JPH072693A - 肝炎処置用医薬組成物 - Google Patents

肝炎処置用医薬組成物

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JPH072693A
JPH072693A JP4074377A JP7437792A JPH072693A JP H072693 A JPH072693 A JP H072693A JP 4074377 A JP4074377 A JP 4074377A JP 7437792 A JP7437792 A JP 7437792A JP H072693 A JPH072693 A JP H072693A
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thymosin
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hepatitis
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 チモシンを含有する、哺乳動物、特にヒトの
ウイルス誘発B型肝炎処置用の医薬組成物を提供する。 【構成】 この組成物はチモシン アルファ1 を含有す
る子牛チモシン フラクション5あるいは子牛または合
成のチモシン アルファ1 を包含し、慢性B型肝炎の処
置に特に有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウイルス誘発肝炎の後
退が生じる期間にわたって、チモシンを哺乳動物に投与
することにより、この病気を患っている哺乳動物を処置
するための医薬組成物に関するものである。特に、本発
明は慢性ウイルスB型肝炎処置用の医薬組成物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】慢性肝臓病として一般的な慢性B型肝炎
は肝硬変、肝不全および肝細胞癌に進行する危険が高い
(Seeff L.B.等、Sem Liver Di
e,6:11〜22(1986))。B型肝炎ウイルス
(HBV)感染肝細胞のクリアリングにおける宿主細胞
の免疫機構の減退作用性が慢性HBV感染の進行の説明
に定義されている(Thomas H.C.等、Sem
Liver Dis,6:34−41(198
6))。この病気の処置においては抗ウイルス剤が使用
されており、この中で、アルファ−インタフェロン(I
FN−α)が現在まで、最も有効なものとして開発され
た(Hoofnagle J.H.等、Gastroe
nterology,95:1318−1325(19
88);およびPerillo R.P.等、Ann
Int Med,109:95−100(198
8))。不幸なことに、IFN−αは治療の中止が求め
られるような重大な副作用を生じさせることができる
(Hoofnagle J.H.等、Gastroen
terology,95:1318−1325(198
8);Perillo R.P.等、Ann Int
Med,109:95−100(1988);およびR
enault P.F.等、Sem Liver Di
s,9:273−277(1989))。
【0003】慢性HBVの処置に臨床実験的に使用され
ている免疫調節剤、たとえばインタロイキン2(IL
2)およびレバミソール(levamisole)は結
論がでていないか、または無効の結果に終っている(K
akuma S.等、Hepatology,8:48
7−492(1988);Fattovick G.
等、Gastroenterology,91:692
−696(1986))。
【0004】胸腺抽出物または胸腺由来ペプチドはチモ
シンと化学的に異なっており、これらは慢性B型肝炎の
処置に使用されていた。研究の一つにおいて(Rome
oF.等、Arzheim−Forsh/Drug R
es.,37:450−456(1987))、牛胸腺
の抽出物であるチモスチムリンが臨床的、生化学的およ
び組織学的な改善をもたらした。しかしながら、HBV
マーカーに対する処置効果は報告されていない。同様の
応答がチモペプチドを使用する別の研究(Zhang
D.F.等、Chimese Med.J.,99:7
91−798(1986))および胸腺因子Xを使用す
る別の研究(Dabrowski M.P.等、Cli
n.Immunol.Immunopathol.,1
6:297−307(1980))で報告されている。
【0005】TF5は少なくとも40のペプチド成分を
含有し、その中の20が均質に、またはほぼ均質に精製
されている牛胸腺の部分的精製抽出物である(Low
T.L.K.等、Thymus,6:27−42(19
84))。T−アルファ1 を含むこれらのペプチドのう
ちの数種は、配列決定され、また化学的に合成されてい
る(Wetzel R.等、Biochem,19:6
096−6104(1980);およびLow T.
L.K.等、J.Biol.Chem.,254:98
1−986(1979))。
【0006】前述の研究において、チモシン分画5は、
インビトロにおいて、CAHBの患者の自発的細胞媒介
細胞毒性を減少させ(Mutchnick M.G.
等、Clin.Immunol.Immunopath
ol.,16:423−437(1980))、そして
またこれらの患者からのPBM中のCon A誘発サプ
レッサー細胞機能を高める(Mutchnick M.
