JPH07269442A - ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法 - Google Patents

ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法

Info

Publication number
JPH07269442A
JPH07269442A JP8414994A JP8414994A JPH07269442A JP H07269442 A JPH07269442 A JP H07269442A JP 8414994 A JP8414994 A JP 8414994A JP 8414994 A JP8414994 A JP 8414994A JP H07269442 A JPH07269442 A JP H07269442A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plunger
cavitation
fuel
barrel
erosion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8414994A
Other languages
English (en)
Inventor
Tanemi Takeya
種見 武谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DAIWA DIESEL SEIKI KK
Original Assignee
DAIWA DIESEL SEIKI KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by DAIWA DIESEL SEIKI KK filed Critical DAIWA DIESEL SEIKI KK
Priority to JP8414994A priority Critical patent/JPH07269442A/ja
Publication of JPH07269442A publication Critical patent/JPH07269442A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
    • F02B3/00Engines characterised by air compression and subsequent fuel addition
    • F02B3/06Engines characterised by air compression and subsequent fuel addition with compression ignition

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 ヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞
化現象(キャビテーション)防止することと、空洞化現
象によって起こるプランジャーの侵食を防止する。 【構成】 バーレル1とこれに嵌合するプランジャー2
とからなるヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプにおいて、バ
ーレルに設けられている燃料流出孔4内のプランジャー
側奥上部よりバーレル上部外壁の外側まで空洞破壊用細
孔11を貫通するように形成したことを特徴とするヂ−
ゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象(キャビ
テーション)防止機構と、この空洞化現象防止機構の作
用によるヂ−ゼル機関のプランジャーの侵食防止方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヂ−ゼル機関のボッシ
ュ式燃料噴射ポンプにおけるバーレルの燃料流出孔内に
生じる空洞化現象(キャビテーション)を防止する機構
と、これによってプランジャーの燃料流出孔と接する表
面の空洞化現象による侵食(キャビテーション・エロー
ジョン)を防止するようにしたことを特徴とするプラン
ジャーの侵食防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、バーレルとこれに嵌合するプ
ランジャーとからなるヂ−ゼル機関のボッシュ式燃料噴
射ポンプにおいては、図1に示すように、プランジャー
の燃料流出孔と接する表面に侵食痕Aができ、使えなく
