JPH07306318A - 位相差板および液晶表示装置 - Google Patents

位相差板および液晶表示装置

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JPH07306318A
JPH07306318A JP6099802A JP9980294A JPH07306318A JP H07306318 A JPH07306318 A JP H07306318A JP 6099802 A JP6099802 A JP 6099802A JP 9980294 A JP9980294 A JP 9980294A JP H07306318 A JPH07306318 A JP H07306318A
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liquid crystal
low
molecular
retardation
polymer resin
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JP6099802A
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English (en)
Inventor
Akihiko Uchiyama
昭彦 内山
Toshiaki Yatabe
俊明 谷田部
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】液晶表示素子における視角依存性改善用光学補
償板として必要な特性を有する位相差板を得て、さらに
視角特性に優れた液晶表示装置を得る。 【構成】液晶表示装置における視角特性改善用光学補償
板として用いる位相差板が、正の誘電率異方性および正
の磁化率異方性を有する低分子液晶を高分子樹脂中に分
散させ、かつ膜厚方向に低分子液晶を配向固定した膜よ
り成る。また液晶表示装置としては液晶セルの少なくと
も片側に、さらに低分子液晶と高分子樹脂との相互作用
パラメータ、低分子液晶の相転移温度、低分子液晶の含
有量をも規定した位相差板を介して、偏光板を配置して
構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示装置における
視角特性改善用光学補償板として用いる位相差板および
その位相差板を用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶表示素子は、薄型軽量、低消
費電力という大きな利点を持つため、パーソナルコンピ
ュータやワードプロセッサ、携帯型電子手帳等の表示装
置に積極的に用いられている。液晶表示素子の原理は数
多く提案されているが、現在普及している液晶表示素子
のほとんどは、ねじれネマチック型の液晶を用いてい
る。このような液晶を用いた表示方式は、複屈折モード
(以下、STN方式)と旋光モード(以下、TN方式)
の2つの方式に大別される。
【0003】STN方式は急峻な電気光学特性を持つこ
とにより、単純マトリックスで駆動できるため、比較的
低価格で市場に供給されている。しかしながらかかる方
式では、偏光板を介して直線偏光とした入射光が、液晶
セルによる複屈折で楕円偏光となる。このためそれを偏
光板を介して見た場合には、デイスプレイが着色して見
えるといった課題がある。そこで液晶セル透過後の楕円
偏光を直線偏光に戻して着色を防止すべく、液晶セルと
偏光板の間に延伸フィルム等からなる位相差板を介在さ
せるF−STN方式が提案されている。
【0004】一方TN方式は、応答速度が数十ミリ秒と
速く、高いコントラスト比と良好な階調表示性を示す点
が優れている。このため、薄膜トランジスター等のスイ
ッチング素子を各画素ごとに配備した液晶表示素子とし
て、液晶テレビ等の高精細、高速性が要求される用途で
使用されている。しかし、このようなスイッチング素子
と組み合わせたTN方式の液晶表示素子でも、見る方向
によってはコントラスト比が変化するといった視角依存
性を持つという課題があった。
【0005】この視角依存性を改善するため、2枚の偏
光板の間に、TN方式液晶セルと、光学軸が液晶セルの
表示面に対して略垂直である光学異方素子とを配置し
て、液晶表示素子を構成することが提案されている。あ
るいは2枚の偏光板の間に、TN方式液晶セルと、ポリ
カーボネートを材質とした2枚の一軸性位相差フィルム
を、表示面と平行な面内で互いの光学軸が直交するよう
に積層する方法も提案されている。
【0006】ところで光学軸が液晶セルの表示面に対し
て略垂直である光学異方素子の製造方法としては、液晶
分子が膜厚方向に垂直配向するような垂直配向膜が基板
上に具備された液晶セルの中に、液晶を注入する方法が
考えられる。また、膜平面とは平行には光学軸が存在し
ないが、膜厚方向に光学軸の有するフィルムとしては2
軸延伸された透明フィルムの如きものが考えられる。
【0007】こうした膜厚方向に光学軸を有する位相差
板を用いて視角特性を改善する方式の特徴は、液晶セル
に対して正面から入射した光に液晶セルが与える位相差
と、斜め方向から入射した光に液晶セルが与える位相差
とが、液晶セル中の液晶配向のため異なり、これが視角
特性を決定する原因である点に注目し、位相差板により
特に斜め方向から液晶セルに入射した光の位相差を補償
するところにある。
【0008】以上、述べてきたように、TN、STN方
式等の視角特性を、光学補償板である位相差板により改
善するためには、膜厚方向に光学軸を有するといった膜
厚方向に高度に配向制御された位相差板が必要であった
が、満足するものが得られていないのが現状であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】2枚の偏光板の間に、
TN方式液晶セルと、ポリカーボネートを材質とした2
枚の一軸性位相差フィルムを、表示面と平行な面内で互
いの光学軸が直交するように積層する方法では、液晶セ
ルに用いている液晶分子の複屈折率波長分散と、ポリカ
ーボネート一軸性位相差フィルムの複屈折率波長分散を
マッチングさせることが難しい。このため、光学補償効
果はそれほど大きくない。
【0010】また、液晶セル基板上に垂直配向膜をつ
け、液晶を膜厚方向に配向させたものは、配向膜の安定
性、液晶分子配向均一性等の課題がある。さらに、手間
のかかる配向膜のラビング処理等が製造プロセス上必要