G.等、Dig.DisSci.,28:328−33
4(1983))ことが証明された。
【0007】チモシン分画5(TF5)およびチモシン
アルファ1 (T−α1 )は、リンパ球における成熟現
象の引き金になり、T細胞機能を増大させ、かつまた免
疫不全の再構成を促進することが証明されている(Lo
w T.L.K.等、Thymus,6:27−42
(1984))。従って、これらの組成物は免疫調整剤
である。
【0008】TF5およびT−α1 はT細胞の強力な誘
導物質であり、免疫調整性T細胞機能に影響をおよぼす
ことができる(Low T.L.K.,等、Thymu
s6:27−42(1984);Low,T.L.
K.,J.Biol.Chem.254:981−98
6(1979);Marshall,G.D.,等、
J.Immunol,126:741−744(198
1);およびMutchnick,M.G.等、Cli
n.Immunol.Immunopathol.2
3:626−633(1982))。TF5およびT−
α1 はT4細胞機能を高め、ヒトリンパ球によるIFN
−α、IFN−γおよびIL2産生を促進し、かつまた
リンパ球IL2 レセプター発現を増大させることが示
されている(Low,T.L.K.等、Thymus,
6:27−42(1984);Sztein M.
B.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,83:6107−6111(1986);Serr
ate S.A.等、J.Immunol.,139:
2338−2343(1987);Baxevanis
C.N.等、Immunopharm.,13:13
3−141(1987);Svedersky L.
P.等、Eur.J.Immunol.12:244−
247(1982))。
【0009】免疫不全または癌に被患している患者にお
ける主要または補助治療として、臨床実験で使用された
TF5およびT−α1 は、これらの薬物が免疫応答を高
め、かつまたリンパ球機能を特異的に増大させることを
示した(Aztein M.B.等、springer
Semin Immunopathol.,9:1−
18(1986))。さらにまた、これらの胸腺ペプチ
ド類は比較的正常な免疫パラメーターを非特異的に高め
るというよりはむしろ、免疫不全を再構成するものと見
做される。これらの組成物がHBVの処置に使用された
ことはなかった。
【0010】
【発明の開示】従って、本発明の目的は、哺乳動物、特
にヒトにおけるB型肝炎の後退を生じさせる組成物およ
び方法を提供することにある。さらに、本発明の目的
は、慢性B型肝炎に対して特に効果的な組成物および方
法を提供することにある。これらの目的およびその他の
目的は以下の記載を参考にすることによって、ますます
明白になるであろう。
【0011】Fig 1は、ALTウイルスの増大を示
した後に、先ず血清HBeAgを、次いでHBV DN
Aをクリアランスした1人の患者におけるTF5(90
mg/M2 )に対する応答を示すグラフである。そのす
ぐ後に抗HBeが発現するが、血清HBsAgは存続す
る。初期および6ケ月後の肝臓生検試料中に存在するH
BV DNA分子型およびHBcAgは12ケ月後の生
検試料中には見い出されなかった。
【0012】Fig 2は、患者群における末梢血液中
の(A)リンパ球、(B)CD3および(C)CD4の
絶対値に係る一連の分析結果を示す。TF5/T−α1
群□とプラセボ群●との比較、および健康な協力者のパ
ネル(n=67)に対する比較を、平行線で示されてい
る95%信頼限界をもって、行なった。*p<0.0
5、**p<0.01の場合の各数値はStuden
t’s ペアー tテストによって、初期値に対して比
較した。▲は処置の開始時を示し、そして▼は処置の完
了時を示す。
【0013】Fig 3は、TF5/T−α1 群□およ
びプラセボ群●から得られたPBMによるIFN−γ産
生の一連の分析値を示している。平行線によって区分さ
れているように、95%の信頼限界をもって、患者群間
および健康な協力者(n=67)に対する比較がなされ
ている。*p<0.05の場合の数値はStuden
t’s ペアー tテストにより初期値と比較した。▲
は処置の開始時を示し、そして▼は処置の完了時を示
す。
【0014】Fig 4は、プラセボを与えられた非応
答者とチモシンで処置された応答者とにおける各肝臓生
検試料のHBV DNA交雑研究の結果を示している。
