕上部、２……粗加工部、３……仕上部、４…
…ベース金具、５……本体、６……切刃、6a〜6e……T
A、７……切屑ポケット、８……リブ、９……粗加工
刃、10……仕上刃。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 山根 克敏 兵庫県伊丹市昆陽北１丁目１番１号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (56)参考文献 特開 昭54−147589（ＪＰ，Ａ) 特表 昭62−501694（ＪＰ，Ａ)

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】工具本体の上面側に、工具の幅方向に分割
   して工具長手方向にステップ配置した切刃を備えるクラ
   ンクシャフトの円筒部切削用ブローチ工具において、切
   刃に添わせる切屑ポケットを工具本体の一側面側と他側
   面側に分けて設け、その一側面側と他側面側の切屑ポケ
   ットの位置を工具長手方向にずらして各切屑ポケット部
   にポケット反設置側の本体側面と本体の上面とでリブを
   形成したことを特徴とするブローチ工具。
2. 【請求項２】切屑ポケットの全てのコーナが滑らかなＲ
   で切り上がっている請求項１記載のブローチ工具。
3. 【請求項３】分割切刃の各々をスローアウェイチップで
   構成し、さらに、工具の両側面部に配置するもの以外の
   切刃チップのアプローチ角を所定範囲内で大きくして先
   行刃チップの後部外端を後続刃チップの刃先部内端より
   も内側に位置させた請求項１又は２に記載のブローチ工
   具。