であったり、コストもかかると言った生産性上の課題を
有する。その上、膜平面方向には光学軸が存在しない
が、膜厚方向には光学軸が存在するといったフィルム
を、フィルムの2軸延伸によって得ることは、現状では
プロセス上困難であり、生産性に劣るといった課題を有
する。
【0011】そしてこうした従来の方法では、液晶表示
装置における視角特性改善用光学補償板として必要な特
性を有する位相差板を得ることができなかった。すなわ
ち測定光590nmにおける光透過率が80%以上、か
つ膜平面法線方向より入射した波長590nmの光で測
定したレターデーションが20nm以下であり、さらに
膜平面法線との角度θ1とθ2(0°≦θ1<θ2<9
0°)で入射させた光で測定したレターデーションR
(θ1)とR(θ2)に関して、R(θ1)<R(θ
2)が成立すると言う特性を有する位相差板を得ること
ができなかった。
【0012】本発明はかかる課題を解決して、測定光5
90nmにおける光透過率が80%以上、かつ膜平面法
線方向より入射した波長590nmの光で測定したレタ
ーデーションが20nm以下であり、さらに膜平面法線
との角度θ1とθ2(0°≦θ1<θ2<90°)で入
射させた光で測定したレターデーションR(θ1)とR
(θ2)に関して、R(θ1)<R(θ2)が成立する
と言う特性を有した、液晶表示装置における視角特性改
善用光学補償板として用いる位相差板、およびそして優
れた位相差板を使用して視角特性に優れた液晶表示装置
を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる位相差板
は、液晶表示装置における視角特性改善用光学補償板と
して用いる位相差板において、正の誘電率異方性および
正の磁化率異方性を有する低分子液晶を高分子樹脂中に
分散させ、かつ膜厚方向に低分子液晶を配向固定した膜
より成ることを特徴としている。
【0014】なおレターデーションとは、膜の屈折率異
方性Δn、および膜厚dの積Δn・dで表される。そし
て、液晶表示装置における視角特性改善用光学補償板と
して用いる位相差板の特徴は、膜平面における直交軸屈
折率をnx、ny、膜厚方向の屈折率をnzとした場合
には、nx=ny≠nzで表される。
【0015】これらの屈折率は、アッベ屈折率計等によ
っても求められるが、位相差板を三次元屈折率楕円体で
あると仮定して、レターデーションの入射角依存性から
計算で求めることができる。すなわち、上記の屈折率n
x、ny、nzを用いると、
【0016】
【数1】
【0017】
【数2】
【0018】の関係がある。
【0019】そこで位相差板の平均の屈折率n=(nx
+ny+nz)/3を決定した後、入射角θにおけるレ
ターデーションR(θ)を入射角を変えて測定し、式
(1)と式(2)より屈折率nx、ny、nzを決定す
る。なお、Δn(θ)は入射角θにおける複屈折率、d
は膜厚である。
【0020】ところで、レターデーションの測定方法は
数多く提案されている。本発明においては、正確にレタ
ーデーション値を求められる方法であれば、いかなる原
理に基づくものであっても構わないが、正確に測定でき
るレターデーションの範囲は、測定方法によって異なっ
ているのが現状であるので注意を要する。
【0021】そして前述したとおり、液晶表示装置にお
ける視角特性改善用光学補償板として必要な特性を有す
る位相差板としては、測定光590nmにおける光透過
率が80%以上、かつ膜平面法線方向より入射した波長
590nmの光で測定したレターデーションが20nm
以下であり、さらに膜平面法線との角度θ1とθ2(0
°≦θ1<θ2<90°)で入射させた光で測定したレ
ターデーションR(θ1)とR(θ2)に関して、R
(θ1)<R(θ2)が成立すると言う特性を有するこ
とが必要である。
【0022】なおR(θ)の絶対値は、30nm<R
(40°)<500nmであることが好ましい。R(4
0°)の範囲が30〜500nmと広い範囲であるの
は、光学補償される液晶セルおよび目的によっては位相
差板に要求される光学特性が、異なるためである。R
(40°)が30nm以下では、斜め方向から入射した
光に対して、十分な光学補償効果が得られない。また、
現在一般に使用されている液晶セルでは、液晶セルギャ
ップ、液晶分子の屈折率異方性等から考えて、R(40
°)が500nm以上を必要とする場合は少ない。
【0023】また、入射角0°において測定波長590
nmで測定されたレターデーションが0nmであること
が好ましいが、測定装置の誤差や膜表面の不均一性等も
考慮に入れて、20nm以下であれば許容される。膜平
面は光学等方であることが要求されるが、20nm以下
であれば、膜平面は光学的にほとんど等方であると見な
されるからである。支持基板として用いられる光学等方
な基板に貼り合わせて使用する場合には、貼り合わせた
状態での垂直入射で測定されたレターデーションが20
nm以下であることが必要である。
【0024】またR(θ1)<R(θ2)の関係は、入
射角0°≦θ1<θ2<90°で定義したが、一般的な
液晶表示装置としては0°≦θ1<θ2≦75°で成立
していれば良く、実用上は0°≦θ1<θ2≦60°で
成立していればよい。なお通常R(θ)は波長分散性を
有するので、R(θ1)とR(θ2)の比較は、もちろ
ん同じ波長光で測定したものであることが必要である。
【0025】またR(θ)の絶対値は、液晶表示装置の
光学補償素子として用いる場合には、液晶セルのレター
デーションの視角特性等に応じて決定される。前述した
ようにレターデーションは膜厚と複屈折率の積により決
まるが、本発明における位相差板の視角特性は、θの増
大に伴う複屈折率の増大に起因するところが大きい。
【0026】ところで上記の透過率とレターデーション
は、測定波長590nmで定義したが、波長が400〜
800nmの範囲で上記の関係が成立することが好まし
い。なお透過率については、ヘーズによっても評価が可
能であるが、できるだけヘーズ値が小さいものが好まし
い。
【0027】そして本発明の位相差板としては、そうし
た特性を有するものを得るために、正の誘電率異方性お
よび正の磁化率異方性を有する低分子液晶が、高分子樹
脂中に分散かつ膜厚方向に配向固定された構成より成る
膜であることが必要である。
【0028】ここで、低分子液晶の膜厚方向における垂