プラセボで処置された患者からのレーンA、BおよびC
においては、予想形態のHBV DNA複製型中間体の
全部が多量に存在し、12ケ月の研究期間にわたり変化
しないことが、サザン法によって見い出される(A:初
期、B:6ケ月目;C:12ケ月目)。類似の複製型が
T−α1 を与えられた患者にも初期に存在したが(レー
ンD)、6ケ月目(レーンE)および12ケ月目(レー
ンF)には、超ラセン形でゆるやかな円形のフリー ゲ
ノムだけが存在していた。
【0015】一般的説明 本発明は、哺乳動物におけるウイルス誘発肝炎処置用の
組成物および方法に関し、この組成物は、チモシン ア
ルファ1 およびチモシン アルファ1 を有効量で含有す
る子牛抽出物からなる群から選ばれるチモシンの有効量
を哺乳動物に投与し、これによって哺乳動物における肝
炎の後退を生じさせるものである。本発明の組成物は、
ヒトにおける慢性B型肝炎に対し、特に有効である。
【0016】好適なチモシンはチモシン アルファ1
よびチモシン アルファ1 を有効量で含有するチモシン
類の混合物であるチモシン分画5である。チモシン分画
5は牛胸腺から誘導され、そしてチモシン アルファ1
は前記で引用した文献に示されているように、化学的に
合成することができる。チモシンは好ましくは、重炭酸
ナトリウムなどの稀釈剤中に入れて、皮下投与する。こ
のような稀釈剤は当業者にとって周知である。
【0017】ヒトにおける投与量は、ヒトにおけるチモ
シン アルファ1 に係り、身体面積の一平方メートル当
りで、好ましくは約600〜1200マイクログラム、
最も好ましくは900マイクログラムである。チモシン
分画5は、ヒトにおいて、身体面積の一平方メーター当
りで、好ましくは約60〜120mg、最も好ましくは
90mgの量で使用する。投与量は、ウイルス後退の点
で、最適の結果が得られるように選択する。動物におけ
る投与量は匹敵する量である。
【0018】詳細な説明 慢性活性B型肝炎の患者12人における、無作為の二重
盲験、プラスボ−対照評価試験において、チモシン分画
5およびチモシン アルファ1 安全性および効果を評価
した。患者はいづれも、処置前の少なくとも6ケ月間、
活性肝臓病の組織学的および生化学的徴候を有してお
り、かつまた血清B型肝炎ウイルス デオキシリボ核酸
およびB型肝炎表面抗原に係り陽性であった。
【0019】7人の患者には、チモシン分画5またはチ
モシン−α1 を、そして5人の患者には、プラスボを、
週2回の投与で6ケ月間与えた。この研究の終了時(1
年後)に、チモシン処置患者における血清アミノトラン
スフェラーゼ レベルは有意に改善されていたが、プラ
セボ群では改善されていなかった。
【0020】チモシン処置患者のうちの6人(86%)
およびプラセボを与えられた患者のうちの1人(20
%)では、血清からB型肝炎ウイルス デオキシリボ核
酸がクリアランスされていた(p<0.04、Fish
erの完全試験)。処置後に、複製型のB型肝炎ウイル
ス デオキシリボ核酸が5人のプラセボ処置患者のうち
の4人からの肝試料に存在していたが、チモシン処置患
者7人の場合には、1人だけに存在していた(p<0.
04、Fisherの完全試験)。チモシン治療に対す
る応答は末梢血液リンパ球、CD3およびCD4値で、
およびまた初期値にまさるインタフェロン ガンマ−の
インビトロ産生で、有意の改善を示した。チモシンを投
与された患者において、重大な副作用は見い出されなか
った。チモシンに対して応答する患者における、臨床
的、生化学的および血清学的改善は、引続いて26±3
ケ月の間、維持された。これらの結果は、チモシンが病
気の軽快を促進し、かつまたB型肝炎ウイルスによる慢
性活性肝炎の患者におけるB型肝炎ウイルスの複製を止
めることを示している。
【0021】
【実施例】
方法 患者:下記の条件の下に、慢性B型肝炎を患う、18才
〜70才の患者を対象にした:少なくとも6ケ月間、B
型肝炎表面抗原が存在し、かつまた血清アラニン アミ
ノトランスフェラーゼ(ALT)レベルが高い;B型肝
炎ウイルスDNA(HBV DNA)に係る血清試験が
陽性;無作為選別前の3ケ月以内のCAHの組織学的証
拠(Knodoll R.G.等、Hepatolog
y,1:431−435(1981));および代償性
肝臓疾患の証拠(プロトロンビンの延長時間が対照値よ
りも4秒より小さい、血清アルブミン≧3gm/dlお
よび血清総ビルビリン≧4mg/dl)。
