JPH07208206A - ガスタービン圧縮機翼面汚れ防止装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】圧縮機翼面の汚れを防ぎ、圧縮機の性能低下を
抑える、ガスタービン圧縮機翼面汚れ防止装置を提供す
ること。 【構成】高圧直流電源１１１に接続され、正負交互に配
置された電極板１１２と、電極板１１２を縫うように配
置されたひだ状の誘電体フィルタ１１３から構成される
帯電フィルタ１１を、空気取り入れ室１の除塵装置１０
の下流側に配置する。 【効果】浮遊粒子が粒子の鎖を形成しながら帯電フィル
タに補足されていくので、空気取り入れ室での圧力損失
を大きくせずに、粒径１０マイクロメートル以下の塵埃
や油煙等が圧縮機に吸い込まれるのを防ぐことができ、
圧縮機の性能低下を抑えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、発電用あるいは産業用
のガスタービンの性能低下防止に係り、特に圧縮機の翼
面汚れの防止に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、発電用あるいは産業用のガスタ
ービンには空気取り入れ室で吸い込んだ空気を圧縮機入
口へ導く吸気ダクトが配置されており、空気取り入れ室
内部には空気を清浄にするための空気除塵装置が設けら
れている。

【０００３】このような空気除塵装置のうち、発電設備
等で用いられる空気除塵装置は、長時間の使用に耐え得
る、清浄，交換等のメインテナンスが少ないもので、か
つ圧力損失の低い種類の空気除塵装置が選ばれる。この
ため、粒径約１０マイクロメートル以上のダストは約９
５％が捕捉されるが、それ以下の粒径のダストや、油・
水等のミストやエアロゾル等の大半は捕捉されずに空気
圧縮機に吸い込まれてしまう。

【０００４】こうして圧縮機に吸い込まれた塵埃やミス
ト等は、圧縮機の動翼，静翼の表面に付着し、翼表面に
不均一に分布し、結果的には翼の表面粗さを増すことに
なり、この状態で運転を続けると翼面の付着物は増大
し、大幅な性能低下を引き起こす結果となる。またこの
ような性能低下した状態で使用していると、配管系との
関係でサージを引き起こし、ついには運転不能となる場
合がある。図６は固形物が翼面に付着した場合にどの程
度圧縮機の性能が下がるかを示したものである。曲線
ａ，ｂはそれぞれ定回転における圧力比−流量の特性曲
線であり、ａは付着しない場合であり、ｂは固形物が付
着した場合である。ｃは抵抗曲線である。曲線ａに比べ
ｂは特性が著しく低下している様子を示している。この
ように翼表面に固形物が付着すると大幅な性能低下や、
サージなど有害な影響がある。

【０００５】このため、圧縮機翼面に付着物が堆積し性
能が低下すると、性能回復のために圧縮機入口から、洗
浄液を注入し翼を洗浄する「水洗浄」と呼ばれる方法
や、燃焼器で燃やすことができる米粒その他の固形物を
投入して翼に衝突させて付着物を剥がし飛ばす「ライス
インジェクション」や「ナッツインジェクション」と呼
ばれる方法等によって、翼表面の付着物を除去する必要
があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記説
明の水洗浄や、ライスインジェクション等は通常の運転
中には行えないこと、ある程度性能が低下した後にしか
行えないこと、定期開放点検の解体時の翼表面清浄時ほ
どには翼面付着物を除去できないために低下した性能を
大幅に回復することができないこと、タービンの冷却孔
に異物が詰まってタービン翼の焼損を引き起こしガスタ
ービンの性能低下を招く原因となり得ること等の問題が
あった。

【０００７】本発明はこれにかんがみてなされたもの
で、その目的とするところは、粒径１０マイクロメート
ル以下の塵埃やミスト等を捕捉できる帯電フィルタを配
置することによって、圧縮機翼面の汚れを防ぎ、圧縮機
の性能低下を抑える、ガスタービン圧縮機翼面汚れ防止
装置を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、空気
取り入れ室の除塵装置の下流側に高圧直流電源に接続さ
れた極板と、この電極板によって分極するフィルタから
構成される帯電フィルタを配置することによって、所期
の目的を達成するようにしたものである。

【０００９】

【作用】すなわち、ガスタービンの空気取り入れ室をこ
のように構成すると、粒径が１０マイクロメートル以下
の塵埃やミスト等が圧縮機に吸い込まれることを防止す
ることができる。こうした理由から、圧縮機の翼表面に
塵埃やミスト等が付着することを防止することができ、
ガスタービン圧縮機の性能低下を抑制できる。