直配向手段は、例えば製膜時の電場、磁場印加や、垂直
配向処理された基板等により達成される。高分子樹脂中
に低分子液晶を配向させなかった場合には、低分子液晶
自身の散乱や高分子樹脂と低分子液晶との界面散乱等に
より透過率が低下する。さらに、低分子液晶が膜厚方向
に配向していなければ、目的の光学特性である、膜平面
は光学等方であるが膜厚方向に光学軸を有する位相差板
を得ることはできない。また配向固定された物は、配向
固定されていない物よりも、誘電率が大きくなる。
【0029】低分子液晶としては、正の誘電率異方性お
よび正の磁化率異方性を持つものが必要である。これ
は、電場や磁場等の手段により分子長軸を膜厚方向に配
向させこれにより膜厚方向に光学軸を発生させるためで
ある。ここで、低分子液晶とは一般に高分子液晶と呼ば
れる高分子重合体とは異なるものと定義する。
【0030】ここで正の誘電率異方性とは、液晶分子長
軸方向の誘電率をε‖、長軸に垂直方向の誘電率をε⊥
と表した場合に、Δε=ε‖−ε⊥が正の値になる場合
のことである。一方、正の磁化率異方性とは、液晶分子
長軸方向の磁化率をΧ‖、長軸に垂直方向の磁化率をΧ
⊥と表した場合に、ΔΧ=Χ‖−Χ⊥が正の値になる場
合のことである。
【0031】低分子液晶は、1種類の液晶分子である必
要はなく、数種類の液晶混合物であってもよい。また、
透明性向上のため、低分子液晶は可視光域にほとんど吸
収がないことが望まれる。もちろん、数種類の液晶混合
物の場合は、例えば、誘電率異方性または磁化率異方性
が負であるものを少量混ぜてもよく、この場合は液晶混
合物全体として、誘電率異方性および磁化率異方性が正
であれば良い。
【0032】さらに本発明の効果をより発現させるため
には、特に熱的耐久性を考えた場合に、低分子液晶は材
料単体においては、液晶相から等方相への相転移温度が
70℃以上であることが好ましい。より好ましくは80
℃以上、さらにより好ましくは90℃以上である。ここ
で言う相転移温度とは、低分子液晶単独で示差走査熱量
測定および偏光顕微鏡観察によって決定されたものであ
る。
【0033】本発明における位相差板光学特性の経時安
定性、熱的耐久性は、前述したR(θ)の変化により評
価することができる。R(θ)の時間変化、熱による変
化は膜厚方向に配向している低分子液晶配向の乱れを示
す。高分子樹脂は一定にして相転移温度の異なる低分子
液晶についていくつか検討した結果、経時安定性に関し
ては、液晶相から等方相への相転移温度が高いほど良い
結果が得られ、熱的耐久性に関しては、該相転移温度以
上の環境温度では急激に初期値に比べてR(θ)の低下
することが判った。
【0034】すなわち、最近の液晶表示装置が空調のあ
るオフィス等の屋内での使用のみならず、屋外や自動車
内等で使用される場合が増えている。そしてそうした環
境において本発明の位相差板を使用するのであれば、前
述のとおり低分子液晶は、液晶相から等方相への相転移
温度が70℃以上であることが好ましい。
【0035】なお、低分子液晶を高分子樹脂中に分散さ
せた状態において、低分子液晶の液晶相から等方相への
相転移温度を測定した場合には、高分子樹脂との相互作
用のため低分子液晶を単独で測定した場合とは通常測定
値が異なる。そこでこの場合には、低分子液晶の液晶相
から等方相への相転移温度は60℃以上であることが好
ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは
80℃以上であると言い換えることができる。
【0036】また、本発明に用いられる低分子液晶はネ
マチック液晶またはスメクチック液晶であることが好ま
しい。特に室温付近でネマチック相をとる液晶は、液晶
表示装置に広く用いられておりコストの点でも有利であ
る。もちろん低分子液晶であれば強誘電性液晶であって
も構わない。液晶表示装置の光学補償素子として用いる
場合には、液晶セル中の液晶と同じ液晶を該位相差板に
用いるか、あるいは、液晶複屈折率の波長分散性が液晶
セル中の液晶に近いものが好ましい。すなわち、TN、
STN、TFT方式等の液晶セルに使用されている液晶
分子であるシアノビフェニル系液晶、シアノフェニルシ
クロヘキサン系液晶、シアノフェニルエステル系液晶、
安息香酸フェニルエステル系液晶、シクロヘキサンカル
ボン酸フェニルエステル系液晶、フェニルピリミジン系
液晶、フェニルジオキサン系液晶、ハロゲン系液晶等が
好適に用いられるが、もちろんこの限りではない。ただ
し、TN、STN、TFT方式の液晶セルでは液晶に旋
光性を付与させるためにカイラル剤を混ぜているが、本
発明における位相差板にカイラル剤の必要はない。
【0037】本発明の効果をより発現させるためには、
低分子液晶の液晶相から等方相への相転移温度のみなら
ず、低分子液晶と高分子樹脂との組み合わせを考慮する
ことが好ましい。すなわち、低分子液晶を高分子樹脂中
に分散かつ膜厚方向に配向固定させることをより確実に
行なうためには、低分子液晶と高分子樹脂との相互作用
を考慮することが好ましい。そこで、低分子液晶と高分
子樹脂との相互作用パラメータV90/K1を、次のよ
うに定義する。
【0038】まず、高分子樹脂中に低分子液晶を分散さ
せて、液晶表示素子を作製する。より具体的には、セル
ギャップ10μmの透明電極付きガラスセル中に、高分
子樹脂中に低分子液晶を滴状あるいは三次元網目状に分
散させた膜を挟み込んで、高分子分散型液晶を作製す
る。この高分子分散型液晶は、膜に印加する電圧に応じ
て光が散乱する状態と透過する状態とが変化する。
【0039】そこで作製した液晶表示素子の印加電圧と
透過率との関係を、測定温度25℃、印加周波数50Hz
の条件において測定する。そして印加電圧0Vでの透過
率をT0(%)、電圧0Vから電圧を増大させ透過率が
飽和したときの透過率をT100(%)とする。そして
飽和透過率の90%透過率T90(%)を、T90=
(T100−T0)×0.9+T0で定義する。この透
過率T90(%)を得るのに必要な印加電圧をV90
(V)とする。
【0040】なお、高分子分散型液晶の作製法として
は、いくつかの方法が公知である。ここでは、本発明の
位相差板を作製する際に必要となる電場や磁場、あるい
は配向膜等による膜厚方向への低分子液晶の配向手段を
除いた方法であることが好ましい。そこで以下の三方式
のいずれかにより、高分子分散型液晶を作製するものと
する。
【0041】(製法1)セルギャップ10μmの透明電