【0022】追加の条件には、ヘモグロビン≧10g
m、血小板数≧70,000/mm3、白血球数(WB
C)≧3000/mm3 、多形核数(PMN)≧150
0/mm3 および血清クレアチン≦1.4mg/dlが
含まれていた。肝性脳症、食道出血または胃静脈瘤症、
事前の抗ウイルス処置または免疫抑制処置を有する患者
は除外した。不適格と見做した追加の条件には、静脈薬
物乱用の経歴、D型肝炎抗体の存在、悪性、妊娠、同性
愛者およびヒト免疫不全ウイルスに係る試験で陽性、が
含まれた。女性には、研究期間中(1年)、避妊の実施
および受胎調節医療の使用の回避の同意を得た。
【0023】研究計画 この3種の研究において、患者には、コンピューター作
成プログラムによって、無作為に指定して、週2回で6
ケ月間、TF5(90mg/身体表面積m2 )、T−α
1 (900μg/身体表面積m2 )またはプラセボを皮
下(SC)注射によって投与した。TF5、合成T−α
1 およびプラセボ(1.4%重炭酸ナトリウム)はAl
pha One Biomedicals,Inc.,
Foster City,CA.から入手した。患者に
はSC注射による自己投与を指示し、承諾は看護婦によ
って毎週、調べた。患者は2週間の間隔で6ケ月間診察
し、引続く6ケ月間は1ケ月毎に診察した。診察時毎
に、臨床的および実験室的評価を行ない、この評価は、
HBsAg,HBsAgに対する抗体(抗HBs)、B
型肝炎の抗原および抗体(HBeAgおよび抗HB
e)、HBV DNA、ALT、アスパルテート アミ
ノトランスフェラーゼ(AST)、総ビリルビ、アルカ
リ ホスファターゼ、血液尿素窒素(BUN)、クレア
チニン、コレステロール、尿酸および総タンパク質を包
含していた。1ケ月毎に、血清アルブミン、ヘモグロビ
ン、WBC、PMN、リンパ球および血小板測定値を得
た。プロトメンビン時間は、1ケ月毎に、慣用の尿分析
によって行なった。免疫学的検査は処置の前およびその
後の研究期間(1年)の間は1ケ月毎に行なった。
【0024】末梢血液リンパ球の分析には、従来開示さ
れている方法(MutchnickM.G.等、Cli
n.Immunol.Immunophathol.,
47:84−92(1988))の変法を用いる関節免
疫蛍光染色による、CD3、CD4、CD8、CD11
およびNKサブセットの絶対数、コンカナバリンA(C
on A)およびフィトヘマグルチニン−P(PHA−
P)誘発リンパ球変形および固体総放射免疫検定法を用
いるIFN−γの末梢血液単核細胞(PBM)産生[I
MRX Interferon−γ RIA,Cent
ocor Inc.,Malvern,PA;(Mut
chnick M.G.等、Clin.Immuno
l.Immunopathol.,47:84−92
(1988))]が含まれた。
【0025】成人した健康な協力者から採取した血液試
料を上記の各検査に含ませ、統計学的分析に用いる正常
値のパネルを作成した。経皮肝臓生検は、大部分の患者
において、6ケ月目に反復し、全患者において、1年後
に反復した。処置に対する応答に関して、1年後の時点
で、血清HBV DNAおよびHBeAg(初期に存在
している場合)の消失およびALTおよびASTレベル
の正常化または正常に近い状態が見られた場合に、陽性
であると決定した。上記計画はHuman Inves
tigation Committeeof Wayn
e State University School
ofMedicineによって承認されたものであ
り、全患者から得た、書面による同意により充分にイン
ホームされたものである。
【0026】ウイルス マーカー類 血清HBsAgおよび抗−HBsは放射免疫検定法(R
IA)によって、およびまたHBeAgおよび抗HBe
抗体は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって
測定した。デルタ ウイルスに対する抗体はRIAによ
って、そしてまたC型肝炎ウイルスに対する抗体はEL
ISAによって測定した。
【0027】肝臓生検試料の組織学的評価 ヘマトキシリン−エロシンおよびトリクロムで染色した
全部の肝臓生検試料を、無症状慢性活性肝炎に係り案出
されたシステム(Knodell R.G.等、Hep
atology,1:431−435(1981))に
したがい、1人の観察者による判断(code)の下に
評価した。このシステムは、周辺壊死およびブリッジン