なる現象がしばしば起こる。このようなプランジャーの
侵食は、バーレルの燃料流出孔に生じる空洞化現象(キ
ャビテーション)が原因とされ、空洞化現象による侵食
(キャビテーション・エロージョン)と称されている。
この空洞化現象による侵食(キャビテーション・エロー
ジョン)を防止する方法については各方面で研究されて
いる。例えば、(イ)プランジャーの凹部切込線9の燃
料流出孔との交差部分に半円形の切込みを形成し、開口
速度を速くして開口初期に生じる燃油の噴射流速を低下
させる方法、(ロ)プランジャーの凹部切込線を浅く形
成して、開口初期に生じる燃油の噴射流の流束を小さく
直線的にして燃料流出孔全体に拡散しないようになし、
燃料流出孔内に空洞化現象(キャビテーション)が起こ
らないようにする方法等である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら従来の方法は、
いずれも損傷して使えなくなるプランジャーを壊れない
プランジャーに改良しようとする発想である。つまり、
前者は、プランジャーの凹部切込線に半円形の切込みを
形成しようとするものであるが、これは、凹部切込線9
に設けた半円形の切込みと燃料流出孔との交差部分の特
定が難しいうえ、その凹部切込線自体が、本来燃料噴射
のために常に高精度が要求されるため、これに切込みを
入れてしまうと本来の性能を低下させてしまうことが多
く、満足するような効果を得るのが極めて困難である。
また後者は、燃油の噴射流の流束を小さくするため噴射
流量が不足することが多く、実用性に欠ける欠点があ
る。このように、従来の燃料流出孔に生じる空洞化現象
(キャビテーション)や、プランジャー表面の空洞化現
象による侵食(キャビテーション・エロージョン)に対
する対策は、いずれも満足できるものではなかった。
【0004】すなわち、従来のこれら対策は、プランジ
ャーの侵食痕をプランジャーの欠陥として認識し、プラ
ンジャーを強化して損傷しないように改良しようとした
り、プランジャーの凹部切込線の形状や凹部の形状が空
洞化現象が起こるような燃油の噴射を起こさせる原因と
考え、プランジャーを改良することにより、燃油の噴射
状況や噴流を制御しようと種々の工夫がなされてきたも
のである。
【0005】本発明者は、空洞化現象による侵食(キャ
ビテーション・エロージョン)によって使用出来なくな
った数多くのプランジャーの侵食痕Aを基にして、空洞
化現象の原因、その時期、噴流の状況、空洞化現象によ
る侵食の状況等を確認し、新たな技術知見を得た。それ
は、空洞化現象の真の原因が、プランジャーの形状によ
るものでもないし、噴流だけによるものではなく、噴流
と燃料流出孔の形状との相互関係によって生じるもので
あるとの知見である。
【0006】この技術知見に基づいて発明者は、プラン
ジャーの侵食防止を、バーレルの燃料流出孔4内璧の形
状を改良することにより、噴流を制御して実現すること
を想起した。このようにプランジャーの侵食防止を組み
合わせ部品であるバーレルの燃料流出孔4の内璧で行う
という発想は、一見因果関係がないように思えるが、両
者に因果関係が成立することを燃料流出孔内でおこる空
洞化現象の原因と噴流を徹底的に研究した結果として解
ったからである。前記発想に基づき鋭意研究を重ねた結
果、バーレルに設けられている燃料流出孔4の内璧に乱
流発生用凹凸部を形成するという構造が簡素にして効果
的な空洞化現象(キャビテーション)防止機構であるこ
とを見出し、出願した(特願平5−305867号)。
これは、燃油の噴射流の一部を、乱流発生用凹凸部に衝
当させることよって乱流を起こさせ一時その流速とその
エネルギーを低下させるとともに乱流飛沫によって燃料
流出孔内に空洞化現象(キャビテーション)がおこるの
を防止し、それに基づくプランジャー表面の空洞化現象
による侵食(キャビテーション・エロージョン)を防止
するもので、いわば事前の予防処理法とでもいえるもの
である。
【0007】発明者は、前記発想に基づき更に研究を重
ねた結果、今度は燃料流出孔内のプランジャー側奥部よ
りバーレル外壁の外側まで空洞破壊用細孔11を貫通す
るように形成しておき、燃料流出孔内に空洞化現象(キ
ャビテーション)が発生し始めると同時に、その空洞化
により燃油や空気やそれらの混合物を空洞破壊用細孔1
1を介して燃料流出孔4内に吸入することにより空洞化
現象(キャビテーション)破壊し、技術的課題を解消し
てしまうという、いわば治療的処理法の開発を目的とし
たものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明は、燃料流出孔
4に生じる空洞化現象(キャビテーション)Bを防止す
るために、次のような手段をバーレル2に対して施すこ
とにしたのである。
【0009】特許を受けようとする第1発明は、バーレ
ルとこれに嵌合するプランジャーとからなるヂ−ゼル機
関の燃料噴射ポンプにおいて、バーレルに設けられてい
る燃料流出孔内のプランジャー側奥部よりバーレル外壁
の外側まで空洞破壊用細孔11を貫通するように形成し
たことを特徴とするヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプにお
ける空洞化現象(キャビテーション)防止機構である。
【0010】上記第1発明は、燃料流出孔4内でおこる
空洞化現象(キャビテーション)Bを防止するために、
バーレルの燃料流出孔4内のプランジャー側奥部よりバ
ーレル外壁の外側まで空洞破壊用細孔11を貫通するよ
うに形成するという手段を思い付いたのである。本発明
の構成手段は簡素であるが、その着想には画期的なもの
がある。それは、空洞化現象を起こす原因となる噴射口
の形状や噴射の仕方や、損傷を起こすプランジャー2に
対する改良ではなく、発想を全く変えてバーレル1の燃
料流出孔4の空洞化を起こす場所に空洞破壊用細孔11
を貫通させ、燃油や空気やそれらの混合物を吸引するこ
とにより空洞化現象Bを破壊してしまう点で画期的な発
想である。このような斬新で画期的な発想は、噴射され
たときの燃油の噴流の状況を正確に解析し、確認すると
いう長年の研究成果に裏打ちされて初めて想起できたも
のである。従って、本発明に係る構成は簡素であるにも
かかわらず、その空洞化現象を治療する効果について
は、極めて効率的、且効果的である。第1発明は、この
基本構成を要部とするもので、空洞化現象(キャビテー
ション)防止機構の基本発明である。
【0011】特許を受けようとする第2発明は、バーレ
ル1とこれに嵌合するプランジャー2とからなるヂ−ゼ
ル機関の燃料噴射ポンプにおいて、バーレル1に設けら
れている燃料流出孔4内のプランジャー側奥部よりバー
レル外壁の外側まで空洞破壊用細孔11を貫通するよう
に形成し、プランジャーの凹部切込線9と燃料流出孔4
とが交差し初めた開口初期に、燃料流出孔内のプランジ
ャー側奥部に発生する急速な空洞化を空洞破壊用細孔1
1を介して燃油や空気やそれらの混合物を吸入すること
により破壊し、燃料流出孔4内に強力な空洞化現象(キ
ャビテーション)がおこるのを防止し、これによってプ
ランジャーの燃料流出孔4と接する表面の空洞化現象に
よる侵食(キャビテーション・エロージョン)を防止す
るようにしたことを特徴とするヂ−ゼル機関のプランジ
ャーの侵食防止方法である。
【0012】当該第2発明は、プランジャー表面の空洞
化現象による侵食(キャビテーション・エロージョン)
を防止するプランジャーの侵食防止方法である。
【0013】
【作用】発明者は、研究の結果、ヂ−ゼル機関のボッシ
ュ式燃料噴射ポンプにおけるバーレルの燃料流出孔4に
空洞化現象(キャビテーション)が起こる原因について
解明し、その解明された知見に基づき、空洞化現象(キ
ャビテーション)の防止機構を開発するとともに、プラ
ンジャー2表面の空洞化現象による侵食(キャビテーシ
ョン・エロージョン)を防止する方法を開発したもので
ある。以下、先ず空洞化現象(キャビテーション)が起
こる原因について説明し、続いて開発された防止機構
が、空洞化現象(キャビテーション)を防止出来る理由
について説明する。
【0014】油は液体だから単独では力の伝達は出来て
も、力を蓄えることは出来ないにもかかわらず、ヂ−ゼ
ル機関の燃料噴射が終わって燃料流出孔を開くと同時に
非常に強力なエネルギーをもった高圧燃油が流出し、燃
料流出孔内に空洞化現象(キャビテーション)Bを起こ
していることも事実である。それはプランジャー表面に
空洞化現象による侵食(キャビテーション・エロージョ
ン)がおこり、それが侵食痕Aを生じさせて、プランジ
ャーが使用できなくなる現象がしばしば起こる事実から
も明らかである。
【0015】先ず、その高圧燃油になぜエネルギーが蓄
積されるのかを観察すると、そのエネルギー源は、内圧
波と気体膨張波にあり、両者が一緒になって蓄積された
ものと考えられる。当該内圧波というのは、高圧で噴出
中の燃油がポンプからノズルまで管等の構成部材を通る
際に、当該管等の内圧により鋼材を膨張させているが、