極付きガラスセル中に、高分子樹脂形成性モノマーおよ
び/またはオリゴマーと紫外線重合開始剤、低分子液晶
とを含有する混合液を入れる。そしてガラスセルの基板
温度25℃において、波長350nm付近での照射強度
が20mW/cm2 のUV光を3分間照射する。これに
よって、高分子樹脂中に低分子液晶を滴状あるいは三次
元網目状に分散させた高分子分散型液晶を得る。
【0042】ここで紫外線重合開始剤は、上記条件にお
いて重合を促進できるものならいかなるものでも構わな
いが、高分子樹脂に対して3重量%未満とする。これ以
上では高分子樹脂の特性が紫外線重合開始剤の特性に阻
害され、正解な相互作用を評価することが難しくなる。
【0043】(製法2)セルギャップ10μmの透明電
極付きガラスセル中に、高分子樹脂形成性モノマーおよ
び/またはオリゴマーと熱重合開始剤、低分子液晶とを
含有する混合液を入れる。そしてガラスセルの基板温度
120℃以下で5分間放置する。これによって、高分子
樹脂中に低分子液晶を滴状あるいは三次元網目状に分散
させた高分子分散型液晶を得る。
【0044】ここで熱重合開始剤は、上記重合条件下で
重合を促進できるものならいかなるものでも構わない
が、高分子樹脂に対して3重量%未満とする。これ以上
では高分子樹脂の特性が熱重合開始剤の特性に阻害さ
れ、正解な相互作用を評価することが難しくなる。また
基板温度の下限は、選択した熱重合開始剤の半減期等に
より適切に決定される。
【0045】(製法3)高分子樹脂と低分子液晶を溶媒
に溶かし、該溶液を透明電極付きガラスの電極層上にキ
ャストする。そして溶媒を蒸発させて、膜厚を10μm
にする。溶媒蒸発後、もう一方の透明電極付きガラスを
貼り合わせ、高分子樹脂中に低分子液晶が滴状あるいは
三次元網目状に分散した高分子分散型液晶を得る。
【0046】ここで溶媒に関しては、高分子樹脂と低分
子液晶の両方を溶解させることが必要であり、かつ、溶
媒蒸発時間は10分以内とし製膜後は残留溶媒が高分子
分散型液晶に対して3重量%未満であることが必要であ
る。
【0047】ただし、V90は低分子液晶量に大きく影
響されるので、上記3製法のいずれにおいても、低分子
液晶と高分子樹脂との重量比はそれぞれ70対30重量
%で評価するものとする。なお高分子分散型液晶の作製
目的は、低分子液晶と高分子樹脂との相互作用パラメー
タを評価することである。このため製法の選択は、対象
となる位相差板の製造方法に近いものを選択する必要が
ある。
【0048】なお、V90が非常に大きい場合には、セ
ルに大きな電圧をかける必要がある。このため、絶縁破
壊等により正確なV90の測定が困難な場合がある。こ
れを防ぐ目的で、公知の方法により精製を行ない、不純
物等をできる限り排除し比抵抗を上げて測定してもよ
い。
【0049】また、上記の(製法1)〜(製法3)のい
ずれかの方法で作製した物が、電圧非印加状態である程
度の光散乱性を有しているにも関わらず、電圧印加によ
る透過率の変化がほとんど無いか、あるいは変化が非常
に緩やかな場合がある。すなわち透過率の飽和電圧が大
きく、電圧250V以上印加しても透過率が80%未満
であるような物の場合には、V90の評価は実質的に困
難となる。そうした場合とは、高分子樹脂と低分子液晶
との相互作用が非常に大きい場合である。そこでこの場
合には、低分子液晶と高分子樹脂との相互作用パラメー
タを計算する際のV90の値は、無限大であると想定す
る。
【0050】そして本発明の位相差板においては、低分
子液晶、製膜条件、測定条件、低分子液晶含有率、膜厚
を一定とし、高分子樹脂の種類だけを変化させた場合
に、低分子液晶の膜厚方向への配向を示す入射角θでの
レターデーションR(θ)とV90との間には、強い相
関関係がある。
【0051】さらにこのV90は、高分子樹脂、製膜条
件、測定条件、低分子液晶含有率、膜厚を一定として低
分子液晶の種類を変化させた場合、特にV90が大きな
領域においては、用いる低分子液晶の広がり弾性定数K
1(N)と相関のある。すなわち、これらの条件下で低
分子液晶だけを変化させた場合、低分子液晶の広がり弾
性定数K1が大きいほど、V90が大きい傾向にある。
【0052】ここで低分子液晶の広がり弾性定数K1
(N)は、フランクの弾性定数のうち広がりモードの弾
性定数と呼ばれているものである。そしてこのK1は、
Vc=π×√(K1/Δε)の関係から求めることがで
きる。なおここででVcはホモジニアス配向した液晶セ
ルのしきい値電圧、Δεは低分子液晶の誘電率異方性で
ある。
【0053】そこでセルギャップ25μmの低分子液晶
がホモジニアス配向するように表面処理された電極付き
ガラスセルに低分子液晶を注入し、各電圧において液晶
配向が飽和に達するようにゆっくりと電圧を上げ、容量
測定からしきい値電圧Vcを決定する。なおこのときの
測定温度は25℃、測定周波数は1kHzとする。
【0054】また、低分子液晶の誘電率異方性はΔε=
ε‖−ε⊥で表される。そこでまずは、セルギャップ2
5μmの低分子液晶がホモジニアス配向するように表面
処理された電極付きガラスセルに、低分子液晶を注入す
る。そして市販のインピーダンス測定装置を用いて、測
定温度25℃、測定周波数1kHz、電圧0.3Vの条件
で、容量を測定する。さらに空のセルも同条件で容量を
測定する。この測定結果からまずε⊥を決定する。
【0055】続いてε‖は、同セルを用い、同条件で、
電圧を20V程度まで上昇させ、容量と1/Vがほぼ直
線関係になることを利用する。すなわち電圧の逆数(1
/V)と容量との関係のグラフを作成し、測定結果の延
長線上と1/V=0との交点の値によって、ε‖を決定
する。
【0056】これらの結果をもとにして、低分子液晶の
広がり弾性定数K1(N)を決定する。なお、この方法
で決定された低分子液晶のK1の範囲はおおよそ10
-12 (N)〜10-11 (N)のオーダーである。
【0057】こうして得られたV90をK1で割った値
であるV90/K1を、低分子液晶と高分子樹脂との相
互作用パラメータとして用いる。製膜条件、低分子液晶
の含有率、膜厚、測定条件が同じであれば、前述した高
分子樹脂と低分子液晶の組み合わせにおいて、V90/
K1が大きいほど高分子樹脂における低分子液晶の膜厚
方向への配向固定力が大きくなる。そして、低分子液晶
と高分子樹脂との相互作用パラメータV90/K1が5