グ壊死の4種の特徴、小葉内損傷(壊死を含む)、門炎
症、および線維形成(硬変を含む)をそれぞれ評価する
ものである。各特徴はスコアで表わした。これらの全ス
コアの総合から、組織学的活性指数を得た。試料はまた
パーオキシダーゼ抗パーオキシダーゼ技法(PAP)を
使用して、B型肝炎核(core)抗原(HBcAg)
に関して染色した。可能な場合には、肝臓生検組織の一
部を、液状窒素中で素早く凍結させ、HBV DNA分
子型に係り雑種形成によって試験した。
【0028】HBV雑種形成試験 血清を、以前に報告されたスポット雑種形成法(Lie
berman H.M.,Hepatology,3:
285−291(1983))によって、HBV DN
A配列の存在に係り分析した。ただし、プロティナーゼ
K消化工程は行なわない。これは、この検定の感度を1
0のアクターで高め、また陰性の対照血清によるバック
グラウンド放射能を僅かに高める。この検定法は、毎5
μl中で、単純スポットとして適用された0.05〜
0.10pgほどの少ない量の精製HBV DNAを検
出するものである。この直接スポット雑種形成法で陰性
の血清は、各200μlから全部の核酸を抽出し、全抽
出物を1個のスポットとして適用することによって、陰
性として確認した(Lieberman H.M.,H
epatology,3:285−291(198
3))。これらの研究において、フィルターに適用され
た対照プラスミドDNA(pBR 322)0.1μg
によって、陽性の雑種形成シグナルを生じない、高度に
精製されたHBVDNA プローベを使用することは必
須である。
【0029】肝臓生検組織を、50mM Tris−H
Cl( pH7.5)−150mMNaCl−25mM
EDTA中で、Dounce ホモジナイザーにおいて
均質化し、次いでSDS−プロティナーゼK消化、フェ
ノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈殿によっ
て、DNAを単離した。ランダム プライマー エック
ステンションによって、精製HBV DNA(3200
bp)を[32P]により高比活性(2〜8×108 co
n.g DNA)まで標識した。DNA 10マイクロ
グラムを制限エンドヌクレアーゼ Hind IIIまたは
EcoR1によって消化した後または消化前のどちらか
に、0.8%アガロースゲルを通して電気泳動に付し
た。このDNAをGene Screen フィルター
に移し、1分間のUV照射により、このフィルターに固
定させた。各実験毎に、陽性および陰性の対照試料を含
ませた。
【0030】予備雑種形成を、5×SSC−0.1%S
DS−50%ホルムアミド−5×Denhardtの溶
液−200μg/ml変性サケ精子DNA中で42℃に
おいて、一夜にわたり行なった。雑種形成は[32P]標
識プローベを添加して、類似条件の下に48時間、行な
った。各フィルターを室温において、2×SSC−0.
1%SDSで各5分間を2回、65℃において1×SS
C−1%SDSで各30分間で2回、次いで室温におい
て、0.1×SSC−0.1%SDSで15分間、洗浄
した。これらのフィルターを次いで、2個のスクリーン
を用いて、−70℃において、Kodak XAR−5
フィルムにさらした。
【0031】統計 群平均はStudentの両側検定 t試験によって比
較した。初期値と引続く測定時点の測定値との間の変化
を、Studentの両側検定 t試験によって比較し
た。
【0032】結果 このパイロット試験においては、12人の患者を評価し
た。無作為に、4人の患者にはTF−5を投与し、3人
の患者にはT−α1 を投与し、そして5人の患者にはプ
ラセボを投与した。TF5が投与された患者のうちの2
人は注射部位に局所的不快感を体験したので、1ケ月以
内にT−α1 に変えた。最終的被験群はTF−5または
T−α1 を投与された7人の患者(チモシン群)および
プラセボを与えられた5人の患者からなる。初期(封入
時)に、チモシン群と対照群とを、性別、年令、生化学
的パラメーターおよび血清学的パラメーターに関して比
較した(表1)。被験患者の中で、デルタ抗体に対して
陽性の者は存在せず、T−α1 処置に応答した1人の患
者だけはC型肝炎に対する抗体に関して陽性であった。
【0033】
【表1】表1: 被験群の初期特徴
【0034】実験の終了時点(12ケ月)におけるHB
V DNA、HBeAgおよびHBsAgのクリアラン