燃料流出孔が開口の瞬間、鋼材が収縮して燃油に与える
強い圧力と流速のことであり、また気体膨張波というの
は、燃油に含有する空気や石油ガス等の気体が噴出中の
高圧により圧縮されていたが、燃料流出孔の開口と同時
に膨張して油流となって流出しようとして与えられる圧
力と流速のことをいう。これら内圧波と気体膨張波と
は、高圧で燃油を噴射中に油中に蓄積されたもので、燃
料流出孔の開口と同時に大きな流速となって燃油を噴出
させる原因となっているが、その燃油の噴出は、燃料流
出孔4内の空気も外に引き出してしまう作用を伴い、こ
れが燃料流出孔4内の奥部に一時的に真空に近い状態の
領域を造ってしまう。この一時的且つ急速な真空に近い
状態の領域ができることを空洞化現象(キャビテーショ
ン)Bと称されており、この空洞化現象(キャビテーシ
ョン)Bが起こると、急速な真空に近い状態の発生によ
り、残っている微粒子が爆発したような状態となって激
しく運き、周囲の壁面を侵食する作用をおこす。前記プ
ランジャー2の燃料流出孔4と接する表面にしばしば出
来る侵食痕Aは、このような空洞化現象による侵食(キ
ャビテーション・エロージョン)によって起こっている
のである。
【0016】また、前記内圧波は、流出初期の流速が非
常に速いが耐久性はなく短い時間(ほぼ1/10000
秒)で終了するが、気体膨張波のほうは、流速は割合に
遅いが耐久性は内圧波に勝っている(ほぼ5/1000
0秒)性質がある。この両者が絡み合って一時的な空洞
化現象を造っている。しかし、燃料流出孔内に一時的な
真空に近い状態(空洞化現象)を生じさせるには、瞬間
的に非常に速い流速を要するので、どちらかといえば内
圧波が主力であり、その一時的な空洞化現象の時間は極
短く、燃料流出孔が開き始めた直後から始まり、プラン
ジャーが1.5mm〜2.0mm上昇するまでに終了し
ていることも判明した。
【0017】更に、その空洞化現象を造る仕組みと過程
を観察してみると、図5乃至図7に示す通り、バーレル
1に設けた燃料流出孔4は円筒形状で、そのプランジャ
ー2と接する内側の開口部4aは円形状に形成されてお
り、一方当該バーレル1に上下動自在に嵌合されながら
燃料流出孔4と接するプランジャー2の側面には、斜め
の凹部切込線9が穿設されている。従って、円筒形状の
燃料流出孔4と斜めの凹部切込線9とが、プランジャー
2の上下動に伴って交叉する部分で開口10したり閉口
したりするが、その際の組み合わせにより形成される開
口10は、弓形で、その弧を成す部分は円筒形状の開口
部4aが構成し、弦の部分は斜めの凹部切込線9により
構成されている。このため、プランジャー2の上昇に伴
う開口初期10aは図5に示すように点に等しく、次に
図6に示すように線に等しい開口10bとなり、更に開
いて図7に示す通り弓形の開口10cとなる。
【0018】このとき当該開口10より円筒形状の燃料
流出孔4内に噴出する燃油の流れを観察すると、図3に
示す様に、円筒形状の燃料流出孔4の長さ方向に添った
流れ(以下、X流と称す。)と、燃料流出孔4内を拡散
してその内壁に突き当たりそれから出口に向かう流れ
(以下、Y流と称す。)の2方向に大別される。即ち、
開口10の弧側からの噴流は、燃料流出孔4の内壁に添
っての長さ方向へのX流の流れとなり、弦側からの噴流
は、斜めの凹部切込線9から噴出した瞬間に急に空間と
なるため、空間の圧力の低いほうに向かって膨張し曲が
りながら流出し、円筒形状の燃料流出孔4内を拡散して
内壁に突き当たりそれから出口に向かうY流の流れとな
る。この時のY流の流れには、莫大なエネルギーが蓄積
しており、燃料流出孔4内の特にプランジャー側領域の
空気を強力に吸引するので、その領域に一時的に空洞化
現象(真空状態)領域を生じさせることが解った。
【0019】発明者は、バーレルの燃料流出孔4内にお
ける空洞化現象(真空状態)をおこす領域のプランジャ
ー側奥部より外壁に外側まで貫通する空洞破壊用細孔1
1を形成しておき、当該空洞化現象がおきはじめ、燃料
流出孔4内のプランジャー側領域の空気が強力に吸出さ
れると、外部から空洞破壊用細孔11を介して燃油や空
気やそれらの混合物が吸入され、これによって起こりか
けた空洞化現象(真空状態)は破壊されて解消してしま
う。その結果、空洞化現象による侵食(キャビテーショ
ン・エロージョン)を起こさない。
【0020】このように本発明は、燃料流出孔内の空洞
化現象が起こるのを予防するのではなく、空洞化現象
(キャビテーション)がおこりはじめその領域が真空状