×1012(V/N)以上である低分子液晶と高分子樹脂
とを組み合わせることが、本発明の効果をより発現させ
るためには好ましい。なおここでの値は、透過率を59
0nmの波長で測定した場合のものである。
【0058】また、本発明の効果をより発現させるため
には、位相差板構成に占める低分子液晶の重量比が少な
くとも30重量%以上であることが好ましい。低分子液
晶量の上限については低分子液晶と高分子樹脂との組み
合わせによるので、特に制限はしないが好ましくは95
重量%以下である。位相差板構成に占める低分子液晶の
重量比が30重量%未満では膜厚方向に低分子液晶を配
向させるのが困難となる場合がある。
【0059】そして低分子液晶と高分子樹脂との量比に
より、レターデーション視角特性を制御することもでき
る。すなわち、本発明における位相差板のレターデーシ
ョン視角特性の制御は、位相差板を構成する材料、膜
厚、製膜条件以外に、低分子液晶と高分子樹脂との量比
によっても可能である。
【0060】例えば表1には、膜厚10μmの位相差板
における、低分子液晶の混合比率と、入射角30°での
レターデーションR(30°)との関係を示す。
【0061】
【表1】
【0062】ところで、本発明の位相差板に用いられる
高分子樹脂は特に限定しないが、高分子樹脂中に配向し
た低分子液晶を保持する必要があることから、本位相差
板の使用温度領域の大部分において引っ張り弾性率が1
kg/mm2 以上である高分子樹脂を用いることが好ま
しい。この引っ張り弾性率は、低分子液晶を含まない高
分子樹脂を、5mm/分の速度で引っ張った際の初期弾
性率として定義する。
【0063】使用目的に応じて経時安定性、熱的耐久性
等を考えなくてはならない場合は、低分子液晶を含有し
ていない高分子樹脂単独で測定したTg(ガラス転移点
温度)が60℃以上であることが好ましく、より好まし
くは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であ
る。
【0064】これらTgによる高分子樹脂の選択は、低
分子液晶の配向をある温度域において安定に保つために
重要であるが、例えば、Tgの低い樹脂であっても高分
子樹脂を形成する際に架橋剤等を混ぜより硬化を進めた
ものや、ブレンド等により改善され、低分子液晶の配向
を所望の温度域で保ち得るのであれば、いかなる樹脂で
も使用することができる。
【0065】本発明の高分子樹脂は、単一モノマーある
いはオリゴマー、またはそれら混合物から重合されたホ
モポリマーである必要は無く、2成分以上のモノマーあ
るいはオリゴマー、またはそれら混合物から重合された
共重合体、あるいは2成分以上の高分子樹脂からなる高
分子ブレンドであっても良い。透明性向上のためこれら
高分子樹脂は可視光領域に吸収がほとんど無いものが好
ましい。
【0066】本発明における位相差板の透明性向上のた
め、低分子液晶の屈折率と高分子樹脂の屈折率は、厳密
に一致させる必要はない。しかしながら、低分子液晶と
高分子樹脂の屈折率差に起因する界面散乱を最小にする
ためにも、近いものであることが好ましい。また、低分
子液晶の複屈折率が大きいと液晶の散乱が大きくなる傾
向があることから、透明性向上という点においては低分
子液晶の複屈折率は小さい方が好ましい。
【0067】また本発明においては、低分子液晶と液晶
性高分子である高分子樹脂とのブレンド膜により本発明
の位相差板を製造してもよい。しかし、生産コストとい
う観点に立つのであれば、汎用の高分子樹脂と低分子液
晶との組合せが好ましい。
【0068】本発明の位相差板の製造方法はここでは特
に限定しないが、高分子樹脂中に低分子液晶を膜厚方向
に配向固定させるために、高分子樹脂中に低分子液晶を
分散させる工程中に電場、磁場、または配向膜等により
低分子液晶に外力を加え配向させるといった方法をとる
ことが好ましい。また、有効に外力を加えるために、配
向固定させる前段階において精製等の手段を加えて不純
物等を取り除いてもよい。高分子樹脂中に低分子液晶を
配向させずに分散させてしまうと、その後に外力を与え
て低分子液晶を配向固定させることは困難な場合が多
い。
【0069】さらに、電極または配向膜等を有してもよ
い基板上あるいは2枚の該基板間に本発明の位相差板を
製造した場合には基板を剥して使用するか、次に述べる
光学等方基板上等に転写してもよい。もちろん、偏光板
や液晶セル等に直接転写してもよい。製造に用いた基板
が光学等方であればそのまま剥さずに使用することもで
きる。
【0070】ところで本発明における位相差板は、その
少なくとも一方に光学等方基板を配置した積層体として
も構成することができる。ここで光学等方基板は、透明
でありかつ590nmの波長で測定したレターデーショ
ンが20nm以下であることが必要であり、好ましくは
10nm以下である。レターデーションが20nmより
大きい場合には光学的に基板の影響が無視できなくな
る。すなわち、樹脂でできたシートやフィルムであって
もよいし、板ガラスのようなものであってもよい。これ
ら、光学等方基板は、ガスバリヤ性等の機能を持った保
護層の役割を兼ねているものでもよい。
【0071】なお位相差板と光学等方基板を積層させる
際に、接着剤や粘着剤等の接着層を必要とする場合に
は、接着層は透明なアクリル系接着剤、粘着剤等が用い
られる。その接着剤等の種類については特に限定はな
い。しかしながら位相差板、光学等方基板の光学特性の
変化防止の点より、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを
要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間
を要しないものが望ましい。屈折率が異なるものを積層
する場合には、中間の屈折率を有する接着剤等が反射損
の抑制などの点より好ましく用いられる。
【0072】こうした光学等方基板はガラス、あるいは
ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエーテ
ルサルホン、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリエス
テル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリレー
ト、ポリメタクリレート、トリアセチルセルロース等の