ス率を表2に示す。この表2は、プラセボ群に比較し
て、チモシン群における有意に高いHBV DNAクリ
アランス率を示している(それぞれ、86%対20%;
Fisherの完全試験による)。6ケ月の処置期間の
間で、チモシンに応答する6人の患者の全員に、血清H
BV DNAレベルの減少が見られた。処置中の4人の
患者および処置終了後の2ケ月および6ケ月の時点でそ
れぞれ残る2人の患者において、血清HBV DNAは
消失した。
【0035】
【表2】表2: 開始時および12ケ月目のHBVマーカー血清
陽性反応
【0036】TF5またはT−α1 により処置された患
者は、1年の時点で正常もしくは正常に近いALTおよ
びAST値を示した。この数値はプラセボにより処置し
た患者における相当する数値よりも格別に低い。しかし
ながら、1時的なALT上昇(初めの数値の2〜6倍)
がチモシン応答者6人のうちの5人に見られた。これら
のALT増加の存続期間は4.6±0.6週間であって
(n=5)。各場合においてHBV DNAのクリアラ
ンスが先行した(Fig 1)。
【0037】
【表3】表3: 被験期間中のアミノトランスフェラーゼ レベ
【0038】チモシン群の長期間追跡検査(27±3ケ
月)では、永続的陰性血清HBVDNAが6人の応答者
に見られ、そしてまたALTレベルの正常化が7人全員
の患者に見られた(29±5 IU/L)。14ケ月の
追跡検査によって、2人のチモシン応答者(29%)
で、血清HBsAgおよび生成抗−HBsが消失した。
【0039】無作為選別前に、12人の患者は、末梢血
液リンパ球(p<0.01)、CD3(p<0.0
2)、CD4(p<0.05)およびCD11(p<
0.05)数値に関して、健康な協力者に比較して有意
の減少を示していた。CD8およびNKの数値あるいは
CD4/CD8比に関しては、患者も健康な協力者との
間に差はなかった。リンパ球、T細胞サブセットまたは
NKの数値に関して、初期においては、チモシン群とプ
ラセボ群との間に有意の差は見られなかったが、処置し
た群では、健康な協力者に比較して、リンパ球、CD3
およびCD4の数値は有意に低下していた(表4)。
【0040】
【表4】 表4: 末梢血液中のリンパ球およびT細胞サブセット
の絶対数(細胞数/mm3 ;平均値±SEM)
【0041】Fig 2には、初めの処置の1ケ月以内
に、チモシン群がプラセボ群の初めの数値に比較して、
リンパ球、CD3およびCD4測定値について、一般に
高い数値を示したことが示されている。これらの増加は
一般に、6ケ月の引続く期間にわたって持続された。プ
ラセボ群においては、これらのパラメーターに関して有
意の変化は認められなかった。初期に、被験群間または
被験群と健康な協力者との間で、インビトロ IFN−
γ産生あるいはCOAおよびPHA−Pリンパ球増殖検
査に関して、差違は見い出されなかった(Fig
3)。開始後に、チモシン群におけるIFN−γのPB
M合成は、健康な協力者の場合に見い出されるレベル以
上のレベルに上昇したが、プラセボ群におけるこのレベ
ルは一般に低下した(Fig 3)。肝臓生検組織学的
活性スコアの結果を表5に示す。
【0042】
【表5】表5:肝臓生検試料の組織学的評価(平均スコア±S
D)
【0043】12ケ月の研究期間の間に、7人のチモシ
ン処置患者のうちの6人では、組織学的活性スコアは減
少したが、7人目の患者では、僅かに増加した。プラセ
ボ群の4人の患者では、この組織学的スコアは増加した
が、5人目の患者では、減少した。12人のCAHBの
患者は全員が、初期生検の時点で硬変を有しており、ま
たチモシン処置した患者の7人のうち6人およびプラセ
ボ処置した患者の5人のうち4人に、最後の生検で依然
として硬変が見い出されたことから、スコアにおける変
化は、ほとんど完全に、炎症活性および小葉損傷による
変化によるものであった。これらの結果は、p<0.0
1レベルで有意であった(表5)。12ケ月目に、チモ
シンに対する6人の応答者からの肝臓生検試料では、P
AP染色によるHBcAgは検出されなかった。プラセ
ボを投与された患者の1人において、彼は自発性軽快を
体験した。しかしながら、HBcAgはチモシン処置に
応答しなかった1人およびプラセボ患者の残りの4人で
確認された。
【0044】肝臓におけるHBV DNA分子型を、チ
モシン処置した患者のうちの3人において検査した。組
織試料は処置前、6ケ月目および12ケ月目に採取し
た。1人の患者(チモシン処置に対して応答しなかった