態になりはじめると、生じた負圧力が燃油や空気やそれ
らの混合物を吸入してその技術的課題を解消してしまう
という、いわば治療的処理法を開発したものである。
【0021】
【実施例】以下本発明を図示,実施例に基づいて詳細に
説明する。図2は、バ−レルとプランジャーとからなる
ヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプの要部縦断側面図で、そ
のバーレルには本発明に係る空洞化現象防止機構を形成
した実施例を示しており、図4は、図2の要部拡大図
で、バーレルの燃料流出孔4内に設けられている空洞化
現象防止機構と、開口より燃料流出孔4内に燃油を噴出
した際の燃油の流れを説明する説明図である。
【0022】図2に示すように、ヂ−ゼル機関の燃料噴
射ポンプは、円筒状のバーレル1と円柱状のプランジャ
ー2とから構成され、当該プランジャー2は、バーレル
1の筒穴3内に上下動自在に嵌合されている。
【0023】当該円筒状のバーレル1には、その側壁適
所に筒穴3の内側開口部4aから外壁側出口まで貫通す
る円筒状の燃料流出孔4が穿設形成されており、プラン
ジャー2は、図1に示すように単なる円柱状だけでな
く、その頭部には油通凹溝5と称されている円周溝と縦
溝6と三角形状の油噴出凹溝7とから構成される凹部8
が形成されている。尚、三角形状の油噴出凹溝7を形成
している斜めの凹部切込線9は、噴射のタイミングや噴
射量を調整するシャッターのような役割をするため、特
に高精度な加工が要求されている。
【0024】即ち、前記バーレル1にプランジャー2が
嵌合された状態で上下動すると、プランジャー2の凹部
切込線9とバーレル1の燃料流出孔4とが交差すること
によって、凹部8と燃料流出孔4とが開口連通し、燃油
が燃料流出孔4を介して噴出される構成になっている。
このため、円筒形状の燃料流出孔4と斜めの凹部切込線
9とが、プランジャー2の上下動に伴って交叉する内側
開口部4aで開口10したり閉じたりするが、その際の
組み合わせにより形成される開口10は、弓形で、その
弧を成す部分は円筒形状の燃料流出孔4における内側開
口部4aが構成し、弦の部分は斜めの凹部切込線9によ
り構成されている。その開口作動状態を詳しく示すと、
図5,図6,図7に示した通りで、先ずプランジャー2
の上昇に伴う開口初期10aは図5に示すように点に等
しく、次に図6に示すように線に等しい開口10bとな
り、更に開いて図7に示す通り弓形の開口10cとな
り、それに伴って、当該開口10より円筒形状の燃料流
出孔4内に燃油が噴出され、燃料流出孔4の外側出口よ
り噴出されていく。
【0025】本発明者は、この時の燃料流出孔4内に噴
出する燃油の流れを観察するうち、図3に示すように、
噴出する燃油の流れが、燃料流出孔4内のプランジャー
側領域に真空に近い状態の領域を生じさせており、これ
が空洞化現象Bの原因となっていることが解った。そし
て、プランジャー2表面の侵食痕Aは、当該空洞化現象
Bが起こった場合に生じていることを確認した。
【0026】つまり、高圧で噴出中の燃油には、内圧波
と気体膨張波によってエネルギーが蓄えられ、これが燃
料流出孔4の開口10と同時に大きな流速となって燃油
を燃料流出孔4から外方向に噴出する原因となっている
が、燃料流出孔4内に噴出された燃油は、円筒形状の長
さ方向に添った流れ(X流)と、円筒形状内を圧力の低
い空間方向に拡散して流れ反対側の内壁に当たりその後
出口に向かう流れ(Y流)の2方向に分かれること、特
にそのY流のエネルギーが非常に大きく速い流速となっ
て燃料流出孔4の出口から流出していくことをを確認し
た。この場合、X流は周囲の側圧を低くするとともに、
圧力の低い空間方向に拡散して流れるY流は、燃料流出
孔内の残留空気と残留している前工程の滞留燃油に流速
を与えて外部に向かって引き出すように作用し、燃料流
出孔4内のプランジャー近傍領域を一時的に真空に近い
状態にし、この領域に空洞化現象Bをおこさせる。
【0027】このように、発明者は、研究の結果、X流
とY流という噴出時の燃油の流れの方向と流速エネルギ
ーが空洞化現象Bを起こす原因であるが、その主な原因
は燃料流出孔4の形状との関係で残留空気と残留燃油を
外方に引き出すY流にあるとの知見を得た。
【0028】そこで発明者は、この知見に基づき、燃油
の噴出によって一時的に真空に近い状態の空洞化現象
(キャビテーション)がおこる燃料流出孔4内のプラン
ジャー側奥上部領域にバーレル上部外壁の外側まで空洞
破壊用細孔11を貫通するように形成し、空洞化現象防