汎用樹脂が使用されるが、もちろんこれらに限定される
ものではない。
【0073】本発明の位相差板と偏光板を積層すれば、
楕円偏光板を構成することができる。本発明の位相差板
と偏光板との積層物は、偏光板側から入射した光の方向
が、偏光板の法線方向と等しいとき、出射した光は直線
偏光であるが、法線方向以外の入射角を持つ場合には楕
円偏光となる。
【0074】なおここでの偏光板には特に限定はない。
一般には、ポリビニルアルコールの様な親水性高分子か
らなるフィルムをヨウ素の如き二色性染料で処理して延
伸したものや、ポリ塩化ビニルの如き樹脂フィルムを処
理してポリエンを配向させたものなどからなる偏光フィ
ルム、ないしそれを封止処理したものなどが用いられ
る。
【0075】位相差板と偏光板との接着は、適宜に行っ
てもよいが、例えば、アクリル系等の透明な接着剤、な
いし粘着剤などを用いることができる。その接着剤等の
種類については特に限定はない。しかしながら位相差
板、偏光板等の光学特性の変化防止の点より、硬化や乾
燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、長
時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。
屈折率が異なるものを積層する場合には、中間の屈折率
を有する接着剤等が反射損の抑制などの点より好ましく
用いられる。
【0076】また本発明における液晶表示装置は、液晶
表示装置における視角特性改善用光学補償板として用い
る位相差板が、正の誘電率異方性および正の磁化率異方
性を有する低分子液晶を高分子樹脂中に分散させ、かつ
膜厚方向に低分子液晶を配向固定した膜より成ることを
特徴とする。かつその位相差板は、低分子液晶と高分子
樹脂との相互作用パラメータV90/K1を、高分子樹
脂中に低分子液晶を分散させて構成した液晶表示素子に
おける、飽和透過率の90%透過率を得るに必要な印加
電圧であるV90(V)と、低分子液晶の広がり弾性定
数K1(N)とによって定義した場合に、V90/K1
が5×1012(V/N)以上となる低分子液晶と高分子
樹脂との組み合わせを用い、かつ低分子液晶は液晶相か
ら等方相への相転移温度が70℃以上であることを特徴
とする。さらにその位相差板は、低分子液晶が30重量
%以上含まれることを特徴とする。そして液晶セルの少
なくとも片側に、こうした位相差板を介して偏光板を配
置して、液晶表示装置は構成される。
【0077】すなわち本発明における位相差板を、TN
方式等液晶セルの光学補償素子として使用し、適切な光
学設計のもとに液晶セルと偏光板の間に介した場合に
は、視角特性の優れた液晶表示装置を提供することがで
きる。もちろん目的に応じて、位相差板は液晶セルの片
側のみではなく、両側に配置されてもよく、さらに他の
光学特性を有する位相差板と組み合わせて配置してもよ
い。
【0078】なお位相差板の少なくとも一方に、波長5
90nmの光で測定したレターデーションが、20nm
以下である光学等方基板を配置した上で、液晶表示装置
を構成することがより好ましい。
【0079】
【実施例1】高分子樹脂形成性化合物として、アクリロ
イルモルフォリンである興人社製の商品名「ACM
O」、正の誘電率異方性および磁化率異方性を持つ低分
子ネマチック液晶として、メルク社製の商品名「TL2
05」、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール
であるチバガイギー社製の商品名「BDMK」を用い
た。そしてこれらの混合割合は、ACMO:TL205
=60:40(重量比)、さらに光重合開始剤は高分子
樹脂形成性化合物に対して0.5重量%とした。
【0080】こうして得られた混合物を、基板間隔10
μmの透明導電性電極付きガラス基板の間に挟み、温度
25℃に混合物を保ち、電極間に50Hz、30Vの電場
を印加した。電場印加中に水銀ランプを光源とする光を
10mW/cm2 で5分間照射し、光照射終了後、電場
印加を止め位相差板を得た。そしてこうして得られた位
相差板について、透過率とレターデーションの視角特性
を波長590nmで測定した結果を表2に示す。
【0081】ここでレターデーションの測定には、複屈
折率測定装置であるKSシステムズ社製の商品名「KO
BRA−21ADH」と、偏光変調法を測定原理とする
日本分光製の商品名「M−150」を用いた。
【0082】このKSシステムズ社製のKOBRA−2
1ADHの測定原理は、平行ニコルに保った偏光子と検
光子からなる偏検光子の間に試料を挟み、偏検光子を角
度Θで回転させた際の透過光強度I(Θ)変化を表す
【0083】
【数3】
【0084】の関係式を用いることである。ただし式中
のI0は最大透過光強度、αはI0が得られた際の方向
とその直交方向とにおける両者の振幅透過率比、δは位
相差(rad)である。 この式(3)よりδが求ま
る。さらにΔn・d=(δ/2π)λの関係式によっ
て、レターデーションΔn・d(nm)が決定される。
なおλは測定波長である。
【0085】ところで、KOBRA−21ADHは、原
理的にレターデーションが0nm付近の測定値が安定し
ないので、測定原理が異なり0nm付近でも測定精度の
比較的良いM−150でも測定し、入射角が0°のとき
のみ両方の値を示した。すなわち、表2中で、R*(0
°)はM−150で測定した値であり、それ以外のレタ
ーデーションはKOBRA−21ADHで測定した値で
ある。
【0086】また入射角が0°の場合、レターデーショ
ンがほぼ0nmであるので、位相差板平面においては光
学軸が存在していない。そこで、位相差板面とは平行に
XY平面を設けたXYZ直交座標系を、任意の位置を原
点として設定する。ただし最初に測定した入射光と位相
差板法線であるZ軸とでつくられる平面をXZ平面とす
る。そして入射光がXZ平面内にあって、Z軸と入射光
とのなす角度すなわち入射角がθのレターデーションの
値をRXZ(θ)とした。同様にRYZ(θ)は、入射光が
YZ平面内にあって、Z軸と入射光とのなす角度すなわ
ち入射角がθのレターデーションとされる。そして、入
射角0°〜50°におけるレターデーションの視角特性
をKOBRA−21ADHで測定し、その結果を表3に
示す。
【0087】さらに、RXZ(20°)におけるレターデ
ーションの波長分散特性を、M−150で測定し、その
結果を表4に示す。この結果より、R(400nm)/