唯一の1人)は、3種全部の試料で、複製型のHBV
DNAを有していた。残りの2人の患者においては、チ
モシンによる処置が、初期試料に見い出されたHBV複
製型の消失を示した。これらの患者のうちの1人では、
最終試料中にHBV DNA分子型は確認されなかった
が、他の1人では、最終の12ケ月目の試料に、超ラセ
ンでゆるやかな円形のゲノムが残留していた(Fig
4)。
【0045】チモシンに対して応答した他の2人の患者
は、超ラセン型HBV DNAを示したが、6ケ月目お
よび12ケ月目の試料ではそれぞれ、複製型は存在して
いなかった。その処置前の凍結肝臓は入手できなかっ
た、2人の患者において、チモシン処置中のHBV D
NA複製の停止が、組織学的研究に使用されたパラフィ
ン埋め込み組織のその場での雑種形成によって証明され
た。従って、サザン法またはその場での雑種形成検定の
どちらかによる、肝臓組織のHBV複製の停止に係る明
白な証拠を、チモシン処置に対して、血清学的に、およ
びまた組織病理学的に応答した患者の全員で得た。5人
のプラセボ群の患者のうちの1人は、処置前および12
ケ月目の生検試料の両方で、複製型のHBV DNAを
有していた(Fig 4、非応答者)。プラセボ群の残
りの患者(自発性軽快)は、12ケ月目の試料におい
て、HBV DNA分子型に係るサザン法によって、陰
性であった。
【0046】TF5およびT−α1 による治療は、重大
な副作用を付随しなかった。3人の患者が、初めの2週
間の間、TF5注射部位で局所的不快感を報告した。こ
れらの患者のうちの2人は、別段の問題もなくT−α1
に変え、3人目の患者はTF5の継続を主張した。後
刻、局所的不快感は引続き重大になることなく消失し
た。T−α1 投与の場合には、局所的不快感は一般に、
出現しなかった。処置期間および引続く期間を通して、
血液学的状態、生化学的パラメーターあるいは心臓機能
に関して、変化は見い出されなかった(データは示され
ていない)。7人の患者(処置した5人とプラセボの2
人)は無作為選別前に、多少ないし中程度の疲労感をう
ったえていた。12ケ月の研究の終了時点で、処置患者
の1人(非応答者)およびプラセボ患者の1人は依然と
して疲労感を体験していた。
【0047】TF5およびT−α1 は抗ウイルス性を有
するものとは考えられない(Zav’yalov V.
P.等、Immunol.Lett.,22:173−
181(1989))。本研究の結果は、これらの薬剤
に対する有益な応答は、これらのペプチドの免疫調節作
用から誘導されたものであることを示唆している。チモ
シン処置した患者に見い出された、リンパ球、CD3お
よびCD4の測定値の有意の増加は、以前に報告された
チモシンのインビトロ効果と一致している(Baxev
anis C.N.等、Immunopharm.,1
3;133〜141(1987))。
【0048】研究に参加した、CAHBの患者からのP
BMによるIFN−γ産生は、以前に報告されている対
照の健康な協力者と異なっていなかった(Davis
G.L.等、Gastroenterology,8
6:1315(1984)およびInoue M.等、
J.Immunol.,142:4006〜4011
(1989))。従って、12ケ月の研究期間中に、チ
モシン処置患者においてはPBMによるIFN−γの産
生が増加するが、プラセボ処置患者においては増加しな
いという結果は、免疫調節機能に対するインビボチモシ
ン作用を示すものということができ(Mutchnic
k M.G.等、Clin.Immunol.Immu
nophathol.,23:626〜633(198
2);Serrate S.A.,J.Immuno
l.,139:2338〜2343(1987);およ
びBaxvanis C.N.等、Immunopha
rm.13:133〜141(1987))、あるいは
IFN−γ産生の上昇調整をもたらすTリンパ球IL2
産生の調節作用を多分、示すものということができる
(Svedersky L.P.等、Eur.J.Im
munol.,12:244〜247(1982))。
【0049】チモシンによる免疫調節に対する作用のメ
カニズム(1種または2種以上)は不明であるが、T−
α1 がIFN−αと同様の様相で作用しうることを示唆
する証拠は存在している。IFN−αのC末端配列は、
T−α1 の前駆形であるプロチモシン アルファと相同
性を有する(36%)(Zav’yalov V.P.