【００１０】

【実施例】

（実施例１）以下、本発明の一実施例を図を用いて説明
する。図２は本発明を実施した発電用ガスタービンの構
成図である。ガスタービン２は、図２に示すように取り
入れた空気（大気）Ａを高圧に圧縮する圧縮機５と、圧
縮機５からの高圧空気と燃料Ｆを混合して燃焼させる燃
焼器６と、燃焼器６によって発生した高温高圧ガスＧに
よって羽根車を回転させるタービン７の三つの主要構成
要素からなり、発電用のガスタービンの場合、１例とし
て図２のようにタービンの回転軸８に連結された発電機
９を駆動することによって発電が行われる。また、発電
用ガスタービンは一般に外気を取り入れる空気取り入れ
室１と圧縮機５に均一な流れの空気を導く圧縮機入口４
とこれらを結ぶ吸気ダクト３を有している。前記空気取
り入れ室１には、例えば繊維製のフィルタを用いた空気
除塵装置１０が配置されている。帯電フィルタ１１は前
記空気取り入れ室１の除塵装置１０の下流側に空気Ａの
流れの方向に垂直に配置されている。この帯電フィルタ
１１は、図１に示すように、正負交互に配置された複数
の電極板１１２と、この電極板１１２の間を縫うように
配置されたひだ状の誘電体フィルタ１１３から構成され
ている。また、帯電フィルタ１１の変形防止のために、
帯電フィルタを挟むようにフィルタ保持用格子１１４が
配置されている。また、図３に示すように、前記電極板
１１２は高圧直流電源１１１に接続されており、誘電体
フィルタ１１３は電極板１１２の正極に近い面では負電
荷を持ち、負極に近い面では正電荷を持つように分極す
る。次に上記構成のガスタービン圧縮機翼面汚れ防止装
置の作用を説明する。図４，図５にはそれぞれ、誘電体
フィルタ１１３と、帯電フィルタと同じ除塵能力を持つ
非帯電フィルタ１１９の部分断面図を示す。図５におい
て、図示しない空気除塵装置を通り抜けた１０マイクロ
メートル以下の浮遊粒子Ｐは非帯電フィルタ１１９の表
面に吸着され、圧縮機に流入しないので翼面は汚れない
が、しかし時間と共に非帯電フィルタ表面を塞いで行
き、圧力損失がこれに比例して増大する。一方、図４に
示す本実施例では、誘電体フィルタ１１３に吸着された
浮遊粒子Ｐ１は誘電体フィルタ側とその反対側の方向に
分極する。次に流下してきた粒子Ｐ２は同方向に分極
し、すでに吸着された粒子Ｐ１に付着する。このよう
に、浮遊粒子は誘電体フィルタ表面に均一に吸着されず
に浮遊粒子が鎖状に連結して行くので、非帯電フィルタ
１１９に比べて圧力損失が増大する割合が小さく長時間
の使用が可能である。また、同じ圧力損失の非帯電フィ
ルタ１１９に比べ本実施例の帯電フィルタは、より小粒
径の塵埃やミスト更には油煙をも補足出来る。以上のこ
とを言いかえると本実施例の帯電フィルタ１１は非帯電
フィルタ１１９に比べて、圧力損失が低く長時間使用出
来る。したがって、上記構成のガスタービン圧縮機翼面
汚れ防止装置は従来の除塵装置に比べ、圧力損失を増大
せずに１０マイクロメートル以下の塵埃やミスト等を補
足し、性能低下の原因となる圧縮機翼面汚れを防止出来
る。また、この結果、水洗浄やライスインジェクション
をなくしたり回数を減らすことができる。

【００１１】（実施例２）前記実施例において、帯電フ
ィルタ１１に付着した汚れの除去のために、図７に示
す、帯電フィルタ１１の上流側に帯電フィルタの向きに
開口を持つフィルタ汚れ吸引装置１２を配置してもよ
い。この汚れ吸引ダクト１２は矩形または長円形の吸引
口を持つパイプ１２１と、自由に伸縮および湾曲するホ
ース１２２と、空気取り入れ室を貫通するダクト１２３
と、圧縮機の抽気を利用したエジェクタ１２４から構成
される。上記フィルタ汚れ吸引装置１２の吸引口の面積
は、空気取り入れ室１の帯電フィルタ１１が装着される
部分の流路断面積に比べ小さいので、帯電フィルタ１１
の全面の汚れを取るためにフィルタ汚れ吸引装置１２の
移動装置１３を配置する。フィルタ清浄時には圧縮機抽
気より高圧空気Ｂがエジェクタ１２４に送られ、フィル
タ汚れ吸引装置１２の吸引口がフィルタ１１に沿って移
動し、帯電フィルタ１１の各位置で回りの空気と共に汚
れを吸引する。吸引された汚れは回りの空気と共に、エ
ジェクタのど部を通り出口ポート１２５より排出され
る。前記ダクト１２の吸引口の移動装置１３は、空気取
り入れ室内側面に設けたガイド溝に両端をしゅう動させ
ながら上下方向に動く水平棒１３２と、吸引口を持つパ
イプ１２１を保持しながら水平棒１３２にそって動く吸
引パイプ支持装置１３３と、水平棒１３２を保持するチ
ェーン１３４と、このチェーンを動かす歯車つきモータ
１３５と、モータの負荷を軽減させる釣り合い重り１３
６から構成される。前記吸引パイプ支持装置１３３には
歯車つきモータ１３７が取付けられており、前記水平棒
１３２にはこの歯車１３７との間にラックとピニオンの
関係が成り立つように溝が刻まれている。