止機構となした。尚、実施例においては、バーレル1上
端面は吐出弁12の弁座13との接触部より広く外壁が
露呈しているし、このバーレルの外側はほぼ大気圧なの
で、この上端外壁部から燃料流出孔4内のプランジャー
側奥上部領域にまで空洞破壊用細孔11を穿設しておけ
ば、休止中の燃油や空気は燃料流出孔4内の負圧によっ
て自然に吸引出来ることになる。
【0029】次にこのように構成したバーレルとこれに
嵌合するプランジャーとからなるヂ−ゼル機関の燃料噴
射ポンプを作動実験をすると、プランジャーの凹部切込
線と燃料流出孔4とが交差し初めた開口初期に、燃料流
出孔4内のプランジャー側奥部に発生する急速な空洞化
領域には、その負圧により空洞破壊用細孔11を介して
燃油や空気やそれらの混合物が吸入され空洞化を破壊す
るので、燃料流出孔4内に強力な空洞化現象(キャビテ
ーション)が起こらない。その結果、プランジャーの燃
料流出孔4と接する表面の空洞化現象による侵食(キャ
ビテーション・エロージョン)が防止されるようにした
ものである。実験では、従来のバーレルとこれに嵌合す
るプランジャーとからなるヂ−ゼル機関の燃料噴射ポン
プにおいては、プランジャーの空洞化現象による侵食
(キャビテーション・エロージョン)が普通2〜3ケ月
の使用によって起こっていたが、本発明に係る改良バー
レルを用いたヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプの場合に
は、同じプランジャーの使用で平均1年は空洞化現象に
よる侵食(キャビテーション・エロージョン)をおこさ
ないで使用することができることが判明した。
【0030】
【効果】本願第1発明は、バーレルとこれに嵌合するプ
ランジャーとからなるヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプに
おいて、バーレルに設けられている燃料流出孔内のプラ
ンジャー側奥部よりバーレル外壁の外側まで空洞破壊用
細孔を貫通するように形成するという極簡単な構造の採
用により、長年ヂーゼル機関業界が対策に苦慮してきた
燃料噴射ポンプにおける空洞化現象(キャビテーショ
ン)を起こさないようにすることが出来るようにしたも
のである。本願発明は、空洞化現象(キャビテーショ
ン)についての発明者による長年の経験と研究に基づく
科学的解明があってはじめて開発されたもので、その対
応技術の構成が簡素で充分であることと、空洞化現象
(キャビテーション)防止効果が確実である点におい
て、優れた技術であり、実用性の高い技術である。
【0031】また、当該燃料噴射ポンプにおける空洞化
現象(キャビテーション)によっておこる不都合の最大
のものは、高精密さを要求されるプランジャー表面の空
洞化現象による侵食(キャビテーション・エロージョ
ン)である。プランジャー表面にこのような損傷による
侵食痕が急に形成されることによって、プランジャーと
しての機能が大幅に低減したり失われたりして使用出来
なくなることである。従来はこれによって、まだまだ耐
用年数のある数多くのプランジャーが使えなくなり、無
駄使いとそのたびにプランジャーを取り換えなければな
らない煩わしさがヂーゼル機関士の悩みの種であった。
従来の業界は壊れるプランジャーを壊れないプランジャ
ーに改良しようとの発想で改良が試みられてきたが、そ
のような試みはプランジャーの本来機能を低下させるこ
とが多く実用性がなかった。これに対し、本願発明は、
従来と発想を変えて、プランジャーはそのままにして、
バーレルの方を改良することにより侵食の原因である空
洞化現象を破壊し、これによってプランジャーの侵食を
防止しようとするものであり、その侵食防止方法は技術
的思想として画期的なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プランジャーの頭部表面に空洞化現象による
侵食痕が出来て使用できなくなった状態を示すプランジ
ャーの要部側面図である。
【図2】 本発明にかかる空洞化現象防止機構を有する
バーレルとプランジャーとからなる燃料噴射ポンプの要
部縦断側面図である。
【図3】 図2の要部と対応する部分の改良前の拡大図
で、従来のバーレルの燃料流出孔内の構造と、開口より
燃料流出孔内に燃油を噴出した際の燃油の流れにより空
洞化現象が起こる様子を説明する説明図である。
【図4】 図2の要部拡大図で、燃料流出孔内に空洞化
現象防止機構の一実施例を設けた状態と、開口より燃料
流出孔内に燃油を噴出した際の燃油の流れを説明する説