R(550nm)=1.20であり、同様の測定を厚さ
100μmのポリカーボネートフィルムで行ったとこ
ろ、1.15であった。
【0088】なお、低分子液晶TL205の液晶相から
等方相への相転移温度は、93℃であった。ここで液晶
相転移温度の測定は、Du Pont社製1090B熱
分析システムによる示差走査熱量測定および、ツァイス
社製偏光顕微鏡により液晶温度上昇にともなう液晶相変
化観察により決定した。
【0089】また、光照射中に電場を印加しないこと以
外は上記位相差板製造条件と同様にして高分子分散型液
晶を作製し、前記した方法でV90/K1を測定したと
ころ、1.5×1013(V/N)であった。さらに、低
分子液晶を含まない状態で高分子樹脂化したACMOの
ガラス転移点温度Tgは142℃であり、インストロン
引っ張り試験機で測定した25℃における初期弾性率は
12kg/mm2 であった。
【0090】そして経時安定性を観察するために、作製
後10日目に同様な測定を行ったが、測定値にほとんど
変化は見られなかった。さらに65℃で48時間の耐熱
試験を行ったが、試験後も初期値とほぼ同様な結果を得
た。
【0091】
【比較例1】光硬化中に電場を印加しないこと以外は、
実施例1と同様にして位相差板の製造を試みた。しか
し、得られた膜の光透過率は、590nmの光で19%
と低く、目的の位相差板を得ることが出来なかった。
【0092】
【実施例2】正の誘電率異方性および磁化率異方性を持
つ低分子ネマチック液晶として、メルク社製の商品名
「BL007」を用い、ACMO:BL007=30:
70(重量比)としたほかは実施例1と同じ条件するこ
とにより、位相差板を得た。そして実施例1と同様に、
透過率とレターデーションの視角特性を波長590nm
で測定し、その結果を表2に示す。
【0093】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、1.3×10
13(V/N)であった。また、BL007の相転移温度
は100℃であった。
【0094】そして経時安定性を観察するために、作製
後10日目に同様な測定を行ったが、測定値にほとんど
変化は見られなかった。さらに、65℃で48時間の耐
熱試験を行ったが、試験後も初期値とほぼ同様な結果を
得た。
【0095】
【比較例2】正の誘電率異方性および磁化率異方性を持
つ低分子ネマチック液晶として、メルク社製の商品名
「K15」を用い、ACMO:K15=30:70(重
量比)としたほかは実施例1と同じ条件とすることによ
り、位相差板を得た。そして実施例1と同様に、透過率
とレターデーションの視角特性を波長590nmで測定
し、その結果を表2に示す。
【0096】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、1.2×10
13(V/N)であった。さらに、K15の相転移温度は
40℃であった。
【0097】そして経時安定性を観察するために、作製
後10日後に同様な測定を行ったが、透過率にはほとん
ど変化がないものの、R(θ)は約10%減少した。ま
た、65℃で48時間の耐熱試験では、透過率、R
(θ)ともに減少し耐熱試験後には目的の位相差板特性
を満足できなかった。
【0098】
【実施例3】正の誘電率異方性および磁化率異方性を持
つ低分子ネマチック液晶として、メルク社製の商品名
「BL009」を用い、高分子樹脂形成性化合物として
はトリメチロールプロパントリアクリレートである東亜
合成化学社製の商品名「M309」を用い、M309:
BL009=30:70(重量比)とした以外は実施例
1と同じ条件とすることにより、位相差板を得た。そし
て実施例1と同様に、透過率とレターデーションの視角
特性を波長590nmで測定し、その結果を表2に示
す。
【0099】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、2.0×10
13(V/N)であった。さらに、BL009の相転移温
度は110℃であった。その上、低分子液晶を含まない
M309におけるインストロン引っ張り試験機で測定し
た25℃における初期弾性率は11kg/mm2 であっ
た。
【0100】そして経時安定性を観察するために、作製
後10日目に同様な測定を行ったが、測定値にほとんど
変化は見られなかった。さらに、80℃で48時間の耐
熱試験を行ったが、試験後も初期値とほぼ同様な結果を
得た。
【0101】
【実施例4】高分子樹脂形成性化合物として前述のアク
リロイルモルフォリンであるACMOと、ノニルフェノ
ールEO変性(n=4)アクリレートである東亜合成化
学社製の商品名「M113」とをそれぞれ80:20
(重量比)としたものを用い、(ACMO/M11
3):BL009=30:70(重量比)とした以外は
実施例3と同じ条件とすることにより、位相差板を得
た。そして実施例1と同様に、透過率とレターデーショ
ンの視角特性を波長590nmで測定し、その結果を表
2に示す。
【0102】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、8.2×10
12(V/N)であった。
【0103】
【比較例3】高分子樹脂形成性化合物としてM113を
用い、M113:BL009=30:70(重量比)と
した以外は実施例3と同じ条件とすることにより、位相
差板を得た。そして実施例1と同様に、透過率とレター
デーションの視角特性を波長590nmで測定し、その
結果を表2に示す。しかし透過率が低く、目的の位相差
板を得ることができなかった。
【0104】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、7.3×10
11(V/N)であった。
【0105】
【比較例4】高分子樹脂形成性化合物として前述のAC
MOとM113とをそれぞれ40:60(重量比)とし
たものを用い、(ACMO/M113):BL009=
30:70(重量比)とした以外は実施例3と同じ条件
とすることにより、位相差板を得た。そして実施例1と
同様に、透過率とレターデーションの視角特性を波長5
90nmで測定し、その結果を表2に示す。透過率が低
く、目的の位相差板を得ることができなかった。
【0106】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、4.0×10