【００１２】このようにガスタービン圧縮機翼面汚れ防
止装置を構成すると、帯電フィルタによる圧力損失が増
加した時には全負荷運転時以外はいつでもガスタービン
の運転中に帯電フィルタの汚れを除去することができ、
帯電フィルタによる圧力損失を低い値に保つことができ
る。このため、帯電フィルタの寿命を長くでき、フィル
タ交換時期を延ばすことができる。

【００１３】次に本実施例のフィルタ汚れ吸引装置が帯
電フィルタの汚れを除去できる理由について説明する。
帯電フィルタに補足された汚れ粒子は、図４に示される
ように、粒子同志で鎖状に連結しているが、その結合力
は汚れ粒子とフィルタとの間に働く結合力に比べて弱
い。このためフィルタ汚れ吸引装置によって起こされる
通常時の流れと逆向きの速い空気流によって、汚れ粒子
同志の結合が切れるので、汚れ粒子はフィルタ汚れ吸引
装置の吸引口に吸い込まれて行く。

【００１４】（実施例３）前記第１の実施例において、
図８に示すように帯電フィルタを複数に分割して配置し
てもよい。帯電フィルタのサイズを小さくすることによ
って交換作業が用意になる。また、強度も大きくなり、
変形し難くなるので、誘電体フィルタや電極板を軽い構
造にできる。

【００１５】（実施例４）前記第２の実施例において、
フィルタの汚れを吸引する手段として、圧縮機抽気を利
用したエジェクタの代わりに電気掃除機を用いてもよ
い。これによって、ガスタービンの運転状態に関係なく
帯電フィルタの汚れを除去できる。

【００１６】（実施例５）前記第１の実施例において、
空気除塵装置と帯電フィルタの圧力損失の合計を帯電フ
ィルタを付けない場合の空気除塵装置の圧力損失と同じ
レベルになるように、圧力損失の低い種類の空気除塵装
置を配置してしてもよい。これによって、空気除塵装置
での除塵能力は落ちるが、帯電フィルタがこれを補うの
で、従来の除塵装置のみの場合と比べて、圧力損失を増
大せずに塵埃や油煙等を補足できる。

【００１７】

【発明の効果】本発明は以上説明してきたように、空気
取り入れ室の除塵装置の下流側に正負交互に配列された
電極板と誘電体フィルタから構成される帯電フィルタを
配置することによって、１０マイクロメートル以下の塵
埃やミスト等が圧縮機側に流下することを防ぐようにし
たので、圧縮機翼面に汚れが付着することを抑制でき、
圧縮機の性能低下を遅らせることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を実施したガスタービン圧縮機空気取り
入れ室部分横断面図である。

【図２】本発明を実施した発電用ガスタービン部分横断
面図である。

【図３】帯電フィルタの部分横断面図である。

【図４】帯電フィルタの汚れ粒子補足機構説明図であ
る。

【図５】非帯電フィルタの汚れ粒子補足機構説明図であ
る。

【図６】圧縮機の圧力比−流量特性図である。

【図７】フィルタ汚れ吸引装置を配置した空気取り入れ
室部分横断面図である。

【図８】実施例３の空気取り入れ室部分断面図である。

【符号の説明】

１…空気取り入れ室、２…ガスタービン、３…吸気ダク
ト、４…圧縮機入口、５…圧縮機、６…燃焼器、７…タ
ービン、８…ガスタービン回転軸、９…発電機、１０…
空気除塵装置、１１…帯電フィルタ、１２…フィルタ汚
れ吸引装置、１３…フィルタ汚れ吸引装置移動装置、Ａ
…大気、Ｆ…燃料、Ｇ…燃焼ガス、Ｐ…大気中の塵埃や
ミスト等の浮遊粒子。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】空気除塵装置を有する空気取り入れ室を持
   つ発電用又は産業用のガスタービンにおいて、前記空気
   取り入れ室の除塵装置の下流側に帯電フィルタを配置し
   たことを特徴とするガスタービン圧縮機翼面汚れ防止装
   置。
2. 【請求項２】請求項１において、帯電フィルタの上流側
   にフィルタ汚れ吸引装置を配置し、このフィルタ汚れ吸
   引装置の吸引口をフィルタに沿って移動させる移動装置
   を配置したことを特徴とするガスタービン圧縮機翼面汚
   れ防止装置。
3. 【請求項３】請求項１において、前記空気除塵装置と帯
   電フィルタの圧力損失の合計を帯電フィルタを付けない
   場合の空気除塵装置の圧力損失と同じレベルになるよう
   にしたことを特徴とするガスタービン圧縮機翼面汚れ防
   止装置。