明図である。
【図5】 バーレルの燃料流出孔とプランジャーの凹部
切込線とが、プランジャーの上下動に伴って交叉して形
成される開口の状態を示すもので、開口初期の状態を示
す要部側面説明図である。
【図6】 図5と同じ開口部を示すもので、もう少し開
口し、燃油が噴出するような状態を示す要部側面説明図
である。
【図7】 図5と同じ開口部を示すもので、更に大きく
開口し、燃油の噴出圧が低下した後のような状態を示す
要部側面説明図である。
【符合の説明】
1…バーレル 2…プランジャー 3…筒穴 4…燃料流出孔 9…凹部切込線 10…開口 11…空洞破壊用細孔 12…吐出弁 13…弁座 A…侵食痕 B…空洞化現象
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年8月18日
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バーレルとこれに嵌合するプランジャー
    とからなるヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプにおいて、バ
    ーレルに設けられている燃料流出孔内のプランジャー側
    奥部よりバーレル外壁の外側まで空洞破壊用細孔を貫通
    するように形成したことを特徴とするヂ−ゼル機関の燃
    料噴射ポンプにおける空洞化現象(キャビテーション)
    防止機構。
  2. 【請求項2】 バーレルとこれに嵌合するプランジャー
    とからなるヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプにおいて、バ
    ーレルに設けられている燃料流出孔内のプランジャー側
    奥部よりバーレル外壁の外側まで空洞破壊用細孔を貫通
    するように形成し、プランジャーの凹部切込線と燃料流
    出孔とが交差し初めた開口初期に、燃料流出孔内のプラ
    ンジャー側奥部に発生する急速な空洞化現象開始領域に
    空洞破壊用細孔を介して燃油や空気やそれらの混合物を
    吸入することにより破壊し、燃料流出孔内に強力な空洞
    化現象(キャビテーション)がおこるのを防止し、これ
    によってプランジャーの燃料流出孔と接する表面の空洞
    化現象による侵食(キャビテーション・エロージョン)
    を防止するようにしたことを特徴とするヂ−ゼル機関の
    プランジャーの侵食防止方法。
JP8414994A 1994-03-29 1994-03-29 ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法 Pending JPH07269442A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8414994A JPH07269442A (ja) 1994-03-29 1994-03-29 ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8414994A JPH07269442A (ja) 1994-03-29 1994-03-29 ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07269442A true JPH07269442A (ja) 1995-10-17

Family

ID=13822455

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8414994A Pending JPH07269442A (ja) 1994-03-29 1994-03-29 ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07269442A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006071009A1 (en) * 2004-12-27 2006-07-06 Hyundai Heavy Industries Co., Ltd. Fuel injection pump having cavitation damage-prevention structure
WO2010050703A2 (ko) 2008-10-27 2010-05-06 현대중공업 주식회사 디젤엔진 연료분사펌프의 캐비테이션 손상방지장치