等、Immunol.Lett.,22:173〜18
1(1989))。抗ウイルス活性に関与しうる、IF
N−αのN−末端ドメインとは異なり、C末端ドメイン
はIFN−αの免疫調節活性に関与する可能性がある。
さらにまた、IFN−α2 とT−α1 との間の最高の相
同領域に相当するオクタペプチドは、CoAの存在の下
における増殖の誘発に寄与する胸腺細胞で同一レセプタ
ーと競合する(Zav’yalov V.P.等、Im
munol.Lett.,22:173〜181(19
89))。
【0050】大部分の場合に、病気の解消およびHBV
複製の消失が一般に生じた。チモシンに応答した、6人
の患者の中で、血清HBV DNAが再現した者は無か
った(26±3ケ月)。これらの6人の患者はいずれ
も、正常なALT値を示した(26±5 IU/L)。
処置患者の12ケ月目肝臓生検試料における組織学的改
善は、炎症、肝細胞損傷および壊死の減少を示唆してい
る(表5)。
【0051】雑種形成研究は、チモシン治療を受けた者
の最後の肝臓生検試料(12ケ月)中に、HBV DN
A分子型または残留フリー ゲノムは見られず、また複
製型も見られないことを示した。これに対して、プラセ
ボ処置患者においては、自発的軽減を示した1人の患者
を除いて、肝臓組織中に複製性のHBV DNAが依然
として存在していた。Fig 4に示されている、T−
α1 に応答した患者(レーンD、EおよびF)は6ケ月
のT−α1 の処置期間中に、血清HBsAgおよびHB
V DNAが陰性になり、かつまた抗HBsが発現する
時点である引続く6ケ月の処置の間、陰性のままであっ
た。このことは、残留HBV DNAはフリー ゲノム
型で肝臓組織中に存在するが、ウイルス タンパク質産
生(HBsAg)も、活性ウイルス複製(HBV DN
A)も存在しなかったことから、HBV感染が潜在性に
なったことを示唆している。
【0052】この研究に参加した患者は、同性愛者では
なく、静脈注射薬物常習ではなく、あるいはHIV陽性
ではないという点で、比較的均一であった。全部の患者
が活性硬変の組織学的徴候を有していた。上述の結果
は、TF−5およびT−α1 が使用投与量で無毒性であ
り、かつまたCAHBの患者における疾患活性の解消を
促進することを示している。さらにまた、臨床的、免疫
学的および組織学的パラメーターの改善は、HBV複製
の停止およびまた肝臓組織からのHBV DNAの消失
もしくは感染の潜在形への移行をともなう複製型からフ
リー ゲノム型への変化と組合されている。
【0053】前記記載は本発明を説明しようとするもの
であり、本発明は前記特許請求の範囲によってだけ制限
されるものと解釈されるべきである。
【0054】
【図面の簡単な説明】
【図1】ALT値の増大を示した後に、先ず血清HBe
Agの、次いでHBV DNAのクリアランスを示した
患者の1人のTF−5(90mg/M2 )に対する応答
を示すグラフ。
【図2】各被験患者群の末梢血液中のリンパ球(a)、
CD3(b)およびCD4(c)の絶対測定値を示すグ
ラフ。
【図3】TF−5/T−α1 処置群およびプラセボ処置
群から得たPBMによるIFN−γ産生を示すグラフ。
【図4】プラセボ処置非応答患者およびチモシン処置応
答患者の各肝臓生検試料のHBV DNAのスポット雑
種形成結果。
【手続補正書】
【提出日】平成5年10月20日
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】基板上に形成された微細なパターンを表す写真
であって、プラセボ処置非応答患者およびチモシン処置
応答患者の各肝臓生検試料のHBV DNAのスポット
雑種形成結果を示す。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 活性成分として、チモシン アルファ1
    およびチモシン アルファ1 を含有する子牛抽出物から
    なる群から選ばれるチモシンを有効量で含有することを
    特徴とする哺乳動物におけるウイルス誘発肝炎処置用医
    薬組成物。
  2. 【請求項2】 哺乳動物がヒトである請求項1の医薬組
    成物。
  3. 【請求項3】 ウイルスがB型肝炎ウイルスである請求
    項2の医薬組成物。
  4. 【請求項4】 チモシンがチモシン アルファ1 である
    請求項1の医薬組成物。
  5. 【請求項5】 チモシンがチモシン分画5である請求項
    1の医薬組成物。
  6. 【請求項6】 哺乳動物におけるウイルス複製が停止す
    るまで投与される請求項1の医薬組成物。
  7. 【請求項7】 皮下注射によって投与される請求項1の
    医薬組成物。
  8. 【請求項8】 チモシンがチモシン アルファ1 であ
    り、そして投与量が週2回の皮下投与で、ヒトの身体面
    積の一平方メートル当り約600〜1200マイクログ
    ラムである請求項3の医薬組成物。
  9. 【請求項9】 チモシンがチモシン分画5であり、そし
    て投与量が週2回の皮下投与で、ヒトの身体面積の一平
    方メートル当り約60〜120mgである請求項3の医
    薬組成物。
  10. 【請求項10】 肝炎が慢性である請求項1の医薬組成
    物。
  11. 【請求項11】 チモシンが化学的に合成されたチモシ
    ン アルファ1 である請求項1の医薬組成物。
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