12(V/N)であった。
【0107】
【実施例5】高分子樹脂形成性化合物としてビスフェノ
ールA EO変性(n=2)ジアクリレートである東亜
合成化学社製の商品名「M210」を用い、正の誘電率
異方性および磁化率異方性を持つ低分子ネマチック液晶
としてTL205を用い、M210:TL205=7
0:30(重量比)とした以外は実施例1と同じ条件と
することにより、位相差板を得た。そして実施例1と同
様に、透過率とレターデーションの視角特性を波長59
0nmで測定し、その結果を表2に示す。
【0108】また実施例1と同様に高分子分散型液晶を
作製し、V90/K1を測定したところ、1.5×10
13(V/N)であった。さらに、低分子液晶を含まない
M210におけるインストロン引っ張り試験機で測定し
た25℃における初期弾性率は10kg/mm2 であっ
た。
【0109】そして経時安定性を観察するために、作製
後10日目に同様な測定を行ったが、測定値にほとんど
変化は見られなかった。さらに、65℃で48時間の耐
熱試験を行ったが、試験後も初期値とほぼ同様な結果を
得た。
【0110】
【比較例5】M210:TL205=80:20(重量
比)とした以外は実施例4と同じ条件とすることによ
り、位相差板を得た。そして実施例1と同様に、透過率
とレターデーションの視角特性を波長590nmで測定
し、その結果を表2に示す。透過率は高いものの、R
(θ)において目的の位相差板が得られなかった。
【0111】
【実施例6】実施例1で、混合物と接しているガラス基
板の一方をTN型液晶セル、他方を偏光板としたこと以
外は、すべて実施例1と同様にして位相差板積層体を作
製した。そして偏光板1/TN型液晶セル/位相差板/
偏光板2の積層体を作製し、偏光板1から光を入射して
コントラストの視角依存性を測定した。その結果、偏光
板1/TN型液晶セル/偏光板2の構成に比べて、コン
トラストの視野角依存性が改善された。
【0112】
【比較例6】負の誘電率異方性を持つ低分子ネマチック
液晶として、メルク社製の商品名「ZLI2806」を
用い、ACMO:ZLI2806=30:70(重量
比)とした以外は実施例1と同じ条件で位相差板の製造
を試みた。しかし、得られた膜の光透過率は70%と低
くかった。さらに誘電率を測定したところ、製造中に電
場を印加していたにも関わらず、印加しなかった場合と
ほとんど同じ値であった。その他の光学特性的にも、表
2に示したとおり満足な物ではなかった。
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【発明の効果】以上詳述したとおり本発明によって、測
定光590nmにおける光透過率が80%以上、かつ膜
平面法線方向より入射した波長590nmの光で測定し
たレターデーションが20nm以下であり、さらに膜平
面法線との角度θ1とθ2(0°≦θ1<θ2<90
°)で入射させた光で測定したレターデーションR(θ
1)とR(θ2)に関して、R(θ1)<R(θ2)が
成立すると言う特性を有した、液晶表示装置おける視角
依存性改善用光学補償板として用いる位相差板を得るこ
とができる。
【0117】すなわち、本発明によって、可視光域等の
広帯域にわたり膜面より斜め方向から入射した光に対し
ては位相差を与え、正面より入射した光に対しては光学
的に等方であるとして作用する位相差板を得ることがで
きる。
【0118】そして本発明の位相差板を、偏光板と組み
合わせることにより楕円偏光板が、液晶セル等と組み合
わせることによりコントラストの視角特性に優れた液晶
表示装置をえることができるといった効果を有する。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液晶表示装置における視角特性改善用光
    学補償板として用いる位相差板において、正の誘電率異
    方性および正の磁化率異方性を有する低分子液晶を高分
    子樹脂中に分散させ、かつ膜厚方向に低分子液晶を配向
    固定した膜より成ることを特徴とする位相差板。
  2. 【請求項2】 低分子液晶と高分子樹脂との相互作用パ
    ラメータV90/K1を、高分子樹脂中に低分子液晶を
    分散させて構成した液晶表示素子における、飽和透過率
    の90%透過率を得るに必要な印加電圧であるV90
    (V)と、低分子液晶の広がり弾性定数K1(N)とに
    よって定義した場合に、V90/K1が5×1012(V
    /N)以上となる低分子液晶と高分子樹脂との組み合わ
    せを用い、かつ低分子液晶は液晶相から等方相への相転
    移温度が70℃以上であることを特徴とする請求項1記
    載の位相差板。
  3. 【請求項3】 低分子液晶が30重量%以上含まれるこ
    とを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の位相差
    板。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の位相差板の少なくとも一
    方に、波長590nmの光で測定したレターデーション
    が、20nm以下である光学等方基板を配置したことを
    特徴とする位相差板。
  5. 【請求項5】 液晶セルの少なくとも片側に、請求項3
    〜4のいずれかに記載の位相差板を介して偏光板を配置
    して構成したことを特徴とする液晶表示装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002202408A (ja) * 2000-12-28 2002-07-19 Hayashi Telempu Co Ltd 位相差フィルムおよびその製造方法
JP2006154784A (ja) * 2004-10-29 2006-06-15 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 液晶表示装置
US8068199B2 (en) 2004-10-29 2011-11-29 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Liquid crystal display device

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