KR101682055B1 (ko) * 2016-03-29 2016-12-05 한빛정공(주) 연료분사펌프의 오일 탱크 피스톤

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006071009A1 (en) * 2004-12-27 2006-07-06 Hyundai Heavy Industries Co., Ltd. Fuel injection pump having cavitation damage-prevention structure
DE112005003302B4 (de) 2004-12-27 2024-01-04 Hyundai Heavy Industries Co. Ltd. Kraftstoffeinspritzpumpe mit einem Kavitationsschäden verhindernden Aufbau
WO2010050703A2 (ko) 2008-10-27 2010-05-06 현대중공업 주식회사 디젤엔진 연료분사펌프의 캐비테이션 손상방지장치
US9200605B2 (en) 2008-10-27 2015-12-01 Hyundai Heavy Industries Co., Ltd. Apparatus for preventing cavitation damage to a diesel engine fuel injection pump
KR101682055B1 (ko) * 2016-03-29 2016-12-05 한빛정공(주) 연료분사펌프의 오일 탱크 피스톤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2526635C2 (ru) Способ изготовления дросселирующих отверстий с низко расположенной точкой возникновения кавитации
JP2009243323A (ja) 燃料噴射弁及びオリフィスの加工方法
EP1681458A1 (en) Fuel injector reducing stress concentration
JP2002054533A (ja) 燃料噴射弁及び該燃料噴射弁に用いるノズルプレートの製造方法
JP2000073919A (ja) 燃料噴射ノズルの製造法及び燃料噴射ノズル
US6945478B2 (en) Fuel injector having an orifice plate with offset coining angled orifices
JPH07269442A (ja) ヂーゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャーの侵食防止方法
JP5150416B2 (ja) オリフィスの加工方法及びプレス加工方法
JP2006528302A (ja) 開口円板を含む燃料噴射器と開口円板の形成方法
US7202441B2 (en) Method for producing a hole in a body, specifically an injection hole in a fuel injector
JP5237054B2 (ja) 蓄圧式燃料噴射装置の制御弁構造
US20030172708A1 (en) Methods of forming angled orifices in an orifice plate
JP4555955B2 (ja) 燃料噴射弁およびそれを搭載した内燃機関
JPH07167013A (ja) ヂ−ゼル機関の燃料噴射ポンプにおける空洞化現象防止機構とプランジャ−の侵食防止方法
JP2008038715A (ja) 燃料噴射ノズル
US6786433B2 (en) Fuel injection valve
JP2974710B2 (ja) 燃料噴射ポンプ
JP4447367B2 (ja) 噴射弁の後噴射の減少装置
JP2017015028A (ja) 燃料噴射弁
US20070119991A1 (en) Valve for a fuel injection pump
JP2001082296A (ja) 燃料噴射弁のための制御弁
JPH0754618Y2 (ja) 内燃機関のための燃料噴射ポンプ
JP2003049751A (ja) 燃料噴射弁
JPH0797969A (ja) 燃料噴射ノズル用プレートの穴あけ方法
CN112236590A (zh) 用于喷射燃料的喷嘴